JP4934802B2 - リンパ系の細胞接着物質、リンパ系薬物輸送材およびそれを含有する薬剤 - Google Patents

リンパ系の細胞接着物質、リンパ系薬物輸送材およびそれを含有する薬剤 Download PDF

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本発明は、リンパ行性に転移した腫瘍細胞を診断したり治療したりするための原材として用いられるリンパ系の細胞接着物質やリンパ系薬物輸送材、それを含有するリンパ系疾患の診断や治療のための薬剤に関するものである。
胃癌や乳癌等の上皮性腫瘍は、リンパ系内でリンパ液を介してその所属リンパ節に転移する悪性腫瘍である。
このような腫瘍の原発巣を摘出する手術の際、所属リンパ節に転移した腫瘍細胞が残存していると術後に再発する危険性があるので、腫瘍原発巣とその周辺のリンパ管やリンパ節とを広範囲に摘出するリンパ節郭清が施されていた。正常なリンパ節等の組織も摘出するものであるから、患者に対する侵襲が大きい。
患者への侵襲を小さくするために、腫瘍細胞がリンパ液を介し最初に到達するみはりリンパ節すなわちセンチネルリンパ節を特定し、そこに転移がなければ他のリンパ節を摘出せず腫瘍原発巣のみを摘出するという手術が行なわれるようになってきた。
このようなセンチネルリンパ節は、例えば特許文献1に記載されているように皮下投与した超音波造影剤で造影させたり、皮下注射した色素で染色させたり、局所注射した放射線物質で検出したりして、特定される。
皮下深くに存在するセンチネルリンパ節を造影したり染色したりしても、色調が薄くて目視し難いうえ造影剤や色素がリンパ液とともに経時的に流れ去ってしまうので熟練した医師が迅速に特定しなければならない。さらに、転移しているセンチネルリンパ節のみならず転移していないそれ以外のリンパ節が染色されてしまうことがある。または患者が放射線物質で被ばくしてしまう。
一方、非特許文献1には、胃の腺粘液細胞分泌物であるα1,4−N−アセチルグルコサミン基含有O−グリカンが、胃癌の原因であるヘリコバクターピロリ菌の細胞壁構成成分の生合成を阻害し、抗菌剤として有用である旨、記載されている。非特許文献2には、これを生成するα1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素について記載されている。
特開2003−238450号公報 川久保雅友,小林基弘,中山 淳,Molecular Medicine, Vol.40, No.9, p1086-1092 (2003) M.Kawakubo, Y. Ito, Y. Okimura, M. Kobayashi, K. Sakura, S. Kasama, M. N. Fukuda, M. Fukuda, T. Katsuyama, J. Nakayama; "Natural Antibiotic Function of a Human Gastric Mucin Against Helicobacter pylori Infection", Science, Vol.305, p1003-1006, (2004)、および[online], Science, Supporting online material, (http://www.scieccemag/cgi/data/305/5686/1003/DC/1)
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、腫瘍細胞が転移しているセンチネルリンパ節とそこに至るまでのリンパ管との細胞への接着物質、その細胞へ選択的に薬物を輸送するリンパ系薬物輸送材、それを含有しており長時間センチネルリンパ節やリンパ管に滞留することができるリンパ系疾患の診断や治療のための安全な薬剤を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載の発明は、リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞に存在しそれにリンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞を接着させる細胞接着因子のレセプターへ結合し得る、リガンド基含有化合物が、含まれており、その化合物の該リガンド基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基とする非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基であることを特徴とするリンパ系の細胞接着物質である。
該リガンド基が、糖鎖基であることが好ましい。
の発明は、該リガンド基が、非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基、シアリルルイスX糖鎖基またはマンノース含有糖鎖基であることを特徴とすリンパ系の細胞接着物質である。
リガンド基含有化合物が、シアリルルイスXであってもよく、マンノース単糖であってもよく、非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖またはマンノースを有する多糖であってもよい。
前記の請求項に記載の発明は、該リガンド基含有化合物のリガンド基が、該非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基であることを特徴とすリンパ系の細胞接着物質である。
このようなα結合型のアセチルグルコサミン含有基を有する化合物は、β結合型のアセチルグルコサミン含有基を有する化合物にα1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素が作用して生成されるものである。
非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基が、N−アセチルグルコサミンα1→4ガラクトースβ含有糖鎖基であることが好ましい。
請求項に記載の発明は、リガンド基含有化合物が、下記式(I)
Figure 0004934802
で示されることを特徴とする請求項に記載のリンパ系の細胞接着物質である。
式(I)のリガンド基含有化合物は、sCD43で示される可溶型のLeukosialinというタンパク質に、そのSer/Thr(セリン−スレオニン)残基を介して、2分岐型O−グリカンの3GalNacα1が結合したものである。
同じく発明は、リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞へ接着するコロイド粒子に診断薬および/または治療薬が、付されていることを特徴とするリンパ系薬物輸送材である。
このリンパ系薬物輸送材は、リンパ管やセンチネルリンパ節に集積してリンパ管内皮細胞やセンチネルリンパ節細胞に接着したまま長く滞留するので、コロイド粒子表面に露出している診断薬や治療薬を、これら細胞へ効率的に輸送する。
診断薬または治療薬は、付着や吸着や粘着により付されつつ、コロイド粒子の表面から露出している。その診断薬として、コロイド粒子の表面に付着するPKH26のような蛍光剤で例示される感光剤が挙げられる。
同じく請求項に記載の発明は、リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞に存在しそれにリンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞を接着させる細胞接着因子のレセプターへ結合し得るリガンド基含有化合物を、含んでおり、その化合物の該リガンド基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基とする非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基であるリンパ系の細胞接着物質と
診断薬および/または治療薬とが
コロイド粒子に含有され、該リガンド基含有化合物が該コロイド粒子の表面から露出していることを特徴とするリンパ系薬物輸送材である。
請求項4に記載の発明は、該リガンド基含有化合物が、前記式(I)で示されることを特徴とする請求項3に記載のリンパ系薬物輸送材である。
診断薬または治療薬は、コロイド粒子に完全に内包されたり、コロイド粒子に内包されつつ一部がコロイド粒子の表面から露出したり、付着や吸着や粘着により付されつつコロイド粒子の表面から露出したりしている。
この細胞接着因子は、リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞に多く存在している。リンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞は、リガンド基含有化合物のリガンド基と同一または異なるリガンド基を有する物質を産生して、表面からこの基を露出させている。リンパ球やリンパ行性腫瘍細胞と、リンパ系薬物輸送材表面のリガンド基含有化合物とが、夫々のリガンド基に対する特異的な細胞接着因子のレセプターと相互作用する結果、リンパ管内皮細胞やセンチネルリンパ節細胞へ、競合的に接着する。
その結果、このリンパ系薬物輸送材は、このリンパ系輸送材は、リガンド基含有化合物に由来して強くこれらの細胞に接着することができる。そのため、リンパ液に流されることなくこれらの細胞に集積したまま長時間滞留するので、コロイド粒子表面に露出しているような診断薬や治療薬を、これら細胞へ効率的に輸送する。
リンパ系薬物輸送材は、コロイド粒子単独でもリンパ管内皮細胞やセンチネルリンパ節細胞へ接着するが、前記のリガンド基含有化合物、特に式(I)の化合物を含んでいるリンパ系の細胞接着物質を含有していると、リンパ管内皮細胞やセンチネルリンパ節細胞により集積し、それらと一層強く接着する。
請求項に記載の発明は、該コロイド粒子が、リポソーム、金属含有コロイド粒子、生体分解性樹脂コロイド粒子、フチン酸含有コロイド粒子、硫黄コロイド粒子またはタンパク質コロイド粒子であることを特徴とする請求項に記載のリンパ系薬物輸送材である。
リポソームは、例えば脂肪やリン脂質でできたコロイド粒子が挙げられ、より具体的には、SUVリポソーム(small unilamellar vesicle liposome:小さな1枚膜リポソーム)、REVリポソーム(reversephase evaporation vesicle liposome:逆相蒸発法リポソーム)、またはMLVリポソーム(multilamellar vesicle liposome:多重層リポソーム)が挙げられる。金属含有コロイド粒子は、スズ含有コロイド、金含有コロイドが挙げられる。生体分解性樹脂コロイド粒子は、懸濁させたポリ乳酸粒子が挙げられる。
これらのリンパ系薬物輸送材は、例えばリポソームを構成する脂質の100重量部に対し、それに保持されたリガンド基含有化合物や診断薬や治療薬を夫々50〜500重量部含有している。診断薬や治療薬のリポソームへの取込みの割合、すなわち、保持効率で表すと夫々10〜100%となる。
同じく発明は、リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞へ接着するコロイド粒子に診断薬および/または治療薬が付されているリンパ系薬物輸送材と、
該コロイド粒子を分散させる分散液とを
含んでいることを特徴とするリンパ系疾患用薬剤である。
同じく請求項に記載の発明は、リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞に存在しそれにリンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞を接着させる細胞接着因子のレセプターへ結合し得るリガンド基含有化合物を含んでおり、その化合物の該リガンド基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基とする非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基であるリンパ系の細胞接着物質と
診断薬および/または治療薬とが
コロイド粒子に含有され
該リガンド基含有化合物が該コロイド粒子の表面から露出しているリンパ系薬物輸送材と、
該コロイド粒子を分散させる分散液とを
含んでいることを特徴とするリンパ系疾患用薬剤である。
請求項7に記載の発明は、該リガンド基含有化合物が、前記式(I)で示されることを特徴とする請求項6に記載のリンパ系疾患用薬剤である。
請求項8に記載の発明は、該コロイド粒子が、リポソーム、金属含有コロイド粒子、生体分解性樹脂コロイド粒子、フチン酸含有コロイド粒子、硫黄コロイド粒子またはタンパク質コロイド粒子であることを特徴とする請求項6に記載のリンパ系疾患用薬剤である。
このリンパ系疾患用薬剤は、リガンド基含有化合物に由来して一層強くこれらの細胞に接着することができる。
診断薬は、インジゴカルミンで例示される色素、PKH26やローダミン6Gのような蛍光剤で例示される感光剤、核磁気共鳴画像診断用ガドリニウム化合物や超音波コントラスト剤で例示される造影剤が挙げられる。コロイド粒子がリン脂質であるとき、PKH26はリン脂質二重層の外側表面に付着し、ローダミン6Gはリン脂質二重層内側内空に封入される。
この薬剤をリンパ系疾患の診断のために用いる場合、活性化されたリンパ球やリンパ行性腫瘍細胞が産生するシアリルルイスXや炎症性サイトカインに起因して、薬物輸送材がリンパ管内皮細胞やセンチネルリンパ節細胞に一層接着し易くなり、多く接着する。そのため、腫瘍細胞が転移しているリンパ管やセンチネルリンパ節で、より明瞭に染色等がなされて、それを特定でき易くなり、確実かつ簡易に診断できる。そのうえ、リンパ系診断薬剤は長く滞留し診断薬を徐放するので、長時間にわたって明瞭かつ確実に診断することができる。
治療剤は、抗癌剤、抗炎症剤が挙げられる。
この薬剤をリンパ系疾患の治療のために用いる場合も同様にリンパ系薬物輸送材が作用する。そのため、この薬剤は、リンパ行性に転移した腫瘍細胞がセンチネルリンパ節に滞留している初期のリンパ行性腫瘍転移の薬物治療の際に、長時間にわたって、薬効を持続させることができる。
リンパ系疾患用薬剤は、例えばリポソームを構成する脂質の100重量部に対し、それに保持された診断薬や治療薬を夫々50〜500重量部含有している。診断薬や治療薬のリポソームへの取込みの割合、すなわち、保持効率で表すと10〜100%となる。例えばこの薬剤を診断に用いる場合、過テクネチウム酸ナトリウムで放射線標識した塩化第一スズのコロイド0.1mg/mlを成人一人当たり37〜111MBq静脈内投与する。
これらの分散液は、精製水、生理食塩水、リンゲル液が挙げられる。
この薬剤は、懸濁液または乳濁液である注射液、用時懸濁させた注射液で例示される製剤であってもよい。
本発明のリンパ系の細胞接着物質を含んでいるリンパ系薬物輸送材は、リンパ管内皮細胞やセンチネルリンパ節細胞に特異的に集積して接着し、そこに長時間滞留する安全な薬剤材料であり、簡便に製造できる。
本発明のリンパ系疾患用薬剤は診断薬剤として、腫瘍原発巣からリンパ管を経てセンチネルリンパ節に至るまでのリンパ系に催行したリンパ行性腫瘍細胞を、長時間にわたって正確かつ明瞭に検出できる。また、転移の軌跡を追ったり転移の拡がりを検査したりするマッピング剤としても使用できる。
またこのリンパ系疾患用薬剤は、治療薬剤として、制癌剤等の治療薬を長時間リンパ行性腫瘍細胞の近傍に滞留させて、それの増殖抑制や転移抑制や破壊・死滅促進をすることができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
リンパ系循環におけるリンパ球・癌細胞と、リンパ管内皮細胞との接着機構は未解明である。そこで、先ずその接着機構について検討した。
試験例1のようにして、ヒト胃癌細胞(AGS細胞)と、培養リンパ管内皮細胞との細胞接着機構を、解析した。
(試験例1)
(1)AGS細胞の調製
始めに非特許文献1および2に記載の方法でα1,4−N−アセチルグルコサミン転移酵素(α4GnT)を調製した。
ヒト胃癌細胞由来のAGS細胞(大日本製薬株式会社製)を2群に分け、その内の1群にα4GnTを投与して培養し、リガンド基含有化合物として前記式(I)に記載のα1,4−N−アセチルグルコサミン糖鎖含有基を有する化合物を産生するα1,4−N−アセチルグルコサミン発現ヒト胃癌細胞(α1,4−GlcNAc発現AGS細胞)を得た。なお、このAGS細胞が、前記式(I)のリガンド基含有化合物を産生していることは、免疫組織化学的染色、ラテックス凝集反応および酵素免疫定量法(ELISA法)による定量で確認した。
他方の1群を培養して、リガンド基含有化合物を産生しないα1,4−N−アセチルグルコサミン非発現ヒト胃癌細胞(α1,4−GlcNAc非発現AGS細胞)とした。
(2)α1,4−GlcNAc発現AGS細胞とリンパ管内皮細胞との細胞接着性試験
(i)ヒト由来のリンパ管内皮細胞を播種した培養皿で、細胞質染色用蛍光色素CFSE(株式会社同人化学研究所製:商品名)により標識したα1,4−GlcNAc発現AGS細胞を共培養し、静置した。30分後、培養皿を3回洗浄し、接着していないAGS細胞と浮遊しているAGS細胞とを除去した。この培養皿を、位相差顕微鏡と蛍光顕微鏡とを用いて、リンパ管内皮細胞に接着して蛍光しているAGS細胞を観察した。その結果を図1(a)に示す。
(ii)リンパ行性ヒト胃癌細胞から大量に産生される炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子TNF−α(Tumor Necrosis Factor-α)を10ng/mLを培養リンパ管内皮細胞に添加して共培養したこと以外は、前記(i)と同様にして、リンパ管内皮細胞に接着して蛍光しているAGS細胞を観察した。その結果を図1(b)に示す。
(3)α1,4−GlcNAc非発現AGS細胞とリンパ管内皮細胞との細胞接着性試験
対照のため、α1,4−GlcNAc発現AGS細胞に代えて、α1,4−GlcNAc非発現AGS細胞を用いたこと以外は、前記(2)の(i)および(ii)と同様にして、リンパ管内皮細胞に接着して蛍光しているAGS細胞を観察した。その結果を図1(c)および(d)に示す。
(4)AGS細胞とリンパ管内皮細胞との細胞接着性試験結果
TNF−α添加のα1,4−GlcNAc発現AGS細胞(図1(b)参照)は、TNF−α非添加のα1,4−GlcNAc発現AGS細胞(同図(a))よりも、多く培養ヒトリンパ管内皮細胞に接着していた。
TNF−α非添加のα1,4−GlcNAc発現AGS細胞(同図(a))は、TNF−α添加のα1,4−GlcNAc非発現AGS細胞(同図(d))よりも、多く培養ヒトリンパ管内皮細胞に接着していた。
TNF−α添加のα1,4−GlcNAc非発現AGS細胞(同図(d))は、TNF−α非添加のα1,4−GlcNAc非発現AGS細胞(同図(c))よりも、多く培養ヒトリンパ管内皮細胞に接着していた。
このようにα1,4−GlcNAc発現AGS細胞であって、TNF−α添加処理していると、細胞接着数が増加していた。
このことから、リガンド基としてα1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基を有する前記式(I)に記載のリガンド基含有化合物は、リンパ管内皮細胞が有する細胞接着因子のレセプターと接着し易く、TNF−αに起因して一層接着し易くなることが明らかとなった。したがって、このリガンド基含有化合物が露出したリンパ系薬物輸送材は、リンパ行性腫瘍細胞であるAGS細胞存在下で、リンパ管内皮細胞に極めて接着し易いものであることが示された。
次に、試験例2のようにして、リンパ球と、培養リンパ管内皮細胞との細胞接着機構を解析した。免疫組織化学的検索によってヒトの正常組織においても、細胞接着因子であるE−セレクチンを発現していることが、知られている。そこで試験例2では、このE−セレクチンに着目し、その発現について検討した。なおこのE−セレクチンは、抗原であるシアリルルイスXに対する、レセプターである。
(試験例2)
(1)リンパ管内皮細胞のE−セレクチン発現試験
乳癌患者の乳腺内分泌外科手術をし、その承諾を得たヒトリンパ管内皮細胞を、培養し、免疫細胞化学像を観察したところ、培養ヒトリンパ管内皮細胞は、E−セレクチンを発現していることが確認された。リンパ行性ヒト胃癌細胞から大量に産生される炎症性サイトカインであるTNF−αを培養ヒトリンパ管内皮細胞に添加したところ、E−セレクチンの発現が増強していることが示された。
(2)リンパ管内皮細胞のE−セレクチン発現試験結果
この試験から、リンパ管内皮細胞とリンパ球との細胞接着機構にリンパ管内皮細胞のE−セレクチンが関与していた。したがって、このリガンド基含有化合物としてシリアルルイスXが露出したリンパ系薬物輸送材は、AGS細胞であるリンパ行性腫瘍細胞存在下でリンパ管内皮細胞に極めて接着し易いものであることが示された。
なお、TNF−αに代えて、同じくサイトカインであるインターロイキン1β(IL1β)を用いても、同様であった。
次にリンパ性疾患用薬剤を調製し、投与した例を示す。
調製実施例1でリンパ系疾患用診断薬剤を調製した。
(調製実施例1)
卵黄レシチンより調製されたリン脂質をクロロホルムに溶いて、薄膜を作製した。これに、ジエチルエーテルとリン酸バッファーを加えて超音波で分散させた。さらにこれを超音波処理して、最終的にリン脂質濃度が20mg/mlであるSUVリポソームを調製した。このリポソーム0.5mlに、蛍光剤であるPKH26(Zynaxis社製)の1μlを加え、1分間震盪した後、ウシ胎児血清0.5mlを加えさらに1分間震盪して、リンパ系疾患用診断薬剤として、蛍光リポソームを得た。この薬剤は、蛍光剤がリポソームのリン脂質二重膜を標識して蛍光しているものである。
次の投与実施例1で、薬物輸送材であるリンパ系疾患用診断薬剤中のリポソームについて、リンパ節への動態を調べた。
(投与実施例1)
雄性ddYマウスにペントバルビタール75mg/kgBWを腹腔内投与して、麻酔を行った。調製実施例1で得たリンパ系疾患用診断薬剤を、マウスの足底に10μL皮下注入し、5分間足底のマッサージを負荷した。その後、足底と膝窩リンパ節とを、目視観察および蛍光観察した。いずれも蛍光が認められた。その結果を、図2の(a)および(b)に示す。なお、矢印は注射針刺入点である。その他の組織に蛍光は認められなかった。対照のためリンパ系疾患用診断薬剤無投与のマウスを同様に観察したが蛍光は認められなかった(同図(c)および(d)参照)。したがって、リンパ系疾患用診断薬剤は、リンパ節に集積することが確認された。
投与実施例1から明らかなとおり、リンパ系診断薬剤は、皮下からリンパ節へ移行することが確認された。
調製実施例2で別なリンパ系疾患用診断薬剤を調製した。
(調製実施例2)
卵黄レシチンより調製されたリン脂質をクロロホルムに溶いて、薄膜を作製した。これに、ジエチルエーテルと蛍光剤であるローダミン6Gとが含まれたリン酸バッファーを加えた後、震盪させることにより分散させた。これを蒸発ゲル化させた後リン酸バッファー中に震盪分散させ、最終的なリン脂質濃度を20mg/mlにして、リンパ系疾患用診断薬剤としてREVリポソームを調製した。この薬剤は、蛍光剤がリポソームのリン脂質二重膜内空に封入されて蛍光しているものである。
次の投与実施例2で、リンパ液を採集して、リンパ液中のリンパ系疾患用診断薬剤のリポソームを定量した。
(投与実施例2)
雄の日本白色家兎にペントバルビタール20mg/kgBWとケタミン20mg/kgBWとを静脈内投与して、麻酔を行った。その後、ポリエチレンチューブを用いて膝窩リンパ節の節前リンパ管、または節後リンパ管へ逆行性にカニュレーションした。リン脂質に換算したリポソーム濃度10mg/mLである前記調製実施例2のリンパ系疾患用診断薬剤を、足背皮下に0.1mL注入した。1時間後、十分なリンパ流を得るため下肢全体の回転運動を行いながらリンパ液を採集した。その後、さらに15分間注入部位にマッサージを負荷して、リンパ液を採集した。それらを蛍光顕微鏡で観察したところ、マッサージ負荷によりリポソームのリンパ管への取込み量は著明に増加することが分った。
各リンパ液中のリポソーム濃度を測定するため、検量線を作成した。調製実施例2で得た既知の濃度のリポソームのリンパ系疾患用診断薬剤を100倍、1000倍および10000倍に夫々希釈し、蛍光顕微鏡で単位視野当たり観察される蛍光粒子数より、検量線を得た。
リンパ液を蛍光顕微鏡で観察したときの蛍光粒子数と、検量線とを比較することにより、このリンパ液中のリポソームを定量した。また、リンパ液中のリポソーム濃度とリンパ液流量との積から、リポソーム輸送量を算出した。リンパ系疾患用診断薬剤投与後のリンパ液中のリポソーム濃度は、マッサージ後、0.03mg/mLであった。このときのリンパ液流量は2.0mL/時であったから、1本のリンパ管によるリポソーム輸送量は、その積から算出されるとおり0.06mg/時であった。
投与実施例2から明らかなとおり、リンパ系診断薬剤は、皮下からリンパ節へ移行することが確認された。
なお、調製実施例2のローダミン6Gに代えて、別な診断薬や治療薬を用いたこと以外は調製実施例2と同様にして、診断薬や治療薬がリポソームへ封入された薬剤が得られる。この薬剤も同様な動態を示す。
(調製実施例3)
非特許文献1〜3の記載に従い、シアル酸トランスポーターの欠損した変異型チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であるLec2細胞に、α4GnTとコア2β1,6−N−アセチルグルコサミン転移酵素−I(C2GnT−I)を、可溶化CD43とともに遺伝子導入し、コア2分岐型O−グリカンの非還元末端にα1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基を持つO−グリカンである前記化学式(I)のリガンド基含有化合物を調製した。
リガンド基含有化合物をさらに加えてリポソームのようなコロイド粒子に含有させた薬剤を得ることができる。
なお、薬剤は、調製実施例1または2のように、診断薬や治療薬をコロイド粒子に封入したり付したりした薬剤であってもよい。またリガンド基含有化合物をリポソームのようなコロイド粒子表面へ、吸着や付着等により被覆してもよく、直接または結合性分子を介して化学結合により結合させてもよい。この薬剤も同様に、センチネルリンパ節やリンパ管に特異的に集積する動態を示す。
本発明のリンパ系薬物輸送材は、リンパ系疾患の診断や治療用の薬剤の材料として有用である。また、これを含むリンパ系診断薬剤や治療薬剤は、安全であり、注射剤をはじめ様々な剤型とすることができる汎用性の高いものである。
α1,4−GlcNAc発現AGS細胞とリンパ管内皮細胞との細胞接着性試験の結果を示す写真である。
本発明を適用するリンパ系疾患用薬剤を投与または非投与の足底と膝窩リンパ節との写真である。

Claims (8)

  1. リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞に存在しそれにリンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞を接着させる細胞接着因子のレセプターへ結合し得る、リガンド基含有化合物が、含まれており、その化合物の該リガンド基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基とする非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基であることを特徴とするリンパ系の細胞接着物質。
  2. リガンド基含有化合物が、下記式(I)
    Figure 0004934802
    で示されることを特徴とする請求項に記載のリンパ系の細胞接着物質。
  3. リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞に存在しそれにリンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞を接着させる細胞接着因子のレセプターへ結合し得るリガンド基含有化合物を、含んでおり、その化合物の該リガンド基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基とする非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基であるリンパ系の細胞接着物質と
    診断薬および/または治療薬とが
    コロイド粒子に含有され、該リガンド基含有化合物が該コロイド粒子の表面から露出していることを特徴とするリンパ系薬物輸送材。
  4. 該リガンド基含有化合物が、下記式(I)
    Figure 0004934802
    で示されることを特徴とする請求項3に記載のリンパ系薬物輸送材。
  5. 該コロイド粒子が、リポソーム、金属含有コロイド粒子、生体分解性樹脂コロイド粒子、フチン酸含有コロイド粒子、硫黄コロイド粒子またはタンパク質コロイド粒子であることを特徴とする請求項に記載のリンパ系薬物輸送材。
  6. リンパ管内皮細胞およびセンチネルリンパ節細胞の少なくともいずれかの細胞に存在しそれにリンパ球またはリンパ行性腫瘍細胞を接着させる細胞接着因子のレセプターへ結合し得るリガンド基含有化合物を含んでおり、その化合物の該リガンド基が、α1,4−N−アセチルグルコサミン含有糖鎖基とする非還元末端α1,4−N−アセチルアミノ糖含有糖鎖基であるリンパ系の細胞接着物質と
    診断薬および/または治療薬とが
    コロイド粒子に含有され
    該リガンド基含有化合物が該コロイド粒子の表面から露出しているリンパ系薬物輸送材と、
    該コロイド粒子を分散させる分散液とを
    含んでいることを特徴とするリンパ系疾患用薬剤。
  7. 該リガンド基含有化合物が、下記式(I)
    Figure 0004934802
    で示されることを特徴とする請求項6に記載のリンパ系疾患用薬剤。
  8. 該コロイド粒子が、リポソーム、金属含有コロイド粒子、生体分解性樹脂コロイド粒子、フチン酸含有コロイド粒子、硫黄コロイド粒子またはタンパク質コロイド粒子であることを特徴とする請求項6に記載のリンパ系疾患用薬剤。
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