JP4928611B2 - xDSLシステムにおけるMIMOプリコーディングのためのシステムと方法 - Google Patents

xDSLシステムにおけるMIMOプリコーディングのためのシステムと方法 Download PDF

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Description

[関連出願へのクロスリファレンス]この出願は、2006年8月25日に出願され、シリアル番号第60/823,633を持つ、「下流FEXT緩和のための小変動MIMOプリコーダーSVMP」と題された米国特許仮出願の優先権と恩恵を主張し、その全体を引用によって組み込む。この出願はまた、2006年10月27日に出願され、シリアル番号第60/854,742を持つ、「下流FEXT緩和のための小変動MIMOプリコーダーSVMP」と題された米国特許仮出願の優先権と恩恵を主張し、その全体を引用によって組み込む。この出願はまた、2007年2月22日に出願され、シリアル番号第60/902,764を持つ、「協同的自己FEXT打ち消しのためのオフダイアゴナMIMOプリコーダーODMP」と題された米国特許仮出願の優先権と恩恵を主張し、その全体を引用によって組み込む。この出願はまた、2007年3月14日に出願され、シリアル番号第60/894,847を持つ、「下流DSL自己FEXT打ち消しのための適応的オフダイアゴナMIMOプリコーダー(ODMP)」と題された米国特許仮出願の優先権と恩恵を主張し、その全体を引用によって組み込む。
本開示は、全般的に通信システムに関し、より特定には、xDSLシステムにおける多入力多出力(MIMO)プリコーディングに関する。
近代的通信システムに関連する産業は、インターネットの増え続ける人気によって途轍もない成長を経験してきた。デジタル加入者ライン(xDSL)技術は、高速インターネットアクセスへの需要に応じて近年発達してきた技術である。xDSL技術は、以前から既存の電話システムの通信媒体を利用する。よって、プレインオールド電話システム(POTS)とxDSLシステムの両方は、xDSL対応の顧客建物のために共通のラインを共有する。同様に、時間圧縮多重化(TCM)統合サービスデジタルネットワーク(ISDN)も、xDSLやPOTSと共通のラインを共有できる。
POTSサービスとxDSLサービスは、通信媒体上で利用可能な重複しない周波数帯域上で展開される。POTSサービスとxDSLサービスの間では、クロストークまたはその他の干渉の心配は一般的に殆ど無いが、xDSLとTCM−ISDNはしばしば、利用可能な帯域幅の一部を共有し、これによりxDSLサービスをTCM−ISDNサービスからのクロストークに影響され易くする、あるいはその逆もしかりである。
電気通信の分野では、「クロストーク」という用語は、メッセージチャネルを干渉チャネルと結合するパスを通した一つ以上の他のチャネルからメッセージチャネルに入る干渉を指す。クロストークは、音声システムでの煩雑さやデータシステムでのエラーを作り出すことができる。クロストークが通信ラインに影響を与える度合いは、リスナーの聴覚の鋭敏さ、通信ライン上の外部からのノイズ、結合パスの周波数応答、妨げとなる信号のレベルのようなファクターに部分的に依存する。
一般的には2種類のクロストークのメカニズムがあり、それらの一つは遠端クロストーク(FEXT)、もう一つは近端クロストーク(NEXT)として特徴付けられる。FEXTは妨げられるペアの受信機が、妨げとなるペアの送信機として通信ラインの遠端に位置しているときに起こる電磁的結合を指す。自己FEXTは、一般的には同一のタイムスロットまたは周波数の使用によって生成されるFEXTを指す。
対照的に、NEXTは、妨げとなるソースとして同一の端においてメッセージチャネルに干渉を起こすワイヤペアの一端に接続された妨げとなるソースから起こる。
サービス要求に従った電話ケーブル内のワイヤペアの割り当ては、典型的には実際の構成の正確な記録が殆ど無いペア利用のランダムな分布に結果としてなっていた。(ペア捻り、ケーブル分岐、ケーブル継ぎ合わせ等による)束ねられたケーブルの物理的近さのために、隣接するライン間の電磁的干渉によって引き起こされるクロストークは、しばしば送信環境において支配的なノイズソースである。加えて、ケーブル分岐と継ぎ合わせが行われるケーブルにおけるペア捻りによって、ワイヤペアは、その長さの異なる部分に渡る多くの異なるペアと近接することができる。電話CO(中央オフィス)において、近接するペアは、特に相当異なる長さのペアについて信号レベル(および受信機感度)に相当な違いのある様々な変調方式を使った多様な種類のサービスを搬送し得る。
クロストークは全体の性能に影響を与えるので、FEXTと自己FEXTの両方(NEXTも)はxDSL通信システムにおける問題であり続ける。クロストークに対処する現行のアプローチは、増加された設計コストやコンピューティング資源の非効率な使用のような様々な知覚された欠点によって苦しんでいる。従って、当該産業には上述した欠陥と不十分さに対処するように、これまで対処されてこなかった必要が存在する。
簡潔に述べると、一実施形態は、自己誘導遠端クロストーク(自己FEXT)を打ち消すように、離散マルチトーン(DMT)xDSLシステムで送信するデータをプリコーディングする方法であって、与えられたトーン周波数のための初期オフダイアゴナル多入力多出力(MIMO)プリコーダー(ODMP)を決めるように、xDSLシステム内の複数のN人のユーザに関連する特性を学習することと、複数のN人のユーザについての下流自己FEXTを打ち消すために、初期ODMPから最適ODMPに向けて収束することであって、ここでODMPはオフダイアゴナル項のみをもったゼロ対角行列として表され、ここで最適ODMPに向けて収束することは、与えられたトーン周波数についての複数のN人のユーザのためのチャネル容量を最大化し、プリコーダーがアクティブではない元の送信パワーに対するxDSLシステムの送信パワーの増加を最小化することからなるものと、からなる方法を含む。
他の実施形態は、xDSLシステムにおける複数のユーザについてのシステム性能を増加するプリコーデッド信号を生成するための最適オフダイアゴナル多入力多出力(MIMO)プリコーダー(ODMP)であって、初期ODMPを導出するように、複数のユーザに関連するxDSLシステム内に位置したチャネルの特性を学習するように構成された初期化モジュールと、最小平均2乗(LMS)適応的アルゴリズムを実行することによって、下流自己誘導遠端クロストーク(自己FEXT)を削減するように、初期ODMPから最適ODMPに向けて収束するように構成された追跡モジュールであって、ここでODMPはオフダイアゴナル項のみをもったゼロ対角行列として表され、ここで追跡モジュールは、複数のユーザのためのチャネル容量を最大化し、ここで追跡モジュールはxDSLシステムの送信パワーの増加を最小化するものと、からなるものを含む。
更に他の実施形態は、下流自己誘導クロストーク(自己FEXT)を予め補償するためのxDSLシステムにおけるオフダイアゴナルMIMOプリコーダー(ODMP)であって、初期ODMPを得るように、CPEチャネル特性を学習するように構成された初期化モジュールと、低速フィードバックチャネル上でエラーデータを受け取り最小平均2乗(LMS)適応的アルゴリズムを実行することによって最適ODMPを得るように、ショータイム中に初期ODMPを更新するように構成された追跡モジュールであって、追跡モジュールは更にCPEのためのチャネル容量を最大化するように構成され、追跡モジュールは更にxDSLシステムの送信パワーの増加を最小化するように構成されたものと、新たなCPEをxDSLシステムに追加することと、xDSLシステムから既存のCPEを削除することの一つを行うように構成された増加モジュールと、からなるものを含む。
本開示のその他のシステム、方法、特徴および利点は、以下の図面と詳細な記載の精査によって当業者には明らかであるか明らかになる。そのような追加のシステム、方法、特徴および利点の全てはこの記載内に含まれ、本開示の範囲内であり、添付する請求項によって保護されることが意図されている。
開示の多くの側面は、以下の図面を参照することによってより良く理解できる。図面に示されたコンポーネントは、必ずしも実物大ではなく、代わりに本開示の原理を明確に説明することに強調が置かれている。しかも、図面において、同様の参照符号は対応する部分をいくつかの図を通して示す。
図1Aは、ODMPの実施形態が適用されたxDSLシステムを描いている。 図1Bは、図1Aに示されたODMPの代替的実施形態の様々なコンポーネントを描いている。 図2は、図1Aについて記載された最適ODMPを導出する方法の実施形態のトップレベルダイアグラムを描写している。 図3は、図2に示した方法の実施形態を組み込むのに、どのように低速バックチャネルを使用し得るかを描いている。
本開示の様々な側面をまとめたので、ここで図面に描かれている開示の記載を詳細に参照する。開示はこれらの図面との関係で記載されるが、それをここに開示された実施形態に限定する意図はない。逆に、添付された請求項によって規定される開示の精神と範囲内に含まれる全ての代替物、変形物、等価物を包含することが意図されている。
背景として、国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU−T)によって定められたADSLシステムのための様々な標準がある。一つのADSL標準は、ITU−T勧告G.992.1--「非対称デジタル加入者ライン(ADSL)送受信機」であり、その全体をここに引用によって組み込む。中央オフィス(CO)と顧客建物設備(CPE)との間での実際のデータの送信の前に、二つのエンティティはまず、二つのエンティティを互いに慣れ親しめ、現セッションのための帯域幅能力を同定し、さらに有効なコネクションの確立を容易にするように設計された初期化手順を経なければならない。国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU−T)によって提供されたADSL標準に従うと、これらの初期化手順は以下からなる:1)ハンドシェイク手順、2)送受信機トレーニングセッション、3)チャネル分析セッション、4)交換セッション、そして最後に5)一般的に「ショータイム」と呼ばれる実際のデータ送信セッション。
本発明は、例えばADSLシステム、超高ビットレートxDSL(VDSL)およびVDSL2システムのような、DMTに基づくxDSLシステムに関する。本発明の様々な実施形態は、xDSLモデムのような顧客建物設備(CPE)と、例えばxDSLアクセスマルチプレクサ(DSLAM),xDSLラインカードおよびその他の設備を含み得るCOとの間のxDSLシステムにおけるFEXTおよび自己FEXTの両方の効果を緩和しようとする。ここで使用される命名法のために、「遠端ユーザ」、「ユーザ」、「CPE」という用語は入れ替え可能に使われても良い。更に、当業者には一般的に知られているように、シャノンチャネル容量という用語は、与えられたチャネル上で信頼性をもって送信できる情報の最大量を指す。プリコーディングは、xDSLシステムにおけるクロストークの効果を緩和するのに使われる一つの技術である。本質的には、クロストークによって引き起こされる干渉は、データの送信の前にCOにおいて予め補償される(または打ち消される)。
最終的にシャノンチャネル容量を増加させるとともに、xDSLシステムにおける隣接チャネルからの自己FEXT効果を低減する、オフダイアゴナル多入力多出力プリコーダー(ODMP)の実施形態がここに記載される。さらに、ここに記載されるODMPの実施形態は、システム資源の過大な量を消費することなくFEXTの効果を低減する。ここに記載されるODMPの様々な実施形態は、様々なフェーズを通して協同的な自己FEXT打ち消しを達成する:(a)xDSLのMIMOチャネルおよび/またはMIMOプリコーダーを学習すること;(b)(固定された数のユーザのための)チャネルおよび/またはプリコーダーの小さな変動を追跡すること;(c)システム内で新たなユーザを追加する(または既存のユーザを削除する)ようにODMPを「増加する」こと。これらのステップは、以下の重要な要求を満たしながら果たされることが理解されるべきである:1)自己FEXTの効果を打ち消すまたは最小化するという全体的な目的;2)システムの全体的な送信パワーへの最小の影響;3)計算的に苛酷な行列反転操作を必要としない線形の適応的処理の使用、4)エラーデータを搬送するのに使われるバックチャネル帯域幅の最小化;5)有限の精度に対する強健性を維持しながら最適ODMPに向けた高速な収束の必要性。
ここで図1Aを参照すると、それはODMPの実施形態が適用されるxDSLシステムを描いている。図1Aに示されるように、MIMOxDSLチャネルは、DMTシンボル時間瞬間tと離散周波数qにおける[N、N]行列:
Figure 0004928611
によって表記される。図1Aに描写された非限定的なDMTに基づくxDSLシステムについては、N人の別個のユーザ(またはN組のCPE110a、110B、110c)がある。
Figure 0004928611
という表現は、プリコーディングの前に、N個のQAM下流送信された生シンボルを収集する複素ベクトルを表記する。送信機m、120a、120b、120cについて、DMTシンボル時間瞬間tと離散周波数qにおいて、QAM生シンボルの各々は
Figure 0004928611
と表現される。最後に、ここに記載されるMIMO線形プリコーダー(即ち、ODMP)の実施形態は、[N、N]行列演算子
Figure 0004928611
によって表現される。演算子を組み込むODMPモジュール132は、一般にCO130内に実装される。
上述したように、一般に、COはxDSLアクセスマルチプライヤ(DSLAM),ADSLラインカード140a、140b、140c、およびCPE110a、110b、110cとのインターフェースのためのその他の設備を含み得る。図1Aに示されたDMTに基づくxDSLシステムはさらに、フィードバックデータをCO130まで上流に送り返すのにユーザ(即ち、N組のCPE110a、110b、110c)の各々によって使用される低速バックチャネル160a、160b、160cを含む。各ユーザから送られたフィードバックデータは、最適ODMP
Figure 0004928611
を導出するのに使用され、関数
Figure 0004928611
によって表記される。
既存のアプローチに関連する知覚された欠点の一つは、多数の行列上で行列反転操作を行う必要、または多数の線形システムを組み込む必要であり、これらはどちらも処理がCPE側で行われるかCO側で行われるに拘わらず計算的に苛酷である。さらに、もう一つの知覚された欠点は、システムに新たなユーザを追加するためにプリコーダーを「増加する」ための効率的な手段を欠いていることである。ここに記載される実施形態は、計算的に苛酷な行列反転操作を必要とすることなく線形の適応的処理を組み込むことによってこれらの知覚された欠点に対処する。ここに記載される実施形態はまた、低速バックチャネル上で顧客建物設備(CPE)からCOへエラーが搬送されることを許容するメッセージングプロトコルを提供する。メッセージングプロトコルは、COにおけるMIMOプリコーダーの推定と更新をするのに利用される。
CPEは個別に受信信号の復調を行うので、MIMOxDSLチャネル行列内の対角項は、全てのCPE上で実行される1タップ周波数ドメイン等化器FEQによって、トーン毎の原理で、別々に独立して補償される。ODMPモジュール132の実施形態は、自己FEXTの効果を最小化するプリコーダーを導出するのに、学習、追跡、(新たなユーザの)増加を行う。ODMPモジュール132の例示的実施形態はさらに、全ての遠端ユーザ(CPE)の分配されたシャノン容量を最大化するための最適ODMP関数に向けて収束するコスト削減された(最小平均2乗)LMSに基づくアルゴリズムを組み込む。
ここに記載される適応的アルゴリズムは、エンドユーザから送られたエラーサンプルを利用する。ここに記載されるように、正しい検出と完全な対角等化の仮定の下では、エンドユーザのエラー分散を同時に最小化することは、各ユーザのシャノン容量を最大化する結果となる。xDSLシステムは一般に10−7かそれより良いビットエラーレートで動作し、長さが数千シンボルである学習系列を使用するので、これらの仮定は典型的にはxDSLシステムについて実現可能なものであることに注意すべきである。さらに、ODMPの例示的実施形態は、複素数値のエラーデータの符号化のために16ビット精度を利用する。そのような精度は、0.2dB以下というFEXT無しに近い性能を達成しつつ、わずか150から200回の繰り返しによって適応的方式が定常状態解に収束することを許容することが理解されるべきである。
最後に、ここに記載される実施形態については、協同的FEXT打ち消しのCOに基づく実装において、エラーデータは後続の処理のためにCPEからCOへ渡し戻される。低速バックチャネル160a−cは、エラーデータをCO130に送り戻すのにCPE110a、110b、110cによって利用される。ODMPのためにここに記載される実施形態については、xDSLコネクションがアクティブである間に数秒のオーダーの1000トーンのための(ODMPと関連する)学習フェーズを行うのに、128kbpsだけのオーダーの帯域幅をもったバックチャネルで十分である。これは125ms毎に1000個のODMPの更新を可能とする。
ここで図1Bを参照すると、それは図1Aに示されたODMPモジュール132の代替的実施形態の様々なコンポーネントを描いている。いくつかの実施形態については、ODMPモジュール132は図1AでxDSLシステム130内に位置し、初期化モジュール170、追跡モジュール172、増加モジュール174からなり得る。初期化モジュール170は、初期ODMPを導出するように、COとxDSLシステム内の複数のユーザ110a−cの間に位置するチャネルの特性を学習するように構成されている。追跡モジュール172は、最小平均2乗(LMS)適応的アルゴリズムを実行することによって下流自己FEXTを低減するように、初期ODMP関数から最適ODMP関数に向けて繰り返し的に収束するように構成されている。例示的実施形態では、ODMP関数はオフダイアゴナル項のみをもったゼロ対角行列として表されても良い。さらに、追跡モジュールは、xDSLシステム130の送信パワーをほぼ一定に保ちながら、複数のユーザのために分配されたチャネル容量を最大化する。増加モジュール174は、「ショータイム」の間にxDSLシステムに新たなユーザを追加するのに利用される。他の実施形態では、増加モジュール174は、システム130から既存のユーザを削除するのに利用される。
ここで図2を参照すると、それは下流FEXT緩和のための最適ODMPを導出する方法の実施形態のトップレベルダイアグラムを描写している。ブロック210は学習フェーズで始まり、そこでxDSLシステム内の複数のN人のユーザに関連する特性が「学習」されて、エンド−エンドコネクションが既にショータイムにある間に、与えられたトーン周波数のための初期オフダイアゴナル多入力多出力(MIMO)プリコーダー(ODMP)を決める。次にブロック220で、追跡または収束フェーズが行われ、そこで複数のN人のユーザについて下流自己FEXTを打ち消すために、最適化基準に基づいて最適ODMPが初期ODMPから導出され、ここでODMPはオフダイアゴナル項のみをもったゼロ対角行列として表される。例示的実施形態については、最適化基準は、チャネル容量を最大化することが全てのユーザの自己FEXTを最小化するように与えられたトーン周波数について全てのユーザについてのチャネル容量を最大化することと、xDSLシステムの送信パワーの増加を最小化してODMPを実装することからなる。最後に、ブロック230で、システムに新たなユーザが追加されるときには増加フェーズが行われる。代替的に、ここに記載されるODMPの実施形態はまた、システムから既存のユーザを適応的に削除しても良い。
全ての遠端ユーザのトーン当りの分配されたシャノンチャネル容量を最大化する低複雑度な適応的ODMPを、ここで詳細に記載する。ここに記載されるMIMOxDSLチャネルの「対角支配度」と組み合わされたODMP構造は、送信パワーに無視できる影響をもちながらシャノンチャネル容量を最大化する最適ODMPを導く。ODMPの例示的実施形態については、適応的方式は、計算的に苛酷な性質をもつ行列反転操作を要求しないことに注意すべきである。
ここで使用される命名法のために、以下の表記は次のように理解される:
Figure 0004928611

Figure 0004928611
はそれぞれ、両方ともDMT時間シンボル(tで表記される)におけるトーン(qで表記される)を参照する、Nサイズのコラムベクトルと[N、N]行列を表記する。さらに、シンボル
Figure 0004928611
は、
Figure 0004928611
であるような行列のフローベニウスノームを表記する。図1Aを再度手短に参照すると、それは特定のDMTシンボル時間瞬間tにおける一つの特定の離散周波数トーン
Figure 0004928611
についての協同的下流xDSL自己FEXT打ち消しのためのMIMOプリコーディングの表現を導出するのに使われる様々な表現を描いている。図1Aは、一つの特定のDMT時間シンボルについて一つの特定のトーンを描いている。
ODMPの実施形態は、以下を行うことによって自己FEXTの効果を打ち消す。(図1Aに示された)MIMOxDSL下流チャネル
Figure 0004928611
を通しての送信の前に、N個の下流xDSL送受信機によって送信されたN個のQAM生シンボル(再び、図1Aで表現
Figure 0004928611
によって表記される)を収集するように構成された複素ベクトル
Figure 0004928611
は、
Figure 0004928611
として表されるMIMO線形プリコーディングを経る。遠端ユーザによって受信された信号は従って次の式によって表現され得る:
Figure 0004928611
上記式において、
Figure 0004928611
はユーザによって受信された信号を表す。さらに、
Figure 0004928611
は外部(即ち、他者の)クロストークと背景ノイズの両方を反映したベクトルを表記する。当業者によって知られている通り、ベクトル
Figure 0004928611
はノーマルで円形に分布している。さらに、
Figure 0004928611
はゼロ平均ベクトルであり、それは(外部クロストークがあるときに)空間的に相関していても良いが、定常的仮定を伴った極短xDSLクロストーク時間コヒーレンスは、異なるトーンに跨ってまた異なるDMT時間シンボルに跨って本質的にゼロ相関を導く。簡単に上述した通り、プリコーダーはMIMO演算子であるが、ユーザ(即ち、図1Aに示されるようなN組のCPE)は受信信号
Figure 0004928611
の復調を独立して行うので、エンド−エンドシステムはシステムレベルでは完全なMIMOシステムとして取り扱えないことに注意すべきである。つまり、遠端ユーザは、協同的な様式では動作しない。むしろ受信信号の復調は独立した様式でユーザバイユーザの原理で行われる。よって、ODMPの例示的実施形態については、各遠端ユーザは、フィードバック情報(再び、図1Aで関数
Figure 0004928611
によって表記される)を、数百kbpsのオーダーの帯域幅をもった低速チャネルを介してCOに送信する。COはそれからフィードバックデータを処理して、最適プリコーダーを導出するように学習、追跡および増加機能を行う。いくつかの実施形態はCO中心的な処理を含むが、他の実施形態は、エラーデータの処理が上流に送られるのではなくCPEにおいてローカル的に行われるCPE中心的な処理を含んでも良いことに注意すべきである。
MIMOxDSL下流チャネル
Figure 0004928611
のMIMOチャネル行列はさらに、次の式で表現され得る。
Figure 0004928611
Figure 0004928611
は自己FEXTチャネルを表すゼロ対角行列を表記する。よって、定義により、ゼロ対角行列
Figure 0004928611
はゼロの対角エントリを持ち、次のことが真であり:
Figure 0004928611
、ここで
Figure 0004928611
は対角エントリをゼロにする演算子を表記し、ここでオフダイアゴナル項は不変のままとされる。ここに記載される線形プリコーダーはオフダイアゴナル成分を反映することに注意すべきである。次の式で定義されるODMPはこの特性を反映する:
Figure 0004928611
。この式は、定義により行列
Figure 0004928611
もまたゼロの対角エントリを持ち、次のことが真である:
Figure 0004928611
ので、MIMOプリコーダーのオフダイアゴナルタイプを定義する線形プリコーダーのファミリーを表す。
上記した通り、本発明の実施形態は、xDSLシステムの全体的送信パワーに最小の影響を持つODMPを導出することの要求を含んだ、様々な性能制約を満たそうとする。送信パワーをγと表記すると、更なる計算は、ODMPが実装されたN個の共に位置するxDSL送受信機からの平均送信パワーの相対的変化を反映した、次の表現を導く:
Figure 0004928611
演算子
Figure 0004928611
は再びフローベニウスノームを表す。上記式は、定義により
Figure 0004928611
であるという事実をてこ入れする。よって、ODMPが実装された平均送信パワー
Figure 0004928611
の相対的変化は、オフダイアゴナル行列
Figure 0004928611
が全ての遠端ユーザのシャノン容量を最大化するとすれば、一般的に10−2未満のオーダーである。そのような値(<10−2)はxDSLシステムにおいては無視できると考えられることを、当業者は理解するであろう。従って、全てのエンドユーザの分配されたシャノン容量が最大化されたとすると、対角行列
Figure 0004928611
にはいかなる追加の送信パワー制約も組み込まれてはならないことにさらに注意すべきである。また全ての共に位置するxDSL送信機は、
Figure 0004928611
で表記される同じ下流パワーを放出し、これは
Figure 0004928611
の関係を導く。
よって、ODMPが実装された「プリコーデッド」MIMO−DSLチャネル(
Figure 0004928611
で表記される)は次の式によって表現できる:
Figure 0004928611
上記式は等価なMIMOチャネルが2つのサブMIMOチャネルに細分されることを描いている。第一のサブMIMOチャネルは「FEXT無し」対角行列である。第二のサブMIMOチャネルはオフダイアゴナルな性質をもち、自己誘導FEXTを反映する。
ここに記載される様々な実施形態は、FEXTの効果を緩和することによって下流の分配されたシャノンチャネル容量を最大化しようとする。シャノン下流チャネル容量は、パラメータ
Figure 0004928611
によって表現され得る。ODMPが存在するときに遠端ユーザ
Figure 0004928611
によって経験される下流容量は、次の式によって与えられる:
Figure 0004928611
ここで項
Figure 0004928611
(それぞれ
Figure 0004928611
)は行列
Figure 0004928611
(それぞれ行列
Figure 0004928611
)の行
Figure 0004928611
を表記し、項
Figure 0004928611
は受信機mによって経験された外部および背景ノイズからのパワーを表す。前述したように、遠端ユーザは受信信号の共同の復調を行わないので、エンドユーザは受信信号を協同的に復調しないため、自己誘導FEXTの効果を緩和するための最適化基準として完全なMIMOシャノン容量を使うことはできない。むしろ、ODMPの例示的実施形態は、個別の下流チャネルの各々のチャネル容量を独立して最大化することによって自己誘導FEXTを緩和する。
全ての遠端ユーザのチャネル容量を最大化する(そして最終的に自己FEXTの効果を最小化する)ODMP方式は次の関係によって定義されることが証明されている:
Figure 0004928611
行列
Figure 0004928611
はN個の行ベクトル
Figure 0004928611
の連結を表記する。N個の行ベクトル
Figure 0004928611
の各々は、受信機mに誘導されるFEXTを引き起こすN−1個のソースをプリコードする。エンドユーザは協同しない(即ち、受信信号の共同の復調を行わない)ので、行ベクトル
Figure 0004928611
を通したサーチが行われて、全てのエンドユーザの容量
Figure 0004928611
を最大化するソースを見つける。次に、最適ベクトルは、次の操作に反映されるように同時に容量の複素勾配をゼロにする:
Figure 0004928611
次に、複素勾配がシャノン容量
Figure 0004928611
に適用される。両方の行列
Figure 0004928611

Figure 0004928611
のオフダイアゴナルな特徴のために、行ベクトル
Figure 0004928611
と複素スカラー
Figure 0004928611

Figure 0004928611
の成分に依存しないことに注意すべきである。最適ベクトルのためのN個の関係は:
Figure 0004928611
として導出される。
次に、この式をシャノン容量表現に適用することは、自己誘導FEXT成分の打ち消しに結果としてなり、それによりプリコーデッドチャネルの与えられた容量(
Figure 0004928611
により表記される)についてのFEXTを除去する。よって、FEXTの効果が除去された最大容量は次の表現によって表される:
Figure 0004928611
さらに、もし最適ODMP
Figure 0004928611
、式6の解が、簡単のために行列
Figure 0004928611
に等しいその「一次近似」によって置き換えられるならば、性能損失を招く。
Figure 0004928611
で表記されるSNRの関連する変化は以下によって表される:
Figure 0004928611
SNRの損失はよって以下によって表され得る:
Figure 0004928611
式11において、ρは行列
Figure 0004928611
のフローベニウスノームの上限を表す。パラメータρは一般的には、VDSLシステムの展開範囲内の周波数の幅広いレンジについて単位値よりも相当小さい。前述したように、送信パワーの相対的変化は無視できるものであることに注意すべきである。プリコーディングを実装した平均送信パワーは:
Figure 0004928611
として表現される。
非限定的な例として、1000フィートの結合距離において3MHzで動作している25ペアのバインダーをもつxDSLシステムを考えてみる。これらの動作パラメータについて、パラメータρの典型的な値は99%の場合に約2×10−1である。上記式を適用することは、ODMPの様々な実施形態を実装することの結果としての相対的送信パワーの変化は実際展開シナリオの99%において10−2未満であることを明らかにする。このように、ODMPの実施形態は、ODMPが組み込まれたシステムの全体の送信パワーへの影響を最小化するという目的を満たす。
ここに記載されるODMPの様々な実施形態については、ODMPはチャネルの各々の容量を最大化するだけでなく、遠端における個別のチャネルの各々に関連するエラーの分散も最小化することを理解すべきである。これは、xDSLモデムが動作する極めて低いビットエラーレート(BER)とxDSLラインに典型的な高レベルの安定性が与えられれば、一般的に真である。さらに前述したように、計算が分散されたやり方で行われるCPE−CO共有処理方式のために様々な実施形態が提供されても良いことに注意すべきである。非限定的な例として、ODMPパラメータを生成するように個別のCPEの各々においてエラーデータを処理しても良く、これはそれからプリコーディングを行うようにCOまで上流に渡されても良い。いくつかの実施形態については、CPEはCOまで低帯域幅チャネル上でデータを送信しても良い。
ODMP方式の一部として、CPEから渡されたエラーデータに基づいて適応的アルゴリズムが行われる。適応的アルゴリズムを実行することは、与えられたxDSLシステムのための最適ODMPを導出ために行われる推定、追跡および増加を許容する。適応的アルゴリズムの一部として、初期化プロセスが最初に行われる。適応的アルゴリズムは、
Figure 0004928611
として表現される一次ODMPの最大尤度(ML)推定でもって初期化される。適応的方式は古典的な最小平均2乗(LMS)確率論的勾配アプローチに従う。初期化は、ノーマルデータモードで、プリコーディングを動作可とせずに行われる。この初期化フェーズにおけるプリコーディングの不在は
Figure 0004928611
によって反映される。一次ODMPベクトルのML推定はそれから次のように導出することができる:
Figure 0004928611
式13において、
Figure 0004928611
は、チャネルmに自己FEXTを引き起こすN−1個のチャネルから送信されたN−1個の下流QAMシンボルを収集する、N−1のサイズのベクトルを表記する。これは学習フェーズから結果として得られる初期ODMPを反映する。この初期ODMPは、エラーサンプルと送信QAMシンボルの間の単なる相互相関を反映することに注意すべきである。
次に、適応的アルゴリズムはデータモードで動作するが、今回はプリコーディング(ODMP)を動作可としてである。適応的方式の一時的フェーズは学習フェーズを完了するとともに、方式は後に最適ODMPを追跡および増加するようにてこ入れできる。適応的処理が行われている間、エラーデータは:
Figure 0004928611
と表現される。
上記式において、tは現在時間瞬間を表し、t’は前回の更新時間瞬間を表す。適応的方式の導出は、全ての受信機
Figure 0004928611
についての
Figure 0004928611
に対する、上記式中で与えられたエラー
Figure 0004928611
の2乗絶対値の勾配の計算に基づいている。この方法論は古典的な瞬間的確率論的勾配アプローチに基づく。上記エラー式によって、(2つの行列
Figure 0004928611

Figure 0004928611
のオフダイアゴナルな構造のために)行ベクトル
Figure 0004928611
と複素スカラー
Figure 0004928611
の両方が
Figure 0004928611
の成分に依存しないという事実は、計算が大幅に簡素化されたことを意味する。事実、上記式はいかなる行列反転も要求せず:
Figure 0004928611
で表現されるエラーとFEXTディスターバーの間の瞬間的相関に比例する。
上記式は全ての受信機
Figure 0004928611
についてのベクトル
Figure 0004928611
の次の同時帰納的更新を導く:
Figure 0004928611
上述した通り、適応的アルゴリズムは:
Figure 0004928611
で表現される一次ODMPのML推定に基づいた初期化を行う。
最後に、上記式によって記載されたN個の同時LMSアルゴリズムは、FEXTを除去するとともにプリコーデッドチャネルについて最大容量を提供する最適ODMP解に向けて収束する。さらに、上記の適応的アルゴリズムは、それが各受信機
Figure 0004928611
について2×(N−1)個の複素乗算操作のみを要求するという意味で線形の複雑度を提示することが理解されるべきである。
ODMPの実施形態は、新たなユーザを追加しても良いようにODMPの非中断的な増加を提供することを理解すべきである。一般的に、xDSLシステム内での新たなチャネルの追加は、既存のチャネルを削除するよりも挑戦的であることが当業者には理解されるであろう。追跡フェーズの間、MIMOプリコーダーのサイズは変化しない。つまり、チャネルのゆっくりとした変動に追随するために固定された数のオフダイアゴナル成分が更新される。新たなユーザが追加された時には、しかし、MIMO−DSLチャネルのサイズは大きくなる。さらに、自己FEXTプリコーダーの数が増加する。
非限定的な例として、以下はシステムに単一のユーザが追加されるプロセスを記載する。同じ方式が、複数の新たなユーザを追加するように拡張され得ることに注意すべきである。いくつかの実施形態については、新たなユーザの追加はデータモードで動作中に行われ、これにより既存のN人のユーザは[N、N]次元ODMP
Figure 0004928611
から恩恵を受ける。新たなユーザが追加される時には、ネットワークマネージメントがCOにおける協同的な自己FEXTデバイスに、インデックスN+1で表記される新たなユーザが
Figure 0004928611
において起動されたことを知らせる。よって、この時点で、ODMPは新たなユーザを収容するように増加される。時間
Figure 0004928611

Figure 0004928611
の間に、増加されたODMPは初期化され、そしてML推定に基づいて増加され
る。最後に、時間
Figure 0004928611
において、LMSが追跡の目的で起動される。よって、増加プロセスは、初期化と新たなユーザの適応という2ステップのプロセスとして要約することができる。
新たなユーザの起動の後に時間
Figure 0004928611
の間に以下のステップが行われる。[N+1、N+1]ODPM
Figure 0004928611
はまず初期化され、N+1で表される新たなユーザを反映する。初期化の後、
Figure 0004928611
の推定を完了するように、また追跡フェーズに入るために、適応的アルゴリズムが行われる。初期化と
Figure 0004928611
の学習フェーズの完了の両方の間に、新たなユーザN+1のパワーは:
Figure 0004928611
で表現することができる傾斜したパターンに従っても良い。
新たなユーザN+1に関連する送信パワーの着実な増加は、新たなユーザの学習やプリコーディングがまだ行われていないにも拘わらず、他の既存のユーザへの影響を最小化することに注意すべきである。
Figure 0004928611
における完全な学習フェーズの終りにおいて、新たなユーザN+1は、同じサービスを提供している他のCOポートと同じパワー、
Figure 0004928611
を送信する。
Figure 0004928611
は、その一次近似(即ち、
Figure 0004928611
)のML推定でもって初期化される。下記式で明らかにされる行列
Figure 0004928611
の率直な「蓄積性質」は、初期化を大幅に容易にする、
Figure 0004928611
事実、上記式に表示される通り、新たなユーザの突然の発生は、2N個の新たな相互結合係数だけの推定を要求する、
Figure 0004928611
(ベクトル
Figure 0004928611
の成分)および
Figure 0004928611
(ベクトル
Figure 0004928611
の成分)。
第一の組
Figure 0004928611
は新たなユーザから既存のユーザへのFEXT干渉を反映する一方、第二の組
Figure 0004928611
は新たなユーザへ既存のユーザによって生成されるFEXT干渉を表現する。新たなユーザN+1についてのプリコーディングはまだ行われていないので、N人の既存のユーザの進行中のプリコーダー
Figure 0004928611
は、ユーザN+1から既存のユーザへ発する実際の相互FEXTチャネルを変更しない。従って、係数
Figure 0004928611
のML推定は:
Figure 0004928611
で表現され得る。
上記式において、項
Figure 0004928611
は、トーンqとDMT時間シンボル
Figure 0004928611
についてのユーザN+1からの下流送信シンボルを表記する。さらに、項
Figure 0004928611
は、新たなユーザN+1の起動時間
Figure 0004928611
に対するT個のDMT時間シンボルの増分を表記する。係数
Figure 0004928611
の推定は:
Figure 0004928611
となるようにプリコーダー
Figure 0004928611
の補償を要求する。
上記式において、項
Figure 0004928611
は、
Figure 0004928611
として計算することができ、ユーザN+1の貢献が除去されたサイズNの正規化ベクトルである。更に、項
Figure 0004928611
は、行列
Figure 0004928611
についてのあらゆる種類の「参照」を反映する。この参照は、元の値
Figure 0004928611
、最終の値
Figure 0004928611
、平均などであることができる。行列
Figure 0004928611
の小さな変動性質のために、上記式21に出てくる行列反転
Figure 0004928611
は、以下の行列;
Figure 0004928611
によって効率的に置き換えることができる。
Figure 0004928611
の初期化は:
Figure 0004928611
と表現され得る。
行列
Figure 0004928611
の行ベクトルへの後続の更新は上記式16から導出され、以下のものを生じる:
Figure 0004928611
上記式において、ベクトル
Figure 0004928611

Figure 0004928611
の両方はここでNに等しいサイズを持つことに注意すべきである。最後に、上述したステップは単一の新たなユーザの追加に関するものであるが、多数のユーザが追加されても良い。
ここで図3を参照すると、それは図2に示された方法の実施形態を組み込むのにどのように低速バックチャネルを使用し得るかを描いている。詳細には、図3は、エラーフィードバックデータについての様々な精度に渡る26AWG上の1kftのループ長におけるQAMトーン#696(3MHz)についての下流SNRのゲインを反映したシミュレーション結果を提示する。図3に示されたシミュレーション結果については、送信パワースペクトル密度(PSD)は、バンドプラン998を反映して−60dBm/Hzで平坦である。参照状況はプリコーディングの無いデータモードを反映する。トーン#696の参照生SNRは43dBに等しい。理想的な条件は、FEXT無しのプリコーデッドチャネルを指す。SNRの理想的ゲインは、理想条件下のSNRとプリコーダーが使われない時に得られたSNR(図3に43dBとして示される)との間の差(dBで測定される)から導出される。理想的SNRゲインは23.4dBに等しい。
図3は、ODMP
Figure 0004928611
の使用を描いており、ここで
Figure 0004928611
は式16、17に基づいている。LMSアルゴリズムはT回の平均または繰り返しの後に得られる(または収束する)ML値でもって初期化される。この収束方式はML(T)−LMS(K)によって表記され、ここでKはLMS更新方式の繰り返し回数を表す。実用的な状況におけるSNRゲインは、規則的な精度またはエラーの実部と複素部をコード化する小さなビット数b(即ち、複素数エラーをコード化する(2xb)ビット)を仮定して評価しても良い。命名法のために、実用的なSNRゲインはPG−SNR(b、T、K)によって表記される。
図3は、T=50平均についての学習フェーズの後の追跡フェーズ中のLMS繰り返し回数Kに対する次の4つの実用的SNRゲインを表示している:
PG−SNR(b=6、T=50、K)
PG−SNR(b=8、T=50、K)
PG−SNR(b=16、T=50、K)
PG−SNR(b=64、T=50、K)
学習フェーズはプリコーダーがアクティブでない「ショータイム」の間に行われる一方、追跡フェーズはプリコーダーをアクティブにして行われる。図3に示された4つのSNR図形は、エラーについての4つの異なる精度レベル、つまりb=6ビット、b=8ビット、b=16ビット(全て固定小数点フォーマットで)、およびb=64ビット、を反映している。23.4dBの理想的SNRゲインは、図3に示された水平ラインによって表記される。
図3の検討は、50ポイントだけに基づいた学習フェーズを行った後に、64ビット、16ビット、および8ビットのエラー精度レベルを利用しながら、約14dBのSNRのゲインを達成することが可能であることを明らかにする。さらに、6ビットのエラー精度レベルを利用しながら、約13.2dBのSNRのゲインを達成することができる。よって、エラーフィードバックデータについてわずか8ビットの精度を利用することは、16ビットや64ビットものエラー精度を利用する時と同じSNRゲインを生じることに注意すべきである。
学習フェーズの後、ODMPプリコーダーの実施形態に基づいたFEXTの打ち消しが可能とされ、クロスチャネル「学習」値によって初期化されたLMS方式を使って追跡フェーズが始まる。図3に示されるように、ここに記載されるODMPの実施形態のために利用されるLMS方式は、あらゆる精度レベルについても高速な収束を示すことにさらに注意すべきである。図3に示されるように、LMS方式は4つのエラー精度レベル(6ビット、8ビット、16ビット、64ビット)の全てについて約200回の繰り返しで定常状態に向けて収束する。さらに、8ビット、16ビット、64ビットのエラー精度レベルの使用は、LMS方式がFEXT無しの性能(即ち、理想的条件)に0.2dBまで近くに収束することを許容する。よって、ODMPの例示的実施形態については、適応的ODMP収束を達成するのにわずか3200ビットのエラーデータが要求される。3200ビットは、他の従来のアプローチのために要求されるビット数のほんの一部分であることが当業者には理解されるであろう。
COに基づく処理についての学習および追跡フェーズの収束時間に関しては、各エラーサンプルが16ビット(実部と複素部の各々について8ビット)を含み、各DMTシンボルが2トーンのエラーサンプルを搬送できるように250μsecの増分でエラーサンプルが送信される、DMTシンボル毎の原理でバックチャネルが動作することが仮定されている。これらの仮定に基づいて、1トーンについてのML学習フェーズの下で50個の平均サンプルを行うのに合計でわずか6.25msが必要となる(即ち、1000トーンについて6.25秒)。追跡フェーズについては、1000トーンについて200回のLMS繰り返しを行うのに必要となる収束時間は25秒である。
学習フェーズは、システムの初期化にあたって1回だけ行われることに注意すべきである。一旦システムが追跡フェーズに入ると、もしユーザが追加されたり削除されたりしても、システムは学習フェーズに再度入る必要はない。さらに、システムはプリコーダーが動作可とされた「ショータイム」に留まることに注意すべきである。
上述した実施形態は、可能な実装の単なる例であることが強調されるべきである。本開示の原理からはずれることなく上述した実施形態に多くの変形や変更を行っても良い。さらに、ここに論じられた実施形態は、一つ以上の異なる装置に実装され(および/または関連付けされ)ても良いことが強調されるべきである。より詳細には、特定の構成によって、ここに記載されたODMPの実施形態はあらゆるxDSLモデム、xDSLアクセスマルチプレクサ(DSLAM)のようなCO設備、xDSLラインカード、およびその他の設備に実装されても良い。そのような変更や変形の全ては、ここにこの開示の範囲内に含まれ、以下の請求項によって保護されることが意図されている。

Claims (20)

  1. 自己誘導遠端クロストーク(自己FEXT)を打ち消すように、離散マルチトーン(DMT)xDSLシステムで送信するデータをプリコーディングする方法であって、
    いずれか一つのトーン周波数のための初期オフダイアゴナル多入力多出力(MIMO)プリコーダー(ODMP)を決めるように、xDSLシステム内の複数のN人のユーザに関連するデータ通信チャネルの特性を、多入力多出力(MIMO)プリコーダー(ODMP)において、学習することと、
    複数のN人のユーザについての下流自己FEXTを打ち消すために、初期ODMPから最適ODMPに向けて収束することであって、ここでODMPはオフダイアゴナル項のみをもったゼロ対角行列として表され、ここで最適ODMPに向けて収束することは、
    いずれか一つのトーン周波数についての複数のN人のユーザのためのチャネル容量を最大化し、
    元の送信パワーはプリコーダーがアクティブではない時に使われた送信パワーであり、
    元の送信パワーに対するxDSLシステムの送信パワーの増加を最小化することを含むものと、
    を含む方法。
  2. 全てのユーザのためのチャネル容量を最大化することは、複数のユーザに関連するエラーデータの分散を最小化することに結果としてなる、請求項1の方法。
  3. 学習は、実際のデータ送信セッション中にODMPを動作不可として行われる、請求項1の方法。
  4. 収束は、実際のデータ送信セッション中にODMPを動作可として行われる、請求項1の方法。
  5. 初期ODMPは、中央オフィス(COから送信されたデータと各ユーザmについての送信されたデータに関連するエラーとの間の相互相関係数であり、相互相関係数は、ユーザm以外の全てのユーザからのFEXTを考慮するように計算され、
    Figure 0004928611
    である、請求項1の方法。
  6. 最適ODMPに向けて収束することは更に、ODMPが動作可とされている間に最小平均2乗(LMS)適応的アルゴリズムを実行することを含む、LMS適応的アルゴリズムは以下により表され、
    Figure 0004928611
    ここでmはチャネルを表し、
    Figure 0004928611
    はゼロ対角行列から導出された、チャネルmに誘導されるFEXTを引き起こすN−1個のソースをプリコードするベクトルを表し、μ[t]は複素スカラーを表し、
    Figure 0004928611
    はエラー関数を表し、
    Figure 0004928611
    はチャネルmへの自己FEXTを引き起こすN−1個のチャネルから送信されるN−1個の下流QAMシンボルを収集するN−1のサイズのベクトルを示し、
    ここでLMS適応的アルゴリズムは最適ODMPを表し、
    ここで各ユーザについて2(N−1)個の複素乗算のみが行われる、請求項1の方法。
  7. 最適ODMPに向けて収束することは更に、ユーザから中央オフィス(CO)においてエラーデータを受け取ることからなり、
    ここでエラーデータは、COにおいてODMPを適応的に更新して最適ODMPに向けて収束するようにCOによって使われ、
    ここでODMPを計算することは行列反転操作無しで行われる、請求項6の方法。
  8. COは、約128kbpsの帯域幅をもつ低速バックチャネルを介して、ユーザからのエラーデータを受け取る、請求項7の方法。
  9. エラーデータは、16ビット精度に基づいている、請求項7の方法。
  10. 最適ODMPに向けて収束することは、N人のユーザの各々についてエラーデータを処理し2乗(LMS)適応的アルゴリズムを行うことを含む、請求項6の方法。
  11. xDSLシステムに新たなユーザを追加するように、ODMPを増加すること更に含む、請求項1の方法。
  12. 増加することは、
    相互結合係数の第一の組
    Figure 0004928611
    と相互結合係数の第二の組
    Figure 0004928611
    からなる2N個の新たな相互結合係数を推定することであって、ここで第一の組は既存のユーザへの新たなユーザからのFEXTを反映し、ここで第二の組は新たなユーザへの既存のユーザからのFEXTを反映し、ここで2N個の新たな相互結合係数を推定することは以下の表現:
    Figure 0004928611
    に従って行われ、ここで
    Figure 0004928611
    は第一の組の相互結合係数の最大尤度(ML)推定を表し、
    Figure 0004928611
    はエラー関数を表し、mはチャネルを表し、
    Figure 0004928611
    は新たなユーザN+1の起動時間を表し、
    Figure 0004928611

    Figure 0004928611
    に対するT個のDMT時間シンボルの増分を表し、
    Figure 0004928611
    はトーンqとDMT時間シンボル
    Figure 0004928611
    についてのユーザN+1からの下流送信シンボルを表し、
    Figure 0004928611
    は第二の組の相互結合係数の最大尤度(ML)推定を表し、
    Figure 0004928611
    はユーザN+1の貢献が除去されたサイズNの正規化ベクトルを表し、
    Figure 0004928611
    は単位ベクトルを表し、
    Figure 0004928611
    は行列
    Figure 0004928611
    についてのあらゆる種類の参照を表すものと、
    既存のユーザへの影響を限定することであって、ここで新たなユーザについてのパワーは、既存のユーザによって経験されるSNR(信号対雑音比)の変化が最小値に限定されるように最適化された漸増プロファイルに従い、ここで最大値はxDSLシステムの予め決められたマージンと等しいものと、
    を含む請求項11の方法。
  13. xDSLシステムにおける複数のユーザについてのシステム性能を増加するプリコーデッド信号を生成するための最適オフダイアゴナル多入力多出力(MIMO)プリコーダー(ODMP)であって、
    初期ODMPを導出するように、複数のユーザに関連するxDSLシステム内に位置したチャネルの特性を学習するように構成された初期化モジュールと、
    最小平均2乗(LMS)適応的アルゴリズムを実行することによって、下流自己誘導遠端クロストーク(自己FEXT)を削減するように、初期ODMPから最適ODMPに向けて収束するように構成された追跡モジュールであって、ここでODMPはオフダイアゴナル項のみをもったゼロ対角行列として表され、ここで追跡モジュールは、複数のユーザのためのチャネル容量を最大化し、ここで追跡モジュールはxDSLシステムの送信パワーの増加を最小化するものと、
    を含むODMP
  14. 追跡モジュールは、複数のユーザの各々に関連するエラーデータの分散を最小化することに結果としてなるように、複数のユーザのためのチャネル容量を最大化する、請求項13のODMP
  15. 初期化モジュールは、ショータイム中にODMPを動作不可としてチャネルの特性を学習する、請求項13のODMP
  16. 追跡モジュールは更に、複数のユーザの各々からエラーデータを受け取るように構成され、
    ここでエラーデータは、更新されたODMPを計算するのに使われ、
    ここで更新されたODMPを計算することは行列反転操作無しで行われる、請求項13のODMP
  17. 追跡モジュールは、約128kbpsの帯域幅をもつ低速バックチャネルを介して、複数のユーザからのエラーデータを受け取る、請求項16のODMP
  18. エラーデータは、16ビット精度に基づいている、請求項16のODMP
  19. ショータイム中にxDSLシステムに新たなユーザを追加するように構成された増加モジュールから更になる、請求項13のODMP
  20. 下流自己誘導クロストーク(自己FEXT)を予め補償するためのxDSLシステムにおけるオフダイアゴナルMIMOプリコーダー(ODMP)であって、
    初期ODMPを得るように、顧客建物設備(CPEチャネル特性を学習するように構成された初期化モジュールと、
    低速フィードバックチャネル上でエラーデータを受け取り最小平均2乗(LMS)適応的アルゴリズムを実行することによって最適ODMPを得るように、実際のデータ送信セッション中に初期ODMPを更新するように構成された追跡モジュールであって、追跡モジュールは更にCPEのためのチャネル容量を最大化するように構成され、追跡モジュールは更にxDSLシステムの送信パワーの増加を最小化するように構成されたものと、
    新たなCPEをxDSLシステムに追加することと、xDSLシステムから既存のCPEを削除することの一つを行うように構成された増加モジュールと、
    からなるODMP
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