JP4925128B2 - 有機ナノチューブの化学的分解方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1では、多孔性アパタイト誘導体にヒト成長ホルモンおよび水溶性2価金属化合物を含有させることにより、生体内分解性および徐放性能を併せ持つヒト成長ホルモンの徐放性微粒子製剤が得られることが報告されている。
また、特許文献2では、難水溶性の抗腫瘍などの医薬化合物を包接したシクロデキストリンをさらに球状分子集合体の内水相に被包したリポソームと、その医薬化合物の徐放性が報告されている。
例えば、特許文献3には、糖脂質を有機溶媒中で再沈殿させることにより、カーボンナノチューブに代表される無機ナノチューブにはない特性を持ち、且つシクロデキストリンより約10倍以上大きい内径と高い軸比を持ち、固相状態にある脂質膜構造からなる中空繊維状有機ナノチューブを簡便且つ大量に合成し、その中空シリンダー内に毛細管現象を利用して金属ナノ粒子やタンパク質を導入したことが記載されている。また、特許文献4では、ペプチド脂質を用いて同様の性質をもつ中空繊維状有機ナノチューブを簡便且つ大量に合成したことが記載されている。
これに対して、リポソームは、物理的、化学的な刺激による放出が容易に可能であるが、リポソームを構成する脂質膜構造が液晶相にあるため、固相状態にある脂質膜構造からなる有機ナノチューブに比べて安定性が低く、材料としての適用範囲が限定される。
しかしながらこのような物理的な刺激を作用させることが困難な状況下での応用を想定した場合、安全で、かつ広範に利用できる化学的な分解法の開発が望まれる。
例えば、非特許文献1では、フォスファチジルコリンは、水中で球状分子集合体(リポソーム)を形成するが、コレステロールが混在すると、この球状構造がナノチューブで接続された組織化体を形成すること、ここにβ−シクロデキストリンを加えると、シクロデキストリンがコレステロールを包接し、ナノチューブが消失して、球状分子集合体のみになることが報告されている。
また、非特許文献2では、ピレニル基を含む両親媒性化合物は、水中で自己集合して直径約250nmのベシクルを形成すること、この分散液にγ−シクロデキストリンを加え、超音波を照射するとγ−シクロデキストリンがピレニル基を包接し、集合体構造が内径22nm外径45nmのナノチューブに変化すること、さらにγ−シクロデキストリンとより安定な包接錯体を形成するポリプロピレングリコールをナノチューブ分散液に加えるとゲスト交換が起き、再びベシクル構造へと変化することが報告されている。
しかしながら、これらの文献には、それらのナノチューブの内包化能については報告がされていない。
例えば、非特許文献3には、α、β、γ−シクロデキストリンによる油性物質の包接を検討したところ、α−シクロデキストリンは直鎖脂肪酸を選択的に包接し、β−シクロデキストリンはコレステロールに対して高い包接選択性を示し、γ−シクロデキストリンは脂肪酸、コレステロールともに包接するが、包接による安定化の寄与が小さく包接量は全体的に少なかったことが報告されている。
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
(1)下記一般式(1)
G−NHCO−R1 (1)
(式中、Gは糖のアノマー炭素原子に結合するヘミアセタール水酸基を除いた糖残基を表し、R1は炭素数が10〜39の不飽和炭化水素基を表す。)で表わされるN−グリコシド型糖脂質、又は
下記一般式(2)
R2CO(NH−CHR3−CO)mOH (2)
(式中、R2は炭素数6〜24の炭化水素基、R3はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質、又は
下記一般式(3)
H(NH−CHR3−CO)mNHR2 (3)
(式中、R2は炭素数6〜24の炭化水素基、R3はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質
のいずれかからなる両親媒性化合物の分子が集合して形成された有機ナノチューブに、シクロデキストリンを添加することにより、該有機ナノチューブのチューブ構造を化学的に分解する方法。
(2)前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンのいずれかである(1)に記載の方法。
(3)前記シクロデキストリンの添加量が、有機ナノチューブを形成する両親媒性化合物に対して、1当量以上である(1)又は(2)に記載の方法。
本発明において、シクロデキストリンの添加によりチューブ構造が分解されるのは、本発明の有機ナノチューブが、脂肪酸由来の分子構造を含むため、シクロデキストリンの添加により脂肪酸部位が包接されて、その集合形態が変化することによるものと考えられる。
両親媒性化合物における疎水基としては、直鎖又は分岐型の飽和もしくは不飽和アルキル基が挙げられる。また、親水基としては、単糖、オリゴ糖及びその類縁体、アミノ酸、及びオリゴペプチドやその類縁体などが挙げられるが、特に、両親媒性化合物として、
下記一般式(1)
G−NHCO−R1 (1)
(式中、Gは糖のアノマー炭素原子に結合するヘミアセタール水酸基を除いた糖残基を表し、R1は炭素数が10〜39の不飽和炭化水素基を表す。)で表わされるN−グリコシド型糖脂質、又は
下記一般式(2)
R2CO(NH−CHR3−CO)mOH (2)
(式中、R2は炭素数6〜24の炭化水素基、R3はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質、又は
下記一般式(3)
H(NH−CHR3−CO)mNHR2 (3)
(式中、R2は炭素数6〜24の炭化水素基、R3はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質が、好ましく用いられる。
(実施例1)
下記の構造式1に示す糖脂質分子から形成した有機ナノチューブ(I)(22mg、糖脂質0.05mmol)に、それぞれ、1当量(48.6mg)、2当量(97.3mg)、4当量(194.6mg)、及び8当量(389.2mg)のα−シクロデキストリン(α−CD)水溶液を加え、さらに水を最終液量が4mLとなるようにそれぞれ添加し、タッチミキサーで5分間撹拌した。この混合物を異なる時間(10分、24時間、4日)静置した後、遠心処理(4000回転、30分)を行い、残渣に水4mLを加え5分間撹拌した。再度30分間の遠心処理を行い、残渣を凍結乾燥して粉末状のサンプルを得た。このサンプルについて重量を秤量し、電界放出型走査型電子顕微鏡観(FE−SEM)による形態観察をし、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)、粉末X線回折(XRD)測定をおこなった。
図1ないし図4は、各サンプルの24時間静置で得られた集合体のFE−SEM写真である。
これらの写真から明らかなように、α−CDの添加によってナノチューブ構造から板状構造に変換されていることが観察された。ナノチューブと板状集合体の割合はα−CDの増加にともない板状構造が増加し、4当量以上、24時間でナノチューブが完全に消失した。また板状集合体は、糖脂質とα−CDがおよそ1:2.7の組成を有し、またXRDから複合体固体中の分子配列は、α−CD及び有機ナノチューブ(I)単体とは異なることが分かった。
β−シクロデキストリン(β−CD)水溶液(600mg/40mL)に、40mg、80mg、及び160mgの有機ナノチューブ(I)を加え、タッチミキサーで5分間撹拌した。この混合物を異なる時間(24時間、4日間)静置した。その後遠心処理(4000回転、60分)を行い、上澄み液を除去した後、残渣に水を40mL加え、再度同様の遠心処理を行い、残渣を凍結乾燥して粉末状のサンプルを得た。このサンプルについて重量を秤量し、FE−SEMによる形態観察をし、1H−NMR、XRD測定をおこなった。
図5ないし図7は、各サンプルの、24時間静置で得られた集合体のFE−SEM写真である。
これらの写真から明らかなように、24時間後のサンプルはナノチューブと板状構造の混合物であったが、4日後のサンプル中に残留するナノチューブはわずかであった。また添加する有機ナノチューブ(I)の量の増加とともに残留するナノチューブ構造の割合が減少した。
γ−シクロデキストリン(γ―CD)水溶液(130mg/4mL、260mg/4mL、520mg/4mL、及び1040mg/5mL)を調製し、有機ナノチューブ(I)(44.4mg)に加えてタッチミキサーで5分間撹拌した。この混合物を10分もしくは24時間静置した。その後遠心処理(4000回転、30分)を行い、上澄み液を除去した後、残渣に水を4mL加え、再度同様の遠心処理を行い、残渣を凍結乾燥して粉末状のサンプルを得た。このサンプルについて重量を秤量し、FE−SEMによる形態観察、1H−NMR、XRD測定をおこなった。
図8ないし図10は、それぞれ、濃度260mg/4mLのサンプルの10分間静置で得られた集合体、濃度520mg/4mLのサンプルの10分間静置で得られた集合体、及び濃度1040mg/5mLのサンプルの24時間静置で得られた集合体のFE−SEM写真である。
これらの写真から明らかなように、γ−CD濃度が130mg/4mL、及び260mg/4mLの場合、回収重量は若干減少し、ほぼナノチューブのみであった。γ−CD濃度が520mg/4mLの場合、回収固体はナノチューブ構造と板状構造体の混合物であった。γ=CD濃度が1040mg/5mL(24時間、4日間静置)の場合は、いずれの回収固体もγ−CDを主成分とするもので、その集合体形態は板状構造であった。すなわち、γ―CDによるナノチューブの分解はγ―CD水溶液の濃度依存性がみられた。
下記の構造式2に示すペプチド脂質から形成した有機ナノチューブ(II)(23.4mg、ペプチド脂質0.068mmol)に265mg(0.27mmol)/4mLのα―CD水溶液を加え、タッチミキサーで5分間撹拌した。この混合物を24時間静置した後、遠心処理(4000回転、20分)を行い、残渣に水4mLを加え5分間撹拌した。再度20分間の遠心処理を行い、残渣を凍結乾燥して粉末状のサンプルを得た。このサンプルについて重量を秤量し、FE−SEMによる形態観察、1H−NMR、XRD測定をおこなった。
Claims (3)
- 下記一般式(1)
G−NHCO−R1 (1)
(式中、Gは糖のアノマー炭素原子に結合するヘミアセタール水酸基を除いた糖残基を表し、R1は炭素数が10〜39の不飽和炭化水素基を表す。)で表わされるN−グリコシド型糖脂質、又は
下記一般式(2)
R2CO(NH−CHR3−CO)mOH (2)
(式中、R2は炭素数6〜24の炭化水素基、R3はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質、又は
下記一般式(3)
H(NH−CHR3−CO)mNHR2 (3)
(式中、R2は炭素数6〜24の炭化水素基、R3はアミノ酸側鎖、mは1〜10の整数を表す。)で表わされるペプチド脂質
のいずれかからなる両親媒性化合物の分子が集合して形成された有機ナノチューブに、シクロデキストリンを添加することにより、該有機ナノチューブのチューブ構造を化学的に分解する方法。 - 前記シクロデキストリンが、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンのいずれかである請求項1に記載の方法。
- 前記シクロデキストリンの添加量が、有機ナノチューブを形成する両親媒性化合物に対して、1当量以上である請求項1又は2に記載の方法。
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