JP4923851B2 - エンタングルド光子対の生成方法、生成装置 - Google Patents

エンタングルド光子対の生成方法、生成装置 Download PDF

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Description

本発明は、エンタングルド光子対の生成方法、エンタングルド光子対の生成装置に係わる。
量子情報技術にとって基本的なリソースである、量子的相関を持つ(このことを「エンタングルした」と書く)状態を作り出す目的で、非線形光学過程の一つである、タイプ−IIの自発的パラメトリック下方変換(Spontaneous Parametric Down-Conversion;以下、SPDCと書く)を利用して、2つの光子からなるエンタングルした光子対の生成が、従来から行われている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照。)。
以下、この「エンタングルした光子対」を、「エンタングルド光子対」(entangled photon pair )と称する。なお、上記特許文献2等、「もつれ合い光子対」と呼んでいる文献もある。
このエンタングルド光子対は、量子演算、量子通信等への応用が提案されている。
SPDCにおいては、二次の非線形光学効果を持つ結晶(非線形光学結晶)に、周波数ν_p、波数k_pを持つ励起光の光子を、適切な角度で入射すると、励起光光子が2つの光子に変換されて結晶から出射される。
そして、変換された2つの光子の周波数と波数を、それぞれ、(ν_s、k_s),(ν_i、k_i)とするとき、
ν_p=ν_s+ν_i (1)
k_p=k_s+k_i (2)
の関係、即ち位相整合条件を満たす。
そして、タイプ−IIのSPDCにおいては、変換された2つの光子の偏光方向が互いに垂直になる。
一方、タイプ−IのSPDCでは、2つの光子の偏光方向が平行である。
ここで、タイプ−IIのSPDCについて、図1を参照して、簡単に説明する。
図1に示すように、励起光(周波数νp、波数kp、偏光方向Pp)101を、適切な角度で非線形光学結晶102に入射させると、式(1)及び式(2)に示した位相整合条件を満たす光子対が、非線形光学結晶102から、2つの円錐状103,104に出射する。
このとき、2つの円錐103,104に交わりがあれば、円錐103,104の交線から光子を取り出すことにより、2つの光子105,106は、偏光がエンタングルした状態、即ちエンタングルド光子対110となっている。
SPDC用の非線形光学結晶102としては、通常は、β−BBO(BaB)が用いられている。
特許第3726250号明細書 特開2003−228091号公報 特開2005−258232号公報
しかしながら、上述した方法によるエンタングルド光子対の生成効率は低い、という問題があった。
また、β−BBOには潮解性があり、高湿度の環境下で使用する場合には、潮解を防ぐために、例えば、結晶に防湿のためのコーティングを施す、装置内部を低湿度に保つ、等の対策を必要としていた。
上述した問題の解決のために、本発明においては、エンタングルド光子対の生成効率を高めることを可能にする、生成方法及び生成装置を提供するものである。
本発明のエンタングルド光子対の生成方法は、非線形光学結晶として、BiB(ビスマス・トリボレート;BiBO)の結晶を用いて、非線形光学結晶に励起光の光子を入射させて、タイプ−IIの自発的パラメトリック下方変換により、エンタングルド光子対を生成するものである。
本発明のエンタングルド光子対の生成装置は、励起光を発生させる光源と、BiB(ビスマス・トリボレート;BiBO)の結晶から成る非線形光学結晶とを少なくとも備え、光源から発生した励起光が、非線形光学結晶に入射するように配置されて、励起光により、非線形光学結晶からタイプ−IIの自発的パラメトリック下方変換により、エンタングルド光子対を生成させるものである。
上述の本発明のエンタングルド光子対の生成方法によれば、非線形光学結晶として、BiB(ビスマス・トリボレート;BiBO)の結晶を用いることにより、BBO結晶を用いた場合の1.7〜4.9倍の生成効率が得られる。これにより、同じ量のエンタングルド光子対を生成するために必要となる励起光パワーが、BBOの20%〜60%に低減される。
また、BiBOは、湿度に対して不活性であるため、デバイス化する際に潮解を気にする必要がない。これにより、潮解を防ぐためのコーティングを行うことや低湿度に保つことが不要になる。
上述の本発明のエンタングルド光子対の生成装置によれば、BiB(ビスマス・トリボレート)の結晶から成る非線形光学結晶を備えたことにより、BBO結晶から成る非線形光学結晶を用いた場合の1.7〜4.9倍の生成効率が得られる。これにより、同じ量のエンタングルド光子対を生成するために必要となる励起光パワーが、BBOの20%〜60%に低減される。
また、BiBOは、湿度に対して不活性であるため、デバイス化する際に潮解を気にする必要がない。これにより、潮解を防ぐためのコーティング工程や装置内を低湿度に保つための構成が不要になる。
上述の本発明によれば、BBO結晶を用いた場合の1.7倍〜4.9倍の生成効率が得られる。
これにより、エンタングルド光子対の生成効率を高めることができる。
また、本発明によれば、潮解を防ぐためのコーティング工程や装置内を低湿度に保つための構成が不要になるため、製造コスト並びに生成装置のコストの低減や、生成装置の構成の簡素化を図ることが可能になる。
本発明においては、エンタングルド光子対を発生させるための非線形光学結晶に、従来のβ-BBOに換えて、BiBO(BiB;ビスマス・トリボレート)結晶を使用する。
即ち、図1に示すタイプ−IIのSPDCを行う光学系の構成において、非線形光学結晶102に、BiBO(BiB;ビスマス・トリボレート)結晶を使用して、エンタングルド光子対を生成する。
また、本発明においては、励起光を発生させる光源と、BiBO(BiB;ビスマス・トリボレート)の結晶から成る非線形光学結晶とを少なくとも備えて、光源から発生した励起光が、非線形光学結晶に入射するように配置して、励起光により、非線形光学結晶からタイプ−IIの自発的パラメトリック下方変換により、エンタングルド光子対を生成させるように装置を構成する。
より好ましくは、励起光101が非線形光学結晶102に入射して、非線形光学結晶102内を進行する方向を、非線形光学結晶102の光学軸(X軸、Y軸、Z軸)に対して、後述するように、所定の範囲内の角度をなす方向とする。
(結晶内の励起光の進行方向の設定)
BiBO結晶において、Type−IIのSPDCを効率よく生じさせるためには、BiBO結晶の中で、励起光を適切な方向に進行させる必要がある。
この適切な方向とは、先に述べた位相整合条件(1),(2)を満たす方向のうち、その方向によって定まる有効非線形定数の絶対値ができるだけ大きくなる方向である。
また、BiBOは、二軸性の非線形光学結晶であるため、結晶内の光の進行方向によって屈折率が異なっている。
以下の説明では、光学軸(X軸、Y軸、Z軸)のそれぞれの軸方向の屈折率の主値(n_X,n_Y,n_Z)の大小関係が、n_X<n_Y<n_Zとなるように、光学軸を定めることとする。
ところで、非線形光学結晶に励起光を入射させる際には、多くの場合、励起光を結晶の面(入射面)に対して垂直に入射させている。
この場合には、上述の適切な励起光の進行方向に対して垂直な面が出るように、適切な角度に結晶を切り出さなくてはならない。
通常、非線形光学結晶の光学軸XYZに対して、励起光の進行方向(垂直入射の場合は入射方向に一致する)kの方角を、図2に示す角度(θ,φ)を与えることによって指定する。
即ち、図2に示すように、XY平面内において、X軸方向からY軸方向に角度φ回った方向をX´とし、次にX´Z平面内において、Z軸からX´方向に角度θ倒した方向を、非線形光学結晶内の励起光の進行方向kとする。
そして、励起光が入射する面(以下入射面)を、励起光の進行方向kと垂直になるように、結晶を切り出す。
なお、入射面以外の面は、任意の方向に切り出せば良いが、通常は結晶を直方体に切り出している。
直方体に切り出す場合、入射面に垂直な面の一つは、X´Z面に平行になるように切り出すことが多い。
このように非線形光学結晶を直方体に切り出す場合における、図2に示した励起光の進行方向kと非線形光学結晶102との位置関係を、図3に示す。図3に示すように、入射面が励起光の進行方向kと垂直であり、非線形光学結晶102の側面のうち手前側と奥側の2面は、X´Z面に平行となっている。
一方、励起光を入射面に斜めに入射させる場合には、入射面における屈折を考慮しなければならない。
この場合、励起光が屈折した後に結晶内を進行する方向(波数ベクトルの方向)を、上述した進行方向kと等しくなるようにする。
以下においては、垂直入射の場合を考えることとして、(θ,φ)を「切り出し角度」と呼ぶこととするが、斜め入射の場合には、これを、励起光の結晶内進行方向と読み換えればよい。
(等価な切り出し角度)
また、BiBO結晶の対称性を反映して、同じ有効非線形定数を得られる切り出し角度が複数存在する。
即ち、方向(θ,φ)に対し、YZ面に関して対称な方向(θ,180°−φ)、及びこれらの原点に対して対称な方向(180°−θ,180°+φ),(180°−θ,360°−φ)である。
逆に言えば、最適な切り出し角度を求める場合には、θは0°〜180°、φは0°〜90°の範囲を探せば良い。
これらの等価な方向を考慮して、以下では、角度θ,φの範囲を、θは0°〜180°、φは0°〜90°の範囲で指定する。
なお、当然のことであるが、上記の換算式に当てはめることにより、他の等価な切り出し角度を得ることができる。
(切り出し角度の波長依存性と2つの領域)
最大の有効非線形定数が得られる、最適な切り出し角度(θ,φ)は、励起光の波長λに応じて変化する。そして、有効非線形定数の最大値を与える切り出し角度が、波長約430nmを境にして短波長側と長波長側とで、それぞれ異なる領域に存在する。
即ち、短波長側では、θ>90°にあり、90°<θ<120°、φが55°付近の領域A内に存在する。
一方、長波長側では、θ<90°にあり、θが50°付近、φが10°付近の領域B内に存在する。
ここで、上記の領域A及び領域Bの各領域における、BiBOの有効非線形定数の最大値の波長変化を、β−BBOの有効非線形定数の最大値の波長変化と共に、図4に示す。
この図4からわかるように、励起光波長が350nm以上では、BiBOの有効非線形定数がβ−BBOの有効非線形定数を上回り、またBiBOに関しては、430nm以下では領域Aの方が大きく、430nm以上では領域Bの方が大きい。
以下、領域A及び領域Bにおける、各波長における適切な切り出し角度の範囲について、順に説明する。
(領域Aについての詳細)
まず、領域Aについて、適切な切り出し角度(θ,φ)の範囲を説明する。
領域Aのうち、有効非線形定数の最大値を与える切り出し角度(θ,φ)、即ち切り出し角度の最適値と、最大値を生成効率100%としたときに90%の生成効率が得られる切り出し角度(θ,φ)の境界値とについて、励起光の波長による変化を、図5及び図6に示す。図5は、角度θについて、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布を示している。図6は、角度φについて、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布を示している。
また、図5の短波長側(〜500nm)を拡大した図を図7に示し、図6の短波長側(〜500nm)を拡大した図を図8に示す。
図5〜図8に示した、それぞれの波長分布から、波長分布の曲線を下記の近似式F(λ)で表すことが可能である。
F(λ)=A[Log10(λ−λ)]+B・Log10(λ−λ)+C
この近似式において、{A,B,C,λ}が、曲線のフィッティングのパラメータとなる。λは、励起光の波長[nm]である。
この近似式を使用して、図5〜図8に示したそれぞれの波長分布(最適値、90%下限、90%上限)の曲線を表すと下記のようになる。ただし、短波長側と長波長側とで曲線の傾向が異なるので、400nmを境界として、その短波長側と長波長側とに分けて、それぞれの部分を近似した。
<領域Aの短波長側、345nm以上400nm以下>
θの最適値:θ=34.46[Log10(λ−335)]−64.09・Log10(λ−335)+120.23
θの90%下限:θ=24.195[Log10(λ−335)]−52.93・Log10(λ−335)+117.82
θの90%上限:θ=18.177[Log10(λ−335)]−16.23・Log10(λ−335)+89.6
φの最適値:φ=58.924[Log10(λ−335)]−204.42・Log10(λ−335)+229.04
φの90%下限:φ=65.657[Log10(λ−335)]−234.73・Log10(λ−335)+253.55
φの90%上限:φ=50.83[Log10(λ−335)]−172.1・Log10(λ−335)+205.13
<領域Aの長波長側、400nm以上1250nm以下>
なお、この長波長側について、425nm以上では、図4に示したように領域Bの方が高い有効非線形定数が得られる。ここでは、θ及びφの最適値として、領域Aのうちで最も高い有効非線形定数が得られる角度を採用し、また領域Aのうちの最適値の効率を100%として効率90%が得られる境界を求めた。
θの最適値:θ=−7.102[Log10(λ−310)]+38.05・Log10(λ−310)+69.45
θの90%下限:θ=−6.796[Log10(λ−310)]+35.35・Log10(λ−310)+57.65
θの90%上限:θ=−31.225[Log10(λ−310)]+166.04・Log10(λ−310)−83.94
φの最適値:φ=−0.227[Log10(λ−375)]+2.19・Log10(λ−375)+49.31
φの90%下限:φ=0.0307[Log10(λ−375)]+0.87・Log10(λ−375)+43.5
φの90%上限:φ=0.0931[Log10(λ−375)]+0.64・Log10(λ−375)+58.81
従って、短波長側(345nm以上400nm以下)においては、
θ=34.46[Log10(λ−335)]−64.09・Log10(λ−335)+120.23 (3)
φ=58.924[Log10(λ−335)]−204.42・Log10(λ−335)+229.04 (4)
を共に満たすような切り出し角度(θ,φ)とすれば、最大の効率が得られる。
また、最大効率の90%以上の効率を得るためには、少なくとも下記の2つの条件を共に満たすようにすればよい。
24.195[Log10(λ−335)]−52.93・Log10(λ−335)+117.82≦θ≦18.177[Log10(λ−335)]−16.23・Log10(λ−335)+89.6
65.657[Log10(λ−335)]−234.73・Log10(λ−335)+253.55≦φ≦50.83[Log10(λ−335)]−172.1・Log10(λ−335)+205.13
同様に、長波長側(400nm以上1250nm以下)においては、
θ=−7.102[Log10(λ−310)]+38.05・Log10(λ−310)+69.45 (5)
φ=−0.227[Log10(λ−375)]+2.19・Log10(λ−375)+49.31 (6)
を共に満たすような切り出し角度(θ,φ)とすれば、最大の効率が得られる。
また、最大効率の90%以上の効率を得るためには、少なくとも下記の2つの条件を共に満たすようにすればよい。
−6.796[Log10(λ−310)]+35.35・Log10(λ−310)+57.65≦θ≦−31.225[Log10(λ−310)]+166.04・Log10(λ−310)−83.94
0.0307[Log10(λ−375)]+0.87・Log10(λ−375)+43.5≦φ≦0.0931[Log10(λ−375)]+0.64・Log10(λ−375)+58.81
励起光の波長がおよそ400nm以上では、切り出し角度(θ,φ)の最適値が、ほぼ一定に近くなる(119°〜120°,53°)。このときの有効非線形定数の値は、およそ2pm/Vである。この値は、β−BBOを使用した場合と比較して、およそ1.3〜2.0倍である。
エンタングルド光子対の生成効率は、有効非線形定数の値の二乗に比例するので、生成効率としては、β−BBOを使用した場合の1.7倍から3.9倍である。
また、およそ400nm以上において、生成効率が90%に減ることを許容した場合の、θの範囲は100°〜136°であり、φの範囲は45°〜61°である。
励起光の波長がおよそ400nmより小さくなるに従い、図4からわかるように、有効非線形定数の値は400nm以上の場合の値2pm/Vより小さくなっていくが、350nm以上であればβ−BBOよりも大きい。
また、励起光の波長がおよそ400nm小さくなるに従い、切り出し角度の最適値も、上述の400nm以上のほぼ一定の値から変化していき、生成効率が90%に減ることを許容した場合の、θ及びφの最適値から許される角度範囲も狭くなっていく。
生成効率が90%に減ることを許容した場合の、切り出し角度(θ,φ)として可能な領域を、図9〜図12にいくつかの励起光波長(350nm,400nm,500nm,1000nm)について示した。図9〜図12は、効率10%毎に区切って等高線(実線及び破線)として表したものであり、実線で囲まれた領域は効率90%以上の範囲である。なお、黒い領域はエンタングルド光子対が得られない範囲を示している。
ここで、ある切り出し角度(θ=110°,φ=55°)で切り出したBiBO結晶に、波長407nmの励起光を入射し、タイプ−IIのSPDCで生成した光子を、中心波長815nmで半値全幅12nmのバンドパスフィルターを通して、赤外線に感度のあるCCD撮像素子により観測した。この際に見られる2つのリングを、図13に示す。
これらの2つのリングは、図1の2つの円錐103,104の断面を観察したことに相当するものである。
これらの2つのリングの光強度を積算した値は、β−BBOを用いて同じ条件で観測したリングの光強度積算値の約3倍であった。
エンタングルド光子対は、この2つのリングの2つの交点から得られるものであり、その生成効率は、リングの光強度に比例すると考えられるから、BiBOを用いることにより、β−BBOを用いる場合の約3倍のエンタングルド光子対生成効率が得られることが確かめられた。
(領域Bについての詳細)
次に、領域Bについて、最適な切り出し角度(θ,φ)の範囲を説明する。
領域Bのうち、有効非線形定数の最大値を与える切り出し角度(θ,φ)、即ち切り出し角度の最適値と、最大値を生成効率100%としたときに90%の生成効率が得られる切り出し角度(θ,φ)の境界値とについて、励起光の波長による変化を、図14及び図15に示す。図14は、角度θについて、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布を示している。図15は、角度φについて、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布を示している。
前述した近似式を使用して、図14〜図15に示したそれぞれの波長分布(最適値、90%下限、90%上限)の曲線を表すと下記のようになる。
<領域B、425nm以上1250nm以下>
θの最適値:θ=96.93[Log10(λ−225)]−543.36・Log10(λ−225)+804.86
θの90%下限:θ=92.251[Log10(λ−225)]−517.4・Log10(λ−225)+767.99
θの90%上限:θ=92.783[Log10(λ−225)]−519.87・Log10(λ−225)+775.48
φの最適値:φ=16.001[Log10(λ−370)]−84.52・Log10(λ−370)+119.13
φの90%下限:φ=14.709[Log10(λ−370)]−77.72・Log10(λ−370)+104.94
φの90%上限:φ=17.194[Log10(λ−370)]−90.99・Log10(λ−370)+133.38
従って、
θ=96.93[Log10(λ−225)]−543.36・Log10(λ−225)+804.86 (7)
φ=16.001[Log10(λ−370)]−84.52・Log10(λ−370)+119.13 (8)
を共に満たすような切り出し角度(θ,φ)とすれば、最大の効率が得られる。
また、最大効率の90%以上の効率を得るためには、少なくとも下記の2つの条件を共に満たすようにすればよい。
92.251[Log10(λ−225)]−517.4・Log10(λ−225)+767.99≦θ≦92.783[Log10(λ−225)]−519.87・Log10(λ−225)+775.48
14.709[Log10(λ−370)]−77.72・Log10(λ−370)+104.94≦φ≦17.194[Log10(λ−370)]−90.99・Log10(λ−370)+133.38
領域B(波長425nm以上)における有効非線形定数の値は、図4からわかるように、2.0〜2.8pm/Vである。また、各波長において、β−BBOを使用した場合と比較して、およそ1.8〜2.2倍の値となっている。
エンタングルド光子対の生成効率は、有効非線形定数の値の二乗に比例するので、生成効率としては3.2倍から4.9倍である。
生成効率が90%に減ることを許容した場合の、切り出し角度(θ,φ)として可能な領域を、図16〜図19にいくつかの励起光波長(425nm,450nm,600nm,1000nm)について示した。図16〜図19も、図9〜図12と同様に、効率10%毎に区切って等高線(実線及び破線)として表したものであり、実線で囲まれた領域は効率90%以上の範囲を示し、黒い領域はエンタングルド光子対が得られない範囲を示している。
波長450nm以上の励起光により光子対を生成する場合、領域Aの切り出し角度で結晶を切り出せば、切り出し角度もしくは光軸調整の誤差に強い。
この波長領域では、領域Aにおいて最も効率が高くなる切り出し角度は、位相整合条件を満たすカット角度領域の端(図9〜図12の黒い領域との境界)から離れている。従って、多少角度がずれても、エンタングルド光子対を高い効率で生成できる。
このように波長450nm以上の励起光により光子対を生成する場合、領域Aの切り出し角度で結晶を切り出せば、切り出し角度もしくは光軸調整の誤差に強くなる。
そして、領域Aの切り出し角度で結晶を切り出すと、励起光波長400nm以上では、波長に関わらず、ほとんど同じ切り出し角度で、高い生成効率が得られる。
これにより、励起波長別に異なる結晶を使う必要がなくなる。
一方、BBOを使用した場合、又はBiBOを領域Bの切り出し角度で切り出した場合においては、最も効率が高くなる切り出し角度は、位相整合条件を満たす領域のちょうど端に来る。もし角度が位相整合条件を満たさない方向にずれると、エンタングルド光子対は全く発生しなくなる。
従って、これらの場合には、位相整合条件が満たされるように、光源や結晶やその間の光学部品を精度良く配置する。
上述の切り出し角度(θ,φ)の範囲とすれば、最大効率の90%以上の充分な効率が得られるが、上述の範囲の外であっても、β−BBOを使用した場合の有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることができるため、出力を向上することができる。これにより、領域A及び領域Bからさらに広い領域内の切り出し角度を、採用することが可能になる。
そこで、β−BBOを使用した場合の同一励起光波長に対する有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることが可能な、切り出し角度(θ,φ)の範囲の境界値について、有効非線形定数の最大値を与える切り出し角度(θ,φ)、即ち切り出し角度の最適値と併せて、励起光の波長による変化を図20及び図21に示す。図20は、角度θについて、最適値と、下限値及び上限値との波長分布を示している。図21は、角度φについて、最適値と、下限値及び上限値との波長分布を示している。
また、図20の短波長側(〜500nm)を拡大した図を図22に示し、図21の短波長側(〜500nm)を拡大した図を図23に示す。
さらに、前述した近似式を使用して、図20〜図23に示したそれぞれの下限値及び上限値の曲線を表すと下記のようになる。
<θ、350nm以上1250nm以下>
下限値:θ=53.648[Log10(λ−270)]−300.54・Log10(λ−270)+459.35
上限値:θ=−68.39[Log10(λ−270)]+377.9・Log10(λ−270)−369.11
従って、角度θを、
53.648[Log10(λ−270)]−300.54・Log10(λ−270)+459.35≦θ≦−68.39[Log10(λ−270)]+377.9・Log10(λ−270)−369.11 (9)
の範囲内とすることにより、β−BBOを使用した場合の有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることが可能である。
<φ、350nm以上400nm以下>
下限値:φ=−657.68・Log10(λ−140)+1596.9
上限値:φ=355.38[Log10(λ+600)]−2229.7・Log10(λ+600)+3568.3
従って、角度φを、
−657.68・Log10(λ−140)+1596.9≦φ≦355.38[Log10(λ+600)]−2229.7・Log10(λ+600)+3568.3 (10)
の範囲内とすることにより、β−BBOを使用した場合の有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることが可能である。
<φ、400nm以上1250nm以下>
下限値:φ=3.9897[Log10(λ−395)]−23.445・Log10(λ−395)+22.894
上限値:φ=355.38[Log10(λ+600)]−2229.7・Log10(λ+600)+3568.3
従って、角度φを、
3.9897[Log10(λ−395)]−23.445・Log10(λ−395)+22.894≦φ≦355.38[Log10(λ+600)]−2229.7・Log10(λ+600)+3568.3 (11)
の範囲内とすることにより、β−BBOを使用した場合の有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることが可能になる。
これらの領域内と、前述した等価な方向による領域内とを含めて、これらの領域内にある切り出し角度(θ,φ)を有するBiBO結晶を用いることにより、β−BBOを使用した場合に比較して、エンタングルド光子対の生成効率を高くすることができる。
β−BBOを使用した場合に比較して、エンタングルド光子対の生成効率を高くすることができる、切り出し角度(θ,φ)として可能な領域を、図24〜図27にいくつかの励起光波長(350nm,400nm,500nm,1000nm)について示した。図24〜図27も、効率10%毎に区切って等高線として表したものであり、斜線を付した領域はβ−BBOを使用した場合に比較して、エンタングルド光子対の生成効率を高くすることができる範囲を示し、黒い領域はエンタングルド光子対が得られない範囲を示している。
前述したように、BiBO結晶に励起光を斜めに入射させる場合には、上述した説明の切り出し角度の条件を、結晶内の励起光の進行方向の角度(θ,φ)の条件とすればよい。
なお、切り出した結晶において、切り出し角度が最適値からずれていた場合に、そのずれが小さければ、結晶を傾けて励起光を入射面に対して入射させるように構成すれば、結晶内の励起光の進行方向の角度(θ,φ)を最適値に合わせることが可能である。
また、切り出した結晶において、垂直入射させると、図9〜図12・図16〜図19の実線で囲まれた領域や図24〜図27の斜線を付した領域から外れている場合においても、結晶を傾けて励起光を入射面に対して入射させるように構成すれば、結晶内の励起光の進行方向の角度(θ,φ)を領域内にもって行くことが可能である。
なお、上述した角度(θ,φ)の条件では、0≦θ≦180°,0≦φ≦90°の場合の条件式を示しているが、前述した等価な角度、即ち、YZ面に関して対称な方向(θ,180°−φ)、及び原点に対して対称な方向(180°−θ,180°+φ),(180°−θ,360°−φ)のそれぞれの角度でも、同様に条件式が成り立つ。
本発明のエンタングルド光子対の生成方法及び生成装置は、前述したように様々な用途に応用することができる。
例えば、量子演算、量子通信、量子暗号、量子イメージング、量子リソグラフィ、時計の同期、分光計測等が挙げられる。
このうちのいくつかの応用について、以下に装置等の構成例を示して、概略を簡単に説明する。
<量子演算>
本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いて、量子演算を行うことができる。
量子演算のなかでも、CNOT(Controlled NOT;制御NOT)は、量子計算の基本的演算である。このCNOTを計算するCNOTゲートと、個々の量子ビットに対する位相回転演算を行う位相回転ゲートとを、組み合わせることにより、どのような量子演算でも論理的には可能であることが知られている(量子計算におけるユニバーサルゲート)。
そして、光子を量子ビットとして用いる量子演算において、このCNOTゲートを構成する際に、本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いることができる。
例えば、下記の文献A1〜文献A3には、光子を用いたCNOTを実現するために、エンタングルド光子対を補助的な光子として用いている。
(文献A1)特開2005−172910号公報
(文献A2)M. Koashi,T. Yamamoto,and N. Imoto,Phys. Rev. A.,vol.63,p.030301(2001)
(文献A3)T. B. Pittman,B. C. Jacobs,andJ. D. Franson,Phys. Rev. A,vol.64,p.062311 (2001)
なお、上記文献A2においては、制御位相ゲートと呼ばれるものを構成する方法が説明されているが、この制御位相ゲートからCNOTゲートを容易に構成できることが記載されている。
これらの文献のうち、文献A1及び文献A3においては、エンタングルド光子対として、2つの光子の偏光が互いに等しいという量子相関を持ったもの、即ち、
(|HH>+|VV>)/√2
を、補助的な光子として利用している。
一方、文献A2においては、2つの光子の偏光が互いに直交したエンタングルド光子対、即ち、
(|HV>-|VH>)/√2
を、補助的な光子として利用している。
なお、上記のそれぞれの式で、Hは水平偏光を示し、Vは垂直偏光を示し、|XY>は光子対を構成する一番目の光子の偏光がX(X=HorV)のとき、二番目の光子の偏光がY(Y=HorV)である状態を示している。
本発明においては、前述したように、生成させたエンタングルド光子対が互いに直交する偏光を有する。つまり、例えば、
(|HV>+|VH>)/√2
又は、
(|HV>-|VH>)/√2
のような光子対を生成することができる。
従って、本発明により、文献A2において利用される、エンタングルド光子対を得ることができる。
さらに、光子対の一方を、二分の一波長板を通過させることにより、その偏光をHからVに、或いは、VからHに入れ替えることができる。例えば、二番目の光子の偏光を入れ替えたとすると、
|HV>→|HH>,|VH>→|VV>
となるから、
(|HV>+|VH>)/√2→(|HH>+|VV>)/√2
とすることができるので、結局、上記の文献A1や文献A3において利用されるエンタングルド光子対を、本発明により生成するエンタングルド光子対から、容易に作ることができる。
<単一光子源を利用した量子計算>
量子ビットとして、単一光子の状態を用いる、量子計算がある。
この単一光子を用いる量子計算においては、ある時刻及びある場所において、確かに光子が一つだけ存在するということを、計算に用いる光子そのものを検出することなしに、確実に知る必要がある場合が多い。
そして、この単一光子の生成源(単一光子源)として、本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いることができる。
つまり、SPDCによるエンタングルド光子対を構成する二つの光子は、原理的に同時に発生しており、また位相整合条件を満たしているので、片方の光子をある位置に置いた検出器により検出したならば、その検出時刻以降の時刻において、他方の光子の位置を確実に知ることができる。
従って、この検出しなかった方の光子を、量子計算に用いる量子ビットとして用いることができる。
<量子通信>
本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いて、以下の各種の量子通信を行うことができる。
1.量子中継(量子テレポーテーション)
量子中継(量子テレポーテーション)とは、未知の量子状態|ψ>を、エンタングルした状態を用いて、別の場所にある量子に転送し再現するものである。
光子の偏光を量子状態として量子テレポーテーションする場合には、本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いることができる。
転送したい偏光状態が未知の光子|ψ>を持つ者(アリス)と、量子テレポーテーションによりその光子を再現する者(ボブ)とは、予めエンタングルド光子対を構成する光子を一つずつ所有する。
そして、アリスは、|ψ>とエンタングルド光子対の片方の光子について、ベル測定(またはベル状態測定、ベル合同測定とも)と呼ばれる、二つの光子を一つの量子状態として測定する、特別な測定方法により測定を行う。この測定方法は、例えば、
(文献B1)Y.-H. Kim,S. P. Kulik, and Y. SHih,Phys. Rev. Lett.,vol.86,p.1370,(2001)
に説明されている。
この測定により、アリスは、4種類ある可能性の中から一つの測定結果を得る。
アリスは、その測定結果をボブに伝える。
ボブは、アリスから伝えられた測定結果に応じて、持っているエンタングルド光子対の片方の光子に適切な操作を加えると、その偏光状態は|ψ>となる。
この操作は、位相板等の通常の光学素子により、容易に実現できる.
この量子テレポーテーションを、次々と用いることにより、量子状態を離れた場所に転送すること、即ち量子中継が可能となる。
2.スーパーデンスコーディング
スーパーデンスコーディングとは、一つの量子ビットを送受信するだけで、1ビット以上の情報を送る方法である。
このスーパーデンスコーディングにより通信を行うときに、本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いることができる。
送信者(アリス)と受信者(ボブ)は、通信に先立って、エンタングルド光子対を構成する光子をそれぞれ持つ。
アリスは、自らが持っているエンタングルド光子対の片方の光子の偏光に対して、送信したい2ビットの情報"00","01","10","11"に対応して、以下の4つの操作I,X,Z,XZを行ってから、ボブに送信する。
00<=>I:何もしない。
01<=>X:光学軸を45度に設定した二分の一波長板により、水平偏光成分と垂直偏光成分とを入れ替える。
10<=>Z:光学軸を0度に設定した二分の一波長板により、水平偏光成分と垂直偏光成分の相対位相を180度ずらす。
11<=>XZ:上記Zの操作の後に、上記Xの操作を行う。
ボブは、通信に先立って持っていたエンタングルド光子対の片方の光子と、アリスから送信された他方の光子とに対して、ベル測定(前記量子テレポーテーションにて説明)を行う。
ベル測定の結果、4種類ある可能性の中のどの測定結果が得られたかに応じて、アリスがI,X,Z,XZのどの操作を行ったかを、ボブは知ることができる。そして、ボブは、操作を2ビットの情報"00","01","10","11"に対応させる。
この結果、アリスからボブに、量子ビットである光子を一つ送受信することにより、2ビットの情報を送ることができた。
3.量子ステガノグラフィ(量子あぶりだし)
量子通信の1つの手法として、量子ステガノグラフィ(量子あぶりだし)があり、本発明により生成させたエンタングルド光子対を適用することが可能である。
送信側の第1装置(アリス)において、SPDCにより発生させたエンタングルド光子対のうちの一方の光子に対して、送信したい信号による、ショットノイズレベル以下の変調をかける。そして、光子対、即ち変調をかけた一方の光子と変調をかけていない他方の光子とをまとめて、送信する。
受信側の第2装置(ボブ)において、受信した光子対を同時検出して、ショットノイズをキャンセルした後に復調する。
同時計数しない限り、アリスの加えた変調はショットノイズに埋もれてしまい、復調できない。
<量子暗号>
本発明により生成させたエンタングルド光子対は、E91プロトコル、BBM92プロトコル、として知られる量子鍵配送に用いることができる。
E91プロトコルは、
(文献C1)A. K. Ekert,Phys. Rev. Lett.,vol.67,p.661(1991)
に発表された量子鍵配送プロトコルである。
BBM92プロトコルは、
(文献C2)C. H. Bennett, G. Brassard, and N. D. Mermin,Phys. Rev. Lett.,vol.68, p.557(1992)
に発表された量子鍵配送プロトコルである。
これら文献C1及び文献C2においては、暗号通信を行なう二者が、その暗号通信に用いる秘密鍵を、エンタングルした状態を用いて生成し共有する方法が説明されている。
これらの説明においては、エンタングルした状態として、二つのスピン1/2の粒子からなる、シングレット状態というものが利用されている。
このシングレット状態の代わりに、本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いることができる。
即ち、スピン1/2の粒子のもつスピンの向きの自由度に、光子の偏光方向の自由度を対応させることにより、これらの文献におけるシングレット状態にある二つのスピン1/2の粒子の代わりに、本発明によるエンタングルド光子対
(|HV>-|VH>)/√2
を用いることができる。
もちろん、スピンの向きの測定は、光子の偏光の向きの測定に置き換えれば良い。
<量子リソグラフィ>
相関するn個の光子から成る系における、ド・ブロイ波長λnは、λn=λ/nとなり、1個の光子の波長λのn分の1となる。これを、n個の光子群のフォトニック・ド・ブロイ波長と呼ぶ。
そして、この多光子状態のフォトニック・ド・ブロイ波長を、リソグラフィに利用することにより、解像度をn倍にすることが可能になる。
そこで、SPDCにより発生させたエンタングルド光子対を用いて、二光子状態を生成してリソグラフィを行えば、励起光波長の光と同等の解像度のリソグラフィを行うことができる。
このとき、光学系としては、励起光より長い、エンタングルド光子対の波長に対応したものを用いればよい。
レジストには、SPDCにより発生した光子対の波長において、二光子吸収反応するものを使用する。
<光学記録>量子超解像光ディスク
量子リソグラフィと同様に、二光子状態を干渉させて、光ディスク等の光学記録媒体の記録や読み出しに利用することができれば、光学記録媒体の記録容量を大きくすることが可能になる。
光学記録媒体の記録密度は、読み出しに用いる光の波長にほぼ比例して決まる解像度によって制限されており、波長が短いほど記録密度を高くすることができる。
SPDCにより発生させたエンタングルド光子対から二光子状態を生成すれば、そのフォトニック・ド・ブロイ波長は励起光の波長と等しいから、二光子状態を用いて記録・読み出しを行えば、用いる光子の波長よりも短い励起光波長の解像度で決まる、より高い記録密度を実現できる。
このとき、記録媒体の記録材料として、二光子状態にある二つの光子を同時に吸収して、その光学的な性質が変化するものを用いる。
また、読み出しを行う際には、二光子を同時に検出する。
<量子相関光子対分光>
本発明により生成させたエンタングルド光子対を、量子相関光子対分光に適用することが可能である。
周波数(波長)領域で絡み合った光子対を利用して分光を行う。波長域は広い方が良い。
一方の光子を試料に入射させて、他方の光子を分光器に入射させる。
そして、それぞれ出射した2つの光子を、同時に計数する。
このように構成することにより、次のような利点を有する。
まず、ショットノイズレベル以下の信号も、検出することが可能である。
さらに、赤外領域等、熱雑音が多い検出器を使わざるを得ない波長の測定においても、同時計数を行うことにより、SN比が向上する。
また、従来の分光測定においては、試料から出射した光子を直接に分光していたが、量子相関光子対分光では、試料から出射した光子を分光する必要がない。
そこで、例えば超高温や超低温等、試料から出射した光子の分光が困難である極限的環境においても、分光測定が可能となる。
<離れた時計の同期>
エンタングルド光子対を構成する二つの光子は同時に発生するから、本発明により生成させたエンタングルド光子対を用いて、離れた時計の同期を行うことが可能である。
例えば、宇宙ステーション上の時計と、地上管制室の時計とを同期させる。
波長の異なる光子の対を地上管制室で生成して、そのうちの一方の光子を宇宙ステーションに送信する。
そして、それぞれの光子を測定して、測定時刻を記録する。
また、古典通信路で、測定時刻を比較する。
これにより、時計のズレを計算して求めることができ、ズレを修正して離れた時計の同期を行うことができる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本発明により生成させたエンタングルド光子対は、量子演算、量子通信、量子暗号、量子イメージング、量子リソグラフィ、時計の同期、分光計測等への応用が考えられる。
タイプ−IIのSPDCを説明する図である。 非線形光学結晶の光学軸と励起光の進行方向との角度を説明する図である。 励起光の進行方向と非線形光学結晶との位置関係を示す図である。 BiBOの有効非線形定数の最大値の波長変化を示す図である。 角度θについての、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布である。 角度φについての、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布である。 図5の短波長側(〜500nm)を拡大した図である。 図6の短波長側(〜500nm)を拡大した図である。 励起光波長が350nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が400nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が500nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が1000nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 タイプ−IIのSPDCで生成した光子をCCD撮像素子により観測した際に、見られる2つのリングを示す写真である。 角度θについての、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布である。 角度φについての、最適値と、90%の生成効率が得られる下限値及び上限値との波長分布である。 励起光波長が425nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が450nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が600nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が1000nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 角度θについての、最適値と、β−BBOを使用した場合の同一励起光波長に対する有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることが可能な、下限値及び上限値との波長分布である。 角度φについての、最適値と、β−BBOを使用した場合の同一励起光波長に対する有効非線形定数の最大値よりも大きい値を得ることが可能な、下限値及び上限値との波長分布である。 図20の短波長側(〜500nm)を拡大した図である。 図21の短波長側(〜500nm)を拡大した図である。 励起光波長が350nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が400nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が500nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。 励起光波長が1000nmのときの切り出し角度の範囲を示す図である。
符号の説明
101 励起光、102 非線形光学結晶、105,106 光子

Claims (6)

  1. 非線形光学結晶として、BiB(ビスマス・トリボレート)の結晶を用いて、
    前記非線形光学結晶に、励起光の光子を入射させて、
    タイプ−IIの自発的パラメトリック下方変換により、エンタングルド光子対を生成する
    ことを特徴とするエンタングルド光子対の生成方法。
  2. 前記非線形光学結晶の光学軸としてX軸とY軸とZ軸の3つの軸を、各軸方向における前記励起光の屈折率がX軸<Y軸<Z軸となるように設定して、XY平面内において前記X軸方向から前記Y軸方向に角度φ回った方向をX´方向とし、さらにX´Z平面内において、前記Z軸から前記X´方向に角度θ倒した方向を、前記非線形光学結晶内の前記励起光の進行方向としたとき、前記励起光の波長λが345nm≦λ≦400nmの範囲内であり、前記励起光の波長λと角度(φ,θ)とが下記の条件式(A)及び(B)を満たすように、前記励起光を前記非線形光学結晶に入射させることを特徴とする請求項1に記載のエンタングルド光子対の生成方法。
    条件式(A)
    θ=34.46[Log10(λ−335)]−64.09・Log10(λ−335)+120.23
    条件式(B)
    φ=58.924[Log10(λ−335)]−204.42・Log10(λ−335)+229.04
  3. 前記非線形光学結晶の光学軸としてX軸とY軸とZ軸の3つの軸を、各軸方向における前記励起光の屈折率がX軸<Y軸<Z軸となるように設定して、XY平面内において前記X軸方向から前記Y軸方向に角度φ回った方向をX´方向とし、さらにX´Z平面内において、前記Z軸から前記X´方向に角度θ倒した方向を、前記非線形光学結晶内の前記励起光の進行方向としたとき、前記励起光の波長λが400nm≦λ≦1250nmの範囲内であり、前記励起光の波長λと角度(φ,θ)とが下記の条件式(C)及び(D)を満たすように、前記励起光を前記非線形光学結晶に入射させることを特徴とする請求項1に記載のエンタングルド光子対の生成方法。
    条件式(C)
    θ=−7.102[Log10(λ−310)]+38.05・Log10(λ−310)+69.45
    条件式(D)
    φ=−0.227[Log10(λ−375)]+2.19・Log10(λ−375)+49.31
  4. 前記非線形光学結晶の光学軸としてX軸とY軸とZ軸の3つの軸を、各軸方向における前記励起光の屈折率がX軸<Y軸<Z軸となるように設定して、XY平面内において前記X軸方向から前記Y軸方向に角度φ回った方向をX´方向とし、さらにX´Z平面内において、前記Z軸から前記X´方向に角度θ倒した方向を、前記非線形光学結晶内の前記励起光の進行方向としたとき、前記励起光の波長λが425nm≦λ≦1250nmの範囲内であり、前記励起光の波長λと角度(φ,θ)とが下記の条件式(E)及び(F)を満たすように、前記励起光を前記非線形光学結晶に入射させることを特徴とする請求項1に記載のエンタングルド光子対の生成方法。
    条件式(E)
    θ=96.93[Log10(λ−225)]−543.36・Log10(λ−225)+804.86
    条件式(F)
    φ=16.001[Log10(λ−370)]−84.52・Log10(λ−370)+119.13
  5. 前記励起光を入射させる前記非線形光学結晶の入射面が、前記進行方向に垂直な方向に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンタングルド光子対の生成方法。
  6. 励起光を発生させる光源と、
    BiB(ビスマス・トリボレート;BiBO)の結晶から成る非線形光学結晶とを少なくとも備え、
    前記光源から発生した前記励起光が、前記非線形光学結晶に入射するように配置されて、前記励起光により、前記非線形光学結晶からタイプ−IIの自発的パラメトリック下方変換により、エンタングルド光子対を生成させる
    ことを特徴とするエンタングルド光子対の生成装置。
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