JP4912017B2 - 転がり軸受の回転振れ信号分析装置および転がり軸受生産システム - Google Patents

転がり軸受の回転振れ信号分析装置および転がり軸受生産システム Download PDF

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Description

この発明は、転がり軸受の回転振れ信号を分析して軸受構成部品の形状誤差を得る回転振れ信号分析装置およびこれを利用した転がり軸受生産システムに関する。
転がり軸受の構成部品が及ぼす軸受の回転精度への影響について,その周波数ならびに振幅比はともに明らかになっている(例えば、非特許文献)。
このような、対象とする運転条件における上記の軸受振動と構成部品単体の形状誤差との関係を利用し、構成部品毎に生じる特定の周波数の振動振幅値の変化を観察することで、加工工程の条件見直し等に利用することが提案されている(例えば、特許文献1「転がり軸受の音響検査装置」)。
あるいは、回転を伴う機械での転がり軸受の寿命や異常の診断において、上記の転がり軸受の構成部品の形状誤差による軸受振動周波数の成分が、測定センサを含めた共振周波数の振幅変調成分として現れることを利用し、測定した振動波形をエンベロープ処理した後に周波数分析して、この振幅変調成分の大きさから、軸受交換時期の判定を行うことが提案されている(例えば、特許文献2「機械設備又は機器の異常診断方法及び異常診断装置。」)。
特開2000−171351号公報 特開2003−232674号公報 坂口智也・赤松良信,「玉軸受の振動シミュレーション」,NTNテクニカルジャーナル(NTN TECHNICAL JOURNAL ),No69,2001,P69−75)
上記特許文献1,2の方法では、軸受の異常振動や、精度不良の構成部品がどの部品であるかの特定は可能であるが、構成部品の精度の特定は、上記の理論的な構成部品の精度と軸受振動の関係を利用して換算するか、または軸受を構成部品に分解して測定する必要がある。
構成部品の形状誤差、例えば内輪軌道面のうねりの振幅を算出するためには、上記非特許文献1「玉軸受の振動シミュレーション」のように、センサーの向きがアキシアル方向とラジアル方向で異なり、また内輪回転と外輪回転とでも異なる。また、周波数だけでなく振動振幅に対する形状誤差への変換係数を把握して、形状誤差の絶対値に変換する必要がある。
このように、振動振幅から形状誤差振幅への変換は、転がり軸受の回転精度に及ぼす様々な要因を全て把握する必要がある。また、実際に変換作業を行うときにも、軸受の運転条件並びに測定条件から、問題となる周波数を決定し、かつその振幅を求め、最後に振幅比を用いて軸受構成部品の形状誤差に変換するという手順が必要になる。よって、難易度が高くかつ手間のかかる作業であった。
この発明の目的は、転がり軸受の振動に及ぼす構成部品の形状誤差の影響に関する高度な知識が無くても、軸受振動波形から構成部品の形状誤差を簡単に得ることができて、これにより、軸受製造品質の向上や、軸受異常診断の推定精度の向上が期待できる転がり軸受の回転振れ信号分析装置を提供することである。
この発明の他の目的は、この回転振れ信号分析装置を利用して軸受製造品質の向上が図れる転がり軸受生産システムを提供することである。
この発明の転がり軸受の回転振れ信号分析装置(1)は、転がり軸受(2)の回転振れによる軸受振動の測定信号を入力する測定信号入力手段(4)と、転がり軸受(2)の運転条件、内部諸元、および測定条件を記憶する条件記憶手段(5)と、この条件記憶手段(5)に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、前記測定信号入力手段(4)に入力された測定信号から、前記転がり軸受(2)の内輪軌道面のうねり、外輪軌道面のうねり、転動体のうねり、および転動体の直径相互差の大きさのうちの少なくとも一つの値である構成部品形状誤差を、所定分析規則(6)に従って算出する分析手段(7)とを備えることを特徴とする。
この構成によると、条件記憶手段(5)に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、測定信号から、内輪軌道面のうねり、外輪軌道面のうねり、転動体のうねり、転動体の直径相互差等を所定分析規則に従って算出する分析手段(7)を設けたため、転がり軸受の振動に及ぼす構成部品の形状誤差の影響に関する知識がオペレータに無くても、軸受振動波形から構成部品の形状誤差を簡単に得ることができる。これにより、軸受製造品質の向上や、軸受異常診断の推定精度の向上が期待できる。
前記測定信号は、転がり軸受(2)の回転振れによる軸受振動の変位に換算できる信号であれば良く、変位を直接に示す振幅信号に限らず、加速度または速度の信号であっても良い。 また、前記分析手段(7)として、周波数分析により構成部品の形状誤差を求める手段が採用できる。その場合、前記分析手段(7)およびその所定分析規則(6)は、例えば次の各構成する。
参考提案例として、前記測定信号が軸受振動の変位を測定した波形の振幅信号である場合、前記分析手段の前記所定分析規則(6)は、種々の運転条件、内部諸元、および測定条件に対応する軸受振動の周波数成分中の分析対象とする周波数と、その分析対象周波数における振動振幅の前記構成部品形状誤差に対する比である振幅比とを定めた振動分析テーブル(27)を有するものとする。前記分析手段(7)は、前記測定信号入力手段に入力された測定信号をフーリェ変換して周波数成分毎の振幅信号を得るフーリェ変換手段(17)と、前記条件記憶手段(5)に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件を前記振動分析テーブル(27)と照合して分析対象周波数を決定し、前記フーリェ変換手段(17)で得た周波数成分毎の振幅信号のうち、決定された分析対象周波数の成分の振幅信号を選択してその選択した振幅信号の振幅に対応する構成部品形状誤差を、前記振動分析テーブル(27)と照合して求める形状誤差算出手段(19)とを有するものとする。
転がり軸受(2)において、運転条件、内部諸元、および測定条件に対応する軸受振動について、分析対象とすべき周波数と、その周波数における振動振幅の、構成部品形状誤差に対する振幅比の関係が、玉軸受において明らかになっている。
そのため、このような関係を所定分析規則(6)として振動分析テーブル(27)に設定しておいて、測定信号をフーリェ変換し、振動分析テーブル(27)との照合により分析対象周波数を決定して、前記フーリェ変換手段(17)で得た周波数成分毎の振幅信号のうち、決定された分析対象周波数の成分の振幅を求め、この振幅を前記振動分析テーブル(27)と照合することで、構成部品形状誤差を求めることができる。
このように、各種条件、分析対象周波数、およびその周波数に対応する振動振幅と形状誤差の振幅比の関係を設定した振動分析テーブル(27)を設けておき、形状誤差算出手段(19)は、上記振動分析テーブル(27)と照合して分析対象周波数の決定、および振動振幅に対応する形状誤差の計算を行うものとしたため、オペレータが、転がり軸受(2)の振動に及ぼす構成部品の形状誤差の影響に関する知識が無くても、構成部品の形状誤差を得ることができる。
前記測定信号が加速度または速度の信号であって、上記分析手段(7)の所定分析規則(6)として前記と同じ振動分析テーブル(27)を有するものとする。前記分析手段(7)は、前記と同じく、フーリェ変換手段(17)と形状誤差算出手段(19)とを有するものとする。この場合のフーリェ変換手段(17)は、前記測定信号入力手段(4)に入力された測定信号をフーリェ変換して周波数成分毎の加速度または速度信号を得るものとする。前記形状誤差算出手段(19)は、前記条件記憶手段(5)に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件を前記振動分析テーブル(27)と照合して分析対象周波数を決定し、この決定された分析対象周波数成分の信号を周波数で除算する積分処理を行って振幅信号とし、この振幅信号の振幅に対応する構成部品形状誤差を、前記振動分析テーブル(27)と照合して求めるものとする。
測定信号が加速度または速度の信号であるため、周波数分析後に、周波数で除算する積分処理を行えば、振幅が求められるため、前記と同じ振動分析テーブル(27)を用いて、構成部品の形状誤差の大きさの算出が可能となる。
この発明において、前記条件記憶手段(5)に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、前記測定信号入力手段に入力された測定信号の周波数分析結果から、転がり軸受の内部の形状誤差に起因する全ての周波数成分の振幅の和を前記転がり軸受(2)の非同期回転振れとして算出する非同期振れ算出手段(29)を設けても良い。
軸受単体で非同期回転振れを測定する場合にも、記憶させた運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、周波数分析により所定算出規則に従って転がり軸受(2)の非同期回転振れを算出するようにすれば、オペレータによる詳しい知識が無くても、非同期回転振れを算出することができる。
前記非同期振れ算出手段(29)の前記所定算出規則は、回転輪の回転角を基準に振れ信号波形を複数回分重ね書きし、各位相での重ね書きされた波形群の最大値と最小値の差を全て求め、この差が最大となる位相での値を非同期回転振れとして算出するものとしても良い。重ね書き手法を用いると、非同期回転振れの算出が、簡易なプログラムによって計算することができる。
この発明の生産システムは、転がり軸受を製造する生産システムであって、この発明の上記いずれか構成の転がり軸受の回転振れ信号分析装置(1)と、この装置(1)で得た構成部品形状誤差を、前記転がり軸受(2)の内輪、外輪、および転動体のうちの前記構成部品形状誤差に対応する構成部品の製造するライン(31,…)における加工工程にフィードバックする手段(40)とを備えることを特徴とする。
この発明の回転振れ信号分析装置(1)は、構成部品形状誤差値を自動的に計算することができるため、その計算された構成部品形状誤差値を加工工程にフィードバックすることができ、これにより、軸受製造品質の向上を図ることができる。
この発明の転がり軸受の回転振れ信号分析装置は、転がり軸受の回転振れによる軸受振動の測定信号を入力する測定信号入力手段と、転がり軸受の運転条件、内部諸元、および測定条件を記憶する条件記憶手段と、この条件記憶手段に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、前記測定信号入力手段に入力された測定信号から、前記転がり軸受の内輪軌道面のうねり、外輪軌道面のうねり、転動体のうねり、および転動体の直径相互差の大きさのうちの少なくとも一つの値である構成部品形状誤差を、所定分析規則に従って算出する分析手段とを備え、前記測定信号が、加速度または速度の信号であって、前記分析手段の前記所定分析規則として、種々の運転条件、内部諸元、および測定条件に対応する軸受振動の周波数成分中の分析対象とする周波数と、その分析対象周波数における振動振幅の前記構成部品形状誤差に対する比である振幅比とを定めた振動分析テーブルを有し、前記分析手段は、前記測定信号入力手段に入力された測定信号をフーリェ変換して周波数成分毎の加速度または速度信号を得るフーリェ変換手段と、前記条件記憶手段に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件を前記振動分析テーブルと照合して分析対象周波数を決定し、この決定された分析対象周波数成分の信号を周波数で除算する積分処理を行って振幅信号とし、この振幅信号の振幅に対応する構成部品形状誤差を、前記振動分析テーブルと照合して求める形状誤差算出手段とを有するため、転がり軸受の振動に及ぼす構成部品の形状誤差の影響に関する知識が無くても、軸受振動波形から構成部品の形状誤差を簡単に得ることができる。これにより、軸受製造品質の向上や、軸受異常診断の推定精度の向上が期待できる。
この発明の転がり軸受の生産シスタムは、この発明の転がり軸受の回転振れ信号分析装置と、この装置で得た構成部品形状誤差を、前記転がり軸受の内輪、外輪、および転動体のうちの前記構成部品形状誤差に対応する構成部品を製造するラインにおける加工工程にフィードバックする手段とを備えるため、この発明の回転振れ信号分析装置を利用して軸受製造品質の向上を図ることができる。
参考提案例を図1および図2に基づいて説明する。この転がり軸受の回転振れ信号分析装置1は、コンピュータとこれに実行させる数値処理プログラム等によって構成され、次の各手段を有するものとされる。
この回転振れ信号分析装置1は、転がり軸受2の回転振れの変位を測定した波形の測定信号aを入力する測定信号入力手段4と、転がり軸受2の運転条件、内部諸元、および測定条件を記憶する条件記憶手段5と、この条件記憶手段5に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、測定信号入力手段4に入力された測定信号aから、転がり軸受2の内輪軌道面のうねり、外輪軌道面のうねり、転動体のうねり、および転動体の直径相互差の大きさのうちの少なくとも一つの値である構成部品形状誤差を、所定分析規則6に従って算出する分析手段7とを備える。なお、軌道面のうねりは、軌道面の円周方向の各部で径方向に凹凸していることを言う。
転がり軸受2は、例えば図6に示す深溝玉軸受などの玉軸受であり、内輪8と、外輪9と、これら内外輪8,9の軌道面8a,9a間に介在したボール等からなる複数の転動体10と、これら転動体10を保持する保持器11と、内外輪8,9間の軸受空間の両端を密封するシール12とで構成される。
図1において、回転振れ測定手段3は、例えば、外輪固定、内輪回転として外輪のラジアル振れの変位を変位センサ(図示せず)で測定するものであり、転がり軸受1の外輪を固定する手段、内輪を回転させる手段、および外輪の周面に対向する前記変位センサにより構成される。変位センサには、例えば静電容量型の変位センサが用いられる。
回転振れ測定手段3の変位センサの出力であるアナログ信号の測定信号aは、AD変換手段13によりディジタル信号に変換してから、回転振れ信号分析装置1の測定信号入力手段4に入力される。ディジタル信号に変換した測定信号aは、図2に示すように、回転振れ信号分析装置1の外部の回転振れ変位測定結果記憶手段13に一旦データファイルとして記憶させておき、そのデータファイルを転送して測定信号入力手段4により読み込むようにしても良い。また、測定信号aは、アナログ信号のままで測定信号入力手段4に入力するようにしても良いが、その場合、回転振れ信号分析装置1に、測定信号入力手段4に入力された信号をディジタル信号に変換するAD変換手段14を設ける。
測定信号入力手段4は、ディジタル信号用の入力ポート、またはデータファイルの入力手段、またはアナログ信号用の入力ポートのいずれかとされ、またはこれらのうちの複数種類のものを選択的に使用可能なものとされる。
回転振れ測定手段3の出力する測定信号aは、振幅信号に限らず、速度または加速度の信号であっても良いが、この参考提案例では、測定信号aが転がり軸受2の回転振れの変位を測定した振幅信号である場合につき説明する。
分析手段7は、周波数分析により形状誤差を算出する手段であり、フーリェ変換手段17と、形状誤差算出手段19とを備える。測定信号aは、AD変換手段14で離散化と量子化され、測定信号入力手段4からフーリェ変換手段17に入力される。測定信号入力手段4に測定信号aがアナログ信号で入力される場合は、回転振れ信号分析装置1の内部のAD変換手段14でディジタル信号に変換してフーリェ変換手段17に入力する。
フーリェ変換手段17は、周波数成分毎の振幅信号に変換する手段である。ここで、フーリェ変換手段17の前段に、窓関数やバンドパスフィルタなど、S/N比を改善するための前処理手段18を設けても良い。
条件記憶手段5は、上記のように転がり軸受2の運転条件、測定条件、軸受諸元を記憶させておく。運転条件は、例えば、内輪回転と外輪回転の区別、回転速度等である。軸受諸元は、ピッチ円径,転動体径,接触角など,転動体の自転と公転速度を決定できる指標となる値である。測定条件は、回転振れ変位測定手段3の軸受振動を検出するセンサの方向(アキシアル方向とラジアル方向の区別)、センサの種類(変位/速度/加速度,センサの物理量に対する電圧の変換係数)等である。これらの条件は、条件入力手段16から入力しておく。条件入力手段16は、キーボード等のオペレータによる入力手段であっても、また外部データの読み込み手段であっても良い。
分析手段7の上記所定分析規則19は、振動分析テーブル27で定められており、この振動分析テーブル27は、種々の運転条件、内部諸元、および測定条件に対応する軸受振動の周波数成分中の分析対象とする周波数と、その分析対象周波数における振動振幅の前記構成部品形状誤差に対する比である振幅比とを定めたものとされる。
形状誤差算出手段19は、条件記憶手段5に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件を、上記所定分析規則19の定められた振動分析テーブル27と照合して分析対象周波数を決定し、前記フーリェ変換手段17で得た周波数成分毎の振幅信号のうち、決定された分析対象周波数の成分の振幅信号を選択する周波数成分選択部20と、その選択した振幅信号の振幅に対応する構成部品形状誤差を、前記振動分析テーブル27と照合して求める形状誤差算出部21とで構成される。
振動分析テーブル27は、振動シミュレーションの結果、または振動測定による結果を纏め、前記各種条件等に応じて特定周波数の振幅比に対応する構成部品形状誤差形状が示されたものであれば良いが、具体例を挙げると、転がり軸受2が玉軸受の場合、表1に示すものとされる。
この表1は、前述の非特許文献1に示された表であって、玉軸受について、転動体と軌道面の弾性接触部における非線型接触を仮想の線ばねに置き換えて計算した振動シミュレーションの結果を纏めたものであり、内輪回転,外輪静止下の玉軸受における構成要素の形状誤差と振動の関係を示す。外輪回転の場合は、別の表(図示せず)を用いる。
Figure 0004912017
表1において、各変数ないし定数は次の事項を示す。
b :玉の自転周波数,Hz
c :保持器の自転周波数,Hz
i :保持器に対する内輪の相対回転周波数(fr −fc ),Hz
r :内輪回転周波数,Hz
n:任意の自然数
Z:転動体(玉)の数
α:接触角
表1を用いた計算手法を説明すると、ラジアル方向の振動測定結果から内輪軌道のうねりを求める場合、振動分析すべき周波数は、nZfi ±fr であり、fi (保持器に対する内輪の相対回転周波数)はfr −fc であるから、表1を用いる条件である内輪回転であること、センサの方向の他、n,Z,fc ,fr の値がわかれば良い。
このうち、内輪回転であることは、軸受運転条件からわかり、センサの方向は測定条件からわかる。また、Z(玉数)は、軸受諸元から、fc (保持器の自転周波数),fr (内輪回転周波数)は、運転条件における回転速度と軸受諸元とから定まる。nは任意の自然数であり、どの値とするかは周波数成分選択部20に適宜設定しておく。
周波数成分選択部20は、このように、振動分析テーブル27となる表1から、分析すべき周波数を決定する。
形状誤差算出部21は、フーリェ変換手段17で得た周波数成分毎の振幅信号のうち、上記のように周波数成分選択部20で決定した周波数成分についての振動の振幅値に対して、表1の該当する振幅比(上記の計算手法の例では「1」)で除算し、内輪軌道のうねりを求める。
形状誤差算出手段19は、上記と同様に表1を用いて、内輪軌道のうねりの他に、外輪軌道のうねり、玉の直径誤差、玉のうねりを求める。なお、形状誤差算出手段19は、これらの構成部品形状誤差である、内輪軌道のうねり、外輪軌道のうねり、玉の直径誤差、玉のうねりにつき、必ずしも全てを求めるものでなくても良く、少なくとも一つを求めるものであれば良い。
なお、軸受のラジアル内部すきまや荷重の大きさにより、振動周波数が計算上の値から僅かに異なる場合があるため、形状誤差算出手段19の周波数成分選択部20は、計算上の周波数近傍で周波数スペクトルのピーク検出機能を持たせ、これによる振幅を代表値して形状誤差算出部21により形状誤差を算出するようにしても良い。
形状誤差算出手段19は、このように求めた誤差を、出力手段23により、液晶表示装置やブラウン管等の画面表示装置24に出力する。
判定手段22は、形状誤差算出手段19の形状誤差算出部21の出力となる内輪軌道のうねり等の算出結果を設定値と比較し、異常有無の判定を行う手段である。例えば、選出された内輪軌道のうねりが閾値を超えると、異常と判定するものとする。あるいは、複数段階の閾値を設定し、第1の閾値未満は推奨範囲、第1の閾値を超え、第2の閾値までの間は要注意範囲、第2の閾値異常は異常範囲として判定するものとしても良い。
このような形状誤差算出手段19による形状誤差の算出結果や、判定手段22の判定結果は、出力手段23により、表示装置24に表示させる他に、分析結果記憶手段25に記憶させるようにしても良く、また加工設備26に転送して加工設備26における各部の調整等のためのフィードバック信号として用いるようにしても良い。
この構成の回転振れ信号分析装置によると、このように、条件記憶手段5に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、測定信号から、内輪軌道面のうねり、外輪軌道面のうねり、転動体のうねり、転動体の直径相互差等を所定分析規則に従って算出する分析手段7を設けたため、転がり軸受2の振動に及ぼす構成部品の形状誤差の影響に関する高度な知識がオペレータに無くても、軸受振動波形から構成部品の形状誤差を簡単に得ることができる。また、各種の換算や、軸受構成部品を単体に分解して測定するなどの煩雑な作業を行うことなく、軸受構成部品の形状誤差を求めることができる。これにより、軸受製造品質の向上や、軸受異常診断の推定精度の向上が期待できる。
図3は、この発明の実施形態を示す。参考提案例は、回転振れ測定手段3が振幅信号を測定するものである場合につき説明したが、回転振れ測定手段3は、転がり軸受2の回転振れの加速度または速度の信号を出力するものであっても良い。その場合、分析手段7は、図3に示すように、積分手段28を設け、周波数分析後に周波数で除算する積分処理を行うものとする。これにより、各軸受構成部品の形状誤差の大きさを算出可能になる。
この場合、分析手段7の所定分析規則6として前記と同じ振動分析テーブル27を有するものとし、また前記と同じく、フーリェ変換手段17と形状誤差算出手段19とを有するものとする。ただし、この場合のフーリェ変換手段17は、測定信号入力手段4に入力された測定信号をフーリェ変換して周波数成分毎の加速度または速度信号を得るものとする。形状誤差算出手段19は、周波数成分選択部20により、前記条件記憶手段5に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件を前記振動分析テーブル27と照合して分析対象周波数を決定する。この決定された分析対象周波数成分の信号を、周波数で除算する積分処理を、前記積分手段28で行って振幅信号とする。形状誤差算出27は、この振幅信号の振幅に対応する構成部品形状誤差を、振動分析テーブル27と照合して求める。
測定信号が加速度または速度の信号である場合は、周波数分析後に、周波数で除算する積分処理を行えば、振幅が求められるため、前記と同じ振動分析テーブル27を用いて、構成部品の形状誤差の大きさの算出が可能となる。
図4は、この発明の他の実施形態および参考提案例を示す。この参考提案例は、図1,図2に示す参考提案例において、非同期回転振れ算出手段29を設けたものであり、他の実施形態は、図3の実施形態において、非同期回転振れ算出手段29を設けたものである。非同期回転振れ(いわゆるNRRO)は、転がり軸受2の前記内輪軌道うねり等の各種の構成要素の製造誤差により発生するものとされており、許容値以下に管理する必要がある。非同期回転振れ算出手段29は、条件記憶手段5に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、前記測定信号入力手段4に入力された測定信号から、周波数分析により所定算出規則に従って転がり軸受2の非同期回転振れを算出する手段する手段である。非同期振れ算出手段29の前記所定算出規則は、内輪、外輪および転動体の形状誤差に起因する回転振れの全ての周波数の振幅の和を算出するものとされる。
上記の周波数分析による転がり軸受の非同期回転振れを算出する手法以外に、回転振れ波形の重ね書きにより、非同期回転振れを算出する手法も一般に用いられる場合がある。軸受内部の形状誤差のみでなく、例えばグリースのちょう度や粘度の安定性や潤滑油中のゴミ量を推し量る場合に有効である。使用する測定信号が同じであることから、この重ね書きによる処理法を前記処理装置に併設してもよい。重ね書き法では、回転輪の位相を横軸に、縦軸に測定信号とし、複数回分の波形を重ね書きした場合の、各位相での重ね書きされた波形群の最大値と最小値の差を全て求め,この差が最大となる位相での値を転がり軸受の非同期回転振れとして、算出する機能を備えればよい。
つぎに、この発明の転がり軸受の回転振れ信号分析装置を装備した転がり軸受の生産システムの一例を説明する。
図5は、回転振れ信号分析装置1を備えた転がり軸受製造ラインを示すブロック図である。この軸受製造ラインは、図6と共に前述した転がり軸受2を製造するものである。
図5において、この軸受製造ラインは、軌道輪製造ライン部31、組立工程部32、洗浄工程部33、第1の検査工程部34、充填工程部35、第2の検査工程部36、および梱包部37を順に有し、この他に転動体準備部38および保持器準備部39を有する。転動体準備部38および保持器準備部39は、他のラインで製造された転動体10および保持器11を各々準備する準備部であるが、これら転動体10および保持器11を製造する製造ライン部であっても良い。軌道輪製造ライン部31は、1本のライン部のみを図示してあるが、2本設けられ、各々の軌道輪製造ライン部31で内外の軌道輪である内輪8および外輪9が各々製造される。これら軌道輪製造ライン部31は、内輪8または外輪9の概略形状に鍛造した軌道輪素材を準備する素材準備部31aと、旋削工程部31bと、熱処理工程部31cと、研削工程部31dとを順に有し、素材準備部31aで準備された鍛造品の素材を旋削し、熱処理し、その後に研削する。
組立工程部12は、軌道輪製造ライン部31で製造された内輪8および外輪9と、転動体準備部38および保持器準備部39で各々準備された転動体10および保持器11とを組立て、組立品2Aとするものである。この組立品2Aは、洗浄工程部33で洗浄され、第1の検査工程部34で所定の検査が行われ、充填工程部35でグリースの充填およびシール12の取付けが行われて完成品の軸受2とされた後、第2の検査工程部36で再度所定の検査が行われ、梱包工程部37で梱包される。
各検査工程部34,36は、図1,図2に示した参考提案例の回転振れ信号分析装置1または図3,4の実施形態に係る回転振れ信号分析装置1を備え、それぞれ組立品2Aを、シール未装着の状態、および完成品の転がり軸受2となった状態で音響検査する。また、各検査工程部34,36は、回転振れ信号分析装置1により、またはその出力から別の判定手段により良否判定した結果、不良品と判定された組立品2Aを良品搬送経路外に排出する選別工程部34a,36aを有している。選別工程部34a,36aは、検査工程部34,36の直後の工程として設けても良く、また省略しても良い。
各検査工程部34,36に設けられた回転振れ信号分析装置1の出力となる形状誤差値は、その形状誤差を持つ軸受構成部品の製造ラインにフィードバック手段40によってフィードバックされる。例えば、回転振れ信号分析装置1で得た内輪8または外輪9の真円度(すなわち、軌道面のうねり)や直径相互差を、対応する各部品の加工工程にフィードバックし、例えば、研削工程部31dを構成する研削盤のドレス装置40の回数制御や研削液の保守・交換あるいは研削盤の保守に利用する。
このように形状誤差を加工工程にフィードバックすることで、精度の高い軸受構成部品を製造することができる。
参考提案例に係る転がり軸受の回転振れ信号分析装置の概念構成を示すブロック図である。 同回転振れ信号分析装置の具体的構成を示すブロック図である。 この発明の実施形態に係る転がり軸受の回転振れ信号分析装置の構成を示すブロック図である。 この発明の他の実施形態および参考提案例に係る転がり軸受の回転振れ信号分析装置の構成を示すブロック図である。 図1の参考提案例または図3,4の実施形態に係る転がり軸受の回転振れ信号分析装置を備えた転がり軸受の生産システムを示す概念構成のブロック図である。 同回転振れ信号分析装置の分析対象となる転がり軸受の一例を示す断面図である。
符号の説明
1…回転振れ信号分析装置
2…転がり軸受
3…回転振れ測定手段
4…測定信号入力手段
5…条件記憶手段
6…所定分析規則
7…分析手段
13,14…AD変換手段
17…フーリェ変換手段
18…形状誤差算出手段
20…周波数成分選択部
21…形状誤差算出部
26…加工設備
27…振動分析テーブル
28…積分手段
29…非同期振れ算出手段
40…フィードバック手段

Claims (4)

  1. 転がり軸受の回転振れによる軸受振動を測定した測定信号を入力する測定信号入力手段と、転がり軸受の運転条件、内部諸元、および測定条件を記憶する条件記憶手段と、この条件記憶手段に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、前記測定信号入力手段に入力された測定信号から、前記転がり軸受の内輪軌道面のうねり、外輪軌道面のうねり、転動体のうねり、および転動体の直径相互差の大きさのうちの少なくとも一つの値である構成部品形状誤差を、所定分析規則に従って算出する分析手段とを備え、前記測定信号が、加速度または速度の信号であって、前記分析手段の前記所定分析規則として、種々の運転条件、内部諸元、および測定条件に対応する軸受振動の周波数成分中の分析対象とする周波数と、その分析対象周波数における振動振幅の前記構成部品形状誤差に対する比である振幅比とを定めた振動分析テーブルを有し、前記分析手段は、前記測定信号入力手段に入力された測定信号をフーリェ変換して周波数成分毎の加速度または速度信号を得るフーリェ変換手段と、前記条件記憶手段に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件を前記振動分析テーブルと照合して分析対象周波数を決定し、この決定された分析対象周波数成分の信号を周波数で除算する積分処理を行って振幅信号とし、この振幅信号の振幅に対応する構成部品形状誤差を、前記振動分析テーブルと照合して求める形状誤差算出手段とを有する転がり軸受の回転振れ信号分析装置。
  2. 請求項において、前記条件記憶手段に記憶された運転条件、内部諸元、および測定条件に応じて、前記測定信号入力手段に入力された測定信号の周波数分析結果から、転がり軸受の内部の形状誤差に起因する全ての周波数成分の振幅の和を前記転がり軸受の非同期回転振れとして算出する非同期振れ算出手段を設けた転がり軸受の回転振れ信号分析装置。
  3. 請求項において、前記非同期振れ算出手段の前記所定算出規則は、回転輪の回転角を基準に振れ信号波形を複数回分重ね書きし、各位相での重ね書きされた波形群の最大値と最小値の差を全て求め、この差が最大となる位相での値を回転の非同期の振れとして算出するものとした転がり軸受の回転振れ信号分析装置。
  4. 転がり軸受を製造する生産システムであって、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の転がり軸受の回転振れ信号分析装置と、この装置で得た構成部品形状誤差を、前記転がり軸受の内輪、外輪、および転動体のうちの前記構成部品形状誤差に対応する構成部品を製造するラインにおける加工工程にフィードバックする手段とを備えることを特徴とする転がり軸受の生産システム。
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