JP4910887B2 - 光共振器、波長フィルタ及び光センサ - Google Patents

光共振器、波長フィルタ及び光センサ Download PDF

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Description

この発明は、光共振器、波長フィルタ及び光センサに関し、特にリング型の光共振器と、この光共振器を用いた波長フィルタ及び光センサに関する。
リング型光共振器は、入力光に対して特定の波長で共振させる光共振器であり、リング状の光導波路を有している。このリング型光共振器は、波長選択性に優れた波長フィルタを実現するための手段として、注目され盛んに研究されている。
従来、リング型の光共振器を構成する光導波路に光を入力するために、光導波路と光ファイバとを近接配置している(例えば、特許文献1又は2参照)。
特許文献1は、光ファイバの出力端を斜めに研磨することにより、光ファイバからの出力光を出力端面で全反射させ、出力端面での漏れ光(エバネッセント光)を、リング共振器にカップリングする方法を開示している。
特許文献2は、光ファイバの伝播方向に沿って、ある区間のクラッドを取り除くか、又はある区間のファイバ径を細めて形成し、これによりその区間に漏れ光を発生させて、リング共振器にカップリングする方法を開示している。
特許文献1又は2に開示された方法によれば、漏れ光を用いることでわずかな光をリング共振器に入力できるため、リング共振器の共振条件を乱すことがなく、この結果、共振強度を高く保つことができる。これによって、透過光強度の波長依存性について、半値幅が非常に狭い、すなわち波長選択性に優れた波長フィルタが実現される。
また、グレーティングを利用してリング型光共振器に光をカップリングする方法も提案されている(例えば、特許文献3又は4参照)。
特許文献3に開示された方法では、リング型光共振器を構成する光導波路自体にグレーティングを設けているため、カップリングが強すぎ、このため共振条件を乱す恐れがある。また、球状のリング型光共振器を構成する場合には、球面上にグレーティングを形成するのが困難である。
一方、特許文献4に開示された方法では、光共振器に光を導入するために用いられる入力用光導波路にグレーティングを設けている。この場合、特許文献3と同様に、カップリングが強すぎ、共振条件を乱す恐れがある。また、入力用光導波路に光を導入しなければならないため、不便である。
なお、これら特許文献1〜4に開示された従来例の他に、プリズムを利用してカップリングを行う方法もある(特許文献5参照)。
図1(A)を参照して、プリズムを利用してカップリングを行うリング型共振器の従来例について説明する。図1(A)に開示されたリング型光共振器110は、ガラスやプラスティックで形成された球状の芯部120と、芯部120の周囲に形成された、光導波部130を備えている。光導波部130は、例えば酸化チタン膜で形成される。
入射光(図中、矢印150で示す。)は、プリズム140の界面142で全反射する角度でプリズム140に入射される。
入射光150は、光導波部130を伝播する伝播光(図中、矢印160で示す。)と位相整合する条件を満たすように、プリズム140に入射される。このとき、入射光150は、プリズム140の界面142で全反射(図中、矢印152で示す。)するが、界面142での漏れ光により、入射光150のエネルギーが光導波部130に移行して、リング型光共振器110に光を励起することができる。この構成によれば、入射光150がプリズム140の界面142で全反射するので、余分な光が光導波部130に入りにくく、このため、ノイズの原因となる迷光の発生を低減することができる。
しかしながら、図1(A)に示されている構成では、光導波部130と、プリズム140の界面142とが接触した場合など、界面に局所的に異物が存在すると、この異物が存在する部分で散乱光が発生する。この散乱光が迷光となりノイズの原因となる場合がある。
一方、図1(B)に示すように、この散乱現象を積極的に利用してカップリングを行うこともできる。リング型光共振器110の径が、入力光(図中、矢印151で示す。)の波長に近い大きさ(波長の数倍以下)の場合、入力光151は、リング型光共振器110の光導波部130に入射した点132で散乱を受ける。この散乱光成分の一部が、光導波部130を伝播して共振する。
また、リング型の共振器として、光導波路膜に相当する部分を貴金属で形成して、表面プラズモンを伝播させる構造が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
米国特許第6,798,947号明細書 米国特許第6,865,317号明細書 米国特許出願公開第2005/0135453号明細書 米国特許出願公開第2005/0147355号明細書 特表2003−528452号公報 C.Rohde,K.Hasegawa,M.Deutsch著"Plasmon−assisted transparency in metal−dielectric microspheres"、Optics Letters Vol.32(2007)pp.415−417
しかしながら、図1(B)を参照して説明した散乱現象を利用する場合、入力光151のうち、光導波部130を伝播しないものの中には、リング型光共振器110の光導波部130及び芯部120を突き抜けて、芯部120及び光導波部130の、入力側とは反対側の界面134a又は134bで反射されるものがある(図中、矢印164で示す)。この反射された光164は、入力側及び出力側の界面間で多重反射して、リング型共振器とは異なる共振器を構成する。この結果、図1(A)に示した構成におけるプリズムでの散乱光に起因するノイズよりもさらに大きなノイズになる恐れがある。
また、非特許文献1に開示されている表面プラズモンを伝播させる構成では、共振器の材料に高価な貴金属を用いる必要があり、コスト的に不利である。
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、簡単に製造でき、かつ安価な構成であり、迷光によるノイズの発生を防止する光共振器と、この光共振器を用いた波長フィルタ及び光センサを提供することにある。
上述した目的を達成するために、この発明の光共振器は、表層が金属で構成されている芯部と、この芯部の周囲に形成された光導波部であって、光導波部内を伝播光がリング状に周回することにより共振する当該光導波部とを備えて構成されるとともに、伝播光が周回する経路中に、他の部分よりも曲率半径が小さい部分を有し、この曲率半径が小さい部分を介して、光が入出力される。
上述した光共振器の実施にあたり、光導波部が、高屈折率の材料で形成されているのが好適である。
上述した光共振器の実施にあたり、好ましくは、光導波部と芯部の間に光導波部よりも屈折率の小さい低屈折率部を有するのが良い。
また、上述した光共振器の好適実施形態によれば、芯部が、底面の形状が円である円柱状であり、及び、伝播光が、円柱状の芯部の側面に沿って周回するのが良い。
このとき、曲率半径が小さい部分が、経路の2つの領域に設けられていて、一方が、入力光が入力される入力部分であり、他方が、出力光が出力される出力部分である構成にしても良い。
また、曲率半径が小さい部分が、経路の1つの領域に設けられていて、当該領域が、入力光が入力され、及び、出力光が出力される入出力部分である構成にしても良い。
また、この発明の波長フィルタは、入力側光ファイバ、共振器及び出力側光ファイバを備えて構成される。入力側光ファイバを経て光が入力され、入力された光のうち、共振器において特定の波長成分の光が共振される。共振した特定の波長成分の光は、出力側光ファイバを経て出力される。共振器を、上述した光共振器とする。
そして、出力側光ファイバの入力端面に、出力側光ファイバのコアに対応する部分に開口を有する遮光マスクを設けるのが良い。
また、この発明の波長フィルタは、共振器及びサーキュレータを備えて構成される。外部から入力された光は、サーキュレータを経て共振器に送られる。入力された光のうち、共振器において特定の波長成分の光が共振され、この特定の波長成分の光がサーキュレータを経て出力される。共振器を、上述した、曲率半径が小さい部分が、経路の1つの領域に設けられている光共振器とする。
また、この発明の光センサは、入力部、共振部及び受光部を備えて構成される。入力部は、入力光を共振部へ送る。共振部は、周囲を満たす媒体中に配置されており、その表面上に媒体の条件により屈折率が変化する屈折率変化膜を備えている。そして、共振部は、屈折率変化膜の屈折率の変化に応じて波長が変化した共振器の共振条件を満たす光を受光部へ送る。受光部は、波長が変化した共振条件を満たす光を検出する。ここで、共振部が備える共振器を、上述の光共振器とする。
そして、媒体の条件を、(1)媒体中の抗体の有無、(2)媒体の組成、(3)媒体のPH、及び(4)媒体の湿度からなる群より選択される1以上の条件とするのが良い。
この発明の光共振器によれば、表層が金属で構成されている芯部と、この芯部の周囲に光導波部を備えている。このため、光共振器に入力された光の中で、光導波部を伝播しない成分は、芯部の金属に吸収されるので、光導波部及び芯部を突き抜けて、芯部内で共振する恐れがなくなる。この結果、迷光によるノイズを低減できる。
また、光導波部が、伝播光が周回する経路中に、他の部分よりも曲率半径が小さい部分を有するので、曲率半径が大きい部分では、光の放射が少なく、曲率半径が小さい部分で、光の放射が多くなる。さらに、曲率半径が小さい部分を介して光を入出力するので、光の入出力効率が高まる。
光導波部と芯部の間に光導波部よりも屈折率の小さい低屈折率層を有する構成にすると、光導波部を伝播する光は、光導波部と低屈折率部の界面で反射されて、主に光導波部内を伝播する。この結果、伝播光が芯部の表面の金属で吸収されなくなるので、吸収による光の損失が減り、共振強度を高くすることが可能になる。
このため、曲率半径が小さい部分を、経路の2つの領域に設けて、一方を、入力光が入力される入力部分とし、他方を、出力光が出力される出力部分とすれば、光共振器への入力及び光共振器からの出力の効率が高まるとともに、入力部分及び出力部分以外での光の放射量、すなわち光の損失量を低減することができる。
また、曲率半径が小さい部分を、経路の1つの領域に設けて、当該領域を、入力光が入力され、及び、出力光が出力される入出力部分である構成にしても、曲率半径が小さい部分を、2箇所に設けたときと同様の効果が得られる。
また、上述した構成を有する光共振器を波長フィルタに用いれば、簡単な構成で、ノイズの少ない、波長選択性に優れた波長フィルタが得られる。
また、上述した構成を有する光共振器を光センサに用いれば、屈折率変化膜の周囲の条件により共振条件を満たす波長が変わるが、この波長選択性に優れるので、高精度の測定が可能になる。
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
(第1参考例の光共振器)
図2を参照して、第1参考例のリング型光共振器(以下、単に光共振器と称することもある。)について説明する。図2は、第1参考例の光共振器について説明するための概略図であり、主要部の切断端面を示している。
光共振器10は、芯部20と、芯部20の周囲に形成された光導波部30とを備えている。
芯部20は、球状であって、光導波部30は芯部20の表面20a上に形成されている。図2は、球の中心を通る平面についての切断端面を示している。
なお、芯部20を、底面の形状が円である円柱状として、光導波部30が有する経路を円柱の側面上、すなわち円周面上に設けてもよい。この場合、底面に平行な面についての切断端面は、図2と同様になる。
芯部20は、少なくともその表層が金属で構成されている。芯部20として、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)などの金属球を使用することができる。
ここで、光共振器10には、平面波又は集光ビームが入射され、光共振器10に入射した点32で発生する散乱光の中で、光導波部に導入されたものが伝播光62となり、共振する。散乱光を発生させるためには、光共振器10の大きさを小さくするのが良く、光共振器10の直径を1〜100μm程度にするのが好適である。特に、光共振器10に入射される光(図中、矢印50で示す。)の波長に対して、芯部20の直径を数倍以下にすると効果的である。
なお、芯部20として、ガラス、石英、プラスティックの球体を用意し、その表面を、Au、Ag、Cu、Al、Niなどの金属膜で覆うことにより、その表層を金属で構成しても良い。数μm程度の大きさの球体としては、プラスティックの中でも特にポリスチレン材料のものが良く知られている。
ここで、金属膜は、例えば従来周知の無電解めっきにより形成することができる。必要とされる金属膜の厚みは、金属の種類、芯部の径、使用される波長等に応じて定まる。芯部の直径が1〜100μm程度の場合、金属膜は100nm以上の厚みにすれば、光の透過を遮断できる。なお、例えば、金属膜としてAuを用いた場合、金属膜の厚みを20nm程度にしても、光の透過を遮断できる場合があるなど、金属膜の厚みを100nmより小さくすることも可能である。
この光共振器10では、伝播光62が、光導波部30内をリング状に周回することにより共振する。光導波部30の材料としては、高屈折率の材料、例えば、ガラス、石英、ポリメタクリル酸メチル(PMMA:polymethyl methacrylate)、酸化チタン(TiO)、五酸化タンタル(Ta)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)などを用いることができる。光導波部30は、0.1〜1μm程度の厚みで形成される。
光導波部30の屈折率が、光共振器10の周囲(外周囲)の屈折率よりも十分高ければ、伝播光62を光導波部30に閉じ込めることが可能になり、この場合、光導波部30を伝播光62が周回する際に生じる放射光(図中、矢印63で示す。)を低減することができる。なお、光導波部30の屈折率は、周囲の屈折率よりも少なくとも数%は高い必要がある。光導波部30と周囲との屈折率の差は、芯部20の径に依存し、芯部20の径が小さい場合(例えば、10μmの場合)は、数10%程度高くする必要がある。
ガラス、石英、PMMAは、屈折率が1.5程度であるので、外周囲が、屈折率1.33の水である場合に、光導波部30の材料として適用できない場合がでてくる。これに対し、TiO,Ta、Si、SiCは、屈折率が2.5〜3.5と大きいので、光導波部30の材質として好適である。
光導波部30の作成方法としては、酸化チタンを溶液中で球体に塗布する方法が知られている(例えば、M.Haraguchi et al.,“Fabirication and optical characterization of a TiO thin film on a silica microsphre”,Surface Science 548(2004)59−66参照)。
この光共振器10から放射される、共振した光の中で、所定の方向に放射された光が出力光(図中、矢印52で示す。)として出力される。
第1参考例の光共振器によれば、表層が金属で構成されている芯部と、この芯部の周囲に光導波部を備えている。このため、光共振器に入力された光の中で、光導波部を伝播しない成分は、芯部の表層の金属に吸収されるので、光導波部及び芯部を突き抜けて、芯部や、光導波部の入力側とは反対側の界面で反射されて共振する恐れがなくなる。この結果、迷光によるノイズを低減できる。
ここで、芯部を円柱状又は球状の構成にすると、製造が容易になる。
なお、上述した光共振器は、芯部の表層が金属で構成されていて、その表面上に設けられた光導波部内を伝播光が周回する。このため、伝播光の一部は、この芯部の表層の金属に吸収され共振強度が低下する恐れがある。これを防ぐため、芯部の表層には、光吸収の少ない金属、特に、AuやAgなどの貴金属を用いるのが好適である。
(第2参考例の光共振器)
図3を参照して、第2参考例の光共振器について説明する。図3は、第2参考例の光共振器について説明するための概略図であり、主要部の切断端面を示している。
第2参考例の光共振器11は、光導波部30と芯部20の間に、光導波部30よりも屈折率の小さい低屈折率部40を有する点が第1参考例の光共振器と異なっていて、それ以外の構成は、第1参考例の光共振器と同様である。従って、ここでは、重複する説明を省略する。
低屈折率部40は、芯部20の表面上に形成されていて、光導波部30は低屈折率部40上に形成されている。
低屈折率部40は、光導波部30よりも屈折率が小さい材料で形成される。従って、光導波部30として、屈折率が2.5〜3.5のTiO,Ta、Si、SiCを用い、及び、低屈折率部40として例えば、ガラス、プラスティックなど屈折率が1.5程度の材料を用いることができる。
ここで、低屈折率部40は、金属による光吸収を防止するために、光導波部30を伝播する光が芯部20から十分離れて周回できるだけの厚みが必要で、100〜200nm程度の厚みで形成される。
低屈折率部40を備えない構成の場合、芯部の表層の金属に、光吸収が小さいAuやAgなどの貴金属を用いたとしても、光吸収による損失は避けられず、共振強度を低下させ、出力強度、波長選択性能などの特性を劣化させる恐れがある。
これに対し、第2参考例の構成によれば、伝播光は光導波部30内を、低屈折率部40や周囲との界面で全反射を繰り返しながら周回する。この結果、伝播光が芯部20の表層で吸収される恐れが低減されるので、貴金属でなく、より低コストの光吸収係数の大きい金属、Cu、Al、Niであっても共振強度を高くすることが可能になる。
(第実施形態の光共振器)
図4(A)〜(C)を参照して、第実施形態の光共振器について説明する。図4(A)〜(C)は、第実施形態の光共振器について説明するための概略図であり、それぞれ主要部の切断端面を示している。
実施形態の光共振器は、芯部及び光導波部の形状が第1参考例や第2参考例の光共振器と異なっていて、材質などそれ以外の構成は、第1参考例や第2参考例の光共振器と同様である。従って、重複する説明を省略する場合がある。
実施形態の光共振器12は、芯部23が、底面の形状が楕円である楕円柱状であり、光導波部33は、楕円柱の側面上に形成される。図4(A)は、光共振器の、底面に平行な面についての切断端面を示す図である。
この構成によれば、伝播光は楕円状の経路を周回する。この楕円状の経路では、楕円の長軸の両端付近の2つの領域12a及び12bにおいて、曲率半径が他の部分よりも小さくなる(図中、Aで示す部分)。
曲率半径が大きい部分では、光の放射が少なく、曲率半径が小さい領域12a及び12bで、光の放射が多くなる。このため、曲率半径が小さい領域を出力部分とすれば、出力部分では、他の部分よりも放射強度が高くなる。また、共振器への光の入力については、光の放射の逆過程と考えることができ、曲率半径が小さい部分で、光導波部への光の入力効率が高まる。
従って、2箇所の曲率半径が小さい領域の一方(例えば12a)を、入力光が入力される入力部分とし、他方(例えば12b)を、出力光が出力される出力部分とすれば、光共振器への入力及び光共振器からの出力の効率が高まるとともに、入力部分12a及び出力部分12b以外での光の放射量、すなわち光の損失量を低減することができる。
ここでは、光共振器の形状が楕円柱の場合について説明したが、この例に限定されない。芯部の形状を、楕円を、その長軸を回転軸として回転させて得られる回転楕円体としても良い。この場合、回転軸を含む平面についての切断端面は、図4(A)と同様になる。
ここでは、第1参考例と同様に、光共振器が低屈折率部を備えない構成を例にとって説明したが、この例に限定されない。
図4(B)に、光共振器13が、芯部23と光導波部33の間に低屈折率部43を備える例を示す。
図4(B)に示すように、伝播光が周回する経路中に、曲率半径が小さい部分を設けて、かつ、低屈折率部43を備える構成とすれば、入出力の効率が第2参考例の光共振器よりも高まるとともに、伝播光の吸収も低減されるので、図4(A)に示した光共振器よりも共振強度が高くなる。
また、経路は、曲率半径が小さい部分が2つの領域にあれば良いので、経路の形状は楕円でなくても良い。図4(C)に示すように、曲率半径が小さい部分を2つの領域14a及び14bに設けて、曲率半径が小さい部分のそれぞれが、曲率半径が極小となる点Aを2箇所ずつ有する構成としても良い。
この曲率半径が小さい領域の位置と、その曲率半径を変更することで、出力光55の方向や、ビームスポットの形状を任意に変更でき、後述する波長フィルタ等で使用する場合に、光ファイバなどの出力部に入力する際の損失を低減することができる。
(第実施形態の光共振器)
図5を参照して、第実施形態の光共振器について説明する。図5は、第実施形態の光共振器について説明するための概略図であり、主要部の切断端面を示している。
実施形態の光共振器は、曲率半径が他の部分よりも小さい部分が、1つの領域に設けられている点が、第実施形態の光共振器と異なっていてそれ以外は第実施形態の光共振器と同様である。従って、重複する説明を省略する場合がある。
図5に示されるように、第実施形態の光共振器は、曲率半径が他の部分よりも小さい部分が1箇所のみである。上述したように、曲率半径が小さい部分は、他の部分に比べて、光の入力効率及び出力効率が高いので、この部分を、入力光が入力され、かつ出力光が出力される入出力部分として用いることができる。
実施形態の光共振器によれば、第実施形態の光共振器と同様に、光共振器への入力及び光共振器からの出力の効率が高まるとともに、入力部分及び出力部分以外での光の放射量、すなわち光の損失量を低減することができる。
(波長フィルタ)
図6を参照して、第1及び第2参考例と第1実施形態の光共振器を用いた波長フィルタについて説明する。図6は波長フィルタを説明するための模式図である。
この波長フィルタ16は、入力側光ファイバ70、共振器13及び出力側光ファイバ80を備えて構成されている。入力側光ファイバ70と出力側光ファイバ80とは、入力側光ファイバ70の出力端面74と、出力側光ファイバ80の入力端面84とが対向するように離間して配置されている。図6は、この入力側光ファイバ70と出力側光ファイバ80の間に、共振器13として、図4(B)を参照して説明した第実施形態の光共振器13が設けられている例を示している。なお、光共振器13はこの例に限定されず、第実施形態の他の構成や、第1及び第2参考例の光共振器を用いても良い。
波長フィルタ16に入力された光50は、入力側光ファイバ70の出力端面74から出力されて光共振器13に送られる。入力側光ファイバ70から出力された光は、光共振器13に到達すると散乱する。散乱した光の一部が、光共振器13の光導波部33内に導入され、伝播光となる。
ここで、入力光50のビーム径を、光共振器13の芯部23の径と同一としている。すなわち、入力側光ファイバ70のコア72の径を、芯部23の径と同一にしている。これは、ビームスポットの径が芯部23の径よりも大きくなると、光共振器とカップリングしない光が多くなることによる。このカップリングしない光は、光共振器の周囲を通過して、出力光に混ざってしまい、ノイズの原因となる。このため、入力光50のビームスポットの径は、芯部23の径の2倍が限度と考えられる。
なお、出力側光ファイバ80の入力端面84に、出力側光ファイバ80のコア82に対応する部分に開口を有する遮光マスクを設けても良い。この遮光マスクを設けることで、光共振器とカップリングしない光である迷光が、出力側光ファイバ80に入り込むのを防ぐことができる。
図7及び8を参照して、波長フィルタのフィルタ特性について説明する。図7及び8は、波長フィルタ特性についてのシミュレーション結果を示す特性図である。ここで、シミュレーションは、2次元時間領域差分(FDTD:Finite Difference Time Domain)法を用いて、伝播方向の電気ベクトルの成分が0であるTE波に対して行った。図7及び8では、横軸に出力波長(単位:μm)をとって示し、縦軸に出力強度を取って示している。なお、出力強度については、入力光の光強度を1として、この入力強度に対して規格化した値で示している。ここで、光導波部の形状及び大きさ、並びに低屈折率部の有無により、共振条件、すなわち出力強度が最大になる波長が変わっている。
図7(A)は、図2を参照して説明した第1参考例の光共振器を用いた場合のシミュレーション結果である。ここでは、芯部を半径が2μmのニッケル球とし、光導波部を、厚みが0.3μmの酸化チタン膜(屈折率2.5)としている。
図7(B)は、図3を参照して説明した第2参考例の光共振器を用いた場合のシミュレーション結果である。ここでは、芯部を半径が2μmのニッケル球とし、光導波部と芯部の間に低屈折率部を有している。低屈折率部を、厚みが0.15μmのガラス(屈折率1.5)とし、光導波部を、厚みが0.3μmの酸化チタン膜(屈折率2.5)としている。
図7(A)と図7(B)とを比較すると、図7(A)では、波長が0.68〜0.69μmのときに、出力強度が最大となり、その大きさが0.07程度であるのに対し、図7(B)では、波長が約0.84μmのときに、出力強度が最大となり、その大きさが0.1よりも大きくなる。このように、第2参考例の構成によれば、第1参考例の構成に比べて、出力強度が最大となる波長について、30%程度の出力強度の増大が見られる。これは、伝播光の芯部による吸収が小さく抑えられるためである。
図8(A)及び(B)は、それぞれ図4(A)及び(B)を参照して説明した第実施形態の光共振器についてのシミュレーション結果を示す図である。
図8(A)及び(B)は、芯部の断面形状が楕円形状であり、芯部上に光導波部を備えている。図8(A)は、低屈折率部を備えない構成であり、図8(B)は、低屈折率部を備える構成である。
芯部の断面形状については、楕円の短軸の長さを1.6μmとし、長軸の長さを3.2μmとしている。また、光導波部の厚みを0.3μmとし、図8(B)では、低屈折率部の厚みを0.15μmとしている。
図8(A)と図8(B)を比較すると、図8(A)では、波長が約1.16μmのときに出力強度が最大となり、その値が0.3程度であるのに対し、図8(B)では、波長が約1.36μmのときに出力強度が最大となり、その値が0.6以上と、図8(A)に示した値の2倍以上になる。これは、伝播光の芯部による吸収が小さく抑えられるためである。
また、図7(A)と図8(A)を比較すると、光強度が4倍以上になり、図7(B)と図8(B)を比較すると、光強度が5倍以上になっている。
これは、光共振器がともに低屈折率部を備えない場合は、芯部の断面形状が楕円形のときは、円形の場合に比べて、出力強度が高いことを示している。同様に、光共振器がともに低屈折率部を備える場合は、芯部の断面形状が楕円形のときは、円形の場合に比べて、出力強度が高いことを示している。
断面形状が円形の場合は、出力強度が入力強度の10%程度であるが、断面形状が楕円形の場合は、出力強度が入力強度の30%以上となり、さらに低屈折率部を備える構成にすれば60%以上となる。
断面形状を楕円形状にすると、出力強度は入力強度の30%以上、すなわち−1.5dBの光損失が実現できる。
ここでは、入力光が共振器に入力された点で発生する散乱を利用して、共振器の光導波部に入力光を導入する例について説明したが、この例に限定されない。
プリズムの界面と共振器が接触した場合など、界面に局所的に異物が存在すると、この異物が存在する部分で散乱光が発生するが、この散乱光の中で、芯部に入力される迷光は、芯部の表層の金属で吸収されるので、ノイズの原因となる芯部内での共振が起こらない。従って、プリズムを用いて入力する構成も可能である。このとき、図1(A)を参照して説明した従来例と異なり、プリズムと光共振器が接するなど、散乱光が発生する場合であっても迷光によるノイズの影響は受けにくい。
(波長フィルタの他の構成例)
図9を参照して、波長フィルタの他の構成例として、第実施形態の光共振器を用いた波長フィルタについて説明する。図9は波長フィルタの他の構成例を説明するための模式図である。
この波長フィルタは、共振器15及びサーキュレータ90を備えて構成されている。サーキュレータ90と共振器15の間、及びサーキュレータ90の入力側及び出力側には光ファイバが接続されている。共振器として、図5を参照して説明した第実施形態の光共振器15を用いる。この光共振器15は、入力部と出力部を共用している。
サーキュレータ90に入力された光50は、共振器15に送られる。共振器15で共振した波長成分の光は、入力された光と逆の経路を通って、サーキュレータ90に送られる。その後、サーキュレータ90から出力される(図中、矢印59で示す)。
(光センサ)
図10を参照して、この発明の光センサについて説明する。
光センサ18は、入力部71及び受光部81と、入力部71及び受光部81間に共振部95とを備えていて、共振部95の周囲の媒体(液体又は気体)の条件(組成、PH、湿度等)を測定する。リング型光共振器を用いた光センサ自体は、公知であるが(例えば、I.M.White et al.“Subfemtomole detection of small moleculres with microsphre sensors”、OPTICS LETTERS Vol.30(2005)pp.3189−3191参照)、ここでは、図2〜4を参照して説明した、第1及び第2参考例並びに第1実施形態のいずれかのリング型光共振器を用いる。なお、リング型光共振器としては、入力及び出力効率を高めるため、図4(B)に示したような、楕円型の経路を有していて、光導波部と芯部の間に低屈折率部を有する光共振器を用いるのが好適である。
入力部71は、入力側ホルダ73と、入力側ホルダ73に取り付けられた光ファイバ75を備えている。
共振部95は、入力側ホルダ73に凹部77を設けて、この凹部77内に取り付けられる。このとき、共振部95は、必要に応じて樹脂などを用いて取り付けられる。
共振部95は、リング型の光共振器13の表面上に屈折率変化膜94を備えていて、その周囲が媒体で満たされている。このリング型光共振器13の構成については、図4(B)を参照して説明した第実施形態と同様なので、説明を省略する。
屈折率変化膜94は、媒体の組成、PH、湿度等により屈折率が変化する膜であって、例えば、抗体や高分子材料で形成される。
入力部に入力された光は、光ファイバ75を伝播して、共振部95に送られる。
共振部95からは、共振条件を満たす波長の光(図中、矢印58で示す。)が出力され、この光58が受光部81に送られる。
受光部81は、受光側ホルダ83と、受光側ホルダ83に取り付けられた、CCDセンサなどの受光素子85とを備えている。共振部95から送られた光58は、受光部81が備える受光素子85で測定される。
共振部95では、周囲の媒体の条件により屈折率変化膜94の屈折率が変化し、それによって、リング型光共振器13の共振条件を満たす波長が変わる。従って、CCDセンサで測定された光の波長から、媒体の組成、PH、湿度がわかる。
例えば、屈折率変化膜94として、厚みが20nmの抗体の膜とする。また、リング型光共振器13については、図4(B)を参照して説明したのと同様の構成で、芯部23の断面形状については、楕円の短軸の長さを1.6μmとし、長軸の長さを3.2μmとしている。また、光導波部33の厚みを0.3μmとする。
この場合、屈折率変化膜94を構成する抗体に対応する抗原が媒体中に存在すると、抗原が存在しない時の共振波長が例えば1.2μmであるとき、5nm程度変化する。
図10には、共振部95を3つ備える例を示しているが、共振部95の個数は3つに限定されない。屈折率変化膜94、入力光の中心波長、センサの感度領域など条件を変えたセンサの組を測定条件の種類等に応じて複数用意して、1度の測定で媒体に対して複数のデータを取得することができる。
なお、同じ条件の共振器、入力光、センサを複数設けて、測定感度を高める構成にしても良いし、光センサを2次元的に配列して、平面分布のデータを取得する構成にしても良い。
また、1つの抗原について、1つの抗体を屈折率変化膜94に用いて測定する場合など、共振部を1つだけ備える構成にしても良い。
リング型光共振器の従来例を示す模式図である。 第1参考例のリング型光共振器を説明するための模式図である。 第2参考例のリング型光共振器を説明するための模式図である。 実施形態のリング型光共振器を説明するための模式図である。 実施形態のリング型光共振器を説明するための模式図である。 波長フィルタを説明するための模式図である。 波長フィルタ特性を示す特性図(その1)である。 波長フィルタ特性を示す特性図(その2)である。 波長フィルタの他の構成例を説明するための模式図である。 光センサを説明するための模式図である。
符号の説明
10、11、12、13、14、15 光共振器
16、17 波長フィルタ
18 光センサ
20、23、24、25 芯部
30、33、34、35 光導波部
40、43、44、45 低屈折率部
70 入力側光ファイバ
71 入力部
72、82 コア
74 出力端面
73 入力側ホルダ
75 光ファイバ
80 出力側光ファイバ
81 受光部
83 受光側ホルダ
84 入力端面
85 受光素子
90 サーキュレータ
94 屈折率変化膜
95 共振部

Claims (11)

  1. 表層が金属で構成されている芯部と、
    該芯部の周囲に形成された光導波部であって、前記光導波部内を伝播光がリング状に周回することにより共振する当該光導波部と
    を備え
    前記伝播光が周回する経路中に、他の部分よりも曲率半径が小さい部分を有し、該曲率半径が小さい部分を介して、光が入出力される
    ことを特徴とする光共振器。
  2. 前記光導波部が、高屈折率の材料で形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の光共振器。
  3. 前記光導波部と前記芯部の間に、前記光導波部よりも屈折率の小さい低屈折率部を有する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光共振器。
  4. 前記芯部が、底面の形状が円である円柱状であり、及び
    前記伝播光が、前記円柱状の芯部の側面に沿って周回する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光共振器。
  5. 前記曲率半径が小さい部分が、前記経路の2つの領域に設けられていて、
    一方が、入力光が入力される入力部分であり、
    他方が、出力光が出力される出力部分である
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光共振器。
  6. 前記曲率半径が小さい部分が、前記経路の1つの領域に設けられていて、
    当該領域が、入力光が入力され、及び、出力光が出力される入出力部分である
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の光共振器。
  7. 入力側光ファイバ、共振器及び出力側光ファイバを備えて構成される波長フィルタであって、
    前記入力側光ファイバを経て光が入力され、
    入力された前記光のうち、前記共振器において特定の波長成分の光が共振され、
    該特定の波長成分の光が前記出力側光ファイバを経て出力され、及び
    前記共振器を請求項1〜5のいずれか一項に記載の光共振器とする
    ことを特徴とする波長フィルタ。
  8. 前記出力側光ファイバの入力端面に、該出力側光ファイバのコアに対応する部分に開口を有する遮光マスクを設けることを特徴とする請求項7に記載の波長フィルタ。
  9. 共振器及びサーキュレータを備えて構成される波長フィルタであって、
    外部から入力された光が前記サーキュレータを経て前記共振器に送られ、
    前記入力された光のうち、前記共振器において特定の波長成分の光が共振され、
    該特定の波長成分の光が前記サーキュレータを経て出力され、及び
    前記共振器を請求項に記載の光共振器とする
    ことを特徴とする波長フィルタ。
  10. 入力部、共振部及び受光部を備えて構成され、
    前記入力部は、入力光を前記共振部へ送り、
    前記共振部は、その周囲を満たす媒体中に配置されており、共振器の表面上に、前記媒体の条件により屈折率が変化する屈折率変化膜を備えていて、該屈折率変化膜の屈折率の変化に応じて波長が変化した前記共振器の共振条件を満たす光を前記受光部へ送り、
    前記受光部は、波長が変化した前記共振条件を満たす光を検出し、及び
    前記共振部が備える前記共振器を、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光共振器とする
    ことを特徴とする光センサ。
  11. 前記媒体の条件を、(1)該媒体中の抗体の有無、(2)該媒体の組成、(3)該媒体のPH、及び(4)該媒体の湿度からなる群より選択される1以上の条件とすることを特徴とする請求項10に記載の光センサ。
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