本出願は、2007年5月27日に出願された米国仮特許出願シリアル番号60/932、094「特異的な配列補完(DSF)により可能になる連続的アダプター連結および増幅を用いたハイスループット突然変異スクリーニング法」の優先権を主張するものである。
本開示は、多様な遺伝子における多様な遺伝子変性の同時検出を促進する方法および産物に関するものである。
遺伝子変異は、癌および様々な感染症の原因、進行、および薬剤耐性において重要な役割を果たす。遺伝子によっては特定の癌および薬剤性突然変異への関わりに偏りが認められるが、患者間で大きく異なっており、多様な遺伝子が関与すると考えられる。そのため、多様な遺伝子の同時検査を促進する簡易な方法の必要性が強調されている。しかし、ヒトゲノムの複雑性および配列の相同性により、このような目標を達成するのは極めて困難である。遺伝子検出の特異度を確認し、感度を強化するため、現行のアッセイには問題となる各目的遺伝子に特異的な増幅法が必要である。同様に、薬剤耐性菌をもたらす突然変異は患者間で異なり、様々な微生物のサブタイプでは臨床像が類似している。結果として、感染性微生物における突然変異スクリーニングにも、根気のいる多様な増幅法と配列決定法が必要である。さらに、ほとんどのアッセイの感度は、約1〜10%までである。したがって、より高感度のアッセイが実施できない限りは、発現率の低い突然変異の存在は検出できない。
本開示は、それぞれ「ブロッキング・アダプター」および「レポーター・アダプター」と呼ばれる2種類の一般的なアダプターを用いて、多数の多様な遺伝子領域の同時スクリーニングするための一般化された戦略について記述している。正常な野生型では、ブロッキング・アダプターは、連結される唯一のアダプターである。突然変異存在下では、相補的デオキシリボヌクレオチド三リン酸を用いた特異的な配列補完(DSF)により、ブロッキング・アダプターとレポーター・アダプターの連続連結が可能になり、一本鎖DNA特異的ヌクレアーゼ消化および完全長塩基配列の伸長から保護される。これにより、下流のRNAとブロッキング・アダプターのセンス鎖が移動し、レポーター・アダプターと連結するため3’側にオーバーハングが作製され、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドが形成される。相補dNTPによる補完が不完全な変異体および相同性配列は、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化により断片化され、それによって完全長塩基配列の伸長およびレポーター・アダプターとの連結が妨げられる。レポーター・アダプターまたは変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドを目的とすることで、相補dNTPにより補完される変異体を検出/定量化または増幅し、頻度の少ない変異体を高感度検出する。関与する突然変異の起源および数を問わず、全ての異なる変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドは、二本鎖アダプターの連結部位に同一の配列を共有していることに留意する。したがって、突然変異の検出力は、まさにこの2種類の一般的なプライマー(ブロッキング・アダプター由来のプライマーとレポーター・アダプター由来のプライマー)を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増強される。同様に、リガーゼ連鎖反応(LCR)または核酸増幅法(TMA)等、その他の配列増幅法も、共有の配列を標的とするようになると考えられる。多様な標的に特異的な配列増幅法の必要がなければ、本開示に記載の方法により、多数の多様な試料中の多数の多様な遺伝子に対するハイスループット突然変異スクリーニングが実行しやすくなる。
本開示について基本的理解を得るため、以下に本開示の様々な用途の可能性について概要を記載する。本開示の主要または重要な要素を確認する、あるいは本請求項の範囲を解明または制限するなどの意図はない。その後のより詳細な説明の導入として、一般的な形式で本開示のいくつかの概念を提示するのみである。
非制限的実施形態により、多様な標的に特異的な配列増幅反応の必要がない場合に、多様な遺伝子における多数の多様な遺伝子変性の同時検出を促進する方法を提供する。概して、これは問題の多様な遺伝子領域を含む多数の多様なアンチセンス野生型デオキシリボ核酸(DNA)プローブを用いた、少なくとも1種類のリボ核酸(RNA)試料のインキュベート・ステップで開始する。各アンチセンスDNAプローブは、5’末端に少なくとも1つの別のデオキシリボヌクレオチド(好ましくはデオキシチミジン、デオキシ‐T)を持つ。結果生じるRNA:DNAのヘテロ二本鎖分子をリボヌクレアーゼで消化すると、ハイブリダイゼーションされないリボヌクレオチドがミスマッチ部位(一塩基ミスマッチ部位、多塩基ミスマッチ部位、および5’に別のデオキシ‐Tが存在するためアンチセンスDNAプローブと対にならない目的RNAの3’末端など)で加水分解される。一塩基ミスマッチ部位は、概して一塩基突然変異または一塩基多型(SNP)に相当する。多塩基ミスマッチ部位は、概して相同遺伝子配列に相当する。リボヌクレアーゼで消化すると、ニック部位および目的RNAの3’末端で3’‐ヒドロキシル(3’‐OH)基が遊離することに留意する。アンチセンスDNAプローブ上の5’の別のデオキシ‐T(’S)を鋳型として、デオキシアデノシン三燐酸(dATP)を唯一の基質として、目的RNAの3’末端の3’‐OHをプイライマーとして用いて、新しいDNA配列を合成し、RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼ(Klenow酵素またはKlenow酵素とTaq DNAポリメラーゼの複合体等)により伸長させ得る。Klenow酵素およびTaq DNAポリメラーゼの末端デオキシリボヌクレオチドトランスフェラーゼ(TdT)活性により、新たに伸長した配列の3’末端に別のデオキシアデノシン(デオキシ‐A)が付加される。結果として、dATP‐修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖分子のセンス鎖上に3’側一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングが生成される。結果的に、3’側一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングによりアンチセンス鎖の3’末端で一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングを持つブロッキング・アダプターと連結可能になり、結果的にRNA:DNAのヘテロ二本鎖‐ブロッキング・アダプターハイブリッドが形成される。ブロッキング・アダプターのセンス鎖が5’および3’末端の両方でリン酸化されることに留意する。5’リン酸基によりdATP修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖の遊離3’‐OHとの連結が可能になる。対照的に、ブロッキング・アダプターのセンス鎖上の3’側のリン酸化により3’‐OH基が得られなくなり、それによってさらなる連結が妨げられる。そのため、このアダプターを「ブロッキング・アダプター」と呼ぶ。リン酸化を利用する以外に、確立されたその他の方法を用いてブロッキング・アダプターの3’‐OHを妨げることもできる(蛍光染料の吸着または3’‐OH基への基質の挿入が含まれるが、これらに限定しない)。RNA:DMAヘテロ二本鎖‐ブロッキング・アダプターハイブリッドが形成されたら、試料を4分割し、RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼと4種類のdNTP(dATP、dTTP、dCTP、dGTP)のいずれか1つにより配列を補完する。dNTPを1種類のみ用いて配列を補完すると、多塩基のニックでは部分的に配列が伸長し、非相補dNTPが供給される一塩基のニックでは配列は補完されなくなる。一方、相補dNTPが供給される一塩基のニックでは、配列は完全に補完される。そのため、このような配列の補完反応は様々な結果をもたらすことから、「特異的な配列補完(DSF)」と呼ぶ。DSF反応を合理化するため、試料を2分割する。1つは2種類のdNTPにより配列を補完し、もう1つはその他の2種類のdNTPにより配列を補完する。DSF反応後、保護されないデオキシリボヌクレオチドを加水分解し、部分的に保護されたRNA:DNAヘテロ二本鎖分子を消化して小さく断片化する一本鎖特異的ヌクレアーゼ(S1ヌクレアーゼまたはMung Beanヌクレアーゼ等が含まれるが、これらに限定しない)で試料を処理する。対照的に、相補dNTPにより補完される一塩基のニックは、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化から完全に保護される。結果的に、4種類全てのdNTPとDNA依存DNAポリメラーゼを用いることにより、完全補完部位から新たなDNA配列が伸長し始め、下流のRNAと置き換わる。さらに、完全長配列が伸長した結果、ブロッキング・アダプターのセンス鎖が移動し、妨げられた3’‐OH基が遊離3’‐OH基を持つ新たな3’側一塩基ヌクレオチド「デオキシ‐A」オーバーハングと置き換わる。今度はこの新たに形成された3’側一塩基「デオキシ‐A]オーバーハングにより、アンチセンス鎖の3’末端およびセンス鎖の5’末端にある5’側リン酸基に相補一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングを持つ標識レポーター・アダプターとの連結が可能になる。5’側のレポーター・アダプターのリン酸により、DSFにより可能になる完全長配列の伸長から生じた、新たに形成された3’‐OH基との連結が可能になる。変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドが形成された結果、相補dNTPにより補完された変異体を正常な野生型やブロッキング・アダプターによって遮断されたままで、レポーター・アダプターが認められない部分補完産物と容易に識別できるようになると考えられる。レポーター・アダプターまたは変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの標識を目的とすることにより、先行技術において既知のシグナル増強法または配列増幅法を実施し、変異体の検出感度を増強させ得る。非制限的な1つの方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と2種類の一般的なプライマーの使用である。1つはブロッキング・アダプターに特異的なプライマー、もう1つはレポーター・アダプターに特異的なプライマーである。別の非制限的方法は、リガーゼ連鎖反応(LCR)と2種類のアダプターを使用し、二本鎖アダプター連結産物の交差部位を増幅することである。別の非制限的方法は、レポーター・アダプターにT7、T3、またはSP6プロモーター配列を組み込む、あるいはブロッキング・アダプターとレポーター・アダプターの連続連結後にT7、T3、またはSP6プロモーター配列が形成されるようにこの2種類のアダプターを設計することにより可能になる核酸増幅法(TMA)を使用することである。結果的に、TMAを実施し、対応するRNAポリメラーゼとその基質を用いて変異体‐二本鎖アダプターハイブリッド配列を増幅できる。
別の非制限的実施形態により、固相培地上の多数の多様な目的遺伝子の同時突然変異スクリーニング法を提供する。概して、本法により固相培地(スライド、膜、ストレプタビジン被覆マイクロタイタープレート、またはストレプタビジン被覆磁気ビーズ等が含まれるが、これらに限定しない)上に前述のアンチセンス野生型DNAプローブを固定する。プローブは、アレイフォーマットに別々に配列する、あるいは容器の不特定位置に混合物として置く。試験対象となるRNA試料または転写増幅産物を4(または2)分割し、固定プローブによりハイブリダイゼーションする。上述のとおり、次にヌクレアーゼ消化、RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼおよびdATPによる配列の伸長、ブロッキング・アダプターとの連結、各部分試料の4種類のdNTPのいずれかによるDSF(試験対象となる各試料を2分割した場合は、2種類のdNTPによる)、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化、4種類全てのdNTPによる配列の伸長、および標識レポーター・アダプターとの連結など、一連の分子反応を実行する。プローブをアレイフォーマットで固定した場合、アレイ上に検出可能なマークが認められるスポットは、対応する標的遺伝子に関与する1つまたは複数の突然変異の存在を示す。アッセイの感度を増強するため、先行技術において既知の適用可能なシグナル増強法(化学発光アッセイ、酵素結合免疫測定法(ELISA)、ルシフェラーゼアッセイ、CCDカメラ、蛍光定量法、比色定量法、またはオートラジオグラフィー等が含まれるが、これらに限定しない)を実行する。大規模試験では、多数の多様な遺伝子についてハイスループット突然変異スクリーニングアッセイを実施するため、多数の多様な容器を収容するキャリアーを使用してもよい。多様なアンチセンスDNAを混合し、キャリアーの容器にそれぞれ固定する。結果として、多数の多様な試料中の多数の多様な遺伝子について同時に解析できる。目標は、この初回スクリーニングアッセイにより決定したとおり、費用対効果の高い、迅速なスクリーニングアッセイを提供し、突然変異の詳細な特徴付けという煩雑な作業は、陽性または陽性の疑いのみを対象にすることである。アッセイの感度は、先行技術における適合可能な方法によりさらに増強できる。非制限的方法では、PCR、LCR、またはTMAによる配列増幅の場合、二本鎖アダプター連結産物が固相培地から遊離できる。別の非制限的な方法では、第3のアダプターが変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの5’末端に付着すると、変異体‐三本鎖アダプター連結産物が形成され、変異体配列は5’末端で第3のアダプターと、3’末端で二本鎖アダプターにフランキングする。結果として、関与する突然変異遺伝子の起源または数を問わず、変異体‐三本鎖アダプター連結産物は、共有するフランキング・アダプター配列由来のプライマー(第3のアダプターに特異的なフォワードプライマーとレポーター・アダプターに特異的なリバースプライマー等)を用いてPCRにより増幅できる。PCRにより増幅した変異体‐三本鎖アダプター連結産物をDNA塩基配列決定にかけ、突然変異遺伝子を同定する。
別の非制限的実施形態により、組織片または細胞調製品上の多数の多様な標的遺伝子の同時突然変異スクリーニング法を提供する。概して、本法は細胞の形態を保つ固相培地上に組織片または細胞調製品を固定する初回ステップを含む。続いて、少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」を持つ野生型DNAプローブを入れ、固定した組織片または細胞調製品とハイブリダイゼーションする。上述のとおり、次に結果生じるRNA:DNAのヘテロ二本鎖分子に対し、リボヌクレアーゼ消化、RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼとdATPによる配列の伸長、ブロッキング・アダプターとの連結、4種類のスライド上の4種類のdNTP(または2種類のスライド上の2種類のdNTP)のいずれかによるDSF、一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化、DNA依存DNAポリメラーゼと4種類全てのdNTPによる配列の伸長、および標識レポーター・アダプターとの連結を実施する。相補dNTPにより補完される目的変異体が認められる細胞の完全長配列を伸長させ、それにより標識レポーター・アダプターとの連結が可能になる。その他はいずれもブロッキング・アダプターにより遮断されたままである。レポーター・アダプターまたは変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの標識を目的とすることで、シグナル検出/増強法を用いて組織片上の変異体を同定できる。別の非制限的実施形態では、標的は固相培地上に固定した組織片または細胞調製品内に常在する感染性微生物とその変異体である。固定した標的感染性微生物のRNA成分は、アンチセンス野生型DNAプローブにより直接ハイブリダイゼーションしてもよい。あるいは、固定したDNA成分または標的感染性微生物のPCR産物由来のRNAを転写してもよい。あるいは、TMAにより標的感染性部生物のRNA転写物を増幅してもよい。上述のとおり、アンチセンス野生型DNAプローブによるハイブリダイゼーション後、一連の分子反応を実施する。ブロッキング・アダプターおよびレポーター・アダプターは、それぞれ検出可能な固有のマーカーにより標識できることに留意する。結果として、感染性微生物が存在しない細胞では、シグナルは検出されない。野生型感染性微生物が存在する細胞では、ブロッキング・アダプターの標識に特異的なシグナルが検出される。相補dNTPにより補完されていない突然変異型微生物も、ブロッキング・アダプターにより標識される。一方、相補dNTPにより補完されていない突然変異型微生物が認められる細胞中では、ブロッキング・アダプターの標識とレポーター・アダプターの標識を交換し、完全長配列を伸長させる。ブロッキング・アダプターとレポーター・アダプターを同時に標的とすることにより、同一の組織切片上で野生型微生物が認められる細胞と突然変異型微生物が認められる細胞を区別できる。
別の非制限的実施形態により、多数の多様な遺伝子または感染性微生物の同時突然変異スクリーニング用のキットまたはキット一式を提供する。概して、キットは多数の多様なアンチセンスDNAプローブを備え、各DNAプローブは標的の遺伝子、マーカー、または感染性微生物の選択領域を対象とする。プローブは、液剤または凍結乾燥粉末剤として個別または混合して提供される。プローブも基質上に固定され、各DNAプローブは固有の位置に認められる、あるいは混合物として混合され、固定される。キットは、ユーザーズガイドおよび本開示の方法を実行するのに必要とされる試薬の一部または全てをさらに備える。
以下の図面は、本開示について考え得る数多くの実施形態の一部を図示し、本開示について基本的に理解できるようにするものである。これらの図面は、本開示の全ての実施形態の概要を幅広く提供するものではない。これらの図面は、本開示の主要な、あるいは重要な要素を確認する、あるいは本請求項の範囲を解明または制限する意図はない。以下の図面は、一般的な形式で本開示のいくつかの概念を提示するのみである。このように、本開示を詳細に理解するため、以下の詳細な説明および添付図を参照し、要素等に対応する番号を振る。
本開示の方法は、多数の多様な遺伝子、核酸(DNAまたはRNA)、遺伝マーカー、または感染性微生物内に常在する1つ以上の遺伝子変異の同時検出を促進する。起源が様々な変異体において共有アダプター連結産物を作製することにより、関与する変異体の供給源、数、および性質を問わず、変異体を容易に同定および/または定量化できる。本開示における突然変異スクリーニング法の固有の特性は、それぞれ「ブロッキング・アダプター」および「レポーター・アダプター」という名称の2種類の一般的なアダプターのセットを使用することである。別の固有の特性は、「特異的な配列補完(DSF)」と呼ばれる分子反応である。1または2種類のdNPを用いたDSF、一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化、および4種類全てのdNTPによる配列の伸長を連続的に利用すると、完全長配列が伸長され、ブロッキング・アダプターとレポーター・アダプターが連結し、DSFにより相補dNTPにより補完される突然変異でのみ、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドが形成される。対照的に、相補dNTPにより補完されない野生型の標的遺伝子、相同性配列、および変異体は、ブロッキング・アダプターにより遮断されたままである。結果的に、レポーター・アダプターの標識を目的とすることにより、適合可能なシグナル検出/定量化法または増強法を用いて変異体を容易に同定できる。さらに、発現頻度の低い突然変異を容易に検出するため、2種類の一般的なプライマーセット(1つはブロッキング・アダプターに特異的なプライマー、もう1つはレポーター・アダプターに特異的なプライマー)を用いて変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの配列を増幅させてもよい。これにより多数の多様な標的の同時検査が可能になり、多様な標的に特異的な配列増幅法は必要なくなる。本開示で使用されているとおり、「遺伝子変異」という用語には先行技術において既知の全ての遺伝子変異、例えば点変異、一塩基変異多型(SNP)、遺伝子欠失、挿入変異、マイクロサテライト不安定性、マイクロサテライト配列多型、転位、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定しない。遺伝子変異は、1つ以上の遺伝子の内部および/または近く等、人間、家畜、植物、または微生物のゲノムの遺伝物質領域、もしくはコーディング領域または非コーディング領域の内部および/または近くで認められる。遺伝物質とはデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、またはその両方であり、あらゆる大きさが考えられる。突然変異は病的状態(例えば癌、遺伝性疾患、または感染症等が含まれるが、これらに限定しない)と直接的または間接的に関連していると考えられる。1つの非制限的実施形態では、突然変異は癌の初期段階、発症、進行、および/または寛解と関連がある。突然変異は、疾患または感染性微生物のマーカーとなり得る。突然変異は、治療に対する耐性、例えば医薬品化合物、薬剤、または生物学的応答調節物質に対する耐性、あらゆる種類の放射線療法または免疫療法に対する耐性、およびこれらの組み合わせと関連すると考えられる。このように、本開示の方法および産物は、これらの1種類以上の状況について利用できるが、これらに限定しない。
本開示の方法および産物では、あらゆる供給源由来の核酸(RNAまたはDNAのいずれか)を使用できる。核酸試料は、1種類以上の人間、家畜、植物、および/または微生物から入手できる。核酸試料は、細胞、組織、または体液(皮膚、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙液、血球、臓器、腫瘍、生検試料、組織片試料、細胞調製品、および細胞培養試料等が含まれるが、これらに限定しない)から単離できる。核酸試料は、先行技術において既知の分子生物学、細菌学、および/または組換えDNA由来の技術から作製することもできる。本開示に記載した方法を用いた試験の前に、先行技術において既知の方法(TMA、PCRおよびRNA転写の連続利用、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定しない)により核酸試料を増幅し、RNA核酸試料に転写することもできる。
本開示の方法により、試料中に存在する発現頻度が極めて低い1種類以上の標的において遺伝子変性の同時検出が可能になる。例えば、変異体は数十万の非突然変異のなかに存在するが、ほとんどの突然変異検出アッセイは検出感度が約1〜10%までに限られる。さらに、本開示の方法および産物により、同時に、連続的に、あるいはこれらを組み合わせて解析され得る1種類以上の試料中の多数の多様な標的の同時突然変異解析が可能になる。
概して、図1に示されるとおり、本開示の方法には一連の分子反応が含まれる。(1)試験対象となる試料からRNAを採取する、あるいは転写物を増幅する、(2)それぞれ5’末端に少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」を持つアンチセンス一本鎖野生型DNAプローブを合成する、(3)試験対象となるRNA試料を4(2)分割し、それぞれを液剤または固相培地上に固定された状態で存在するアンチセンスDNAプローブによりハイブリダイゼーションする、(4)結果生じるRNA:DNA二本鎖分子をリボヌクレアーゼで消化する、(5)RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼおよびdATPによりニックされたリボヌクレオチド部位および目的RNAの3’末端から配列を伸長し、結果生じるdATP修飾RNA:DNA二本鎖上に3’一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングを生成する、(6)アンチセンス鎖上に3’側一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングおよびセンス鎖上に二本鎖(5’および3’)のリン酸化を持つブロッキング・アダプターと連結する、(7)RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼと試験対象となる試料の4分割部分中の4種類のdNTP(dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP)のいずれか1つを用いる(または2種類の反応における2種類のdNTPを別々に使用する)ことにより特異的な配列補完(DSF)を実施する、(8)相補dNTPにより補完された一塩基ニックは完全に保護されるが、ニックのあるリボ核酸部位が補完されない、あるいは部分的に補完されている場合は、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化により保護されないまたは部分的に保護されたデオキシリボヌクレオチドを加水分解する、(9)DNA依存DNAポリメラーゼと4種類全てのdNTPにより、完全に保護された補完部位より完全長配列を伸長させると、下流のRNAとブロッキング・アダプターのセンス鎖が移動し、続いて遊離3’‐OHを持つ新たな一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングが形成される、(10)アンチセンス鎖に3’一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングを持つ標識レポーター・アダプターとの連結により、突然変異検出および/または定量化するための変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドが形成される。レポーター・アダプター上の標識を目的とし、先行技術において既知のシグナル検出、定量化法、または増強法により、突然変異を検出および/または定量化できる。さらに、発現頻度の低い突然変異を高感度検出するため、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの配列を増幅(PCR、LCR、TMA、またはこれらの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定しない)してもよい。変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドが形成されると、関与する突然変異遺伝子の数、起源、および位置を問わず、それぞれブロッキング・アダプターおよびレポーター・アダプター由来の2種類の一般的なプライマーセットを用いてPCRを実施することができる。別の非制限的方法では、LCRおよび2種類の一般的なアダプターセットを用いて配列を増幅し、二本鎖アダプター連結産物の交差部位にある共有の配列を増幅させる。別の非制限的配列増幅法では、TMAを使用する。これは、レポーター・アダプターにT3、T7、またはSP6プロモーター配列を組み込む、あるいは目的突然変異の3’末端でレポーター・アダプターとブロッキング・アダプターを連結した後にT3、T7、またはSP6プロモーター配列が形成されるように設計することにより達成され得る。結果として、対応するT3、T7、またはSP6のRNAポリメラーゼとその基質を使用することにより、TMAを用いて変異体‐二本鎖アダプターハイブリッド配列が増幅され、突然変異の高感度検出および特徴付けが可能になる。別の非制限的方法では、第3のアダプターを変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの5’末端と連結し、変異体‐三本鎖アダプターハイブリッドを形成させる。結果的に、変異体配列は5’末端の第3のアダプターおよび3’末端の二本鎖アダプターにフランキングする。第3のアダプターおよびレポーター・アダプター由来のプライマーを用いたPCRを使用して、変異体‐三本鎖アダプターハイブリッドの増幅・配列決定・同定を実施する。
概して、本開示のブロッキング・アダプターおよびレポーター・アダプターは、長さが少なくとも10塩基対(bps)、好ましくは少なくとも12塩基対であり、数千塩基対の大きさも考えられる。1つの非制限的実施形態では、アダプターの長さは約16〜約50bpsである。1つの非制限的実施形態では、ブロッキング・アダプターには(1)アンチセンス鎖上の3’側一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングによりdATP修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖の3’側一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングとの連結が可能になる、(2)センス鎖上のリン酸により5’dATP修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖上の3’「デオキシ‐A」オーバーハングの遊離3’‐OHとの連結が可能になる、(3)リン酸基または不活性物質の連結によりセンス鎖上の3’‐OHが遮断され、アダプターとのさらなる連結が妨げられる、という3つの固有の特性がある。対応するレポーター・アダプターは、アンチセンス鎖上に3’側一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングを、センス鎖上に5’側リン酸を持つ。さらに、レポーター・アダプターは、先行技術において既知の適合可能なシグナル検出、定量化法、または増強法により検出および/または定量化するための検出可能なマーカー、分子、または基質で標識できる。本開示で使用されているとおり、「標識」とは検出可能および/または定量可能なシグナルをもたらすのに使用される、あるいはシグナル増幅用に使用され、核酸、ペプチド、蛋白質、炭水化物、脂肪酸、脂質、糖蛋白質、糖脂質、分子、化合物、またはこれらの組み合わせに付加し得る原子、分子、化合物、または基質である。先行技術において既知の標識には、本開示では蛍光染料、着色剤、アイソトープ、化学発光基質、ELISA基質、ルシフェラーゼ基質、およびこれらの組み合わせなどが含まれるが、これらに限定しない。標識は、先行技術において既知の適切な方法(蛍光定量法、比色定量法、シンチレーションカウンタ、オートラジオグラフィー、ELISAアッセイ、CCDカメラ等のカメラの使用、ルミノメトリー、磁気、酵素力、およびこれらの組み合わせ等が含まれるが、これらに限定しない)により検出可能、定量可能、および/または増幅可能と考えられる。
上述のとおり、ブロッキング・アダプターとRNA:DNAヘテロ二本鎖分子との連結では、好ましくはRNA:DNAヘテロ二本鎖のセンス鎖上の一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングならびにブロッキング・アダプターのアンチセンス鎖上の一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングを利用する。しかし、その他の非制限的方法も使用できる。例えば、アンチセンスDNAプローブの5’末端に少なくとも1つの別のデオキシシチジン(デオキシ‐C)を埋め込み、RNA:DNAヘテロ二本鎖のリボヌクレアーゼ消化後の配列伸長用の単独の基質としてdGTPを用いて、一塩基「デオキシグアニジン(デオキシ‐G」オーバーハングを作製することもできる。結果的に、アンチセンス鎖上に一塩基「デオキシ‐C」を持つブロッキング・アダプターを用いることで、このブロッキング・アダプターは一塩基「デオキシ‐G」オーバーハングを持つRNA:DNAヘテロ二本鎖と連結され得る。同様に、アンチセンスDNAプローブに、少なくとも1つの別の「デオキシ‐A」または「デオキシ‐G」を埋め込む場合、リボヌクレアーゼ消化後の配列伸長用に使用される基質は、それぞれdTTPおよびdCTPである。また、ブロッキング・アダプターのアンチセンス鎖上の一塩基オーバーハングは、「デオキシ‐A」および「デオキシ‐G」となる。さらに、連結反応では高濃度のリガーゼを用いることにより平滑末端連結も利用できるようになる。そのような場合、アンチセンスDNAプローブの5’末端に別のデオキシリボヌクレオチドを埋め込む必要がなくなる。RNA:DNAヘテロ二本鎖に対するリボヌクレアーゼ消化後、平滑末端ブロッキング・アダプターは連結されるが、粘着末端を作製するためにRNAプライマーを用いてDNA配列を伸長する必要はない。一般原則としてまとめると、ブロッキング・アダプターとRNA:DNAヘテロ二本鎖との連結は、先行技術において既知のヌクレオチド結合法(酵素反応、化学反応、物理反応、またはこれらの組み合わせなどが含まれるが、これらに限定しない)を用いて適合する粘着末端連結または平滑末端連結により実行され得る。
DSF反応とその後の一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化により、(1)完全に保護された野生型ヘテロ二本鎖‐ブロッキング・アダプターハイブリッド、(2)一塩基のニックにおいて相補dNTPにより完全に補完された結果として、完全に保護された変異体ヘテロ二本鎖、(3)非相補dNTPにより補完されない変異体ヘテロ二本鎖において、一塩基のニックで加水分解される保護されないデオキシリボヌクレオチド、および(4)部分的に補完される相同ヘテロ二本鎖において、消化される多塩基のニック、という4種類の産物が生じる可能性がある。結果として、保護されないまたは部分的に保護された産物は、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化後に断片化する。対照的に、相補dNTPにより補完される一塩基のニックを有する突然変異の完全長配列は引き続き伸長され、ブロッキング・アダプターのセンス鎖が移動し、新たな一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングが形成され、標識レポーター・アダプターとの連結が可能になり、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドが形成される。野生型ヘテロ二本鎖は一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化から完全に保護されるが、新たな配列伸長を開始するためのリボヌクレオチドのニックも、デオキシリボヌクレオチドによる補完も認められない。したがって、野生型ヘテロ二本鎖はブロッキング・アダプターにより遮断されたままであるため、二本鎖アダプター連結産物を形成することができない。レポーター・アダプターまたは変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの標識を目的とすることにより、突然変異を検出および/または定量化できる。
本開示においてDSF、一本鎖特異的ヌクレアーゼによる消化、および4種類全てのdNTPによる完全長配列の伸長を連続的に利用する2つの主な目的は、(1)配列の相同性から生じる偽陽性を回避することと、(2)多様な目的遺伝子を解析するため現行の突然変異検出アッセイで必要とされる多様な標的に特異的な増幅を回避することである。同様に、本開示においてブロッキング・アダプターとレポーター・アダプターの連続連結を用いる目的は、(1)突然変異検出法の特異度を確認することと、(2)あらゆる起源の突然変異に関する配列増幅ステップを一般化することである。しかし、修正が加えられ、DSF反応の原理を利用する代替法が考案され、ブロッキング・アダプターを使用する必要がなくなった。結果として、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの代わりに変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドを形成する。非制限的実施形態では、以下のとおり、ブロッキング・アダプターを用いずに突然変異検出アッセイを実行することができる。(1)RNA試料とアンチセンスDNAプローブとのハイブリダイゼーションによりRNA:DNAヘテロ二本鎖を形成する、(2)リボヌクレアーゼ消化によりミスマッチ・リボヌクレオチドにニックを入れる、(3)試料を4分割(または2分割)し、4種類のdNTP(あるいは一部で2種類のdNTP、別の部分でその他の2種類のdNTP)についてそれぞれDSFを実施する、(4)一本鎖特異的ヌクレアーゼで処理し、部分的に補完されたヘテロ二本鎖を消化する、(5)4種類全てのdNTPにより完全長配列を伸長することにより、相補dNTPにより補完される突然変異ヘテロ二本鎖上に3’側一塩基「デオキシ‐A」を作製する、(6)アンチセンス鎖上に3’側一塩基「デオキシ‐T」を持つ標識レポーター・アダプターと連結する、(7)レポーター・アダプターの標識を目的とする、あるいは結果生じる変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドの配列を増幅することにより突然変異を検出し、シグナルを増強する。レポーター・アダプターと変異体RNA:DNAヘテロ二本鎖の連結は、制限酵素(RES)の粘着末端を介して実施できることにも留意する。そのような場合、「RES」配列はアンチセンスDNAプローブの5’末端に組み込む。相補dNRPを用いて補完された突然変異ヘテロ二本鎖において完全長配列が伸長されると、対応する「RES」部位が形成される。対応する「RES」による消化後、この「RES」に粘着末端が形成され、それにより適合する粘着末端を持つ標識レポーター・アダプターとの連結が可能になる。突然変異の検出または増幅は、レポーター・アダプターまたは結果生じる変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドの標識を目的とする。1つの非制限的方法では、結果生じる変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドの配列を増幅させるため、レポーター・アダプターにT3、T7、またはSP6プロモーターを埋め込む。対応するRNAポリメラーゼとその基質を用いて、変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドを増幅・同定する。別の非制限的方法では、アンチセンスDNAプローブの3’末端に、伸長した既知の配列(T3、T7、またはDP6プロモーター配列あるいはM13配列等が含まれるが、これらに限定しない)を埋め込む。一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化する前に、相補オリゴヌクレオチドを用いてRNA:DNAヘテロ二本鎖をインキュベートすることにより、アンチセンスDNAプローブに埋め込まれた配列を保護する。完全長配列の伸長およびレポーター・アダプターとの連結後、結果生じるあらゆる起源の変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドは、同一のフランキング配列、すなわち一方の末端にはT3、T7、SP6プロモーター配列またはM13配列、もう一方の末端にはレポーター・アダプター配列を共有する。結果的に、2種類の一般的なプライマーを用いてPCRを実施し、変異体‐レポーター・アダプターハイブリッドを増幅できる。
上述のとおり、ブロッキング・アダプターとRNA:DNAヘテロ二本鎖の連結で適合するA/T粘着末端を利用する場合は、本開示の一本鎖アンチセンスDNAプローブの、好ましくは5’末端に少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」を埋め込む。このアンチセンスプローブは、一本鎖アンチセンスDNAの生成に役立つと考えられる、先行技術において既知の方法により合成される。1つの非制限的実施形態では、正常RNAの試料を逆転写(RT)媒介PCRの鋳型として使用し、目的遺伝子のcDNAフラグメントを増幅する。結果生じるcDNAフラグメントを鋳型として使用し、5’末端に少なくとも1つの別のデオキシリボヌクレオチド(好ましくは別の「デオキシ‐T」)を持つ対応するリバースプライマーを用いてPCRを実行することにより、アンチセンス一本鎖DNAプローブを合成できる。別の非制限的実施形態では、目的遺伝子領域にフランキングしたフォワードプライマーおよびリバースプライマーを用いて、RT媒介PCRを実施する。リバースプライマーが、5’末端に少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」およびビオチン分子を持つことに留意する。したがって、結果生じる目的遺伝子のPCR増幅cDNAフラグメントは、アンチセンス鎖の5’末端に少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」およびビオチン分子を持つ。さらに、アンチセンス鎖上のビオチン分子により、ビオチン化アンチセンス鎖は共有結合によりストレプタビジン被覆固相培地上にしっかりと固定され、非ビオチン化センス鎖は結合されないままとなり、変性および洗浄後に容易に除去され得る。固定されたアンチセンス一本鎖DNAは、本開示に記載した突然変異検出法用のプローブとして使用できる。本開示で使用されるプローブは、ヌクレオチドが約20〜数キロ塩基の範囲、好ましくは約50〜約1000ヌクレオチドの範囲と考えられる。
本開示で使用されるRNA:DNAヘテロ二本鎖分子を作製するために実行されるハイブリダイゼーション反応は、1種類以上のアンチセンスDNAプローブを含むと考えられ、各プローブは様々な遺伝子領域に特異的である。例えば、プローブAは遺伝子Aに、プローブBは遺伝子Bに、プローブCは遺伝子C等に特異的である。ハイブリダイゼーション反応は1種類以上の転写物、例えば遺伝子Aの転写物A、遺伝子Bの転写物B、遺伝子Cの転写物C等を含んでいると考えられる。そのため、結果生じるRNA:DNAヘテロ二本鎖分子は、2種類/母集団以上のRNA:DNAヘテロ二本鎖(ヘテロ二本鎖A、ヘテロ二本鎖B、ヘテロ二本鎖C等)を含むと考えられる。この1種類以上のヘテロ二本鎖は、1つ以上の変異体(変異体A、変異体B、変異体C等)を含むと考えられる。あらゆる種類のヘテロ二本鎖に2つ以上の突然変異が存在し、検出される可能性もある。例えば、ヘテロ二本鎖Aにおいて、変異体A1は突然変異1を、変異体A2は突然変異2を、変異体A3は突然変異3を含んでいる。様々な突然変異は、それぞれ個々の変異体により示され、検出される。
本開示の突然変異検出法には一連の様々な分子反応が含まれ、各反応には様々な反応産物および/または試薬が含まれる。1つのステップの産物および/または試薬は、その後の反応を妨げることがある。本開示の方法の開発時および最適化時に、これらの分子反応は固相培地上で容易に実行され、アンチセンスDNAプローブまたはRNA試料が固定され得ることが明らかになった。結果として、一連の様々な反応は同一容器中で連続的に実行可能であり、単純な洗浄後、適切な試薬を入れ、最適化条件でインキュベートされる。多数の多様なDNAプローブを容器中に固定し、試験対象となる試料を入れる。多数の多様な容器を収容するキャリアーでこれらの分子反応を実施することにより、多数の多様な試料の同時検査が可能になる。結果として、多数の多様な標的について、多数の多様な試料中で同時に分析できる。図2に示される1つの非制限的実施形態では、ストレプタビジン被覆96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルで多数の多様なビオチン化アンチセンスDNAプローブを混合し、固定する。試験対象となるRNA試料をそれぞれ等しく4分割し、96ウェルプレートのウェルに別々に入れ、それぞれ「A」「C」「G」「T」と表示する。dATPを用いたDSF反応は「A」と表示されたウェルで実施する。dGTPを用いたDSF反応は「C」と表示されたウェルで実施する。dGTPを用いたDSF反応は「G」と表示されたウェルで実施する。dTTPを用いたDSF反応は「T」と表示されたウェルで実施する。結果として、96ウェルプレートは24種類のRNA試料を収容し、それぞれについて4種類のDSF反応を実施する。図2に示されるとおり、一連の分子反応は、自動化マイクロタイタープレート洗浄機中で洗浄後、適切な試薬を使用し、最適化条件でインキュベートすることにより連続的に実施される。したがって、時間と手間を最小限に抑えながら24種類の試料で多数の多様な標的を同時検査するため、最初のプローブによるハイブリダイゼーションから最終ステップであるレポーター・アダプター連結までの一連の様々な分子反応は、ストレプタビジン被覆マイクロタイタープレートで完了する。試験対象となる試料数は、DSF反応がペアで(1つのウェルで2種類のdNTPを、別のウェルで他の2種類のdNTPを使用する等)実施する場合は、48種類まで増やせる。384ウェルプレートを使用すれば、試験対象となるRNA試料数は192種類まで増やせる。収容能は、多数のプレートを同時に収容する自動化マイクロタイタープレート洗浄機をさらに使用することにより増やせる。標識レポーター・アダプターとの連結後、相補dNTPにより補完される変異体を持つウェルは、先行技術において既知の適合可能なシグナル検出、定量化法、または増強法により検出および/または定量化できる。突然変異検出および/または定量化は、二本鎖アダプター連結産物を標的にすることによっても実行できる。図2に示される1つの非制限的実施形態では、ブロッキング・アダプターは制限酵素(RES)埋め込み部位を持つ。したがって、変異体‐二本鎖アダプター連結産物は、「RES」消化により固相培地から遊離される。PCR、LCR、またはTMAにより配列を増幅すれば、少量でも変異体‐二本鎖アダプター連結産物を増幅、高感度検出、および/または定量化できるようになる。「RES」消化のほか、先行技術において既知の方法(熱またはアルカリ処理による変性等が含まれるが、これらに限定しない)によっても変異体‐二本鎖アダプター連結産物を固相培地から遊離させられる。
図3に示されるとおり、マイクロアレイフォーマットにおいて固相培地上で突然変異検出を実施するための非制限的方法を提供する。本開示において、固相培地は先行技術において既知の材料(スライド、フィルム、またはマイクロアレイフォーマットにおいて一本鎖DNAプローブを固定し得る膜等が含まれるが、これらに限定しない)である。固相培地を保持するホルダーデバイスを用いて、上述の一連の様々な分子反応の実行を促進できる。ホルダーデバイスは、自動化マイクロタイタープレート洗浄機で使用するために適合されることに留意する。非制限的実施形態では、このホルダーデバイスは標準的な顕微鏡スライド6枚を保持し、アセンブリ後、標準的な96ウェルプレートへ変換する。図3に示されるとおり、何百もの多数の多様なアンチセンスDNAプローブをアレイフォーマットで各ウェルに固定し、それぞれ「1」から「N」までの番号をふった特定の位置に各プローブをスポットし、ダブルスポットされたプローブは、それぞれ「A」および「B」と表示する。このホルダーデバイスでは、少なくとも24種類のRNA試料について検査できる。RNA試料は試験対象となる試料から採取するか、あるいは試験対象となる試料由来の目的遺伝子の転写物を増幅できる、先行技術において既知の方法(TMAまたはRNA転写後のPCR増幅の利用等が含まれるが、これらに限定しない)により合成できる。試験対象となる各RNA試料をそれぞれ等しく4分割し、ホルダーデバイスのウェルで4種類のdNTPによりそれぞれに対しDSFを実施する。上述のとおり、一連の分子反応は、自動化マイクロタイタープレート洗浄機中で洗浄後、適切な試薬を入れ、最適化条件でインキュベートすることにより連続的に実施可能である。標識レポーター・アダプターと連結した後、スライドまたは膜をホルダーデバイスから取り外し、レポーター・アダプターまたは変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドの標識を目標とする、先行技術において既知の適合可能な検出法またはシグナル増強法を用いたシグナル解析を実施する。図3に示されるとおり、相補dNTPにより補完され、完全長配列が伸長される変異体が認められるウェルでは、A1(B1)、A3(B3)、A4(B4)の位置のシグナルが検出可能である。各プローブの特定の位置は既知であるため、検出可能なシグナルが認められるスポットにより、関与する突然変異遺伝子を即時に同定できる。試験対象となる試料の数は、1つのウェルで2種類のdNTPを、別のウェルで2種類のdNTPによりDSF反応を実施する場合は48種類まで倍増させてもよい。収容能については、384ウェルプレートに変換するホルダーデバイスを使用することにより、試料を192種類まで増やせる。試験対象となる試料の数は、多数のプレートを収容する自動化マイクロタイタープレートをさらに使用することにより増やせる。
図4を参照しながら、感染性微生物および薬剤耐性変異体(HIV‐1および薬剤耐性変異体等が含まれるが、これらに限定しない)を検出するための非制限的方法の概要を提供する。図4に示されるとおり、様々な系統のHIV‐1のpol遺伝子に特異的なアンチセンスDNAプローブを、アレイフォーマットで固相培地に別々に固定する。プローブに番号を振り、2列に並べる。「A」列と「B」列は同じである。上述のとおり、各アンチセンスDNAプローブは、5’末端に少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」を持つ。先行技術において既知の方法(PCR増幅HIV‐1 pol cDNAのTMAまたはRNA転写等が含まれるが、これらに制限されない)により、試験対象となる試料由来のウイルス性RNAを採取・増幅できる。次にRNA試料を4分割し、アンチセンスDNAプローブによりハイブリダイゼーションする。RNA:DNAヘテロ二本鎖分子が形成された後、固相培地上で一連の分子反応(リボヌクレアーゼ消化、RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼおよびdATPを用いた配列の伸長、標識ブロッキング・アダプターとの連結、それぞれ4種類のdNTPによるDSF、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化、DNA依存DNAポリメラーゼと4種類全てのdNTPによる配列伸長、および標識レポーター・アダプターとの連結等)を実施する。ブロッキング・アダプターには、先行技術において既知の検出可能なマーカー(蛍光染色、フルオレセイン(FL)等が含まれるが、これらに限定しない)で標識可能であり、レポーター・アダプターは、検出可能な別のマーカー(別の蛍光染色、Cy3.5(Cy))で標識可能であることに留意する。図4の左パネルに示されるとおり、FL標識ブロッキング・アダプターとの連結後、RNA:DNAヘテロ二本鎖を形成するためのHIV‐1 RNAが認められないことから、HIV‐1ウイルスのない正常試料では蛍光は検出されない。一方、野生型HIV‐1または薬剤耐性変異体を持つ試料は、まずFL標識ブロッキング・アダプターにより染色される。図4の右下パネルに示されるとおり、さらなる操作によりスポットA3およびB3で完全長配列が伸長され、Cy標識レポーター・アダプターと連結し、薬剤耐性変異体は相補dNTPにより補完され、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化から完全に保護される。対照的に、完全長配列が伸長されないため、FL標識ブロッキング・アダプターは、同一系統の野生型HIV、様々な系統の野生型HIV、および相補dNTPにより補完される変異体で占められたスポットに保持される(図4の中央パネル)。
図5を参照しながら、感染性微生物および変異体(HIV‐1および薬剤耐性変異体等が含まれるが、これらに限定しない)の存在を確認する迅速スクリーニングおよび高感度検出の非制限的方法の概要を提供する。図5に示される1つの非制限的実施形態では、様々な系統のHIV‐1 pol遺伝子に特異的なビオチン化アンチセンス野生型DNAプローブをストレプタビジン被覆マイクロタイタープレートの各ウェルに固定する。ウイルス性RNAは、試験対象となる試料から採取する。アッセイの感度を増強するため、目的RNAの増幅に適合可能な先行技術において既知の方法により、ウイルス性RNAの転写物を増幅させる。試験対象となるRNA試料を4分割し、ストレプタビジン被覆マイクロタイタープレートのウェルに別々に入れる。プローブによるハイブリダイゼーションからレポーター・アダプターとの連結までの一連の分子反応は、試薬を入れ、最適化条件で適切インキュベートすることにより連続的に実施され、自動化マイクロタイタープレート洗浄で洗浄される。ブロッキング・アダプターは制限酵素(RES)部位を持ち、レポーター・アダプターは検出可能なマーカーにより標識されることに留意する。図5の左パネルに示されるとおり、ウェルにアダプターが認められない場合、HIV‐1ウイルスは存在しない。図5の中央部2枚のパネルに示されるとおり、ブロッキング・アダプターは同一系統または異なる系統の野生型HIV‐1が認められるウェルに付着する。相補dNTPにより補完されない変異体も、前述のブロッキング・アダプターにより遮断される(図なし)。対照的に、図5の右パネルに示されるとおり、相補dNTPにより補完される変異体は完全長配列が伸長され、標識レポーター・アダプターとブロッキング・アダプターとの連結が可能になる。結果として、レポーター・アダプターの標識を目的とすることにより、適合可能なシグナル検出/定量化法または増強法を用いて、相補dNTPにより補完されるHIV‐1変異体が認められる試料を同定できる。さらに、ブロッキング・アダプターに埋め込まれた「RES」部位を利用することにより、対応する「RES」酵素消化が、2種類の一般的なプライマーセットを用いてPCRにより増幅され得る二本鎖アダプター連結産物を遊離させ、少量のHIV‐1を高感度で検出する。代替方法として、上述のとおり、LCRまたはTMAを用いて発現頻度の低い変異体を増幅・検出できる。
固相培地に固定された組織片または細胞調製品(顕微鏡スライドまたは膜等が含まれるが、これらに限定しない)の多数の多様な遺伝子内に常在する突然変異を検出するための非制限的方法の概要も提供する。この非制限的方法により多数の多様な遺伝子変異の同時検査が可能になり、顕微鏡検査用の細胞の形態が保存される。一般的な方法は、試験対象となる細胞性RNA試料が先行技術において既知のスライドまたは固相培地上に固定されることを除けば、図3および図4で示された方法とほぼ同じである。4枚のスライドセットについて検査する。目的転写物が少量であるならば、細胞性核酸成分を固定後、先行技術において既知の転写物増幅法を実施し、アッセイの感度を増強させる。再水和後、多数の多様な遺伝子領域を標的とするアンチセンス野生型DNAプローブ混合物により、組織片または細胞調製品をハイブリダイゼーションする。上述のとおり、各アンチセンスプローブは、5’末端に少なくとも1つの別の「デオキシ‐T」を持つ。固相培地上にRNA:DNAヘテロ二本鎖が形成された後、一連の分子反応(リボヌクレアーゼ消化、RNAプライマーを用いたDNAポリメラーゼとdATPを用いた配列伸長、ブロッキング・アダプターとの連結、スライド上の4種類のdNTP(または1つのスライドに2種類のdNTP、別のスライド上に別の2種類のdNTP)のいずれかによるDSF、一本鎖特異的ヌクレアーゼ消化、DNA依存DNAポリメラーゼと4種類全てのdNTPによる配列伸長、標識レポーター・アダプターとのその後の連結等が含まれるが、これらに限定しない)を実施する。上で説明したとおり、相補dNTPにより補完され、完全長配列が伸長された目的変異体が認められる細胞のみが標識レポーター・アダプターと連結できる。レポーター・アダプター上の検出可能な標識を目的とすることにより、適合可能なシグナル検出法または増強法を用いて変異体を同定できる。例えば、レポーター・アダプター上の標識が蛍光染料の場合、蛍光顕微鏡または蛍光CCDカメラにより変異体を同定できる。別の非制限的実施形態では、レポーター・アダプター上の標識には、シグナル増強用の着色可能な基質が含まれている。結果として、変異体は光学顕微鏡下で同定できる。
本開示の別の非制限的実施形態は、本開示の突然変異検出法の実行を促進する産物を目的とする。1つの非制限的実施形態では、試薬および本開示の方法の実施について指示を与えるユーザーズガイドを備えるキット(またはキット一式)を提供する。ユーザーズガイドには、紙の印刷物、コンピューター可読形式の媒体、およびこれらの組み合わせが含まれる。キットは1つ以上の目的遺伝子の解析用として特別仕様である、あるいはキットは本開示の方法に基づく広範な突然変異スクリーニングの用途にとって重要な試薬および材料を備える、あるいはキットは本開示の方法を用いる全てまたは一部の試薬および材料を備えており、1種類以上の病的状態または疾患(遺伝性疾患、感染性微生物、細胞機能、または細胞機能経路等)と一般的に関連のあるおよび/または観察される多数の突然変異を検出する。概して、本キットの試薬および材料には、遺伝子領域をスクリーニングするのに必要なプローブも含まれる。プローブは本開示で上述されるとおり合成できる。プローブは個別に提供される、あるいは多様なプローブ混合物は液剤または凍結乾燥粉末剤として提供される、あるいは多数の多様なプローブは固相培地上に固定し得る。1つの非制限的実施形態では、提供されるプローブは固相培地上に固定されるため分子または標識と連結し、適切な緩衝溶液で懸濁されるか、あるいは凍結乾燥剤に含められる。別の非制限的実施形態では、プローブは固相培地上にアレイフォーマット(1種類以上のマイクロタイタープレート上、膜上、スライド上、またはDNAマイクロアレイ/チップとしてアレイに蒸着される等)で提供される。DNAアレイを作製するための先行技術において既知の方法を用いて、本開示のDNAマイクロアレイを作製できる。別の非制限的実施形態では、混合されたプローブをマイクロタイタープレートの各ウェル上に固定する。RNA試料は、提供される本開示のキットにより検定できる。本開示で以前記述したとおり、RNA転写物を調製または増幅できる。概して、キットは特定の分子の生物学的機能、経路、またはマーカーを標的としている。このようなキットは例えば1)癌遺伝子の突然変異スクリーニングに特異的で、既知の癌遺伝子に特異的なプローブを備えるキット、(2)癌抑制遺伝子の突然変異スクリーニングに特異的で、既知の癌抑制遺伝子に特異的なプローブを備えるキット、(3)ミスマッチ修復遺伝子の突然変異スクリーニングに特異的で、既知のミスマッチ修復遺伝子に特異的なプローブを備えるキット、(4)「チロシンキノーム」とも呼ばれるチロシンキナーゼ遺伝子の突然変異スクリーニングに特異的で、チロシンキナーゼに特異的なプローブを備えるキット、(5)成長因子受容体遺伝子の突然変異スクリーニングに特異的で、成長因子受容体遺伝子に特異的なプローブを備えるキット、(6)D‐ループまたは非D‐ループのいずれかの内部(コーディング)領域に認められるミトコンドリアDNAの突然変異スクリーニングに特異的で、この領域に特異的なプローブを備えるキット、(7)マイクロRNAスクリーニングに特異的で、マイクロRNAに特異的なプローブを備えるキット、(8)SNPマーカーに特異的で、SNPマーカーに特異的なプローブを備えるキット、(9)マイクロサテライト多型マーカーのスクリーニングに特異的で、マイクロサテライト多型マーカーに特異的なプローブを備えるキット、および(10)感染性微生物および変異体スクリーニングに特異的で、目的微生物に特異的なプローブを備えるキットであるが、これらに限定しない。キットは、疾患の突然変異としばしば関連のある遺伝子領域について、選択的に組み合わせた様々なプローブを備えることにより疾患も標的とする。このようなキットは、例えば乳癌用キット、大腸癌用キット、前立腺癌用キット、および肺癌用キット等が含まれるが、これらに限定しない。キットは、選択的に組み合わせた様々なプローブも備え、疾患のステージ、サブタイプ、または臨床状態(乳癌の上皮内癌、乳癌の浸潤性乳管内癌、転移性乳癌、または特定の種類の治療に対する耐性等が含まれるが、これらに限定しない)を標的とする。
ユーザーズガイドおよびプローブの他に、キットは上述の一連の分子反応の実行に必要な全てまたは一部の試薬をさらに備えることがある。キットには、上述のブロッキング・アダプターおよびレポーター・アダプターセットが含まれることもある。ユーザーズガイドの指示に基づき、キットにはRNA抽出用の試薬、提供されるプローブによるハイブリダイゼーションで使用されるRNA転写物の調製および増幅用のPCRまたはTMAが含まれ、RNA:DNAヘテロ二本鎖が作製され得る。キットは、上述の変異体‐二本鎖アダプターハイブリッド産物および/または変異体‐三本鎖アダプター産物をリアルタイムPCR、LCR、またはTMAにより増幅できるようにする試薬およびプライマーを備えるように設計されることもある。キットには、キットで提供される前述のレポーター・アダプターおよび/またはブロッキング・アダプターのシグナル検出/定量化および/または増強用の試薬も含まれることがある。キットには、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドおよび/または変異体‐三本鎖アダプターハイブリッドのDNAまたはRNA塩基配列決定を実施するための試薬およびプライマーも含まれることがある。
他で述べていない限り、本開示を実施するにあたっては、分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を活用する。本開示で利用され適合される全ての一般的技術および支援技術は、文献中で完全に説明される。PCR、リアルタイムPCR、LCR、TMA、プローブによるハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ消化のための試薬および機構にはリボヌクレアーゼ、一本鎖特異的ヌクレアーゼ、制限酵素、DNAおよびRNAポリメラーゼ反応物、連結物、転写物の増幅、検出/定量化法が含まれるが、これらに限定するものではない。その他の全ての分子生物学的技術および組換えDNA技術は当業者にとっては既知であり、本開示での使用に適している。既知の反応の変数(反応温度、反応時間、試薬濃度、標識の有無を問わず、PCRまたはLCR用のオリゴヌクレオチドの設計等)の単純な調節について不当な実験法であると悪く解釈せずに、当業者内で理解すべきものとする。
本開示は、下記の請求項の範囲および本質を制限するのではなく、説明するものとする。本開示について検討後、多くの修正および変更(本開示に記載された要素に対し同等の機能的および/または構造的代替物の使用および/または本開示に記載された反応に対し同等の機能的反応の使用等)が当業者に開示される。若干の変更は、下の請求項の範囲内で考慮する。
アダプターの連続的連結および増幅を可能にしたDSFによる多数の多様な遺伝子の同時解析用ストレプタビジンを用いた突然変異アッセイ
本実施例は、ストレプタビジン被覆マイクロタイタープレートを用いて突然変異の存在について調べるための多様な遺伝子の同時スクリーニング用の1つの非制限的用途を例示する。RNA試料は、陰性対照である8種類の正常血液試料と様々な起源の10種類の新生細胞株(NCI‐H460肺癌細胞、HCT‐15大腸癌細胞、SW‐480大腸癌細胞、MCF7乳癌細胞、KG‐1骨髄性白血病細胞、HL‐60骨髄性白血病細胞、KBM7骨髄性白血病細胞、B15リンパ芽球性白血病細胞、HUT‐78ヒトT細胞白血病細胞、およびRyan B細胞リンパ腫細胞)から採取する。標的は、9種類の遺伝子K‐ras、TP53、Erb‐b2、VEGFR3、MSH6、CHEK2、BRIP1、LKB1、およびPIK3CAにおいて突然変異が多くみられる領域である。このストレプタビジンを用いた突然変異スクリーニングアッセイは、次のように実施する。
ストレプタビジン被覆マイクロタイタープレートにおけるビオチン化アンチセンス一本鎖野生型DNAプローブの調製および固定
正常RNA試料については、表1に記載したプライマーセットを用いてPCRにより逆転写し、増幅する。各プライマーセットは、目的遺伝子のホットスポットにフランキングしたフォワードプライマーおよびリバースプライマーを備える。各リバースプライマーはビオチン化されており、5’末端に2つの別の「デオキシ‐T」が埋め込まれていることに留意する。したがって、結果生じるPCR増幅cDNAフラグメントは、アンチセンス鎖の5’末端にビオチン分子および2つの「デオキシ‐T」を持つ。
9つの目的遺伝子用ビオチン化cDNAプローブの合成に使用する9種類のプライマーセットの配列
PCR増幅後、この9種類のビオチン化PCR産物は、それぞれ最終濃度1ナノグラム(ng)/マイクロリッター(μl)のカクテルで混合し、次に室温で5分間0.1 M NaOH中で変性させる。変性したビオチン化PCR産物(30μl)をストレプタビジン被覆96ウェルプレートの各ウェルに入れ、室温で20分間インキュベート後、自動化マイクロタイタープレート洗浄機中で広範囲にわたって洗浄する。結果として、ストレプタビジン被覆プレートにおいてビオチン化アンチセンス鎖は共有結合によりウェルにしっかり固定され、センス鎖はビオチン分子がないため結合されず、除去される。
プローブによるハイブリダイゼーション、RNase消化、およびdATPを用いた配列伸長
試験対象となるRNA試料から、2分割部分(各1マイクログラム)を採取し、それぞれ「GA」および「TC」と表示する。ストレプタビジン被覆マイクロタイタープレートにおいて、各分割部分をそれぞれ10 mMトリス(pH7.5)50 μl、1.25 M NaCl、30%ホルムアミド、および上述の9種類の固定されたアンチセンス野生型DNAプローブを含有するウェル中で、45℃で1時間ハイブリダイゼーションする。ハイブリダイゼーションおよびRNA:DNAヘテロ二本鎖分子形成後、自動化プレート洗浄機中でマイクロタイタープレートを洗浄し、各ウェルは最適化緩衝液中にて37℃で1時間、RNase ONE(Promega社、ウィスコンシン州マジソン市)20ユニットで処理する。自動化プレート洗浄機中で洗浄後、Klenow酵素5ユニット、NaCl50 mM、MgCl25mM、dATP200 μM、およびDTT5 mM含有反応緩衝液(50 μl)中で、dATPを用いて37℃で30分間配列を伸長する。結果生じるdATP修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖のセンス鎖上に、3’側一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングが作製される。
ブロッキング・アダプターの調製およびdATP修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖とブロッキング・アダプターとの連結
BAdp‐Pst(+)5’‐[Phos]CCTGCAGGAGACGGTGA[Phos]‐3’およびBAdp‐Pst(−)5’‐TCACCGTCTCCTGCAGGT‐3’という2種類の相補オリゴヌクレオチドは、NaCl50 mMおよびTris10 mM(pH8.3)含有緩衝液において、10 ng/μlの等モル濃度で、65℃で15分間アニーリングする。BAdp‐Pst(+)は、5’および3’末端でリン酸化される。BAdp‐Pst(−)は、3’末端に別の「デオキシ‐T」を持つ。下線でより強調されるとおり、BAdp‐Pst(+)とBAdp‐Pst(−)のどちらにも制限酵素Pst‐1の配列CTGCAGが埋め込まれている。したがって、結果生じる二本鎖ブロッキング・アダプターは、センス鎖上に5’リン酸基と3’リン酸基、アンチセンス鎖上に3’側「デオキシ‐T」オーバーハングと、Pst‐1部位を持つ。センス鎖上の5’リン酸およびアンチセンス鎖上の3’側「デオキシ‐T」オーバーハングの存在により、このブロッキング・アダプターとdATP修飾RNA:DNAヘテロ二本鎖のセンス鎖上の3’側「デオキシ‐A」突出末端の連結が可能になる。このような連結反応は、T4 DNAリガーゼ400ユニットおよびブロッキング・アダプター10 ng含有最適化緩衝液(50 μl)中にて室温で1時間実行する。ブロッキング・アダプターのセンス鎖上には3’‐OH基がないため、結果生じるRNA:DNAヘテロ二本鎖‐ブロッキング・アダプターハイブリッドはさらなる連結に備えて活性がない。
4種類全てのdNTPによるDSF、S1ヌクレアーゼ処理、および配列伸長
試験対象となる各RNA試料について、2種類のDSF反応を実施し、それぞれ「GA」および「TC」と表示する。「GA」と表示されているウェルでは、dGTP200 μM、dATP200 μM、Klenow酵素5ユニット、NaCl50 mM、MgCl2 5mM、DTT5 mM、およびTris(pH7.5)10 mM含有最適化緩衝液(50 μl)にて室温で45分間DSFを実施する。同様に、「TC」と表示されたウェルで、dTTPおよびdCTPを用いたDSFを実施する。DSFおよび洗浄後、試料をS1ヌクレアーゼ処理し、最終濃度10ユニット/μlのS1ヌクレアーゼ含有最適化緩衝液(50 μl)にて37℃で一晩かけ、保護されないデオキシリボヌクレオチドを消化する。洗浄後、未結合かつ断片化された核酸を除去する。4種類全てのdNTPによる配列伸長は、Taq DNAポリメラーゼ5ユニット、Tris(pH8.3)10 mM、KCl50 mM、MgCl22.5 mM、および4種類のdNTPのいずれか200 μM含有最適化緩衝液(ウェル当たり50 μl)にて60℃で20分間実施する。完全に補完された部位より開始し、下流のRNAと前述のブロッキング・アダプターのセンス鎖が移動する完全長配列伸長の結果として、相補dNTPにより補完される変異体ヘテロ二本鎖上に新たな3’側一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングおよび遊離3’‐OHが作製される。対照的に、相補dNTPにより補完されていない野生型ヘテロ二本鎖、部分的に保護されたヘテロ二本鎖、および変異体ヘテロ二本鎖は、ブロッキング・アダプターにより遮断されたままである。
レポーター・アダプターの調製、完全長配列伸長産物とレポーター・アダプターの連結、および二本鎖アダプター連結産物の遊離
フォワードプライマーE2F‐TAA(+)において下線を引いたとおり、E2F1遺伝子由来の2種類のプライマーE2F‐TAA(+)5’‐GGCACTCGGCTGACAGTGTC‐3’およびE2F7(−)5’‐TGTGGTGTGGCTGCCCAG‐3’を用いて、TAA‐1制限酵素部位、ACAGTを含むcDNAフラグメント(〜160 bp)を増幅させる。TAA‐1処理後、PCRフラグメントを消化して2つの小さなサブフラグメント(アンチセンス上に一塩基「デオキシ‐T)オーバーハングを持つ145 bpのサブフラグメントとセンス鎖上に一塩基「デオキシ‐A」オーバーハングを持つ15 bpのサブフラグメント)にする。ゲル電気泳動によるサイズ分画後、145 bpのサブフラグメントを精製し、レポーター・アダプターとして使用する準備をする。T4 DNAリガーゼ400ユニット含有最適化緩衝液(50 μl)にて室温で1時間、連結用にレポーター・アダプター(各1 ng)を各ウェルに入れる。レポーター・アダプター上の3’側一塩基「デオキシ‐T」オーバーハングにより、相補dNTPにより補完される変異体ヘテロ二本鎖由来の完全長配列伸長産物とのみ、連結が可能になる。したがって、変異体‐二本鎖アダプターハイブリッドは、相補dNTPにより補完される変異体ヘテロ二本鎖で形成され、野生型ヘテロ二本鎖、部分的に保護される相同性ヘテロ二本鎖、および相補dNTPにより補完されない変異体ヘテロ二本鎖は、ブロッキング・アダプターにより遮断されたままである。ブロッキング・アダプターに埋め込まれたPst‐1部位を利用して、引き続きPst‐1消化を実施し、PCR増幅用として二本鎖アダプター連結産物を上清に遊離させ、発現頻度の低い変異体を検出する。
二本鎖アダプター連結産物のPCR増幅および変異体の同定
セミネステッドPCRを実施し、相補dNTPにより補完される変異体ヘテロ二本鎖から生じる二本鎖アダプター連結産物を増幅する。それぞれブロッキング・アダプターおよびレポーター・アダプター由来のフォワードプライマーおよびリバースプライマーとして前述のBadp(+)およびE2F7(−)を用いて、PCRの第1ラウンドを実施する。PCRの第1ラウンド後、フォワードプライマーと別のオリゴヌクレオチドE2F5(−)としてBadp(+)を、リバースプライマーとして5’‐ACTGGATGTGGTTCTTGGAC‐3’を用いて第2ラウンドを実施する。プライマーE2F5(−)は、E2F1遺伝子上の5’に隣接する配列からプライマーE2F7(−)までの配列より生じる。結果生じるセミネステッドPCR産物Badp‐E2F5は、〜135 bpの大きさである。Badp‐E2F5 PCR産物の範囲は、Sal‐1制限酵素部位にまたがることに留意する。Badp‐E2F5 PCR産物をSal‐1消化すると、標準ゲル電気泳動および臭化エチジウム染色により、あまり見ることのできない〜110 bpサブフラグメントおよび〜25 bpサブフラグメントが検出可能になる。したがって、変異体は135 bpのアンプリコンの存在により同定し、〜110 bpサブフラグメントを作製するSal‐1消化により確認する。
アッセイの感度を測定する希釈実験
陽性細胞株KG‐1の総細胞性RNAを10分の1まで連続希釈し、陰性対照の総細胞性RNA1マイクログラムとそれぞれ混合すると、試料セットは様々な陽性反応を呈する(1、1:10、1:102、1:103、1:104、1:105、1:106)。これらの連続希釈試料を上述のとおり検査し、135 bpのアンプリコンBadp‐E2F5の存在により陽性を同定する。このようにして、本法の感度を測定する。
結果
9種類の目的遺伝子K−ras、TP53、Erb‐b2、VEGFR3、MSH6、CHEK2、BRIP1、LKB1、およびPIK3CAにおける変異体の存在を確認するため、10種類の新生細胞株および8種類の正常血液試料について検査する。予想どおり、8種類の陰性対照試料は、いずれも陰性となる。4種類の新生細胞株(MCF7乳癌細胞、B15リンパ芽球性白血病細胞、HL‐骨髄性白血病細胞、およびKBM7骨髄性白血病細胞)も陰性の結果を示す。陽性反応は、以下のとおり同定される。NCI‐460肺癌細胞は「GA」により、SW‐480大腸癌細胞は「GA」により、HCT‐15大腸癌細胞は「GA」および「TA」により、KG‐1骨髄性白血病細胞は「GA」により、HUT‐78ヒトT細胞白血病細胞は「TC」により、Ryan B細胞リンパ腫細胞は「GA」により補完される。図6で代表的に示されるとおり、結果はRyan B細胞リンパ腫細胞(上パネルの左4列)、KG‐1骨髄性白血病細胞(上パネルの右4列)、HCT‐15大腸癌細胞(下パネルの左4列)、SW‐480大腸癌細胞(下パネルの右4列)から得られる。「GA」により補完されるRyan細胞リンパ腫細胞、「GA」により補完されるKG‐1骨髄性白血病細胞、「GA」および「TC」により補完されるHCT‐15大腸癌細胞、および「GA」により補完されるSW‐480大腸癌細胞において、陽性反応はPCRアンプリコンBadp‐E2F5の存在により大きさ別に示され(「U」列)、Sal‐1消化(「S」列)により確認される。本法の感度を測定するため、様々な濃度のKG‐1白血病細胞RNA(1、1:10、1:102、1:103、1:104、1:105、1:106)を持つ連続希釈試料および陰性対照セットについて分析する。「GA」を用いてDSF反応が実施される試料の結果を図7に示す。図7で示されるとおり、135 bpのBadp‐E2F5 PCRアンプリコンは1〜6列で明確に検出され、KG‐1RNAはそれぞれ1、1:10、1:102、1:103、1:104、および1:105の希釈時に認められる。陰性対照(8列)ではバンドは検出できないが、KG‐1RNAが1:106まで希釈される7列に薄いバンドが存在する可能性がある。まとめると、これらの結果は、数十万の正常細胞において変異体の有無を調べるための本アッセイにより、多数の多様な遺伝子の同時スクリーニングが可能になることを示す。
DNA塩基配列決定による突然変異の特徴付け
これら18種類の試料における9種類の目的遺伝子についてDNA塩基配列決定を実施する。試験対象となる10種類の新生細胞株の突然変異については、表2に要約する。
10種類の新生細胞株に関する塩基配列決定により同定される突然変異
注1:*は922の位置のヌクレオチドの「G」のうしろにGATTAを挿入することを意味する
注2:WT:野生型
注3:各変異体におけるヌクレオチドの配列の変化(下線)と関与するコドンおよび予想されるアミノ酸の変化(上線)を示す
DNA塩基配列決定の結果は、本DSF突然変異スクリーニング法の結果と一致していると考えられる。本DSF法により確認された全ての陽性反応は、DNA塩基配列決定により検出されたとおり、9種類の目的遺伝子の少なくとも1つに突然変異が存在することを示す。本DSF法により確認された全ての陰性反応も、DNA塩基配列決定により陰性の結果を示す。さらに、DSFで使用された相補dNTPは、DNA塩基配列決定により同定されたとおり、ヌクレオチドの配列の変化と一致する陽性反応を示す。これらの所見により、本DSF突然変異スクリーニング法の特異度が確認された。
多数の多様な目的遺伝子の多様な遺伝子変性の同時検出を促進する、本開示に記載した一連の分子反応の概要である。
ストレプタビジンをベースとする固相培地を用いて、本開示に記載した一連の分子反応を促進し、発現頻度の少ない変異体を検出する非制限的方法の概要である。
多数の多様な遺伝子を対象とするマイクロアレイフォーマットにおける遺伝子変異を検出するための非制限的方法の概要。
アレイフォーマットにおける様々な系統のHIV‐1のpol遺伝子のI型ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および突然変異を検出するための非制限的方法の概要である。
発現頻度の少ない薬剤耐性HIV‐1突然変異を検出するための非制限的方法の概要である。
本開示の突然変異検出法の代表的な結果である。
本開示の突然変異検出法の感度である。