JP4908533B2 - 魚類を利用した生物処理方法及び装置 - Google Patents
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Description
具体的には、オゾンや超音波、もしくは熱を加え、汚泥を構成する細胞を破壊することによって汚泥発生量を抑制することが実施されている。
しかし、いずれの方法も投下するエネルギーは膨大であり、地球環境を考慮すると適切な方法とは言いがたい。
このような観点から、本発明者らは、先に特開2004−298823号公報(特許文献1)により、生物処理システムで発生する活性汚泥を魚類の餌とすることで、化石燃料を浪費することなく、汚泥を減量化することを提案している。
前記生物処理方法において、A工程で生じる余剰汚泥は、改質してから魚類飼育槽に導くと共に、該改質は、A工程流出水の一部を返送して生物学的に行うのがよく、前記魚類飼育槽の流出水の一部は、B工程に戻すことができ、また、前記B工程流出水の一部をA工程に戻すこともできる。
前記生物処理装置には、余剰汚泥改質槽を有し、前記A槽の余剰汚泥を該余剰汚泥改質槽に移送する配管と、該余剰汚泥改質槽の改質汚泥を前記魚類飼育槽に移送する配管とを設けることができ、前記魚類飼育槽には、魚類飼育槽の流出水の一部をB槽に返送する配管を接続することができ、また、前記B槽には、B槽の流出水の一部をA槽に返送する配管を接続することができる。
1) 省スペース、省エネルギーでかつ、処理水質の高度化が図れる。
2) 余剰汚泥を魚類の餌とし、成長した魚類と魚類から排泄される糞が得られ、飼料・肥料・土壌改良材として有効利用できる。
3) 余剰汚泥の改質が化学物質を投与しなくても可能であり、食いつきの良い餌に変換できる。
4) 生物処理システムで発生した汚泥を餌として魚類の体内に取り込み、体内代謝させることによって、特別なエネルギーを投入することなく、汚泥の減量化が達成できる。
以上から、自然の浄化作用で生成した汚泥を自然の代謝サイクルに取り組むことが可能になった。
まず、本発明の実施形態を図1から図4で説明する。
図1では、被処理水1は、生物処理システムに導かれる。生物処理システムは、前段のA工程2と後段のB工程4が直列に組み合わされている。有機物負荷としてA工程2は高く、B工程4は低く設定される。また、A工程2、B工程4は、ともに処理方法としては好気性処理が望ましく、プロセスとしては浮遊汚泥法でも生物膜法でもどのような方法でも構わない。
通常の下水道施設(非特許文献1)や、排水、汚濁が進んだ河川・湖沼、し尿などを対象とした様々な処理方法でよく、特に定めはない。
一般に、好気性生物処理を二段で行うと、曝気風量が相対的に少なくなるため省エネであり、同時に生物浄化の進んだ処理水が得られるという利点がある反面、余剰汚泥発生量が多いという欠点がある。本発明では、こうした利点はそのまま生かし、余剰汚泥を魚類にとってより好ましい餌にするように工夫した。
ここで生成するA工程2とB工程4の汚泥性状は著しく異なる。前者には、生物分解可能な有機物が多く残っているのに対して、後者には、生物分解可能な有機物はほとんど残っていない。また、後者の汚泥生成量は、前者の約10分の1から数10分の1である。
魚類の餌として考えると、B工程の余剰汚泥をA工程に戻し、汚泥を均質化させることが好ましい。したがって、B工程余剰汚泥7は、A工程2に戻して均質化した後に、A工程余剰汚泥6として魚類飼育槽8に供給することが好ましい。汚泥6の供給の方法として、連続的に供給しても良いが、間欠的に供給した方が効果的な場合もある。
あるいは、図3のように、造粒汚泥をB工程流出水の一部51を用いて、汚泥スラリーの中に存在する溶存有機物量を低下させると、魚類飼育水槽の水質管理が容易になり、これもまた効果的である。もちろん、汚泥の安定化と造粒、水洗とを適宜に組合わせた改質手段も有効である。
別な改質手段として物理化学的な方法がある。つまり、無機凝集剤や高分子凝集剤、とりわけ塩化カルシウムやキトサンとアルギン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、カルボルシルキメチルセルロース(CMC)など食品添加物として認められている凝集剤を単独もしくは複数組合わせてA工程2の余剰汚泥6に添加し、汚泥を造粒することも極めて効果的である。
なお、魚類飼育槽8底部に溜まる糞10は、顆粒状の土のような状態になっているため、そのまま系外に排出してもよく、場合によっては、B工程4もしくはA工程2に戻すこともできる。糞10は沈降性に優れ、余剰汚泥のように脱水処理することが不要であり、そのまま土壌改良剤として土に戻すことができる。また、成長した魚と混合し、飼料や肥料に利用することができる。
また、魚類飼育槽8の水質維持の観点から、坂巻貝やマシジミ、カワニナなどの貝類を飼育することもできる。魚類飼育槽8には、図示しないが、酸素供給設備や温度調節機構等、魚類にとって適正な環境を保つための設備を付加することが望ましい。
また、魚類飼育槽8を区割りして、成長具合に応じた分類にしても良いし、種類毎に分類することもできる。
また、成魚に比べて仔稚魚期の魚の方が、単位魚体重量当りの摂食量が多く、特に、仔稚魚期の魚を利用することで、効率的に汚泥の減量化が進む。さらに言えば、魚類の摂食量は、水温とも大きく関係し、水温が低い場合には単位魚体重量当りの摂食量が減る。これを利用して、前記したように、日本のように冬季に水温低下がある場所においては、春に仔稚魚期の魚を入れ、夏季から秋季にかけて大きな成長を促し、冬季には成長した魚にしておくことが望ましい。冬季に単位魚体重量当りの摂食量が減ったとしても、魚類飼育槽8内の魚体重量が増えているため、余剰汚泥の処理量を一年を通じてほぼ一定に保つことができる。
また、必要に応じて、B工程流出水5を魚類飼育槽8に導くことが、良好な飼育環境を作るうえで有効である。さらには、B工程流出水5を凝集沈殿やろ過、さらには、オゾン処理、活性炭吸着などの高度処理した後に放流することもできる。もちろん、河川水や地下水が豊富にある場所では、図4に示すように、天然水100を魚類飼育水槽8に供給することも有効である。
このようにして、成長した魚類は、適宜、取り除き、飼料や肥料に加工することが好ましい。さらに、冬季の間は取り除かないで、春から夏にかけて仔稚魚期の魚と入れ換えることが良い。
図5は、A工程、B工程とも活性汚泥処理法を採用した例であり、それぞれに曝気槽(21・41)と沈殿池(22・42)とが配置されている。曝気槽(21・41)には、担体を投入することや生物接触材を配備することもできる。
図6は、図5と同様であるが、A工程曝気槽21に隔壁24を配備し、B工程流出水5の一部を循環水51として、A工程曝気槽21の隔壁24の上流側に戻すようにしたものである。ここで、隔壁24の上流側の曝気を弱めるか、停止することによって嫌気状態にする。
A工程よりもB工程は、有機物負荷が低いため、下水のように原水中にアンモニア性窒素が存在する場合、B工程でアンモニアの硝化が進行しやすい。さらに、B工程流出水5の一部をA工程曝気槽21の隔壁24の上流側に循環すると、脱窒素が行われる。また、隔壁24を複数取り付け、りん除去や窒素除去を適宜実施することができる。
図8は、図7に生物学的な改質槽11を付加した場合であり、A工程流出水の一部31を改質槽11に導いていることが特徴である。
本発明を図5(実施例1)及び図7(実施例2)に、従来法を図9(比較例1)に、実験結果を表1に示す。
図9(比較例1)で、原水201は曝気槽221に供給され、処理水は沈殿池222で固液分離した後、沈殿池流出水205として系外に排出される。沈殿汚泥の一部は、返送汚泥223として曝気槽221に戻り、また、余剰汚泥206は、魚類飼育槽208に導かれる。魚類飼育槽208において、余剰汚泥206は魚類に摂取され、魚類飼育槽流出水209の一部は曝気槽221に戻り、また、糞210は系外に排出される。
魚類飼育槽の容積は実施例1で10m3、実施例2で4.7m3、比較例1で5.2m3であった。曝気槽容積および曝気風量は実施例1(A工程+B工程)で17.5m3および675Nm3/d、実施例2(A工程+B工程)で12m3および675Nm3/d、比較例1で40m3および1170Nm3/dであった。
実施例1(図5)の魚類飼育槽の容積は比較例1に対し、1.9倍と大きくなる反面、実施例1の曝気槽容積および曝気風量は比較例1に対し、0.44倍および0.58倍と小さくなった。また、魚から生じる糞自体の生成量は、実施例1では70〜90kg/dと他に比べてやや大きな値であるが、実施例2と比較例1は50〜70kg/dと大きな相違がなかった。しかしながら、魚類飼育量に対する糞の発生量では実施例1が最も低かった。これは、実施例1によって生じる余剰汚泥は実施例2や比較例1に比べて、発生量自体は多いものの、魚によって資化される比率が高かったためと思われる。
一方、糞の性状は三者ともほぼ同様であり、顆粒状で沈降性に優れ、攪拌流を与えても直ぐに沈殿した。また、糞を採取し、0.2mmの網に載せると糞は網に留まり、しっかりとした固さであった。
つまり、魚の糞の性状は流入排水の基質によって変化するものの、排水の処理方式によっては大きく左右されないと考察できる。
実施例2(図7)は、実施例1よりも魚類飼育槽が小さくなり、さらに効果的であることがわかった。
また、処理水質に関しても、比較例1に比べて実施例1は優れており、実施例2は実施例1より優れている。
図10は、本発明の実施例3であり、図5に改質槽11を配置し、A工程流出水の一部31を改質槽11に導入したものである。一方、図11は、比較例2であり、図9に改質槽211を配置した従来法であり、沈殿池流出水の一部が改質槽211に導かれている。図10、11とも、余剰汚泥(6、206)と沈殿池流出水(31、2051)とが別々に改質槽(11,211)に導かれているが、予め混合して改質槽に導かれても何ら問題ない。
改質槽11及び211は同一の仕様とし、5時間から10時間の滞留時間を有する円形槽に、全面曝気型の微細気泡散気装置を配備した。これは、余剰汚泥が沈殿しないで浮遊状態を維持することと、汚泥に過度な衝撃を与えず、汚泥自体による生物凝集作用を最大限に発揮できるように配慮したためである。
実施例3の改質槽前の上澄水BODは40〜80mg/Lと高く、汚泥の沈降性はやや不良であり、沈降性の著しく高いものと沈降性の不十分なものとが混合されている状態であった。つまり、粒径分布として、大きな部分と小さな部分との二つの山があるようであった。
一方、比較例2の改質槽前は、均質な汚泥のようであり、汚泥の沈降性も比較的良好であった。しかし、上澄水には、細かい粒子が少し残存する状態であった。
実施例3の改質槽後の上澄水BODは5mg/L以下であり、処理水を静置すると、汚泥がはっきりと凝集して塊となって沈降する様子が観察された。同時に、上澄水には、肉眼で見える粒子はほとんど存在せず、非常に清澄であった。
一方、比較例2の改質槽後は、汚泥の沈降性はほとんど変わらず、上澄水の清澄さも変化が認められなかったが、BODが僅かに低減された。これは、比較例2の場合、改質槽での生物学的反応が穏やかな条件で進行したためと思われる。
なお、実施例3で得られた改質汚泥を魚に供餌したところ、食いつきがよく、摂取量を増加できる可能性が示唆された。
Claims (8)
- 生物処理システムで生成する汚泥を魚類飼育槽に導く生物処理方法において、前記生物処理システムが、有機物負荷の高い前段のA工程と、該A工程よりも有機物負荷の低い後段のB工程との少なくとも二つの工程に分かれ、該B工程から生じる余剰汚泥をA工程に導き、A工程で生じる余剰汚泥を前記魚類飼育槽に導くことを特徴とする生物処理方法。
- 前記A工程で生じる余剰汚泥は、改質してから前記魚類飼育槽に導くと共に、該改質は、A工程流出水の一部を導いて生物学的に行うことを特徴とする請求項1記載の生物処理方法。
- 前記魚類飼育槽の流出水の一部は、B工程に戻すことを特徴とする請求項1又は2記載の生物処理方法。
- 前記B工程流出水の一部は、A工程に戻すことを特徴とする請求項1、2又は3記載の生物処理方法。
- 生物処理槽と魚類飼育槽とを有する生物処理装置において、前記生物処理槽が、有機物負荷の高い前段のA槽と、該A槽よりも有機物負荷の低い後段のB槽の2槽以上を有し、該B槽の余剰汚泥をA槽に導く配管と、A槽の余剰汚泥を前記魚類飼育槽に導く配管とを有することを特徴とする生物処理装置。
- 請求項5記載の生物処理装置には、余剰汚泥改質槽を有し、前記A槽の余剰汚泥を該余剰汚泥改質槽に移送する配管と、該余剰汚泥改質槽の改質汚泥を前記魚類飼育槽に移送する配管とを設けることを特徴とする生物処理装置。
- 前記魚類飼育槽には、魚類飼育槽の流出水の一部をB槽に返送する配管が接続されていることを特徴とする請求項5又は6記載の生物処理装置。
- 前記B槽には、B槽の流出水の一部をA槽に返送する配管が接続されていることを特徴とする請求項5、6又は7記載の生物処理装置。
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