JP2008006351A - 汚水処理方法及び処理施設 - Google Patents

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昭夫 小松
Manabu Kawanaka
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Abstract

【課題】汚水処理する基本処理系の汚泥貯留槽を、処理汚泥に有用微生物群を混合させることにより、乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等をバランスよく増殖させる培養槽として兼用し、また汚泥貯留槽で生成される培養液を汚水処理部に返送することにより、有用微生物群によって汚水処理を効率よく行う汚水処理方法及び処理施設を提供する。
【解決手段】下水施設等から供給される流入汚水を処理する前処理部Aと汚水処理部Bと汚泥処理部D等からなる基本処理装置2によって汚水処理をする方法において、汚泥貯留槽23内の貯留汚泥に乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群を混入して微生物を増殖させることにより、汚泥貯留槽23を汚水を発酵分解させる培養液を生成させる培養槽にすると共に、汚泥貯留槽23内の培養液の一部を処理返送管30によって、前処理部A或いは汚水処理部Bに返送供給し汚水処理を行う汚水処理方法と処理施設にした。
【選択図】 図1

Description

本発明は,集落排水施設や公共下水道,湖沼や河川等の汚水発生部から供給される汚水を処理する汚水処理方法及び処理施設に関する。
従来,農業集落排水や公共下水道等の下水施設等から供給される汚水(下水)は,下水処理施設に集められ,該流入汚水を活性汚泥法によって汚水処理される。このような処理施設としては,「日本農業集落排水協会型汚水処理施設」が広く知られている(例えば非特許文献1。)。
この「日本農業集落排水協会型汚水処理施設」は,流入汚水中の固形物を除去し沈殿処理や流量調整等を行う前処理部と,前処理部から供給される前処理済汚水を曝気及び攪拌等によって汚水処理する汚水処理部と,汚水処理部から供給される中間処理水を沈殿処理する沈殿槽や消毒槽,放流ポンプ槽等からなる後処理部と,上記沈殿槽の下層処理水(中間処理水)を引き抜いて汚泥濃縮処理をして処理汚泥を貯留する汚泥貯留槽等からなる汚泥処理部等によって構成される。
また下水を処理する浄水装置の汚水流入部に,微生物により発酵を促す発酵誘導体を投入することにより,複数の微生物群を共生させて汚水処理(バイオ処理)する技術も既に公知である(例えば特許文献1。)。
社団法人「地域資源循環センター」発行の「JARUS(集落排水・地域資源循環)」NO.78(2004.10.1発行)の付録「循環型社会の形成に向けて」(特に3頁,4頁参照) 特開2003−211182号公報
上記非特許文献1で示される汚水の処理方法は,供給される流入汚水を沈殿処理等を行う前処理と,前処理部から供給される前処理済汚水を曝気及び攪拌し活性汚泥法で処理する汚水処理部と,汚水処理部から排出される上澄処理水や中間処理水を処理する後処理部並びに汚泥処理部等からなる汚泥処理装置によって行うので,汚水基本処理系がシンプルで比較的廉価な設備で汚水処理することができ普及を行い易い等の利点がある。
然し,上記のような基本処理装置は,曝気及び攪拌等の活性汚泥処理手段と相まって汚水を分解する微生物及びこれを捕食する原生動物を増殖させて処理するので,汚水処理の過程で原生動物の大量死滅の発生が避けられず,死骸の腐敗により硫化水素等の有害ガスや悪臭の発生を伴うものである。
特に悪臭の発生は処理汚泥が貯留されて原生動物の腐敗が多い汚泥貯留槽において著しく,また汚水処理部においても曝気や攪拌等の運転が不適切な場合に生じ易い。さらに密閉構造にすることが困難な前処理部において,汚水が定期的又は不定期的に供給されるとき,腐敗臭が外部に漏出し易いものである。尚,農業集落排水等の一般的な処理施設は,悪臭や有害ガスによる近隣住民への影響や施設の腐食を防止するために,各処理槽は設置される点検用の蓋を密閉構造で設け,さらに排気装置や脱臭装置等が設置されるものである。
このため装置の運転には,各曝気装置の調整や汚水供給及び処理汚泥の排出タイミング等の運転調整を管理し,微生物と原生動物をバランスよく発生維持させた汚水処理を行うために,処理施設の運転監視及び管理手段が複雑化し高い習熟性を要求されると共に,管理コストも高くなる等の欠点がある。
また汚水処理時に生ずる有害ガスや悪臭を排気,脱臭処理するため,各処理箇所や建物に多くの排気,脱臭装置を設置し連続運転をすること,及び曝気装置の連続運転や,処理施設を囲う建物内の臭気を排出するための排気設備類を連続的に運転調整するので,消費電力の大きい施設になる等の問題がある。
また活性汚泥処理を主体とする上記装置は,処理水を塩素滅菌等による処理を行い国が定める放流基準をクリアさせたのち排出される。従って,この処理水を野菜等の栽培用肥料として有効利用することを施策的に推奨されているが,残渣塩素含有の面から肥料として有効利用する際に,大量に使用することに対し抵抗感があり,また汚泥貯留槽から取り出し排出される処理汚泥を肥料として有効利用する場合には,悪臭を伴うので直接的に使用することができず,コンポスト化等の再処理をしなければならない欠点がある。
そこで,生成される処理水を有益機能水として,また処理汚泥を濃縮微生物液として各種方面に有益的に活用しようとして,上記装置に特許文献1で示されるような発酵誘導体を,下水処理施設の装置上流側の各処理槽及び設置される汚水流入部等に投入することが試みられる。
然し,下水処理施設に流入される汚水の供給量は一定せず,殊に生活パターンに密着する農業集落排水施設等においては,朝,昼,夕方,夜間等での生活水使用の変動により極端に流入汚水量が変化するので,これら発酵誘導体を汚水処理上流側に直接的に投入する手段では,発酵菌の安定的な増殖を長期的に維持する運転管理に熟練を要し,汚水分解作用が不十分になり易いことから生成される処理水や処理汚泥の品質にバラツキを生じ,安定的な使用及び処理コストの回収が困難である等の課題がある。
上記課題を解決するための汚水処理方法及び処理施設は,第1に,下水施設等から供給される流入汚水を沈殿処理等の前処理を行う前処理部Aと,前処理部Aから供給される前処理済汚水を曝気や攪拌をしながら汚水処理し処理水及び中間処理水を排出する汚水処理部Bと,汚水処理部Bの中間処理水を汚泥処理し汚泥を汚泥貯留槽23に貯留して排出する汚泥処理部D等からなる基本処理装置2によって汚水処理をする方法において,前記汚泥貯留槽23内の貯留汚泥に乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群を混入して微生物を増殖させることにより,該汚泥貯留槽23の機能を,前記汚水等を発酵分解させる培養液を生成させる培養槽にすると共に,汚泥貯留槽23内の培養液の一部を処理返送管30によって,前処理部A或いは汚水処理部Bに返送供給し汚水処理を行うことを特徴としている。
第2に,培養液を混入した汚水を,汚水処理部Bの曝気第1室8によって嫌気性処理したのち,曝気第2室9によって好気性処理することを特徴としている。
第3に,処理返送管30の中途部に土壌細菌担体を収容した汚泥改質機32を設け,汚泥改質機32内を通過する培養液に土壌細菌を添加させて汚水処理を行うことを特徴としている。
第4に,汚泥改質機32に,曝気第2室9の中間処理水を切換可能に供給することを特徴としている。
第5に,前処理部Aの上流側に設置される曝気沈砂槽5に対し,下流側に設置される流量調整槽7内の汚水の一部を連続的に返送供給することを特徴としている。
第6に,処理施設1によって汚水処理された処理水の一部を流入汚水に混入し,処理水混入汚水を前処理部Aに供給することを特徴としている。
第7に,供給される汚水を沈殿処理等の前処理を行う前処理部Aと,前処理部Aから供給される前処理済汚水を曝気や攪拌をしながら汚水処理し処理水及び中間処理水を排出する汚水処理部Bと,汚水処理部Bの中間処理水を汚泥処理し汚泥を汚泥貯留槽23に貯留して排出する汚泥処理部D等からなる基本処理系によって汚水処理する処理施設1において,前記汚泥貯留槽23内の汚泥に乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群を混入して生成される培養液の一部を,前処理部Aの上流側に返送供給する処理返送管30を有する汚泥改質装置3を設けたことを特徴としている。
第8に,処理返送管30の下流側に,土壌細菌担体を交換可能に収容した汚泥改質機32を設けたことを特徴としている。
第9に,汚泥改質機32と汚泥貯留槽23との間の処理返送管30に,汚水処理部Bの中間処理水を返送する中間水返送管36を接続したことを特徴としている。
第10に,汚泥改質機32の上流側において,培養液と中間処理水を前処理部Aに切換可能に供給することを特徴としている。
上記本発明による汚水処理方法及び処理施設によれば,流入汚水を汚水処理する基本処理系外への搬出のために設置される汚泥貯留槽を,処理汚泥に有用微生物群を混合させることにより,乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等をバランスよく増殖させる培養槽として兼用することができる。また,汚泥貯留槽で生成される培養液を処理返送管によって汚水処理部に返送するので,有用微生物群によって汚水処理を効率よく行うことができる。さらに,培養槽としての汚泥貯留槽内の処理汚泥は有用微生物群が増殖した培養液になっているので,原生動物の発生を防止して処理汚泥の有効利用を促進することができる。
一般的に,前処理部と汚水処理部と汚泥処理部等からなる汚水基本処理系においては流入汚水の変動により種々の条件変化が生じやすい傾向にあるが,これら汚水基本処理系の経路外に配置されて流入汚水の負荷変動を受けにくい汚泥貯留槽を有用微生物群の培養槽に活用することにより培養液を安定的に生成することができる。
然るに,汚水基本処理系の経路外における流入汚水の負荷変動を受けにくいところに有用微生物群の培養槽を配設して,汚泥貯留槽の汚泥を培養処理しても良いものである。
また,前処理部と汚水処理部と汚泥処理部等からなる汚水基本処理系の系外に対し,培養液を汚泥貯留槽から前処理部に返送する汚泥改質装置を設置するので汚泥の改質を負荷変動の少ない状態で安定的な条件下で処理できる利点がある。これらは新設施設に効果的な機能を発揮するばかりか,既存施設にも追加して簡単に設置することができると共に,既存の基本処理装置の運転を停止することなく汚泥改質装置の設置を可能にし,汚水処理を継続することができる。
流入汚水に培養液を混入した状態で,汚水処理部の曝気第1室によって嫌気性処理したのち,曝気第2室によって好気性処理をすることにより,汚水は嫌気性環境と好気性環境に切り換えられながら発酵菌の増殖を主体とする発酵処理によって,原生動物の発生を抑制し悪臭を抑制した汚水処理を促進することができる。
また,活性汚泥法による汚水処理を行う在来の基本処理装置に対しても,汚水基本処理系を大幅に改造することなく,発酵作用による汚水処理を簡単に行うことができる。
処理返送管の中途部に土壌細菌担体を収容した汚泥改質機を設け,汚泥改質機内を通過する培養液に土壌細菌を添加させて汚水処理を行うことにより,汚泥貯留槽内の汚泥を有用微生物群と土壌菌等の増殖活性による微生物分解作用によって処理することができると共に,汚泥貯留槽を有用微生物の増殖槽として速やかに機能させることができ,汚水処理時に有害ガスや悪臭の発生を抑制することができる。
また汚水処理した処理水及び処理汚泥を,肥料や土壌改良材等の各種の分野に簡単に利用することができる。
流動性の高い曝気第2室の中間処理水を汚泥改質機に供給することができるので,粘性が高かったり原生動物の死骸を多く含む場合の汚泥を汚泥改質機内に詰まらせることなく,処理中途の中間処理水を利用して土壌菌を曝気沈砂槽に供給し,土壌菌による処理環境を速やかに整えることができる。
前処理部の上流側に設置される曝気沈砂槽に対し,下流側に設置される流量調整槽内の汚水の一部を連続的に返送供給することにより,培養液と混合した汚水中の微生物によって曝気沈砂槽側に付着又は残留する汚水の腐敗を抑制し悪臭の発生等を防止することができる。
処理施設から取り出した処理水を流入汚水に予め混入し,処理水中の微生物によって前段汚水処理を経た処理水混入汚水を前処理部に供給することにより,処理施設による汚水処理を処理負荷を軽減し効率よく行うことができる。
また汚水発生側から汚水を処理施設に供給する汚水路に対し処理水を投入することにより,処理水中の微生物によって汚水路中の腐敗の進行を防止することができる。
汚水処理をする基本処理系の汚泥貯留槽内の汚泥に乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群及び必要によりキトサン,糖蜜等を混入して生成される培養液の一部を,前処理部の上流側に返送供給する処理返送管を有する汚泥改質装置を設けたことにより,前処理部と汚水処理部と汚泥処理部等からなる基本処理系の系外に,培養液を汚泥貯留槽から前処理部に返送する汚泥改質装置を簡単に設けることができる処理施設を廉価に構成することができる。
処理返送管の下流側に汚泥改質機を設けることにより,処理返送管内の微生物によって汚水処理を促進させた処理中汚水を,土壌細菌担体に目詰まりを生じさせることなく接触させ土壌菌の添加を効率よく行うことができる。
汚泥改質機と汚泥貯留槽との間の処理返送管に,汚水処理部の中間処理水を返送する中間水返送管を接続したことにより,汚泥貯留槽の処理返送管を利用して,必要により汚水処理部の中間処理水を汚泥改質機に簡単に供給することができる。
汚泥改質機の上流側において,培養液と中間処理水を前処理部に切換可能に供給する構造としたことにより,汚泥改質機の土壌細菌担体を交換する際,又は汚泥改質機或いはその管路等に詰まりや破損等のトラブルがあるときに,汚泥貯留槽の処理汚泥並びに曝気第2室の中間処理水等を,汚泥改質機を避けながら汚水処理部の曝気沈砂槽等に供給し処理施設の汚水処理を継続することができる。
以下図示する本発明の実施形態について説明する。図1は農業集落排水事業地区等から供給される汚水を浄化処理する本発明に係わる処理施設(処理装置)1の構成を模式的に示す平面図である。この実施形態で示す処理施設1は,活性汚泥法により流水汚水を処理する既設の基本処理装置(汚水基本処理系)2に対し,流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい当該基本処理装置2の系外に,汚水の改質処理を行う汚泥改質装置3を同図に管路を太線で示した構成により付加した構造としている。また処理施設1は運転操作を司るコントロール部4及び該コントロール部4と連携するセンサ類,計測機器,曝気ブロワー,攪拌装置,切換バルブ,警報装置等を備え,基本処理装置2と汚泥改質装置3の自動制御及び手動操作を行うと共に,インターネット或いは携帯電話網を利用し装置を遠隔監視したり,データ管理並びに制御.設定変更等を行うことができる。
また図示例の処理施設1は,前記農業集落排水地区等に既設の基本処理装置2に対し,基本処理装置2の構造を大幅に変更することなく利用し,また汚水処理運転を停止することなく,流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい当該基本処理装置2の系外に汚泥改質装置3を簡単に付設することによって構成することができる。
そして,旧施設の活性汚泥法による汚水処理から,本発明に係わる発酵処理をベースにした汚水処理方法に切り換えることができる。
また処理施設1は切り換え後の運転を,有害ガスや悪臭等による環境への悪影響を防止しながら省力的,経済的に行い,且つ生成排出される処理水及び処理汚泥を多様な分野で有効利用することができるように有益化する等の特徴を有するものである。
本発明の処理施設1の具体構成について説明する。図1で示す処理施設1は,汚水基本処理系を特許文献1のものと同様な「日本農業集落排水協会XIV型汚水処理システム」を既設の汚泥処理装置として利用している。先ず,この基本処理装置2の各部の構造と活性汚泥法によって行う汚水処理について説明する。
即ち,既設の基本処理装置(活性汚泥処理装置)2は,供給される汚水のスクリーン濾過,固形物の粉砕,土砂類の沈殿除去及び次工程への流量調整等を行う前処理部Aと,前処理部Aから供給される前処理済汚水を曝気及び攪拌しながら活性汚泥処理する汚水処理部(中間処理部)Bと,汚水処理部Bから供給される中間処理水を沈殿,消毒等の最終処理を行う排水部Cと,汚水処理部Bの中間処理下層水中の汚泥を引き抜いて汚泥貯留して汚泥処理を行う汚泥処理部D等によって汚水基本処理系を構成している。
上記前処理部Aは,処理最上流側に設置されて流入汚水(図1左側の白抜き矢印図示)を受け入れて曝気沈殿等により第1次固形物処理をする曝気沈砂槽5と,曝気沈砂槽5から主管路(送出し供給管)6を介し経路中に設置される固形物処理部6aを経て供給される流入汚水を一時的に貯留して処理下流側への流量調整を行う流量調整槽7等からなる。図示例の曝気沈砂槽5は土砂や大きな固形物を除去する固形物除去部5aを備え,流量調整槽7はスクリーン濾過処理や固形物粉砕を行う,第2固形物処理部(自動微細目スクリーン)7aと汚水計量器7bを備えている。
尚,基本処理装置2へ供給する流入汚水は,各家庭等の汚水発生源から下水路を介して,自然流下によって又は,最終マンホールに貯留された汚水をポンプによってこれら下水施設等から供給することができる。
汚水処理部Bは,流量調整槽7から直接及び汚水計量器7bを介して供給される流入汚水を,汚水処理部(B)の上流側に位置する曝気第1室8と下流側の曝気第2室9によって曝気及び攪拌を複数段に分けて行うことにより活性汚泥処理をする。この曝気第1室8と曝気第2室9は,隔壁の下部に形成した連通孔9cを介して連通しており,曝気ブロワー9aに連通している空気噴出口を有する攪拌体9bを備え,また後述する分配供給部19を介して沈殿槽10から沈殿槽下層水が供給される。
この構成により曝気第1室8は,流入汚水と沈殿槽下層水を混合して1次活性汚泥処理をし,この1次処理水を曝気第2室9によって2次活性汚泥処理をする。
排水部Cは,曝気第2室9から供給される上層処理水を沈殿処理する沈殿槽10と,沈殿槽10から供給される上層処理水(上澄水)を一時的に貯留し,取水管11を介して曝気第1室8,曝気第2室9,沈殿槽10に散水返送する散水ポンプ槽12と,散水ポンプ槽12から供給される汚水中の細菌を塩素剤によって滅菌処理する消毒槽13と,消毒槽13から供給される処理汚水を一時的に貯留し,放流ポンプを備えた放流管15aを設けた放流ポンプ槽15等からなる。
上記沈殿槽10は,曝気第2室9の上層と通じて上層処理水を沈殿処理する。そして,沈殿槽10は,スカム(泡沫)を含む脱離液(中間汚水)の一部を取り出して汚泥処理部Dの脱離液ポンプ槽16に供給する中間取水管17と,下層の汚水(沈殿槽汚液)を取り出してポンプ及び切換バルブ並びに計量器等からなる分配供給部19を介して,曝気第1室8と曝気第2室9及び汚泥濃縮槽20に供給する下層取水管21とを備えている。
これにより沈殿槽10のスカムを含む脱離液(中間汚水)の一部を,中間取水管17から脱離液ポンプ槽16に供給し沈殿処理し,またポンプ付きの返送管22によって流量調整槽7に返送されて再処理される。
また沈殿槽10の沈殿槽汚液の一部は,下層取水管21を介して曝気第1室8及び曝気第2室9内の汚水に混入されて再処理され,また汚泥濃縮槽20に供給されて汚泥濃縮処理される。
即ち,沈殿槽10内の中間汚水と沈殿物の多い沈殿槽汚液(下層汚水)の一部を,上流側の脱離液ポンプ槽16と曝気第1室8並びに曝気第2室9に返送することにより,再処理を促進すると共に,沈殿槽10内の処理負荷を軽減した処理を行う。
散水ポンプ槽12は,沈殿槽10の上澄汚水(上澄処理水)を一時的に貯留しながら消毒槽13に供給すると共に,取水管11によって沈殿槽10と曝気第1室8と曝気第2室9内に散水して,各槽内で発生するスカム(泡沫)を消滅させる消去用水として用いる。
尚,上記のように上流側の槽内で処理中の汚水に下流側の処理汚水を混入し,複数の汚水を混合した混合処理を行うと,各槽内で発生する多種多様な微生物や分解菌が混合増殖し,汚水分解の相乗効果を高めた汚水処理を行うことができると共に,下流側の処理槽の処理負荷を軽減することができるものである。
汚泥処理部Dは,前記脱離液ポンプ槽16と汚泥濃縮槽20と汚泥貯留槽23等からなり,沈殿槽10から供給される中間層処理水の汚泥処理をする。
汚泥濃縮槽20は,下層取水管21から分配取水管21aを介して供給される沈殿槽10の沈殿槽汚液を濃縮処理し,濃縮汚泥を汚泥貯留槽23に供給すると共に,上層の濃縮汚水を脱離液ポンプ槽16に供給する。
脱離液ポンプ槽16は,前記中間取水管17から供給されるものと,汚泥濃縮槽20の上層濃縮汚水を混合処理し,返送管22を介して流量調整槽7に供給する。
汚泥貯留槽23は,汚泥濃縮槽20から逐次供給される汚泥を貯留し曝気処理をした処理汚泥を,排出管25から取り出しバキュームカー26等の搬送手段に移して次工程に搬出させることができる。
以上のように流入汚水を活性汚泥法によって処理する基本処理装置2は,曝気処理を必要とする各槽に対応し,曝気沈砂槽5用の曝気ブロワー27,汚泥濃縮槽20用のエアリフトブロワー29,汚泥貯留槽23用の曝気ブロワー23a,曝気第1室8及び曝気第2室9用の複数の曝気ブロワー9aを備えている。また曝気ブロワーを設置しない槽では,攪拌又は沈殿処理による処理が行われる。
次に上記のように汚水処理を行う既設の基本処理装置2に対し,本発明に係わる汚泥改質装置3を図1で示すように設置して構成する処理施設1について説明する。
この実施形態における処理施設1は,活性汚泥法により汚水処理を行う前記既設の基本処理装置2に対し,その運転を停止させることなく汚泥改質装置3を後付け作業によって付設して構成することができる。また汚水処理の方式を,活性汚泥法から発酵処理法にスムーズに切り換えながら継続運転することができるものである。
尚,前記したものと同様の基本処理装置2の構成については説明を省略し,汚泥改質機32の構成及び運転切換手段と汚水処理方法を主として説明する。
先ず図1の太線で示すように汚水基本処理系に設置される汚泥改質装置3は,流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい当該基本処理装置2の系外に設置される汚水改質用の経路として,汚泥貯留槽23からポンプ30aによって,汚泥を曝気沈砂槽5の上流側に返送するメイン管路となる改質返送管(処理返送管)30を設けている。また改質返送管30とは別に,流量調整槽7から汚水を曝気沈砂槽5の上流側に返送する調整返送管31を付設している。
汚泥改質装置3の改質返送管30の中途部下流側には,腐植土ペレット等の土壌細菌担体を内装した汚泥改質機32を設けている。この改質返送管30は,汚泥改質機32の上流側に3方弁方式の切換バルブ33を設け,該切換バルブ33と流量調整槽7とを調整処理返送管35によって接続している。また改質返送管30は切換バルブ33とポンプ30aの間に,曝気第2室9(汚水処理部B)から処理中の下層処理汚水(中間水)をポンプ36aによって汲み上げて曝気沈砂槽5に返送する中間水返送管36を接続している。この場合に改質返送管30および調整処理返送管35の各管路内には汚水流入方向を下流側の一方向に規制するための逆止弁(図示しない)が適宜に配設されている。
上記汚泥改質機32は,開閉可能な蓋37を有する容器内の上部にネット状の収容部39を着脱可能に内装する構成とし,収容部39内に土壌細菌担体を交換可能に収容している。この土壌細菌担体は,例えば海底等に存在する古代の堆積土層に生息している土壌菌を抽出した古代土壌菌を含む腐植土をペレットに加工した腐植土ペレット,或いは古代土壌菌等の土壌菌を保持させたセラミック粒であることが望ましい。
これにより汚泥改質機32は,処理返送管30から供給される汚泥を多く含む汚液(味噌汁状形態の返送汚泥)が収容部39内を通過するとき,土壌細菌担体に接触させて汚液に土壌菌を確実に添加し,土壌菌を増殖させ汚液の有機物分解や脱臭処理を付与しながら曝気沈砂槽5に返送供給することができる。
次いで,上記構成による汚泥改質装置3を基本処理装置2に設置したのちは,処理施設1の汚泥貯留槽23内に,乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群と,該有用微生物群の増殖を促すキトサンや糖蜜等を必要量投入供給しつつ,処理施設1の運転を停止させることなく継続する。
上記有用微生物群は,乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等を所定の割合で任意選択的に混入若しくは全て混入するようにするもので,これら有用微生物群を混入したものを前記旧施設から処理施設1への切換運転時には多めに投入し,こののち処理状態を監視しながら定期的又は不定期的に必要量を投入する。また同時に又は必要によりキトサン,糖蜜等の菌増殖資材を供給することにより,有用微生物群の増殖を活性化し且つ微生物分解を活性化させる。
次に,汚泥改質装置3が設置された処理施設1の切換運転について,その態様例を説明する。即ち,従来の活性汚泥法によって汚水処理をする汚水基本処理系を備えた旧処理施設から,汚泥改質装置3を備えた処理施設1の汚水処理運転に切り換えるとき,本発明の汚水処理方法によって流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい状態にして有用微生物群を速やかに増殖させること,及び沈殿槽10から直接的に処理水を排出する際の,定められた放流水質基準値をクリアするために,次のように運転を行うことが望ましいものである。
先ず,従来と同様に大きな固形物が除去されて曝気沈砂槽5に投入供給される流入汚水は,予め有用微生物群が曝気沈砂槽5に存在する状態,及び汚泥改質装置3の土壌菌等が循環する状態において基本処理装置2による汚水処理が行われる。
即ち,処理施設1は切換運転初期において,先ずポンプ36aが作動され,曝気第2室9内の中間処理水を中間水返送管36,改質返送管30,切換バルブ33を介して,汚泥改質機32に供給するように初期運転が行われる。
これにより上記中間処理水は,汚泥改質機32によって主として土壌菌が添加された状態で曝気沈砂槽5の上流側に供給され,供給される新たな流入汚水と混合し下流側に移行し,前処理部Aにおける土壌菌類を中心とした有用微生物群が流入汚水の腐敗を防止しながら,流量調整槽7から汚水処理部Bの曝気第1室8と曝気第2室9,及び汚泥処理部Dの各槽で土壌菌類を中心とした有用微生物群を増殖させ,同時に汚水処理を行って汚泥貯留槽23に至る。尚,この最曝気沈砂槽5の上流側に設置している点検用の蓋は,従来密閉構造にしていたものを格子状の蓋に取り替え流入部に日光を照射させて光合成細菌等の活動を促進する構造としている。
従って,汚泥貯留槽23においては,予め有用微生物群が供給された貯留汚泥に土壌菌が混合され汚水の腐敗が防止されていることから,流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい状態で微生物の増殖が相乗的に活性化される。そして,汚泥貯留槽23内の汚泥は増殖した微生物による分解消化が十分に行われ,悪性の菌(大腸菌等)や原生動物等を消滅状態にすることができ,また硫化水素等の腐蝕性ガスの発生も抑制することができる。
さらに,時間の経過と共に汚泥貯留槽23内の汚泥は,有用微生物群と土壌菌等の増殖活性による微生物分解作用が促進されて,流動性を有する液状化した状態になる。この段階で汚泥貯留槽23は上記有用微生物の増殖槽として機能する状態に切り換わる。
次いで,汚泥貯留槽23が微生物培養機能を果たすようになった時点で,点検用の密閉構造の蓋を格子状の蓋に取り替えて槽内液に日中光が当たるようにし,中間水返送管36のポンプ36aを停止させ,且つポンプ30aを作動し汚泥貯留槽23内の処理汚泥の返送を開始する。このように旧施設においては,既存の汚泥による汚れや悪臭等が解消されるまでの期間,これらに対する回復処置等の処理が必要となるが,新設の処理施設においては当初から点検用の蓋を格子状の蓋に設定して槽内液に日中光が当たるようにして運転開始するものである。
以上のように切換運転初期において,流動性の高い曝気第2室9の中間処理水を引き抜いて,曝気沈砂槽5に返送する中途で汚泥改質機32に供給をすることができるので,汚泥改質機32の土壌細菌担体に,切換運転初期に高い粘性と原生動物の死骸を多く含む汚泥を接触させることにより,汚泥改質機32内の詰まりの発生を防止することができる。また曝気第2室9の処理中途の中間処理水を利用して土壌菌を曝気沈砂槽5に供給するので,土壌菌による処理環境を処理系全体に速やかに整えることができ,処理施設1の運転立ち上げを効率よく行うことができる。
一方曝気第1室8においては,従来の活性汚泥法により行われていた1日当たり900分程度のトータル曝気時間を,1日当たり60分程度の運転を3回程度とし,曝気停止時間を長くしつつ攪拌装置による攪拌を連続的に持続させた運転を行い,嫌気性環境下での運転に切り換える。
このとき曝気第1室8の汚水を,PH(水素イオン濃度)6.8〜7.0,MLSS(活性汚泥の濃度)4000〜5000mg/L,ORP(酸化還元電位)値を約−180〜−250mVを目標として調整し,段階的に曝気時間を短くするように運転調整する。また曝気第1室8の上部にある密閉構造の蓋は,前記したものと同様に格子状の蓋に変更することにより,槽内液に光が当たるようにする。
次いで,曝気ブロワー9aの運転時間を,上記180分程度/日から段階的に短縮させ,中間処理水が腐敗しない1日当たり5分程度の運転を3回程度にすると,攪拌装置のトータル運転時間を12時間程度の間欠的な省エネ運転にすることができる。
そして,連続運転に伴い有用微生物群等は適切に増殖するので,この時点からは曝気時間をゼロに近づけることができる。
また曝気第2室9においては,切換運転初期において基本的には従来の活性汚泥処理により行われていた,1日当たり900分のトータル曝気時間を継続しながら間欠的な攪拌を継続して行い,PH6.5〜7.0,MLSS4000−5000mg/Lに,ORP値を曝気攪拌時において約30〜100mV,曝気停止攪拌時におけるORP値を約−100〜−30mVを目標とした好気性環境下で調整運転しながら,前記したものと同様に格子状の蓋に変更することにより槽内液に光が当たるようにする。
これにより中間処理水が腐敗しない1日当たり60分程度の曝気運転を12回程度以下とし,且つ攪拌装置の連続運転に伴い有用微生物群等が増殖するので,この時点からは曝気時間をさらに短縮することができる。
即ち,汚水処理部Bにおいて前処理部Aから供給される流入汚水は,流入汚水中の有機汚濁物質,嫌気性環境下に切り換えられた上流側の曝気第1室8内と,好気性環境下で運転されている下流側の曝気第2室9内,分配供給部19を介して沈殿槽10から沈殿槽下層水が供給される中間処理水によって,前記有用微生物群の活性,増殖に適したバランスが保たれる。
これにより汚水処理部Bは従来の微生物を捕食する原生動物を発生させる活性汚泥処理から,原生動物の発生を抑制する発酵菌の増殖が主体となって汚水処理を行う発酵処理に切り換えることができるので,処理系全体を大幅に改造することなく発酵作用によって確実且つ簡単に汚水処理を行う処理施設1を提供することができる。尚,曝気第2室9内では単に好気性処理のみに限定することなく,処理の状況に応じ好気性処理と嫌気性処理を交互に繰り返して行うように制御し処理を促進させることもできる。
沈殿槽10においては,曝気第1室8と曝気第2室9のPH,MLSS,ORP計測値とSV(汚水沈降度)等を参照しながら,活性汚泥処理時と比較して分配供給部19のポンプによる,沈殿槽汚液の引き抜き返送量を徐々に増加させるように制御して,曝気第1室8と曝気第2室9に適当量の汚泥を返送し,該曝気第1室8と曝気第2室9が前記有用微生物群の活性,増殖に適した環境となるように調整する。
また上記のような運転において,汚泥改質機32の土壌細菌担体を交換する際,又は汚泥改質機32或いはその管路等に詰まりや破損等のトラブルがあるときは,切換バルブ33を切り換えて,汚泥貯留槽23の処理汚泥並びに曝気第2室9の中間処理水を曝気沈砂槽5に切換供給する。
これにより汚泥改質装置3の土壌細菌担体の交換やトラブルに対するメンテナンス作業を,処理下流側にある増殖微生物を多く含む処理汚泥等の返送供給を停止させることなく行うことができる等の利点がある。
次に前記調整返送管31について説明する。調整返送管31は,第2固形物処理部7aに流量調整槽7の汚水を供給するポンプ7cを有する管路7dに中途部に設けた偏心弁31aに接続され,該偏心弁31aの作動又は操作によって,流量調整槽7の汚水を曝気沈砂槽5の上流側に供給するように臨ませて設けている。この実施形態で偏心弁31aは,分配量が9対1程度(極少量)に設定されており,下層汚水を少量づつ曝気沈砂槽5に連続的に供給することができる。
これにより切換運転以降に流量調整槽7内の微生物増殖した中間処理水は,少量ながら曝気沈砂槽5の上流側に常時供給される。そして,供給された中間処理水は曝気沈砂槽5の上流側及び内部の汚水の滞留を防止すると共に,汚泥改質機32から曝気沈砂槽5の上流側に供給されない時間帯においても,汚泥改質機32や汚泥貯留槽23によって培養生成された培養液中の土壌菌や有用微生物群が流入汚水に対して常時供給されることから,この部に付着又は残留する汚水の腐敗を抑制して悪臭の発生等を防止することができる。
以上のような切換運転初期において,曝気第2室9内で24時間程度の曝気処理をした中間処理水が供給されて,既設装置の活性汚泥処理による灰色の汚水が茶褐色へ変色し流動性が増し,汚泥貯留槽23内で硫化水素等の腐食性ガスの発生が抑制された時点で,既述したように中間水返送管36のポンプ36aを停止させ,且つ改質返送管30の切換バルブ33を切り換え,処理返送管30のポンプ30aによって汚泥貯留槽23内で微生物を培養した培養液(培養汚泥)の返送を開始して,汚泥改質機32を通し曝気沈砂槽5に投入し通常運転に移行させることが望ましい。
即ち,初期の通常運転時に上記のような運転手段を1ヵ月から1.5ヵ月程度を目処に継続すると,処理現場から悪臭や硫化水素等の腐蝕性ガスの発生を低減することができ,曝気第2室9や汚泥貯留槽23内の色が灰色から茶褐色になった状態となり,これ以降の運転管理を次のように行うことができる。
曝気沈砂槽5の汚水流入口に供給される新規な流入汚水は,微生物分解不能な大きな固形物や砂等が,スクリーン及び砂溜槽等からなる非分解物除去装置5aによって除去されながら曝気沈砂槽5に供給される。このとき曝気沈砂槽5の上流側に汚泥改質機32で生成された培養液が投入される。
この培養液の投入量は1日当たり9回程度とすることが望ましく,これにより汚水流入の時点で培養液が混入されることにより,曝気沈砂槽5内の流入汚水の腐敗を防止することができ,培養液混入汚水は流量調整槽7に至る。
流量調整槽7は,実質的な分解処理が始まる曝気第1室8の上流側で汚水供給量を一定にすることができ,またこの槽においても腐敗を防止し曝気第1室8に流量を調整し供給することができる。
曝気第1室8は,基本的には曝気はしないで攪拌のみを行うことで嫌気状態をつくり,有用微生物群の乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等が処理段階に応じて発酵や雑菌制御に関わることができる。この運転管理手段として1日に24間を攪拌することが望ましく,これによりpH6.5〜7.0,MLSS4000〜5000mg/L,ORP値を約−180〜−250mV,DO(溶存酸素量)は略ゼロで管理することができ,また槽底部において汚水が滞留し腐敗することを防止するために,1日当たりのトータル曝気時間を10分程度とし,2分程度の曝気を5回程度行うことが望ましい。
曝気第2室9は,曝気攪拌と曝気停止状態での攪拌を繰り返すことにより好気と嫌気との室内環境をつくり,上記有用微生物群が処理段階に応じて発酵や雑菌制御に関わる。
この運転管理手段として24時間程度の攪拌と,720分(60分を12回)の曝気攪拌を繰り返し行うことが望ましく。これによりpH6.5〜7.0,MLSS4000−5000ppm,ORP値は攪拌時は約−100〜−30mV,曝気攪拌時は約30〜100mVになるように運転することができる。また曝気第1室8及び曝気第2室9とも,汚水の発生原因となる原生動物や後生動物の存在を殆ど皆無にすることができる。
汚泥改質機32は,汚泥貯留槽23から供給される培養液(有用微生物群培養液)を土壌細菌担体と接触させて培養液を連続的に生成し,各槽で曝気と攪拌が行われることで処理に関わる微生物の増殖を一層促進する。そして,培養液は曝気沈砂槽5に1日に9回づつ返送することにより,流入汚水と培養液を接触させ,処理系の初期段階から汚水中の有機物の腐敗を防止し汚水処理を促進する。
尚,上記運転時に必要によりポンプ36を作動すると,曝気第2室9内の中間処理水を引き出して汚泥貯留槽23の汚泥を流動性を高めて混合させ汚泥改質機32を通すことができると共に,曝気第2室9の処理負荷を軽減し汚水処理を高めることができる。
汚泥貯留槽23は,1日に30分程度の曝気を16回程度(1日に480分程度)で曝気することにより,微生物の増殖を促し時間の経過と共に生成される培養液(微生物増殖汚泥)を良質にすることができる。従って,汚水処理が安定し硫化水素等の腐食性ガスの発生が抑制された時点で,MLSS5000〜6000mg/L程度に保ちながら,培養液は汚泥改質機32に1日に9回程度に分けて間欠的に供給することができる。
一般的に,前処理部と汚水処理部と汚泥処理部等からなる汚水基本処理系においては流入汚水の変動により種々の条件変化が生じやすい傾向にあるが,これら汚水基本処理系の経路外に配置されて流入汚水の負荷変動を受けにくい汚泥貯留槽23を有用微生物群の培養槽に活用することにより培養液を安定的に生成することができる。
然るに,汚水基本処理系の経路外における流入汚水の負荷変動を受けにくいところに有用微生物群の培養槽を配設して,汚泥貯留槽の汚泥を培養処理しても良いものである。
このように処理施設1の汚水処理運転が行われることにより,汚泥貯留槽23は本発明処理方法によって,流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい状態の環境下において乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等をバランスよく増殖させた培養液を処理系に戻す培養槽にすることができる。従って,既設の基本処理装置2を大きく改造させることなく利用し,廉価型の処理施設1による安定した汚水処理を実現し,且つ消毒槽13を介することなく沈殿槽10又は曝気第2室9から直接的に処理水を排出する際にも,定められた放流水質基準値をクリアすることができる。
次に上記構成の処理施設1について,切換運転を行った実験結果及び各種データと特徴等について説明する。この実験では既設の基本処理装置(旧処理施設)に対し,図1の太線で示す汚泥改質装置3を設置した処理施設1に,旧処理施設のものと同様に農業集落から排出される下水を流入汚水として供給し汚水処理した。また処理施設1の実験は,切換運転開始日の2005年8月3日から2006年2月28日にわたり,前記した運転管理方法と同様の運転を行って汚水処理し,曝気第2室9の上層にある処理水をサンプルとして計量した。この実験値を表1に示す。尚,表中の計量項目と数値は「島根県環境保健公社」の計測によるものである。
上記表1中の計量項目は,PH(水素イオン濃度),BOD(生物化学的酸素要求量),COD(化学的酸素要求量),SS(浮遊物質量),T−N(全窒素),T−P(全リン)を示すものである。
以上のように処理施設1の汚水処理運転をした結果によれば,処理水は塩素滅菌無しで大腸菌群数は100個/cm3と低減した状態になっており,放流水基準の3000個/cm3を大幅にクリアしており,環境負荷が懸念される塩素滅菌を不要にした放流処理をすることができる。このような状態は乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等が発酵したことにより大腸菌が抑制された結果であると考えられ,その他の雑菌や病原菌等も抑制されていると考えられる。
また富栄養化の原因とされている窒素,リンについても,全窒素3.09mg/L,全リン0.24mg/Lと極めて高い除去率を示している。特にリンの除去は一般的に生物除去が困難であると言われており,薬品を投入する等して除去されることが多いが,本発明による処理方式によれば,生物によって安定的に安価に除去できることが確認できた。
また他のデータについても活性汚泥法によって処理したものと,同等又はそれ以上の水質になっていることが確認できた。
このような状態は,汚泥貯留槽23が本発明処理方法によって,流水汚水量の負荷変動の影響を受けにくい状態の環境下において乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等をバランスよく増殖させた培養液を処理系に戻す培養槽にすることができた結果に基づくものであることが立証されているものである。従って,既設の基本処理装置2を大きく改造させることなく利用し,廉価型の処理施設1による安定した汚水処理を実現し,且つ消毒槽13を介することなく沈殿槽10又は曝気第2室9から直接的に処理水を排出する際にも,定められた放流水質基準値をクリアすることができる。
また塩素滅菌等の消毒をしないで排出される処理水は,塩素臭や悪臭を伴うことなく有用微生物群や土壌菌を増殖含有して多様な方面に効果的に機能する有益機能水として,肥料(液肥)として又は肥料製造の発酵促進材等の他に,脱臭剤やコンクリート等建材製造時に必要とされる用水とし好適且つ廉価に使用することができる。
さらに,汚泥貯留槽23内の処理汚泥は,微生物が培養された培養液(濃縮微生物液)として取り出し利用することができる。即ち,この濃い培養液を堆肥製造に用いると,短期間に完熟させ且つ品質の高い堆肥を低コストで能率よく製造することができる。また培養液を土壌に直接的に供給することにより,土地改良等を簡単且つ速やかに行うことができる等の特徴がある。
また処理施設1の運転に伴う消費電力について説明すると,切換運転後において処理施設1を収容設置した建物に設けられる,前処理部A側の換気扇と汚水処理部B側の換気扇とは,建物内の悪臭が早期に低減されることから数日後停止することができた。即ち,曝気第1室8及び曝気第2室9用の各曝気ブロワー9aは,旧施設の基本処理装置2による活性汚泥処理の場合には,18.7時間/日であったが,2005年9月30日時点で10.1時間程度と運転時間を54%程度に削減することができた。
これにより消費電力削減効果は,処理施設1の運転が長時間にわたり継続されるほど,各種の又は特定の曝気ブロワーや攪拌装置の運転を,できるだけ短い時間だけ行うことができる汚水処理を省エネ的に行うことができることが判明した。従って,少なくとも1年後には処理施設1のランニングコストは既存のものに対し50%以下に低減することができると推定される。
以上のように構成される処理施設1は,水質や流入量,気温,気圧等の状況を検知する検知センサを所定槽及び必要箇所に設置し,処理される汚水や汚泥の状況を監視し記録することができる。また検知センサの検知信号に基づき,各部に設置されたポンプ,切換バルブ,ブロワー及びセンサ等(補助処理装置)の機器類を,図2で示される自動診断制御管理システム40を備えたコントロール部4によって,自動制御及び手動操作可能に運転することができる。
さらにコントロール部4は,診断状態を管理するデータセンター41を備えており,これにより例えば,自治体,管理業者,各種研究所及び学校等のユーザが,処理データを自由に閲覧したり所望事項の通報を受けることもでき,処理施設1の運転状況等を確認しながら遠隔操作及び制御等を容易に行うことができる。
またユーザは,処理水或いは処理汚泥の質を農業,畜産業,養殖業等の各分野に好適となるように定めてタイムリーに提供できる。
なお本発明の実施形態では,説明の便宜上から既存施設のものの実例を挙げて説明したが,本発明の方法を新設施設に実施して本発明の効果を奏するようにできることは勿論である。
また本発明の処理施設1によって生成される処理水と処理汚泥は,図3で示すようにそれぞれ有益機能水と濃縮微生物液として,農業,畜産,養殖等の分野で作物或いは動物,魚介類の栽培育成用の水や資材に効果的に使用することができ,また高い免疫性を有する各食材を提供することができる。即ち,これにより得られる高免疫力食材は,安心と健康を提供するから評判を呼んで顧客を拡大することができ,例えばアンテナショップやレストラン等の市場での消費販売を見込むことができる。従って,上記有益機能水及び濃縮微生物液の使用量を拡大することが可能で,これの購入費用も上記商業サイクルの中で生ずる市場からの利益によって賄うことができる。また上記のように利用される処理施設1は有益機能水培養施設と呼称されることを可能にするものである。
さらに,上記有益機能水及び濃縮微生物液はいずれも,処理施設1の上流側にある流入汚水に供給することにより,処理施設1に至るまでの経路を利用した流入汚水の事前汚水処理(1次前処理)を行うと共に有用微生物群の培養を促進し,処理施設1における処理負荷を軽減しつつ品質の高い汚水処理をスムーズに行わせることができる。
即ち,図3で示すように各種の集落排水,事業所排水,ビル排水,家庭排水等の汚水発生部45に対しては,処理施設1の保守点検業者が有益機能水をペットボトル等の携帯用の容器に充填したものを配付し指導する。これにより被配付者は汚水発生部45に対し逐次少量づつ供給することができる。
尚,前記有益機能水のビン詰め作業は,例えばエコロジ参加活動の一環として老人ホーム或いは養護施設等をビン詰め用の作業所44として,相互の貢献と収益を両立させながら新機軸なリサイクル活動を志向して展開することができる。
また汚水発生部45の汚水が下水管等の搬送経路46によって収集される中継ポンプ(マンホール)47,また中継ポンプ47側から搬送経路49によって収集される中継ポンプ所50等に対しては,作業者がバキュームカー26等を利用して処理量に見合う濃縮微生物液を投入供給することもできる。
以上のように有益機能水或いは濃縮微生物液が供給された流入汚水の搬送経路(汚水路)は,有用微生物群の働きによって,汚水の腐敗が防止され腐食性ガスの発生も抑制することができる。従って,腐敗汚水や腐食性ガスの発生に伴う管路,コンクリート,ポンプ類の劣化を防止することができると共に,搬送経路46,49や中継ポンプ47,中継ポンプ所50が設置されている場所での,臭気発生の問題を簡単に解消し,臭気対策の目的で設置される機器の電気代を削減することができる。
本発明に係わる処理施設の構成を示すシステム図である。 処理施設のコントロール部の実施形態を示すシステム図である。 処理施設が生成する有益機能水と濃縮微生物液の使用例を示す説明図である。
符号の説明
1 処理施設
2 基本処理装置(汚水基本処理系)
3 汚泥改質装置
4 コントロール部
5 曝気沈砂槽
7 流量調整槽
8 曝気第1室
9 曝気第2室
10 沈殿槽
23 汚泥貯留槽
30 処理返送管
31 調整返送管
32 汚泥改質機
33 切換バルブ
A 前処理部
B 汚水処理部
C 排水部
D 汚泥処理部

Claims (10)

  1. 下水施設等から供給される流入汚水を沈殿処理等の前処理を行う前処理部(A)と,前処理部(A)から供給される前処理済汚水を曝気や攪拌をしながら汚水処理して処理水及び中間処理水を排出する汚水処理部(B)と,汚水処理部(B)の中間処理水を汚泥処理し汚泥を汚泥貯留槽(23)に貯留して排出する汚泥処理部(D)等からなる基本処理装置(2)によって汚水処理をする方法において,前記汚泥貯留槽(23)内の貯留汚泥に乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群を混入して微生物を増殖させることにより,該汚泥貯留槽(23)の機能を,前記汚水等を発酵分解させる培養液を生成させる培養槽にすると共に,汚泥貯留槽(23)内の培養液の一部を処理返送管(30)によって,前処理部(A)或いは汚水処理部(B)に返送供給し汚水処理を行う汚水処理方法。
  2. 培養液を混入した汚水を,汚水処理部(B)の上流側に位置する曝気第1室(8)によって嫌気性処理したのち,下流側の曝気第2室(9)によって好気性処理する請求項1の汚水処理方法。
  3. 処理返送管(30)の中途部に土壌細菌担体を収容した汚泥改質機(32)を設け,汚泥改質機(32)内を通過する培養液に土壌細菌を添加させて汚水処理を行う請求項1又は2の汚水処理方法。
  4. 汚泥改質機(32)に,曝気第2室(9)の中間処理水を切換可能に供給する請求項1又は2又は3の汚水処理方法。
  5. 前処理部(A)の上流側に設置される曝気沈砂槽(5)に対し,下流側に設置される流量調整槽(7)内の汚水の一部を連続的に返送供給する請求項1又は2又は3又は4の汚水処理方法。
  6. 処理施設(1)によって汚水処理された処理水の一部を流入汚水に混入し,処理水混入汚水を前処理部(A)に供給する請求項1又は2又は3又は4又は5の汚水処理方法。
  7. 供給される汚水を沈殿処理等の前処理を行う前処理部(A)と,前処理部(A)から供給される前処理済汚水を曝気や攪拌をしながら汚水処理し処理水及び中間処理水を排出する汚水処理部(B)と,汚水処理部(B)の中間処理水を汚泥処理し汚泥を汚泥貯留槽(23)に貯留して排出する汚泥処理部(D)等からなる基本処理系によって汚水処理する処理施設(1)において,前記汚泥貯留槽(23)内の汚泥に乳酸菌,光合成細菌,放線菌,酵母等の有用微生物群を混入して微生物を増殖させることにより,該汚泥貯留槽(23)の機能を,前記汚水等を発酵分解させる培養液を生成させる培養槽にすると共に,生成される培養液の一部を,前処理部(A)の上流側に返送供給する処理返送管(30)を配設し,該処理返送管(30)の中途部に汚泥改質装置(3)を設けた汚水処理施設。
  8. 処理返送管(30)の下流側に,土壌細菌担体を交換可能に収容した汚泥改質機(32)を設けた請求項7の汚水処理施設。
  9. 汚泥改質機(32)と汚泥貯留槽(23)との間の処理返送管(30)に,汚水処理部(B)の中間処理水を返送する中間水返送管(36)を接続した請求項7又は8の汚水処理施設。
  10. 汚泥改質機(32)の上流側において,培養液と中間処理水を前処理部(A)に切換可能に供給する請求項7又は8又は9の汚水処理施設。
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