JP4902895B2 - 網膜像を拡大するシステム - Google Patents

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Description

本発明は、黄斑変性症を光学的に矯正するのに使用される、網膜像を拡大するシステムに関する。
加齢黄斑変性症(ARMD)は黄斑の疾患であり、眼球の背後の網膜の上面を覆って広がる。この黄斑変性は、黄斑内にある網膜桿状体の機能低下により発生し、これに冒された患者は視力の大部分を失う。近視界では、患者は読み取る能力を失い、遠視界では、歩行活動が困難になる。現在、この変性を治療できる治療法が存在しない。拡大能力を提供する視覚補強だけが、視野のより以上の損失に対して、患者の近視界視力の低下を部分的に矯正することができる。ただし、遠視界では、これは、患者が移動するときに使用されることが多く、したがって、視界は広く、かつ倍率が1に近く、装着者の空間感覚を妨げないことが必要である。したがって、ARMDを矯正するデバイスは異なる2つの動作状態、すなわち拡大状態および非拡大状態を有する必要がある。
白内障は水晶体の部分的または全体的な不透明性を引き起こす。詳細には、白内障は、水晶体を、一般に被膜嚢内に配置する理由から眼球嚢内レンズと呼ばれる人工眼レンズと置き換えることにより、治療される。
ARMDの矯正に使用される拡大機能を実現するために、特許文献1では、眼の前方に置くように設計された大きな正の拡大能を有するレンズと、水晶体と置き換える大きな負の拡大能を有する眼内レンズとで構成されたシステムを開示している。このレンズおよび眼内レンズの少なくとも1つの表面は非球面である。このシステムは、大きな正の拡大能のレンズがなければ、適正な視力を提供できない。
特許文献2は、黄斑変性に冒された患者のための、水晶体と置き換える眼内レンズを開示している。眼内レンズは、重なったまたは同心形状の、第1の発散部分および第2の収束部分を有する。収束部分はいずれにせよ、眼内レンズによって水晶体を置換する前に患者が有した視力と同一の視力言い換えると、拡大しない視界を患者に提供する。発散部分は、眼の外部のレンズと組み合わさって、望遠鏡システムを形成し、所定の対象物の拡大像を提供する。
特許文献3は、すでに眼球嚢内レンズを有する、黄斑変性に冒された患者の治療方法を開示している。この特許文献では、眼球嚢内レンズの周辺部に取り付ける拡張部を有するレンズを開示している。このように、この特許文献におけるレンズは、レンズ・インプラントを取り除く必要性、または既存レンズ・インプラントの接触力以外の接触力を備える必要性なく、以前に植え込まれたレンズ・インプラント上の本来位置に取り付けることができる。
特許文献4はさらに、黄斑変性を矯正するシステムを開示している。このシステムは眼内レンズを使用し、このレンズを、眼球内の水晶体の前方または水晶体と置き換える眼内レンズの前方に配置する。一実施形態においては、眼内レンズは大きい負の拡大能を有する中心ゾーンと、透過する光に対して屈折効果を持たない周辺ゾーンとを有する。この実施形態においては、システムは眼の外部にレンズが存在しない状態で正常視力を提供し、大きい正の拡大能を有する外部レンズが存在する状態では、拡大像を提供する。したがって、矯正原理は特許文献2における原理と同様である。第2実施形態においては、眼内レンズはプリズム形であって、システムの効果は眼球に入る光を、黄斑変性に冒されていない、黄斑以外の網膜の一部分の方向に向ける。
特許文献5および特許文献6は別の網膜像拡大システムを記載している。これら特許文献は、システムの軸線の外部の像寸法に関して示唆していない。
特許文献7は眼内レンズによって患者視力を評価できる方法およびデバイスを記載している。この特許文献では、眼球内で眼内レンズをさまざまな位置に配置することを考えることができる、と述べている。しかし、この実施形態においては、さまざまな位置は同一眼内レンズのさまざまな位置であるとは提示しておらず、さらに、同一患者の眼内レンズの位置の変更を考慮できるとも提示していない。これに反して、本明細書では、さまざまな眼内レンズ、または眼内レンズのさまざまな位置にも言及している。
米国特許 第4957506号明細書 米国特許 第4666446号明細書 米国特許 第4932971号明細書 米国特許 第6197057号明細書 国際公開 第93/01765号パンフレット 米国特許 第5030231号明細書 米国特許 第5532770号明細書
網膜像拡大システムでは、可能な限り大きい視野を有することが有利である。特に、視野は容易な読み取りを可能にする必要がある。
当技術分野の最新のシステムの新たに明らかになった別の問題は、システムが位置決定の不正確性に敏感である点である。望遠鏡システムのさまざまな構成要素は――眼の外部レンズおよび眼内レンズ――大きい拡大能を有する。望遠鏡システムの要素の偏心または角度づれ(傾斜)は、視野を著しく狭め、システムの特性を低下させる。これはすべて、眼内移植が、移植の精度に関係なく、正確な位置決定を保証できず、移植後に組織が成長し、移植物の移動を生じるときに、大きな問題となる。
さらに、システムは、黄斑変性に冒された明らかな障害を有する患者に対して設計され、これら患者は多くの場合、中心視力の損失の結果として、対象物を見て確認する能力を失っており、一般に、周辺視力を使用しており、偏った方向の視界が安定することを保証できない。高齢の患者はさらに、外部レンズの正確な位置決定のための測定結果を得ることが難しい。
本発明は、当技術分野の最新のこれら問題点の1つまたは複数の解決方法を提供する。一実施形態においては、本発明網膜像の拡大システムであって、
−周辺部分と負の拡大能を有する中心部分とを有する眼内レンズと、
−眼の外部に配置するように設計された正の拡大能を有するレンズと、を備え、
レンズおよび眼内レンズは標準的ユーザの眼球の背後に対象物の拡大像を生成するように設計されており、
直径1.5mmの瞳孔については、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長においては、すなわち直径20〜50μmの寸法の像スポットを形成する。
好ましくは、レンズの角度位置が正常位置に対して±2°の範囲で変化する場合、直径1.5mmの瞳孔については、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、すなわち直径20〜50μmの寸法の像スポットを形成する。この条件は、±5°の範囲、または±10°の範囲の変化に対して設定できる。
好ましくは、レンズの偏心が正常位置に対して±0.2mmの範囲で変化する場合、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル波長では、すなわち直径20〜50μmの寸法の像スポットを形成する。この条件は、±1mmの範囲、または±2mmの範囲の変動に対して設定できる。
一実施形態においては、レンズは、例えばレンズ表面の一方のプロファイルの変更により得られる、回折特性を有する。この場合においては、有利には、レンズの偏心が正常位置に対して±1mmの範囲で変化する場合、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内に分布する3波長では、すなわち直径5〜80μmの寸法の像スポットを形成する。
さらに、レンズの角度位置が正常位置に対して±5°の範囲で変化する場合、直径1.5mmの瞳孔については、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内に分布する3波長では、すなわち直径5〜80μmの寸法の像スポットを形成する。
可視スペクトル内に分布する3波長は、それぞれ、400〜500nm、500〜600nm、および600〜800nmの範囲で選択できる。
システムは以下の特性の1つまたは複数を有することができる。
−レンズはフレネル・レンズである。
−眼内レンズの中心部分は球面である。
−レンズの前面部分は円錐形であり、その円錐度は0〜−1を含み、好ましくは、−0.2〜−0.6を含む。
−システムは2〜4の倍率を有する。
−システムは、使用状態において、レンズと眼内レンズとの距離は19mm以上である。
−読み取り対象領域はレンズから25cmの距離に配置され、角度10°をカバーしている。
−読み取り対象領域は、網膜における±24°の開口角で画定される。
別の実施形態においては、本発明さらに、システムを最適化して網膜像の倍率を決定する方法であって、
−眼球モデル、装着条件、眼内レンズおよび眼の外部レンズを選択し、
−眼内レンズおよび外部レンズの特性を変更して、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、すなわち直径20〜50μmの寸法の像スポットを形成する。
好ましくは、さらに変更段階を実施して、選択された装着条件に対して±2°の範囲でレンズの角度位置の変化がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、すなわち直径20〜50μmの寸法の像スポットを形成するようにする。レンズの角度位置の変動のこの制限を、±5°の範囲、または±10°の範囲に設定することもできる。
さらに、変更段階を実施して、選択された装着条件に対して±0.5mmの範囲でレンズの偏心がある状態で、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長では、すなわち直径20〜50μmの寸法の像スポットを形成するようにすることができる。レンズの偏心のこの制限を、±1mmの範囲、または±2mmの範囲に設定することもできる。
さらに、レンズに回折特性を加えることを含む変更段階を提供できる。この場合は、変更段階を実施して、選択された装着条件に対して±5°の範囲でレンズの角度位置の変動がある状態で、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内に分布した3波長では、すなわち直径5〜80μmの寸法の像スポットを形成するようにすることができる。
さらに、変更段階を実施して、選択された装着条件に対して±1mmの範囲でレンズの偏心がある状態で、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内に分布した3波長では、すなわち直径5〜80μmの寸法の像スポットを形成するようにすることもできる。
対象領域は、レンズから25cmの距離に配置され、かつ10°の角度をカバーする方法で画定され、あるいは、網膜における±24°の開口角によって画定される。
本発明の他の利点および特徴は、例として提示され、図面を参照してなされる、本発明の実施形態の以下の説明により、明らかになるであろう。
本発明による眼内レンズを備えた眼球−レンズ光学システムの平面断面図である。 同眼球―レンズ・システムの広範囲垂直断面図である。 読み取り対象領域の距離を、本発明によるシステムおよび当技術分野の従来システムにおけるレンズ−眼球間距離の関数として示した図である。 本発明によるシステムの対象領域内の像スポットの寸法を、当技術分野の従来システムの像スポットと比較して示した図である。 1mmの偏心を有するレンズにおける、図4に対応する図である。 5°の角度ずれを有するレンズにおける、図4に対応する図である。 フレネル・レンズを使用する本発明の実施形態における、図1と同様の図である。 本発明の第3の実施形態における、図4と同様の図である。 同実施形態における、図5と同様の図である。 同実施形態における、図6と同様の図である。 図8と同様であるが、可視スペクトルの複数の波長を考慮に入れている図である。
図1は、本発明による眼球レンズ光学システムの図を示す。外部レンズおよび眼内レンズは、望遠鏡と同様に、眼球の背後に投影されるある倍率の像を生成する。したがって、外部レンズ−眼内レンズ・アセンブリは、以下の説明では、厳密には望遠鏡ではないが、「望遠鏡システム」と称される。
図1では、図の主方向に一致する軸線2が示されている。軸線2は眼球4の回転の中心を通っている。眼球は概略的に図示されており、角膜6、瞳孔8、網膜10、水晶体あるいは本発明による眼球嚢内レンズ12または眼内レンズ14が見られる。非特許文献2は、適切な場合には、水晶体を眼球嚢内レンズに置き換える眼球モデルとして用いることができる。
R.Navarro,J.Santamaria,J.Bescos, 「非球面レンズによる眼の遠近調節依存モデルにおいて推奨されるモデル(The model proposed in Accommodation-dependent modelof the human eye with aspherics)」"Opt.Soc.Am.A." 1985.8, Vol.2,No.8
図では、眼の外部レンズ16も示している。外部レンズは眼の前方で、眼鏡フレーム内に取り付けられる。
外部レンズが遠視界および近視界の両方および眼鏡フレームの標準位置で使用される場合、軸線2は外部レンズの前面18を、前面の幾何的中心の上方約4mmに位置する点において通り抜ける。本発明による望遠鏡システムの場合には、外部レンズは近視界に対してのみ使用でき、軸線2が前面18の幾何的中心を通り抜ける。点Oをレンズの背面20
と軸線2の交差点とする。軸線2を含む垂直面では、点Oにおける外部レンズの背面20
の接線は、点Oを通る垂直軸線を有し、広視野角と呼ばれる角度を形成する。軸線2を含
む水平面では、図で示されているように、点Oにおける外部レンズの背面20の接線は、
軸線2と直交する軸線を有し、曲線輪郭角と呼ばれる角度を形成する。用語「装着条件」は、点Oと眼の回転の中心との間の距離、広視野角および曲線輪郭角の値を言う。装着条
件については、各平均値に対応する三重項を選択できる。さらに、個々の事例または事例の種類のそれぞれについて各値を変化させることができる。図1の例では、背面が平坦であり、曲線輪郭角はゼロである。
装着条件および眼球モデルを選択することにより、本発明による外部レンズおよび眼内レンズの効果の完全なモデル化が可能になる。本発明による望遠鏡システムにおいては、外部レンズは近視界に対してのみ使用され、好ましくは広視野角および曲線輪郭角がゼロである。
適切な場合には、水晶体を眼球嚢内レンズで置き換え、眼球嚢内レンズの特性を考慮に入れることができる。水晶体が眼球嚢内レンズであるか、または眼球嚢内レンズに置き換えられている場合、図1に示されるように、瞳孔の背後に眼内レンズを置くことがより簡単となる。このような眼球嚢内レンズは、本来の水晶体の厚み(4mmオーダーの厚み)より薄い1mmオーダーの厚みを有する。さらに、図1に示す構成では、眼内レンズを本来の水晶体と並べて配置することもできる。瞳孔の前方に配置された眼内レンズを、本来の水晶体と組み合わせて使用することもでき、これにより、水晶体の厚みに起因する問題点を回避できる。図1は眼内レンズの付属物を示していない。それ自体公知の方法で接触力を利用することができ、特許文献8で提示される解決方法を利用することもでき、眼内レンズを、事前に植え込まれたかまたは同時に植え込まれる眼球嚢内レンズに取り付けることもできる。
米国特許 第5932971号明細書
眼内レンズ14は負の拡大能を有する中心部分22と周辺部分24を備える。中心部分は一般に、1.5〜2mmの直径を有する。周辺部分は屈折率がゼロである。以下に説明されるとおり、眼内レンズは残留屈折異常を矯正するのに使用できる。
本発明による眼内レンズは、水晶体または特許文献2におけるレンズ・インプラントと完全におよび簡単に置き換えできると予測されるが、その場合には、水晶体を補償するために眼内レンズの周辺部分24は正の拡大能を有する。このとき、眼内レンズは前眼房内または眼球嚢内のいずれかに配置できる。
図1は外部レンズ16、瞳孔8の開口および眼内レンズに中心部分22を通る集束光26を示す。これら光線は拡大像の網膜上の情報に関係する。図1はさらに、瞳孔8の開口を通過するが、眼内レンズの周辺部分24と交差する光線28を示しており、これら光線は発散し、網膜上の像情報に関係しない。
本発明は眼内レンズ14の特性、およびシステム内の外部レンズの正常な位置である基準位置に対する外部レンズの可能な位置変化を考慮に入れる外部レンズ16の特性を定義することを提示する。これは、黄斑変性症の患者が中心視野内で視力を持たず、周辺視野によってわずかな残留視力(2/10未満)を有することを基本認識にしている。したがって、外部レンズのある状態で、眼球内の眼内レンズにより生成される像スポットが点である必要はない。従来技術の望遠鏡システムに比べて、対象領域の中心でのシステムの光学品質の低下を許容することにより、対象領域の周辺でのシステムの光学品質の向上を可能にし、または正常な位置である基準位置に対する外部レンズの位置の変化の許容範囲を広げることができる。
本発明は、ここで問題としている望遠鏡システムの方式において、外部レンズおよび眼内レンズが同時に正確に最適化されていない場合、視野がシステムの光学品質により急激に変化することを認識することを基本としており、これは特許文献2、特許文献3および特許文献4では開示されていない。特許文献9は高い光学品質を得ることにより、システムが限定された視野内に留まるようにすることを探求している。この方式のシステムは、黄斑変性症に冒され視力障害を有する患者、すなわち視力が大幅に低下し、したがって視野の中心においてそれほど高い光学品質を必要としない患者のために設計される。有利には、この特性を本発明に利用して、視野を広げる。
米国特許 第4957506号明細書
図2は眼球―レンズ・システムの拡大垂直断面図である。図2は主視野方向の軸線2、眼内レンズ14の概略表示を伴う眼球4、外部レンズの概略表示、ならびに対象領域32の概略表示を示す。dは眼内レンズの前面と外部レンズの背面との間の距離を示し、dは対象物と外部レンズの前面との間の距離を示す。以下の例では、非特許文献1に記載された眼球モデルを考察する。
装着条件については、距離dは22.43mmが考えられる。この距離は、前記の眼球モデルでは、外部レンズの背面と眼球との間の距離の18mmのオーダーに対応する。この距離は装着条件に関して考えられる通常距離、すなわち外部レンズと眼球との間の12mmのオーダーの距離より大きく、外部レンズの背面と眼球の回転の中心との間の距離については27mmのオーダーである。一定倍率では、距離dについて通常値よりわずかに大きい値を考えることにより、外部レンズおよび眼内レンズの拡大能の低減が可能になる。望遠鏡システムの許容誤差が、外部レンズ位置の不備に関して改善される。したがって、好ましくは、考えられる装着条件は、外部レンズの背面と眼球の回転の中心との間の33mmのオーダーの距離、または外部レンズと眼球との間の18mmのオーダーの距離を使用する。有利には、外部レンズと眼球との間の距離は、システムの使用条件では15mm以上の距離が考えられ、これは19.43以上の外部レンズ−眼内レンズ距離に対応し、最小限界値は19mmが適正である。
読み取り対象領域を考察すると、この読み取り対象領域を定義するために、距離dは25cmおよび軸線2に対する角度αは±10°を選択することができる。この距離は低い視力の患者のための基準である角度αは、読み取る際に確実に適合する通常の読み取り領域の代表値である。この値は、読み取るページ上で数個の語が見られるページ上の約8cmの範囲すなわち、読者が所定の時点で読み取りに専念している文章の部分に一致する。別の解決方法は、網膜上で±24°の開口角により定義される領域を用いることからなる。
システムは可視スペクトル内の所定の波長範囲、例えば可視スペクトル内の中心波長(すなわち、550nm)で作動すると考えられるが、可視スペクトル内の任意の他の波長に対しては、以下に述べる理由および判定基準を適用することもできる。さらに詳細には、可視スペクトル内の所定の波長に対しては、以下の理由および判定基準が適用される。この理由および判定基準は、可視スペクトルの他の波長に対しても同様に有効である。これに反して、全波長にわたる像スポットは色収差のために、所定の波長における像スポットの寸法より大きくなる。言い換えると、紫色における像スポットは赤色の像スポットの寸法と同等であるが、これら像スポットの網膜上の位置はわずかに移動し、この結果、網膜上の紫色および赤色の像スポットは、紫色および赤色の像スポットのそれぞれの寸法より大きくなる。したがって、上記理由および判定基準は可視スペクトル内の任意の波長に対して適合するが、可視スペクトル内のすべての波長を混合している像スポットには必ずしも適合しない。
このように定義された点対象物および決められた瞳孔寸法に対して、望遠鏡システムは眼球の背後に像スポットを形成する。コードVで表される光線追跡プログラムが用いられる場合、像スポットは、所定の点対象物から発生して、所定の寸法の瞳孔を覆う光束に関して、網膜上の光線位置の平均2乗偏差の2倍で定義される。像スポットを定義する別の方法でも同一の結果を得ることができるが、この光線追跡プログラムは必須ではない。なお、眼内レンズの位置が瞳孔の前であっても、像スポットの定義は変化しない。
本発明によれば、直径1.5mmの瞳孔で、対象領域の中心では、像スポットの寸法は20μm以上である。この値は黄斑変性症の患者の低下した視力のために、像スポットが必ず点である必要はないことを表わしている。2/10の視力に対応する、5分の解像力は、網膜上に24μmの像スポットを生成する。したがって、患者の視力を仮定すると、最終的解像力は網膜により与えられるため、像スポットがこの値より大幅に小さい寸法である必要はない。
図2の例において25cmの距離dおよび±10°の開口で定義された、読み取り対象領域内の点対象物については、像スポットの寸法は50μm以下である。この大きい値は患者の快適性のために選択される。この像スポット寸法により、患者の視力低下を防止する。対象領域内の対象物の可能なすべての位置について像スポットを測定する必要は必ずしもない。改良システムにおいては、ある1つの半径(経線の半分)上で3〜4点を選択するだけで十分であり、この解決手段は以下に例として与えられる非球面系に対しても同様に有効である。
好ましくは、外部レンズ16の軸線2上の正常な位置である基準位置に対する偏心が少なくとも±0.5mmの範囲である場合には、像スポットは常にこの値の範囲内に留まる。また、好ましくは、外部レンズ16の正常な位置である基準位置に対する角度ずれが少なくとも±2°の範囲である場合には、像スポットは常にこの値の範囲内に留まる。これらの位置決定許容範囲は、対象領域の中心において非ゼロの像スポットを選択することにより決定できる。
望遠鏡システムの光学特性は以下のとおりである。前記のとおり、外部レンズは正の拡大能を有する。望遠鏡システムが2〜4の倍率を有することを保証するには、15ジオプター以上の拡大能が望ましい。外部レンズの少なくとも1つの面は非球面であってもよい。眼内レンズは大きい負の拡大能を有する中心部分を有し、この拡大能は一般に、−20ジオプター未満、あるいは−60ジオプター未満である。前記距離dおよびdの値と組み合わせたこれらの値により、望遠鏡システムの2〜4の倍率を得ることができる。±10°の範囲の対象領域に対する望遠鏡システムの2〜4の倍率(好ましくは3に近い)は、軽い黄斑変性症の患者だけに適する。本発明のシステムは簡単に使用でき、目立たない。適切な読み取り速度で読み取るときは、システムは快適性を提供する。
眼内レンズの中心部分は以下の特性のうちの1つまたは複数の特性を有する。
*1.5〜2mmの直径。下限値は、外部レンズの存在するときのコントラストが3mmの瞳孔に対して0.25より大きくなるのに十分であり、上限値では、患者は外部レンズが存在しないときの周辺視力能力を維持できる。
*20ジオプター以上の絶対値拡大能。この値は、外部レンズ−眼球系の距離および外部レンズの特性を考慮して選択し、望遠鏡システムの必要な倍率を得る。
*球面表面。眼内レンズの中心部分に非球面表面がないことにより、眼内レンズの製造が容易になる。これは、所望のシステムの光学性能がそれほど高くないために、視力の低下した患者に適応させることができる。
*中心の厚みが0.1mm以上。この最小値は眼内レンズの剛性を保証する。
*周辺の厚みが0.5mm以下で、全体の光学直径が5〜6mm。この最大厚み値により眼内レンズの正しい植え込みが可能になり、一方、この光学直径値により、眼内レンズが眼球内に光線が入射するのを妨げないことを保証する。
眼内レンズの周辺部分は中心部分のまわりから突き出ている。眼内レンズの全体直径は、前記のとおり、患者の眼球内で、水晶体または水晶体と置き換えた眼球嚢内レンズの前方、あるいは瞳孔の前方に眼内レンズを位置決定できるように選択される。一般に、瞳孔の背後の位置については、眼内レンズは5〜6mmの光学外径を有し、適切な場合には、患者の眼球の所定の位置に眼内レンズを保持するのに必要な接触力を備える。有利には、眼内レンズの中心部分の背面は半径3〜5mm、より好ましくは、半径3.85mmの凹面状である。これにより、望遠鏡システムが、望遠鏡システムの倍率3に関して、眼内レンズの偏心または角度ずれの影響を大きく受けないことを保証する。好ましくは、眼内レンズの中心厚みおよび眼内レンズの中心部分の前面の半径は、患者のあらゆる残留屈折異常の関数として選択される(ただし、これは必須ではない)。
患者が残留屈折異常でない場合、眼内レンズの半径4.40mmおよび厚み0.1mmを選択できる。この場合、眼内レンズの周辺部分は光学的効果を持たず、患者の屈折異常は眼球嚢内レンズにより矯正される。さらに、眼内レンズの前面の半径を変更して、システムの最適読み取り距離全体にわたり患者の残留屈性異常の影響を矯正できる。屈折率1.460の吸水性アクリル眼内レンズについて、半径を3.8〜5.5mmに選択することにより、−5〜+5ジオプターの間の患者の残留屈折異常の影響を矯正できる。
中心部分と同様は、眼内レンズの製造を容易にするために、好ましくは周辺部分は非球面ではない。これは、直接機械加工または成形技法あるいは眼内レンズの製造において公知の他の技法により達成できる。
眼球の外部レンズは以下の特性を有することができる。外部レンズは15ジオプター以上の拡大能を有する。この値を、外部レンズと眼球との間の距離を考慮に入れ、および読み取り対象領域の位置を考慮に入れて調整し、2〜4の倍率を実現する。外部レンズは15mm未満の中心厚みを有する。眼内レンズは非球面であり、これにより、考えられる読み取り領域内の像スポット寸法を維持でき、例えば外部レンズの前面については、それの生成する物が円錐である回転表面を使用でき、これに対しては、1つの直径に関する式は
、以下のようにZ=f(R)の形で表すことができる。
Figure 0004902895
ここで、Rは計算される点から光軸までの距離であり、ROSCは中心における曲率半径、Kは外部レンズの円錐率または非球面係数である。屈折率1.665の材料で製作される外部レンズでは、Kは、形状が球面と放物面の間で変化する楕円面に相当する[−1;0]の範囲、好ましくは[−0.6;−0.2]の範囲から、例えば以下に提示されるようにK=−0.42に選択される。これらの値は単に例として与えられるものである。なぜなら、本発明による所定の対象領域の全体にわたる像スポットに関する条件に適合できるKの値は距離dおよびdと、システムについて選択された倍率、したがって外部レンズ表面の曲率半径と、さらに(ただし、程度は小さいが)眼内レンズの位置および曲率半径とに依存するからである。当業者には明らかであるが、非球面度は、システムを像スポットに関する条件に適合させるのに必要とされるまで、大きくできる。この場合、先の式に高次の非球面度の項が追加される。
Figure 0004902895
ここで、NMAXは非球面度の次数であり、Kは高次の非球面係数である。
外部レンズは、視力低下の矯正に一般に使用されるフィルタを使用して色を付け、ARMDの患者に通常見られるまぶしさを抑制することができる。ただし、これは必須ではない。
本発明によるシステムも一例は以下の特性を有する。前記の眼球モデルに対応する眼内レンズについては、システムの倍率は3である。距離dは22.43mmであり、これは外部レンズ−眼球距離の18mmに対応し、距離dは25cmである。対象領域は±10°の角度αで定義される。外部レンズは屈折率1.665のガラスで製作され、中心厚みは9.5mmである。背面は半径250mmの凹形球面である。前面は25.28mmの中心曲率半径ROSCと、−0.42の非球面係数Kとを有する。これら特性により、外部レンズは中心で24ジオプターの拡大能を有する。眼内レンズは、 図1に示される種類であり、瞳孔に背後で、眼球嚢内レンズの前方に、接触力により保持されている。眼内レンズは両凹球面である。背面の中心部分は半径3.85mmである。眼内レンズの前面の半径および中心部分の厚みは、眼内レンズの周辺部によって生成される屈折異常の矯正の関数として以下の表に示されている。
Figure 0004902895
眼内レンズの中心部分は直径1.9mm全体にわたり広がっている。
図3〜6は、屈折異常を矯正していない眼内レンズについての、前記の例の光学特性である。図3は、本発明によるシステムおよび特許文献9に記載された従来技術によるシステムにおける、外部レンズ−眼球距離mmの関数としての読み取り距離mmの図である。上に示したとおり、この例におけるシステムは、基準外部レンズ−眼球距離18mmと考え、この外部レンズ−眼球距離では、読み取り領域は前面から25cmの距離dにある。図3のグラフは、システムが同一光学特性を維持するために、必要な距離dの変化を、外部レンズ−眼球距離の変化の関数で表している。この図は、外部レンズ−眼球距離が14〜21mm(−4mm〜+3mmの変動)の間で変化する場合、本発明によるシステムの読み取り距離が18〜43cm(−7cm〜+18cmの変動)の間に留まることを示す。言い換えると、軸線2に沿った外部レンズの位置が正常な位置である基準位置から変化する場合であっても、本発明のシステムは使用可能である。比較の意味で、図3のグラフは特許文献9によるシステムについて計算された値を示す。このグラフは、従来技術のこのシステムが眼球の前方の外部レンズの位置に大きく影響を受けることを示している。
図4〜6は、特許文献9に記載される従来技術と比較して、表1の第5段で提示される例の特性を示す図である。図4は対象領域における像スポットの寸法を、角度α°の関数として示す。詳細には、X軸上にプロットされた各角度値について、対象領域の点が考慮されており、像スポットの寸法はグラフ上ではμm単位で示されている。図は、太線で示す本発明のシステムで得られた値と、点線で示す従来技術のシステムで得られた値とを表わしている。図では、像スポットは本発明のシステムにおける対象領域のすべての点について20〜40μmの寸法を有する。これに反して、従来技術の拡大システムでは、中心での像スポットの寸法はゼロである。像スポットの寸法は5°のオーダーの角度では40μmを超え、7.5°のオーダーの角度では100μmを超える。言い換えると、軸線近くでは、従来技術のシステムは装着者の視力に対する影響が大きすぎ、軸線から離れる方向に移動するにつれ、システムの性能が急激に低下し、これにより読み取り領域が狭くなる。本発明では、軸線上の光学性能を低下させることにより、広い領域の視野を保証する。
図5および6は、外部レンズの正常な位置である基準位置に対する不正確な位置の影響を示す。図5は図4と同様であるが、外部レンズの中心が軸線に対して1mmずれている。図5は、本発明のシステムの像スポットの寸法が、対象領域全体にわたり20〜50μmであることを示す。従来技術のシステムは、光軸のいずれの側でも70μmを超える像スポット寸法を有する。言い換えると、本発明のシステムでは、外部レンズの偏心は読み取る際の視野の光学性能を低下させない。これに反し、従来技術のシステムでは、1mmの偏心により、視野の大きさが1/3以上減少する。
図6は図4と同様であるが、外部レンズが軸線に対して5°の角度で回転している。図6は、本発明のシステムの像スポットの寸法が、対象領域全体にわたり20〜50μmであることを示す。従来技術のシステムは、光軸のいずれの側でも、対象領域全体にわたり100μmを超える像スポット寸法を有する。回転に関しては、本発明のシステムにおける外部レンズの回転は、読み取る際の視野の光学性能を低下させない。これに反し、従来技術のシステムでは、外部レンズの5°の回転により、視野の大きさが1/4以上減少する。
図6の例では、±5°の角度位置の変化範囲および±1mmの偏心の範囲を考察した。これらの値は前記の±2°および±0.5mmのそれぞれの値より大きい。この例は、外部レンズの位置の大きい変化に対する像スポットの寸法に限界値を設定し、一方で、装着者に対し適正なシステムを確保することができることを示す。さらに、±10°および±5mmのそれぞれの範囲を用いることにより、取付け条件のさらに大きい変化が可能になる。
したがって、本発明では、図4に示すとおり、広い視野を得ることができる。さらに、本発明は、外部レンズの正常な位置である基準位置に対するずれに大きく影響されない網膜像の拡大システムを提供する。
本発明によるシステムの一例により、さらにシステムのさまざまな特性値の範囲が示されている。本発明の別の実施形態は、外部レンズおよび眼内レンズの表面の最適化により達成できる。最適化は、例えば、ORA社(Optical Research Associates)により商標
コードVとして販売されているソフトウェアを用いる公知の方法で実行できる。
最適化は以下のように実行できる。
*標準眼球モデルを選択するか、または、個別に定義するために、装着者の眼の特性を決定する。
*標準装着者または個別に調整される所定の装着者のいずれかについて、外部レンズの装着条件を選択する。
*例えば前記の値を用いて、眼内レンズおよび外部レンズの背面を選択する。
*眼内レンズおよび外部レンズについての開始時の厚みおよび前面を選択して、軸線上の妥当な像スポットおよび所望の倍率ならびに読み取り距離dを実現する。
*システムに、所望の倍率および読み取り距離dに対応する限界値を設定する。
*対象領域に分布する複数の点について、像スポット寸法に対応する限界値を設定する。
*眼内レンズおよび外部レンズの前面の形状および厚みを変更して、目標値に近づける。
外部レンズの位置決定の不正確性を表わす限界を決めることができる。さらに、たとえば、外部レンズの中心より1mmのずれと5°回転している像スポットに制限することができる。
例においては、眼内レンズおよび外部レンズの前面は最適化されている。他の面、例えば外部レンズの前面および背面は同時に最適化できる。最適化を実行することにより、眼内レンズの周辺による屈折異常の矯正に対処でき、標準眼球モデルを変更するだけで要求される屈折異常の矯正を実現できる。
このような最適化によって、例に提示される以外の別の眼球モデルまたは別の装着条件について、本発明によるシステムの実施形態を達成できる。
図7は、本発明に別の実施形態に関する、図1と同様の図である。図7のシステムは、外部レンズ40がフレネル・レンズである点で図1と異なっている。したがって、外部レンズの前面42はフレネル・レンズの標準形状であり、同心円部分を有する。図7の解決方法により、9.5mmの中心厚みの外部レンズの前記の例に比べて、外部レンズの厚み制限できる。図7の解決方法により、2mmオーダーの厚みの外部レンズで、中心で24ジオプターの拡大能を実現できる。同一材料および前面の同一非球面性が維持される。フレネル・レンズの半径は公知の方法で決定でき、例えば、以下の半径を考えることができる。
*フレネル・レンズの中心厚み:2mm
*段差値:1mm
この例では、図1〜6で示される焦点寸法値がそのまま使用される。
さらに、図7のフレネル・レンズと組み合わせるか、またはフレネル・レンズを変更して、図1の例に比べて、低屈折率および高アッベ数を有する材料を考えることができる。この解決方法により、システムの色収差を低減できる。例として、図1の外部レンズの材料は1.655の屈折率と31のアッベ数を有する。所定の波長については、前記のとおり、像スポット寸法は20〜50μmである。しかし、可視スペクトルの全波長を考える場合には、対象物空間の点に対する像スポット寸法は、特に領域の端部では、300μmに達する可能性がある。
この材料の代わりに、例えば米国のピツバーグにあるPPG Industries社から品名CR
39で販売されている材料のような、屈折率1.502とアッベ数58を有する材料を使用できる。この場合には、像スポットの特性はある1つの波長については20〜50μmを維持する。しかし、可視スペクトルの全波長にわたる対象物空間の点に対する像スポット寸法は、150μmより小さくなり、この結果、システムの色収差に関連する干渉が大幅に低減する。
さらに、図1の実施形態または図7の実施形態においては、外部レンズが回折特性を有すると考えられる。したがって、外部レンズは伝播する波長に合った表面および/または屈折率変化を有する。
例として、外部レンズの前面上に、図7と類似であるが、種々の大きさの段差を有する、円形の同心部分を備えることができる。例えば、可視スペクトルの中心波長についての回折特性の計算は、500〜60nmに範囲、例えばλ=546nmを考えることができる。この波長については、図1の外部レンズの例では、段差は以下の式による値のオーダーに選択できる。
Figure 0004902895
ここで、nは外部レンズの材料の屈折率である。これにより、外部レンズ上に1つまたは複数の回折表面を備えることができる。このような回折特性により、システムの色収差を制限できる。
好ましくは、これらの回折特性は、他の拡大システムと同様な回転対称性を有する。したがって、システムは全体として回転対称性を備え、これにより視野の一部のみが拡大されることを防止する。
例えば、キノフォーム位相プレートと呼ばれる回折素子を使用できる。この素子の回折特性は表面形状を変更することにより実現できる。この回折素子を図1の外部レンズの前面または背面、あるいは図7の外部レンズの背面に貼り付けるかまたは備えることができる。
以下は、図1と類似の構成における例である。外部レンズは、図1と同様に、1.655の屈折率と31のアッペ数を有する材料で製作される。前面18は非球面であり、26.731mmの中心曲率半径ROSCと、K=−0.734の非球面係数と、K1=4.95×10−6mm−1の一次の高次非球面係数を有する。背面20は半径150mmの凹形球面であり、中心厚みは9.5mmである。
回折部分は、以下の式の位相シフトを与える位相フィルタにより形成される。
Figure 0004902895
ここで、
r、点から光軸までの距離(単位mm)
λ=546.1nm、基準波長
=−0.00151mm−1
=2.516×10−6mm−3
=−1.46×10−8mm−5
=3.75×10−11mm−7
=−2.84×10−14mm−9
詳細には、この位相シフトはキノフォーム位相プレートにより実行できる。
図1における例として、眼内レンズは両凹球面であって、半径3.85mmの背面を有し、前面の半径および中心部分の厚みは矯正される屈折異常に依存する。ゼロの屈折異常については、例えば、半径4.986mmの前面と0.1mmの中心厚みが考えられる。
これらの条件においては、システムは、可視スペクトル内のどの波長についても、読み取り対象領域内のいずれの点対象物についても50μm未満の焦点スポット寸法を有する。可視スペクトルの全波長を考える場合には、読み取り対象領域内のいずれの点対象物についても、前記の300μmより大幅に小さい寸法の焦点スポットが得られる。
さらに簡単化するために、可視スペクトル内に分布する波長の3つの値だけを考えることができる。例えば、以下が考えられる。
*400〜500nmの間の青色波長
*500〜600nmの間の中心波長
*600〜800nmの間の赤色波長
可視スペクトルの全波長を考慮して得られる寸法を表す焦点スポット寸法を得るには、このように分布した3つの波長を考えるだけで十分である。
典型的には、このように選択された3つの波長での読み取り対象領域内の点対象物の焦点スポットについては、すなわち直径20〜50μmの寸法が得られる。以下の例では、3つの波長について得られる焦点スポットの寸法が、前記のとおり、平均2乗偏差を用いて計算される。結果として、3つの波長について得られる焦点スポットの値は、3つの波長についての3つの焦点スポット値の簡単な関数ではない。
例として、λ=643.8nm、λ=546.1nm、λ=480nmの波長を考える。図8は図4と同様のグラフを示しており、これら3つの波長の波長λ、λ、λについての焦点スポット寸法と、特許文献9に記載された従来技術のシステムにおける波長546.1nmについての焦点スポット寸法とを示す。図8は、図4に場合と同様に、焦点スポット寸法が各波長について20〜50μmであることを示すが、3つの波長の光を対象として考える場合も示している。比較として、従来技術のシステムにおける焦点スポット寸法は軸線上では小さいが(患者が視力低下を有する場合)、対象物領域の周辺ではきわめて大きい。
図9は図5と同様のグラフを示しており、これら3つの波長の波長λ、λ、λについての焦点スポット寸法と、特許文献9に記載された従来技術のシステムにおける焦点スポット寸法とを示す。図9は外部レンズの偏心が1mmの例を示す。図9は、焦点スポット寸法が考察している各波長およびこれら3つの波長の光について5〜80μmであることを示している。
図10は図6と同様のグラフを示しており、これら3つの波長の波長λ、λ、λについての焦点スポット寸法と、特許文献9に記載された従来技術のシステムにおける焦点スポット寸法とを示す。図10は外部レンズの5°の角度ずれの例を示す。図9の例と同様に、図10は、焦点スポット寸法が考察している各波長およびこれら3つの波長の光について5〜80μmであることを示している。
最後に、図11は図8と同様のグラフであり、このグラフは、例として与えられた回折特性の有するシステムにおいて3つの波長λ、λ、λについて計算された焦点スポット寸法を太線で示している。このグラフはさらに、特許文献9のシステムにおけるこれら3つの波長について計算された焦点スポット寸法を点線で示している。図8と図11の比較は、従来技術のシステムにおける焦点スポット寸法が、単一波長でなく、そのスペクトル内に分布する複数波長の場合に、急激に大きくなることを示している。
複数波長については、図3と同様のグラフを示していないが、図3の結果と非常によく似た結果が得られ、その変化量は波長にわずかに依存するかまたは全く依存しない。
外部レンズの回折特性は、前記の原理による最適化によって決定できる。最初に、特定の回折特性を持たない外部レンズおよび眼内レンズを最適化して、所望の結果に近いシステムを実現し、次に、そのシステムを再度最適化して、回折特性を組み込む。この方法では、最初に得られた外部レンズの特性は大幅に変更される。代替方法では、最初から回折特性を組み込むことにより外部レンズを最適化できる。
本発明は前記の好ましい例に限定されるものではなく、例として提示された装着条件以外の他の装着条件も使用でき、他の眼球モデルも使用できる。さらに、提示した方法以外の他の最適化方法を使用することも可能である。
14 眼内レンズ
16 外部レンズ
22 中心部分
24 周辺部分

Claims (27)

  1. 網膜像を拡大するシステムであって、
    厚みが0.5mm以下の周辺部分(24)と厚みが0.1mm以上であり−20ジオプター未満の負の拡大能を有する中心部分(22)とを有する眼内レンズと、
    眼の外側に配置されるように設計された、15ジオプター以上の正の拡大能を有する厚みが15mm未満の外部レンズと、
    を備え、
    外部レンズ(16)および眼内レンズ(14)は、前記外部レンズと眼球との距離が18mmである基準位置のユーザの眼球の背後に対象物の拡大像を生成でき、直径1.5mmの瞳孔では、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内の波長において、眼球の背後に寸法20〜50μmの像スポットを形成する、システム。
  2. 請求項1において、前記外部レンズの角度位置が前記基準位置に対して±2°の範囲で変化する場合、直径1.5mmの瞳孔では、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内の波長において、眼球の背後に寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とするシステム。
  3. 請求項1において、前記外部レンズの角度位置が前記基準位置に対して±5°の範囲で変化する場合、直径1.5mmの瞳孔では、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内の波長において、眼球の背後に寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とするシステム。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、前記外部レンズの偏心が前記基準位置に対して±0.2mmの範囲で変化する場合、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内の波長において、眼球の背後に寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とするシステム。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項において、前記外部レンズの偏心が前記基準位置に対して±1mmの範囲で変化する場合、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内の波長において、眼球の背後に20〜50μmの寸法の像スポットを形成することを特徴とするシステム。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、前記外部レンズが回転対称の回折素子を有することを特徴とするシステム。
  7. 請求項6において、前記回折素子が、キノフォーム位相プレートであることを特徴とするシステム。
  8. 請求項6または7において、前記外部レンズの偏心が前記基準位置に対して±1mmの範囲で変化する場合、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内に分布する3つの波長において、眼球の背後に寸法5〜80μmの像スポットを形成することを特徴とするシステム。
  9. 請求項6〜8のいずれか一項において、前記外部レンズの角度位置が前記基準位置に対して±5°の範囲で変化する場合、直径1.5mmの瞳孔では、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も、可視スペクトル内に分布する3つの波長において、眼球の背後に寸法5〜80μmの像スポットを形成することを特徴とするシステム。
  10. 請求項8または9において、前記3つの波長が、それぞれ、400〜500nm、500〜600nm、および600〜800nmの範囲で選択できることを特徴とするシステム。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項において、前記眼内レンズの中心部分(22)が球面であることを特徴とするシステム。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項において、前記外部レンズの前面が円錐形であり、その円錐率は0〜−1を含むことを特徴とするシステム。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項において、前記外部レンズがフレネル・レンズであることを特徴とするシステム。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項において、2〜4の倍率を有することを特徴とするシステム。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項において、使用状態において、前記外部レンズと眼内レンズとの間の距離が19mm以上であることを特徴とするシステム。
  16. 請求項1〜15のいずれか一項において、前記読み取り対象領域が、前記外部レンズから25cmの距離(d)にあり、10°の角度(α)範囲内にあることを特徴とするシステム。
  17. 請求項1〜16のいずれか一項において、前記読み取り対象領域が、網膜における±24°の開口角で画定されることを特徴とするシステム。
  18. システムを最適化して網膜像の倍率を決定する方法であって、
    眼球モデル、装着条件、眼内レンズ(14)および眼の外部レンズ(16)を選択し、
    前記外部レンズ(16)および前記内レンズ(14)によって、前記外部レンズと眼球との距離が18mmである基準位置のユーザの眼球の背後に対象物の拡大像を生成し、
    前記眼内レンズおよび外部レンズの特性を変更して、直径1.5mmの瞳孔では、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に寸法20〜50μmの像スポットを形成することを含む方法。
  19. 請求項18において、さらに変更段階を実施し、これにより、選択された装着条件に対して±2°の範囲で前記外部レンズの角度位置の変化がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とする方法。
  20. 請求項18において、さらに変更段階を実施し、これにより、選択された装着条件に対して±5°の範囲で前記外部レンズの角度位置の変化がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とする方法。
  21. 請求項18〜20のいずれか一項において、さらに変更段階を実施し、これにより、選択された装着条件に対して±0.5mmの範囲で前記外部レンズの偏心がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とする方法。
  22. 請求項18〜20のいずれか一項において、さらに変更段階を実施し、これにより、選択された装着条件に対して±1mmの範囲で前記外部レンズの偏心がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内の波長において、寸法20〜50μmの像スポットを形成することを特徴とする方法。
  23. 請求項18〜22のいずれか一項において、前記変更段階が前記外部レンズに回転対称の回折素子を加えることを含むことを特徴とする方法。
  24. 請求項23において、さらに変更段階を実施し、これにより、選択された装着条件に対して±5°の範囲で前記外部レンズの角度位置の変化がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内に分布する3つの波長において、寸法5〜80μmの像スポットを形成することを特徴とする方法。
  25. 請求項23または24において、さらに変更段階を実施し、これにより、選択された装着条件に対して±1mmの範囲で前記外部レンズの偏心がある場合に、読み取り対象領域内のいずれの点対象物も眼球の背後に、可視スペクトル内に分布する3つの波長において、寸法5〜80μmの像スポットを形成することを特徴とする方法。
  26. 請求項18〜25のいずれか一項において、前記読み取り対象領域が、前記外部レンズから25cmの距離(d)にあり、10°の角度(α)範囲内にあることを特徴とする方法。
  27. 請求項18〜25のいずれか一項において、前記読み取り対象領域が、網膜における±24°の開口角で画定されることを特徴とする方法。
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