JP4877920B2 - 免疫学的手法を用いたβ−カゼインホスホペプチド(β−CPP)の特異的定量法 - Google Patents

免疫学的手法を用いたβ−カゼインホスホペプチド(β−CPP)の特異的定量法 Download PDF

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本発明は、カゼインホスホペプチドの内、特にβ−カゼインホスホペプチド(以下「β-CPP」と称する)を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法に関する。
ミルクタンパク質であるカゼインを消化酵素によって分解するとオピオイドペプチドをはじめとする多くの生理活性ペプチドが生ずることが知られている。カゼインホスホペプチド(以下「CPP」と称する)はin vitro、in vivoでαs1-カゼイン、αs2-カゼイン、及びβ-カゼインが加水分解されて生成するリン酸化ペプチドである。構造的特長として、3つの連続したリン酸化セリンに続く2つのグルタミン酸を共通のモチーフとして持っている。これらのモチーフは、カルシウム、鉄、亜鉛等のミネラルと相互をして生体の利用を高める作用が知られている(非特許文献1)。さらに、CPPと非結晶リン酸カルシウム(Casein Phosphopeptide-Amorphous Calcium Phosphate ;CPP-ACP) 複合体は歯の再石灰化能を有することが科学的に証明され(非特許文献2、特許文献1)、ガムへ添加した製品は再石灰化を訴求した特定保健用食品となっている。
CPPの同定は陰イオン交換HPLCや逆相HPLCで分離した後、マス分析を併用して行われている(非特許文献3, 4)。しかし、ピークの帰属等を正確に決めるためには時間を要し、作業操作が煩雑で高価な機器も必要となる。さらに、乳製品に添加するような場合、その配合量の定量は、類似する物質が共存するため、通常の免疫学的方法もそのままでは使えない。一部チーズ熟成期間における特定のペプチドの消長について、抗ペプチドポリクローナル抗体を用いて定量が試みられている(非特許文献5)。しかしながら、厳密に特異性を担保するためには、一般的にはポリクローナル抗体よりもモノクローナル抗体の方が望ましいと考えられる。さらに、該報告では前処理として、凍結乾燥、脱脂を行った後測定をしているが、乳由来素材を乳製品に添加する様な場合、内在する類似物を効率的に除去する調製法の工夫も必要である。
また、CPPはpHやカルシウム及びリン酸塩濃度により様々なリン酸カルシウム相を取ることが知られている(特許文献1)。その為、現状ではCPP-ACP等のCPP複合体をそのままの形で直接定量することは容易でない。さらに、CPPとリン酸カルシウムの複合体をゲル濾過HPLCにて分離している報告があるが(非特許文献6)、定量的な手段としての利用には十分とはいえない。加えて、CPP-ACPは特にELISAプレートへのコーティング効率が極めて低く、通常の間接ELISA法が適用できない。
特表2002-500626 葛西 隆則(2003).カゼインホスホペプチド:Foods Food Ingredients J. Jpn 208, 167-173. Reynolds E. C (1998). Anticariogenic complexes of amorphous calcium phosphate stabilized by casein phosphopeptides: A review. SCD Special Care in Densitry 18, 8-16. Miquel E, Alegria A, Barbera R and Farre R (2005). Speciation analysis of calcium, iron, and zinc in casein phosphopeptide fractions from toddler milk-based formula by anion exchange and reversed-phase high-performance liquid chromatography-mass spectrometry/flame atomic-absorption spectroscopy. Anal Bioanal Chem 381, 1082- 1088. Ferranti P, Barone F, Chianese L, Addeo F, Scaloni A, Pellegrino L, and Resmini P (1997). Phosphopeptides from Grana Padano cheese: nature, origin and changes during ripening. J. of Dairy Research 64, 601-615. Pizzano R, Nicolai M A, Padovano P, Ferranti P, Barone F, and Addeo F (2000). Immunochemical evaluation of bovine β-casein and its 1-28 phosphopeptide in cheese during ripening. J. Agric. Food Chem 48, 4555-4560. Aoki T, Nakano T, Iwashita T, Sugimoto Y, Ibrahim H R, Toba Y, Aoe S and Nakajima I (1998). Preparation and characterization of micellar calcium phosphate-casein phosphopeptide complex. J Nutr Sci Vitaminol. 44, 447-456.
乳製品等食品中に添加されたCPP及びCPP複合体中のβ-CPPを特異的に簡便かつ精度よく測定する方法を提供することを課題とする。さらに、食品成分の分析において、迅速で、経済的、正確かつ高感度、そしてルーチンに利用できる社会的ニーズに対して、免疫学的なアッセイ法を提供することである。
本発明者等は、鋭意研究した結果、β-CPPに対する特定のモノクローナル抗体による免疫学的方法と測定系に適したサンプル調製法を組み合わせることにより、食品中のβ-CPPを簡便かつ特異的に精度よく測定することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
[1]配列番号:1記載のリン酸化ペプチドに対するモノクローナル抗体であって、ペプチド17から19残基のリン酸化セリンクラスターを含む領域を、エピトープ領域として有し、αs1−カゼインホスホペプチド、αs2−カゼインホスホペプチド及びβ−カゼインホスホペプチドの中でβ−カゼインホスホペプチドのみに特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法によるβ−カゼインホスホペプチド及び/又はβ−カゼインホスホペプチド複合体の定量法、
[2]以下の工程からなる免疫学的測定法による前記[1]記載の定量法、
(1)試料に酸を加え、タンパク質を変性・除去する工程
(2)固相抽出により、酸を除去する工程
(3)固相から溶出した精製試料に対して、上記モノクローナル抗体を用いて免疫学的測定を行い、該精製試料中のβ−カゼインホスホペプチド及び/又はβ−カゼインホスホペプチド複合体を定量する工程
[3]乳製品中のβ−カゼインホスホペプチド及び/又はβ−カゼインホスホペプチド複合体を定量することを特徴とする前記[1]又は[2]記載の定量法、
からなる。
本発明の方法を用いれば、製品中に類似する物質が共存している様な場合でも、測定対象物質を特異的に定量することが出来る。さらに、実施に当たって、高価な測定機器や特殊な技能・知識も必要とせず、操作性も簡便である利点がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるCPPは、カゼインをトリプシンで加水分解して得られるカゼインホスホペプチドを指し、製造法については、特開昭56−123921号公報、特開昭59−159792号公報、特開昭59−159793号公報、特開平2−257854号公報、等が例示できる。
カゼインホスホペプチド複合体とは、カゼイントリプシン分解物とカルシウム、リン酸等の無機塩との複合体を形成させたもの及びその誘導体を指し、特表2002-500626号公報が例示できる。
本発明で用いる抗体は、配列番号:1記載のβ−カゼインの部分配列に対するモノクローナル抗体(第49回日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集p126 3A-3aに従って作製、以下mAb 1A5という)が例示できる。
CPP及びCPP複合体を配合した乳製品サンプルは、トリクロロ酢酸等の酸処理の後、遠心操作により、内在するカゼイン、乳清等に由来する高分子タンパク質を変性、除去する。次に、固相抽出により酸を除くと共に固相マトリックスに結合したCPP含有画分を溶出、乾固する。CPP及びCPP複合体(標準品)を製品と同等組成の溶液に溶解して検量線サンプルを調製し、乳製品サンプルと同一条件で前処理することにより、回収率のファクターを相殺出来る。製品と組成が同等で測定対象物を含まないもの(プラセボ)が利用できない場合は、製品中に既知量のCPP及びCPP複合体を添加して作成した検量線から間接的に算出することも可能である。さらにプラセボ中に存在するCPP及びCPP複合体含量を求めるには、検量線サンプルをPBS、生理食塩水など適当な溶媒で調製して求めた検量線が利用できる。乳製品としては、生乳、加工乳、チーズ、ヨーグルト、アイスクリーム等に応用出来る。
免疫学的な定量は、競合Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)によった(Hornbeck P. Enzyme-Linked Immunosorbent Assays. In Current Protocols in Immunology; Coligan, J.E., Kruisbeek, A.M., Margulies, D.H., Shevach, E.M., Strober, W., Ed.; John Wiley & Sons, Inc, 1991; 2.1.1-2.1.22.)。
CPP及びCPP複合体を配合した前処理済みの乳製品サンプル或いは検量線サンプルをモノクローナル抗体と反応させる(プレインキュベーション)。測定用96ウエルプレートは、CPPIII(明治製菓)でコーティング(固相化)した後、後に行う反応の非特異的吸着を防ぐためにウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングする。ブロッキング済みの測定用プレートにプレインキュベーションした乳製品サンプル或いは検量線サンプルとモノクローナル抗体の混合物を移す。乳製品サンプル或いは検量線サンプル中のβ-CPPはモノクローナル抗体との結合において、固相化したCPPIII中のβ-CPPと競合する。続いて、未反応物を洗浄、除去し、固相化したβ-CPPと結合したモノクローナル抗体を酵素標識した2次抗体による呈色反応により測定する。検量線サンプルから求めた近似曲線から乳製品サンプル中のCPP及びCPP複合体含量を求める。検量線サンプルは既知量のCPP及びCPP複合体を添加して調製するので、製品中に含まれるCPP及びCPP複合体量が求められる。さらに、製品中に含まれるβ-CPP量も、精製したβ-CPPを標準物質として、CPP及びCPP複合体原体について上述の競合ELISA法を適用することで算出できる。
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[実施例1]プロセスチーズ及びプロセスチーズに添加したCPP含量の測定
試験原料としてニュージーランドゴーダプロセスチーズ及び2% CPP配合ニュージーランドゴーダプロセスチーズを用いた。乳鉢中で各チーズに蒸留水を加えて10%(w/v)の均一な水溶液を調製した。さらに、得られた10%(w/v) ニュージーランドゴーダプロセスチーズ水溶液にCPPを2mg/mlになるように添加したものも含め、以下の3種の乳製品サンプルを調製した。
1) ニュージーランドゴーダプロセスチーズ10%溶液
2) 2% CPP配合ニュージーランドゴーダプロセスチーズ10%溶液(CPP: 2mg/ml)
3) CPP(2mg/ml)添加10%ニュージーランドゴーダプロセスチーズ
サンプル前処理は以下に述べる手順で行った。
乳製品サンプル0.3 ml をプラスチックチューブに取り、ボルテックスミキサーで攪拌しながら15%トリクロロ酢酸(TCA) 1.2 ml、続いてPBS 1.5 mlを加え、酸変性したカゼイン等の高分子タンパク質を遠心除去(17000 x g、6min、4℃)した。回収した上清1.2ml に等量のPBS 1.2mlを添加したものの内2mlをあらかじめ100%メタノール2ml、HPLC用蒸留水(0.1%TFA含有)2mlで平衡化した固相抽出用カラム(Waters OASISTM HLB1cc (30mg))にアプライした。カラム中のTCAや非吸着物を蒸留水(0.1% TFA含有) 2ml、5% メタノール(0.1% TFA含有) 2mlで順次洗浄除去した後、50%アセトニトリル(0.1% TFA含有) 2mlにてCPP含有画分を溶出した。得られたCPP含有画分は遠心濃縮機により乾固した。なお、検量線サンプルはCPPIII(標準物質)をリン酸緩衝溶液(PBS)に溶解した。
競合ELISA法は以下に述べる手順で行った。
前処理済みの乳製品サンプルをPBS 0.5mlに溶解し検体原液とした。全ての検体原液をPBSでさらに10倍希釈した。検量線サンプルはCPPIII(標準物質)をPBSで溶解・希釈し、6.25-100μg/mlに調製した。乳製品サンプル及び検量線サンプルを2%BSA/PBSで希釈したmAb 1A5(2μg/ml)と1:1 (50μl:50μl)の量比でU底96ウエルプレート(FALCON #351177)中でプレインキュベーション(37℃、1.5時間)した。測定用96ウエルプレート(Nunc MaxiSorp)は、PBSに溶解したCPPIII (50μg/ml)を100μl/wellで37℃、2時間以上コーティングした後、1%BSA/PBSで37℃1時間ブロッキングした。ブロッキング済みの測定用プレートにプレインキュベーションした検体とmAb 1A5の反応物を50μl/well移し、37℃で1時間反応した。続いて、競合未反応物を洗浄液により除去し、プレート上にコートしたCPPIII中のβ-CPPと結合したmAb 1A5を検出するために、1%BSA/PBSで6000倍に希釈した2次抗体(ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウス免疫グロブリン抗体(Rockland社))を100μl/well加え、37℃で1時間インキュベーションした。次に、未反応の2次抗体を洗浄液により除去した後、基質発色液 (DAKOTM TMB+SUBSTRATE-CHROMOGEN)を100μl/well分注した。室温で5分間呈色反応を行った後、1Nの硫酸水溶液を100μl/well添加して反応を停止し、プレートリーダを用いて吸光度 (OD 450 nm)を測定した。検量線サンプルの各CPP濃度と対応する吸光度をそれぞれx(対数)、y軸にプロットして作成した検量線より乳製品サンプル中のCPP量を算出した。検量線は測定毎に作成し、乳製品サンプルと同一のプレートで測定したデータを使用した。
CPP濃度を公比2で6.25-100μg/mlに調製した検量線サンプルについて、競合ELISA法を実施して得られた検量線を図1に示した。
次に検量線から得られた近似関数に各チーズサンプルの吸光度を当てはめ、希釈倍率を乗じてCPP配合量を求めた(表1)。
Figure 0004877920
本法は酸処理、固相抽出からなる前処理とβ-CPPに特異的なモノクローナル抗体を用いた競合ELISA法を組み合わせることにより、チーズの熟成過程で生じた多種類のペプチド中から、CPP配合量を特異的に定量することを可能にした。
[実施例2]モノクローナル抗体(mAb 1A5)のエピトープ領域の検討
化学合成したβ-CPPを構成するペプチド1から16残基(β-CPP(f1-16))、ペプチド20から25残基(β-CPP (f20-25))及びβ-CPP(f1-25)とmAb 1A5との反応性を競合ELISA法により調べた(図2)。
mAb 1A5はβ-CPP(f1-25)とは強く反応するが、β-CPP(f1-16)及びβ-CPP (f20-25)とは反応しなかったことから、エピトープはペプチド17から19残基のリン酸化セリンクラスターを含む領域であることが示唆された。
[実施例3] セリン残基の脱リン酸化がモノクローナル抗体(mAb 1A5)反応性に及ぼす影響
セリン残基のリン酸化が抗体との反応に重要であることを確認するために、CPPを0.2-0.6N のNaOHで37℃、3 時間脱リン酸化処理した(B. Jiang and Y. Mine (2000). Preparation of novel functional oligophosphopeptides from hen egg yolk phosvitin. J. Agric. Food. Chem. 48, 990-994.)。続いて、塩酸で中和した後、固相抽出により遊離したリン酸基を除き、脱リン酸化されたCPP含有画分を回収した。対照群はNaOH処理開始後直ちに中和して脱リン酸化反応を止めた。CPPに含まれるP量の測定はAmesの方法を用いた(B. N. Ames (1966) Assay of Inorganic Phosphate, Total Phosphate. Methods in Enzymology VIII, pp.115-118.)。NaOHの処理濃度に比例してCPP中のP量は減少したが(図3)、ペプチド含量には影響しなかった(図4)。mAb 1A5を用いた競合ELISA法で測定したNaOH処理サンプル中のCPP含量は、脱リン酸化が進むに比例して低下した(図5)。以上の結果は、mAb 1A5はCPPの特にリン酸化セリン残基配列を含む領域を認識していることを支持している。
[実施例4]モノクローナル抗体(mAb 1A5)反応特異性
ウシカゼインをトリプシン分解すると4種の主要なリン酸化ペプチドが生ずる(表2)。
Figure 0004877920
ウシα及びβカゼインをトリプシン分解し、リン酸化ペプチド調製した後、HPLCにより4種のリン酸化ペプチドを精製した(E.C. Reynolds, P. F. Riley and N.J. Adamson (1994). A selective precipitation purification procedure for multiple phosphoseryl-containing peptides and methods for their identification. Anal. Biochem. 217, 277- 284.)。そして、mAb 1A5のペプチド特異性を競合ELISA法により調べた(図6)。
図6に示したように、ウシカゼインをトリプシン分解して生じる4種の主要リン酸化ペプチドの内、今回構築した競合ELISA測定系でmAb 1A5はβ-CPP特異的な反応性を示した。
[実施例5]乳製品(試製品)に配合したCPP-ACP含量の測定
検量線サンプルとして試製に用いたCPP-ACP原体(Cadbury Schweppes社)を1g秤量し、蒸留水で100mlのメスフラスコに溶解した後(10mg/ml)、2.5mlずつチューブに分注し、遠心濃縮機により乾固した(25mg/tube)。続いて、CPP-ACP原体25mgに牛乳5mlを加えて十分に溶解した後(5mg/ml)、最終濃度が1、2及び3mg/mlになるように牛乳で段階希釈した。CPP-ACP無添加の牛乳中のCPP-ACP濃度は 0mg/mlとした。
サンプル調製法は以下に述べる手順で行った。
乳製品サンプル0.3 ml をプラスチックチューブに取り、ボルテックスミキサーで攪拌しながら15%トリクロロ酢酸(TCA) 1.2 ml、続いてPBS 1.5 mlを加え、酸変性したカゼイン、乳清由来の高分子タンパク質を遠心除去(17000 x g、6min、4℃)した。回収した上清1.2ml に等量のPBS 1.2mlを添加したものの内2mlをあらかじめ100%メタノール2ml、HPLC用蒸留水(0.1%TFA含有)2mlで平衡化した固相抽出用カラム(Waters OASISTM HLB1cc (30mg))にアプライした。カラム中のTCAや非吸着物を蒸留水(0.1% TFA含有) 2ml、5% メタノール(0.1% TFA含有) 2mlで順次洗浄除去した後、50%アセトニトリル(0.1% TFA含有) 2mlにてCPP含有画分を溶出した。得られたCPP含有画分は遠心濃縮機により乾固した。なお、検量線サンプルも乳製品サンプルと同様の前処理を行った。
競合ELISA法は以下に述べる手順で行った。
前処理済みの乳製品サンプル及び検量線サンプルをPBS 0.5mlに溶解し検体原液とした。全ての検体原液をPBSでさらに5倍希釈し、2%BSA/PBSで希釈したmAb 1A5(2μg/ml)と1:1 (50μl:50μl)の量比でU底96ウエルプレート(FALCON #351177)中でプレインキュベーション(37℃、1.5時間)した。測定用96ウエルプレート(Nunc MaxiSorp)は、PBSに溶解したCPPIII(50μg/ml)を100μl/wellで37℃、2時間以上コーティングした後、1%BSA/PBSで37℃1時間ブロッキングした。ブロッキング済みの測定用プレートにプレインキュベーションした検体とmAb 1A5の反応物を50μl/well移し、37℃で1時間反応した。続いて、競合未反応物を洗浄液により除去し、プレート上にコートしたCPPIII中のβ-CPPと結合したmAb 1A5を検出するために、1%BSA/PBSで6000倍に希釈した2次抗体(ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウス免疫グロブリン抗体(Rockland社))を100μl/well加え、37℃で1時間インキュベーションした。次に、未反応の2次抗体を洗浄液により除去した後、基質発色液 (DAKOTM TMB+SUBSTRATE-CHROMOGEN)を100μl/well分注した。室温で5分間呈色反応を行った後、1Nの硫酸水溶液を100μl/well添加して反応を停止し、プレートリーダを用いて吸光度 (OD 450 nm)を測定した。検量線サンプルの各CPP-ACP濃度と対応する吸光度をそれぞれx、y軸にプロットして作成した検量線より乳製品サンプル中のCPP-ACP量を算出した。検量線は測定毎に作成し、乳製品サンプルと同一のプレートで測定したデータを使用した。
CPP-ACP濃度を0、1、2及び3mg/mlに調製した検量線サンプルについて、前処理、競合ELISA法を実施して得られた検量線を図7に示した。検量線の近似関数としては1次式を当てはめた。
次に検量線から得られた近似関数に乳製品サンプル(n =3)の吸光度を当てはめ、CPP-ACP配合量を求めた(表3)。
Figure 0004877920
[実施例6] 単位CPP-ACP量に含まれるβ-CPP含量の測定
0〜10 μg/ml濃度に調製したβ-CPP測定用検量線サンプルについて、競合ELISA法を実施して得られた検量線を図8に示した。検量線の近似関数としては指数曲線を当てはめた。
次に検量線から得られた近似関数にCPP-ACPの各濃度に対応した吸光度を当てはめ、β-CPPへの換算値を求めると共に、単位CPP-ACP量に含まれるβ-CPP含量を求めた(表4)。
Figure 0004877920
表4よりCPP-ACP原体1mg中のβ-CPP含量は0.109mgであった。
乳製品サンプル中にはCPP-ACPが2.67mg/ml含まれており(実施例5より)、
CPP-ACP 1mg中のβ-CPP含量として0.1090mgであることから(実施例6より)、乳製品サンプル中に配合されたβ-CPP量は0.29(=2.67 x 0.109)mg/mlとなる。
本発明は、特殊な機器や高価な装置を使わないで、簡便にかつ高い精度と特異性を持ってCPP及びCPP複合体を測定できる。特に乳製品のような配合するCPP及びCPP複合体と類似する物質が多量に存在する溶液中に含まれるCPP、CPP複合体さらにβ-CPP量の測定に適している。用途として、CPP及びCPP複合体素材を食品或いは医薬品に配合した製品の規格・品質管理へ適用できる。さらには、体内動態、薬効薬理試験など基礎研究の分析ツールとしても有用である。
CPPIII(標準物質)の検量線を示すグラフである。 モノクローナル抗体(mAb 1A5)とβ-CPP及び化学合成した構成領域との反応性を示すグラフである。 NaOH処理による濃度依存的な脱リン酸化反応を示すグラフである。 脱リン酸化反応に伴う蛋白量への影響を示すグラフである。 脱リン酸化反応が進むとモノクローナル抗体との反応性が低下することを示すグラフである。 モノクローナル抗体(mAb 1A5)がカゼインに由来するリン酸化ペプチドのうち特にβ-CPPに特異性を示すグラフである。 CPP-ACP(標準物質)の検量線を示すグラフである。 β-CPP(標準物質)の検量線を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 配列番号:1記載のリン酸化ペプチドに対するモノクローナル抗体であって、ペプチド17から19残基のリン酸化セリンクラスターを含む領域を、エピトープ領域として有し、αs1−カゼインホスホペプチド、αs2−カゼインホスホペプチド及びβ−カゼインホスホペプチドの中でβ−カゼインホスホペプチドのみに特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法によるβ−カゼインホスホペプチド及び/又はβ−カゼインホスホペプチド複合体の定量法。
  2. 以下の工程からなる免疫学的測定法による請求項1記載の定量法。
    (1)試料に酸を加え、タンパク質を変性・除去する工程
    (2)固相抽出により、酸を除去する工程
    (3)固相から溶出した精製試料に対して、上記モノクローナル抗体を用いて免疫学的測定を行い、該精製試料中のβ−カゼインホスホペプチド及び/又はβ−カゼインホスホペプチド複合体を定量する工程
  3. 乳製品中のβ−カゼインホスホペプチド及び/又はβ−カゼインホスホペプチド複合体を定量することを特徴とする請求項1又は2記載の定量法。
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