JP4853588B2 - イオン源 - Google Patents

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Description

本発明は、イオン源、及びこれを用いた質量分析計,分析方法及びこれを用いた計測システム、あるいはイオン源を用いたモニタに関するものである。
気体や液体中などの微量成分を高感度に検出する方法として、大気圧下で測定対象の試料をコロナ放電を用いてイオン化して(大気圧化学イオン化法)、生成したイオンを質量分析計により高感度に検出する方法がある。
この方法は、特開昭51−8996号に記載のように、高電圧を印加することにより針電極先端に生成したコロナ放電領域に、試料を導入しイオン化する方法である。このとき、試料はコロナ放電により直接イオン化される反応(一次イオン化)に加えて、イオン分子反応でイオン化される反応(二次イオン化)があるため、結果的に試料分子が選択的に高効率にイオン化されることになる。
一方、特開平6−310091号に記載のように、試料ガスを直接コロナ放電領域に導入せずにイオン化する方法が提案されている。すなわち、別に設けたコロナ放電領域で生成した一次イオンを用いて、イオン分子反応によりコロナ放電領域を通過しない試料分子を効率的に二次イオン化するという方法である。これにより、シランガスのようにコロナ放電を用いて直接イオン化すると、放電生成物によりイオン源が極度に汚染されイオン化できなくなるような場合に非常に有効となる。
さらに、米国特許4023398号に記載の方法がある。この例では、試料を搬送するためのキャリアガスが真空下の質量分析部に導入されるのを防止するため、コロナ放電領域とイオンを真空中に取込むための細孔間にカーテンガスを流す方法が開示されている。この工夫により、クライオポンプのような真空排気系を用いた場合に排気効率を向上させることができる。
さらに、特開平3-179252号に、ガスの流れる方向について記載がある。この方法では、液体試料が中空針電極内を流れ、針先端でイオン化された微小液滴が対向して流れる乾燥ガスにより、効率よく気化され、またイオン化された試料の拡散が抑制され、補修効率を向上させることが開示されている。しかし本願の特徴の一つである放電の安定性については課題並び課題を解決する手段については何ら示されていない。
試料ガス中の微量成分を分析する具体的な適用例として、特開平11-304760号及び特開平11-304761号に負のコロナ放電を用いて、ガス中のダイオキシン類を測定する方法が、特開平12-28579号に、ガス中のニトロ化合物などの危険物を探知する方法が、それぞれ記載されている。
特開昭51−8996号 特開平6−310091号 米国特許4023398号 特開平3-179252号 特開平11-304760号 特開平11-304761号
1.感度について
特開昭51−8996号、特開昭51−8996号、及び特開平3-179252号に記載されている従来例では、測定試料濃度が低い場合(例えば、空気中の微量成分を測定する場合や、液体中の微量成分を測定する場合等)、測定試料のイオンに比較して多量に存在する成分のイオンあるいは多量に存在する成分由来のイオン(例えば、イオン分子反応により生成したイオン等)の強度が極端に強くなる。特に、多量に存在する成分に相当する分子あるいは多量に存在する成分由来のイオンに相当する分子が、目的とする試料の分子よりイオンになりやすい、あるいは同じ程度にイオンになる場合、目的とする試料のイオンの生成効率が悪化し、結果的に感度が低下するという問題があった。
また、米国特許4023398号で記載されている方法では、カーテンガスを用いることによりキャリアガスが真空中に導入されないようにする工夫はされているが、得られる質量スペクトルは上記の従来例のものと本質的に変わらず、上記の従来例と同様の問題を含んでいた。
また、特開平3-179252号では、液体試料を分析するためのイオン源に関するもので、ガスの分析については何ら記載が無い。
2.長時間の連続測定について
上記の従来例では、測定するガス中の成分が針先に堆積し、コロナ放電が不安定になり、長時間連続して測定できなくなるという問題があった。特開平6−310091号に記載の方法では、1ヶ月程度の長期間に渡る連続運転について触れられていない。放電が不安定になった後、再び測定を行うには針先の堆積物を取り除いたり、針を交換したりといったメンテナンスが必要になり、この間は測定できないことに加えて、人手・手間がかかるという問題がある。
従って、本発明は目的とする試料のイオンを効率的に生成するためのコロナ放電を用いたイオン源およびこれを用いた装置を提供すること、および長時間安定な放電を持続するイオン源およびこれを用いた装置を提供することを目的とする。
1.感度について
まず、イオンの生成効率を上げる手段であるが、高電圧を印加することにより針電極先端に生成するコロナ放電において、針電極と、生成したイオンを質量分析部に取り込むための開口部を有する隔壁と、を結ぶ方向、つまりイオンが放電領域から引き出される方向と、試料ガスが流れる方向が異なる構成にすることによって、目的とする試料のイオンの生成効率を大幅に向上させる。
このような構成にすることにより、次のような効果が生じる。例えば、乾燥空気中のクロロフェノール類(CP)を、負のコロナ放電を用いて観測する場合の主なイオン分子反応は以下のようになる。
2+e- → O2 -
(負のコロナ放電)
2+N2 → 2NO
(負のコロナ放電)
2 -+NO→NO3 -
2 -+CP→(CP−H)-+HO2
ここで、(CP−H)-はCPからプロトンの抜けた負イオンを表す。上式からわかるように、基本的に、負のコロナ放電で生成したO2 -が介在した反応となる。N2はO2との負のコロナ放電下での反応により中間体NOを経てNO3 -に容易に変化し、強度の強いイオンとなって観測される。NO3 -は酸性度が高いので、CPとは反応しない。従って、CPに比較してN2の濃度が非常に高い場合、観測されるのはNO3 -がほとんどで、(CP−H)-はわずかにしか観測されない。
このような反応過程の中で、O2 -+NO→NO3 -の反応を抑制できれば、O2 -の減少を抑えることができる。これにより、O2 -+CP→(CP−H)-+HO2の反応が進行する。大量に生成するNO3 -は大幅に低減でき、従って、目的とする(CP−H)-の生成量を増加することができる。NO3 -の生成反応を抑制するには、O2 -とNOとの存在領域が重複しないことが重要となる。そのひとつの方法は、電界によりイオンの進行する方向と流れにより中間体の進行する方向と異なる構成とし、コロナ放電領域における中間体の存在時間を極力短くすれば良い。特に、前記の2方向がほぼ対向する場合には大きな効果を発揮することになる。このとき、前記の反応過程は、NOの中間体の存在を無視できることになる。従って、上記の反応は実質的に
2+e- → O2 -
(負のコロナ放電)
2 -+CP→(CP−H)-+HO2
となる。この反応形態は、(CP−H)-を高感度に測定する観点から非常に望ましいものとなる。
2.放電を長時間持続するための手段
本発明は、質量分析部と高電圧を印加することにより針電極先端にコロナ放電を生じさせて試料のイオン化を行うイオン源とを備えたイオン化質量分析計において、前記イオン源は、針電極と、生成したイオンを質量分析部に取り込むための開口部とを結ぶ方向、つまりイオンが放電領域から引き出される方向と、試料ガスが流れる方向が90度以上異なるように(別の見方をすると:針電極先端と、イオンを質量分析部に送り込むための第1の開口部を結ぶ方向とその中心と針電極先端とを結んだ方向とのなす90度以下の位置に設けられた試料ガスを供給する第2の開口部とで)構成される質量分析計および方法を提供する。
このような構成にすることにより、上に述べたような測定対象の物質のイオン生成効率の向上に加えて、安定な放電を長時間持続することについても効果がある。この理由の内の1つは、以下のように考えられる。
以下、負のコロナ放電を例に取って説明する。
放電領域にガスの流れが無い場合に、安定な放電が長時間持続できないのは、針電極先端にガス中の成分が次第に付着していき、先端曲率半径が大きくなるためと考えられる。こうなると放電電流値が振れはじめ、イオン化が不安定となり、質量分析計で測定されるイオン強度も振れてしまう。信頼性の高い分析をするには、頻繁に針電極を交換したり、針先を尖らせたりといったメンテンナンスが必要になる。
負のコロナ放電を用いる場合、負の高電圧が印加された針電極先端から電子が放出され、ガス中の中性分子と衝突し、イオン化させる。イオン化領域は針電極先端のごく近傍(1mm以内)で、そこに生じる負イオンが針電極と対向電極の間に生じる電界により、対向電極側に移動する。針電極先端曲率半径が大きくなり、放電電流値が振れる現象は次のように考えられる。
1)針先近傍のイオン化領域に生じる負イオンが、針先先端領域の電界強度を弱める。
2)電界強度が弱まると、放電電流が低下する。
3)イオン化領域に生じていた負イオンが、電界の力により対向電極側に移動する。
4)針先先端領域の電界強度が再び強くなり放電電流が元どおりになる。
1)から4)を繰り返すことにより放電電流が振れることになる。針電極先端の曲率半径が十分小さい場合は、1)で電界強度が弱まった場合にも放電電流が低下せずに放電を続けることができるが、針電極先端の曲率半径が大きくなると、負イオンの空間電荷作用による電界強度の低下が、放電電流を低下させてしまう結果となる。放電電流の低下を防ぐために電圧を上げた場合には、放電形態がコロナ放電から火花放電に移行してしまい、不安定な放電形態となるため、分析には不向きである。
このイオン化領域にガスの流れを生じさせると、空間電荷効果を及ぼす負イオンを拡散させることにより、針先先端領域の電界強度の低下を抑える効果がある。
従って、針先先端領域にガスの流れを発生させることにより、堆積物により針先曲率半径がある程度大きくなっても安定な放電を持続することができる。
針の根元側から針先に向かって試料ガスを流すと、針先近傍のイオン化が活発に行われる領域は、流れが針の陰になって乱れた状態となり、効果的に空間電荷を拡散することが出来ない。
また、この放電電流値をモニタリングしておき電流値の振幅がある値以上になったら針をメンテナンスするようにアラームを出すようにしておけば、針のメンテナンス時期を的確に知ることができる。
本発明によれば、コロナ放電の領域に対する試料の流れる方向とコロナ放電によりイオン引き出す方向が異なるので、コロナ放電領域における中間体の存在時間を短くすることができるため、目的とする試料のイオンを効率的に生成することができる。また、本発明によれば目的とする試料のイオンを選択性の高い高感度測定を行うことができる。さらに、針先先端に付着物が堆積しても、長時間安定例えば2ヶ月以上は安定に放電を持続することができる。
本発明によるイオン源の詳細図。 本発明のイオン源の説明図。 図1の代替案を示す構成図。 図1の代替案を示す構成図。 図1のイオン源部を拡大した構成図。 図5の代替案を示す構成図。 図5の代替案を示す構成図。 図5の代替案を示す構成図。 図1の代替案を示す構成図。 図1の代替案を示す構成図。
本発明のイオン源をダイオキシンモニタの応用例について説明する。
本発明のイオン源を用いた質量分析装置を焼却炉等に設置し、焼却炉煙道等からの排ガス成分を連続してモニタリングすることができる。特に、焼却炉から排出されるダイオキシン類やダイオキシン類の前駆体であるクロロベンゼン類、クロロフェノール類、炭化水素類を計測し、その結果から焼却炉の燃焼状態を制御すれば、焼却炉からのダイオキシン類の発生量を大幅に低減することが可能となる。多種多様な成分を含みかつ汚れの原因となる成分の多い排ガス中に存在する、こうした微量成分の分析に対し、またその他ガス中に存在する汚れの原因となる成分が多い場合でも、本発明のイオン源を用いた装置は有効である。
図1は、高電圧を印加することにより針電極先端に生成するコロナ放電において、コロナ放電領域に対する試料の導入方向とコロナ放電によりイオンを引き出す方向がほぼ対向していることを特徴とするイオン源の構成を示したものである。コロナ放電領域に対する試料の導入方向とコロナ放電によりイオンを引き出す方向がほぼ対向していることが上記の三つの従来例と大きく異なる点である。図2は、同じイオン源の一部の立体構成を示した図である。
試料導入配管1を通して導入された試料は、いったんイオンドリフト部2に導入される。このイオンドリフト部2はほぼ大気圧状態にある。イオンドリフト部2に導入された試料の一部は、コロナ放電部3に導入され、残りは試料導出配管4を通してイオン源外に排出される。あるいは、試料導出配管4を取り除き、第1イオン取込細孔9を通って真空部に導入される一部を除き、他の残り全てを針電極5の方へ流す構成にしてもよい。コロナ放電部3(3aはその構成本体、3b以下についても同じ。)に導入された試料は、高電圧を印加することにより針電極5の先端に生成するコロナ放電領域6に導入され、イオン化される。このとき、針電極5から対向電極7に向かってドリフトするイオンの流れにほぼ対向するような方向に試料が導入される。生成したイオンは電界により対向電極7の開口部8を通して、イオンドリフト部2に導入される。このとき、対向電極7と第1イオン取込細孔9の間に電圧を印加することにより、イオンをドリフトさせ効率良く第1イオン取込細孔9に導入できる。第1イオン取込細孔9から導入されたイオンは、第2イオン取込細孔11及び第3イオン取込細孔12を通して、真空下の質量分析部に導入される。第1イオン取込細孔9、第2イオン取込細孔11及び第3イオン取込細孔12が存在する領域は、ほぼ大気圧状態にあるイオンドリフト部2と真空下にある質量分析部を結合するための差動排気領域である。また、コロナ放電領域6に導入される試料の流量を制御することはイオンを安定に、かつ高感度に計測する上で重要となる。そのためにコロナ放電部3にはイオン源試料導出配管13及びイオン源流量制御器14を設けてある。また、イオンドリフト部2やコロナ放電部3における試料の吸着を防ぐ観点から、これらの領域を加熱することは重要である。イオン源試料導出配管13を通過する試料流量及び試料導出配管4を通過する試料流量は、これらの後に設けられた、ダイアフラムポンプのような吸引ポンプ70の容量及び配管のコンダクタンスにより決定することができる。このように、本発明のイオン源の特徴のひとつは、試料をコロナ放電領域に導入するための吸引ポンプ70を、試料導入配管1ではなく、イオン源試料導出配管13あるいは試料導出配管4側に設けることができる点にある。すなわち、吸引ポンプ70を試料導入配管1側に配置した場合に問題となる吸引ポンプ70内部における試料の吸着等がなくなる。
以下、さらに詳細な実施例について述べる。
試料導入配管1を通して導入された試料は、いったんイオンドリフト部2に導入され、イオンドリフト部2に導入された試料の一部は、コロナ放電部3(3aはその構成本体、3b以下についても同じ。)に導入され、残りは試料導出配管4を通してイオン源外に排出される。試料導入配管1を通して導入される試料に対してイオン源試料導出配管13を通過する試料の流量は10〜2000ml/min 程度である。なお、試料導入配管1及び試料導出配管4には1/4インチステンレス製電解研磨配管や内面を石英ガラスでコートしたステンレス製配管などを用いる。コロナ放電部3に導入された試料は、高電圧を印加することにより針電極5の先端に生成するコロナ放電領域6に導入され、イオン化される。正イオンを生成させる場合には1〜6kV程度、負イオンを生成させる場合には−1〜−6kV程度を針電極5に印加する。また、針電極5の先端と対向電極7aの間でコロナ放電を起こさせることが重要である。針電極5とコロナ放電部3aの間で放電すると、対向電極7aの開口部8を通過するイオン量が極端に減少するためである。従って、針電極5先端とまわりのコロナ放電部3aの外壁間距離(5mm程度)よりも、針電極5先端と対向電極7a間距離(3mm程度)が短くなっている。このとき、試料ガスは、針電極5から対向電極7(距離は3mm程度)に向かってドリフトするイオンの流れにほぼ対向するような方向に導入される。生成したイオンは電界により対向電極7(直径30mm、厚さ2mm程度)の開口部8(直径2mm程度)を通して、イオンドリフト部2に導入される。このとき、対向電極7と第1イオン取込細孔9の間に電圧を印加することにより、イオンをドリフトさせ効率良く第1イオン取込細孔9に導入するようにする。この場合、針電極5の先端と、生成したイオンを質量分析部に取り込むための開口部8の中心を結ぶ方向と試料ガスが開口部8から試料が導入され、流れる向きは0度(対向している)になっている。また、試料ガスが排出される開口部(排出用配管13)が、針電極先端より根元側にある構成となっている。
対向電極7と第1イオン取込細孔9の間に印加する電圧差は、その距離にも依存するが、これらの電極間距離が1−10mm程度のときで、絶対値で10Vから2000V程度である。
また、針電極5と対向電極7a間の距離は、短すぎると放電が不安定になり、長すぎると生成したイオンが隔壁にあたる確率が増え、開口部8を通る量が減ってしまい、感度が低下するので3〜6mm程度が適当である。
図3は、図1と同様にコロナ放電の領域から試料ガスが流れる方向とイオンを引き出す方向が異なる構造であるが、針の向きを変更したい場合は、図3のように構成することができる。この場合も、針先と対向電極7aの間でコロナ放電を起こすことにより、図1のときと同様な効果がある。
図4は、コロナ放電の領域6から試料が流れる方向とイオンを引き出す方向が異なるものの、対向ではない例を示したものである。図4の場合、針先と開口部9を結ぶ線の方向に対し試料の流れる方向は90度異なっており、試料が排出される開口部は針先と同じ位置にある。
この場合、イオンと中性分子が互いにほぼ垂直な方向に移動するようになっているが、試料ガスの流速を上げることで、図1の場合と似たような効果が得られる。また、イオンと中性分子の移動方向が、対向、垂直以外にも進行方向が異なるような傾きを設ければ、同じような効果が得られる。
図5は、図1のイオン源部を拡大したもので、ガスの流れを針先端に作ることにより、安定したコロナ放電を長時間持続することが出来る構成にしたものである。この場合は、イオンの生成効率を加味してイオンの進む方向と逆向きの方向にガスを流している。図5のように、針先先端のガスの流れが、イオンの進む方向と逆向きでなくても、ガスの流速を上げることで、針先先端に生じた負イオンを十分に拡散して、安定したコロナ放電を長時間持続することが可能である。
図6は、高電圧を印加する針電極を絶縁体で覆ったものである。イオン源の外筒8を加工上の問題から金属で作る場合、針電極の胴体の側面と外筒の間で放電してしまう場合がある。対向電極7aとの間で放電しなくなると、対向電極の細孔を通過するイオン量が著しく減少してしまい、分析計の感度が低下する。これを防ぐには、図6のように側面で放電しないように針を絶縁体で覆うか、図7のように外筒を絶縁物で作るのがよい。あるいは、外筒3と針電極5の間の距離を十分離すのも効果がある。目安としては、針電極5と対向電極7aの間の距離が3mm程度なら、針電極側面と外筒の間の距離は5mm以上離すのが好ましい。
また、図8のように、針先端を除いて、針電極の側面を金メッキやハードクロムメッキでコーティングすると、針電極の胴体で放電しづらくなり、対向電極7aとの間で正規の放電を起こしやすくなるので、長時間の安定した放電を持続するのに好ましい形態となる。また、塩化水素などの腐食性のガスを使用する場合には、耐腐食性の点から有効である。
図9は図1の代案を示す。この例は、図1と基本的に同一であり、同一構成には同一番号を付し、説明を繰り返さない。
図1の例の場合は、イオンドリフト部がひとつの場合であるが、これを複数設けることも可能である。図9は、第1のイオンドリフト部2に加えて、これに隣接して第2イオンドリフト部38を設けた場合である。動作の一例は以下のようになる。試料ガスは試料導入配管1から導入され、試料導入配管4から排出される。このとき、空気のような反応ガスを反応ガス導入配管39から導入し、その一部をコロナ放電部側に導入すると、実施例(1)で述べたような原理に基づき、主にO2 -が対向電極7a、イオンドリフト部2を通過してくる。試料導入配管1から導入された試料ガス、例えば、クロロフェノール等を含む空気に、第2対向電極66を通してO2 -が打ち込まれると、クロロフェノールのイオンが生成する。対向電極7と第2対向電極66、第2対向電極66と第1イオン取込細孔9間にはイオンを加速するための電界を設ける。対向電極7と第2対向電極66の電極間距離、第2対向電極66と第1イオン取込細孔9間距離はともに1から10mm程度である。負イオン測定では、イオン取込細孔9に−10V程度が印加される場合、対向電極7と第2対向電極66には、それぞれ−1kV、−2kV程度が印加される。これらの電圧は、イオンドリフト部2におけるO2 -の滞在時間、すなわち反応時間を制御することになり、イオンドリフト部2でのO2 -の反応が問題となる場合には、電圧を高めにして滞在時間を短くする工夫をしてもよい。イオンは第1イオン取込細孔9から質量分析部に取り込む。この構成の大きな利点は、試料ガスが焼却炉排ガスのような場合、コロナ放電領域に直接排ガスを導入しないで済む点にある。これによって針電極の汚染を防ぎ、さらに長い使用が可能になる。
図10は図1の代案を示す。この例は、図1と基本的に同一であり、同一構成には同一番号を付し、説明を繰り返さない。
図1の場合は、対向電極7aと第1イオン取込細孔9間でイオンをドリフトさせているが、図9では、これに加えて、第1イオン取込細孔9の前にカウンターガス出口電極72を設ける。第1イオン取込細孔9とカウンターガス出口電極72間の距離は、0.1から5mmである。カウンターガス出口電極72の中心には2mm程度の開口部があり、カウンターガス導入口71から導入された空気が対向電極7aに向かって流れる。第1イオン取込細孔9の口径(0.25mm程度)に比較すると、カウンターガス出口電極72の中心は大きくなっている。このとき、カウンターガス出口電極72と第1イオン取込細孔9間では、電界によりイオンが第1イオン取込細孔の方向にドリフトされる。第1イオン取込細孔9とカウンターガス出口電極72間の距離が0.5mmのとき、両電極間の電圧差は10−500V程度である。このような構造にすることによって、第1イオン取込細孔9には液滴、ダストを含む粒子が入りにくく、イオンのみが効率よく導入される構造となる。
本発明に使用されるイオン源における重要なパラメータのひとつは、試料導入配管1からコロナ放電部3に導入する試料の流量である。この流量をある値以上にし、かつ制御することにより、試料のイオンを高感度に、かつ長時間安定に測定することができる。
1…試料導入配管、2…イオンドリフト部、3a,3b,3c,3d…コロナ放電部、4…試料導出配管、5…針電極、6…コロナ放電領域、7a,7b,7c,7d…対向電極、8…対向電極開口部、9…第1イオン取込細孔、10…フランジ型電極、11…第2イオン取込細孔、12…第3イオン取込細孔、13…イオン源試料導出配管、14…イオン源流量制御器、38…第2イオンドリフト部、39…反応ガス導入配管、40…反応ガス導出配管、66…第2対向電極、70…吸込ポンプ、71…カウンターガス導入口、72…カウンターガス出口電極、101…絶縁体、102…イオン源外筒、103…メッキ

Claims (5)

  1. 針電極が配置され、前記針電極と前記針電極により放電される領域とを覆う筒を有し、コロナ放電により試料ガスのイオンを生成する第1の室と、
    前記第1の室で生成された前記イオンを分析部に取り込む第1の開口部と、
    窒素および酸素を含む前記試料ガスを前記針電極の先端へ向けて導入する第2の開口部とを有し、
    前記針電極の先端と前記第1の開口部を結ぶ方向と、前記針電極の先端と前記第2の開口部の中心とを結ぶ方向のなす角度が90度以下であり、
    前記試料ガスは、前記第2の開口部から前記針電極の先端へ向かって流れ、
    前記針電極の先端は、導入される前記試料ガスの流れの中にあるように配置され、
    前記針電極の側面及び前記筒の少なくともいずれかが絶縁体で覆われており、前記放電は、前記針電極の先端と前記第1の開口部を形成する電極との間で起きていることを特徴とするイオン源。
  2. 前記絶縁体は、前記針電極に設けられた外筒であることを特徴とするイオン源。
  3. 針電極が配置され、コロナ放電により試料ガスのイオンを生成する第1の室と、
    前記第1の室で生成された前記イオンを分析部に取り込む第1の開口部と、
    窒素および酸素を含む前記試料ガスを前記針電極の先端へ向けて導入する第2の開口部とを有し、
    前記針電極の先端と前記第1の開口部を結ぶ方向と、前記針電極の先端と前記第2の開口部の中心とを結ぶ方向のなす角度が90度以下であり、
    前記試料ガスは、前記第2の開口部から前記針電極の先端へ向かって流れ、
    前記針電極の先端は、導入される前記試料ガスの流れの中にあるように配置され、
    前記針電極の側面が金又はクロムで覆われており、前記放電は、前記針電極の先端と前記第1の開口部を形成する電極との間で起きていることを特徴とするイオン源。
  4. 針電極が配置され、コロナ放電により反応ガスのイオンを生成する第1の室と、
    前記反応ガスが第1の開口部から導入される第2の室と、
    前記反応ガスを前記第2の室から前記第1の室へ導入し、前記第1の室で生成された前記反応ガスのイオンを、前記第2の室へ取り込む第2の開口部と、
    試料ガスが導入され、前記反応ガスのイオンとの反応により前記試料ガスのイオンが生成される第3の室と、
    前記第2の室から前記反応ガスのイオンを前記第3の室へ取り込む第3の開口部と、
    前記第3の室で生成された前記試料のイオンを反応部へ取り込む第4の開口部とを備え、
    前記針電極の先端と前記第1の開口部を結ぶ方向と、前記針電極の先端と前記第2の開口部の中心とを結ぶ方向のなす角度が90度以下であり、
    前記針電極の先端は、導入される前記反応ガスの流れの中にあるように配置され、
    前記放電は、前記針電極の先端と前記第2の開口部を形成する電極との間で起きていることを特徴とするイオン源。
  5. 請求項4記載のイオン源であって、前記第2の開口部と前記第3の開口部との距離、前記第3の開口部と前記第4の開口部との距離が、それぞれ1〜10mmであることを特徴とするイオン源。
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