JP4845003B2 - 加工表面評価装置 - Google Patents
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Description
ところで、研磨の加工精度が高まるにつれ、研磨加工された表面(加工表面)の状態を測定する技術も高精度化する傾向にある。現在の測定技術の多くは、凹凸の規模を粗さとして測定するものであって、主な測定の方法としては、加工表面への触針による接触式粗さ測定法、光干渉や光切断を利用した非接触式粗さ測定法がある。
一般的にレプリカは、加工表面を転写することによって加工表面を再現する。このため、再現された面は、基の加工表面の凹凸を反転した凹凸を有する。加工表面の凹凸を反転した面を測定することに不具合が生じる場合、レプリカの表面をさらに転写して測定試料を作成し、この表面を接触、非接触の方式によって測定してもよい。
さらに、光干渉を利用した粗さ測定法は、測定の対象となる表面が、粗さが1μm以下であって反射率が比較的高い部材であることが好ましい。このため、測定対象の部材やレプリカの材料が制限される。
本発明は、以上述べた点に鑑みてなされたものであり、測定結果に高い信頼性が得られ、測定対象の制限を受けることがなく、しかも比較的短時間のうちに部材表面の状態を評価できる非接触式の加工表面評価装置を提供することを目的とする。
また、このような発明によれば、透過光が広がった範囲の形状から部材表面を加工した方法を自動的に判定することができる。
このような発明によれば、透過光が広がった範囲の形状を加工方法情報と対照することによって部材表面を加工した方法を自動的に判定することができる。
このような発明によれば、照射される光の強度分布等の特性が測定結果に影響することをなくし、加工表面の状態を正確に評価することができる。
このような発明によれば、加工表面の形状を正確に再現したレプリカを使い、構造物等の現場に加工表面評価装置を持ち込んで計測できない対象の表面をも評価することができる。また、転写して得られる面をさらに転写したレプリカを使った場合、加工表面の凹凸の左右・上下の関係をも正確に再現したレプリカを使って加工表面を評価することができる。
(実施形態1)
図1及び図2は、実施形態1の加工表面評価装置の基本的な測定の原理を説明するための図であって、図1は基本的な構成を説明するための図、図2は図1に示した構成において起こる現象を説明するための図である。
図1に示した構成は、スクリーン105、スクリーン105と所定の距離L隔てて設置されたレプリカ104、レプリカ104に対して光を照射するためのHe−Neレーザ103、レプリカ104を透過した光のスクリーン105における受光状態を撮影するデジタルカメラ101でなる。このような構成は、レプリカ104の背面に光を照射して透過させ、物体の加工表面の状態を評価するものである。
He−Neレーザ103を光源とするスポット光Psをレプリカの背面104bからレプリカ104に照射すると、スポット光Psは、レプリカ104の内部を背面104bから反映面104aに向けて透過する。そして、図2に示すように、反映面104a上で拡散あるいは一部散乱し、透過光Ptを生成する。透過光Ptは、受光面となるスクリーン105上において結像する。図3は、スクリーン105上で透過光Ptが結像した像をデジタルカメラ101によって撮影したものの例である。
Sinβ=mλ/d 式(1)
(Sinβ=Nmλ/d)
n・Sinθβ=Sain(θβ+β) 式(2)
θβ=tan(Nmλ/(n−(1−(Nmλ)2)1/2) 式(3)
ただし、
β:回折した光と回折格子法線とのなす角度
N:1mmあたりの回折格子数
m:回折次数(m=0,±1,2,…)
λ:スポット光の波長
n:レプリカの屈折率
θβ:ブレーズ角
また、実施形態1の加工表面評価装置は、パーソナルコンピュータ(PC)109を備えている。PC109は、マイクロスコープ108の受光面108aにおいて透過光が広がった範囲の形状に基づいて加工表面の凹凸の形状を判定する表面形状判定手段、受光面108aにおいて透過光が広がった範囲のうちの所定の強度以上の強度を持った透過光の範囲に基づいて加工表面の粗さを判定する粗さ判定手段として機能する。
なお、実施形態1では、PC109が加工表面評価装置全般を制御するものとし、PC109が光源403にも制御信号を出力して光源403をオン、オフさせるよう構成している。
透過光の受光範囲は、例えば、透過光を示す輝点をカウントする、あるいは輝点が占める面積を求めることによって取得することができる。実施形態1では、受光範囲の計算にあたり、受光面108aにおいて所定の値以上の強度を持つ輝点だけを計数、あるいは面積の算出に使用し、所定の値以上の強度を持つ透過光が広がった範囲を受光範囲としている。なお、実施形態1では、ディスプレイ109aにおいて輝度200以上を所定の値として設定した。
また、PC109は、受光面108aにおいて透過光が広がった範囲と加工表面の粗さとを対応付けて示す粗さ判定データ506を備えている。粗さ判定データ506は、実施形態1の加工表面評価装置で予め計測されたデータであって、加工表面の評価に先立って加工表面評価装置に保存されているものである。
PC109は、このような粗さデータ506a〜506gのうち、加工方法判定部502によって判定された加工方法に該当する粗さ判定データと透過光が広がった範囲とを対照して加工表面の粗さを判定する粗さ判定部503を備えている。
なお、以上の構成は、濃度変位計測ソフトによっても実現することが可能である。濃度変位計測ソフトは、画像の任意の領域の濃度を、時間を追って計測することができる。透過光の像の画像データは、光強度に応じた濃度を有するので、濃度変位計測ソフトを用いることによって透過光の強度及び強度の分布、さらには強度の経時的な変化までも計測することができる。なお、濃度変位計測ソフトは周知のソフトウェアプログラムであるので、これ以上の説明を省く。
次に、実施形態1で用いられる加工方法データ505及び粗さ判定データ506について、より具体的に説明する。実施形態1では、加工方法データ505、粗さ判定データ506を作成するために複数の加工方法で加工された金属表面のレプリカを作成した。
実施形態1では、上記した方法によって以下の各加工方法についてレプリカを作成した。なお、以下の加工方法で加工された加工表面を反映する反映面を持つレプリカを、以降、例えば、ラップ加工のレプリカ、放電加工のレプリカ等のように加工方法の名称を付して記すものとする。
・ラップ加工
・手仕上げ(ペーパ、やすり)
・放電加工
・精密鋳造
・研削
・形削り
図6(a)〜(b)に示したように、受光範囲は、レプリカの反映面が粗くなるにつれて円形状から楕円形状に近づいている。このような現象は、ラップ加工で加工された加工面の表面粗さが粗くなるにつれて加工表面にスジ状の凹凸(溝)が発生するために起こる。
図7に示したように、濃度物体画素数は、反映面の粗さが粗くなるにつれて増加する傾向にある。この理由は、反映面104aがより粗い場合に光の拡散の程度が大きくなって受光面108aにおける透過光を受光する範囲(受光範囲)が大きくなることによる。
このような処理方法により、実施形態1の加工表面評価装置では、受光範囲が円あるいは楕円であるといった形状に基づいて、例えば、平滑性の程度または縦、横方向の溝があるといった加工表面の凹凸の形状を判定することができる。また、実施形態1の加工表面評価装置では、受光範囲を濃度物体画素数によって求め、この値に基づいて加工表面の粗さを判定することができる。
また、手仕上げペーパでは、1回目から3回目の計測で得られた結果のばらつきが小さいことが分かる。このため、手仕上げペーパは、実施形態1の加工表面評価装置で評価した場合の信頼性が高い結果が得られ、本発明に適した加工方法であるといえる。
また、図17は、図16(a)〜(f)に示した加工方法データに基づく研削加工の粗さ判定データを示した図である。グラフの縦軸は、輝度が200以上の濃度物体画素数であって、横軸は輝度に応じたレプリカの粗さを示している。図17に示したグラフによれば、研削加工にあっては反映面104aの粗さにつれて濃度物体画素数が増加し、最大高さRyが12μm程度より大きくなると一定の値に近づいていくことが分かる。
また、図19は、図18(a)〜(e)に示した加工方法データに基づく研削加工の粗さ判定データを示した図である。グラフの縦軸は、輝度が200以上の濃度物体画素数であって、横軸は輝度に応じたレプリカの粗さを示している。図18(a)〜(e)、図19によれば、最大高さRy3.2〜6.3μmまでは表面が粗くなるにしたがって受光範囲の長さが横方向に延びる。しかし、さらに最大高さRy12.5μm程度まで表面が粗くなった場合には受光範囲の長さが短くなって濃度物体画素数が減少していることが分かる。このような現象は、濃度物体画素数が加工表面の粗さばかりでなく、溝の間隔や溝表面の形状の影響を受けて変化することによって起こるものと考えられる。
図20(a)〜(e)、図21によれば、最大高さRy12.5μmを境にして濃度物体画素数が増加から減少の傾向に変化する。このような現象は、受光範囲は大きくなっているものの、200以上の輝度を持つ光がレプリカから出射されなくなることによるものと考える。
また、実施形態1の加工表面評価装置は、レプリカを透過した透過光が広がった範囲に基づいて加工表面の粗さを判定し、さらに範囲の形状に基づいて加工表面の凹凸形状を自動的に判定することができる。このため、測定対象の反射率や表面状態の制限を受けることがなく、しかも比較的短時間のうちに非接触で加工された部材表面の状態を評価することができる。
さらに、実施形態1の加工表面評価装置は、本実施形態1で例示した加工方法についての加工方法情報だけを保存しておくものに限定されるものでなく、他のどのような加工方法の加工方法情報を保存しておくものであってもよい。さらに、同一の加工方法についても、治具や加工の条件ごとに加工情報や粗さ情報を加工表面評価装置に保存しておき、計測結果と対照することによって加工表面の粗さをより正確に計測することができる。
さらに、実施形態1では、加工表面を転写して得られる面を反映面にしたレプリカを採用している。しかし、実施形態1はこのような構成に限定されるものではなく、転写して得た面をさらに転写した面を反映面としたレプリカを使ってもよい。このようなレプリカを採用した場合、加工表面の凹凸の左右・上下の関係をも正確に再現した反映面を使って加工表面を評価することができる。
次に、本発明の実施形態2について説明する。本発明の加工表面評価装置は、加工表面形状から加工方法を特定することなく、直接加工表面の形状及び粗さを判定するものである。このような実施形態2の加工表面評価装置は、例えば、金属表面の加工工程や検査工程において加工表面の状態を評価することに使用すること等に適している。
図22に示した加工表面評価装置は、評価すべき工程で加工された加工表面のレプリカを使って得られた解析画像データ2203を有している。本実施形態では、粗さの異なる加工表面を使って反映面の粗さが異なる複数のレプリカを作成し、各レプリカについて解析画像データを保存しておくものとする。このため、解析画像データ2203は、レプリカの粗さが異なる例えば7つの解析画像データ2203a〜2203gを有している。なお、図6等に示したように、解析画像データ2203a〜2203gは、解析画像と、解析画像に対応するレプリカ反映面の粗さとを含んでいる。
さらに、本実施形態では、範囲・形状判定部501が受光範囲の形状と一致する解析画像データの候補を複数抽出し、抽出された解析画像データを粗さ判定部2202に通知する。そして、粗さ判定部2202が、通知された解析画像データのうちから受光範囲が一致するものを特定するようにしてもよい。このように構成した場合、より正確に計測によって得られた画像データdpと解析画像データとの一致を判定することができる。
また、実施形態2の加工表面評価装置は、このような構成に限定されるものではない。すなわち、実施形態2の加工表面評価装置は、例えば、検査工程等で加工表面が合格とみなせる円滑性を有しているか否かだけを判別する場合、解析画像データ2203に検査工程で合格と判定される表面のデータ(ベストデータ)だけを保存しておく。
このような加工表面評価装置によれば、加工表面が所定の加工品質を満たしているか否かをより短時間のうちに判断することができる。このため、検査工程において高い作業効率を得ることができる加工表面評価装置を構成することができる。
104b 背面、105 スクリーン、108 マイクロスコープ、108a 受光面
109 PC、109a ディスプレイ、403 光源
501 範囲・形状判定部、502 加工方法判定部、503 粗さ判定部
504 表示制御部、505 加工方法データ、506,2202 粗さ判定データ
2201 表面形状判定部、2203 解析画像データ
Claims (5)
- 評価対象となる物体の加工表面の状態を反映する反映面を有する略透明な試料部材を使用し、加工表面の状態を評価する加工表面評価装置であって、
前記試料部材に対し、反映面とは反対の面にあたる背面から反映面に向けて略垂直に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段によって照射され、前記試料部材を透過した透過光を受光面で受光する受光手段と、
前記受光手段の受光面において透過光が広がった範囲の形状を判定する表面形状判定手段と、
前記表面形状判定手段によって判定された範囲の形状から前記加工表面を加工した加工方法を判定する加工方法判定手段と、
前記加工方法判定手段によって判定された加工方法ごとに、前記受光手段の受光面において透過光が広がった範囲に基づいて加工表面の粗さを判定する粗さ判定手段と、
を備えることを特徴とする加工表面評価装置。 - 前記加工方法判定手段は、
前記受光手段の受光面において透過光が広がった範囲の形状と加工方法とを対応付けて示す加工方法情報を予め有し、前記表面形状判定手段によって判定された範囲の形状と前記加工方法情報とを対照して前記加工表面を加工した加工方法を判定することを特徴とする請求項1に記載の加工表面評価装置。 - 前記粗さ判定手段は、
前記加工表面を加工した加工方法ごとに、前記受光手段の受光面において透過光が広がった範囲のうちの所定の強度以上の強度を持った透過光の範囲と粗さとを対応付ける粗さ情報を予め有し、前記受光手段の受光面において透過光が広がった範囲のうちの所定の強度以上の強度を持った透過光の範囲を前記粗さ情報に対照して加工表面の粗さを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の加工表面評価装置。 - 前記光照射手段は、照射光の前記反映面における強度分布が略均一なスポット光を照射することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の加工表面評価装置。
- 前記試料部材は、加工表面を転写して得られる面、または加工表面を転写して得られる面をさらに転写して得られる面を反映面とするレプリカであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の加工表面評価装置。
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