本発明は、流体輸送機構及び流体輸送方法に関するものであり、より詳細には、沸騰伝播現象により発生する駆動力を搬送動力として利用するとともに、沸騰伝播時に発生する熱が輸送流体に作用するのを防止し、任意流体の輸送を可能にする流体輸送機構及び流体輸送方法に関するものである。なお、本願において、「沸騰伝播現象」とは、液体過熱温度の発熱面上に生じる液体の突沸によって発熱面上に発生した気泡が、発熱面から熱供給を受ける側に移動するとともに、発熱面から受熱して成長又は膨張しながら更に加熱されることにより、発熱面に沿って移動して消泡する現象を意味する。
流体輸送の用途に使用されるマイクロアクチュエータ、マイクロポンプ等の流体輸送機構においては、駆動力発生源として、圧電素子、形状記憶合金、沸騰気泡等が使用される。圧電素子又は形状記憶合金を用いた流体輸送機構では、その構造や、駆動電気信号の制御が複雑化する。これに対し、沸騰気泡を利用した流体輸送機構は、構造及び駆動信号を単純化し得ることから、小型化に適し、しかも、応答性及び再現性に優れることから、バブルジェット(登録商標)式プリンターの液体吐出ヘッド等の用途に使用されている。近年、このような流体輸送機構を回路基板作成や、膜コーティング、或いは、DNA合成等の多様の用途に応用することが提案されている。
しかし、沸騰気泡を用いた流体輸送機構においては、パルス加熱に応答した気泡発生及び気泡消滅の現象が繰り返し発生するにすぎず、マイクロ流路内に特定方向の流体流を形成するには、ノズル・デフューザー等の非対称構造(断面積の一方向への連続的変化)を流路に形成するか、或いは、流路に沿って配置した複数のヒータを時系列的に加熱し、気泡発生及び気泡消滅に位相差を与えるといった方法を採用しなければならない(W.J.Yang,Thermal Science and Engineering,9-4(2001),pp.3-8 、及びT.K.Jun & C.J.Kim, J.Applied Physics,83-11(1998),pp.5658-5664)。
このような流体輸送機構に関し、吐出液(インク)及び発泡液を可動分離膜によって分離し、発泡液の発泡によって生起した圧力を可動分離膜の変形によって吐出液に伝達するように構成したインクジェットプリンタの液体吐出ヘッドが、特開2000-85129号公報に開示されている。発泡液の気泡発生領域に位置する可動分離膜の部分には、凹部が形成され、凹部は、発泡液の泡発生圧力によって変形する。気泡発生領域には、発泡液の給排流路が接続され、給排流路は、発泡・消泡時に気泡発生領域の液圧を均等化するように発泡液を気泡発生領域から流出させ又は気泡発生領域に流入させる。従って、可動分離膜は、確実且つ安定的に上下動し、可動分離膜の凹部を変形させるので、特開2000-85129号公報に記載される如く、液体吐出ヘッドの吐出安定性を向上し得るかもしれない。
特開2000-85129号公報
W.J.Yang,Thermal Science and Engineering,9-4(2001),pp.3-8
T.K.Jun & C.J.Kim, J.Applied Physics,83-11(1998),pp.5658-5664
しかしながら、輸送流体の流路と駆動液の収容域とを分離する可動分離膜を用いた従来の流体輸送機構は、流路の特定部分に可動分離膜の変形を周期的に生じさせ、特定部分の容積変化によって輸送流体を加圧又は減圧するように構成したものにすぎない。即ち、輸送流体の搬送動力は、駆動液収容域の気泡発生及び消泡によって、膜面と直交する方向又は膜面に垂直な方向(以下、「面外方向」という。)に可動分離膜の特定部分を変位させ、可動分離膜の特定部分に接する輸送流体の流路部分を加圧又は減圧するにすぎず、可動分離膜の膜方向(膜面に沿う方向又は膜面と平行な方向(以下、「面内方向」という。))の挙動を利用したものではない。例えば、特開2000-85129号公報(特許文献1)に開示された記載された液体吐出ヘッドでは、気泡は、発熱体の垂直方向にのみ成長し、可動分離膜は、気泡の直上で上下変位するにすぎない。
従って、このような流体輸送機構を用いて輸送流体を特定方向に輸送するには、膜の面外方向の挙動のみによって特定方向に流体を輸送し得るように流路に凹凸、起伏又は流動障害物等を形成したり、流路を変形させ又は流路断面を連続的に変化させ、或いは、駆動部の前後の流路を駆動部に対して非対称構造に設計しなければならず、しかも、流体の輸送方向は、流路形態によって決定されてしまう。このため、輸送流体の流路は、凹凸や流動障害物等を備えない低い流動抵抗の直管型流路や、直線的流路に設計することができず、輸送流体を双方向に搬送する流路として設計することもできない。
また、従来の流体輸送機構では、輸送流体の輸送量は、膜の面外方向の挙動と、流路形態とによって決定されるので、輸送量を調節することができず、しかも、膜の往復動の周期によって輸送タイミングが決定されるので、多量の流体を連続的に輸送することはできない。
これに対し、輸送流体を直に加熱し、輸送流体自体の沸騰伝播現象によって輸送流体を輸送方向に流動させる方式のマイクロポンプが、本発明者等によって提案されており(日本混相流学会年会講演会講演論文集(2005)、第225-226 頁)、この原理を用いてマイクロポンプ等の流体輸送機構を設計し得るかもしれない。しかし、このような方式の流体輸送機構では、輸送流体は、突沸するほどの高温に直に曝されてしまうので、輸送可能な流体の種類が限られてしまう。例えば、このような方式の流体輸送機構を化学やバイオの分野で用いられるマイクロポンプに応用することは、液中成分の変成・分解等による機能喪失の点から好ましくない。かくして、沸騰伝播現象のために供給される熱の影響を最小限に抑制し、任意の流体を輸送することができる流体輸送機構の開発が求められる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、直管型又は直線的流路を輸送流体の流路として使用するとともに、駆動力を得るための熱が輸送流体に影響するのを防止し、任意の流体の輸送を可能にする流体輸送機構及び流体輸送方法を提供することにある。
本発明は又、このような流体輸送機構及び流体輸送方法において、双方向に流体を輸送することができる流体輸送機構及び流体輸送方法を提供することを目的とする。
本発明は更に、このような流体輸送機構及び流体輸送方法において、輸送流体の輸送量を調節することができる流体輸送機構及び流体輸送方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成すべく、輸送すべき流体の流路と、駆動液の突沸により該駆動液に気泡を生成する駆動液収容域と、前記流路及び収容域を分離するダイヤフラムとを有する流体輸送機構において、
前記収容域に配設され、該収容域に封入した前記駆動液を加熱する発熱面を備えた発熱体と、
該発熱面の過熱温度よりも高い過熱温度に昇温し、前記発熱体の端部に気泡を発生させ、前記発熱面上に沸騰伝播現象を誘起するトリガー部とを有し、
前記収容域、発熱体及びダイヤフラムは、前記流路に沿って延び、前記トリガー部は、前記発熱体の端部に配置され、前記ダイヤフラムは、前記沸騰伝播現象により前記発熱面上を移動する気泡によって前記流路内に隆起し且つ該流路に沿って遷移する変形部を形成することを特徴とする流体輸送機構を提供する。
本発明は又、輸送すべき流体の流路にダイヤフラムを介して接した駆動液収容域に駆動液を封入し、該駆動液の突沸により駆動液内に気泡を生成し、前記ダイヤフラムの変形によって前記流路の流体を輸送する流体輸送方法において、
第1過熱温度に昇温する発熱面を備えた発熱体を前記収容域に配設するとともに、第1過熱温度よりも高い第2過熱温度に昇温するトリガー部を前記発熱体の端部に配置し、該トリガー部によって前記駆動液に突沸気泡を発生させて、前記発熱面上に沸騰伝播現象を誘起し且つ進行させ、
前記発熱面上を移動し且つ成長する気泡によって、前記ダイヤフラムを変形させるとともに、該ダイヤフラムの変形部を前記流体の輸送方向に遷移させ、該変形部によって前記流体を輸送することを特徴とする流体輸送方法を提供する。
本発明者は、液体の沸騰伝播現象により発生する一群の気泡によってダイヤフラムを面外方向且つ面内方向に変形させる駆動力が得られ、しかも、沸騰伝播現象の方向性、応答性及び再現性を利用して流体の輸送を制御することができるこを実験的に見い出し、かかる知見に基づき、本発明を達成したものである。
本発明の上記構成によれば、発熱体の端部(トリガー部)に発生した気泡(トリガー気泡)が発熱体の発熱面上を移動しながら成長し、ダイヤフラムを変形させる。ダイヤフラムの変形部は、輸送すべき流体の流路内に隆起し、流体の輸送方向に遷移し、流体を輸送方向に押し出す。気泡が保有する熱は、成長過程で失われ、気泡は、順次後方から凝縮消泡し、発熱体の他端部(前端部)に達した後、完全に消滅する。発熱体端部(トリガー部)及び発熱面の発熱を制御し、発熱面上の沸騰伝播現象の進行を制御することができる。
従って、本発明によれば、流体を輸送方向に流動させる圧力や、流路輪郭の変形は、ダイヤフラムの面外方向且つ面内方向の変形によって得られるので、流路自体は、凹凸や流動障害物等を備えない直管型流路又は直線的流路に設計することができる。
また、発熱体端部(トリガー部)は、沸騰伝播現象を誘起するトリガー気泡を発生させるように短時間だけ発熱すれば良く、発熱面は、沸騰伝播現象を進行させる程度に発熱を持続すれば良く、発熱面は、ダイヤフラムによって輸送流体の流路から隔てられ、位置的にも流体から離間する。しかも、気泡の周囲の駆動液は、実際には、駆動液の沸点温度よりもかなり低い温度を有するにすぎない。従って、駆動力を得るための熱、即ち、発熱体端部及び発熱面の発熱は、輸送流体に直に作用せず、輸送流体に対する発熱の影響も、限られたものにすぎず、かくして、本発明の流体輸送機構は、化学又はバイオ分野で使用される液体等、任意の流体を輸送することができる。
好ましくは、上記第1過熱温度は、前記駆動液の沸点温度に対し、50K以上の過熱度を有する温度に設定される。なお、沸騰伝播現象は、発熱面が蒸着膜のように滑らかであり、0.1μm以下の僅かな傷又は窪みしか発熱面に存在しない条件において、液体の種類に限らずに生起する現象であると考えられている。従って、本明細書において、「発熱面」は、沸騰伝播現象を進行させ、これを妨げない性状及び物性を有する高温の伝熱面を意味する。また、本明細書において、二次側の流体(輸送流体)は、水溶液、有機液、油等の液体のみならず、粉体等の流動性物質を包含する概念として把握される。
本発明は又、上記構成の流体輸送機構において、上記トリガー部を前記発熱体の両端部に対をなして配置したことを特徴とする流体輸送機構を提供する。沸騰伝播現象の進行方向は、加熱されるトリガー部の位置によって決定され、流体は、沸騰伝播現象の進行方向に輸送されるので、流体の輸送方向をトリガー部の配置により設定し、或いは、トリガー部の選択的加熱により制御することができる。
本発明は更に、上記構成の流体輸送機構において、上記発熱体及びトリガー部は、パルス電流が通電される電熱体からなり、前記パルス電流を制御する電気回路が設けられたことを特徴とする流体輸送機構を提供する。このような構成によれば、パルス電圧信号のパルス幅、パルス電圧及び位相を制御することにより、発熱面上の沸騰伝播現象を制御し、輸送流体の輸送量を調節することができる。
本発明の流体輸送機構及び流体輸送方法によれば、輸送流体は、ダイヤフラムの面外方向及び面内方向の変形により輸送されるので、低い流動抵抗の直管型又は直線的流路を輸送流体の流路として使用することができる。また、駆動液収容域の発熱面は、ダイヤフラムによって輸送流体の流路から隔てられるので、輸送流体に対する発熱面の熱の影響は抑制される。従って、本発明の流体輸送機構及び流体輸送方法によれば、沸騰伝播現象を利用して任意の流体の輸送することができる。
また、本発明の流体輸送機構及び流体輸送方法によれば、トリガー部を発熱体の両端部に配置することにより、流体の輸送方向を設定し又は制御し、これにより、流体を双方向に輸送することができる。
更に、本発明の流体輸送機構及び流体輸送方法によれば、パルス電流が通電される電熱体を発熱体及びトリガー部として使用し、パルス電流のパルス幅、パルス電圧及び位相を制御することにより、発熱面上の沸騰伝播現象を制御し、輸送流体の輸送量を調節することができる。
本発明の好適な実施形態によれば、流体輸送機構は、輸送流体を輸送するマイクロ流路を備えたマイクロポンプ又はマイクロアクチュエータを構成する。好ましくは、上記駆動液収容域は、両端部を端壁によって終端した細長い凹所形態の溝からなり、或いは、発熱体の前方の駆動液を発熱体の後方に還流させる還流路を含む循環流路形態を有する。
所望により、複数の駆動液収容域が、流路に対して並列に配置され、複数のダイヤフラム変形部が形成される。このような構成によれば、変形部の挙動を同期させ、複数の変形部を用いた強力なポンプ作用により輸送液を輸送することができる。
好ましくは、上記電熱体は、基板に製膜した金属薄膜からなり、金属薄膜は、細長い有効発熱部と、有効発熱部の両端に配置された一対の電極部と、有効発熱部の端部に接続された電圧タップの縮小部とを有する。電圧回路は、電極に接続された主回路と、電圧タップに接続されたトリガー回路とを含み、縮小部は、トリガー部を構成する。トリガー回路は、パルス電圧信号を縮小部に通電し、縮小部を発熱させる。好ましくは、電圧回路は、パルス電圧信号を発熱体及びトリガー部に通電するとともに、パルス電圧信号のパルス幅、パルス電圧及び位相を制御し、これにより、発熱面上の沸騰伝播現象を制御する。
本発明の好適な実施形態において、トリガー部は、発熱体の両端部に配置され、トリガー部の選択的加熱によって沸騰伝播現象の進行方向が設定される。このような構成によれば、トリガー部の加熱を制御することにより、流体の輸送方向を制御することができる。
上記ダイヤフラムとして、10μm程度の厚さを有し、伸縮性、密着性、不透過性、強度、耐薬品性及び断熱性を有する可撓性膜材(例えば、シリコンゴム又は樹脂膜等) を好ましく使用し得る。また、基板として、SiO2のような低熱伝導性の層を発熱体の直下に有し、シリコンのような高熱伝導材料を基板のベース材として有する複合構造の基板を好ましく使用し得る。低熱伝導性の層は、パルス加熱の際に発熱体の放熱損失を妨げ、高熱伝導材料のベース材は、基板の過剰な温度上昇を防止する。
図1(A)は、本発明に係る流体輸送機構の構造を示す縦断面図であり、図1(B)は、図1(A)のI−I線における断面図である。図2は、図1に示す流体輸送機構を用いた流体輸送方法の原理を示す縦断面図である。
図1に示す如く、流体輸送機構1は、駆動液(一次側液体) 2を封入可能な駆動液収容域3と、輸送液(二次側液体) 4を輸送するための輸送液流路5と、収容域3及び輸送液流路5を分離するダイヤフラム6とから構成される。収容域3は、収容域形成部材7の頂部開口形チャンネルを水平なダイヤフラム6によって封止することにより形成され、駆動液2が収容域3に封入される。流路方向に延びる薄膜ヒータ10が駆動液収容域3の底面に配設され、トリガー気泡P(図2)を発生させるトリガー部11が薄膜ヒータ10の端部に配置される。流路5は、流路形成部材8の底部開口形チャンネルをダイヤフラム6によって封止することにより形成される。流路形成部材8の内壁面8aは、凹凸、起伏等を備えず、非対称部分をも備えず、全長に亘って等断面の直管型流路を流体輸送機構1に形成する。流路5の両端部は開放し又は他系統の流路に接続され、流路5は、一端(上流端)から他端(下流端)に向かって矢印A方向に輸送液4を輸送する。ダイヤフラム6は、流路1に沿って延びる水平な可撓性膜材からなり、駆動液2及び輸送液4を隔絶するとともに、駆動液2の急激な圧力変化に応答して局部的に弾性変形可能な変形能を有する。
駆動液2に接するヒータ10の発熱面10aは、ヒータ10の通電加熱によって所定温度(液体過熱温度)に昇温する。発熱面10aの液体過熱温度は、駆動液2の沸点温度に対し、50K以上の過熱度を有する温度に設定される。発熱面10aを液体過熱温度に昇温した状態でトリガー部11に通電し、トリガー部11の表面温度を液体過熱温度よりも高温に昇温させると、図2(A)に示す如く、トリガー部11にトリガー気泡Pが生成する。発熱面10aは、トリガー部11を起点として下流側に延び、気泡Pは、熱供給を受ける側に移動し且つ成長する性質を有する。従って、気泡Pは、発熱面10aに沿って矢印A方向に移動し、発熱面10aによって更に加熱され、急激に膨張しながら気泡Bに成長する。気泡Bが受熱した熱エネルギーは、気泡Bの成長によって消費され、この結果、気泡Bは、速やかに消泡する。気泡Bの消泡は、後方の液体(駆動液)を矢印A方向に誘引するように作用する。
ヒータ10及びトリガー部11の加熱を制御する主回路及びトリガー回路(図示せず)をヒータ10及びトリガー部11に接続し、これら回路によりヒータ10及びトリガー部11を通電加熱するとともに、加熱のシーケンスを一定の繰り返し周波数で繰り返し、ヒータ10及びトリガー部11を周期的に発熱させることができる。これにより、沸騰伝播現象が、周期的にヒータ10上に生起し、輸送液4は、矢印A方向に連続的に輸送される。
沸騰伝播は、一種の「突沸現象」であり、気泡Bを連続的に生成するには、ヒータ10及びトリガー部11の周期的発熱によって高過熱度の沸騰を繰り返し生じさせる必要があるのみならず、発熱面10a上の気泡Bを速やかに消滅させる必要がある。従って、速やかな気泡Bの消滅は、発熱面10a上の沸騰伝播現象を持続する上で重要な要素である。例えば、十分脱気した水やエタノールでは、気泡Bの消滅後に非凝縮性気体が僅かに残留することから、駆動液2の沸騰伝播を繰り返し生起させることが困難である。従って、駆動液2として、気泡Bの消滅後に非凝縮性気体が残留しない液体が好ましく使用される。
発熱面10a上で成長する気泡Bは、図2に示す如く、その膨張により駆動液2の容積を局所的に増大させるとともに、気泡Bの蒸気圧によってダイヤフラム6を二次側(流路5の側)に押し上げ、変形させる。ダイヤフラム6は、流路5側に隆起する変形部6aを形成し、変形部6aは、駆動液2の沸騰伝播によって矢印A方向に遷移し又は推移する。変形部6aは、流路5の容積を局所的に縮小し、変形部6aの前方傾斜面は、流路5の輸送液4を前方に押圧し、輸送液4を矢印A方向に押し出すように働く。
気泡Pは、トリガー部11に通電したパルス電流に応答してトリガー部11に生成し、図2に示す如く発熱面10a上を移動する一群の気泡Bとして成長し、発熱面10aの他端(前端)に達した後、消滅する。前述の主回路によりヒータ10をパルス加熱して発熱面10aを予め過熱した状態で、所定の位相差(時間差)を与えたパルス電流(トリガー信号)を前述のトリガー回路によってトリガー部11に通電することにより、一群の気泡Bが周期的に発熱面10a上を移動し、変形部6aは、矢印A方向に順次移動する。主回路及びトリガー回路による加熱のシーケンスを所定周波数で繰り返し、沸騰伝播現象を周期的に発熱面10a上に生起することにより、ダイヤフラム6は、輸送液4を矢印A方向に押し出すように波動し又は脈動する。
発熱面10a上で成長する一群の沸騰気泡Bの成長過程は、発熱面10aの液体過熱温度と、発熱面10aに対するトリガー部11の相対位置とによって制御することができる。気泡Bにより形成される変形部6aの位置は、発熱面10aに沿って矢印A方向に推移し、変形部6aは、流路5の流路断面積を輸送方向(矢印A方向)に順次減少させるので、流体輸送機構1は、しごきポンプと同様の力学的作用により輸送液4を矢印A方向に輸送する。即ち、本発明の流体輸送機構1によれば、主に気泡成長初期の高い蒸気圧による気泡周囲液(駆動液2)の急激な加速により、ダイヤフラム6を変形させる駆動力が得られ、ダイヤフラム6の変形及び変位挙動により、輸送液4の搬送動力が得られる。ダイヤフラム6の変位挙動の方向性及び速度は、沸騰伝播現象という沸騰の特異性に依存するので、トリガー部11及び発熱面10aの位置関係により、駆動液2の沸騰伝播方向(従って、輸送液4の輸送方向)が決定され、発熱面10aの長さ等に相応して、1回の沸騰伝播による輸送液4の輸送量が変化する。従って、輸送液4の輸送方向は、流体輸送路1の形状(非対称性等)に依存せず、発熱面10a及びトリガー部11の相対位置により決定され、輸送液4の輸送量は、ヒータ10及びトリガー部11のパルス電流印加のシーケンスの繰り返しの周期、発熱面10aの液体過熱温度、発熱面10aの長さ等によって決定される。
このような流体輸送機構1によれば、トリガー部11の発熱は、短時間のパルス状発熱であるにすぎず、発熱面10aは、ダイヤフラム6によって輸送液4から隔てられ、位置的にも輸送液4から離間する。従って、トリガー部11及びヒータ10の近傍の駆動液2だけが高温に加熱されるにすぎない。しかも、膨張中の気泡Bの周囲の駆動液2は、実際には、駆動液2の沸点温度よりもかなり低い温度を有するにすぎない。更に、輸送液4は、ダイヤフラム6によって駆動液2から分離し、駆動液2が保有する熱は、ダイヤフラム6を介して輸送液4に熱伝導するにすぎない。従って、上記構成の流体輸送機構1によれば、輸送液4に対する熱の影響を最小限に抑制することができる。
駆動液2の動作温度範囲や蒸気圧等は、輸送液4の温度条件や、物性等に相応して調節することが望ましく、従って、駆動液2の成分及び組成は、駆動液2の動作温度範囲や蒸気圧等に相応して適宜選択される。駆動液2として、例えば、水溶液、有機液、油、代替フロン、極低温液体等を採用し得るが、その成分及び組成は、前述の如く、気泡Bの消滅後に非凝縮性気体が駆動液収容域3に残留しないように設定することが望ましい。
一本の長尺ヒータをヒータ10として使用することにより、比較的長時間持続する一連の沸騰伝播現象を駆動液収容域3に生起し、これにより、一回のパルス加熱及び伝播現象によって比較的多量の輸送液4を輸送することができ、他方、全長が比較的短いヒータ10を使用し、比較的短時間に完結する沸騰伝播現象を繰り返し駆動液収容域3に生じさせることにより、輸送液4を小刻みに輸送することができる。このような輸送形態の相違は、流体輸送機構1の使用目的に応じて適宜選択的に採用される。
図3は、駆動液収容域3の構造を例示する流体輸送機構1の縦断面図である。
図3(A)に示す駆動液収容域3は、両端部が端壁3aによって終端した細長い凹所形態の溝からなる。収容域3は、ダイヤフラム6によって封止され、駆動液2が収容域3に封入される。トリガー部11及びヒータ10の発熱によって収容域3に生成した気泡Bは、仮想線で示すように急激に膨張し、駆動液2を気泡Bの移動方向に付勢するが、駆動液2の流動は、前方の端壁3aによって阻止されるので、気泡Bの蒸気圧は、主に、ダイヤフラム6を押上げる圧力としてダイヤフラム6に作用する。このような収容域3の構造は、例えば、ヒータ10及びトリガー部11に通電すべきパルス電流の繰り返しの周波数を比較的小さく設定し、トリガー気泡Pの発生周期を比較的長期に設定した場合に好ましく採用し得る。前述の如く、ヒータ10及びトリガー部11の加熱のシーケンスを一定の繰り返し周波数で繰り返してヒータ10及びトリガー部11を周期的に発熱させることにより、沸騰伝播現象は、周期的にヒータ10上に生起し、輸送液4は、矢印A方向に連続的に輸送される。
図3(B)には、循環流路形態の駆動液収容域3が示されている。収容域3は、隔壁9によって往流路3bから分離した還流路3dを有し、往流路3b及び還流路3dは、ヒータ10の前方及び後方に夫々配置した連通流路3cによって相互連通する。収容域3に生成した気泡B(仮想線で示す)は、駆動液2を気泡Bの移動方向に付勢し、駆動液2の少なくとも一部は、前方の連通路3cから還流路3dに流出し、後方の連通路3cから往流路3bに還流する。このような収容域3の構造は、例えば、ヒータ10及びトリガー部11に通電すべきパルス電流の繰り返しの周波数を比較的大きく設定し、トリガー気泡Pの発生周期を比較的短期に設定した場合に好ましく採用し得る。前述の如く、ヒータ10及びトリガー部11の加熱のシーケンスを一定の繰り返し周波数で繰り返してヒータ10及びトリガー部11を周期的に発熱させることにより、沸騰伝播現象は、周期的にヒータ10上に生起し、輸送液4は、矢印A方向に連続的に輸送される。
図4は、駆動液収容域3の他の構造を例示する流体輸送機構1の縦断面図である。
図4(A)及び図4(B)に示す流体輸送機構1は、流路5廻りに配設した複数の駆動液収容域3を備える。図4(A)に示す流体輸送機構1は、図3(A)に示す流体輸送機構1と同じく、両端部を端壁3aによって閉塞した形態の収容域3を備え、図4(B)に示す流体輸送機構1は、図3(B)に示す流体輸送機構1と同じく、循環流路形態の収容域3を有する。
図4(A)及び図4(B)に示すように複数の収容域3を流路5廻りに並列に形成した構成の流体輸送機構1によれば、複数の変形部6aを輸送液流路に同時に形成することができる。発熱面10aを同時に所定温度(液体過熱温度)に昇温させるとともに、トリガー部11のパルス電流を同期させることにより、図4(A)及び図4(B)に仮想線で示すようにトリガー気泡Pを各収容域3に同時に発生させ、複数の変形部6aにより輸送液4を輸送することができる。このような構成の流体輸送機構1によれば、高い駆動力(搬送動力)が得られるので、輸送液4は、流体輸送機構1の強力なポンプ作用により輸送される。
図5(A)は、本発明の流体輸送機構を適用したマイクロポンプの実施例を示す斜視図であり、図5(B)は、図5(A)に示すマイクロポンプの分解斜視図である。また、図6(A)及び図6(B)は、基板上に製膜した薄膜ヒータの構成を示す平面図及び部分拡大図である。
図5(A)に示すマイクロポンプ20は、基板21、樹脂シート22、ダイヤフラム6、樹脂シート23及びガラス板24を一体的に積層した多層構造を有する。輸送液流路5の端部がマイクロポンプ20の両端面に開口する。
図5(B)に示す如く、ヒータ10が基板21上に形成される。ヒータ10は、蒸着又はスパッタリング等によって基板21の上面中央部に製膜した金属薄膜のパターンからなる。本例の金属薄膜は、白金蒸着膜からなり、幅(W)0.2〜1mm、長さ(L)2〜10mm程度の有効発熱部12を有する。図6に示すように、一対の電圧タップ13が、幅0.1mm程度の縮小部を介して有効発熱部12の両端部に接続される。電圧タップ13の縮小部は、トリガー部11を構成する。電圧タップ13は、トリガー気泡Pを発生させる沸騰開始手段として使用されるとともに、温度測定手段として使用される。
図5(A)に示す如く、駆動液収容域3を形成するための収容域形成用スリット26を中央部に形成した樹脂シート22が、基板21上に重ねられる。樹脂シート26は、0.2〜0.5mm程度の厚さを有する。スリット26は、0.5〜3mm程度の幅を有し、有効発熱部12の長さ(L)の約1〜1.2倍程度の全長を有する。本例では、樹脂シート22として、シリコンゴム製シートが使用されるが、他の樹脂、ゴム又はエラストマー製のシート状物をシート22として使用しても良い。スリット26は、樹脂シート22を垂直に貫通する。スリット26及びヒータ10は、樹脂シート22及び基板21の積層状態において整合し、駆動液2を収容可能な頂部開口形の溝を形成する。
スリット26を駆動液2によって満たした状態で樹脂シート22上にダイヤフラム6を重ねることにより、駆動液2を封入した駆動液収容域3が形成される。ダイヤフラム6は、10μm程度の厚さを有する樹脂製の可撓性膜材、例えば、ポリ塩化ビニリデン製の膜材からなり、駆動液2の圧力変化に応答して局部的に弾性変形可能な変形能を有する。
輸送液流路5を形成するための流路形成用スリット27を含む樹脂シート23が、ダイヤフラム6上に更に重ねられる。樹脂シート23は、0.2〜0.5mm程度の厚さを有する。スリット27は、スリット26と実質的に同一の幅(0.5〜3mm程度)を有し、樹脂シート23を垂直に貫通する。スリット27は、樹脂シート23の中心線上に配置され、樹脂シート23の全長に亘って延びる。本例では、シート23として、シリコンゴム製シートが使用されるが、他の樹脂、ゴム又はエラストマー製のシート状物をシート23として使用しても良い。
方形平板状のガラス板24が、樹脂シート23上に更に重ねられ、図5(A)示す積層構造のマイクロポンプ20が形成される。マイクロポンプ20の両端面に位置する輸送液流路5の開口端には、輸送液4の流路51、52が接続され、輸送液4がマイクロシリンジ等によって流路5、51、52に注入される。
図7(A)は、マイクロポンプ20を駆動するための電気回路を示す回路構成図である。
マイクロポンプ20を駆動するための電気回路には、波形発生器、高速電力増幅器、デジタルオシロスコープ及び標準抵抗器(電流による発熱の影響を受けずに電気抵抗値が一定の状態を維持する抵抗器)が組み込まれる。波形発生器は、矩形のパルス電圧信号を発生させ、高速電力増幅器は、パルス電圧信号を増幅する。電気回路は、ヒータ10に通電するための主回路と、電圧タップ13に通電するためのトリガー回路とを含み、高速電力増幅器は、主回路及びトリガー回路に夫々組み込まれる。
図6に示す如く、ヒータ10の金属薄膜は、端部が拡大しており、通電線61を接続可能な電極部15がヒータ10の両端部に形成される。図5(B)に示すように、主回路を構成する通電線61が、各電極部15に夫々接続され、トリガー回路を構成する通電線62が、電圧タップ13及び電極部15に夫々接続される。通電発熱するトリガー部11は、トリガー気泡Pを発生させるので、マイクロポンプ20の輸送方向は、図7に示す矢印A方向に設定される。デジタルオシロスコープの計測信号線63、64が電圧タップ13及び標準抵抗器に夫々接続され、タップ間電位差とヒータ10の通電電流とがオシロスコープによって測定され、タップ間の電気抵抗と通電電流とからヒータ10の熱流束値及び伝熱面温度が求められる。
図7(B)は、主回路及びトリガー回路に夫々通電されるパルス電圧信号の波形を示すパルス波形線図である。
波形発生器で発生した矩形のパルス電圧信号は、高速電力増幅器によって増幅され、加熱電流としてヒータ10の電極部15に通電される。ヒータ10は、ジュール発熱し、発熱面10aは、昇温する。電圧タップ13間の電位差とヒータ10の通電電流とがによって求められたヒータ10の伝熱面温度(平均温度)が所定過熱度の温度T(液体過熱温度)に到達したとき、パルス幅(時間幅)δ=約0.1msのパルス電圧信号がトリガー信号としてトリガー回路に通電される。上流側電圧タップ13(13a)のトリガー部11は発熱し、トリガー部11に沸騰気泡(トリガー気泡P)が発生する。この気泡をトリガーとして発熱面10a上に沸騰伝播現象を誘起させることにより、伝播気泡Bが発熱面10a上を矢印A方向に移動し、順次消滅する。この過程でダイヤフラム6が気泡Bによって押し上げられ、輸送液流路5内に隆起した変形部6a(図2)が形成される。変形部6は、伝播気泡Bの進行方向に遷移するので、流路5内の輸送液4は、伝播方向(矢印A方向)に輸送される。
主回路及びトリガー回路による加熱のシーケンスを一定の繰り返し周波数で繰り返し、沸騰伝播現象を周期的にヒータ10上に生起することにより、輸送液4は、矢印A方向に連続的に輸送される。
トリガー信号の通電時期を決定する温度Tと、駆動液2の沸点温度との差、即ち、過熱度は、50K以上の温度に設定される。過熱度は、駆動液2の種類及び物性により適宜決定されるが、ヒータ10上の沸騰伝播現象を進行させるには、輸送液4の種類及び物性にかかわらず、概ね全ての駆動液に関し、過熱度を50K以上に設定することが望ましい。
トリガー気泡発生用のパルス電圧信号(トリガー信号)をヒータ10の反対側の電圧タップ13(13b)に通電することにより、伝播気泡Bの移動方向を逆転し、輸送液4の輸送方向を反転させることができる。このような輸送方向の反転は、トリガー回路をヒータ10の反対側の電極部15(15b)及び電圧タップ13bに接続し直し、或いは、予め両電極部15にトリガー回路を接続し、トリガー回路を切換操作することにより、実行することができる。
図8は、マイクロポンプ20の性能試験方法を示す電気回路構成図及びパルス波形線図である。図8において、図7に示す各構成要素と実質的に同一又は同等の構成要素には、同一の参照符号が付されている。
本発明者は、図8に示す実験装置を使用してマイクロポンプ20の性能試験を実施した。図8に示す実験装置は、マイクロポンプ20の輸送量を測定するためのマイクロチャンネル70を備えるとともに、輸送液4の流れの様相や、駆動液2の沸騰様相を撮像する高速ビデオカメラ71を備える。
図9には、マイクロチャンネル70の構造が示されている。
マイクロチャンネル70は、一対のキャピラリチューブ72と、一対の貫通孔73を形成した樹脂板74とから構成される。チューブ72は、貫通孔73に挿入される。輸送液流路5の両端部には、チューブ72を挿入可能な一対の円形ポート5aが形成される。チューブ72の管内領域は、円形ポート5aを介して流路5と連通する。輸送液4は、実験開始時に流路5及びチューブ72内に注入される。
高速ビデオカメラ71は、信号線76によってコントローラに接続され、コントローラは、信号線77によってデジタルオシロスコープに接続される。光源75が、高速ビデオカメラ71に隣接して配置され、撮像用の光をマイクロポンプ20に照射する。高速ビデオカメラ7は、ガラス板24を介して流路5内の流体の流れを撮像するとともに、チューブ72内の輸送液5の液面を撮像する。コントローラは、撮像結果を分析し、輸送液5の流動状態及びチューブ内液面レベルを記録する。
図8に示す実験装置において、ヒータ10は、石英ガラスの基板21(図5)上に製膜した白金蒸着膜からなり、幅0.5mm、長さ5mm、厚さ0.25μmの有効発熱部12を有する。樹脂シート22、23(図5)は、厚さ0.5mmのシリコンゴムシートからなり、ダイヤフラム6は、ポリ塩化ビニリデンの膜材(厚さ10μm)からなる。スリット26、27(図5)の幅は、1.5mmに設定され、スリット26の全長は、約12mmに設定された。また、駆動液2として、水65%、エチレングリコール20%及びイソプロパノール15%の混合液が使用され、輸送液4として、水が使用された。
この実験装置を用いた実験では、高速電力増幅器によって増幅したパルス電圧信号をヒータ10に通電し、ヒータ10をジュール発熱させるとともに、トリガー信号をトリガー回路に通電し、トリガー気泡Pを発生させ、駆動液収容域3に沸騰伝播現象を生じさせた。主回路及びトリガー回路による加熱のシーケンスを一定の繰り返し周波数(10Hz)で繰り返し、沸騰伝播現象を周期的にヒータ10上に生起することにより、輸送液(水)4は、矢印A方向に輸送され、下流側のチューブ72では、液面レベルが上昇し、上流側のチューブ72では、液面レベルが降下した。キャピラリチューブ72内の水柱表面のメニスカスを高速ビデオカメラ7によって撮像した結果、メニスカスの挙動より、水が伝播方向(矢印A方向)に1分当たり約10mm程度の速度で移動する(輸送される) ことが実験的に確認された。
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
例えば、有効発熱部12の幅(W)や、スリット26、27の幅を拡大することにより、ダイヤフラム6の変位量を増大し、流体輸送機構1の輸送能力を高めることができる。
また、ヒータ10の過熱度、パルス電圧信号のパルス幅等は、駆動液の種類等に応じて適宜設定変更し得るものである。
本発明は、単純な構造の微細な流路を用いて応答性・制御性に優れた微小流量の液輸送及び給排制御を行うマイクロポンプ及びマイクロアクチュエータ等に好ましく適用される。本発明は、化学、医療、バイオ、情報、機械、環境、宇宙の分野におけるマイクロチップへの幅広い応用(例えば、μTAS 等の生体、環境の各種計測・診断・化学分析、光スイッチ等の情報素子、マイクロマシン駆動用アクチュエータ、マイクロスラスタ(小型人工衛星の姿勢制御用噴射装置) 、電子機器の冷却等) が期待される。
図1(A)は、本発明に係る流体輸送機構の構造を示す縦断面図であり、図1(B)は、図1(A)のI−I線における断面図である。
図1に示す流体輸送機構を用いた流体輸送方法の原理を示す縦断面図である。
駆動液収容域の構造を例示する流体輸送機構の縦断面図である。
駆動液収容域の他の構造を例示する流体輸送機構の縦断面図である。
図5(A)は、本発明の流体輸送機構を適用したマイクロポンプの実施例を示す斜視図であり、図5(B)は、図5(A)に示すマイクロポンプの分解斜視図である。
基板上に製膜した薄膜ヒータの構成を示す平面図及び部分拡大図である。
図7(A)は、マイクロポンプを駆動するための電気回路を示す回路構成図であり、図7(B)は、主回路及びトリガー回路に夫々通電されるパルス電圧信号の波形を示すパルス波形線図である。
マイクロポンプの性能試験方法を示す電気回路構成図及びパルス波形線図である。
マイクロチャンネルの構造を示す平面図、縦断面図及び分解斜視図である。
符号の説明
1 流体輸送機構
2 駆動液
3 駆動液収容域
4 輸送液
5 輸送液流路
6 ダイヤフラム
6a 変形部
7 収容域形成部材
8 流路形成部材
10 ヒータ
10a 発熱面
11 トリガー部
P トリガー気泡
B 気泡
A 方向(輸送方向)