JP4802421B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイオード、トランジスタ、IC、LSI等の半導体素子を、外的刺激(機械的、熱的衝撃、化学的作用等)から保護するためには、生産コストの点を考慮してエポキシ樹脂組成物で封入成形するのが一般的になっている。一方、近年の半導体素子の高集積化とそれに伴う寸法の増大とは相反しており、最近の電子機器の小型化による半導体装置の寸法の小型化・薄型化が求められ、かつプリント回路基板への実装方法も従来のピン挿入型から表面実装型へ移行し、又環境負荷の低減のため鉛を含まない半田の導入により、更に実装温度も高くなる方向にあり、表面実装半田処理時の熱衝撃による半導体装置のクラックや、半導体素子・リードフレームとエポキシ樹脂組成物の硬化物との剥離といった問題が生じ易くなり、従来以上に耐熱衝撃性に優れた特性を付与できるエポキシ樹脂組成物が強く求められている。
【0003】
これらのクラックや剥離は、半田処理前の半導体装置自身が吸水し、半田処理時の高温下でその水分が爆発的に水蒸気化することによって生じると考えられており、それを防ぐためにエポキシ樹脂組成物の硬化物の低吸水化、即ちエポキシ樹脂組成物に低吸水性を付与する等の手法がよく用いられている。エポキシ樹脂組成物の吸水性は構成する樹脂成分の影響が大きく、そのため低吸水化の手法のひとつとして無機充填材を高充填化し、樹脂成分の含有量を減少させる技術がある。しかしながら無機充填材を高充填するに伴い成形溶融時のエポキシ樹脂組成物の流動性、充填性が悪化する。溶融時のエポキシ樹脂組成物の流動性、充填性が著しく悪化すると、エポキシ樹脂組成物の硬化物が低吸水性を有していても耐半田クラック性が悪くなる。そこで無機充填材を高充填し、硬化物が低吸水性の特性を有するエポキシ樹脂組成物で、かつ溶融時の流動性、充填性が良好なエポキシ樹脂組成物を得るために、溶融時のエポキシ樹脂組成物の流動性、充填性を向上させることのできる無機充填材が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、成形時の流動性、充填性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
[1]((A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤及び(D)レーザー回折・散乱法による(1)平均粒径60μm以上〜80μm未満で下式(1)で示される対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ75重量%以上〜85重量%以下、(2)平均粒径5μm以上〜15μm未満で下式(1)で示される対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ10重量%以上〜20重量%以下、(3)平均粒径1μm以上〜5μm未満で下式(1)で示される対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ2重量%以上〜8重量%以下で構成され、かつ0.5μm以下の微粒シリカを2重量%以下含む溶融球状シリカを含み、(D)溶融シリカの配合量が67〜90重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【数1】
Figure 0004802421
(式中、D1は積算残留分率84.1%のときの粒子径、D2は積算残留分率15.9%のときの粒子径である。積算残留分率は(100−粒度頻度の積算)であり、粒度頻度の積算は小粒子径を基点として積算する。)
[2]第[1]項記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0006】
【発明実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーであり、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、及びトリアジン核含有エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0007】
本発明で用いられるフェノール樹脂は、分子内にフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーであり、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ビスフェノールA、トリフェノールメタン等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0008】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用されているものを広く使用することができる。例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0009】
本発明で用いられる溶融球状シリカは、レーザー回折・散乱法による(1)平均粒径60μm以上〜80μm未満で対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ75重量%以上〜85重量%以下、(2)平均粒径5μm以上〜15μm未満で対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ10重量%以上〜20重量%以下、(3)平均粒径1μm以上〜5μm未満で対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ2重量%以上〜8重量%以下で構成され、かつ0.5μm以下の微粒シリカを2重量%以下含むものである。本発明で言う対数標準偏差は、下記の式で表される値Aを用いた(参照:「粉体工学の基礎」粉体工学の基礎編集委員会編 日刊工業新聞社刊)。Aの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味している。
A={ln(D2/D1)}×0.5
ここで、D1は積算残留分率84.1%のときの粒子径、D2は積算残留分率15.9%のときの粒子径である。積算残留分率とは、(100−粒度頻度の積算)を言う。
図1で示す粒度分布で例を示すと、D1=54.2μm、D2=97.8μmとすると A={ln(97.8/54.2)}×0.5=0.3 となる。
【0010】
レーザー回折・散乱法による前記粒径の溶融球状シリカからなる構成要件を満たさない場合、溶融球状シリカの最蜜充填性が低下する。最蜜充填性が小さい溶融球状シリカを用いたエポキシ樹脂組成物は、流動する際に溶融球状シリカ同士の衝突頻度が高まり、エポキシ樹脂組成物が十分な流動性、充填性を得られないので好ましくない。
更に前記粒径の溶融球状シリカから構成される溶融球状シリカは、0.5μm以下の微粒シリカを2重量%以下含むものであり、この値を越えると全体の比表面積が増加し溶融球状シリカ/樹脂間の接触面積が増えるため、エポキシ樹脂組成物は十分な流動性、充填性を確保することができないため好ましくない。
【0011】
本発明に用いられる溶融球状シリカの特性を損なわない範囲で、一般に封止材料に用いられる他の充填材と併用してもよい。併用する充填材としては、例えば溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、角とり結晶シリカ、2次凝集シリカ、アルミナ、球状アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム等が挙げられ、粒度分布については必要に応じて適宜選択すればよい。
【0012】
本発明における溶融球状シリカの粒度分布は、JIS M 8100(粉塊混合物−サンプリング方法)に準じて、溶融球状シリカを採取し、JIS R 1622−1995(ファインセラミックス原料粒子径分布測定のための試料調製)に準じて、溶融球状シリカを測定用試料として調製し、JIS R 1629−1997(ファインセラミックス原料のレーザー回折・散乱法による粒子径分布測定方法)に準じて、(株)島津製作所・製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−7000(レーザー波長:405nm)を用い、水等を分散剤として、溶融球状シリカの屈折率が実数部1.45、虚数部0.00の条件で測定した体積基準の粒度分布である。又平均粒径は体積基準の積算残留分率が50%のときの粒子径である。
【0013】
従来、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に配合する無機充填材としては、一般に溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ、結晶シリカ等が用いられているが、本発明の特性を有する溶融球状シリカを用いることにより、従来の種々の粒度構成の充填材に比べ流動性、充填性を向上でき、溶融球状シリカの配合量の高いエポキシ樹脂組成物を得ることができ、その結果としてエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐吸水性の向上に寄与し、半導体装置の耐半田クラック性を向上させることができる。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硼酸化合物等の難燃剤類、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することもできる。
【0015】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(D)成分及びその他の添加剤等をミキサー等を用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押し出し機等の混錬機で溶融混錬し、冷却後粉砕する一般的な方法で得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形硬化すればよい。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例で具体的に説明する。
実施例1
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(軟化点65℃、エポキシ当量2
00) 11.1重量部
フェノールノボラック樹脂(軟化点80℃、水酸基当量104)5.8重量部
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUという) 0.2重量部
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.3重量部
カーボンブラック 0.3重量部
カルナバワックス 0.3重量部
シリカA(レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径72μmで対数標準偏差0.3の溶融球状シリカ79重量%、平均粒径9.6μmで対数標準偏差0.2の溶融球状シリカ16重量%、平均粒径3.9μmで対数標準偏差が0.2の溶融球状シリカ5重量%で構成され、かつ0.5μm以下の微粒シリカを含まない)82.0重量部上記の全成分をミキサーを用いて混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて混練し、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を以下の方法で評価した。
【0017】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9Mpa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
充填性:マルチプランジャー成形機を用いて、金型温度180℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間60秒の条件で144pLQFP(パッケージサイズは20mm×20mm、厚み1.4mm、模擬半導体素子の寸法は12mm×12mm、リードフレームはCu製)を10回連続で成形し、未充填回数が、5回以上を×、1〜4回を△、発生なしを○で表した。
【0018】
実施例2〜5、比較例1〜4
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1以外に使用した原料の特性を以下に示す。
溶融シリカB(レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径1.6μmの溶融球状シリカで、対数標準偏差が0.5以下のピークが存在しない溶融球状シリカ)
溶融シリカC(レーザー回折・散乱法により測定した平均粒径22μmで対数標準偏差が0.5以下のピークが存在しない溶融球状シリカ)
【0019】
【表1】
Figure 0004802421
【0020】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物は成形時の流動性、充填性に優れており、これを用いた半導体装置の信頼性向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】粒度分布の粒子径と積算残留分率の関係を示す図

Claims (2)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤及び(D)レーザー回折・散乱法による(1)平均粒径60μm以上〜80μm未満で下式(1)で示される対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ75重量%以上〜85重量%以下、(2)平均粒径5μm以上〜15μm未満で下式(1)で示される対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ10重量%以上〜20重量%以下、(3)平均粒径1μm以上〜5μm未満で下式(1)で示される対数標準偏差0.5以下の溶融球状シリカ2重量%以上〜8重量%以下で構成され、かつ0.5μm以下の微粒シリカを2重量%以下含む溶融球状シリカを含み、(D)溶融シリカの配合量が67〜90重量%であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 0004802421
    (式中、D1は積算残留分率84.1%のときの粒子径、D2は積算残留分率15.9%のときの粒子径である。積算残留分率は(100−粒度頻度の積算)であり、粒度頻度の積算は小粒子径を基点として積算する。)
  2. 請求項1記載のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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