以下図面を参照しながら、本発明の教育セットの実施例を説明する。図面において同一又は類似の要素には、同一又は類似の参照番号が付される。
この教育セットは、一連の作業工程を含む作業についての教育を行うに当たって使用される教育セットにして、前記一連の工程の内の一部工程を除く複数の工程について作業指針又は作業案内を表示するこま図(105a、b、c)と、前記こま図において除かれた工程について作業指針又は作業案内を表示する割こま(106a、b、c)と、を有する。ここに前記作業は所定の歩行コースを作業者が進行することを含み、前記作業工程は、前記歩行コースにおいて複数の道が交差する交差点で作業者が適正な道を選択することを含む。
以下では、この教育セットを用いた教育方法或いは仕事モデルを説明しながら、当該教育セットを説明する。
より詳細には、以下では当該仕事モデルにおいて、実行者(作業者)が32人で、各チーム8名の4つのチーム(A1、A2、B1、B2)に分かれて、A1とA2がAブロック、B1とB2とがBブロックとなり、ブロック対抗で業績を競合するという場合を想定して説明する。
本実施例の教育セットを用いて実施する仕事モデルは、チーム対抗で、各チームの競合メンバー同士が順次、同時にスタートし、主催者側によって予め設定された所定の歩行コースを進行して、コース上に設けられた特定のポイント及びゴールへ早く(的確に)到着することを競うようになっており、これの報酬として得点シート(具体的には金券)が獲得できる。また、進行速度の正確さを競うようになっている。この際、各チーム内に2人一組のパートナー組(ペア)が4組つくられ、パートナー組同士でそれぞれの仕事を遂行し、かつその過程で得られたそれぞれの結果を互いに交換し、その結果をパートナー組の他方が利用して業務を遂行するようになっている。
上記歩行コースとしては、例えば屋外に、部分的に重複する4つのコース(「緑Iコース」、「緑IIコース」、「桃Iコース」、「桃IIコース」)が設けられる。そして、チームが異なる2組のパートナー組が同時に出発し、片方のパートナー組が緑Iコースと緑IIコースを分担し、他方のパートナー組が桃Iコースと桃IIコースを分担するようになっている。以下、出発時間をずらして、順次2組のパートナー組(互いに競合するパートナー組)が出発する。なお、同時出発する2組のパートナー組の組み合わせと、各組のコース取りは、主催者側で予め設定されるようになっている。
図1は、上記4つのコースのうち、「緑Iコース」と「緑IIコース」を模式的に示す。図示しないが、「桃Iコース」、「桃IIコース」も「緑Iコース」「緑IIコース」と同様の構成を有する。
この図からわかるように、各コース上には、通過すべきポイントとして、スタート101、並びに第一種のポイント(IPと呼ぶ)、第二種のポイント(VIPと呼ぶ)として、IP102(図1では2IP、4IP、5IP、7IP、9IP、10IP)とVIP103(図1では3VIP、6VIP、8VIP)、そしてゴール104が設けられている(スタートからIP、VIP、ゴールまでをその順に番号をつけて呼ぶことにする)。上記IPは、コースによって異なる位置に配置されるものと同一位置に配置されるものがあり、その数は各コースとも同じになっている。また、スタート、VIP、ゴールは,各コース共通の同一位置に配置されるようになっている。
実行者(作業者)には、上記各コースを進行するための地図は手渡されず、代わりに、本実施例のこま図(特殊なコース情報)が渡される。このこま図は、一連の工程が、それと対となる割りこま(後述する)によって補完されるようになっているもので、複数の工程について作業指針または作業内容を表示するものであり、例えば各コースごとに3種類ずつ用意される。
図2−図4は、上記こま図のうち、緑Iコースについての3種類のこま図105a−105cを示す。
これらのこま図105a−105cにおいて、各枠の中の図形により、スタートから、そのコースの順路に表れる交差点と交差点での進行方向が、各番号順に、異なる方法で抽象的に表示されている。図1に示すように、スタートでは、同じチームのペアの例えば2人(例えばゼッケン1と2)とそれと競合する別のチームのペア(パートナー組)の例えば2人(例えばゼッケン3と4)が同時にスタートする。そして、すでに述べたように、ゼッケン1、2はそれぞれ緑I、IIコースを進行し、一方、ゼッケン3、4は桃I、IIコースを進行する。
なお、これらのこま図105a−105cには、それぞれ異なった値段が付けられている。すなわち、こま図105aは6000ドル、こま図105bは2000ドル、こま図105cは8000ドルである。これを、スタート前に、各実行者一人一人が購入するようになっている。上記購入には、擬似的金券が用いられる。
図5は、この仕事モデル上で擬似的に用いられる金券115を示す。
図5の例では単位として「ドル」が用いられている。ただし、額の大きさは、図示のものに限らない。そして、金券のサイズと色は、額の大きさに応じて異なっている。実行者は、上記金券を、主催者側から借りて、上記こま図105a−105cのいずれかを購入する。購入費用は、「情報コスト」として計上される。
さらに、本実施例の教育セットでは、上記こま図105a−105cに示された情報だけでは、ゴールに到着できないようになっている。すなわち、例えば、順路に表れる数カ所の交差点のこま単位501が欠落しており、その欠落部については、補足情報として、「割り込みこま図」(以下「割りこま」と略す)により補充する。すなわち、割りこまは、こま図を補完する作業指針または作業内容を表示するものである。上記割りこまの入手はつぎのようにして行われる。すなわち、各メンバーの進行するコース上のIP102(2IP、4IP、5IP、7IP、9IP、10IP;図1参照)に、そのパートナー組の相方(パートナー)の進行に必要な割りこまが用意されており、パートナー組の片方(例えばゼッケン1のパートナー)は、相方(例えばゼッケン2のパートナー)のためにこれを入手し、コースの進行中に相方(例えばゼッケン2のパートナー)に会って手渡さなければならない。また、自分の進行に必要な割りこまは、相方(例えばゼッケン2のパートナー)が進行するコース上のIP102で相方(例えばゼッケン2のパートナー)が入手し、コースの進行中に相方(例えばゼッケン2のパートナー)と出会って受け取らなければ、補足情報が入手できない。
図6−図8は上記割りこまを示す。
図6の2枚の割りこま106a,106a′は、こま図105aを補充するものであり、図7の2枚の割りこま106b,106b′は、こま図105bを補充するものである。また、図8の2枚の割りこま106c,106c′は、こま図105cを補充するものである。これらの割りこま106a等の左上には、その割りこま106a等を、前記こま図105a等のどの位置に割り込ませるかの指示(割りこま106aであれば「7と8の間」)が表示されている。
上記割りこま106a等は、裏面が、剥離紙付きの粘着面になっており、この剥離紙を剥がして、一連の作業工程の作業経過を記録するシートとしてのIP通過シートに、順次貼付されるようになっている。
図10は、前記IP通過シート107の一例を示す。
なお、このIP通過シート107は、スタート前に、各実行者に無料で手渡されるもので、上段に、チーム名と氏名とゼッケン番号を記入する欄108が設けられ、その下の向かって左側に、割りこま106a等を貼付するための割りこま(補足情報)を保持する部位109が設けられている。また、その右側には、各工程の作業完了時間(ここでは各IPに到達した時刻)を記録する部位110とを有している。
一方、各コース上のVIPとゴール(図1参照)には、それぞれ所定額の金券が用意されており、(1)パートナー組の2人が揃っている、(2)同時にスタートした他チームのパートナー組よりも早く到達している、という2つの条件を満たせば、主催者側から派遣されたVIP担当者から、そのパートナー組に、金券(得点)が手渡されるようになっている。遅く到達した方のパートナー組は、この金券を獲得することができない。上記獲得した金券の額は、半分ずつ、そのパートナー組の各メンバーの売上げとして計上されるようになっている。
ただし、それぞれのVIPには、「各作業完了設定標準時刻を表示するシート」(ここでは各VIP金券獲得表)が備えられており、そこにパートナー組のゼッケン番号と、金券を獲得できる時刻(各作業完了設定標準時刻)とが各ゼッケン番号毎に表示されている。
図9は、前記VIP金券獲得表111の一例(この例では3VIPの例)を示す。
そして、そのゼッケン番号を付したパートナー組が、そこに表示された時刻になる前に到着した場合には、即座に金券が渡されるのではなく、その時刻に達してから渡されるようになっている。ゴールでは、そのような制限はない。
上記「金券を獲得できる時刻」とは、スタートしてからそのVIPまでを、順路に従って所定の進行速度で進行した場合に到達する設定時刻のことであり、進行速度は、例えば、スタート−IP間、IP−VIP間、VIP−IP間、IP−ゴール間のそれぞれにおいて、予め設定され指示されている。
そして、本実施例の教育セットを用いた仕事モデルでは、各実行者のスタート時刻、および、IP、VIP、ゴールへの各ポイント到着時刻に基づき時間コストを算出し、各実行者の支出(コスト)に加えるようになっている。すなわち、コースの進行速度がスタート、IP、VIP、ゴールの各区間ごとに指示されており、IP、VIPおよびゴールへの到着の設定時刻は、こま図105a等のコース情報と割りこま106a等の補足情報に従って進行した場合の各区間の距離と区間毎に指示された進行速度によって各実行者ごとに予め算出されている。スタートの出発時刻とゴールの到着時刻は主催者側で実際の時刻を記録し、IPでは、その到達時刻を前記IP通過シート107の到達時刻記入110に本人が記入する。本人が記録するIPへの到着時刻は実際の時刻と違えてもかまわない。
そして、実行終了後、これらの記録をもとに、各区間の設定所要時間と、実行者のIP通過シート107に記載された各ポイントの到着時刻に基づいて計算される所要時間の差を算出し、その差(早くても遅くても)を1分当たり例えば100ドルとして、トータル時間差分の金額に換算される。この額は、各メンバーの業績において、時間コストとして計上される。なお、本実施例では、IPの到達時刻のみを記録し、各IP間の所要時間を時間コストとしたが、IPの他にVIPへの到達時刻のみを記録し、スタート−VIP間、VIP間、VIP−ゴール間の所要時間を計上する、あるいは、IP間、VIP間の両方を計上しても良いのは言うまでもない。
さらに、前記こま図105a等および割りこま106a等には示されていない交差点を通過する場合は、所定の法則にもとづく「道なり」に従うことが、要求される。上記「道なり」とは、例えば、(1)図11(a)に示すように、進行してきた道と同じような道幅の道が1本で他の道は道幅が異なる場合、同じような道幅の道を選択して進む、(2)図11(b)や同図(c)に示すように、進行してきた道と同じような道幅の道が複数本ある場合、より直進に近い方の道を選択して進む、(3)図11(d)に示すように、進行してきた道と同じような道がない場合、より直進に近い方の道を選択して進む、という法則によって進行することである。
また、コース進行についての補足情報は、IP,VIPの各地点に設けられた看板によっても、提示されるようになっている。
例えば、図12に示すように、IPの看板112,113およびVIPの看板114には、コース名、そのポイント番号、進行方向、進行速度が表示されるようになっている。
したがって、各実行者(例えばゼッケン1のパートナー)は、パートナー組を組む相方(例えばゼッケン2のパートナー)にとって必要な補足情報である割りこま106a等を入手するために、こま図105a等を解析しながら進行し、順路上に現れるIPに到着してパートナー組の相方(例えばゼッケン2のパートナー)のために割りこま106a等を入手するとともに、競合パートナー組よりも早くVIPおよびゴールに到着し金券の獲得を目指す。また、各実行者(例えばゼッケン1のパートナー)は、VIPでパートナー組の相方(例えばゼッケン2のパートナー)と出会うので、その場で、入手した割りこま106a等を相方(例えばゼッケン2のパートナー)に手渡すと同時に、相方(例えばゼッケン2のパートナー)から自分用の割りこま106a′等を受け取ってIP通過シート107にこれを貼付する。このようにして、各実行者は、ゴールを目指してそれぞれのコースを進行する。
なお、例えば、スタートから所定時間が経過した時点でタイムアウトが告げられ、その時点でゴール未到達の実行者も、その時点で実行を終了しなければならないようにする。そして、例えば、ゴール未到達のパートナー組が獲得した金券は、同時にスタートした競合パートナー組がすでにゴールしている場合ゼロとなり、獲得金額の半額が競合ペアの獲得金額に上乗せされる。また、同時にスタートした競合パートナー組もゴールできなかった場合、獲得金額は半額となる、というように設定する。
このようにして、全パートナー組の実行が終了したのち、各パートナー組ごとの売上げ(得点)と、個人ごとにかかったコストにもとづいて、個人単位での業績と、チーム単位での業績を算出する。
まず、売上げは、すでに述べたように、各VIPおよびゴールでパートナー組として獲得した金券(得点)の総額となる。個人の売上げは、それぞれその半分ずつとする。なお、この例では、各VIPでパートナー組が獲得する金券の額は20000ドルであり、3個所のVIPとゴールで金券が獲得できるようになっているため、パートナー組の最大売上げ額は、80000ドルとなる。
また、コストとして計上されるものには、情報コストと時間コストがある。上記情報コストとは、こま図105a等の購入金額である。また、時間コストとは、すでに述べたように、各ポイント間の設定所要時間とIP通過シート107の通過時刻記録に基づき計算された所要時間との差の合計を、1分当たり100ドルで換算した金額である。
したがって、下記の式(1)により、個人業績を算出して、業績順に並べることにより、下記の表1に示すようなデータが得られる。これによって、個人業績の優劣が明らかに示される。
[数1]
個人業績=売上げ高×1/2−(情報コスト+時間コスト)……(1)
また、上記個人業績を、チーム単位で集計することにより、チーム業績が得られる。そのデータを、下記の表2に示す。これにより、実行者のそれぞれに、チームとしての達成感、あるいは個人のチームへの貢献が足りなかったという屈辱感等がもたらされるようになっている。
このように、本実施例の教育セットを用いた仕事モデルは、一部重複するものの、全体としては異なるコースを、実行者一人一人が、個で、自分の判断で進行しなければならず、自主性が要求されるようになっている。そして、単に個人個人の判断だけでなく、VIPとゴールでは、パートナー組が揃わないと金券が獲得できないため、パートナー組の相方(パートナー)に迷惑をかけてはいけないという責任感や使命感が要求されるようになっている。また、最終的に、チーム業績の順位が出るため、チームとしての業績を競うために自分もがんばるが、同じチームに所属する他のメンバーがいいかげんにやるのを許さない、というチームを構成する一人一人が力を出す動機付けも与えられるようになっている。
しかも、こま図105等が抽象的に表現する情報の理解、コース途中のIPで入手する補足情報としての割りこま106a等の取得、設定到着時刻への意識、といった、複雑に組み合わせられた多くの要素を研究しながら、意識的、目的的に歩行することにより、解析力、判断力、実行力等の、個人として、また組織として要求される能力が、必然的に鍛えられるようになっている。
本実施例の教育セットは、上記のような特徴を持たせることにより、情況の認識力、分解・解析力、ここの断片的な情報の統合力、個人が意識しているあるいは意識していない状態での有しているあらゆる知識の表出化とそれらの解析、統合力、それらに対する判断力、対応案作成力、それらの共有化力、さらには実行力といった個人並びにそれが属する集団の知的創造力性の程度が直接的に業績に表れるように工夫されている。
したがって、本実施例の教育セットを用いることにより、単に、実行者それぞれに固有の体力や過去に持っていた知識などの能力だけでなく、仕事モデルが有している仕組み(道の定義やこま図に記述される各表示や標識、記号などの主催者側が作成した法則など)の発見やそれに対応して業績をあげるための対策(実行場面におけるコマ図の見方や、コース進行時の確認方法、各ポイントでのまちあわせの方法など)について、いかに同じチームのメンバー同士で知識、情報の共有化がなされるか、あるいはメンバーごとの特徴(長所や短所など)をつかみ、それに対応したチーム内での役割分担やペア構成、実行場面での待ち合わせの仕方などを工夫することが業績を上げるために非常に重要であることが、非常に効率的に体験できる。かつ、本教育セットは、その内容が誰にでも簡単に理解でき、かつ年齢・体力などの個人的資質をなるべく排除したものとなっているので、教育セットとして非常に好都合のものである。
したがって、上記教育セットによれば、従来のビジネス・ゲーム、オリエンテーリング、歩行ラリー、F1、等の研修では得ることのできない、仕事の本質的特徴の体験的理解や個人としての能力と組織としての能力の相乗的な向上を期待することができ、実行者にとって非常に有意義な体験を与えることができる。
なお、本実施例の教育セットを用いた仕事モデルにおいて、上記のように第二種ポイント(VIP)において、パートナー組の片方のメンバーとパートナー組の他のメンバーとが互いに補足情報を交換できるようにしておくのが、コース設定上効率的であり、図10に示すようにIP通過シートに補足情報を貼り付けることにより、VIP担当が補足情報を正しく入手しているかを検査することを容易にすることができる。また、上記のように、各区間の進行速度や方向は、スタート,第一種ポイント,第二種ポイントのそれぞれの地点で指示されるようになっているようにしておくのが、仕事展開中に状況が変化しそれをその都度把握してそれに対応していうという仕事との本質を反映しており、より効果が高く、そのために図12に示すように、IP、VIP看板等により進行速度や方向を指示するのが非常に効率的である。また、金券獲得設定時刻としては、区間距離と進行速度によって算出された第二種ポイントへの到着の設定時刻が用いられるようになっているようにするのがコース設定上効率が高い。このために、図9に示す金券獲得表によりその時刻を表示するのが効率的である。なお、金券獲得時間は、区間距離と進行速度によって算出された第二種ポイントへの到着の設定時刻を用いるだけではなく、別途、所定の待ち時間を設けても良い。これは通常の仕事の場合においても仕事推進者の意図とは関係なく待ち時間が発生することと呼応している。
上記の例では、コースの種類が4種(緑I、緑II、桃I、桃II)に対して、それぞれこま図の要素構成の種類3種(Aタイプ、Bタイプ、Cタイプ)があり、計12種のこま図がある場合(それら12種のこま図に対してそれぞれ対応した割りこまがある)について述べた。これらは、適宜変更しても良い。
すなわち、上記の例では、2組のパートナー組を対象とした4種類のコースを設定したが、コースの種類は、実行者の人数や研修時間によって、適宜設定される。もちろん、少人数であれば、チームの異なる2−3名の実行者が、単一コースを競い合うようにしてもよいが、その場合、自分で判断できないところを、競合者についていくことでごまかすケースもでてくるため、自主性を形成するという効果が充分に得られないおそれがある。したがって、同時にスタートする実行者がそれぞれ個別のコースを選択できるようにする方が望ましく、また、複雑さをもたらすことからも、用いるコースとして、複数のコースが設定されているのがより良い。
さらに、こま図の要素構成に関しても、コース情報を表示したこま図105a等として、一つのコースに対して異なる方式で記述された3種類のものを用意したが、この種類も、特に限定するものではなく、1種類であってもよい。ただし、情報の記述方式の違いによって、情報コストが違うという認識に与えるためには、上記の例のように、一つのコースに対して異なる方式で記述されたコース情報(こま図)を複数種類用意することが望ましい。さらに、いずれかのコース情報を選択できるようになっているのが、実行者が仕事の進め方を主体的に選択できることとなり、より高い効果をもたらす。そして、各こま図105a等における情報の記述方法は、前記の例に限るものではなく、ある程度抽象性があって全体として交差点を特定できるに充分な情報が含まれているものであれば、どのようなものであっても差し支えない。
図13−図16は、こま図、または補足情報(割こま)の要素構成の他の例を示す。
図13(a)は、道を進行する際に道なりではない方向に進行する交差点の平面図を模式的に示した例、同図(b)はその交差点に入る前の特定の距離(例えば20m)のところからその交差点を見たときの道の形状を模式的に示した例、同図(c)は同図(b)の変化形の一例で、20mの手前から見たときに見えない道を点線で表した例である。同図(d)は交差点の形状を多角形で表し、その重心を点で表した例である。同図(e)は、線の太さや線の種類(点線など)で例えば道の太さや路面情況を示した例である。
図14(a)は、「ある交差点」から「道なりではない方向に進行する交差点」までの間に存在する「道なりで進行する」交差点を四角で示し、四角の中の模様で道なりを選択する際の内容(路面情況で選択するのか、道幅で選択するのか、方向で選択するのか等)を示した例である。また、同図(b)は、同図(a)の変化形であり、右に出る線、左に出る線、点線の3種により道なりの選択内容を示した例である。
図15(a)−(f)は、「道なりではない方向に進行する交差点」間の距離、および「道なりではない方向に進行する交差点」での進行方向を表す各種の例であり、同図(a)は黒長方形が100m、白長方形の長さで10m単位の距離を示した例、同図(b)は丸の中の数字で距離を示した例、同図(c)は内側の円で100m単位、外側の円で10m単位の距離を示した例、同図(d)は斜線で囲まれた三角形の面積の数字により距離を示す例、同図(e)は同図(a)の変化形の例、同図(f)はそろばんの玉により示された数で距離を示した例、である。さらに、図16(a)−(c)は、「道なりではない方向に進行する交差点」間の道のりに存在する目標物と「道なりではない方向に進行する交差点」における進行方向を示した例であり、同図(a)は黒い長方形の個数が電信柱の個数を表し白い長方形が信号の個数を表した例、同図(b)は黒い長方形の個数が道路標識の個数を表し白い長方形の個数が横断歩道の個数を示した例、同図(c)は矢印の根元の升目の個数が外灯の個数を表す例である。
上に述べた各種のこま図の要素構成をまとめて示したのが表3である。
表3に示すように、こま図の構成用度としては、(1)道なりでない方向に進行する交差点を特定するものと(2)道なりではない方向に進行する交差点間の情報を示すものとに大別できる。さらに、(1)の場合においては、その交差点を特定する情報として、道の本数や角度、交差点の形状、目標物(例えば電信柱、外灯、看板などの位置や個数、内容)等に分けられる。また、(2)の場合においては、交差点間の道なりの選択条件を示すもの、距離を示すもの、目標物を示すもの等に分けられる。そして、こま図の要素構成は表3に示すように適宜組み合わされて使用される。例えば、図2に示されるこま図の要素構成は、道なりでない方向に進行する交差点の道の本数や角度及びその交差点に存在する目標物とで表現されている。
すなわち、こま図および割りこまは、「道なりで規定される方向ではない方向に進行する交差点」に関して、交差する道の本数、または、交差する道の角度、交差する道の中心線、交差する道の道幅、交差する道に近隣する看板、電信柱、外灯等(以下、目標物等と呼ぶ)のうち少なくとも一つ、あるいは、「道なりで規定される方向ではない方向に進行する交差点」間の距離、または、「道なりで規定される方向ではない方向に進行する交差点」間に存在する道なりで進行する交差点における道なりの選択基準、または、「道なりで規定される方向ではない方向に進行する交差点」間に存在する目標物等を表示したものの内少なくとも一つを示す。
図17は、本実施例の各種のこま図の要素構成を用いた場合の「第一印象での基本的仕組み認識率:そのこま図が何を表しているかを第一印象で回答させ、正解率を評価した」並びに「実際の交差点認識率:実際にコース上で、こま図が示す交差点、及び進行方向を回答させ、その正解率を評価した」を被験者群1(16歳−29歳までの男女32人)、非被験者群2(30歳−45歳までの男女40人)、被験者群3(46歳−60歳までの男女)により実際に試験した結果を示す。また、図17には、比較例として(1)土地理院作成の地図、(2)コ−ス上のすべての交差点(道なりで進行する交差点も含めて)での進行方向を示した地図、(3)コース上のすべての交差点間の距離と交差点における進行方向を示した地図に関しての同様の試験結果も合わせて示す。図17から分かるとおり、本実施例のこま図の要素構成を用いた場合は、第一印象での基本的仕組み認識率に比べて実際の交差点認識正解率がかなり低く、すなわち、「一見簡単そうで、実際には難しい」という仕組みとなっていることがわかる。
さらに、前記の例では、補足情報がコースの一部の行程に関する物(すなわち割りこま106a等)である場合を示したが、補足情報は必ずしもこれに限ることはなく、コース情報を構成する仕組みの全部または一部に関する情報であればよい。例えば、特定の地点の進行方向を示すものやコース進行上の取り決め、例えば、道なりに進行する場合の道の優先度や道の定義そのもの、あるいはそれを設けた地点以降の変更、あるいはコース上の特定の目標物に対応した標示の仕組み等、あるいは、予めメンバーに渡されるコース情報の内不必要な情報を補足情報によって指示する仕組みや、予め渡されるこま図の順序が正しいものではなく、補足情報によりその正しい順序が分かるようになっている仕組み等であってもよいことはいうまでもない。
そして、各コース上に設定されるIP、VIPの配置や数、機能(割りこまの有無、金券の有無等)についても適宜に設定される。看板の表示の仕方も、特に限定するものではない。
また、上記の例では、VIPとゴールにおいて金券を獲得させ、これを売上げとして計上するようにしているが、「金券」というのは一つの象徴であって、例えば、ここでは○○ポイント獲得、タイムロスで○○ポイント減点、というようなポイント制にして、点数を集計して業績とするようにしてもよい。
また、前記の例では、チーム業績を、単純にメンバーの業績の総和として求めたが、メンバー毎の業績のばらつきや、最低または最高のメンバー業績に対して重み付けをするようにしてもよい。
さらに、上記の例では、パートナー組として、2人の場合の例を述べたが、3人以上であっても良い。3人の場合は、例えば、進行コースは緑I、II、IIIとそれと競合する桃I、II、IIIの計6種となり、これに従ってこま図の種類も18種類(要素構成としてAタイプ、Bタイプ、Cタイプの3種の場合)となる。そして、補足情報(割りこま)の仕組みとしては、それぞれのメンバーをA,B,Cとすると、例えば、AはBが、BはCが、CはAが使う補足情報をそれぞれ各IPで取ってくるようにする。そして、例えば、10人のチームの場合、2人のパートナー組5組としても良いし、3人のパートナー組2組と2人のパートナー組2組としてもよい。
さらに、例えば、各ゼッケンに対応したバーコードまたはICカードをメンバーに持たせ、IPまたはVIP、ゴールへの到着時刻を自動的に記録したり、各コースごとに設定された割こまにバーコードを付与させたり、あるいは割りこまをICカードで構成するなどの方法により、正しい割こまを取得したかどうかをVIPまたはゴールで正確に短時間に判別させることもできる。
図18は、このような情報通信機器を用いた場合の教育セットのデータ処理システムの構成図を示す。支出と収入の入力手段を備え、これとデータ転送手段により結合されたデータ処理手段とからなっている。
図19は、上記の構成の教育セットの具体例として、各種データをバーコードで表現し、支出と収入の入力手段としてバーコード入力器を用いた場合の構成を示す。この例では、コースが、スタート−1IP−2VIP−3IP−4VIP−5IP−6VIP−ゴールの構成であり、時間コストはスタート−VIP間、各VIP間、VIP−ゴール間で算出する場合の例である。
図20は、このような構成の場合のデータ処理システムを示す。
この場合、バーコード入力器S−1、2−1、4−1、6−1、G−1はそれぞれ、スタート時刻、各VIP到達時刻、ゴール到達時刻の入力を行う。バーコード入力器S−2は購入こま図コストを入力する。バーコード入力器2−2、4−2、6−2、G−2はそれぞれ、各地点の以前の所定のIPを正しく通過した証明とするために割りこまのバーコードを入力し正誤判定する。そして正しい場合、かつ競合ペア(パートナー組)より早く、VIPまたはゴールに到達したペアに金券獲得権利を与るのに使用される。さらに、バーコードリーダG−1は実際に各人がゴールまで持ち帰った金券の額を入力するのに使用される(途中で金券を紛失したなどの理由によりゴールに持ち帰らなかった場合は無効となる)。そして、これらのデータは有線または無線あるいはインターネット情報網を介して所定のデータ処理手段(コンピュータ)に入力され所定のデータ処理が行われ、業績が算出される。バーコード入力器の設置の具体例を図20に示す。
なお、前記において、バーコード入力器S−1とS−2は現実には、同じバーコードリーダから構成され得る。同様に、バーコード入力器2−1と2−2,4−1と4−2,6−1と6−2,G−1とG−2も、それぞれ同じバーコードリーダから構成され得る。
図21−23、図24−図26は、バーコードシステムを用いた場合の、それぞれこま図125a、b、cと割りこま126a、a’、a”、b、b’、b”、c、c’、c”の例を示す。
割りこまには、その割りこまのコースと何番目のIPかを示すバーコード130が付属されている。
図27は、バーコードシステムを用いた場合の金券の例を示す。
金券115に付与されたバーコード130bにより、どのゼッケンがいくら金券を獲得したかをゴール後にデータ入力する。
図28は、バーコードシステムを用いた場合の金券獲得表111を示す。
この金券獲得表には金券獲得権利のあるペア(パートナー組)を示すバーコード130cが付与されている。図9の場合と同様、金権獲得ペアにはその旨のマーク(例えば丸或いはチェックマーク)が付される。従って当該マークの付されているバーコード130cを読みとることにより、どのゼッケンが何VIPの金券を獲得する権利を有しているかのデータが容易に迅速に入力できるようになっている。(なお、本実施例では、ゼッケン5,6,60及び7,8,70、及び9,10,90、11,12,80のパートナー組は3人で構成されている例である)。
図29は、バーコードシステムを用いた場合のIP通過シート107を示す。
本IP通過シートの上にはゼッケン及び進行コース(本例では緑Iコース)を示すバーコード130dが設けられており、このバーコードをVIPに設置したバーコード入力器で入力し、その時刻をVIP到達時刻とすることが出来る。なお、時刻は、バーコード入力器に備えた適宜のコンピュータ内のクロックに基づいて決定される。さらに、本IP通過シートには割りこま(例えば126a等)を貼り付ける欄109が設けられており、その割りこま上のバーコード(図24,25,26)とIP通過シート上のバーコードを照合することにより正しい割りこまを所有しているか(パートナーが正しいIPを通過したかどうか)が判定できるようになっている(なおどの参加者がどの割こまを持っているべきかを特定する参照データ或いは基準データは、前記バーコード入力器に備えたコンピュータのメモリに記憶されている。)。なお、本実施例では、IP通過シート上にVIP、ゴール到達時刻記入欄110が設けられているが、これは、各VIP及びゴールでバーコードにより到達時刻を入力する際にトラブルがあった場合に備えると共に、到達時刻に関して参加者が記入した時刻をバーコードで入力時刻より優先させるという仕組みに備えたものである。
図30は、バーコードシステムを用いた場合のこま図購入表131を示す。
本こま図購入表には、作業者情報(ゼッケン番号)を記録するバーコード(503)及び当該作業者により選択されうるこま図情報(タイプA−C別の価格)を記録するバーコード(505)を有しており、これにより各ゼッケンが購入したこま図の価格を容易に入力することができる。
図31は、バーコードシステムを用いた場合の業績算出システムの構成図を示す。
同図に示すように、このシステムは、一連の作業工程を含む作業について、教育を行うに当たって、前記教育セットと共に使用される教育システムにして、
所定条件下で作業が完了することを条件として作業者へ付与される得点シート115からの情報に基づいて、作業者の得点を計算する得点計算手段605と、
当該作業者により選択されるこま図情報を記録するこま図購入シート131からの情報に基づいて、作業者の情報コストを計算する情報コスト計算手段601と、
作業者の作業時間に基づいて、作業者の時間コストを計算する時間コスト計算手段603と、
前記作業者の得点及びコストに基づいて、作業者の成績を計算する成績計算手段607と、
を有する。
ここに前記情報コスト計算手段601,時間コスト計算手段603,得点計算手段605,成績計算手段607は何れも、コンピュータにより実行されるコンピュータ・ソフトウエアにより実現される。
より詳細には、以下の通りである。
こま図購入表のバーコード503,505をバーコード入力器S−2により入力し、それをデータ処理機601により、文字列変換、データ部抽出、データの整列を行い、各個人(ゼッケン)の情報コストのデータを求める。一方、スタート及び各VIP、ゴールでは、IP通過シートのバーコード130dをバーコード入力器S−1、2−1、4−1、6−1、G−1により入力し、各時刻を入力する。このデータは、データ処理器603において、文字列変換、データ部抽出、データ整列を行った後に、タイムアウト以降のデータを削除(所定の値を入力)し、重複データを削除し(一人の人が複数回時刻入力した場合に例えば最遅時刻を有効とする)、さらに入力ミス等のデータを削除し、各個人の時間コストのデータを求める。また、各VIP及びゴールの金券獲得表、並びに、実際にゴールまで持ち帰った金券のバーコード130b、130cをバーコード入力器2−2、4−2、6−2、G−2で入力し、データ処理器605によって、文字列変換、データ部抽出、データ整列を行った後、金券獲得表のデータと実際にゴールまで持ち帰った金券のデータの一致性を検出し、必要に応じてデータを修正し、さらに、各VIPとゴールに残った金券の残高との一致性も検出し、必要に応じてデータを修正することにより、各個人の売上げデータを求める。これらデータから、業績計算システムのデータ処理機607により、個人、ペア、チーム、ブロック等の業績を算出し、出力形式設定器により出力形式を設定した後、各業績を出力する。
このように、バーコードシステムを採用することにより、業績計算が正確にまた迅速に行うことができ、さらに効果が高い。
また、こま図とIP通過シート、割りこまや金券などのツールをそれらの情報を記憶させたICカードで構成し、メンバーはそのICカードを持ってコースを進行するようにすることを行ってもよい。このようにすれば、VIPの無人化、情報処理の迅速化、適正化を図ることができる。
図32は、この場合の業績算出システムの例を示す。
さらに、上記の例では、実行者が、こま図とIP通過シートを持ってスタートし、途中、割りこまや金券を入手した場合は、それらも持って進行するようになっているが、これらのツールを、全てデータベース化し、各実行者に、所定のこま図の内容が取り込まれた携帯情報端末を所持させて、IPやVIPごとに、その看板等に表示された所定の数値等を、主催者側のホストコンピュータに伝送して到達を知らせて割りこま等や金券を電子データのやりとりとして行い、またそのときの時刻を本部側で記録するようにしてもよい。
図33は、前記構成の例を示す。
こま図、割りこま等を入出力する作業指針・作業案内入出力手段、並びに、購入こま図の金額等及び各VIPやゴールへの到達時刻を入出力する支出入出力手段並びに、金券獲得権利や獲得金券額などを入出力する収入入出力手段を備えた携帯情報処理端末を実行者が持ちコースを進行する。そして、その携帯情報処理端末は主に無線回路によるデータ転送手段により、本部のデータ処理手段と接続されている。
このようにすることにより、自分や相方(パートナー)の進行状況、あるいは他の同じチーム内の進行状況(それぞれの各VIP到達時刻や金券獲得権利、実際の獲得金券額、割りこまの取得状況、場合によっては位置情報など)、あるいは競合者の進行状況がわかり、メンバー自らがその状況に応じた対応を行い、緻密でダイナミックな行動ができるようになると同時に、業績算出も正確に迅速に、かつリアルタイムに算出できる。また、それらの情報をチームリーダも享受できるようにすると必要に応じて的確な指示などの情報をメンバーに送ったり、特定のメンバーから情報を入手して他のメンバーに伝えるなどし、より業績をあげるための方策を実行するようにもできる。
さらに、本実施例の教育セットを用いた仕事モデルの他の構成として、スタートからゴールまでの間にチームメンバーが集まってミーティングをするミーティングポイント(MP)を設けても良い。
図34は、このモデルの構成例を示す。
図34に示すように、コース全体を、スタート−1IP−2VIP−3IP−4IP−5MP−6IP−7IP−8VIP−9IP−ゴールとする。この場合の一例として、こま図はA,B,C,Dの4種があり、チームメンバーが8人の場合、4人づつの2つのグループに分け(イ−グループとロ−グループと便宜上呼ぶ)、その4人がそれぞれ各自A−Dタイプのこま図を使い、各グループから一人ずつの2人のパートナー組を組むとする。そして、スタートから1IP、2VIP、3IP、4IP、5MPまでの道程で、各自がコース上を進行しながらこま図が有する仕組みを実体験しデータを収集しながら”ある程度“理解する。
そして、MPでチームメンバーが集まり、まず、イ−グループとロ−グループに分かれて、それぞれのグループに分かれて、仕組みに関する知識を整理し、仕組みを“ある程度に”解明する。それの結果を持ちよりグループ同士で評価し合い、またそれに基づきさらに調査や実験を実施し、チームとしての結論を導出する。その結果に基づきコース進行上の際の対策(行動指針)を立て、MPを出発し、6IP−ゴールを進行する。このように、本構成では、仕事遂行する過程で(仕事を実行しながら)、対象(仕事)の仕組みを明らかにし、さらに、その明らかになった対象の仕組みを用いて仕事を遂行するという構成をとっている。さらに、その進め方として、個人で実施する仕事、パートナー組で実施する仕事に加え、コース進行上でグループで実施する仕事、チーム全体で実施する仕事を組入れることにより、より実際の仕事を象徴的に表す現することができ、特に上級者の仕事モデルとして好適のものになる。なお、このように個人→全体へと進める仕事の進め方は、本実施例者が別途発明した情報処理方法(個全システム)である。
この際、例えばMPでの集合時間を予め定めておき、各個人のこの集合時間への遅延時間を個人ごとの時間コストとして計上したり、ミーティング時間をチームのミーティングコストとして計上したりすることも効果的である。また、MPでのミーティングのリードの実体験は仕事上でのリードの手法の習得や基本的行動の鍛錬に好適であり、リーダの研修としてもより高度な結果が得られる。すなわち、このような仕事モデルはナレッジマネージメントを、メンバーとして、さらにリーダとして実体験できるトレーニングモデルとして特に有効である。この時、上記の情報技術機器を駆使し、各自の進行状況に関する情報をなるべく同時刻的にメンバー及び各リーダが入手時できるようにすることはさらに効果的である。
前記の実施例では、パートナー組の一人一人が単独で仕事を行いその結果をパートナーがその仕事中に用いるという仕組みになっていたが、本実施例の教育セット及びそれを用いた仕事モデルの他の形態として、例えば、チーム内の所定メンバーが、同一チーム内の他のメンバーの仕事の少なくとも一部に関する指示書、設計図面、仕事の進め方といった仕事に関する情報を作成し、それを用いて上記他のメンバーが仕事を遂行するという構成としても良い。
以下、この構成の実施例を説明する。すなわち、この場合、進行コースの全体は、予め主催者側(例えば「事務局」)で作成されている。メンバーが行う仕事は、大きく2つの段階で構成されており、各段階を、それぞれ計画プロセス、実行プロセスと呼ぶ。
まず、計画プロセスでは、各実行者は、事務局で作成された進行コース元図(国土地理院作成の地図のようにできるだけ分かりやすいものが好ましい)を受け取り、同じチーム内のメンバーとは独立して(情報交換をしない状態で)、その進行コースを、こま図として作成する。
図35Aは、この時、使用される「こま図白紙シート」の例を示す。
これは、例えば図2に示されるようなこま図において、各升目に何も書かれていないものである。そして、例えば、図13−17に示されるようなこま図の要素構成を各交差点に対応させたシールを用意しておき(これをこま図要素構成シールと呼ぶ)、それらを上記の白紙こま図シートに添付すること、並びに、独自に何らかの文字や記号を記載することによりこま図を作成する。また、図35Bに示す白紙割こまシートを用いて割りこまを同時に作成しまたは、適切に選択する。このとき、要素こま図、要素構成シールそれぞれに対してコストを設定し、また、独自に何らかの文字や記号を記載した場合はその一つ一つにコストを設定する等して、情報の内容と量に応じてコストを設定するようにする。そして、なるべく少ない情報量でこま図または、割りこまを作成する。なお、こま図や割りこまはすべての進行コースのものを実行者が作成するのではなく、事務局が予め部分的に作成しておき、それを補うように実行者は部分的に作成してもよいのは言うまでも無い。
実行プロセスではでは、同一チーム内の他のメンバーが、先のメンバーが上記のようにして作成したこま図または割りこまに基づきそのコースを進行する。その際、先の実施例と同様に、他チームのメンバーと競合するように、コース途中にVIPを設置し、先にそこに到着した方が金券を獲得するようにする。一方、支出は作成したこま図と割りこまの情報コストならびに実行プロセスにおける時間コストとなる。
この実施例の教育セットとこれを用いた仕事モデルでは、チーム内での情報に対する各メンバーの認識のレベルが正確にチーム内で共有化されていることが、高い業績をあげるために必要となるため、この点の訓練に非常に適した仕事モデルといえる。さらに、本実施例の場合、これを使う人、及び、作成するコース情報のそれぞれの仕組みを把握し、これらを最も良い状態で結び付けることをモデル化しているため、仕事の本質である複数の対象の結合の訓練に対して特に有効である。
また、この形態と先に述べたMPを有した仕事モデルとを組み合わせたものも有効であることは言うまでも無い。
なお、本実施例の教育セット及びそれを用いた仕事モデルにおいて、チーム対抗で、屋外コースを進行して実行する場合、上記コースの進行形態は、徒歩に限らず、バスや列車、ケーブルカー、船舶等の利用が組み込まれているものであっても差し支えない。
また、上記のような教育セット及びそれを用いた仕事モデルは、研修に用いることができる。以下、これの実施例について述べる。
まず、無作為に抽出した23歳−41歳の男女からなる被験者を80人集め、これを40人ずつの2つのグループに分けた。そして、片方のグループに対し、本実施例の上記仕事モデルを適用した研修を、他方のグループに対し、対照例として、用いる仕事モデルとして、従来の歩行ラリーを適用した研修を、それぞれ2回ずつ行った。
図36は、前記研修法の全体のスケジュールを示す。
すなわち、研修に先立って各実行者に説明書を送付し、また前日にリーダーミーティングを開くという準備を行った。そして、研修第1日目に第1回目の仕事モデルを実行し、その後、これに基づいて、仕事モデルに関する研究を行い、研修第3日目に第2回目の仕事モデルを実施した。さらに、第4日目の最初に仕事モデルに関する質問と回答を行った。ここまでが研修の第1部である。そして、それ以降の第2部では、第1部に関する研究を行った。本研修は、多くを説明することなしにし仕事モデルを実施し、その後にその体験を自ら研究するという形態をとっているため、より深い理解が深まるという特徴を有している。
研修を受けた各個人に対し、研修前2週間の間における、組織内での会議または集会、面談等の場における発言、質問、報告の回数P1を計測した。また、研修後2週間の間における、同様の回数P2を計測し、回数の増加分ΔP(=P2−P1)を、研修による改善効果の指標とした。なお、各被験者のデータから、グループごとの平均値として、上記3つの値を求めて下記の表4に示した。なお、個人および組織の知的創造、知識、能力と、会議、集会、あるいは面談といった場における発言、質問、報告の回数には、明らかな相関関係があることがわかっており、上記ΔPを研修による改善効果の指標とするのは妥当である。
上記の結果から、本実施例の実施例によれば、短期間で効率的に、低いコストで仕事の原体験をさせることができ、その結果、個人および組織の知的創造性、知識、能力を同時に大きく向上させることができることがわかった。
なお、本実施例では、図36に示すような日程の場合について述べたが、一泊二日の日程(例えば、まず仕事モデル説明書を事前配布しておき、当日朝に簡単にチームで仕事モデルを研究した後に、直ちに一回目の仕事モデルを実施し、その後仕事モデルの研究を行い、翌日の午後に2回目の仕事モデルを実行し、その後にそれまでの体験を研究する)としてももちろん良い。また、第1部の実行と第2部の実行とを離れた日程で行ってもよい。さらに、この研修方法を企業等の研修全体計画に折り込み、その組織の職制や経験年度により層別して複数回実行することはさらに効果的である。
なお、上記の実施例における第1部の最後の部分(仕事モデルについての質問と回答)、あるいは、第2部は、コンピュータネットワークを用いた方法で行っても良い。
なお、本実施例の教育セットを用いた仕事モデルの実行は、例えば、30−300名程度が適当な人数で、これらの実行者は、10人前後のチームに分割されるのが良い。
また、本実施例の教育セットを用いた仕事モデルの業績を当該研修の参加費に反映させることも実行者の仕事モデルへの取り組みを真剣にさせることに効果が大きい。例えば、参加費として最初に基本料金を納入させるが、仕事モデルの実行結果である業績によって、所定の金額を返却したり、あるいは追加徴収したり、追加徴収金額を変えたりすることができる。
さて、上記に述べたような本実施例の教育セットは、それを実際の仕事を推進する際のフォーマットとして用い、実際の業務の効率を向上させる方法に応用できる。以下、本実施例の教育セットを用いた業務効率向上方法の実施例について説明する。以下は、工場の生産係りの業務効率向上の例である。
図37は、前記実施例の概要を示す。
本工場は第1生産係り、と、第2生産係り、管理部門の3つからなっており、第1生産係りは、図37に示すように、作業者A−1、-2,-3、作業者B−1,-2,-3、作業者C−1,-2,-3、作業者D−1,-2,-3の計12人で構成され、製品A、B、C、Dの4品種を生産している。そして、各品種ごとに3人ずつの3交代勤務で生産を行っている。また、第2生産係りも同様に12人で構成され、製品E、F、G、Iの4品種を、同様に、各品種ごとに3人ずつの3交代勤務で生産を行っている。仕事の進行を示す情報として、こま図105a、b、cに相当する仕事進行情報が管理部門で作成され、それぞれ第1、第2生産係りの全員に配布される。実際の実行は各班(A−1、B−1、C−1、D−1からなる第1班、以下同様に第2、第3版)の4人ずつで同時進行する。
図38は、前記仕事進行情報又はこま図の具体的内容を示す。
同図に示すように、こま図201には、(1)スタートから始まり前の作業者の生産数の情報収集、(2)前の作業者の生産品の規格不適合品の情報入手、(3)現在の製造設備状況に関する情報集数、(4)原材料の在庫、受入検査状況の情報入手、(5)当該製品の生産計画に関する当初計画の見直し、等の各種生産開始までに必要な各種情報の入手のプロセスが手順ごとに記載されている。そして、それらに続き、例えば、(6)生産(作業)開始となり(図に示していない)、それらに引き続き、各作業者の担当製品の(16)検査、(17)梱包、(18)出荷プロセスがあり、さらに、(19)それらの結果の状況の入力と報告の後に、(20)ゴールの各プロセスが記載されている。
この際、各作業者は、担当する製品の他の作業者が使う情報を「割こま」として入手し、それを同じ製品の担当する別の作業者に渡す。例えば、図37に示すように、作業者A−1は、月曜の作業中に、作業者A−3が後ほど使う、割りこま202を入手し、これを作業者A−3へ渡す。この割りこまは、例えば、図39に示す割こま202であり、「今週の原材料の発注・入荷状況に関する情報」(こま図(4)と(5)の間で使う)という内容である。さらに、割こま203として、「来週の製品出荷用のトラックの手配状況」(こま図(17)と(18)の間で使う)を入手する。また例えば、作業者A−2は作業者A−1の、また、作業者A−3は作業者A−2が使用する上記情報を入手し、それぞれ各作業者A−1、A−2へ渡す。
このように、各作業者はそれぞれ他の交代勤務者が使う情報を入手しながら、また他が入手した情報を使用しながら業務を進行する。そして、一週間の一連の作業の集計として、客先と契約した品種、数量、良品数、納期の的確さを第1生産係りと第2生産係りとの間で競い合い、結果の良い方に特別報酬を支給する方式とした。
上記のような構成で、本実施例の仕事モデルを仕事推進フォーマットとして用いて、生産活動を180日間続けた。その結果、第1、第2生産係りの月当たりの平均生産能力がそれぞれ以前の1.6倍、1.3倍となり、さらに、規格不適合品の割合も以前の約1/5に減少し、かつ、客先への製品送付間違いや納期遅れの件数は約1/4となり、結果として、生産性が非常に向上した。これを金額で換算すると、4億5千万円となり、対利益額として27%の改善となった。
このように、本実施例の教育セットを仕事推進フォーマットとして用いると、生産性が非常に向上する。
また、本実施例の教育セットであるこま図や割りこま、並びに進行コースをコンピュータ上に作成し、実行者は、コンピュータ上でコースを進行し、また、所定の割りこまを入手し、それを同じチームの他のメンバーにコンピュータ上で渡し、交換し、競合チームと競い合いながらゴールまで進行する方法によっても同様の効果が得られることはいうまでもない。この場合、上記研修の方法に関する実施例における第2部は実行者が集合した講義やミーティングによることもできるし、一箇所に集合することなくインターネット上で行うことも可能であることはいうまでもない。
以上のように、本実施例の教育セットは、一連の作業工程を実行するための作業指針又は作業案内情報から一部の情報を除いた作業指針又は作業案内情報を表示するこま図(105a、b、c)と、前記こま図において除かれた情報を表示する割こま(106a、b、c)と、を有する。
また、この教育セットを用いた仕事モデルは、チーム内の所定メンバーが仕事を遂行した結果の少なくとも一部を用いて同一チーム内の所定の他のメンバーが仕事を遂行する、という仕組みを具備し、その結果が業績となって現れるという、仕事の原体験が可能となっている。
本実施例の教育セット及びそれを用いた仕事モデルは、企業等の構成員が実施することはもちろん、組合、地方自治体、各種公共団体の構成員、あるいは各種教育機関、学校などの構成員、学生等が実施しても大きな効果が得られることは言うまでもない。
したがって、この教育セットによれば、従来のビジネス・ゲーム、オリエンテーリング、歩行ラリー等の研修では得ることのできない、個人としての能力と組織としての知的創造性、知識、能力の相乗的な向上を期待することができる。そして、上記仕事モデルを用いた研修方法によれば、実行者に非常に有意義な体験を与えることができる。
また、予め不十分な情報を与えられた上で、その情報の意味を解読しながら、また補足情報を獲得しながら特殊な歩行実行を行う仕事モデルによれば、より複雑な課題が設定されるため、より一層知的レベルの高い、優れた仕事原体験を行わせることができる。また、この教育セットは、研修方法に用いる他、例え採用試験、昇進試験、考課などに用いることもできる。