JP4785313B2 - 弾性複合構造 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は、弾性複合構造に関し、該弾性複合構造は２次元または３次元の製品の製造において、可撓性があり、しなやかな薄膜としての使用に向けられ、特に切断および／または穿刺などに対して機械的保護を提供することに向けられている。上述の種類の弾性複合構造は、たとえば、多くの他の状況とともに保健サービスおよびヘルスケア産業に関する適用のための繊維製品において利用可能である。
【０００２】
先行技術に関して、たとえば欧州特許公開公報０，３１８，４１５号、米国特許公報５，２３０，９３７号、米国特許公報３，９７４，３２０号、米国特許公報５，４４７，５９４号、米国特許公報４，３３８，３７０号、および特開平６−２７８２４７号公報があり、これらの公報は複数層の材料から成る織布または不織布に基づく。上述の公報のすべては、とりわけ、歪みまたは伸び特性の不足によって、それらの機能に関して不十分であり、したがって、特に弾性を必要とする製品の製造には適用できない。この理由は、このような製品に用いられる織布または不織布構造が、しなやかな、または可撓性のある構造ではあるが、実際には伸縮性のない構造を提供できるだけであるからである。上述の構造はまた、特開昭６２−２９７３３３号公報、特開平１１−１７２８６０号公報、および特開平１−９６２２７に開示される解決手段に主に適用され、該公報のすべてには、必ずしも強化材としての、所謂織布または不織布構造ではなく、たとえば炭素ファイバ系などが設けられる。議論された解決手段は、しなやかな構造を製造することだけが可能であるので、これらの解決手段でも２次元または３次元の弾力性のある製品の製造を可能にはできない。全ての上述の解決手段は、一様に高い可撓性のある構造を製造することは可能かもしれないが、弾性によって必要とされるような１軸、無論のこと２軸、あるいは、３軸方向に引き伸ばし可能であろう構造を製造することはできない。
【０００３】
さらに先行技術は、たとえば、国際特許公開公報ＷＯ９２／００３４３号または特開昭６０−２５９６８２号公報で記載されるように、とりわけ織布ベース補強構造が設けられる構造の実施を開示する。最良の実施においてさえ、これらの解決手段によって与えられる歪みは３６％よりも小さく、このことは特定の弾性を必要とする製品の製造において、このような解決手段の有用性を有意に制限する。不十分な歪み特性および高い弾性係数は、関連して用いられる織布構造が従来技術と矛盾がないという事実を結果として生じ、この事実に基づく。したがって、実際の適用において、特にヘルスケア産業の需要に関しては、弾性の最低限の要求はもちろん約１００％であるので、充分な弾性は与えられていない。
【０００４】
弾性複合構造をともなう本発明の目的は、上述の問題を克服する決定的な改良を提供することであり、したがって現在の技術の現状を実質的に発展させることである。この目的を成し遂げるために、本発明の弾性複合構造は、それに向けられた２つの独立項の特徴項に記載されることによって主として特徴づけられる。
【０００５】
本発明の弾性複合構造によって得られる最も重要な利益は、その構造および製造を容易にすることを含み、このことは非常に高い弾性を有し、さらに特に穿刺および／または切断などに対する充分に良好な機械的強度特性が与えられる製品の製造を可能にする。本発明の弾性複合構造は、多種多様な構造で任意に実現可能であり、その中に含まれる強化材系は、第一に混繊糸から成る織布、織物または編物構造として、または、積層された薄片から成る配向性薄片強化構造として構成可能である。好適な実施形態において、たとえば特に弾性保護母材で保護された織布、織物または編物構造は、剛性を有する繊維と弾性を有するポリマ繊維とで構成された混繊糸を用い、こうして織布、織物または編物構造における摩擦点間の弾性源を最大化させるという効果を奏する。本発明の構造はまた、１または複数の硬質ポリマ層を用いることによって実現可能であり、該硬質ポリマ層には弾性構造を構成するエラストマ母材が一体的に設けられる。さらに、所謂組合せ構造として、組合せ構造に、織布、織物または編物構造層と積層構造強化材層とをエラストマ母材とともに与えることによって、本発明を利用することができる。
【０００６】
したがって、本発明の弾性複合構造は解決手段を提供するが、該解決手段は従来の解決手段とは本質的にかつ好意的に見ても異なっており、非常に厳しい条件、たとえばそのような条件として、病院衛生の面で着用される衣服においてでさえ、別個のものを相互に重ねて多層にする解決手段なしで適用可能である。
【０００７】
本発明は、添付の図面を参照して、詳細に説明されるであろう。
本発明は、弾性複合構造に関し、該弾性複合構造は、２次元または３次元製品の製造において、可撓性を有し、しなやかな薄膜構造としての使用が企図され、特に、切断および／または穿刺などに対する機械的保護を与えることが企図される。前記複合構造は、第一に１または複数の性質の異なったＰＵＲ（ポリウエタン樹脂）ベース、ＰＵＤ（分散ポリウエタン）ベース、ＳＩ（シリコーン）ベースのエラストマ材料などで構成されるエラストマ系１と、第二に１または複数の可撓性混繊糸から成る織布、織物または編物構造２ａ、および／または積層された薄片ｙから成る配向性薄片強化材構造２ｃなどの機械的耐久性のある強化材系２とを含む。
【０００８】
特に好適な実施形態において、織布構造、または、図１ａおよび図１ｂの例に示され、複合構造の強化材系に含まれる編物構造２のタイプが、特に、織布、織物または編物構造２，２ａに存在する摩擦点ｆｐ間の弾性源ｘの最大化のために、液晶ポリマ（ＬＣＰ）およびエラステイン繊維などの、剛性を有する繊維と弾性を有するポリマ繊維Ｌ１，Ｌ２とで構成された混繊糸Ｌで製造される。この方法では、摩擦点間で、たとえば５００％の歪みを達成することができる。混繊糸Ｌはまた、たとえば熱を与えることによって弛緩させることができ、これによってその糸状のマルチフィラメント構造（threaded multifilament structure）は、その繊維の移動をより効果的に保持し、編目に特定の線形弾性を与え、該線形弾性は弛緩していない糸で得られる弾性よりもより良好である。混繊糸の製造は、様々な根本的な特性のために、有機および無機繊維、モノフィラメントまたはマルチフィラメントなどの様々な繊維材料および繊維系を用いることによって達成することができる。
【０００９】
混繊糸Ｌによって構成される編物構造は、被覆に先立って「過剰な弾性」を有していてもよいが、編物は被覆工程において幾分かの弾性を失うので、混繊糸および編物には、上述の方法で、できるだけ多くの弾性源が設けられることが好ましい。もちろん、混繊糸は、織布または織物などを製造するために用いられてもよい。
【００１０】
好適な適用において、図２ａ〜図２ｃに示される実施形態に関して、複合構造の強化材系に含まれる織布２；２ａ’または編物構造２ａは、弾性を有する軟質エラストマ母材２ｂによって部分的にまたは全体的に予め被覆／含浸され、該母材は、１００％の歪みで１．０Ｍｐａ以下の弾性係数を有し、特に混繊糸Ｌおよび織布、織物または編物構造２；２ａの摩擦点ｆｐを保護し、または軟質エラストマ母材２；２ｂ上に複合構造の実際の表面層１を形成することによって、織布、織物または編物構造の最適な弾性特性を保持する。
【００１１】
さらなる好適な実施形態において、織布２；２ａ’、織物または編物構造２ａのエラストマ母材２；２ｂは、多成分原理に基づいて、第一に、織布、織物または編物構造を第１成分で局部的にまたは全体的に前処理し、第二に、織布、織物または編物構造が第２及び第３成分を含む複数成分のブレンドを用いて、浸漬および／または噴霧などによって複数成分のブレンドで被覆されることによって製造され、これによって被覆工程中、第２成分が第１成分と反応して、織布、織物または編物構造２；２ａの周囲／上に軟質弾性母材２；２ｂを生成し、第３成分が軟質エラストマ母材上に機械的耐久性のある表面層１を生成する。
【００１２】
この文脈において、第１成分は、たとえばプレポリマを含んでいてもよく、第２成分は、架橋剤、鎖充填剤／形成剤（chain extender/former）であってもよく、さらに第３成分は、中和された不活性ポリマ／エラストマであってもよい。
【００１３】
もちろん、上述のタイプの複合構造は、上述のようにコーティングすることによって織布または織物などから作成可能である。複合構造は、母材中に好適には５〜９５体積％の範囲で強化材を含有する。最適化された構造によれば、構造の縦横の両方向に同様の弾性特性を達成することができる。このようにして、たとえ１００％〜５００％の範囲を超えたとしても、構造の弾性特性を変更することができる。
【００１４】
一方、本発明は、弾性複合構造に関し、該弾性複合構造は、２次元または、３次元製品の製造において、可撓性を有し、しなやかな薄膜構造としての使用が企図され、切断および／または穿刺などに対して機械的に強化する強化材系２を含む。本発明の複合構造用強化材系２は、薄片強化材系２ｃとして作成され、該薄片強化材系は硬質の有機および／または無機材料から成り、１または複数の硬質ポリマ層として用意される薄片ｙを有し、該硬質ポリマ層は弾性構造に一体的な構造を提供するように構成されたエラストマ母材２；２ｂを含む。この文脈において、特に図３ａ〜３ｃに参照されるが、これらの図のすべては、実際の表面構造１も含む。
【００１５】
さらに好適な実施形態において、本発明の複合構造用薄片強化材は、硬質の有機または無機材料から成り、該材料は、好ましくは２ｍｍ²よりも大きい表面積と、０．０２〜１ｍｍの範囲の厚みを有し、好ましくは１または複数の硬質ポリマ層を積層し、積層構造に、好ましくは、極めて薄く、密集した不織布または、織布強化材などの追加の強化材をも与えることによって、製造される。
【００１６】
このタイプの構成のための好適な適用は、たとえば以下の解決手段を含む。該解決手段において、薄片強化材系２；２ｃは、一体的かつ総合的な機械的保護層として設計され、薄片強化材系の１または複数の構造的な層は、
エラストマコーティング１の表面に、機械的配向におよび／または手作業による配向を有する薄片ｙを施すことによって、
エラストマコーティング１の表面に、軟質エラストマコーティング２；２ｂとともに噴霧することによって静電気的に薄片ｙを施すことによって、
エラストマ１の表面に自由な配向を有する薄片ｙを施すことによって、または、
その次のエラストマコーティング１の前に所望のタイプの配向層２ｃ；２ｃ”を構成するように、所望の通りに薄片を配置するように、薄片ｙに静電気または圧力を付与する（本適用は特に図５ａに示される）ことによって、
達成される。
【００１７】
特に上述されたことに言及すると、薄片ｙの配向は、最も好ましくは、薄片ｙが配向パターンとして、たとえば図３ａあるいは図３ｂで示されるような、所謂うろこ状に重なり合った構造などを用いて、所望の配向に方向付けられるように、または、たとえば図３ｃで示されるような自由配向２ｃ；２ｃ’に方向付けられるように、静電気的に行われる。
【００１８】
特に図４ａ〜４ｃに示される好適な実施形態において、複合構造に含まれる強化材系２は、強化材を組合せたもので作成され、織布、織物および編物構造２ａと薄片強化層２ｃとを含む。
【００１９】
さらなる好適な適用として、薄片強化層材２ｃは、本実施形態において、投錨技術によって織布、織物または編物構造２ａに張り付けられ、薄片強化材は、第１成分で、織布、織物または編物構造は、総合的にまたは局部的に、第２成分でそれぞれ処理され、織布、織物または編物構造と薄片強化材との間の所望の位置において所望の接着を与える。
【００２０】
特に図５ｂに示される構造に関して、薄片強化材系２ｃ；２ｃ’は、多成分原理などの適用によって、織布、織物または編物構造層の弾性を抑制しないようにエラストマコーティング１に結合される織布、織物または編物構造層２ａの上に設けられ、薄片強化材は、第３成分で処理され、該第３成分は織布、織物または編物構造２ａとの接着、またはそれに用いられる糸Ｌとの接着を与えない。
【００２１】
本発明は、以下の例に開示されるように、上述され、示された適用に限定さず、種々の変形例に適用可能であることは明らかである。したがって、図２ａ〜２ｃに特に示されるような切断防止構造とともに、図３ａ〜３ｃに示されるような穿刺防止構造、または、図４ａ〜４ｃに示されるような切断穿刺防止構造は、もちろん、たとえば、このような構造が溝パターンまたは結節パターンなどのある種の表面布目であらかじめ設計されるような、多様な製造技術の適用によって作成されてもよい。また、静電気的コーティングなどの適切な製造技術の使用は、手袋などの完全に３次元の製品の作成を可能にし、このことはさらに管状形成物の代わりに、製造工程が長手方向に変化する断面積を有する構造を製造するために設定されるような、所謂パーフェクトフィットを与える。さらに図２ａまたは図２ｂに示されるこの種の弾性原理は、織布布目構造、織物布目構造またはウェブ布目構造の場合においても、撚り混繊糸を用いることによって満足されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図１】 図１ａおよび図１ｂは、特に、編物強化材系に関する、本発明の弾性複合構造のための好適な原理を示す。
【図２】 図２ａ〜図２ｃは、特に、織布、織物または編物構造強化材系に関する、本発明の弾性複合構造のための任意の構造を示す。
【図３】 図３ａ〜図３ｃは、特に、薄片強化材系に関する、本発明の弾性複合構造のためのさらに好適な任意の解決手段を示す。
【図４】 図４〜図４ｄは、所謂組合せ構造の手法における、本発明の弾性複合構造のためのさらに好適な実施形態を示す。
【図５】 図５ａおよび図５ｂは、ある種の製造技術によって製造される、本発明の弾性複合構造のためのさらに好適な構造を示す。

Claims (8)

1. ２次元または３次元製品の製造において、可撓性を有し、しなやかな薄膜構造としての使用が企図され、切断および／または穿刺に対する機械的保護を与えることが企図された弾性複合構造において、前記複合構造は、第一に１または複数の性質の異なったＰＵＲ（ポリウレタン樹脂）ベース、ＰＵＤ（分散ポリウレタン）ベース、ＳＩ（シリコーン）ベースのエラストマ材料で構成されるエラストマ系（elastomer system）（１）と、第二に１または複数の可撓性混繊糸から成る編物構造（２ａ）の機械的耐久性のある強化材系（reinforcer system）（２）とを含む弾性複合構造であり、
   前記複合構造の強化材系に含まれる編物構造（２，２ａ）は、編物構造（２，２ａ）に存在する糸と糸との接触点間の弾性の最大化のために、剛性を有する繊維と弾性を有するポリマ繊維（Ｌ１，Ｌ２）とで構成された混繊糸（Ｌ）で製造され、
   前記複合構造の強化材系に含まれる編物構造（２，２ａ）は、弾性を有する軟質エラストマ母材（２；２ｂ）によって部分的にまたは全体的に予め被覆／含浸され、該母材は混繊糸（Ｌ）および編物構造（２；２ａ）の糸と糸との接触点を保護することによって、編物構造の弾性特性を保持することを特徴とする複合構造。
2. 編物構造のエラストマ母材（２；２ｂ）は、第一に、編物構造を第１成分で局部的にまたは全体的に前処理し、第二に、編物構造が第２及び第３成分を含む複数成分のブレンドを用いて、浸漬および／または噴霧によって複数成分のブレンドで被覆されることによって製造され、これによって被覆工程中、第２成分が第１成分と反応して、編物構造（２；２ａ）の周囲／上に軟質弾性母材（２；２ｂ）を生成し、第３成分が軟質エラストマ母材上に機械的耐久性のある表面層（１）を生成することを特徴とする請求項１記載の複合構造であって、
   第１成分はプレポリマであり、第２成分は架橋剤、鎖伸長／形成剤であり、第３成分は中和された不活性ポリマ／エラストマである複合構造。
3. 前記複合構造に含まれる強化材系（２）は、強化材を組み合せたものによって構成され、可撓性を有する混繊糸から成る編物構造（２ａ）と、積層された薄片（ｙ）から成る配向性薄片強化材構造（２ｃ）とを含むことを特徴とする請求項１または２記載の複合構造。
4. 前記薄片強化材系（２ｃ）は有機および／または無機材料から成り、薄片（ｙ）は１または複数のポリマ層として設けられ、該ポリマ層は弾性構造に一体的な構造を与えるように適合されたエラストマ母材（２：２ｂ）を含むことを特徴とする請求項３記載の複合構造。
5. 薄片強化材系（２；２ｃ）は、一体的かつ総合的な機械的保護層として設計され、薄片強化材系の１または複数の構造的な層は、
   エラストマコーティング（１）の表面に、機械的配向および／または手作業による配向を有する薄片（ｙ）を施すことによって、
   エラストマコーティング（１）の表面に、軟質エラストマコーティング（２；２ｂ）とともに噴霧することによって静電気的に薄片（ｙ）を施すことによって、
   エラストマ（１）の表面に自由な配向を有する薄片（ｙ）を施すことによって、
   または、
   次のエラストマコーティング（１）の前に、所望のタイプの配向層（２ｃ；２ｃ”）を構成するように、所望の通りに薄片を配置するように、薄片（ｙ）に静電気または圧力を付与することによって、達成されることを特徴とする請求項３または４記載の複合構造。
6. 薄片（ｙ）の配向は、薄片（ｙ）が配向パターンとして、所謂うろこ状に重なり合った構造を用いて、所望の配向に方向付けられるように、または自由配向（２ｃ’）に方向付けられるように、静電気的に行われることを特徴とする請求項５記載の複合構造。
7. 薄片強化層（２ｃ）は、投錨技術によって編物構造（２ａ）に張り付けられ、薄片強化材は、第１成分で、編物構造は、総合的にまたは局部的に第２成分でそれぞれ処理され、編物構造と薄片強化材との間の所望の位置において所望の接着を与えることを特徴とする請求項３〜６のうちのいずれかに記載の複合構造であって、
   第１成分はプレポリマであり、第２成分は架橋剤、鎖伸長／形成剤である複合構造。
8. 薄片強化材系（２ｃ）は、編物構造層の弾性を抑制しないように、編物構造層（２ａ）の上に設けられ、薄片強化材は、第３成分で処理され、該第３成分は編物構造（２ａ）との接着、またはそれに用いられる糸（Ｌ）との接着を与えないことを特徴とする請求項７記載の複合構造であって、第３成分は中和された不活性ポリマ／エラストマである複合構造。

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