本発明に用いられる(A)ポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常30モル%以下の含有量とするのが好ましく、10モル%以下であることが好ましい。
本発明において、特に高い耐熱性を有する樹脂組成物を得るためには、(A)ポリ乳酸樹脂として乳酸成分の光学純度が高いものを用いることが好ましい。(A)ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが更に好ましく、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることが更に好ましい。
(A)ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
(A)ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
(A)ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に使用する(B)特定のポリアセタール樹脂は(b1)ポリアセタール100重量部に対して、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩0.001〜10重量部を添加してなることを特徴とするものである。
(b1)ポリアセタールは、オキシメチレン単独重合体、および/または、主としてオキシメチレン単位からなり、ポリマー主鎖中に少なくとも1種の炭素数2〜8のオキシアルキレン単位を含有するオキシメチレン系共重合体である。(b1)ポリアセタールは、耐熱性と機械的強度および衝撃特性のバランスの観点からオキシメチレン系共重合体であることが好ましい。
オキシメチレン単独重合体は、オキシメチレン単位からなり、重合体の両末端がエステルまたはエーテル基により封鎖された重合体である。例えば、実質的に無水のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別したのち、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱して末端をアセチル化することにより、オキシメチレン単独重合体を調製することができる。
オキシメチレン系共重合体は、オキシメチレンモノマー単位からなるポリマー鎖中にオキシアルキレンモノマー単位がランダムに挿入され、重合体の両末端がエステルまたはエーテル基により封鎖された重合体である。例えば、実質的に無水のトリオキサン、あるいは、テトラオキサンのようなホルムアルデヒドの環状オリゴマーとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−プロパンジオールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカン等の分子中に炭素数2以上のオキシアルキレン単位を有する環状エーテルとをシクロヘキサンやベンゼンのような有機溶媒中に溶解し、あるいは、懸濁したのち、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートのようなルイス酸触媒を添加して重合し、不安定末端を分解除去することにより安定化(安定化工程)したオキシメチレン系共重合体を調製することができる。あるいは、溶媒を全く使用せずにセルフクリーニング型撹拌機の中へトリオキサンと、共重合成分および触媒の予備混合物とを導入して塊状重合することによりオキシメチレン系共重合体を調製することもできる。所望により、この重合体から洗浄によって重合触媒を除去、あるいは、失活剤によって重合触媒を失活させたのち、不安定末端を分解除去することにより安定化して製造することもできる。重合触媒の失活剤としては分子量400以上のヒンダードアミン系化合物が挙げられ、中でも後述する一般式(II)で表されるヒンダードアミン系化合物が好ましく、特にビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケートが好ましい。
オキシメチレン系共重合体中のオキシアルキレンコモノマー単位の含有量は、オキシメチレンモノマー単位100モル当たり0.1〜10モル、好ましくは0.1〜7モル、さらに好ましくは0.1〜5モルの範囲で選ばれる。オキシメチレン系共重合体の熱安定性および成形時の劣化による外観低下の抑制の観点からはオキシアルキレンコモノマー単位の含有量が上記下限以上であることが好ましく、成形時における結晶化度の改良の観点からはオキシアルキレンコモノマー単位の含有量が上記上限以下であることが好ましい。
特に好ましい(b1)ポリアセタールは、特開昭62−257922号公報に記載の方法、例えばトリオキサンと環状エーテルまたは環状ホルマールとを、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラートのようなルイス酸触媒の存在下、塊状重合したのち、一般式(II)で表わされるヒンダードアミン系化合物を添加して重合反応を停止させ、更に不安定末端を分解除去することで安定化した重合体である。
(ただし、式中R3は水素原子または炭素数1〜30の1価の有機残基を表わす。R4〜R7はそれぞれ炭素数1〜5のアルキル基を表わし、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。pは1以上の整数を表わし、R8はp価の有機残基を表わす。)
本発明の(B)特定のポリアセタール樹脂の組成は、(b1)ポリアセタール100重量部に対して、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の添加量を重量部で表すものとする。(b1)ポリアセタールは、上記の重合方法により重合し、触媒失活処理したポリアセタール重合体の粗ポリマーであるものとする。なお、(b1)ポリアセタールとして市販のポリアセタール樹脂を使用することもできる。その場合、市販のポリアセタール樹脂を100重量部とするものとする。
本発明で使用されるカルボン酸金属塩のカルボン酸は、特に好ましくは乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸であり、中でもリンゴ酸、クエン酸、酒石酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を用いることもできる。
また本発明の樹脂組成物において(b2)カルボン酸の金属塩を構成する金属としてはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、マンガン、鉄、銀であることが好ましく、アルカリ金属としては、リチウム、ルビジウム、セシウム、カリウム、ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、その中でもカリウム、ナトリウムがより好ましい。
本発明の樹脂組成物に使用する(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩としては、具体的には、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、酒石酸カルシウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム、および酒石酸カリウムナトリウムを好適な例として挙げることができる。より好ましくは、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、グリコール酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、酒石酸カルシウム、酒石酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、および酒石酸水素カリウムであり、特に乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、酒石酸ナトリウムを使用すると、機械的物性の低下がなく、色調および熱安定性に優れた(B)特定のポリアセタール樹脂を得ることができる。
(B)特定のポリアセタール樹脂において、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の添加量は、(b1)ポリアセタール100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜2重量部、特に好ましくは0.01〜1重量部である。0.001重量部未満では熱安定性の改善が不十分であり、10重量部を越えると(B)特定のポリアセタール樹脂の分解、発泡を引き起こし、安定性を損ねることになる。
本発明の(B)特定のポリアセタール樹脂の好ましい製造方法は、通常公知の方法が採用できるが、トリオキサンと環状エーテルとの混合物を三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物および三フッ化ホウ素と酸素原子またはイオウ原子を含む有機化合物との配位化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の重合触媒の存在下で、オキシメチレン単位を単独重合させてオキシメチレン単独重合体を製造する際、またはオキシメチレン単位と他のオキシアルキレン単位を共重合させて、オキシメチレン系共重合体を製造する際に、重合終了後に重合触媒を失活させて得られる粗ポリマー100重量部に対して(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を0.001〜10重量部添加し、100〜260℃の温度範囲で加熱する方法を挙げることができる。(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の添加後、100〜260℃の温度範囲で加熱すると、実使用時および/または成形加工時のホルムアルデヒド発生量低減の効果が高く、より好ましい。
オキシメチレン単独重合体またはオキシメチレン系共重合体の粗ポリマーに対して(b2)(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を添加する場合、混合機を用いて粗ポリマーの融点以下の温度にて混合した後、100〜260℃の温度範囲での加熱に供することがより好ましい。混合機を用いて粗ポリマーの融点以下の温度にて混合すると、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を、ポリオキシメチレン重合体の粗ポリマーに均一分散することができ好ましい。
ポリオキシメチレン重合体の粗ポリマーに対して(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を添加し、混合機を用いて混合した後、ベント付二軸押出機を用いて170〜260℃の温度範囲で加熱混練することがさらに好ましい。ベント付二軸押出機を用いて170〜260℃の温度範囲で加熱混練すると、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩が、ポリオキシメチレン樹脂に均一分散するとともに、ギ酸金属塩、副成するカルボン酸やその縮合物や自己縮合物、溶媒およびその他の揮発性不純物をポリオキシメチレン樹脂から取り除くことができ好ましい。
さらに、(B)特定のポリアセタール樹脂の製造方法は、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の分散性を向上させるために、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を溶媒と混合した混合物として添加する方法も好ましい。使用する溶媒は、水、ベンゼンが好ましく、中でも水が好ましい。なお溶媒の配合量は、(b1)ポリアセタール100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜3重量部である。溶媒の配合量は、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の分散性の観点からは上記下限以上であることが好ましく、加熱時の温度制御の観点からは上記上限以下であることが好ましい。
また、(B)特定のポリアセタール樹脂の製造方法は、重合工程の最終段階もしくは重合終了後の(b1)ポリアセタールに対して、ヒンダードアミン系化合物を重合触媒の失活剤および/または熱安定剤として添加することもできる。さらに、重合工程または安定化工程のいずれかで、ヒンダードフェノール系化合物、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を添加することもできる。または、(b1)ポリアセタールと(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩、任意成分としてヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物をペレット状、粉状、または粒状で混合し、このまま溶融加工してもよい。好ましい溶融加工方法は、バンバリーミキサー、ロール、押出機等により溶融混練する方法が採用できる。
また、一般に市販されているポリオキシメチレン樹脂に本発明で使用される(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩、任意成分としてヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物を上記と同様の方法で溶融混練する方法も採用できる。特に1軸ないしは2軸の押出機を使用して、150〜250℃の温度で溶融混練する方法も採用できる。
本発明の(B)特定のポリアセタール樹脂に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、オレフィン系重合体、オレフィン系重合体とビニル系重合体またはエーテル系重合体の1種または2種以上とのオレフィン系グラフト共重合体、オレフィン系単量体とアクリル系単量体またはメタクリル系単量体の1種または2種以上とのオレフィン系共重合体、シリコーン系重合体、フッ素系重合体などの摺動性改良剤、導電性カーボンブラック、炭素繊維、ポリエーテルエステル単位またはポリエーテル単位を含有するポリアミドエラストマー、帯電防止剤、酸化チタンおよび/またはカーボンブラックなどの着色剤、メラミンなどの熱安定剤、潤滑剤、無機充填材などを添加することができる。
本発明の樹脂組成物は、後述するように(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下1重量部以上と(B)特定のポリアセタール樹脂1重量部以上99重量部以下が相溶性配合物を形成し、それにより従来のポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂との相溶性配合物にはみられない独特の特性が得られ、成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量がきわめて少なく熱安定性に優れた樹脂組成物が得られることを特徴とするが、(A)ポリ乳酸と(B)特定のポリアセタール樹脂の配合組成によって特に効果を奏する特性が異なる。(A)ポリ乳酸と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超及び(B)特定のポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満、特に、(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下65重量部以上及び(B)特定のポリアセタール樹脂1重量部以上35重量部以下を配合してなる樹脂組成物においては、(A)ポリ乳酸樹脂の特性を改良する点で有用であり、本発明の組成物は特に成形性や耐熱性の改良に特に効果がある。また、この組成においては、(A)ポリ乳酸が有する特性を活かし、生分解性を伴ってもかまわない。
(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂60〜40重量部及び(B)特定のポリアセタール樹脂40〜60重量部を配合してなる樹脂組成物においては、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の特性をバランスよく併せ持った樹脂組成物が得られる。
(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂40重量部未満1重量部以上及び(B)特定のポリアセタール樹脂60重量部超99重量部以下を配合してなる樹脂組成物においては、(B)特定のポリアセタール樹脂の特性を改良することが可能であり、特に加工性や機械特性の改良に効果がある。
本発明の樹脂組成物は、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の相溶性配合物からなることを特徴とする。ここでいう「相溶性」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を説明するために用いられる。配合物の一方または両方が結晶相及び非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベル混合していることを意味する。
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。
相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の配合物でも、この方法を用いることができ、本発明の樹脂組成物では、樹脂組成物は(A)ポリ乳酸樹脂単独のガラス転移温度よりも低い温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、差動走査熱量計(DSC)で測定する方法、動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
しかしながら、(B)特定のポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、(B)特定のポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合、相溶性の判断としては、(B)特定のポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。(B)特定のポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合、(B)特定のポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下する。この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度で判断することができる。
例えば、Polymer 38(25),6135−6143(1997)には、脂肪族ポリエステルであるポリ(3−ヒドロキシブチレート)とポリメチレンオキサイド(ポリアセタール)のブレンドが非相溶性であることが報告されているが、この場合、DSCで測定した組成物中のポリアセタールの降温時の結晶化温度は、ポリアセタール単体の結晶化温度とほとんど変わらないことが示されている。一方、Polymer33(4),760−766(1992)には、ポリアセタールとポリビニルフェノールが相溶性であることが報告されているが、この場合、組成物中のポリアセタールの降温時の結晶化温度が、ポリアセタール単体の結晶化温度に比べて、低下することが示されている。
本発明の樹脂組成物では、樹脂組成物中の(B)特定のポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度が、(B)特定のポリアセタール樹脂単独の結晶化温度よりも低い温度を示す。好ましい結晶化温度の低下は組成によって異なる。そして、この結晶化温度は、用いる(A)ポリ乳酸樹脂の光学純度が高くなると、低下の程度が大きくなる傾向にある。
(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超及び(B)特定のポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満を配合する場合には、DSCにより降温速度20℃/分で測定した(B)特定のポリアセタール樹脂の結晶化温度の低下が5℃以上であることが好ましく、7℃以上であることがさらに好ましい。(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂60〜40重量部及び(B)特定のポリアセタール樹脂40〜60重量部を配合する場合には、DSCにより降温速度20℃/分で測定した(B)特定のポリアセタール樹脂の結晶化温度の低下は2℃以上であることが好ましく、4℃以上であることがさらに好ましい。(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂40重量部未満1重量部以上及び(B)特定のポリアセタール樹脂60重量部超99重量部以下を配合した場合には、DSCにより降温速度20℃/分で測定した(B)特定のポリアセタール樹脂の結晶化温度の低下は0.2℃以上であることが好ましく、0.5℃以上であることがさらに好ましい。
また、相溶性配合物からフィルムを作成する場合、光学的に透明なものであるのに対して、非相溶性の配合物から作成したフィルムは一般的に不透明である。この方法も、相溶性の判断として用いることができる。しかしながら、(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の配合物のように、両者が結晶性樹脂である場合には、どちらか一方の結晶化により不透明になる場合があるため、フィルムが不透明であるからといって、非相溶性であることを示しているわけではないが、本発明において、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量が比較的多い場合には、相溶性の判断として有効である。
例えば、本発明の樹脂組成物において、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量が多い領域特に60重量部超の場合では、溶融状態から0℃に急冷することにより、膜厚100μmで実質的に透明のフィルムを形成することができる。ここで「実質的に透明」とはフィルムの反対側がはっきりと見えることをいう。さらには、膜厚100μmで95%以上100%以下の光線透過率、10%以下0%以上のヘイズ値を有するフィルムを形成することができる。また、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量が少ない領域でも、特に60重量部以下でも、膜厚100μmで90%以上100%以下の光線透過率、50%以下0%以上のヘイズ値を有するフィルムを形成することができ、さらに低い温度に急冷することによって、(A)ポリ乳酸樹脂の含有量が少ない領域でも、実質的に透明のフィルムを得ることができる。
また、このようにして得られた実質的に透明なフィルムは、相溶化しているポリマー量が多いため、靭性に優れ、延伸などの後加工性に優れる特徴がある。また、同様のことは、繊維などの他の成形品にも当てはまる。
本発明に対して、本発明の目的を損なわない範囲で充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、天然繊維、有機繊維、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土など)、安定剤(ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物、多価アミン化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、ホスフェート系化合物など)、滑剤、離型剤(モンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミドなど)、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、アンチモン化合物)、染料および顔料を含む着色剤、核化剤、耐衝撃性改良剤、カルボキシル基反応性末端封鎖剤、リン酸エステル系可塑剤(リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステルや脂肪族や芳香族の縮合リン酸エステル)などを添加することができる。
本発明に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレートなど)、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン116及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドなど)、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、脂肪族ポリケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂など)および熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体など)などの少なくとも1種以上をさらに含有することができる。
本発明の組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば(A)ポリ乳酸樹脂、(B)特定のポリアセタール樹脂および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
本発明の樹脂組成物は、独特の特性を持つ相溶性の組成物であり、射出成形、や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、繊維、シートなどとして利用でき、フィルム、シートとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルム、シートとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として、織物、編物、不織布(スパンボンド,メルトブロー,ステープル)、ロープ,ネットとして利用することができる。また、これらの物品は、電気・電子部品、建築部材、自動車部品、機械部品、日用品などとして利用することができる。
具体的には、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業資材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙などのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレー、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、ふろしき、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
以下実施例によって本発明を説明する。なお、実施例及び比較例中の各組成成分の部はすべて重量基準である。また、実施例及び比較例中に示される樹脂組成物の特性は次に示す方法に従って求めた。
・機械特性
樹脂組成物をシリンダー温度210℃、金型温度40℃で射出成形を行い、引張試験片を得て、ASTM法D638に準じて、引張試験を行った。
・連続成形時におけるホルムアルデヒド臭気の発生状況:前述の成形条件で10,000ショットの連続成形を行い、そのときにおけるホルムアルデヒド臭気の発生状況を次のように評価した。
○:ほとんどホルムアルデヒド臭気がしない。
△:少しホルムアルデヒド臭気がする。
×:かなりホルムアルデヒド・ガスが発生し、その場にいると目、喉が痛くなる、あるい
は、ホルムアルデヒド・ガスの発生が激しくその場に留まることができない。
・モールドデポジットの発生:射出成形機を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度30℃でJIS4号ダンベルの成形品を連続的に射出成形する操作において、ピンゲート金型を使用し、モールドデポジット発生により、金型表面汚れが目視で確認できるまで成形数を求め、評価した。
・加熱時発生ホルムアルデヒド量:80℃の熱風オーブン中で3時間乾燥したペレットを約1g用いて窒素雰囲気下、240℃で15分間放置し、発生したホルムアルデヒドをメタノール水溶液中にトラップした。上記メタノール水溶液中のホルムアルデヒド量を酸化還元滴定で定量して、加熱時発生ホルムアルデヒド量(単位:ppm)を測定した。
実施例および比較例で用いた(A)ポリ乳酸樹脂、(b1)ポリアセタール、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の内容を下記に示す。
・ポリ乳酸樹脂(A−1):D体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が16万であるポリL乳酸樹脂
・ポリ乳酸樹脂(A−2):D体の含有量が1.2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が28万であるポリL乳酸樹脂
・ポリ乳酸樹脂(A−3):D体の含有量が8%であり、PMMA換算の重量平均分子量が18万であるポリL乳酸樹脂
・オキシメチレン系共重合体(b1−1):2軸押出機型重合機(100mm直径、シリンダー長(L)/シリンダー径(D)=10.2)にトリオキサン(22.5kg/h),1,3−ジオキソラン(700g/h),また、トリオキサンに対して触媒として100ppmの三フッ化ホウ素・ジエチルエーテラート(2.5%ベンゼン溶液)、分子量調節剤として600ppmのメチラールをそれぞれ供給し、連続重合を行った。重合は外部ジャケットを60℃にコントロールし、回転数は100rpmで行った。メチラールはトリオキサン中に溶解した。また、1,3−ジオキソランと触媒溶液は重合機へ供給する直前に予備混合されるように予備混合ゾーンを設けた。オキシメチレン系共重合体の粗ポリマは白色微粉末として22.4kg/hで得られた。
得られたオキシメチレン系共重合体粗ポリマの微粉末5kgに対して、9.0gの”サノール”LS765[三共製薬、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、三級アミン型のヒンダードアミン系化合物]を50mlのベンゼンに溶解した溶液を添加し、ヘンシェルミキサー中で3分間撹拌して触媒失活を行い、オキシメチレン系共重合体(b1−1)を得た。
・オキシメチレン系共重合体(b1−2):ポリプラスチックス株式会社製、”ジュラコンM90S”を使用した。
・オキシメチレン系共重合体(b1−3):旭化成株式会社製、”テナックC4520”を使用した。
・オキシメチレン系共重合体(b1−4):三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製”ユピタールF20”を使用した。
・乳酸ナトリウム(b2−1)、リンゴ酸ナトリウム(b2−2)、リンゴ酸カリウム(b2−3)、クエン酸三ナトリウム(b2−4)、クエン酸三カリウム(b2−5)および酒石酸ナトリウム(b2−6):それぞれ関東化学株式会社製のものを使用した。
・12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(b2−7):大日化学”ダイワックスOHC”を使用した。
・水酸化カルシウム(b2−8):関東化学株式会社製のものを使用した。
実施例1−1〜1−18、比較例1−1〜1−6
上記触媒失活後のポリオキシメチレン系共重合体(b1−1)5kg(これを100重量部とする)に対して、”イルガノックス”245[チバガイギー、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、ヒンダードフェノール系化合物]25g、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を表1に記載の割合であらかじめ室温にて予備混合し、日本製鋼所製ベント付2軸30mm直径押出機でシリンダー温度210℃、10Torrの減圧下で5分間、溶融混練した。得られた樹脂組成物はストランドとして押出され、カッタによってペレタイズされ、(B)特定のポリアセタール樹脂を得た。
ここで(A−1)および上記の(B)特定のポリアセタール樹脂を表2に示した割合で配合し、40mm径の一軸押出機で、温度210℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量の結果を表2に示す。本発明の樹脂組成物は(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の代わりに(b2−7)、(b2−8)を添加したポリアセタール樹脂を配合したものと比較して成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量がきわめて少なく熱安定性に優れている。
また得られた樹脂組成物の引張試験の結果を表2に示す。本発明の樹脂組成物は、従来の処方と同等の値を示すことがわかる。
実施例2−1〜2−12、比較例2−1〜2−4
(A−2)、(A−3)および表1記載の(B)特定のポリアセタール樹脂を表3に示した割合で配合し、40mm径の一軸押出機で、温度210℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量の結果を表3に示す。本発明の樹脂組成物は(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩の代わりに(b2−7)、(b2−8)を添加したポリアセタール樹脂を配合したものと比較して成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量がきわめて少なく熱安定性に優れている。
実施例3−1〜3−12、比較例3−1〜3−3
オキシメチレン系共重合体(b1−1)の代わりに、市販のオキシメチレン系共重合体(b1−2)〜(b1−4)を使用して(B)特定のポリアセタール樹脂を表4に示す配合にて調製した。具体的には、オキシメチレン系共重合体5kg(これを100重量部とする)に対して、9.0gの”サノール”LS765[三共製薬、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、三級アミン型のヒンダードアミン系化合物]を50mlのベンゼンに溶解した溶液、”イルガノックス”245[チバガイギー、トリエチレングリコール−ビス{3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、ヒンダードフェノール系化合物]25g、および(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を表4記載の割合であらかじめ室温にて予備混合し、日本製鋼所製ベント付2軸30mm直径押出機でシリンダー温度210℃、10Torrの減圧下で5分間、溶融混練した。得られた樹脂組成物はストランドとして押出され、カッタによってペレタイズさされ、(B)特定のポリアセタール樹脂を得た。
ここで(A−1)および上記の(B)特定のポリアセタール樹脂を表5に示した割合で配合し、40mm径の一軸押出機で、温度210℃、回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物の成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量の結果を表5に示す。本発明の樹脂組成物は(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及び酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩を添加しなかったものと比較して成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量がきわめて少なく熱安定性に優れている。
表1〜5の結果からは次の事項が明らかである。
(1)(A)ポリ乳酸樹脂と(B)特定のポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、(A)ポリ乳酸樹脂99重量部以下60重量部超及び(B)特定のポリアセタール樹脂1重量部以上40重量部未満を、または(A)ポリ乳酸樹脂60〜40重量部及び(B)特定のポリアセタール樹脂40〜60重量部を、または(A)ポリ乳酸樹脂40重量部未満1重量部以上及び(B)特定のポリアセタール樹脂60重量部超99重量部以下を配合することにより、成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量がきわめて少なく熱安定性に優れた樹脂組成物を得ることができる。なお(B)特定のポリアセタール樹脂とは(b1)ポリアセタール100重量部に対して、(b2)乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸から選ばれた1種または2種以上のカルボン酸の金属塩0.001〜10重量部を添加してなることを特徴とする。(実施例1−1〜1−18、2−1〜2−12)
(2)(b2)前記カルボン酸の金属塩の代わりに(b2−7)、(b2−8)を配合した樹脂組成物は、成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量が悪化する。(比較例1−1〜1−6、2−1〜2−4)
(3)また市販のポリオキシメチレン系共重合体(b1−2)、(b1−3)、および(b1−4)に対して(b2)前記カルボン酸の金属塩0.001〜10重量部を配合した樹脂組成物を用いた場合も、(b2)前記カルボン酸の金属塩を配合しない場合と比較して成形時のホルムアルデヒド臭気、モールドデポジットおよび加熱時ホルムアルデヒド発生量がきわめて少なく熱安定性に優れた樹脂組成物を得ることができる。(実施例3−1〜3−12、比較例3−1〜3−3)