JP4768957B2 - プロジェクト評価装置、プロジェクト評価方法、ならびに、プロジェクト評価プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロジェクト評価装置、プロジェクト評価方法、ならびに、プロジェクト評価プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば投資対象となる個々のプロジェクト(事業)の集合は、ポートフォリオと呼ばれている。投資家は、ポートフォリオを構成する各プロジェクトに対する投資比率を算出するため、従来提案されてきた様々なポートフォリオの評価手法を活用している。まず、ポートフォリオを構成する各プロジェクトの評価手法は、割引キャッシュフロー法(例えば、非特許文献1参照)などが提案されている。
【0003】
次に、ポートフォリオの評価手法として、3つのプロジェクトからなるポートフォリオについて、各プロジェクトに中止、拡大、縮小という変更を考慮して、すべての組合せを比較する手法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、各プロジェクトの状態として、中止、拡大、縮小、延期、段階的な開発というような様々なケースを想定するリアルオプション法が、提案されている(例えば、非特許文献3参照)。そして、株式のポートフォリオの評価手法として、個別銘柄間の相関係数あるいは共分散を用いて、ポートフォリオを評価することが行なわれている(例えば、特許文献1参照)。ここで、ポートフォリオの評価に使用される指標は、例えば、VaR(Value at Risk)である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【非特許文献1】
高橋文郎著、“実践 コーポレート・ファイナンス”、2001年、ダイヤモンド社発行、(P.12−14)
【非特許文献2】
籠屋邦夫著、“選択と集中の意思決定”、2000年、東洋経済新報社発行、(P.186−210)
【非特許文献3】
アムラム、クラティラカ原著、石原、中村、吉田、脇保訳、“リアル・オプション”、2001年、東洋経済新報社発行、(P.6−35、131−154)
【特許文献1】
特表2002−510092号公報(段落[0008])
【特許文献2】
特開2002-109207号公報(段落[0014])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、ポートフォリオを構成する各プロジェクトの間には、一般的に相関関係が存在する。プロジェクトの間の相関関係は、例えば、プロジェクトAとプロジェクトBとが、同一の用途で使用される製品を製造、販売する事業である場合に、双方のプロジェクトの対象となる市場の規模を考慮すると、プロジェクトAの売上が増えることにより、プロジェクトBの売上が減少するという事象である。
【0006】
よって、各プロジェクトの評価を基にポートフォリオを評価する際には、ポートフォリオを構成するプロジェクトの間の相関関係を考慮することが重要となる。つまり、相関関係を考慮せずにポートフォリオの評価を行う場合には、ポートフォリオの評価結果は、相関関係が考慮されないために、信頼性が低いものとなってしまう。
【0007】
しかしながら、従来提案されてきた手法は、プロジェクトの間の相関関係を考慮してポートフォリオの評価を行うためには、不十分であった。まず、非特許文献1、非特許文献2、ならびに、非特許文献3などは、プロジェクトの評価を個別に行う手法であり、プロジェクトの間の相関関係は、考慮されていない。また、特許文献1は、金融市場で取引されている金融資産(前記のプロジェクトの一例である)を評価する場合、実績データが広く利用可能な形態で豊富に存在するため、統計的な方法を用いてポートフォリオに含まれる金融資産の間の経済的な価値を算出する。しかし、統計的な方法には、統計的に扱える実績データが必要となる。よって、特許文献1の活用には、実績データを入手する際のコストがかかるとともに、これらの実績データが蓄積されていない分野への適用は、困難であった。
【0008】
従って、プロジェクトの間の相関関係を考慮したポートフォリオの評価は、十分には行われてこなかったため、各プロジェクトの評価の信頼性は、低いものとなっていた。そして、ポートフォリオの構成要素の候補となるプロジェクト数の増大に伴い、各プロジェクトの評価の信頼性を向上させることが、より一層重要となる。
【0009】
そこで本発明は、前記に鑑み、ポートフォリオ価値の算出にあたり、ポートフォリオを構成するプロジェクトの評価の信頼性を向上させることを、主な目的とする。他の目的については、後述するものとする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、
ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価装置であって、
前記プロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の開発開始時と、製品の開発に使用される開発設備と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記開発設備が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、その抽出した2つのプロジェクトで共用される前記開発設備である共通設備の前記開発設備に占める割合を、プロジェクトで使用される前記開発設備の総数を分母とし、その開発設備のうちの共用される前記開発設備の数を分子として除算することで計算し、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の開発コストの予測値に対して、前記開発開始時が先になるプロジェクトのプロジェクトの開発結果が順調であるほど、前記製品の開発コストの予測値を大きく減少させ、その減少後の前記製品の開発コストの予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明が適用されるプロジェクト評価装置の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、本実施形態のプロジェクト評価装置の構成について、図1を参照して説明する。
【0012】
まず、図1に示すプロジェクト評価装置1は、複数のプロジェクトの間の相関を参照してプロジェクトの価値を評価する機能を有する。このため、プロジェクト評価装置1は、ユーザからのプロジェクトの入力を受け付けるプロジェクト入力部11と、入力されたプロジェクトを格納するプロジェクトDB(データベース)12と、プロジェクトを評価するプロジェクト評価部13と、プロジェクトの評価結果を格納するプロジェクト評価DB(データベース)14と、プロジェクトの評価結果をもとにポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部15と、算出されたポートフォリオを出力するポートフォリオ出力部16とを含んで構成される。
【0013】
なお、プロジェクトDB12およびプロジェクト評価DB14は、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体によって構成される。また、プロジェクト入力部11は、キーボードなどの入力装置によって構成される。さらに、ポートフォリオ出力部16は、ディスプレイなどの出力装置によって構成される。そして、プロジェクト評価部13およびポートフォリオ算出部15は、例えば、RAM(Random Access Memory)上に読み取られ、CPU(Central Processing Unit)によって実行されるプログラムとして、実現される。
【0014】
そして、プロジェクト評価装置1のデータベースについて、図2を参照して、より具体的に説明する。まず、図2(A)に示すプロジェクトDB12は、プロジェクトの対象となる製品100と、プロジェクトの開発工程の開始時期を示す開発開始時点101と、プロジェクトの販売工程の開始時期を示す販売開始時点102と、プロジェクトの開発工程において使用される設備を示す開発設備103と、プロジェクトの開発工程において使用される技術を示す開発技術104と、プロジェクトの販売工程に関する種別を示す製品種別105を含んで構成される。なお、プロジェクトDB12のレコードの単位は、製品100である。
【0015】
また、図2(B)に示すプロジェクト評価DB14は、プロジェクトの開発工程にかかるコストを示す開発コストの予測111と、プロジェクトの販売工程に関する売上を示す売上の予測112と、プロジェクトどうしの相関を反映した開発コストの予測113と、プロジェクトどうしの相関を反映した売上の予測114とを含んで構成される。なお、プロジェクト評価DB14のレコードの単位は、製品100である。
【0016】
以上、本実施形態のプロジェクト評価装置1の構成について、説明した。次に、本実施形態のプロジェクト評価装置1の動作について、図1および図2を参照しつつ、図3に沿って説明する。また、この動作説明において、プロジェクト評価装置1の構成を、より明らかにする。
【0017】
まず、S101(プロジェクトの入力)について、説明する。プロジェクト評価装置1は、プロジェクト入力部11を介して、評価の対象となる複数のプロジェクトを、ユーザに入力させる。そして、入力された複数のプロジェクトは、プロジェクトとなる製品100として、プロジェクトDB12に記録される。
【0018】
次に、S102(プロジェクトの詳細情報の入力)について、説明する。プロジェクト評価装置1は、プロジェクト入力部11を介して、S101(プロジェクトの入力)において入力された各プロジェクトに関する詳細な情報を、ユーザに入力される。なお、詳細な情報は、例えば、製品100に関する、開発開始時点101、販売開始時点102、開発設備103、開発技術104、ならびに、製品種別105である。そして、プロジェクト評価装置1は、入力された詳細な情報を、プロジェクトDB12に記録する。ここで、入力された詳細な情報は、プロジェクトの間の相関を求めるための情報として、後の処理で利用される。
【0019】
そして、S103(プロジェクトの評価)について、説明する。プロジェクト評価装置1は、プロジェクト評価部13を用いて、プロジェクトDB12に記録されているプロジェクトの価値を、プロジェクトごとに個別に評価する。そして、プロジェクト評価装置1は、評価したプロジェクトの価値を、例えば、開発コストの予測111および売上の予測112として、プロジェクト評価DB14に記録する。なお、プロジェクト評価部13がプロジェクトの価値を評価する手法は、コーポレート・ファイナンスの分野で実践されている割引キャッシュフロー法、または、事業の進捗状況(中止、拡大、縮小、延期、段階的な開発など)を反映するリアルオプション法などが挙げられる。なお、S103において得られるプロジェクトの価値は、プロジェクトの間の相関を考慮しないものである。
【0020】
さらに、S104(プロジェクト間の相関を基にする評価)について、説明する。プロジェクト評価装置1は、S103(プロジェクトの評価)において評価したプロジェクトの価値の信頼性を高めるために、プロジェクト間の相関を検証し、その検証結果を、プロジェクトの価値の評価に反映させる。つまり、プロジェクト評価装置1は、プロジェクト間の相関が考慮されていないプロジェクトの価値の評価(開発コストの予測111および売上の予測112など)から、プロジェクト間の相関を考慮した価値の評価(相関を反映した開発コストの予測113および相関を反映した売上の予測114)を行って、プロジェクト評価DB14に記録する。ここで、プロジェクト間の相関を得る方法の具体例として、3つのケースを説明する。なお、以下に説明するケースは、2つのプロジェクトの間の相関を算出する一例を示すが、3つ以上のプロジェクトの相関については、2つのプロジェクトの相関に還元して、重ね合わせて考えればよい。
【0021】
まず、相関を検証する1つめのケースとして、開発設備103に着目する手法が挙げられる。開発時期が異なる製品AおよびBの開発に関して、同一の開発設備103を使用できる場合、製品Bへの投資額を抑制できることになる。このような場合、後続製品の開発への投資額の低下を、例えば、新旧製品開発への投資額のうち共通設備が占める割合や開発着手時期の間隔の関数としてモデル化できる。
【0022】
なお、図2(A)においては、製品Aは、“E1、E3、E5”という3つの設備を、製品Bは、“E2、E3”という2つの設備を、製品Cは、“E4、E5”という2つの設備を、それぞれ使用して製造される旨が記述されている。よって、製品Aに比べて開発開始時点101の遅い製品Bは、製品Aの設備E3を共用することにより、開発コストの予測111の値を減少させることができる。同様にして、製品Aに比べて開発開始時点101の遅い製品Cは、製品Aの設備E5を共用することにより、開発コストの予測111の値を減少させることができる。なお、開発コストの予測111の変更後の値は、相関を反映した開発コストの予測113として記録される。
【0023】
次に、相関を検証する2つめのケースとして、開発技術104に着目する手法が挙げられる。このケースは、技術開発あるいは製品受注に成功する確率を介して個別事業間で相互作用がある場合である。類似の開発技術104を用いて、先行製品の開発が順調に進めば、後続製品の開発が円滑に進む可能性が高まると考えられる。この相互作用は、後続製品の開発成功確率の上昇、あるいは後続製品の開発期間の短縮として表わせ、これらの効果は、先行製品の開発がどの程度順調に進んだかに依存して、例えば後続製品の開発コストの減少としてモデル化できる。なお、この相互作用をプロジェクト評価に反映するために、プロジェクト評価装置1は、複数の前記プロジェクトの評価に関連する開発成功確率のうち、少なくとも1つの前記プロジェクトの開発成功確率を変化(例えば上昇)させる算出処理を行う。
【0024】
なお、図2(A)においては、製品Aは、“T1、T2”という2つの開発技術を、製品Bは、“T3”という1つの開発技術を、製品Cは、“T3、T4”という2つの開発技術を、それぞれ使用して製造される旨が記述されている。よって、製品Bに比べて開発開始時点101の遅い製品Cは、製品Bの開発技術T3を共用することにより、開発コストの予測111の値を変化(例えば、減少)させることができる。なお、開発コストの予測111の変更後の値は、相関を反映した開発コストの予測113として記録される。なお、この相互作用をプロジェクト評価に反映するために、プロジェクト評価装置1は、複数の前記プロジェクトの評価を構成する開発コストのうち、少なくとも1つの開発コストを変化(例えば減少)させる算出処理を行う。
【0025】
そして、相関を検証する3つめのケースとして、製品種別105に着目する手法が挙げられる。このケースは、売上高や収益を介して個別事業間で相互作用がある場合である。例えば、ある世代の製品の出荷時期が遅れて、間もなく次世代の製品を出すようなケースでは、旧製品の売り上げは、新製品に圧迫されて、低下を余儀なくされる。このような場合、旧製品の売上高の低下を、出荷時期の間隔や新旧製品の想定売上高の比の関数としてモデル化できる。なお、この相互作用をプロジェクト評価に反映するために、プロジェクト評価装置1は、複数の前記プロジェクトの評価を構成する売上の予測のうち、少なくとも1つの売上の予測を変化(例えば減少)させる算出処理を行う。
【0026】
また、図2(A)においては、製品Aおよび製品Bは、“C1”という製品種別に、製品Cは、“C2”という製品種別に、それぞれ分類されている。よって、製品Bに比べて販売開始時点102の遅い製品Aは、製品Bの販売開始時点102から、売上の予測112が減少することが予測される。なお、売上の予測112の変更後の値は、相関を反映した売上の予測114として記録される。ここで、前述した新旧製品の関係は、同一または類似の製品種別として、定義される。
【0027】
そして、S105(ポートフォリオ価値の算出)について、説明する。プロジェクト評価装置1は、入力された複数のプロジェクトから、プロジェクトの集合を抽出し、算出対象のポートフォリオとする。そして、抽出されたポートフォリオの価値は、S104(プロジェクト間の相関を基にする評価)によって評価された個々のプロジェクトの価値(プロジェクト間の相関が考慮されているもの、例えば、相関を反映した開発コストの予測113および相関を反映した売上の予測114)を基にして、ポートフォリオ算出部15によって、算出される。ここで、ポートフォリオ算出部15は、例えば、モンテカルロ法のような確率的シミュレーション手順が用いられる。ここで、ポートフォリオ算出部15は、シミュレーションの各試行において、個別事業の価値をその確率分布にしたがってサンプリングして決定する。
【0028】
さらに、S106(ポートフォリオの出力)について、説明する。プロジェクト評価装置1は、ポートフォリオ出力部16を介して、S105(ポートフォリオ価値の算出)の算出結果を、ユーザに出力する。
【0029】
ここで、プロジェクト評価装置1が、ポートフォリオ価値の算出処理を効率的に行う手法について、補足の説明を行う。プロジェクト評価装置1は、S105(ポートフォリオ価値の算出)の処理の入力となる個々のプロジェクトの価値について、前回以前に算出され、プロジェクト評価DB14に記録された個々のプロジェクトの価値を、今回以降のポートフォリオ価値の算出に用いることができる。これは、プロジェクト評価装置1が、S103(プロジェクトの評価)およびS104(プロジェクト間の相関を基にする評価)におけるプロジェクトの価値の評価結果を、プロジェクト評価DB14に記録しているからである。プロジェクト評価装置1は、ポートフォリオの構成要素となるプロジェクトを選択し、その選択された個々のプロジェクトの価値を用いて、S105(ポートフォリオ価値の算出)処理を行う。その際に、前回以前にプロジェクト評価装置1がポートフォリオの構成要素として選択したプロジェクトは、その価値が前回以前に評価済みである。そして、プロジェクト評価装置1は、その前回以前の評価を実際に算出する替わりに、プロジェクト評価DB14から参照することにより、今回以降のプロジェクトの評価処理(S103、S104)を省略することができる。
【0030】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。かかる構成によれば、複数のプロジェクトの間の相関を参照してプロジェクトの価値を評価することができる。なお、プロジェクト評価装置1の機能ブロック図を、図21に示す。
【0031】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態の具体的な一例を示すものである。なお、第2実施形態において対象とする事業は、A社の製薬部門で展開する医薬品を開発するプロジェクトであり、医薬品を製品として開発する複数のプロジェクトを含むポートフォリオで表わされる。これらの製品は、薬効を判定するテストをパスできるかという不確定性(テクニカルリスク)や、製品として上市した際の売上げに関する不確定性(マーケットリスク)等、リスクが大きい。このため5段階に渡って継続あるいは中止を選択できる段階的開発を行なう。これは、大規模な研究開発のプロジェクトでしばしば適用される開発手法である。
【0032】
なお、A社の製薬部門の事業目標は、将来の特定時期におけるポートフォリオのリスクを一定限度に抑えた上で、ポートフォリオ全体の価値を高めることである。具体的には、5年後のポートフォリオ価値の確率分布の5%分位値(95%VaR)が、負の値として110億円よりも大きくならないことを定量的な管理目標に想定している。そのための施策として、個別プロジェクトの中止、拡大、縮小、延期、内容変更等があり、さらに開発プロジェクトの組替えがある。なお、VaRは、金融資産の市場取引のリスク管理のために用いられているリスク指標である(例えば、特許文献2参照)。
【0033】
また、ポートフォリオに含まれる個別プロジェクトは、テクニカルな要因やマーケット要因を通じて、個別プロジェクトの間で相互作用を持つため、個別プロジェクトの価値に相互に影響を与える。よって、プロジェクト評価装置1は、個別プロジェクトの間における、テクニカルな要因およびマーケットの要因についての相互作用を考慮したプロジェクトの評価を行う。
【0034】
図4は、プロジェクト評価装置1を含むプロジェクト統合評価システムの一例である。第2実施形態の手順は、3つのステップからなる。ステップ1(S1)は、想定しうる計画条件の変更や想定しうる相互作用パラメータをカバーした評価ケースに対して個別プロジェクト価値の確率分布の算出、ステップ2(S2)は、想定しうる計画条件の変更や想定しうる相互作用パラメータから評価ケースとして検索可能な個別プロジェクト価値の確率分布のデータ構造の作成、ステップ3(S3)は、計画条件の変更あるいは相互作用パラメータを用いて検索した評価ケースに対応する個別プロジェクト価値の確率分布を用いたポートフォリオ価値の算出である。
【0035】
図4のS1では、プロジェクト評価装置1は、ポートフォリオに組み入れられる個別プロジェクトに対して、想定しうる条件の下で時間を変数として個別プロジェクトの価値の確率分布を計算する。個別プロジェクトあたりに必要なケースは、想定しうる計画条件の変更や想定しうる相互作用パラメータの組合せから決まる。
【0036】
図4のS2では、プロジェクト評価装置1は、個別プロジェクトに対して、想定しうる計画条件の変更や想定しうる相互作用パラメータと関係付けた個別プロジェクト価値の確率分布のデータベースを作成する。
【0037】
図4のS3では、プロジェクト評価装置1は、特定時点における個別プロジェクト価値の確率分布に基づいてポートフォリオ価値の確率分布を計算する。ポートフォリオに含まれる個別プロジェクトの計画条件の変更や相互作用パラメータは、ポートフォリオに含まれる他の個別プロジェクトとの関係で決まるため、想定しうる計画条件の変更や想定しうる相互作用パラメータのケースの中からダイナミックに適切なケースを検索し、対応する個別プロジェクト価値の確率分布を用いてポートフォリオ価値を計算する。
【0038】
図5は、第2実施形態の手順のS1を詳細に記した手順である。S21では、ポートフォリオや個別のデータに基づき、想定される計画条件の変更より個別プロジェクトの評価条件が変わることを表すパラメータが取りうる値を定義する。S22では、個別プロジェクト間の相互作用のデータに基づき、相互作用を持つ相手の個別プロジェクトを抽出し、想定される相互作用により個別プロジェクトの評価条件が変わることを表す相互作用パラメータが取りうる値を定義する。S23では、想定しうる計画条件の変更あるいは想定しうる相互作用パラメータをカバーする個別プロジェクトの評価ケースを決定する。S24では、評価ケースに対するキャッシュフローの確率分布に基づいて個別プロジェクト価値の確率分布を算出する。データベース20は、ポートフォリオのデータ、個別プロジェクトのデータ、個別プロジェクト間の相互作用のデータを格納する。以下に、これらのデータに関して説明する。
【0039】
A社の製薬部門のポートフォリオには、製品群A、B、Cの開発プロジェクトが組み込まれる。現時点においては、製品群Aに対しては、プロジェクトA1、A2、A3があり、製品群Bに対しては、プロジェクトB1、B2、B3があり、製品群Cに対しては、プロジェクトC1、C2がある。
【0040】
図6は、現時点でポートフォリオに含まれるプロジェクトのスケジュールを示したものである。現時点を0年として、事業リスクを評価すべき将来時点(満期)は、5年としている。この図より、現時点のポートフォリオにはプロジェクトA1、B1、B2、C1が含まれており、プロジェクトA1は既に進行中であり、プロジェクトB1は開始直前であることが読み取れる。したがって、プロジェクトA2、A3、B3、C2は、現状の事業計画には含まれておらず、ポートフォリオの組替えの際に、投入されるプロジェクトの候補である。
【0041】
図7は、プロジェクトA1の詳細なスケジュールを示したものである。プロジェクトA1では、5段階の開発ステージの開始時期に継続(開発ステージ▲1▼の場合は開始)あるいは中止を決めることができ、段階的開発のフレキシビリティ(リアルオプション)を有する。開発ステージ▲5▼の完了が製品A1の上市となる。プロジェクトA1は、現在、開発ステージ▲3▼にある。この図7には、開発ステージの期間と投資キャッシュフローとを示す。ここに示す期間は、基準の期間であり、テクニカルリスクによる開発ステージの遅れに対応して延長される場合がある。ここで、キャッシュフローとは、割引キャッシュフロー法で用いられる現金の流れを指す。事業の評価に用いるキャッシュフローは、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローに分けることができる。営業キャッシュフローは、税引き後の営業利益と原価償却費とを加えたもの、投資キャッシュフローは、運転資本需要と設備投資とを加えたものである。
【0042】
図8は、プロジェクトA1のテクニカルリスクをツリーで示したものである。
開発ステージ▲1▼から▲4▼までは、ステージ終了時に技術面で開発が基準の期間で成功して次の開発ステージに継続するのか、遅れを生じたが成功して次の開発ステージに継続するのか、技術面で開発を断念して中止するのか、プロジェクトの状態を枝分かれで示している。ここでは、遅れは、開発ステージの期間を延長した形で継続する。開発ステージ▲5▼にはテクニカルリスクがないため、このステージでは、テクニカルな要因で遅れや中止は生じない。図7に示した開発ステージの成功確率は、該当する開発ステージをパスする確率であり、遅れても成功する場合を含む。
【0043】
図9は、製品A1の上市後の売上高の予想データである。プロジェクトA1の上市後のマーケットリスクは、製品A1の売上高の振れに対応する。ここでは、売上高に関して、基準シナリオ、楽観的シナリオ、悲観的シナリオを予想することにより、上市後のマーケットリスクを表わしている。プロジェクトA1のマーケットリスクには、上市に至るまでの期間にも存在する。それは、例えば、上市前の開発期間中あるいは開発着手前に、他社が製品A1の同等品の開発に成功、特許取得した結果、プロジェクト価値が低下し、製品A1の開発中止をせまられるといったマーケット要因からのプロジェクト中止に関わるリスクである。このようなマーケットリスクは、プロジェクト価値の確率変動としてモデル化して計量化できる。
【0044】
そして、個別プロジェクト間の相互作用のデータについて、説明する。第2実施形態の手順においては、個別プロジェクト間の相互作用をつぎのようにモデル化している。
【0045】
まず、同じ製品群に属する製品について、先行製品での特定の開発ステージで技術開発に成功する経験は、後続製品の同じ開発ステージでの成功確率を高めるという相互作用がある。現時点のポートフォリオでは、プロジェクトB1の開発ステージ▲2▼、▲3▼での状態が、それぞれ計画通りであったのか、遅れたのか、中止となったのかに依存して、プロジェクトB2の開発ステージ▲2▼、▲3▼での成功確率を修正する。
【0046】
図10は、プロジェクトB1の開発ステージ▲2▼の開発結果と、プロジェクトB2の開発ステージ▲2▼での成功確率の関係を示したものである。この場合の相互作用パラメータは、プロジェクトB1の開発ステージ▲2▼、▲3▼での開発結果であり、値としては、計画通り、遅れ、中止の3通りの値を取る。
【0047】
次に、同じ製品群に属する製品については、旧製品の売上高は、新製品に圧迫されて、低下を余儀なくされる。現時点のポートフォリオでは、B2の上市が、B1の売上高を低下させることになる。このB1の売上高の低下率を、B2との上市時期の間隔やB1とB2の予想売上高の比の関数としてモデル化できる。
【0048】
図11は、B1とB2の予想売上高がともに基準シナリオであった場合について、B1の売上高の低下率を、製品B1とB2の上市時期の間隔の関数として示したものである。この場合の相互作用パラメータは、製品B1とB2の上市時期の間隔であり、数値としては、0年から8年までの9通りの値を取る。
【0049】
以上のようなデータベース20に格納されたデータを用いて、図5の手順を補足説明する。
【0050】
S21では、想定される計画条件の変更として、プロジェクトA2、A3、B3、C2のいずれかの追加によるポートフォリオの組替えがあり、個別プロジェクトに関する変更として、プロジェクトB1の拡大、縮小、合弁事業化等がある。合弁事業化の場合、投資額および売上高からの収益が計画条件の変更を表すパラメータであり、実現可能な出資比率に応じて、二つのパラメータが取りうる値を定義できる。
【0051】
S22では、相互作用を持つ個別プロジェクトの組としてB1とB2とを抽出する。相互作用パラメータは、プロジェクトB1の開発ステージ▲2▼、▲3▼の状態、および製品B1とB2との上市時期の間隔である。
【0052】
S23では、計画条件の変更のパラメータとともに、これらの相互作用パラメータにしたがって個別プロジェクトが取りうる評価ケースを決定する。図12は、プロジェクトB1の開発ステージ▲2▼、▲3▼の開発結果に対するケースを、図13は、製品B1とB2との上市時期の間隔に対するケースを示す。
【0053】
プロジェクトA1、C1については、他の個別プロジェクトとの相互作用を持たないため、評価ケースは、基準ケースの他に、想定しうる計画条件の変更に対応するケースとなる。プロジェクトB1の評価ケースは、基準ケースの他に、想定しうる計画条件の変更と、相互作用パラメータである製品B1とB2の上市時期の間隔の組合せのケースとなる。
【0054】
プロジェクトB2の評価ケースは、基準ケースの他に、想定しうる計画条件の変更と、相互作用パラメータであるプロジェクトB1の開発ステージ▲2▼、▲3▼の開発結果の組合せのケースとなる。
【0055】
S24では、評価ケースに対するキャッシュフローの確率分布に基づいて、評価時点における個別プロジェクト価値の確率分布を、バイノミアルツリーに基づくリアルオプション法で算出する(例えば、特許文献1参照)。なお、開発途中で追加投資時にその時点での事業価値に照らして中止することができる段階的開発オプションを持つプロジェクトの価値は、金融資産に対するオプションの一種であるコンパウンドオプション、すなわちオプションを買い取るオプションとして計算できる。
【0056】
図14は、プロジェクトA1の基準ケースに対する評価時点でのプロジェクト価値の確率分布である。
【0057】
図15は、プロジェクトB1の基準ケースに対する評価時点でのプロジェクト価値の確率分布を、製品B1とB2との上市時期の間隔と関係付けたデータ構造であり、価値の確率分布は、0から1の間の連続値の確率変数を0.01刻みとしてプロジェクト価値を与えるテーブルで与えている。S2において、想定しうる相互作用パラメータから検索可能な個別プロジェクト価値の確率分布のデータ構造として作成されたものである。
【0058】
図16は、第2実施形態の手順のS3を詳細に記した手順である。ポートフォリオ価値の確率分布の評価には、モンテカルロ法による確率的シミュレーション手順を適用する。モンテカルロ法では、一定の確率分布にしたがう確率変数の関数の確率分布を、乱数を用いて決定する手法である。変数の確率分布にしたがう乱数を用いて変数を確定値として扱い、その確定値を用いて関数値を計算する試行を多数回繰り返すことにより、関数の確率分布を計算する。
【0059】
S131では、ポートフォリオ価値の確率分布の評価条件を設定する。A社の製薬部門では、基準となる現時点のポートフォリオの他に、プロジェクトB1に注目して、想定しうる計画条件の変更案を2件、検討する。第1の代替ポートフォリオは、プロジェクトB1を合弁事業化し、投資額を半分にする案である。第2の代替ポートフォリオは、プロジェクトB1に変えて、リスクの小さなプロジェクトB3を組み込む案である。以下では、今回の検討で基準となる現時点のポートフォリオに対する評価手順を説明する。
【0060】
S132からS134までは、モンテカルロ法で繰り返される1回の試行に対応する。S132では、確率的シミュレーション手順の現在の試行におけるポートフォリオに含まれる個別プロジェクト価値を決定する。そのために、S132aは計画条件の変更や相互作用パラメータをキーとして、対象とする個別プロジェクト価値の確率分布の評価ケースを検索する。計画条件の変更については、一つのポートフォリオの評価に際して、試行ごとに変わることはないが、相互作用パラメータについては、試行ごとに変わるため、確率分布のケースを選択する処理は、試行ごとに行なう必要がある。データベース136は、個別プロジェクト価値の確率分布の評価ケースを格納しており、計画条件の変更や相互作用パラメータをキーとして検索可能である。
【0061】
図17は、S132aで行なう処理の説明図である。各試行において、プロジェクトA1、プロジェクトC1に対しては、計画条件の変更がないケースが検索させる。プロジェクトB1、プロジェクトB2に対して、計画条件の変更がなく、相互作用パラメータに従ったケースが検索させる。確率分布の各ケースは、図15の確率変数と評価対象プロジェクト価値との対応テーブルによって表現されている。
【0062】
S132bでは、検索した評価ケースに対する個別プロジェクト価値の確率分布をデータベース136から抽出し、その確率分布を用いたサンプリングにより、現在の試行における個別プロジェクト価値の確定値を決定する。ここで、確率分布を用いたサンプリングとは、具体的には、0から1までの区間に一様に分布する連続値乱数を発生させ、図15の確率変数と評価対象プロジェクト価値のテーブルに照らして、その乱数が含まれる確率変数の区間に対応するプロジェクト価値を決定する操作を指す。
【0063】
S133では、試行に対する個別プロジェクト価値の確定値の合算によりポートフォリオ価値の確定値を算出する。S134は、モンテカルロシミュレーションの全試行が完了したか否かの判定である。完了していない場合、次の試行に移る。完了した場合、S135で、ポートフォリオ価値の確率分布を出力する。
【0064】
図18は、現時点のポートフォリオの全体価値の確率分布である。A社の製薬部門では、事業目標の達成に向けてポートフォリオ価値・リスクを計量管理しており、価値、リスクの指標として、それぞれ5年後(評価時点)のポートフォリオ価値の期待値、確率分布の5%分位値(95%VaR)を用いる。
【0065】
図19は、第2実施形態において、評価したポートフォリオの管理指標である。
【0066】
図20は、リスク管理目標160との関連で、三つのポートフォリオの価値・リスクを対比したものであり、ポートフォリオがリスク管理目標を達成するためには160よりも上の領域に存在する必要がある。基準となる現時点のポートフォリオ1ではリスク管理目標が達成できないが、ポートフォリオ2、3では達成できる。
【0067】
したがって、第2の代替ポートフォリオ(ポートフォリオ3)を採用することにより、リスク管理目標を達成した上で、現時点のポートフォリオからの価値の低下が第1の代替ポートフォリオ(ポートフォリオ2)よりも小さくなることがわかる。
【0068】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。これにより、少なくとも一つが将来の収支が不確定なプロジェクトであるような複数のプロジェクトを含むポートフォリオの価値評価に関して、ポートフォリオに含まれる個別プロジェクト間の相互作用を考慮できるとともに、事業価値評価で必要となる確率的な計算処理を効率化できる。その結果、事業目標の定量的な管理のために、計画の進行とともに実施可能な施策の定量的効果の評価を支援できる。
【0069】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態は、第1実施形態および第2実施形態におけるポートフォリオ価値の算出処理を効率化する手法を示すものである。効率化は、個別事業の価値をあらかじめ算出して、事業リスクの管理手段を表す変数や相互作用を表す変数と関連付けて格納記憶しておくことにより解決する。
【0070】
ポートフォリオ全体価値やそのリスクの管理手段は、ポートフォリオに含まれる個別事業のイベントと、ポートフォリオに含まれる個別事業との組替えである。個別事業の価値に対しては、ポートフォリオに組み込まれる可能性があるすべての個別事業に対して、次のような条件の組合せをケースとして、事業のスケジュールにあわせて時間の変数として、個別事業の価値の確率分布を算出する。
【0071】
まず、1つめの変数は、個別事業のリスク管理のために変更可能な事業の計画条件である。
【0072】
次に、2つめの変数は、個別プロジェクト間の相互作用により個別プロジェクトの評価条件が変わることを表す相互作用パラメータの値である。
【0073】
そして、3つめの変数は、事業を進める上での中止、拡大、縮小、延期、段階的な開発というようなフレキシビリティである。ただし、3つめの変数に関しては、リアルオプション法により、ケースの組合せとしてではなく、単独のケースとして評価できる可能性がある(例えば、非特許文献3参照)。
【0074】
ここで、ポートフォリオ全体価値の評価に当たっては、モンテカルロ法のような確率的シミュレーション手順が用いられる。シミュレーションの各試行において、個別事業の価値をその確率分布にしたがってサンプリングして決定するが、その際、事業の相互作用を反映した個別事業価値のケースを選択することにより、個別事業間の相互作用を的確に組み込むことができる。
【0075】
そして、事業の目標達成に向けて事業の計画条件を変える場合には、その条件に対応した個別事業価値のケースを選択することにより、事業の計画条件の変更だけでなく、個別事業間の相互作用を的確に組み込むことができる。
【0076】
このように、個別事業の評価と、ポートフォリオの評価を分離した評価方法により、ポートフォリオ全体価値の評価の計算処理、事業の目標達成に向けて適切なポートフォリオを探索する計算処理を効率的に行うことができる。
【0077】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。これにより、ポートフォリオ全体価値評価の計算処理を効率化することができる。つまり、従来は、ポートフォリオに含まれる個別事業の相互作用の効果を考慮できなかったのである。仮にできたとしても、相互作用により個別事業の価値は影響を受けることになり、事業リスク管理の施策として一つの個別事業の変更を想定する場合においても、従来技術では、ポートフォリオに含まれる個別事業をすべて初めから計算しなおす必要があった。しかし、第3実施形態に示す手法により、初めから計算しなおす必要が無くなる。
【0078】
以上説明した本発明は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で広く変形実施することができる。
【0079】
例えば、S106(ポートフォリオの出力)において、プロジェクト評価装置1からユーザへの出力形式は、算出結果のディスプレイ装置への画面表示、プリンタ装置への紙面印刷、記憶媒体へのデータ出力、ならびに、プロジェクト評価装置1に接続されたネットワークを介するデータ配信などが、挙げられる。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、ポートフォリオ価値の算出にあたり、ポートフォリオを構成するプロジェクトの評価の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係わるプロジェクト評価装置の構成図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係わるプロジェクト評価装置のデータベースの構成図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係わるプロジェクト評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】 本発明の第2実施形態に係わるプロジェクト統合評価システムの動作の概要を示すフローチャートである。
【図5】 本発明の第2実施形態に係わるS1を詳細に記した手順である。
【図6】 本発明の第2実施形態に係わる現時点でポートフォリオに含まれるプロジェクトのスケジュールである。
【図7】 本発明の第2実施形態に係わるプロジェクトA1の詳細なスケジュールである。
【図8】 本発明の第2実施形態に係わるプロジェクトA1のテクニカルリスクをツリーで示した図である。
【図9】 本発明の第2実施形態に係わる製品A1の上市後の売上高の予想データである。
【図10】 本発明の第2実施形態に係わるB1の開発ステージ▲2▼での開発結果と、B2の開発ステージ▲2▼での成功確率の関係である。
【図11】 本発明の第2実施形態に係わる製品B1とB2の上市時期の間隔の関数として示したB1の売上高の低下率である。
【図12】 本発明の第2実施形態に係わるプロジェクトB1の開発ステージ▲2▼、▲3▼の開発結果に対するケースである。
【図13】 本発明の第2実施形態に係わる製品B1とB2の上市時期の間隔に対するケースである。
【図14】 本発明の第2実施形態に係わるプロジェクトA1の基準ケースに対する評価時点でのプロジェクト価値の確率分布である。
【図15】 本発明の第2実施形態に係わる製品B1とB2の上市間隔と関係付けたプロジェクト価値の確率分布のデータ構造である。
【図16】 本発明の第2実施形態に係わるS3を詳細に記した手順である。
【図17】 本発明の第2実施形態に係わるS132aで行なう処理の説明図である。
【図18】 本発明の第2実施形態に係わる現時点のポートフォリオの全体価値の確率分布である。
【図19】 本発明の第2実施形態に係わる今回の検討に際し評価したポートフォリオの管理指標である。
【図20】 本発明の第2実施形態に係わるリスク管理目標に関連して三つのポートフォリオの価値・リスクを対比した図である。
【図21】 本発明の第1実施形態に係わるプロジェクト評価装置の機能ブロック図である。
【符号の説明】
1…プロジェクト評価装置
11…プロジェクト入力部
12…プロジェクトDB
13…プロジェクト評価部
14…プロジェクト評価DB
15…ポートフォリオ算出部
16…ポートフォリオ出力部
100…製品
101…開発開始時点
102…販売開始時点
103…開発設備
104…開発技術
105…製品種別
111…開発コストの予測
112…売上の予測
113…相関を反映した開発コストの予測
114…相関を反映した売上の予測
Claims (7)
- ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価装置であって、
前記プロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の開発開始時と、製品の開発に使用される開発技術と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記開発技術が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の開発コストの予測値に対して、前記開発開始時が先になるプロジェクトのプロジェクトの開発結果が順調であるほど、前記製品の開発コストの予測値を多く減少させ、その減少後の前記製品の開発コストの予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする
プロジェクト評価装置。 - ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価装置であって、
前記プロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の開発開始時と、製品の種別を示す製品種別と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記製品種別が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、その抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が先になるプロジェクトの開発結果を取得し、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の開発コストの予測値に対して、前記開発開始時が先になるプロジェクトのプロジェクトの開発結果が順調であるほど、前記製品の開発コストの予測値を多く減少させ、その減少後の前記製品の開発コストの予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする
プロジェクト評価装置。 - ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価装置であって、
前記プロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の販売開始時と、製品の種別を示す製品種別と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記製品種別が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、その抽出した2つのプロジェクトにおける前記製品の販売開始時の差分を上市時期の間隔として計算し、
前記プロジェクト評価装置の記憶手段にあらかじめ記憶されている上市時期の間隔が短いほどから売上高の低下率が高くなる所定関数に対して、前記計算した上市時期の間隔を入力することにより、売上高の低下率を求め、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の販売開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の売上の予測値に対して、前記求めた売上高の低下率が高いほど、前記製品の売上の予測値を多く減少させ、その減少後の前記製品の売上の予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする
プロジェクト評価装置。 - ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価方法であって、
前記プロジェクト評価方法を実行するプロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の開発開始時と、製品の開発に使用される開発技術と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記開発技術が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の開発コストの予測値に対して、前記開発開始時が先になるプロジェクトのプロジェクトの開発結果が順調であるほど、前記製品の開発コストの予測値を多く減少させ、その減少後の前記製品の開発コストの予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする
プロジェクト評価方法。 - ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価方法であって、
前記プロジェクト評価方法を実行するプロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の開発開始時と、製品の種別を示す製品種別と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記製品種別が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、その抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が先になるプロジェクトの開発結果を取得し、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の開発開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の開発コストの予測値に対して、前記開発開始時が先になるプロジェクトのプロジェクトの開発結果が順調であるほど、前記製品の開発コストの予測値を多く減少させ、その減少後の前記製品の開発コストの予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする
プロジェクト評価方法。 - ポートフォリオの構成要素となる複数のプロジェクトの価値を評価するプロジェクト評価方法であって、
前記プロジェクト評価方法を実行するプロジェクト評価装置は、
前記プロジェクトごとに開発される各製品について、製品の販売開始時と、製品の種別を示す製品種別と、を対応づけたプロジェクトの評価用データの入力を受け付けて、記憶手段に格納するプロジェクト評価用データ入力部と、
前記入力された複数のプロジェクトの評価用データを前記記憶手段から読み取り、その相関を参照して前記プロジェクトを評価するプロジェクト評価部と、
前記プロジェクト評価部によるプロジェクトの評価をもとに、確率分布にしたがってシミュレーションを試行する確率的シミュレーション手順により、ポートフォリオ価値を算出するポートフォリオ算出部と、を含めて構成され、
前記プロジェクト評価部は、
前記評価用データが入力されたプロジェクトごとに、割引キャッシュフロー法、および、リアルオプション法のいずれかの手法により、製品の開発コストの予測値と、製品の売上の予測値と、を計算することで、プロジェクトを単独で評価し、
前記評価用データが入力されたプロジェクトについて、前記記憶手段に記憶されている各評価用データのうち、前記製品種別が互いに一致する2つのプロジェクトを抽出し、その抽出した2つのプロジェクトにおける前記製品の販売開始時の差分を上市時期の間隔として計算し、
前記プロジェクト評価装置の記憶手段にあらかじめ記憶されている上市時期の間隔が短いほどから売上高の低下率が高くなる所定関数に対して、前記計算した上市時期の間隔を入力することにより、売上高の低下率を求め、
前記抽出した2つのプロジェクトのうち、前記製品の販売開始時が後になるプロジェクトの前記単独で計算した前記製品の売上の予測値に対して、前記求めた売上高の低下率が高いほど、前記製品の売上の予測値を多く減少させ、その減少後の前記製品の売上の予測値を、前記ポートフォリオ算出部の算出処理の入力とすること、を特徴とする
プロジェクト評価方法。 - 請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載のプロジェクト評価方法を、コンピュータである前記プロジェクト評価装置に実行させるためのプロジェクト評価プログラム。
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