JP4766355B1 - 立体骨組や平面骨組の解析プログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の,柱梁接合部の応力や変形をも含めて解析する骨組解析法では,柱梁接合部と柱部材または梁部材が特定の位置関係にないと解析できず,かつ未知数の混入という解法上の問題があり,かつ立体骨組には適用できない,という課題があった。
【解決手段】以下の手段を併用する。(ア)節点モーメントに対応する外力項をパネルモーメントに対応する外力項で置き換える。(イ)パネルモーメントを応力でなく,自由度間の一対の外力として扱う事で,骨組全体の方程式中の対応外力項を既知数に変化させる。(ウ)柱梁接合部と柱部材または梁部材の位置関係が,特定の場合に制約されず,かつ立体骨組にも適用可能な汎用性のある変換マトリクスを作成する。これら手段の併用により,柱梁接合部の応力や変形をも含めて任意形状の立体骨組または平面骨組の解析が可能になる。
【選択図】図1

Description

本発明は,柱や梁などの骨組部材を線材に置換して,立体骨組や平面骨組の応力や変形を計算するプログラムに関し,特に,柱梁接合部の変形をも計算するプログラムに関する。
骨組解析では,節点を設けて,節点という点への作用力として,並進力やモーメントを考えている。一方,骨組中の柱梁接合部の応力は,例えば鋼構造骨組では非特許文献1に示されているパネルモーメントで評価をされる。パネルモーメントは,節点モーメントとは異なっていて,例えば,梁フェイスモーメント・柱せん断力・接合部寸法から計算されるか,または柱フェイスモーメント・梁せん断力・接合部寸法から計算されるが,いずれも複数部材の応力の関数になっている。このため,骨組解析中で柱梁接合部の応力や変形をも正しく計算するためには工夫が必要で,例えば非特許文献や非特許文献では,平面骨組の柱部材や梁部材の部材剛性マトリクス中において,外力項が節点モーメントに対応する列の他に,外力項がパネルモーメントに対応する列を新たに加える変換マトリクスを使用している。
日本建築学会,「鋼構造接合部設計指針」の5章:柱梁接合部パネル,丸善,2006年3月発行,p.206〜232 小川厚治・多田元英,「柱・梁接合部パネルの変形を考慮した静的・動的応答解析プログラムの開発」,第17回情報・システム・利用技術シンポジウム論文集,日本建築学会,1994年12月発行,p.79〜84 百野泰樹ほか,「方杖ダンパーを用いた柱梁高力ボルト接合骨組の地震応答解析」,日本建築学会構造系論文集 第586号,日本建築学会,2004年12月発行,p.219〜226
以上に述べた従来の骨組解析方法では,以下の点で課題があった。(1)柱梁接合部と柱部材または梁部材が特定の位置関係にある場合の変換マトリクスのみを扱っているので,任意形状の骨組に対する適応性に欠けてしまう。(2)パネルモーメントを与えるために柱部材と梁部材で全く異なる変換マトリクスを用いているので,本来は統一的に扱えるはずの柱部材と梁部材を分化させてしまい,任意形状の骨組に対する汎用性を低下させてしまう。(3)外力項に加えたパネルモーメントを部材応力のまま,骨組全体の剛性方程式中に紛れ込ませていて,本来は既知であるべき全体外力ベクトルの中に未知数が混入していて,部材応力を仮定しないと骨組全体の連立1次方程式をそのまま解けなくしてしまう。(4)平面骨組を対象としていて,立体骨組にはそのまま適用できない,という課題があった。
これら課題を解決するため,以下の(ア)〜(ウ)の手段を併用する。(ア)節点モーメントに対応する外力項をパネルモーメントに対応する外力項で置き換える。(イ)パネルモーメントを応力でなく,自由度間の一対の外力として扱う事で,骨組全体の方程式中の対応外力項を既知数に変化させる。(ウ)柱梁接合部と柱部材または梁部材の位置関係が,特定の場合に制約されず,かつ立体骨組にも適用可能な汎用性のある変換マトリクスを見出す。以上の併用する各手段(ア)〜(ウ)について,以下,順番に記す。
まず,前記手段(ア)の成立性を調べるため,節点モーメントの釣合条件とパネルモーメントの釣合条件の関係性を検討する。例えば平面骨組の柱梁接合部のパネルモーメントMPは,通常の形状の場合,左右の梁の略フェイスのモーメントをMLおよびMR,上下の柱のせん断力をQUおよびQD,梁のフランジ中心間距離をWBとして,符号の向きを図2の右手系方向にとると,次式のように表せる。
Figure 0004766355
なおWBは,鉄筋コンクリート構造では応力中心間距離などにできる。一方,上下の柱の略フェイスのモーメントをMUおよびMD,左右の梁のせん断力をQLおよびQR,柱のフランジ中心間距離をWCとして表現するなら,パネルモーメントは,次式のようにも表せる。
Figure 0004766355
上記の数式1と数式2を連立させると,パネルモーメントの釣合式が次式のように得られる。
Figure 0004766355
ところが数式3の右辺において,各括弧でまとめられた第1項〜第4項は,それぞれ,左右の梁および上下の柱の節点モーメントと同じになっている。つまり数式3は節点モーメントの釣合式そのものに等しい。したがって,節点モーメントの釣合式がパネルモーメントの釣合式で代替可能になって,手段(ア)に従い,骨組全体の方程式中の略任意の節点モーメントに対応する外力項を,パネルモーメントに対応する外力項で置き換えても骨組全体の方程式は成り立つ事になる。この手段は,物理的には,外力モーメントの作用領域を,節点という点に代えて,接合部やパネル等の大きさを持つ領域としてとらえ直す意味を持っている。
次に,前記手段(イ)については,(1)柱と梁が接合される節点の回転自由度について,柱側と梁側で異なる回転自由度を設定して,(2)両回転自由度間に,柱梁接合部の剛性や耐力を模擬する回転ばねまたは回転ばねを含む要素を設けて,更に(3)柱側の該回転自由度に対応する外力項には,単純な平面解析の場合には数式2に類する,柱側の回転自由度に係わるパネルモーメントが加わるように,柱および梁の部材剛性マトリクスを工夫して,同様に(4)梁側の該回転自由度に対応する外力項には,単純な平面解析の場合には数式1に類する,梁側の回転自由度に係わるパネルモーメントが加わるように,柱および梁の部材剛性マトリクスを工夫する。これらにより,パネルモーメントが自由度間の一対の外力として扱えて,骨組全体の方程式中で対応する外力項を未知数ではなく既知数にできる。
次に,前記手段(ウ)については,もし平面骨組の場合であれば図1で描けるような,柱梁接合部のせん断変形を追加する変換マトリクスを考える。まず,3次元中の節点変位ベクトルDを,3方向の並進変位DX・DY・DZ,自部材側(柱側または梁側で順不同)の3方向の回転変位RCX・RCY・RCZ,相手部材側(梁側または柱側で順不同)の3方向の回転変位RBX・RBY・RBZ,を使って次式でおく。
Figure 0004766355
また,該接合部のせん断変形を除外して考えた,自部材用の節点変位ベクトルDCは,図1の二重線の部分がせん断変形しなかった場合を考えれば良いから,3方向の自部材用の並進変位DCX・DCY・DCZ,を使って次式でおける。
Figure 0004766355
また,該せん断変形を除外して考えた,節点から自部材の略フェイス端への距離ベクトルECを,3方向の成分ECX・ECY・ECZ,を使って次式でおく。
Figure 0004766355
このとき,DCとDの並進変位の差は,図1の二重線の部分のせん断変形を考えれば良いから,次式で表せる。
Figure 0004766355
上式を,せん断変形を付加するための変換マトリクスTCを用いて書き直すと,以下の式が得られる。
Figure 0004766355
Figure 0004766355
以上により,柱梁接合部のせん断変形を除外して考えた部材剛性マトリクスをKCとすると,柱梁接合部のせん断変形を考慮した部材剛性マトリクスKは,次式で与えられる。
Figure 0004766355
数式9の変換マトリクスTCは,距離ECの3成分ECX・ECY・ECZを使って表されているので,柱梁接合部と柱部材または梁部材の位置関係には特に制約がなく,汎用性のある変換マトリクスが得られている。
なお立体骨組中の柱部材や梁部材において,材端の剛域のための変換マトリクスTEは,距離ECに対して次式で書ける事が知られている。
Figure 0004766355
このため,せん断変形を付加するための変換マトリクスを,数式11の距離ECに関する変換とまとめて,一つの変換マトリクスTETCとすれば,次式で表せる。
Figure 0004766355
上式のTETCは,数式9のTCよりも簡単な形になって,実施時に都合が良い。なお以上の変換マトリクスは,例えば通常の骨組解析で使用する全体座標系−局所座標系間の変換マトリクスと積にしても表現可能であるから,マトリクスの具体的内容そのものは座標系の設定に伴って変化する性質がある。もちろん以上の変換マトリクスは,単純に2次元用に低減する事で,平面骨組解析にもそのまま適用できる。
得られた変換マトリクスとパネルモーメントの関係を調べておく。図2のような平面骨組の接合部を考えた場合,略フェイス端での部材外力の並進成分FCX・FCYおよび回転成分MCZを,節点での部材外力の並進成分FX・FY,自部材側の回転成分MPCZおよび相手部材側の回転成分MPBZに変換するマトリクスは,数式12のTETCを2次元に低減して転置すれば良いから,次式で表せる。
Figure 0004766355
上式の第3行と第4行について,図2のML・MR・MU・MD,QL・QR・QU・QD,WB・WCを用いて,外力の向きを考慮して左右の梁および上下の柱の和をとると,柱側の回転角に関するモーメントMPC,および梁側の回転角に関するモーメントMPBは以下の式のようになる。
Figure 0004766355
Figure 0004766355
Figure 0004766355
つまり,MPCやMPBが変換マトリクスによって節点モーメントではなく数式1や数式2で記載したパネルモーメントMPを与えている事がわかる。
本発明によれば,柱梁接合部の応力や変形をも含めて計算する骨組解析において,(1)柱梁接合部と柱部材または梁部材が特定の位置関係になくても計算ができ,(2)任意形状の骨組を計算でき,(3)立体骨組でも計算でき,(4)柱部材と梁部材で統一的な変換マトリクスを使うのでプログラムが簡明になり,(5)パネルモーメントを未知数のまま骨組全体の剛性方程式中に紛れ込ませる事がないので解法上の支障がなく,(6)簡単な形の変換マトリクスなので計算コストを増やさずに,(7)節点モーメントをパネルモーメントに替える事で節点を点から大きさを持つ領域へと拡張可能な物にして,(8)立体3方向のパネルモーメントが得られるため3次元的に剛性や耐力が相関した柱梁接合部の組み込みが容易になる,という効果がある。
以下,本発明の実施の最良の形態を図3に基づいて説明する。図3は最良の形態のフローチャートで,プログラム全体の流れを示す。以下,流れに沿って説明する。最初に入力データの取得を行う(S1)。該取得は,入力装置から行っても良く,既存のファイルから行っても良い。該入力データは,例えば,各節点の位置や自由度,各部材の種類や位置や剛性や耐力,与える外力や地動,等の骨組解析で用いる情報で良い。続いて,自由度の設定を行うが,柱側の回転自由度と梁側の回転自由度とは別個の自由度に設定する(S2)。
次に,柱や梁の部材剛性マトリクスを作成するが,最初に材端の剛域部分などを含まない剛性マトリクスを作成する(S3)。この作成では,基本的な線材理論や一般化塑性ヒンジ理論や弾塑性大変形理論や1次元有限要素法などを必要に応じて利用して,弾性または弾塑性の剛性マトリクスを作成する。続いて,数式12の変換マトリクスを用いて,数式10と同様の座標変換を行う(S4)。変換された剛性マトリクスは,対応自由度として柱側の回転自由度と梁側の回転自由度の両方を基本的に含むようになる。続いて,該変換後の剛性マトリクスを骨組全体の剛性マトリクスの対応位置へ足し込む(S5)。以上のステップS3〜S5を柱部材や梁部材について繰り返す。
次に,柱梁接合部について,例えば1〜3次元の回転ばね等の要素でモデル化して,該要素の剛性マトリクスを計算して,全体剛性マトリクスの対応位置へ足し込む(S6)。その足し込み位置は基本的には,柱側の回転自由度と梁側の回転自由度の間などとすれば良い。該回転ばね等の要素は,立体3方向で剛性や耐力の相関を有するばねとしても良く,軸剛性や軸耐力との相関を有するばねとしても良い。該ステップS6は柱梁接合部について繰り返す。次に,必要があれば,その他の部材等の剛性マトリクスを作成して,全体剛性マトリクスへ足し込む(S7)。該ステップS7はその他の部材等について繰り返す。
次に,荷重増分や地動などに応じた骨組全体の外力ベクトルを計算し(S8),連立1次方程式を解いて,変位増分を計算し,節点変位を更新する(S9)。該節点変位をもとに,柱部材や梁部材や柱梁接合部やその他部材等について,応力や歪を計算すると共に状態の更新を行う(S10)。該ステップS10は,柱部材や梁部材や柱梁接合部やその他の部材等について繰り返す。次に,必要に応じて,全部または特定の節点変位や部材応力や歪などの数値を記録装置のファイル等に出力すると共に,以上のステップS3〜S10の主要な計算結果を内部メモリー等の記憶装置に保存する(S11)。なお数値のファイル等への出力や,主要な計算結果の保存は,ステップS9やS10における更新時に行っても良く,ステップS3〜S10の中で随時に行っても良い。
以上の部分的繰り返しを含む一連のステップS3〜S11を,増分解析のステップ毎に繰り返して,計算実行する。全ての増分解析ステップを終了するか,または増分解析の終了条件を満足したら,ステップS11等で保存した計算結果を該記憶装置から読み出して,必要に応じた再構成を行って,変位や応力や歪などの計算結果のデータを記録装置のファイル等に出力する(S12)。なお出力は別の時点で行っても良い。該出力ファイルは,別に用意されたプログラムで必要な数値や図を画面に表示したり,紙に印刷したりする時に利用される。
本発明は,骨組解析を利用する産業分野において利用可能で,建築分野や土木分野において建物や構築物設計のためのプログラムとして利用可能である。また本発明を利用したプログラムそのものを市販可能である。
柱梁接合部のせん断変形の追加 平面骨組での右手系の符号の向き 最良の形態のフローチャート
1 柱
2 梁
3 柱梁接合部

Claims (2)

  1. 柱や梁などの骨組部材を線材に置換して,立体骨組の応力や変形を計算するプログラムであって,以下の(a)〜(e)の手順すなわち,(a)柱と梁が接合される節点の回転自由度について,柱側と梁側で異なる回転自由度を設定可能にした手順と,(b)柱側の該回転自由度に対応する外力項を節点モーメントではなくパネルモーメントにして,該パネルモーメントは柱側の回転自由度に係わるパネルモーメントとなるように,柱および梁の部材剛性を座標変換する手順と,(c)梁側の該回転自由度に対応する外力項を節点モーメントではなくパネルモーメントにして,該パネルモーメントは梁側の回転自由度に係わるパネルモーメントとなるように,柱および梁の部材剛性を座標変換する手順と,(d)該柱側と該梁側の該回転自由度間に,柱梁接合部の剛性や耐力を模擬する回転ばねまたは回転ばねを含む要素を設定可能にした手順と,(e)柱梁接合部を含めて骨組の応力や変形を計算する手順と,をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  2. 柱や梁などの骨組部材を線材に置換して,平面骨組の応力や変形を計算するプログラムであって,前記手順(a)〜(e)をコンピュータに実行させるためのプログラム。
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