JP4763683B2 - 波形測定装置の評価装置および評価方法ならびにジッター測定方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、従来のジッター測定手法においては、測定系自体が持つ時間的な揺らぎは考慮されていない。この測定系自体が持つ時間的な揺らぎについては、パルス信号の波形測定に用いる波形測定装置を例に、次のように説明することができる。
一般に、波形測定装置は、被測定信号の電圧値によってその波形を描画するものである。例えば、所定のサンプリング間隔でサンプリングした値を時間軸に対してプロットすることによって描画された測定信号波形には、被測定信号電圧をサンプリングする際のサンプリング間隔の時間的な揺らぎや、被測定信号電圧を測定する電圧測定系の時間的な揺らぎが存在している。しかしながら、従来のジッター測定手法は、波形測定装置によって得られた測定信号波形には、時間的な揺らぎがないことを前提としたものであった。
その結果として、従来のジッター測定手法によって測定されるジッターには、測定対象である信号発生器のジッターの他に、波形測定装置(例えば、オシロスコープ)等の測定系自体が有する時間的な揺らぎも含まれていると考えられる。
したがって、信号発生器の持つジッターをより正確に測定するためには、測定系の持つ時間的な揺らぎを評価する必要がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、信号発生器のジッターを測定する際に用いる測定系が持つ時間的な揺らぎを評価することを目的とする。
また、測定系の持つ時間的な揺らぎを考慮して、信号発生器の持つジッターをより正確に測定することを目的とする。
本発明に係る波形測定装置の評価装置は、容量(112)を有する受動回路(101)と、前記容量を充放電する駆動回路(102)と、波形測定装置(103)によって測定して得られる、前記受動回路の出力信号の時間的変化を表す応答波形を信号処理して、前記波形測定装置の時間的な揺らぎを求める信号処理手段(105)とを備え、前記信号処理手段は、前記容量を同一の条件の下で充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号の前記波形測定装置による測定値のばらつきを求める処理手段(105a)と、この処理手段により得られた前記波形測定装置による測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する変換手段(105b)とを有することを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
1.1. 第1の実施の形態にかかる評価装置の構成
図1は、本発明の実施の形態における波形測定装置の評価装置の構成例を示す構成図である。図1において、オシロスコープ103が評価対象となる波形測定装置である。評価装置自体は、容量素子112を有する受動回路101と、この容量素子112を充放電する駆動回路として作用する基準信号発生部102と、オシロスコープ103によって測定して得られる、受動回路101の出力信号の時間的変化を表す応答波形を信号処理して、前記波形測定装置の時間的な揺らぎを求める信号処理部105とから構成されている。
また、信号処理部105は、図示はしないが、インターフェースを介してオシロスコープ103の波形出力端子と接続されたコンピュータとこのコンピュータにインストールされた信号処理プログラムから構成される。オシロスコープ103により測定された受動回路101の出力電圧波形は、コンピュータのメモリに記憶され、上記信号処理プログラムによって処理される。上記コンピュータは、上記信号処理プログラムと協働し、測定された受動回路の複数の応答波形に基づいて、オシロスコープ103による測定値のばらつきを求める処理部105aと、この処理手段105aにより得られた測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する変換部105bとを構成する。この信号処理プログラムによる信号処理については後述する。
なお、オシロスコープ103においては、例えば、入力インピーダンスの高いFET(Field Effect Transistor)プローブ104を用いることによって、受動回路101の影響が抑制され、高速信号であっても正確な計測が可能となる。
次に、信号処理部105における測定系の揺らぎの測定、すなわち波形測定装置の評価について説明する。
上述したような基準信号(a)に対する受動回路101の応答波形(b)のうち、放電特性を表す部分は、受動回路101の時定数RCと容量素子112の充電電圧のみによって定まる。すなわち、オシロスコープ103から見た受動回路101は、線形特性を有する信号源であり、容量素子112を一定の充電電圧で飽和させたときの受動回路101の放電特性は高い再現性を備えている。したがって、オシロスコープ103による複数の測定波形はすべて同一となるはずである。しかしながら、実際には、図3に示すように、オシロスコープ103によって測定される、放電特性を表す複数の応答波形にはばらつきがある。このようにオシロスコープ103によって測定された応答波形がばらつく原因は、次のように考えることができる。
本実施の形態では、信号処理部105において、オシロスコープ103によって測定され、図示しないメモリ上に記憶された複数の応答波形(本実施の形態においては、容量素子112の放電に伴う受動回路の出力信号電圧の時間変化の波形)に対し、上述した信号処理プログラムにより信号処理を施して、オシロスコープ103の時間的な揺らぎを求める。以下、信号処理部105における信号処理について図3乃至図6を参照して詳述する。
図5は、信号処理プログラムによって実現される信号処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態において、信号処理部105は、まず、N個の応答波形から、各サンプリングポイントにおける測定値V(p,n)のばらつきを求める。具体的には、メモリ上に記憶された複数の応答波形の各サンプリングポイントにおける測定値V(p,n)に対し、サンプリングポイントpごとにその平均Vaverage(p)と分散(または標準偏差)σV(p)とを求める(ステップ101)。図6は、横軸を時間軸として平均Vaverage(p)と分散σV(p)の分布の一例をそれぞれ表したものである。
図3を参照すると、電圧軸方向のばらつきを時間軸方向の揺らぎに変換するには、当該サンプリングポイントにおける基準となる時間−電圧関係の傾き(dVref)で上記電圧軸方向のばらつきを除することによって達成されることが理解できる。
まず、時間軸上で互いに隣接する2つのサンプリングポイント間における分散(または標準偏差)の差の大きさ:
ΔσV(p)=|σV(p+1)−σV(p)|
を求める(ステップ102)。このように各サンプリングポイント間における分散の差を求めることによって、受動回路101の出力信号電圧を測定する際に生じた量子化誤差を相殺することができる。これは、量子化誤差がすべてのサンプリングポイントにおいて等しく発生していると考えることができるからである。
ΔVaverage(p)=Vaverage(p+1)−Vaverage(p)
を求める(ステップ103)。
そして、サンプリングポイント間における分散の差 ΔσV(p)を各サンプリングポイントにおける傾きΔVaverage(p)で除し(ステップ104)、これにサンプリング間隔tsを乗じることによって、電圧軸方向のばらつきを時間軸方向の揺らぎに変換する(ステップ105)。
また、本実施の形態においては、上述したステップ101において各サンプリングポイント間における分散(または標準偏差)の差を求めることによって、受動回路101の出力信号電圧を測定する際に発生した量子化誤差を相殺することができる。
次に本発明の第2の実施の形態にかかる評価装置および評価方法について説明する。
この第2の実施の形態は、上述した第1の実施の形態と比較すると、信号処理部105における信号処理、特に測定系の揺らぎの評価に関する手順が異なるのみで、受動回路101、オシロスコープ103等、その他のハードウェア的な構成については、第1の実施の形態と変わるところはない。よって、同一の構成については、第1の実施の形態の説明と同一の符号を用いることとし、その説明は省略する。
第1の実施の形態と同様にして、オシロスコープ103によって測定された複数の
オシロスコープ103によって測定された複数の応答波形(本実施の形態においては、容量素子112の放電に伴う受動回路の出力信号電圧の時間変化の波形)が、信号処理部105の図示しないメモリ上に記憶されたものとする。
以下、本実施の形態における測定系の揺らぎの評価について図7を参照して説明する。
本実施の形態において、信号処理プログラムによる信号処理は、図7に示すように、まず、オシロスコープ103による複数の応答波形に基づいて、応答波形ごとに時間軸上で互いに隣接する2つのサンプリングポイント間における測定値の差:
ΔV(p,n)=V(p+1,n)−V(p,n)
を求める(ステップ201)。そして、このようにして求めた測定値の差ΔV(p,n)の分散(または標準偏差)σΔV(p)をサンプリングポイントpごとに求める(ステップ202)。次いで、この分散(または標準偏差)σΔV(p)から量子化誤差σquantaを差し引く(ステップ203)。
なお、量子化誤差σquantaは、無信号状態で測定を行うことにより求めることができる。
ΔVaverage(p)=Vaverage(p+1)−Vaverage(p)
を求める(ステップ205)。
このようにして得られた時間軸方向の揺らぎは、オシロスコープ103の持つ時間的な揺らぎを表すと考えられる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図8は、本実施の形態における評価装置の構成図である。本実施の形態においては、受動回路501が誘導素子511と容量素子112とから構成されたLC共振回路である点で上述した第1および第2の実施の形態と異なる。したがって、基準信号発生回路102によって方形波からなる基準信号が与えられたときの受動回路501の応答は、図9に示すような振動現象を示す。誘導素子と容量素子とを組み合わせることで得られる共振現象は、受動回路501の過渡応答であり、前述した積分回路の場合と同様に、数秒程度の短い間における繰り返しであれば、非常に高い再現性が得られるものと考えられる。
なお、その他の構成要素については、第1または第2の実施の形態と同一であるので、その説明は省略する。
本発明の第4の実施の形態にかかる評価装置は、基準信号発生回路102と受動回路101との間に差動増幅器106を備えたことを特徴とする。図10に示すように、差動増幅器106の出力端子は受動回路101の入力端子に接続され、差動増幅器106の入力端子には基準信号発生回路102が出力する方形波が入力されている。その他の構成については、上述した第1または第2の実施の形態と変わるところはないので、その詳細な説明を省略する。
まず、第1には、受動回路101からより安定した応答を得ることができる。一般に、基準信号発生器102から出力される方形波にノイズが乗っていた場合や浮遊容量等の影響で波形が歪んだ場合に、受動回路101から一定の応答が得られなくなるおそれがある。これに対して、差動増幅器106を用いて基準信号を増幅することによって、S/N比を向上させるとともに、受動回路101に入力される基準信号を整形することにより、信号源のリンギングの影響を除去することができる。よって、受動回路101の応答を安定させることができるのである。
次に本発明の第5の実施の形態にかかるジッター測定方法について説明する。
上述したように、オシロスコープを用いて水晶発振器等の信号発生器のジッターを測定する方法においては、実際に測定されるジッターは、信号発生器自体のジッターとオシロスコープ等の測定系のジッターが含まれている。ここで、両者のジッター成分が正規分布を示すものとすると、以下の(1)式で示すことができる。なお、Jallは測定されるジッター,Joscは信号発生器本来のジッター,Jmeasは測定系のジッターをそれぞれ示している。
Jall=Josc+Jmeas・・・(1)
Josc=Jall−Jmeas・・・(2)
これはジッター測定器によって測定されるジッターから、測定系のジッターを差し引くことにより、信号発生器本来のジッターが得られることを意味している。
よって、ジッター測定系であるオシロスコープの時間的な揺らぎを除いた、信号発生器本来のジッターをより高い精度で計測できる。
Claims (13)
- 容量を有する受動回路と、
前記容量を充放電する駆動回路と、
波形測定装置によって測定して得られる、前記受動回路の出力信号の時間的変化を表す応答波形を信号処理して、前記波形測定装置の時間的な揺らぎを求める信号処理手段とを備え、
前記信号処理手段は、
前記容量を同一の条件の下で充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号の前記波形測定装置による測定値のばらつきを求める処理手段と、
この処理手段により得られた前記波形測定装置による測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する変換手段と
を有することを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 請求項1に記載された波形測定装置の評価装置において、
前記処理手段は、
前記容量を同一の条件の下で充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の前記複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号を所定の間隔でサンプリングした前記波形測定装置による測定値について、各サンプリングポイントにおけるばらつきを求め、
前記変換手段は、
時間軸上で互いに隣接する2つの前記サンプリングポイント間における前記ばらつきの差に基づいて前記時間的な揺らぎを求める
ことを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 請求項1に記載された波形測定装置の評価装置において、
前記処理手段は、
前記容量を同一の条件の下で充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の前記複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号を所定の間隔でサンプリングした前記波形測定装置による測定値について、時間軸上で互いに隣接する2つのサンプリングポイント間における前記測定値の差のばらつきを求め、
前記変換手段は、
前記測定値の差のばらつきに基づいて前記時間的な揺らぎを求める
ことを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 請求項1ないし3のいずれか1つに記載された波形測定装置の評価装置において、
前記変換手段は、
前記容量を同一の条件の下で充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の前記複数の応答波形の平均に基づいて前記波形測定装置による測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する
ことを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 請求項1ないし4のいずれか1つに記載された波形測定装置の評価装置において、
前記駆動回路は、方形波を出力する方形波回路と、この方形波回路の出力を入力とする差動増幅器とを備え、前記差動増幅器の出力端子は前記受動回路の入力端子に接続されている
ことを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 請求項1ないし5のいずれか1つに記載された波形測定装置の評価装置において、
前記受動回路は、容量素子と抵抗素子とからなる積分回路である
ことを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 請求項1ないし5のいずれか1つに記載された波形測定装置の評価装置において、
前記受動回路は、容量素子と誘導素子とからなる共振回路である
ことを特徴とする波形測定装置の評価装置。 - 容量を有する受動回路の前記容量を同一の条件の下で複数回充放電したときの前記受動回路の出力信号の時間的変化を波形測定装置によって測定する測定ステップと、
前記波形測定装置により測定された前記容量を充電または放電したときの前記受動回路の複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号の前記波形測定装置による測定値のばらつきを求める信号処理ステップと、
前記波形測定装置による測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する変換ステップと
を有することを特徴とする波形測定装置の評価方法。 - 請求項8に記載された波形測定装置の評価方法において、
前記信号処理ステップは、
前記容量を充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の前記複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号を所定の間隔でサンプリングした前記波形測定装置による測定値について、各サンプリングポイントにおけるばらつきを求め、
前記変換ステップは、
時間軸上で互いに隣接する2つの前記サンプリングポイント間における前記ばらつきの差に基づいて前記時間的な揺らぎを求める
ことを特徴とする波形測定装置の評価方法。 - 請求項8に記載された波形測定装置の評価方法において、
前記信号処理ステップは、
前記容量を充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の前記複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号を所定の間隔でサンプリングした前記波形測定装置による測定値について、時間軸上で互いに隣接する2つのサンプリングポイント間における前記測定値の差のばらつきを求め、
前記変換ステップは、
前記測定値の差のばらつきに基づいて前記時間的な揺らぎを求める
ことを特徴とする波形測定装置の評価方法。 - 請求項8ないし10のいずれか1つに記載された波形測定装置の評価方法において、
前記変換ステップは、
前記容量を充電または放電したときに前記波形測定装置により測定された前記受動回路の前記複数の応答波形の平均に基づいて前記波形測定装置による測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する
ことを特徴とする波形測定装置の評価方法。 - 請求項8ないし11のいずれか1つに記載された波形測定装置の評価方法において、
前記測定ステップは、
前記受動回路の入力段に設けられた差動増幅器を介して方形波を入力する
ことを特徴とする波形測定装置の評価方法。 - 波形測定装置の持つ時間的な揺らぎを測定する第1のステップと、
前記波形測定装置により測定された信号発生器の出力波形に基づいて前記発信器のジッターを測定する第2のステップと、
測定された前記発信器のジッターから前記波形測定装置の揺らぎを差し引いて前記発信器のジッターとする第3のステップと
を有し、
前記第1のステップは、
容量を有する受動回路の前記容量を同一の条件の下で複数回充放電したときの前記受動回路の出力信号の時間的変化を波形測定装置によって測定する測定ステップと、
前記波形測定装置により測定された前記容量を充電または放電したときの前記受動回路の複数の応答波形に基づいて、前記受動回路の出力信号の前記波形測定装置による測定値のばらつきを求める信号処理ステップと、
前記波形測定装置による測定値のばらつきを時間的な揺らぎに変換する変換ステップと
を有することを特徴とするジッター測定方法。
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