JP4757800B2 - 一酸化窒素検出・定量用プローブとそれを用いた一酸化窒素の検出・定量方法 - Google Patents

一酸化窒素検出・定量用プローブとそれを用いた一酸化窒素の検出・定量方法 Download PDF

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Description

この出願の発明は、細胞内の一酸化窒素を検出するためのプローブと、それを用いた一酸化窒素の検出・定量方法、可溶性グアニル酸シクラーゼと一酸化窒素の結合に影響を与える物質のスクリーニング方法、並びに一酸化窒素濃度変化のモニタリング方法に関するものである。
一酸化窒素(Nitric Oxide;NO)については、1987年に血管内皮由来の血管弛緩因子であることが報告されて以来、その生理活性物質としての役割が次々に見出されている。アミノ酸のL−アルギニンを基質としてNO合成酵素(NO synthase;NOS)により合成されたNOは、心血管系のみならず、免疫系、中枢神経系においても、それぞれマクロファージによる生体防御反応、記憶・学習におけるシナプスの可塑性獲得のメカニズムなど、多様な生物応答を制御していることが明らかになっている。また、疾患に関しても、心血管系では動脈硬化、脳卒中、高血圧、免疫系では感染疾患、中枢神経系では痴呆、アルツハイマー病等にNOが関係していると考えられている。
このようなNOは、生体内において酵素や活性酸素による酸化を受けやすく、不安定で短寿命な分子である。そのため、生理的濃度のNOを検出するのは困難であり、生体内におけるNOの動態は未知の領域であったのが実情である。
生体内においてNOを検出する方法として、NOと化学反応するジアミノ基を有するフルオレセイン骨格の有機分子(diaminofluorescein;DAF)が報告されている(非特許文献1)。DAFは、通常は無蛍光であるが、酸素存在下でNOと反応すると蛍光性のトリアゾール体となり、緑色蛍光を呈するようになる。したがって、このような有機分子を用いることにより、細胞内に生成したNOを蛍光顕微鏡下で可視化分析することが可能となった。また、同様の原理により赤色蛍光を呈するローダミン骨格の有機分子(DAR)も報告されている(非特許文献2)。
しかしながら、これら従来の有機分子は、細胞内に導入する際に脂質膜に非特異的に吸着してNOに非依存的な蛍光を発するため、NOに対する検出下限が大幅に上昇するという問題があった。また、これら有機分子は、NOと不可逆的に化学反応するため、NO濃度の変化など、複雑なNOの生体内動態を追跡できないという問題もあった。
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、nMオーダーのNOの濃度変化を、精度高く、簡便に可逆的に可視化検出するための新たな手法を提供することを課題としている。
:特開2002−017359 :PCT/JP01/5631
:Anal. Chem. 70; 2446-2453, 1998. :Anal. Chem. 73; 1967-1973, 2001. :Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77; 7380-7384, 1980
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、可溶性グアニル酸シクラーゼ(以下、sGCと記載する)の二つのサブユニットに、各々、サイクリックグアノシン3',5'-一リン酸(以下、cGMPと記載する)を認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブが連結されていることを特徴とする一酸化窒素(以下、NOと記載する)検出・定量用プローブを提供する。
この出願の発明は、第2には、sGCの二つのサブユニットαおよびβに、各々、cGMPを認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブが連結されてなる二つのハイブリッド蛋白質が、二量化することにより得られる前記のプローブを提供する。
さらに、この出願の発明は、第3には、cGMP可視化プローブが、cGMP結合蛋白の両末端に互いの接近が検出可能な二つのマーカー部位が連結されてなるものである前記いずれかのプローブを、第4には、cGMP可視化プローブにおけるcGMP結合蛋白が、cGMP依存性キナーゼIαであるプローブを、そして、第5には、cGMP可視化プローブにおける互いの接近が検出可能な二つのマーカー部位が、シアン蛍光蛋白質と黄色蛍光蛋白質であるプローブを提供する。
また、この出願の発明は、第6には、前記いずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸(以下、GTPと記載する)を共存させ、該プローブのシグナル変化を測定することを特徴とする一酸化窒素の検出・定量方法を提供する。
さらに、この出願の発明は、第7には、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入することにより、該プローブとGTPを細胞内で共存させる前記の検出・定量方法を、第8には、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入することにより、前記いずれかのプローブとGTPを細胞内で共存させる前記の検出・定量方法を提供する。
この出願の発明は、第9には、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとGTPを共存させる前記の検出・定量方法を、第10には、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において前記いずれかのプローブとGTPを共存させる前記の検出・定量方法を提供する。
この出願の発明は、第11には、sGCとNOの結合に影響を与える物質をスクリーニングする方法であって、前記いずれかのプローブとGTPと候補物質とNOを共存させて、候補物質存在下および非存在下におけるシグナル変化を測定することを特徴とするスクリーニング方法を提供する。
また、この出願の発明は、第12には、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、さらに候補物質を導入することにより、プローブとGTPと候補物質とNOを細胞内において共存させる前記のスクリーニング方法を、第13には、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、さらに候補物質を導入することにより、前記いずれかのプローブとGTPと候補物質とNOを細胞内において共存させる前記のスクリーニング方法を提供する。
この出願の発明は、第14には、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、候補物質を投与することにより、該非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとGTPと候補物質と一酸化窒素を共存させる前記のスクリーニング方法を、そして、第15には、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、候補物質を投与することにより、該非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとGTPと候補物質と一酸化窒素を共存させる前記のスクリーニング方法を提供する。
さらに、この出願の発明は、第16には、刺激による細胞内でのNO濃度の変化をモニタリングするための方法であって、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入して得られる細胞に、刺激を付与し、刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することを特徴とする細胞内NO濃度のモニタリング方法を、第17には、刺激による細胞内でのNO濃度の変化をモニタリングするための方法であって、細胞内に、sGCの二つのサブユニットの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入して得られる細胞に、刺激を付与し、刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することを特徴とするモニタリング方法を提供する。
この出願の発明は、さらに、第18には、刺激による生体内でのNO濃度の変化をモニタリングするための方法であって、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、刺激を付与し、この非ヒト動物またはその子孫動物での刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することを特徴とするモニタリング方法を、そして、第19には、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、刺激を付与し、この非ヒト動物またはその子孫動物での刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することを特徴とするモニタリング方法を提供する。
そして、上記第1の発明のNO検出定量用プローブでは、sGCの二つのサブユニットに、各々、cGMPを認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブが連結されていることから、NOが共存すると、プローブ中のsGC部位におけるヘム鉄にNOが配位結合し、sGCの酵素活性が200倍以上に上昇する。このとき、GTPが系内に共存すれば、このGTPを基質としてセカンドメッセンジャーのcGMPが大量に生成される。このcGMPは、プローブ中のcGMP可視化プローブ部位により認識され、cGMP可視化プローブがシグナルを発する。したがって、このシグナル変化を測定することにより、系内のNOを精度高く検出することが可能となる。
また、上記第2の発明のプローブは、sGCの二つのサブユニットαおよびβに、各々、cGMPを認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブが連結されてなる二つのハイブリッド蛋白が、二量化し、sGCが再構築されることにより得られる。
上記第3の発明のプローブでは、cGMP可視化プローブは、cGMP結合蛋白の両末端に互いの近接が検出可能な二つのマーカー部位が連結されてなるものであることから、NOがプローブ中のsGCのヘム鉄に配位結合し、酵素活性が増大してcGMPが生成されると、cGMPがcGMP結合蛋白と結合し、cGMP結合蛋白の立体構造が変化し、両末端に連結された二つのマーカー部位が近接するようになる。これによりシグナルが発信され、NOを精度高く検出することが可能となる。
さらに、このようなプローブの態様として、上記第4の発明では、cGMP結合蛋白をcGMP依存性蛋白キナーゼIα(以下、PKG Iαと記載することがある)とし、上記第5の発明では、cGMP可視化プローブにおける互いの近接が検出可能な二つのマーカー部位を、シアン蛍光蛋白質と黄色蛍光蛋白質とする。
また、上記第6の発明のNOの検出・定量方法では、前記いずれかのプローブとGTPを共存させ、該プローブのシグナル変化を測定することにより、NOを検出することが可能となる。すなわち、NOが存在する場合、プローブ中のsGC部位におけるヘム鉄にNOが配位結合し、sGCの酵素活性が上昇し、共存するGTPを基質としてcGMPが大量に生成される。そして、このcGMPが、プローブ中のcGMP可視化プローブ部位により認識され、シグナルが発信されるのである。そして、予めNO濃度とシグナル変化量との関係を検量しておくことにより、NOの定量も可能となる。
さらに、上記第7の発明では、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入することにより、該プローブとGTPを細胞内で共存させることが可能となる。また、上記第8の発明では、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入することにより、細胞内でsGCのαおよびβ二つのサブユニットが二量化し、sGCが構築される。したがって、前記のプローブとGTPを細胞内で共存させることが可能となる。
上記第9の発明では、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとGTPを共存させることができる。また、上記第10の発明では、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞においてsGCのαおよびβ二つのサブユニットが二量化し、sGCが構築される。したがって、前記のプローブとGTPを、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において共存させることが可能となる。
さらに、上記第11の発明のスクリーニング方法では、前記いずれかのプローブと、GTPと、候補物質と、NOを共存させて、候補物質存在下および非存在下におけるシグナル変化を測定することにより、sGCとNOの結合に影響を与える物質をスクリーニングすることができる。
上記第12の発明のスクリーニング方法では、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、さらに候補物質を導入することにより、プローブとGTPと候補物質とNOを、この細胞内において共存させることが可能となる。
また、上記第13の発明のスクリーニング方法では、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、さらに候補物質を導入することにより、細胞内でsGCのαおよびβ二つのサブユニットが二量化し、sGCが構築され、前記いずれかのプローブとGTPと候補物質とNOを、細胞内において共存させることが可能となる。
上記第14の発明のスクリーニング方法では、さらに、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、候補物質を投与することにより、該非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとGTPと候補物質と一酸化窒素を共存させることが可能となる。
上記第15の発明のスクリーニング方法では、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、候補物質を投与することにより、該非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとGTPと候補物質と一酸化窒素を共存させることが可能となる。
上記第16の発明では、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入して得られる細胞に、刺激を付与し、刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することにより、刺激による細胞内でのNO濃度の変化をモニタリングすることが可能となる。
また、上記第17の発明では、細胞内に、sGCの二つのサブユニットの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入して得られる細胞に、刺激を付与し、刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することにより、刺激による細胞内でのNO濃度の変化をモニタリングすることが可能となる。
さらに、上記第18の発明では、前記いずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより得られる非ヒト動物またはその子孫動物に刺激を付与し、この非ヒト動物またはその子孫動物での刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することにより、刺激による生体内でのNO濃度の変化をモニタリングすることが可能となる。
そして、上記第19の発明では、細胞内に、sGCの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、刺激を付与し、この非ヒト動物またはその子孫動物での刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することにより、刺激による生体内でのNO濃度の変化をモニタリングすることが可能となる。
図1Aは、この出願の発明の一酸化窒素検出・定量用プローブの構成を例示した概略模式図と、図1Bはこの出願の発明の一酸化窒素検出・定量用プローブによるシグナル検出の原理を例示した概略模式図である。
図2は、この出願の発明の実施例において使用されたcDNAの構成を示した概略模式図であり、「A」はCGY、α-CGY、β-CGYそれぞれの構成を示し、「B」はCGYとsGCαとを連結した「sGCα-CGY」およびCGYとsGCβとを連結した「sGCβ-CGY」(NOA-1)の構成を示している。
図3は、この出願の発明の実施例において、一酸化窒素検出・定量用プローブ発現した細胞をNOの供与体であるNOC-7(5 nM)で刺激した際のCFPとYFPの蛍光強度比(CFP/YFP)の経時変化を示した図である。(a:細胞未処理、b:100μM NS2028で細胞を前処理、c:200μM Zaprinastで細胞を前処理)
図4Aは、この出願の発明の実施例において、CHO-K1細胞に、前記のα−CGYとβ−CGYを各々単独で発現させ、10 nm NOC-7でその細胞を刺激した際のCFPとYFPの蛍光強度比(CFP/YFP)の経時変化を示した図であり、図4Bは、50 nm NOC-7でその細胞を刺激し、約400秒後にさらに8-Br-cGMPを添加した際のCFPとYFPの蛍光強度比(CFP/YFP)の経時変化を示した図である。
図5は、この出願の発明の実施例において、一酸化窒素検出・定量用プローブ発現した細胞をNOの供与体であるNOC-7(5 nM)で繰り返し刺激した際のCFPとYFPの蛍光強度比(CFP/YFP)の経時変化を示した図である。
図6は、この出願の発明の実施例において、一酸化窒素検出・定量用プローブ発現した細胞を各濃度のNOC-7で刺激した際のNOC-7濃度とCFPとYFPの蛍光強度比(CFP/YFP)の経時変化を示した図である。
図7は、NOA-1を発現させたCHO-K1細胞を、各種濃度のNOC-7で刺激し、NOに対する蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を測定するとともに、8-Br-cGMPの添加による蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を測定した結果の図であり、「A」はNOC-7刺激した際の細胞のシュードカラーイメージを示した図であり、「B」は可逆的なNOA-1の応答の様子を示した図である。
図8は、nM範囲のNOに対するNOA-1の応答を示した図である。
図9は、一酸化炭素(CO)によるNOA-1のFRET応答への影響を検証し、NOA-1の選択性について検証した結果を示した図であり、「A」は時間経過における蛍光強度比の変化を示し、「B」は各種濃度のCOにおける蛍光強度比を示している。
図10は、ANPおよびisoproterenol刺激に対するNOA-1の応答を示した図であり、「A」はCHO-K1細胞でのANP刺激における応答を示し、「B」はCHO-K1細胞でのisoproterenol刺激における応答を示している。
図11は、細胞におけるnM範囲のNOの安定生成について検証した結果を示した図であり、「A」はbradykininまたはずり応力を与えた血管内皮細胞におけるNOA-1の応答を、「B」はNOA-1を発現するCHO-K1細胞および血管内皮細胞のシュードカラーイメージを示した図である。
図12は、細胞におけるnM範囲のNOの安定生成について検証した結果を示した図であり、「A」はL-NAME刺激を与えたCHO-K1細胞におけるNOA-1の応答の時間経過を示し、「B」はL-NAME刺激を与えたCHO-K1細胞および内皮細胞におけるNOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を示した図である。
図13は、細胞におけるnM範囲のNOの安定生成について検証した結果を示した図であり、「A」はNOC-7刺激を与え、その後にさらに8-Br-cGMP刺激を与えたCHO-K1細胞(白丸)および内皮細胞(黒丸)におけるNOA-1の応答の時間経過を示し、「B」はNOC-7刺激を与えたCHO-K1細胞および内皮細胞におけるNOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を示した図である。
図14は、細胞におけるnM範囲のNOの安定生成について検証した結果を示した図であり、「A」はzaprinast刺激を与え、その後にさらに8-Br-cGMP刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の応答の時間経過を示し、「B」はzaprinast刺激を与えたCHO-K1細胞および内皮細胞におけるNOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を示した図である。
図15は、血管内皮細胞における基礎濃度NOの安定生成について検証した結果を示した図である。
図16は、PI(3)K-Akt経路による、血管内皮細胞においての基礎NOの生成制御について検証した結果を示した図であり、「A」はLY 294002刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の応答の時間経過を示し、「B」はL-NAMEとLY 294002とによる刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を示した図である。
図17は、NOC-7刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の応答の時間経過を示した図である。なお、ビークル溶液(コントロール)、L-NAME、MAA-Aktをコードするアデノウイルスベクター、myr-Aktをコードするアデノウイルスベクターそれぞれによる前処理を行った。
図18は、NOC-7刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を示した図である。なお、ビークル溶液(コントロール)、L-NAME、MAA-Aktをコードするアデノウイルスベクター、myr-Aktをコードするアデノウイルスベクターそれぞれによる前処理を行った。
図19は、各種の刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の応答を示した図であり、「A」は過剰発現myr-Aktの存在または非存在下(白丸:myr-Aktなし、黒丸:myr-Aktあり)でのL-NAME刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の応答の時間経過を示し、「B」は過剰発現myr-Aktの存在または非存在下で、L-NAMEによる刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を示し、「C」はインスリン刺激を与えた内皮細胞におけるNOA-1の応答の時間経過を示した図である。
図20は、この出願の発明の実施例において使用されたcDNAの構成を示した概略模式図であり、「A」はCGY(T178A/T302A)の構成を示し、「B」はCGY(T178A/T302A)とsGCαとを連結した「sGCα-CGY(T178A/T302A)」およびCGY(T178A/T302A)とsGCβとを連結した「sGCβ-CGY(T178A/T302A)」(NOA-2)の構成を示している。
図21は、図2に例示したNOA-1と、図20に例示したNOA-2との蛍光強度比を比較検証した結果を示した図であり、「A」はCHO-K1細胞における各種濃度のNOC-7によるNOA-1とNOA-2の応答、「B」はCHO-K1細胞における各種濃度の8-Br-cGMPによるCGYと CGY(T178A/T302A)の応答、「C」は内皮細胞におけるNOC-7刺激によるNOA-1とNOA-2の時間経過における変化、「D」は内皮細胞におけるbradykinin刺激によるNOA-1とNOA-2の時間経過における変化を示している。
この出願の発明の一酸化窒素検出・定量用プローブ(1)は、図1Aに示されるとおり、sGC(2)の二つのサブユニットα(21)およびβ(22)に、各々、cGMPを認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブ(3)が連結されていることを特徴とするものである。
このようなプローブ(1)は、NOが存在する場合には、プローブ(1)におけるsGC(2)部位のヘム鉄(23)にNOが配位結合し、これによりsGC(2)の酵素活性が増大し、GTPを基質として大量のcGMPが生成され、プローブ(1)内のcGMP可視化プローブ(3)部位がcGMPを認識し、シグナルを発信するという原理に基づき作用するものである。なお、図1Bは、この原理の概略を模式的に例示した概略模式図である。
したがって、言い換えれば、この出願の発明の一酸化窒素検出・定量用プローブ(1)は、NOの濃度変化を、sGC(2)部位で増幅し、cGMP濃度の変化としてcGMP可視化プローブ(3)部位からのシグナル変化として検出するものといえる。
また、NOのsGC(2)部位のヘム鉄(23)への配位結合は、平衡反応であり、可逆的であることから、NOがsGC(2)部位のヘム鉄(23)に配位結合し、遊離のNOが減少すると、sGC(2)部位のヘム鉄(23)からNOが解離するようになり、sGC(2)部位の酵素活性が失われる。そのため、cGMP生成が行われなくなる。また、系内にホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase;PDE)が存在する場合には、PDEによるcGMPの分解だけが進行するようになるため、cGMP濃度が減少し、cGMP可視化プローブ(3)部位のシグナル変化として現れる。
したがって、この出願の発明のプローブ(1)は、NO濃度依存的に可逆的な応答を示すといえる。
このようなNO検出・定量用プローブ(1)において、cGMP可視化プローブ(3)部位は、cGMPを認識してシグナルを発するものであればよく、とくに限定されないが、好ましくは、この出願の発明者らが報告しているもの(特許文献1および2)、すなわち、cGMP結合蛋白(31)の両末端に互いの近接が検出可能な二つのマーカー部位(32a, 32b)が連結されてなるものとすることが望ましい。このようなcGMP可視化プローブ(3)部位は、cGMPが共存するとき、cGMP結合蛋白(31)がcGMPと結合し、それにより生じる二つのマーカー部位(32a, 32b)の立体配置の変化が光学的変化として現れる。したがって、この光学的変化を測定することにより、NOを検出・定量できるのである。
このようなcGMP可視化プローブ(3)部位において、cGMP結合蛋白(31)としては、cGMP依存性蛋白キナーゼIα(PKG Iα)が例示される。哺乳動物のPKG Iαは、4種の機能性ドメインを有する二つの同一モノマーからなり、N-末端側に存在する二量体化ドメインは、ロイシン/イソロイシンジッパーモチーフからなる。cGMPが共存しない場合、PKG Iαは、キナーゼ不活性で、触媒中心が自己阻害ドメインによって占有されるクローズドコンホメーションを示すが、cGMPと結合した場合には、自己阻害ドメインが活性中心から除去され、PKG Iαは、オープンコンホメーションを示す。したがって、このようなcGMPとの結合によりPKG Iαの両末端のマーカー部位(32a, 32b)の立体配置が変化し、光学的変化を生じて、cGMPとの結合が可視的に検出されるのである。
もちろん、cGMP可視化プローブ(3)部位におけるcGMP結合蛋白(31)は、PKG Iαに限定されず、合成および天然のあらゆるぺプチド鎖を用いることができる。
また、この出願の発明の一酸化窒素検出・定量用プローブ(1)におけるcGMP可視化プローブ(3)部位が、前記のように、cGMP結合蛋白(31)の両末端に互いの近接が検出可能な二つのマーカー部位(32a, 32b)が連結されてなるものである場合、互いの近接が検出可能な二つのマーカー部位(32a, 32b)としては、種々の発色団が考慮される。このとき、発色団は、cGMPとcGMP結合蛋白の結合により生じる立体構造の変化に応答して精度高く波長変化を生じなければならない。生化学の分野においては、一般的に種々の蛍光発色団が用いられるが、構造変化に敏速に応答するものとしては、蛍光共鳴エネルギー移動(以下、FRET)の生起により蛍光強度比に変化を来たす発色団がある。したがって、二つのマーカー部位(32a, 32b)としては、異なる蛍光波長を有する二つの蛍光発色団、具体的には、緑色蛍光蛋白質(GFP)のGFPのブルーシフト変異蛋白質であるシアン蛍光蛋白質(CFP)や、レッドシフト変異蛋白質である黄色蛍光蛋白質(YFP)が適用できる。これにより、cGMPの生成を、蛍光波長の変化として、通常行われる種々の化学的、生化学的分析方法により検出することが可能となる。もちろん、このような二つのマーカー部位(32a, 32b)としては、CFPとYFPの組み合わせ以外にも、各種の蛍光蛋白質やスプリットしたレニラルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−ラクタマーゼ等が適用できる。
一方、この出願の発明のNO検出・定量用プローブ(1)において、sGC(2)部位は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(soluble guanylyl cyclase)であり、広く生物一般に存在するものである。
この出願の発明のNO検出・定量用プローブ(1)を用いてNOを測定するには、任意の系内で、プローブ(1)とGTPとNOを共存させ、シグナル変化を測定すればよい。プローブ(1)とGTPとNOを共存させる方法としては、例えば、細胞を破壊して、細胞内からGTPを溶出させ、その溶液にプローブ(1)を添加する方法があげられる。このような方法によりプローブ(1)とGTPを共存させる場合には、NOをin vitroで検出・定量できる。
あるいは、一酸化窒素検出・定量用プローブ(1)を発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入することにより、該細胞内でプローブ(1)とGTPを共存させることもできる。このとき、発現ベクターとしては、動物細胞発現用のプラスミドベクターが好ましく用いられる。このようなプラスミドベクターを細胞に導入する方法としては、電気穿孔法、リン酸化カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の公知の方法を採用することができる。このように、cGMP可視化プローブ(3)部位を組み込んだ発現ベクターを、内在的にGTPを有する細胞に導入する方法を用いることにより、細胞内でプローブ(1)とGTPを共存させることができる。なお、GTPは通常生細胞内に十分量存在しており、あえて添加しなくてもよい。もちろん、必要に応じて添加してもよい。
さらに、この出願の発明のNO検出・定量用プローブ(1)は、sGC(2)部位の二つのサブユニットα(21)およびβ(22)の各々にGMP可視化プローブ(3)を連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質が、二量化してなるものであってもよい。
したがって、プローブ(1)とGTPとNOを共存させるために、sGC(2)部位の二つのサブユニットα(21)およびβ(22)の各々にGMP可視化プローブ(3)を連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを細胞内に導入し、該細胞内で、sGC(2)部位の二つのサブユニットα(21)およびβ(22)が二量化してα(21)およびβ(22)サブユニットに各々GMP可視化プローブ(3)部位が連結されたsGC(2)部位が構築されるようにしてもよい。
このように、細胞内において細胞内でプローブ(1)とGTPを共存させることにより、細胞内に存在または侵入したNOを検出・定量することが可能となる。
また、前記のようにプローブ(1)とGTPを共存させた細胞を用いて、sGCとNOの結合に影響を与える阻害剤や拮抗剤をスクリーニングしたり、刺激による細胞内NO濃度変化への影響をモニタリングしたりすることも可能となる。
例えば、プローブ(1)とGTPと候補物質を共存させ、候補物質存在下および非存在下におけるシグナル変化を測定することにより、この候補物質が、sGC(2)部位へのNOの結合を阻害するか否かを判断することができる。このとき、プローブ(1)とGTPと候補物質を細胞内において共存させれば、in vivoでのスクリーニングが可能となる。
また、通常の条件で発せされるシグナルを測定した後、特定の刺激を付与し、その際のシグナル変化を測定することにより、該刺激の細胞内NO濃度変化に与える影響をモニタリングすることが可能となる。具体的には、プローブ(1)におけるcGMP可視化プローブ(3)部位を、前記のcGMP結合蛋白(31)の両末端に互いの近接が検出可能な二つのマーカー部位(32a, 32b)が連結されてなるものとし、二つのマーカー部位(32a, 32b)がCFPとYFPの組み合わせとした場合、刺激によりNO濃度が増大すれば、CFPとYFPの蛍光強度比(CFP/YFP)は減少する。もちろん、測定を連続して行うことにより、刺激の時間的な影響、すなわち、刺激によるNO濃度の経時変化を観察することも可能となる。このとき付与される刺激は、ホルモン、内分泌攪乱物質等の生化学的刺激であってもよいし、電気、放射線、熱等の物理的刺激であってもよい。
この出願の発明では、さらに、トランスジェニック非ヒト動物の全細胞において、プローブ(1)とGTPを共存させることもできる。すなわち、前記のいずれかの方法により細胞内でプローブ(1)とGTPを共存させ、公知の方法(例えば、非特許文献3)に従って非ヒト全能性細胞を個体発生することにより、全細胞においてプローブ(1)とGTPが共存している非ヒト動物またはその子孫動物が得られる。
このようなトランスジェニック非ヒト動物は、すべての体細胞にプローブ(1)とGTPを保有しているため、実体蛍光顕微鏡や多光子レーザー走査顕微鏡によりシグナル変化を測定することにより、生体内におけるNOを検出・定量することが可能となる。また、例えば、その体内に医薬品等の検査物質を投与したり、熱、電気、放射線等の刺激を与えたりし、細胞、組織、臓器等におけるNO濃度を測定することにより、生体における各種物質のスクリーニングを行ったり、生体への刺激の影響をモニタリングしたりすることが可能となる。さらに、NOの生命活動に対する影響を調査することも可能となる。あるいは、このようなトランスジェニック非ヒト動物を遺伝子破壊動物等の疾患モデル動物とし、NO産生について正常動物との差異を観察することにより、NOの生理作用に関する基礎生物学的知見を得ることも可能となる。
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
<実施例1>
sGCの二つのサブユニットα、βの両方のC末側に、各々、特許文献1および2に記載の方法で作製したcGMP可視化プローブ(以下、CGYと記載する)を、配列番号1のリンカー(GGEQKLISEEDLLESR)を介して連結したハイブリッド蛋白質(特に、上記サブユニットα、βが二量体を形成したものを「fluorescent indicator for NO with a signal amplifier;NOA-1」とする)を発現するcDNAを遺伝子学的手法により作製した(図2A、B)。また、このNOA-1のN末側に、配列番号2のFLAGタグ(MDYKDDDDK)を付してもよい。
sGCを発現していないCHO-K1細胞に二つのcDNAを導入し、α-CGYおよびβ-CGYを共発現させた。NOの供与体である3-(2-Hydroxy-1-methylethyl-2-nitrosohydrazino)-N-methyl-1-propanamine (NOC-7)5 nMで細胞を刺激したところ、蛍光強度比CFP/YFPが急激に減少し、極小値に達した後、再び徐々に回復した(図3-a)。
一方、予めこの細胞を、sGCの阻害剤であるNS 2028で細胞を処理し、同様に5 nmのNOC-7で細胞を刺激したところ、蛍光強度比(CFP/YFP)は有意な変化を見せなかった(図3-b)。
また、リン酸ジエステラーゼ(phosphodiesterase、PDE:NO除去後に生成されたcGMP分子を直ちに加水分解する酵素)の阻害剤であるZaprinastで細胞を前処理し、同様にNOC-7(5 nm)で刺激したところ、CFP/YFPが急激に減少し、プラトーに達したまま初期値に回復しなかった(図3-c)。
以上より、細胞内では、NOC-7(5 nm)刺激によりNOが増加してsGCの酵素活性が高まり、細胞内でcGMPが増加したことによりCFP/YFPが極小値に達したこと、また、時間の経過に伴いNOの酸化によるNO濃度の低下と細胞内のPDEによるcGMPの分解が起こり、CFP/YFPが初期値に回復したことが示唆された。
<実施例2>
(1) さらに、CHO-K1細胞に、前記のα−CGYとβ−CGYを各々単独で発現させ、10 nM NOC-7でその細胞を刺激したところ、CFP/YFPは変化しなかった(図4)。
NOの配位するヘムはβ-サブユニットに結合していることが知られているが、図4の結果から、β-サブユニットのみでは酵素活性を有さず、α−CGYとβ−CGYが細胞内で二量化してsGC部位が再構築されることにより初めてNO依存的な酵素活性が上昇することが確認された。
(2) また、上記(1)と同様に、sGCを発現していないCHO-K1細胞に二つのcDNA(α−CGYとβ−CGY)を導入し、α-CGYおよびβ-CGYそれぞれを発現させた。この細胞を、50 nMのNOC-7で刺激を与えたところ、図4Aと同様に、α-CGYおよびβ-CGYともに、蛍光強度比CFP/YFPの顕著な変化は観察されなかった(図4B)。このことは、CGYドメインにおけるFRETの変化がなかったことを意味する。
しかし、続いてさらにcGMPの膜浸透性アナログ物質である8-Bromoguanosine 3’,5’-cyclic monophosphate(8-Br-cGMP)2 mMを添加したところ、直ちにCGYドメインにおけるFRETが誘導され、蛍光強度比CFP/YFPが急激に減少した(図4B)。
この結果から、α-CGYおよびβ-CGYそれぞれは、単独状態では、cGMP生成の触媒作用を発揮することができないことが確認できた。その一方で、CGYドメインについては、sGCαまたはsGCβと連結された状態でも、効果的にcGMP検出作用を発揮することが確認することができた。
<実施例3>
さらに、実施例1と同様に、α-CGYおよびβ-CGYを共発現させたCHO-K1細胞をNOC-7(5nm)で刺激し、プローブによる一過性の応答を観察した後、蛍光強度比(CFP/YFP)が初期値に戻ったところで、再度NOC-7(5 nm)で刺激したところ、1回目の刺激に対する応答と同様の一過性の応答が観察された(図5)。
これより、この出願の発明のNO検出・定量用プローブにより、このNO濃度変化に相関したcGMP濃度変化を可逆的に測定することができることが示された。
<実施例4>
さらに、実施例1と同様に、α-CGYおよびβ-CGYを共発現(すなわち、NOA-1として発現)させたCHO-K1細胞を、各種濃度のNOC-7で刺激することで各種濃度のNOに対する蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を測定した(図6)。
NOC-7を1 nMおよび5 nM添加した場合には、濃度依存的な一過性の応答が見られ、10 nMのNOC-7では、飽和応答が観察されたが、その後NO濃度の減少に伴って徐々に初期値にまで回復した。一方、50 nM、100 nMのNOC-7では、飽和応答が観察された後、20分経過後も蛍光強度比(CFP/YFP)は回復傾向を示さなかった。
これにより、50 nM、100 nMのNOC-7による刺激では、細胞内に大量のcGMPが生成し、NOが減少したりPDEによるcGMPの分解が起こったりした後もCGYの飽和に十分なcGMPとその生成を刺激するのに十分なNOが残存することが示唆された。
以上より、この出願の発明のNO検出・定量用プローブが、nMオーダーのNO濃度の変化を可視化検出できる高感度のプローブであることが明らかになった。
<実施例5>
さらにまた、実施例4と同様に、NOA-1を発現させたCHO-K1細胞を、各種濃度のNOC-7で刺激して、NOに対する蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を測定するとともに、8-Br-cGMPの添加による蛍光強度比(CFP/YFP)の変化を測定した(図7A、B)。
結果は、実施例4とほぼ同様であった。すなわち、図7A、Bに示したとおり、NOC-7を1 nMおよび5 nM添加した場合には、濃度依存的な一過性の応答が見られ、10 nMのNOC-7では、飽和応答が観察されたが、その後NO濃度の減少に伴って徐々に初期値にまで回復した。一方、100 nMのNOC-7では、飽和応答が観察された後、10分経過後も蛍光強度比(CFP/YFP)は回復傾向を示さなかった。
そして、この100 nMのNOC-7添加後に、2 mMの8-Br-cGMPを添加したところ、蛍光強度比(CFP/YFP)の回復傾向は示さなかった(図7B)。
これにより、100 nMのNOC-7による刺激では、細胞内に大量のcGMPが生成し、NOが減少したりPDEによるcGMPの分解が起こったりした後もCGYの飽和に十分なcGMPとその生成を刺激するのに十分なNOが残存することが、改めて示唆された。
<実施例6>
NOA-1のNO依存性のFRET応答について、NOガス注入によって調製したNO溶液を用いてさらに検証した。
この結果として、CHO-K1細胞内の各種濃度のNOにおけるNOA-1のピーク応答の平均を示した(図8)。この結果から、この出願の発明のNOA-1は、nM範囲のNOを検出できることを確認できた。
なお、このようなNOA-1の応答は、NOの濃度が増加することだけを起因しているのではなく、酸化や気化の影響も受けていることも起因としている。
このNO依存性であるNOA-1の可逆的応答は、NOA-1のヘムグループへのNOの可逆的結合と、内因性のリン酸ジエステラーゼ(PDE)によるものである。
<実施例7>
NOA-1の選択性について検証した。具体的には、一酸化炭素(CO)によるNOA-1のFRET応答への影響を検証した。
NOA-1を発現させたCHO-K1細胞を、10μMまでのCOで刺激したところ、顕著な蛍光強度比(CFP/YFP)の変化が観察された(図9A)。
次に、100μMのCOで刺激したところ、5 nMのNOで刺激した場合と比べて、一過性の小さい変化が観察された(図9B)。
このことは、<1>COは、NOに比べてsGCとの親和力が弱いことから、sGC活性物質としての作用効果が乏しいこと、<2>CO結合性sGCは、NO結合性sGCよりもサイクラーゼ活性が、ヘム鉄へのそれぞれの異なったコーディネートのために弱いこと、の2点が起因となっている。その結果、NOA-1の応答には、生理学的濃度のCOによる大きな影響を受けることはないと考えられる。
<実施例8>
ナトリウム利尿ペプチド刺激、または、cAMP生成によるNOA-1のFRET応答について、検証した。
(1) ナトリウム利尿ペプチド受容体はcGMPを生成するサイクラーゼドメインを有していることから、ナトリウム利尿ペプチドは、NOA-1のFRET応答に影響を与えると予想されたが、CHO-K1細胞を含む複数種の細胞を、過剰濃度の心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)で刺激を与えたところ、顕著な蛍光強度比(CFP/YFP)の変化は観察されなかった(図10A)。
(2) また、cAMP生成のために過剰濃度のisoproterenolによる刺激を、CHO-K1細胞を含む複数種の細胞に与えても、顕著な蛍光強度比(CFP/YFP)の変化は観察されなかった(図10B)。
この結果から、ナトリウム利尿ペプチド刺激、もしくは、cAMP生成によっては、NOA-1のFRET応答に対して大きな影響を与えないということが確認された。このことは、NOA-1の発現は、NO受容体の過剰発現と同時に起こるが、ナトリウム利尿ペプチド受容体の過剰発現とは起こらないことに起因する。また、NOA-1のCGYドメインは、cAMPとの親和力はcGMPと比べて約100倍弱く、生理学的濃度のcAMPでは検出するにはいたらない。
<実施例9>
NOA-1による血管内皮細胞中のnM範囲でのNOを測定した。
(1) NOA-1を、血清含有の培養液で培養した内皮細胞(ウシ肺動脈由来)で発現させ、生理学的濃度の血管弛緩性ホルモン、すなわち、1nMのブラジキニン(bradykinin)を添加したところ、一過性の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化が観察できた(図11A)。また、ずり応力(擬似血流)を細胞に与えたところ、一過性の蛍光強度比(CFP/YFP)の変化が観察できた(図11B)。
これは、NOA-1が、血管弛緩性ホルモンおよびずり応力等の生理学的な刺激によって、血管内皮細胞の中で一過性のNOの生成を検出しすることができることを意味している。
(2) しかしながら、NOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)は、図11Bに示したように、非内皮細胞であるCHO-K1細胞を用いた場合よりも、血管内皮細胞を用いた場合の方が弱かった。これは、CHO-K1細胞と血管内皮細胞とにおける、基本的なNO濃度の差異によるものである。
(3) 内皮細胞とCHO-K1細胞に対して、NOS阻害剤であるL-NAME処理(1mM)をし、NOA-1の蛍光強度比(CFP/YFP)変化を観察した。
その結果、図12A、Bに示したとおり、非内皮細胞であるCHO-K1細胞では、内因性eNOSが十分でないことから、蛍光強度比は顕著な変化は見られなかった。これとは対照的に、内皮細胞での蛍光強度比は、CHO-K1細胞と同レベル程度という顕著な増加が見られた。
(4) 次に、内皮細胞とCHO-K1細胞とにおける、過剰NOC-7によるNOA-1の応答を比較検証した。
内皮細胞とCHO-K1細胞を10μMのNOC-7で刺激したところ、急激なNOA-1の飽和応答に十分な濃度のNOが生成された。この両者の細胞間における基本的な蛍光強度比に相違しているにも関わらず、10μMのNOC-7による刺激によって、両者の細胞ともに蛍光強度比は、プラトーレベルにまで減少した(図13A)。
過剰濃度のNOC-7刺激による内皮細胞における蛍光強度比変化は、実際にはCHO-K1細胞の蛍光強度比変化の1/3であった(図13B)。
これらの結果は、nM範囲でのNOは血管内皮細胞において安定に生成されることを示している。また、約2/3の発現したNOA-1は、内皮細胞におけるNO検出に包含されることも示している。
(5) NOA-1を発現させた内皮細胞を200μMのzaprinastで処理して、蛍光強度比(CFP/YFP)を減少させ、また、NOA-1応答を飽和状態にさせた(図14A)。
その対照に、CHO-K1細胞におけるNOA-1では、zaprinast処理により顕著な蛍光強度比変化が見られ、また、CHO-K1細胞は内因的にPDEを発現した(図14B)。このことは、内皮細胞においてNOが生成されることをサポートする結果である。
(6) さらに、血管内皮細胞におけるNOの基礎濃度を測定した。
まず、1 mMのNu-nitro-Largininemethyl ester(L-NAME)による内因性eNOSを阻害することで基本NOを除去して、基本NOによるCGMPの生成を除去した。
図15に示したとおり、蛍光強度比(CFP/YFP)は、内因性eNOSの阻害前および阻害後は、内皮細胞中でそれぞれ基本および0(ゼロ)濃度のNOを示した。また、基礎濃度のNOを定量するため、続いて、各種濃度のNOを内皮細胞に加えた(L-NAMEによってeNOSの活性は阻害されている)。得られたNOA-1のピークの応答は、各種濃度のNOでプロットした。
NO濃度は、NOA-1の応答と対応する、基礎NO濃度として引き出されたL-NAME処理前の基本応答を与えた。
以上の結果から、内皮細胞において、1 nMの基礎NO濃度を測定することができた。
<実施例10>
次に、血清含有の培養液で培養した血管内皮細胞におけるNOの基礎濃度の安定生成について検証した。
(1) phosphatidylinositol 3-kinase (PI(3)K)に特異的な阻害剤であるLY 294002で処理による薬理学的検証を行ったところ、内皮細胞におけるNO基礎濃度の除去作用に影響を与えた。NOA-1を発現する内皮細胞に、100μMの2-(4-morpholinyl)-8-phenyl-1(4H)-benzopyran-4-one(LY 294002)を加えて、蛍光強度比(CFP/YFP)、すなわち、細胞中のNO濃度をモニターした。
結果は、LY 294002の添加により、蛍光強度比は有意に増加し、25分間でプラトーに達した(図16A)。このLY 294002による蛍光強度比の増加は、L-NAMEによるeNOSの阻害の場合とほぼ同範囲であり、これは、LY 294002は、基礎NO生成を阻害する作用を有することを意味する(図16B)。
このことから、血管内皮細胞における基礎濃度のNOの安定生成には、PI(3)Kの活性が深く関与していることが確認できた。
(2) 基礎濃度のNO生成に関わる、PI(3)K活性とeNOS活性との間のシグナル伝達を担うプロテインキナーゼAktを用いた検証も行った。Aktを含めた多くのプロテインキナーゼは、eNOSの活性化させる。
基礎NO生成における内因性Aktの作用効果を検証するため、Aktのドミナントナガティブ変異体(MAA-Akt;たとえば、Mol. Cell. Biol. 19, 4008-4018, 1999参照)を、NOA-1と内皮細胞に共発現させた。なお、MAA-Aktは、第179のリシンをメチオニンに、また第308のチロシンと第473のセリンをアラニンに置換したものである。
MAA-Aktが発現する内皮細胞において、NOA-1の蛍光強度比はL-NAMEによる前処理を行った結果とほぼ同様であったが、ネガティブコントロールとして調製たコントロール内皮細胞と比べて、有意な変化を確認することができた(図17)。
図17に示したとおり、これら前処理を施した細胞に、10μMのNOC-7を添加して刺激を与えたところ、蛍光強度比(CFP/YFP)は、直ちにプラトーレベル付近にまで達した。
また、図17および図18に示したとおり、得られたMAA-Akt発現細胞における蛍光強度比変化は、コントロール細胞と比べて3倍大きく、L-NAMEによる前処理を行った細胞の場合とほぼ同じであった。
この結果は、MAA-Aktは、基礎NOの生成を阻害することを意味する。
(3) MAA-Aktの対照として、Aktの構造活性変異体(myr-Akt;たとえば、J. Biol. Chem. 278, 28312-28323, 2003参照)を発現させた内皮細胞を用いた検証も行った。
図18に示したとおり、myr-Aktの場合は、コントロール細胞と比べたところ、基礎蛍光強度比よりも低いことが確認された。myr-Akt発現細胞における、10μMのNOC-7によるNOA-1の応答は完全に喪失していた。
さらに、myr-Akt発現細胞は、1 mMのL-NAME添加による蛍光強度比(CFP/YFP)よりも、myr-Aktが存在しない方が大きく増加することが確認された(図19A、B)。このことは、Akt活性は、NOの基礎濃度を増加することを意味する。
これらの結果を考慮すると、PI(3)K活性によってAkt活性が誘導され、そして、血管内皮細胞内での基礎濃度NO生成のためのeNOS活性を制御することを示唆している。また、インスリンによる刺激は、PI(3)K-Akt経路の刺激を活性化し、内皮細胞におけるNO濃度をさらに増加することも観察された(図19C)。
<実施例11>
上記NOA-1のCGYドメインにおける第178と第302のスレオニンを、アラニンに置換したcDNA(CGY(T178A/T302A))を作製した。そして、このCGY(T178A/T302A)を有するsGCα-CGY(T178A/T302A)とsGCβ-CGY(T178A/T302A)との二量体を「NOA-2」とし、NOA-1との蛍光強度比について比較検証した。なお、図20にて、CGY(T178A/T302A)ドメインおよびNOA-2の概略構成図を示した。また、実験条件は、基本的には上記各実施例とほぼ同じである。
(1) NOA-1、NOA-2を発現するCHO-K1細胞に、各種濃度のNOC-7を加えて刺激を与えた。
その結果、NOA-1とは若干異なる変化パターンではあるが、NOA-2においても蛍光強度変化(CFP/YFP)を確認することができた(図21A)。
(2) CGY、CGY(T178A/T302A)を発現するCHO-K1細胞に、各種濃度の8-Br-cGMPを加えて刺激を与えたところ、CGY(T178A/T302A)の8-Br-cGMPに対する親和力は、CGYと比べて2オーダー低いことが確認できた(図21B)。
(3) 10μM NOC-7を内皮細胞に加え、NOA-1、NOA-2の時間経過における変化を観察したところ、NOA-1よりも高い蛍光強度比を示した(図21C)。
(4) 1μM bradykininによる刺激を内皮細胞に与え、NOA-2の時間経過における変化を観察したところ、NOA-2は、bradykininによる刺激に対しても反応を示した(図21D)。
(5) 以上の結果をまとめると、sGCα-CGY(T178A/T302A)とsGCβ-CGY(T178A/T302A)から構成されるNOA-2は、NOA-1と比べ、NOに対する反応が約1オーダー高いことが確認された。
また、NOA-2とNOA-1とを内皮細胞にて別々に発現させた時、NOA-2の蛍光強度比(CFP/YFP)は、NOA-1のそれよりも高かった。このことは、NOA-1と比較すると、NOA-2は内皮細胞における基礎NOから回避していることを意味している。また、NOA-2は、NOA-1と比べ、10μMのNOC-7による刺激に対する反応が大きいことも確認された。さらに、NOA-2は、内皮細胞に対する1μMのbradykinin刺激によって、一過性の反応も示した。
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、低濃度のNOを精度高く、簡便に検出・定量できるプローブが提供される。
1 一酸化窒素検出・定量用プローブ
2 可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)
21 α(サブユニット)
22 β(サブユニット)
23 ヘム鉄
3 cGMP可視化プローブ
31 cGMP結合蛋白
32a マーカー部位
32b マーカー部位
配列表
Figure 0004757800
Figure 0004757800

Claims (17)

  1. 可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットに、各々、サイクリックグアノシン3',5'-一リン酸を認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブが連結されており、cGMP可視化プローブはcGMP依存性キナーゼIαの両末端に互いの接近が検出可能な二つのマーカー部位が連結されていることを特徴とする一酸化窒素検出・定量用プローブ。
  2. 可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットαおよびβに、各々、サイクリックグアノシン3',5'-一リン酸を認識してシグナルを発するcGMP可視化プローブが連結されてなる二つのハイブリッド蛋白質が、二量化することにより得られる請求項1のプローブ。
  3. cGMP可視化プローブにおける互いの接近が検出可能な二つのマーカー部位は、シアン蛍光蛋白質と黄色蛍光蛋白質である請求項のプローブ。
  4. 請求項1ないしのいずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸を共存させ、該プローブのシグナル変化を測定することを特徴とする一酸化窒素の検出・定量方法。
  5. 請求項1ないしのいずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入することにより、該プローブとグアノシン5'-三リン酸を細胞内で共存させる請求項の検出・定量方法。
  6. 細胞内に、可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入することにより、請求項1ないしのいずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸を細胞内で共存させる請求項の検出・定量方法。
  7. 請求項1ないしのいずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとグアノシン5'-三リン酸を共存させる請求項の検出・定量方法。
  8. 細胞内に、可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより、この非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において請求項1ないしのいずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸を共存させる請求項の検出・定量方法。
  9. 可溶性グアニル酸シクラーゼと一酸化窒素の結合に影響を与える物質をスクリーニングする方法であって、請求項1ないしのいずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸と候補物質と一酸化窒素を共存させて、候補物質存在下および非存在下におけるシグナル変化を測定することを特徴とするスクリーニング方法。
  10. 請求項1ないしのいずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、さらに候補物質を導入することにより、請求項1ないし5のいずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸と候補物質と一酸化窒素を細胞内において共存させる請求項のスクリーニング方法。
  11. 細胞内に、可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、さらに候補物質を導入することにより、請求項1ないしのいずれかのプローブとグアノシン5'-三リン酸と候補物質と一酸化窒素を細胞内において共存させる請求項のスクリーニング方法。
  12. 請求項1ないしのいずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、候補物質を投与することにより、該非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとグアノシン5'-三リン酸と候補物質と一酸化窒素を共存させる請求項のスクリーニング方法。
  13. 細胞内に、可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、候補物質を投与することにより、該非ヒト動物またはその子孫動物の全細胞において該プローブとグアノシン5'-三リン酸と候補物質と一酸化窒素を共存させる請求項のスクリーニング方法。
  14. 刺激による細胞内での一酸化窒素濃度の変化をモニタリングするための方法であって、請求項1ないしのいずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入して得られる細胞に、刺激を付与し、刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することを特徴とする細胞内一酸化窒素濃度のモニタリング方法。
  15. 刺激による細胞内での一酸化窒素濃度の変化をモニタリングするための方法であって、細胞内に、可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入して得られる細胞に、刺激を付与し、刺激付与前後におけるシグナル変化を測定する方法であり、cGMP可視化プローブはcGMP依存性キナーゼIαの両末端に互いの接近が検出可能な二つのマーカー部位が連結されていることを特徴とするモニタリング方法。
  16. 刺激による生体内での一酸化窒素濃度の変化をモニタリングするための方法であって、請求項1ないしのいずれかのプローブを発現するポリヌクレオチドを細胞内に導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生することにより得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、刺激を付与し、この非ヒト動物またはその子孫動物での刺激付与前後におけるシグナル変化を測定することを特徴とするモニタリング方法。
  17. 細胞内に、可溶性グアニル酸シクラーゼの二つのサブユニットαおよびβの各々にcGMP可視化プローブを連結してなる二種類のハイブリッド蛋白質を発現する二種類のポリヌクレオチドを導入し、非ヒト動物全能性細胞を個体発生して得られる非ヒト動物またはその子孫動物に、刺激を付与し、この非ヒト動物またはその子孫動物での刺激付与前後におけるシグナル変化を測定する方法であり、cGMP可視化プローブはcGMP依存性キナーゼIαの両末端に互いの接近が検出可能な二つのマーカー部位が連結されていることを特徴とするモニタリング方法。
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