JP4745686B2 - アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法及びその装置 - Google Patents
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Description
衛星搭載用アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差補償を行う従来技術としては、
(1)アンテナの物理的位置の変更による要因自体の除去
(2)指向方向誤差に応じて、ビーム形成のための励振振幅・位相係数の更新
などがある。
一般に、静止衛星の性能向上を実現する場合、搭載アンテナの大型化による利得向上は必須となり、これを実現するには、鏡面をメッシュで構成する等の軽量化が必須となる。軌道上における日照の影響などにより反射鏡鏡面は変形するため、指向方向誤差が生じる。特に、鏡面変形により反射鏡の拡大係数が変化する場合、アンテナボアサイト方向からの離角が大きくなるに従い指向誤差が大きくなる。これをアレー給電反射鏡アンテナの解析例を用いて説明する。
図11は、アレー給電部b(素子アンテナb1〜bn)とマルチビーム形成装置cのブロック図である。図示すように、アレー給電部bは素子アンテナb1〜bnから構成されている。また、マルチビーム形成装置cは、図示すように、分配器c1、固定移相器c2、固定減衰器c3、電力合成器c4の複数の組み合わせから構成されている。
図12における中心位置は、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向であり、アンテナボアサイト方向からの離角が大きい3つのビームパターンを示している。図中、円L2はピーク−2dBのレベルを示し、円L1がピーク−10dBレベルを示している。これより、図12では、目標とするエリアL0を高利得で照射していることが確認できる。
この結果、図13では、円L1で示した高利得のエリアが、図12の場合よりも、目標とするエリアに対して外側にずれていることが確認できる。これらの指向方向のずれが、反射鏡の拡大係数変動による指向方向誤差である。
一方、前記した従来技術(2)では、それぞれビーム形成のための振幅・位相設定値を、指向方向誤差に応じて更新することで、反射鏡の拡大係数変動による指向方向誤差も補償できる。しかしながら、マルチビーム形成装置を構成する全ての振幅制御器および位相制御器の設定を外部から変更する機能が求められ、図14に示すようにビーム数×素子数の可変移相器c5および可変減衰器c6を備えた構成が必要になる。このような構成は、マルチビーム形成装置の重量・消費電力の大幅な増大を招く。つまり、衛星搭載機器として最もふさわしくない構成になる。
松本他,"マルチビームの一括指向誤差補償が可能な衛星搭載ビーム形成部の検討",電子情報通信学会論文誌,B-II,Vol.80-B-II,No.7,PP.617-621
また、従来技術(2)では、拡大係数変動による指向方向誤差を補償するため、マルチビーム形成装置に「ビーム数×素子数」の可変移相器および可変減衰器を備えることが必要になり、マルチビーム形成装置の重量・消費電力の大幅な増大を招くという課題がある。また、前記非特許文献1によっても、従来の技術(1)で解決できない「反射鏡の拡大係数変動による指向方向誤差の補償」の課題は解決できない。
請求項4に記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法は、請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法において、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分の一部又は全てをアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの物理的位置を変更することで補償することを特徴とする。
請求項8に記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置は、請求項5乃至請求項7の何れか一つに記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置において、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分の一部又は全てをアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの物理的位置を変更することで補償することを特徴とする。
すなわち、アレー給電反射鏡アンテナの拡大係数は、反射鏡の開口径および曲率、反射鏡に対するアレー給電部の配置位置に大きく依存する。そのため反射鏡の鏡面変形などが発生すると、反射鏡とアレー給電部の相対的な位置関係が変化し拡大係数変動が生じるため、指向方向誤差が生じる。つまり、反射鏡の拡大係数が常に一定であるように、アレー給電部の配置位置を変更すれば、拡大係数変動に伴う指向方向誤差を補償することができる。実際にアレー給電部の物理的な位置を変更することは困難であるが、アレー給電部を構成する各アンテナ素子の励振信号に対して、移相量を与えることでアレー給電部の配置位置を電気的に変更することが可能となる。具体的には、アレー給電部を構成する素子アンテナの配列が、電気的に曲率を有するような移相量を与えればよい。このとき、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分は2変数を有し、反射鏡の鏡面変形による拡大係数変動成分は1変数を有するため、異なる3地点以上の地理的位置における受信または送信レベルから、算出することが可能である。特に、指向方向誤差が零のときのアンテナボアサイト地点を含む場合は、異なる2地点以上の地理的位置における受信または送信レベルから、算出することが可能である。
ここで、請求項に記載する第1の演算手段と第2の演算手段は指向方向誤差補償装置eに対応し、同じく指向方向誤差補正手段は可変移相器d1〜dnに対応する。
ステップS1において、指向方向誤差補償装置eは、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差を求める。すなわち、異なる3地点以上の地理的位置におけるビームの受信レベルまたは送信レベルから、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および反射鏡の拡大係数変動成分を算出する。
また、ステップS3において、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの反射鏡の拡大係数変動成分を補償するため、アレー給電部bを構成するアンテナ素子毎の移相量を算出する。
ステップS5において、マルチビーム形成装置cの出力信号に対し、ステップS4で求めた誤差量に応じた移相量を与えることにより、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差を補償する。
アンテナボアサイトを電気的にずらした場合の解析結果を図3に示す。また、このときのアレー給電部bを構成する素子アンテナb1〜bnの配置位置を図4に示し、図4中の素子アンテナb1〜b11について、このとき与えた移相量を図5に示す。
拡大係数変動成分を補償する移相量の決定方法は、図6(a)に示す反射鏡aの焦点a1とアレー給電部bの開口面の位置関係を、図6(b)に示すように拡大係数が一定となるように、物理的に素子位置を移動させ、曲率を持たせることで補償できる。しかし、これは移動機構等が必要になるため現実的でない。そこで、図6(c)の図中点線で示す仮想開口面に、アンテナ素子b1〜bnが仮想的に位置するように、電気的に移相量を与える。
従って、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差を、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および反射鏡の拡大係数変動成分に分類し、それぞれに応じた移相量を求めることで、少ない追加回路で電気的に指向方向誤差が補償できることになる。
なお、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差が零の場合には、アンテナボアサイト地点を含めた異なる2地点以上の地理的位置におけるビームの受信レベルまたは送信レベルから、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および反射鏡の拡大係数変動成分を算出することができる。
なお、本実施形態において、アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分の一部又は全てをアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの物理的位置を変更することで補償してもよい。これによって、電気的にボアサイト方向誤差成分を補償するよりも、より大きな誤差成分の補償が実現できる。
b 給電部
a1 反射鏡の焦点
a2 指向方向誤差を考慮した反射鏡の仮想焦点
b アレー給電部
b1〜bn 素子アンテナ
c マルチビーム形成装置
c1 分配器
c2 固定移相器
c3 固定減衰器
c4 電力合成器
c5 可変移相器
c6 可変減衰器
d 可変移相器
e 指向方向誤差補償装置
Claims (8)
- 反射鏡と、複数のアンテナ素子で構成されるアレー給電部と、前記アレー給電部の各アンテナ素子を所定の振幅および位相で励振するマルチビーム形成装置とを有し、前記アレー給電部は前記反射鏡の焦点面を外れた位置に配置されるアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法において、
前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および前記反射鏡の拡大係数変動成分から成る指向方向誤差成分を、異なる3地点以上の地理的位置における受信レベルまたは送信レベルに基づいて、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および前記反射鏡の拡大係数変動成分に分けて算出する第1のステップと、
前記第1のステップで算出されたアレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量と、前記第1のステップで算出された反射鏡の拡大係数変動成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量をそれぞれ個別に算出する第2のステップと、
前記第2のステップで算出されたアレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分を補償する移相量と、反射鏡の拡大係数変動成分を補償する移相量とに基づいて、前記指向方向誤差成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量を算出する第3のステップと、
前記マルチビーム形成装置の出力信号に対して、前記第3のステップで算出された移相量を与えて前記出力信号を加工し、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向の誤差補正を行う第4のステップと
を有することを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法。 - 請求項1記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法において、
前記第1のステップにおいて、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差を、指向方向誤差が零のときのアンテナボアサイト地点を含めた異なる2地点以上の地理的位置における受信レベルまたは送信レベルに基づいて、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および前記反射鏡の拡大係数変動成分を算出する
ことを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法。 - 請求項1又は請求項2記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法において、
前記第2のステップにおいて、前記反射鏡の拡大係数変動成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量として、前記アレー給電部を構成する素子アンテナの配列が曲率を有するように電気的な移相量を与える
ことを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法。 - 請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法において、
前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分の一部又は全てを前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの物理的位置を変更することで補償する
ことを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償方法。 - 反射鏡と、複数のアンテナ素子で構成されるアレー給電部と、前記アレー給電部の各アンテナ素子を所定の振幅および位相で励振するマルチビーム形成装置とを有し、前記アレー給電部は前記反射鏡の焦点面を外れた位置に配置されるアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置において、
前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および前記反射鏡の拡大係数変動成分から成る指向方向誤差成分を、異なる3地点以上の地理的位置における受信レベルまたは送信レベルに基づいて、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および前記反射鏡の拡大係数変動成分に分けて算出する第1演算手段と、
前記第1演算手段で算出されたアレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量と、前記第1演算手段で算出された反射鏡の拡大係数変動成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量をそれぞれ個別に算出する第2演算手段と、
前記第2演算手段で算出されたアレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分を補償する移相量と、反射鏡の拡大係数変動成分を補償する移相量とに基づいて、前記指向方向誤差成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量を算出する第3演算手段と、
前記マルチビーム形成装置の出力信号に対して、前記第3演算手段で算出された移相量を与えて前記出力信号を加工し、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向の誤差補正を行う指向方向誤差補正手段と
を有することを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置。 - 請求項5記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置において、
前記第1演算手段は、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向方向誤差を、指向方向誤差が零のときのアンテナボアサイト地点を含めた異なる2地点以上の地理的位置における受信レベルまたは送信レベルに基づいて、前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分および前記反射鏡の拡大係数変動成分を算出する
ことを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置。 - 請求項5又は請求項6記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置において、
前記第2演算手段は、前記反射鏡の拡大係数変動成分を補償する前記アレー給電部を構成するアンテナ素子毎の移相量として、前記アレー給電部を構成する素子アンテナの配列が曲率を有するように電気的な移相量を与える
ことを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置。 - 請求項5乃至請求項7の何れか一つに記載のアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置において、
前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナのボアサイト方向誤差成分の一部又は全てを前記アレー給電反射鏡マルチビームアンテナの物理的位置を変更することで補償する
ことを特徴とするアレー給電反射鏡マルチビームアンテナの指向誤差補償装置。
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