以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき説明する。
(実施形態1)
(撮像装置の外観構造の説明)
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置が好適に適用される小型のデジタルカメラ1の外観を示す図であり、(a)はその上面図、(b)は正面図、(c)は背面図をそれぞれ示している。このデジタルカメラ1は、カメラ本体ボディ10の頂面に電源スイッチ101及びレリーズスイッチ102等が、正面側にフラッシュ発光部103及び撮影レンズ窓104等が、また背面側にモード設定スイッチ105、選択決定スイッチ106などの各種の操作ボタンや液晶モニター(LCD)からなるLCD表示部107等が配置されている。本体ボディ10の内部には、各種本体機器のほか、屈曲型の鏡胴20が配置されている。
電源スイッチ101は、カメラ1の電源をON(起動)、OFF(起動停止)するための押下スイッチであり、押下動作によりカメラ電源のON、OFFが順次繰り返される。またモード設定スイッチ105は、静止画を撮影する静止画撮影モードと、動画を撮影する動画撮影モードとの2つのモードを設定するためのものである。
レリーズスイッチ102は、途中まで押し込んだ「半押し状態」の操作と、さらに押し込んだ「全押し状態」の操作とが可能とされた押下スイッチである。例えば前記静止画撮影モードにおいて、レリーズスイッチ102が半押しされると、被写体の静止画を撮影するための準備動作(自動露出制御や自動焦点制御等の準備動作)が実行され、レリーズスイッチ102が全押しされると、撮影動作(後述する撮像センサを露光し、その露光によって得られた画像信号に所定の画像処理を施してメモリカード等に記録する一連の動作)が実行される。また、動画撮影モードにおいて、レリーズスイッチ102が全押しされると所定の動画撮影動作が実行され、再度レリーズスイッチ102が全押しされると動画撮影動作が終了される。
ところで、上記に露出制御という言葉を用いたが、ここで、本発明で言う露出制御(以下、適宜「AE制御」という)の概念に関する定義について、図22を用いて説明しておく。いわゆる銀塩カメラと異なり、デジタルカメラやデジタルムービィ等の撮像装置においては、AE制御のための制御要素としては、撮像センサの光電変換特性に関連づけて(光電変換特性を作為的に変化させて)制御する方法と、撮像センサの撮像面に届く光の総量と光電変換後の光電変換電流の積分時間を調整する方法とがある。本明細書では、前者を「ダイナミックレンジ制御」と呼び、後者を「露光量制御」と呼ぶものとする。なお、前記「ダイナミックレンジ制御」は、例えば撮像センサの線形特性領域と対数特性領域との切り替わり点(以下、変曲点という)を制御することで実行される。また、前記「露光量制御」は、例えば絞りの開口量調整や、或いはメカニカルシャッタのシャッタスピードの調整、又は撮像センサに対するリセット動作の制御による電荷の積分時間制御により実行される。
選択決定スイッチ106は、例えば円形の操作ボタンを有し、この操作ボタンにおける上下左右の4方向の押圧操作と、右上、左上、右下及び左下の4方向の押圧操作とがそれぞれ検出されるようになっている。選択決定スイッチ106は多機能化されており、例えばLCD表示部106に表示される撮影シーン設定のためのメニュー画面において選択された項目を変更するための、具体的には複数のサムネイル画像が配列表示されるインデックス画面において選択された再生対象のコマを変更するための操作スイッチとして機能する。また、選択決定スイッチ106は、撮影画像の画像処理(画質調整)に関する設定、ここでは後述の階調変換部409における画像分割抽出処理に関する分割パラメータθの設定(変更)を行うスイッチとしての機能も備えている。さらに選択決定スイッチ106は、後述のズームレンズの焦点距離を変更するためのズームスイッチとして機能させることもできる。
フラッシュ発光部103は、例えばレリーズスイッチ102が半押しされている状態(静止画撮影モード)において、被写体像が暗い場合に発光して被写体を照明する。撮影レンズ窓104は、被写体の光学像を本体ボディ10の内部に配置された屈曲型鏡胴20へ取り入れるための開口部である。またLCD表示部107は、内蔵する記録媒体に記録された記録画像を再生表示させたり、撮影待機中や動画撮影モードにおいてビデオ撮影された被写体のスルー画像(ライブビュー画像)を表示させたりするものである。
屈曲型の鏡胴20は、撮影レンズ窓104を通して被写体像を取り入れ、本体ボディ10の内部に配置されている撮像センサ30へ導く撮影レンズ系を構成するものである。この鏡胴20は、ズーミングやフォーカシング駆動時においてもその長さの変動しない、つまり本体ボディ10から外部に突出することのない鏡胴である。この鏡胴20の内部には、光軸に沿って直列的に配置されるズームレンズブロックや固定レンズブロックからなる撮影光学系を構成するレンズ群21(図2参照)と、このレンズ群21の適所に配置される絞り22とが備えられている。さらにレンズ群21の適所にはシャッタ23が配置されており、該シャッタ23の開閉動作により撮影光学系の光路が遮光若しくは通光されるようになっている。すなわち、絞り22の開口面積設定度合い及びシャッタ23の開閉動作制御等により、撮像センサ30の露光量が制御されるものである。
(撮像装置の電気的構成の全体的な説明)
図2は、上記デジタルカメラ1における撮像処理ブロック図である。デジタルカメラ1は、操作部100、上述した鏡胴20、撮像センサ30、信号処理部40、全体制御部50、及び駆動部60などを備えている。なお、操作部100は、上記のレリーズスイッチ102、モード設定スイッチ105及び選択決定スイッチ106等からなる。
撮像センサ30は、鏡胴20内のレンズ群21により結像された被写体光像の光量に応じ、R(赤)、G(緑)、B(青)の各成分の画像信号に光電変換して信号処理部40へ出力するものである。本実施形態1では、この撮像センサ30として、入射光量に対して出力画素信号(光電変換により発生する出力電気信号)が線形的ではなく対数的に変換されて出力される特性を有する対数変換型固体撮像素子が用いられる。ただし、撮像センサ30は、入射光量が少ない場合に出力画素信号が線形的に変換されて出力される特性も有しており、したがって、撮像センサ30は、その光電変換特性が線形的である領域(線形特性領域=暗時)と対数的である領域(対数特性領域=明時)とを含む光電変換特性(高輝度領域における入射光量に対する変化の度合いが低輝度領域のそれよりも小さい光電変換特性)を備えるものとなっている。当該線形特性領域と対数特性領域との切り替り点(変曲点)は、特定の制御信号(ダイナミックレンジ制御信号)により任意に制御可能とされている。この撮像センサ30の構成、動作等の詳細については後述する。なお、ここでは、撮像センサとして、上述のように線形特性領域と対数特性領域とを含む光電変換特性を有するものを採用しているが、これに限らず、入射光量に対して所定の割合で変化する電気信号が出力される第1領域、及び入射光量に対する変化の割合が第1領域よりも小さい電気信号が出力される第2領域といった、入射光量に対する出力の変化の度合いが異なる複数種類の光電変換特性からなる光電変換特性を有するものであればいずれの撮像センサでもよい。
タイミング生成回路(タイミングジェネレータ)31は、撮像センサ30による撮影動作(露光に基づく電荷蓄積や蓄積電荷の読出し等)を制御するものである。タイミング生成回路31は、全体制御部50からの撮影制御信号に基づいて所定のタイミングパルス(画素駆動信号、水平同期信号、垂直同期信号、水平走査回路駆動信号、垂直走査回路駆動信号等)を生成して撮像センサ30に出力する。具体的には、動画撮影モード時に例えば1/30(秒)毎にフレーム画像を取り込み、順次、信号処理部40に出力させたり、静止画撮影モード時の露光中に撮像センサ30の露光動作に連動して電荷を蓄積させ、その蓄積電荷を信号処理部40に出力させる。さらにタイミング生成回路31は、後述のA/D変換器402において用いられるA/D変換用のクロックも生成する。
信号処理部40は、撮像センサ30から送出される画像信号に所定のアナログ信号処理及びデジタル信号処理を施すもので、前記画像信号の信号処理は、該画像信号を構成するそれぞれの画素信号ごとに行われる。この信号処理部40は、アナログ信号処理部41、A/D変換器402、黒基準補正部403、FPN補正部404、評価値検出部405、ホワイトバランス(WB)制御部406、色補間部407、3×3色補正部408、階調変換部409、ノイズキャンセル部410及び画像メモリ411等を備えている。
アナログ信号処理部41は、撮像センサ30から出力される画像信号(各画素のアナログ信号群)に所定のアナログ信号処理を施すもので、アナログ画像信号に含まれるリセット雑音を低減するCDS回路(相関二重サンプリング回路)と、アナログ画像信号のレベルを補正するAGC回路(オートゲインコントロール回路)等を備えている。なお、AGC回路は、適正露出が得られなかった場合等に、後段のA/D変換器402の入力電圧範囲に合うよう、アナログ画像信号を適正な増幅率で増幅して撮影画像のレベル不足を補償するアンプ機能も有している。
A/D変換器402は、アナログ信号処理部41から出力されるアナログ画像信号を、例えば12ビットのデジタル画像信号(画像データ)に変換する役目を果たす。このA/D変換器402は、タイミング生成回路31から入力されるA/D変換用のクロックに基づいて、アナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。
黒基準補正部403は、A/D変換器402から入力されるデジタル画像信号の黒レベル(暗黒時の画像信号レベル)を基準の値(例えば、A/D変換後のデジタル信号レベルで0;ゼロ)に補正するためものである。かかる黒基準補正は、全体制御部50から入力される撮像センサ30の光電変換特性に対応した撮像ダイナミックレンジ情報に基づいて行われる。これは、実施形態1に係るデジタルカメラ1においては、撮像センサ30の光電変換特性が制御可能とされており、従ってA/D変換器402から入力されるデジタル画像信号の暗黒時における画像信号レベルが、撮像センサ30の光電変換特性の変化により変動することから、その変動に追従した正確な黒基準補正を行うものである。
FPN(Fixed Pattern Noise)補正部404は、黒基準補正部403から入力される画像信号のFPN(固定パターンノイズ)を除去するためのものである。固定パターンノイズとは、撮像センサ30の各画素回路が備えるFETの閾値バラツキ等が要因となって生じる、各画素が発生する画像信号の出力値のバラツキに起因するノイズである。
評価値検出部405は、撮像センサ30で実際に撮影された画像信号から、自動露出制御(AE)、自動焦点制御(AF;オートフォーカス)、或いはホワイトバランス制御(WB制御)等を行うに際してのベース値となる評価値、すなわちAE評価値、AF評価値、ホワイトバランス評価値(以降、WB評価値という)等を検出する。例えばAE制御を行う場合、
(1)撮像ターゲットとなる被写体の輝度レベル及び輝度範囲を計測し、
(2)その輝度レベル及び輝度範囲に適合する出力が撮像センサから得られるよう、必要な露出制御量を算出し、
(3)前記算出結果に基づいて露光量等を具体的に調整し、本撮像に臨む、
というステップが一般的に採られるが、この評価値検出部405においては、ステップ(1)の役目を担うべく、撮像センサ30で実際に撮影された画像信号から被写体の輝度レベル及び輝度範囲が求められ、これがAE評価値として全体制御部50へ出力され、後段ステップにおけるAE制御動作用に供される。
またAF制御の場合は、例えばフォーカスレンズ(レンズ群21)の光軸方向の駆動と撮像センサ30による撮像動作とを交互に行いながら、その撮像動作により得た画像のコントラストが最大となるフォーカスレンズの位置が求められ(所謂山登り検出方式)、これがAF評価値として全体制御部50へ出力され、後段ステップにおけるAE制御動作の用に供される。さらにホワイトバランス制御は、出力画像の色を被写体の光源色に適したものに補正することを目的とするもので、この場合、前段のFPN補正部404から入力される画像信号に基づいてR、G、B各色の輝度比及び輝度差が評価値検出部405で算出され、これがWB評価値として全体制御部50へ出力される。
なお、評価値検出部405は、AE評価値等の各評価値を得るべく、被写体に対する分割測光(マルチパターン測光)方式による測光を行う分割測光機能や、当該測光により得られた被写体輝度情報に基づくヒストグラムを算出し、所定の輝度データの「足切り」を行ったり、平均輝度、最大/最小輝度、或いは輝度範囲を求めたりするヒストグラム演算機能を備えている。ただし、前記分割測光においては、撮像領域(測光範囲)を、例えば大別的に中央領域(主被写体領域)とその周辺部である周辺領域(周辺被写体領域)とで構成した各領域を所定数の検出ブロック(検出区画)に分割し、当該各検出ブロックにおける各画素に対応する輝度情報を撮影画像データから検出するようにしている。さらに評価値検出部405は、輝度ヒストグラムに基づいて、AE(AF、WB)評価値検出時に撮像センサ30の出力が飽和しているか否かを判別する飽和判別機能等を備えている。
ホワイトバランス制御部406は、全体制御部50から与えられるダイナミックレンジ情報やWB評価値に基づいて、画像信号の色バランスが所定の色バランスになるよう各色成分R、G、Bの各画素データのレベルを変換する補正を行う。
色補間部407は、ホワイトバランス制御部406から入力される画像信号の各色成分R、G、Bごとに、フレーム画像の不足する画素位置のデータを補間するものである。すなわち、本実施形態1で用いられる対数変換型の撮像センサ30のカラーフィルタ構造は、例えばGが市松状でR、Bが線順次配列された所謂ベイヤー方式が採用されており、この関係上、色情報が不足していることから、色補間部407は実在する複数の画素データを用いて実在しない画素位置の画素データを補間するものである。
3×3色補正部408は、色補間部407から入力される色成分R、G、Bの画像信号の彩度を補正(色合いを補正)するものである。3×3色補正部408は、色成分R、G、Bの画像信号のレベル比を変換する3種類の変換係数を有し、撮影シーンに応じた変換係数で前記レベル比を変換して画像データの彩度を補正する。
階調変換部409は、3×3色補正部408から入力される色成分R、G、Bの画像信号が適切な出力レベルになるよう、画像信号のレベルを色成分毎に所定の変換特性(例えば画像変換テーブル)を用いて変換するとともにオフセット調整を行う。すなわち階調変換部409は、基本動作としてホワイトバランス調整及び色補正がなされた画像信号の階調特性を、LCD表示部107や外部出力されるモニターテレビ等の表示系の階調特性に補正する動作を行う。この階調変換部409においては、全体制御部50から入力されるダイナミックレンジ情報(後述の変曲点情報)、評価値検出部405で検出されたAE評価値等に基づいて、画像信号の階調特性を変化させる。
また、階調変換部409は、前記表示系の階調特性への補正に際し、撮像センサ30により得られた線形/対数画像に対して特に対数特性領域のコントラスト改善を図るべくDR圧縮処理を行う機能を備えている。階調変換部409は、このDR圧縮に関し、該階調変換部409に入力された画像を、対数特性領域を含む領域とそうでない領域(線形特性領域)との画像データに分割(分割抽出処理)し、対数特性領域を含む領域側の画像データにおける照明成分に対する圧縮を行った後(後述の実施形態2においては、線形特性領域の画像データに対しても照明成分に対する圧縮を行う)、この分割した画像データを合成するといった機能を備えている。階調変換部409におけるこの機能に関する具体的構成、動作等については後に詳述する。
ノイズキャンセル部410は、階調変換部409から入力される画像信号のノイズ成分を除去すると共に、エッジ成分のみを抽出・強調することで、画像のシャープネスを良好な状態に補正するものである。ノイズキャンセル部410は、全体制御部50から入力されるダイナミックレンジ情報に基づいて、コアリング係数(画像信号のノイズ成分のみを除去し、エッジ成分を抽出する係数及び強調する係数)を変化させることで、適正な補正を行う。
画像メモリ411は、ROMやRAM等のメモリからなる、信号処理部40での信号処理を終えるなどした画像データを一時的に保存するものであり、例えば1フレーム分の画像データを記憶し得る容量を有している。
メモリカードI/F部412は、信号処理部40で生成されたメモリカード記録用画像データを、メモリカード108に記録させるべく出力するためのインターフェイスである。またメモリカード108は、静止画像や動画像などの画像データを記録して保存しておくためのメモリであって、デジタルカメラ1に対して取り外し自在とされており、外部の記録媒体との画像データ交換を可能とするものである。LCD表示I/F部413は、信号処理部40で生成されたLCD表示用画像データを、例えばNTSC方式若しくはPAL方式の画像信号に変換してLCD表示部107に出力するためのインターフェイスである。
全体制御部50は、CPU(中央演算処理装置)等からなり、デジタルカメラ1の撮影動作(画像処理動作)を集中制御するものである。すなわち全体制御部50は、前記信号処理部40の各部から送られてくる情報(前述のAE評価値、AF評価値、WB評価値等)と、本デジタルカメラ1の動作モード等に基づき、信号処理部40の各部が必要とするパラメータ等の動作情報を算出して送信することで、各処理部の動作を制御する。このような各処理部の動作制御につき、全体制御部50は、前記DR圧縮処理の実行に関する階調変換部409に対する制御を行う。このほか、撮影動作のためのタイミング生成回路31の制御、レンズ群21のズーミングやフォーカシング駆動、並びに絞り22及びシャッタ23の駆動のための駆動部60の制御、画像信号の出力制御などを行う。
図3は、全体制御部50の機能を説明するための機能ブロック図である。全体制御部50は、情報受信部501及び情報送信部502、メモリ部515を具備する演算部510、制御信号発生部520、入出力部530及び分割設定部540を備えている。
情報受信部501は、信号処理部40の評価値検出部405にて検出されるAE評価値、AF評価値及びWB評価値を取得し、これらを演算部510が備える各パラメータ算出部へ振り分けて送信する。一方、情報送信部502は、信号処理部40において必要とされる情報(光電変換特性情報やコアリング係数等)をメモリ部515から適宜取り出し、信号処理部40の各処理部に適時振り分けて送信する。
演算部510は、前記情報受信部501から与えられる評価値に基づいて制御パラメータを算出する動作を為すもので、露光量制御パラメータ算出部511及びダイナミックレンジ制御パラメータ算出部512からなるAE制御パラメータ算出部5110、AF制御パラメータ算出部513、ホワイトバランス(WB)制御パラメータ算出部514及びメモリ部515を備えている。
メモリ部515はROMやRAM等からなり、撮像センサ30の光電変換特性の情報(撮影に際しての所望の光電変換特性を得るための情報)、すなわち、後述する露光時間設定値や絞り設定値、或いは光電変換特性設定値(該光電変換特性に対応するダイナミックレンジ情報)を記憶する光電変換特性情報記憶部516、ノイズキャンセル部410において用いられるコアリング係数の設置位置を記憶するコアリング係数記憶部517、撮像センサ30の線形特性領域と対数特性領域とで得られたデータに対するデータ変換(相互変換)を行うための変換情報、すなわちLUT(Look Up Table)等を記憶するLUT記憶部518等から構成されている。
なお、光電変換特性情報記憶部516には、光電変換特性そのもの(後述する図7に示すような光電変換特性曲線)が記憶される構成であってもよい。また、LUT記憶部518は、上記LUTの他に、露光時間や絞りの開口面積の値と露光時間設定値や絞り設定値とのデータ変換を行うLUT、光電変換特性の変曲点の値(出力レベル)と光電変換特性設定値とのデータ変換を行うLUT等、種々のデータ変換用のLUTを記憶している。また、上述したとおり、光電変換特性情報記憶部516、コアリング係数記憶部517及びLUT記憶部518に記憶されているデータ値は、適宜、情報送信部502から信号処理部40の適所へ送信されるようになっている。
AE制御パラメータ算出部5110は、被写体の輝度に応じた露出制御(AE制御)を行うべく、撮影の際の最適な露光量と撮像センサ30の光電変換特性とに設定するための制御パラメータを算出する。すなわち、AE制御パラメータ算出部5110の露光量制御パラメータ算出部511は、露光時間や絞りを最適化するための制御パラメータを算出するものであり、露光量制御パラメータ算出部511は、評価値検出部405にて検出されるAE評価値と、前記光電変換特性情報記憶部516に記憶されている前記AE評価値取得時点における撮像センサ30の光電変換特性情報とに基づいて、被写体輝度に応じた露光時間設定値や絞り設定値を算出する。
またダイナミックレンジ制御パラメータ算出部512は、被写体輝度に応じ撮像センサ30の光電変換特性を最適化するための制御パラメータを算出するものである。ダイナミックレンジ制御パラメータ算出部512は、例えばダイナミックレンジ設定用の被写体輝度が、撮像センサ30における所望の飽和出力レベルになるような光電変換特性設定値を算出する。この算出に際しても、光電変換特性情報記憶部516に記憶されている前記AE評価値取得時点における撮像センサ30の光電変換特性情報が参照される。
AF制御パラメータ算出部513は、評価値検出部405にて検出されるAF評価値に基づいて、被写体の撮影にあたり最適な焦点距離に設定するための制御パラメータを算出する。この制御パラメータの算出にあたり、参照するAF評価値を、撮像センサ30の対数特性領域及び線形特性領域のそれぞれで取得し、それぞれの特性領域の特徴を活用して粗測距(対数特性領域から得たAF評価値)用、詳測距(線形特性領域から得たAF評価値)用の制御パラメータを算出するよう構成することが好ましい。
ホワイトバランス制御パラメータ算出部514は、評価値検出部405にて検出されるWB評価値に基づいて、画像信号の色バランスが所定の色バランスに設定するための制御パラメータを算出する。この制御パラメータの算出にあたり、同様に参照するAF評価値を、撮像センサ30の対数特性領域及び線形特性領域のそれぞれで取得し、それぞれの特性領域に応じた制御パラメータを算出するよう構成することが好ましい。
制御信号発生部520は、前記演算部510で算出された各種の制御パラメータに応じて、各制御動作要素を駆動させるための制御信号を生成するもので、該制御信号発生部520は、ダイナミックレンジ制御信号発生部521、センサ露光時間制御信号発生部522、シャッタ制御信号発生部523、ズーム/フォーカス制御信号発生部524及び絞り制御信号発生部525を備えて構成されている。
ダイナミックレンジ制御信号発生部521は、前記ダイナミックレンジ制御パラメータ算出部512において算出された撮像センサ30の光電変換特性設定値に応じて、光電変換特性が線形特性領域から対数特性領域に切り替える出力レベルポイント(変曲点)を調整する撮像センサ30の駆動信号を生成し、これをタイミング生成回路31へ送信する。タイミング生成回路31は、入力された駆動信号に応じて、撮像センサ30のダイナミックレンジを制御するタイミング信号を生成して撮像センサ30を駆動させる。具体的には、後述するように撮像センサ30の光電変換特性は、当該撮像センサ30に対する信号φVPS(φVPSにおける電圧VPHの高さ、或いは時間ΔTの長さ)を制御することでその変曲点が変動することから、ダイナミックレンジ制御信号発生部521は、光電変換特性設定値に応じて、前記信号φVPSを制御するためのタイミング生成回路31に対する駆動信号を制御することで、撮像センサ30のダイナミックレンジを被写体の輝度に適するよう制御する。
センサ露光時間制御信号発生部522は、撮像センサ30の露光時間(積分時間)を、絞り22やシャッタ23等のメカ操作に依らず、電子回路的な制御動作により制御するための制御信号を発生するものである。センサ露光時間制御信号発生部522は、前記露光量制御パラメータ算出部511にて算出された最適な露光量に基づいて、所期の露光時間が確保されるよう撮像センサ30の駆動信号(具体的には、後述するように撮像センサ30に対する信号φVPSが中電位Mとなる時間ΔSを制御する信号)を生成し、これをタイミング生成回路31へ送信する。タイミング生成回路31は、入力された駆動信号に応じて、撮像センサ30の露光時間を制御するタイミング信号を生成して撮像センサ30を駆動させる。
シャッタ制御信号発生部523は、同様に露光量制御パラメータ算出部511にて算出された最適な露光量に基づいて、シャッタ23のシャッタスピード(シャッタ開放時間)を露光時間に合わせて設定する制御信号を生成する。またズーム/フォーカス制御信号発生部524は、前記AF制御パラメータ算出部513にて算出された最適な焦点距離に基づいて、レンズ群21を駆動させるための制御信号を生成する。さらに絞り制御信号発生部525は、前記露光量制御パラメータ算出部511にて算出された最適な露光量に基づいて、絞り22の開口面積を設定する制御信号を生成する。これらシャッタ制御信号発生部523、ズーム/フォーカス制御信号発生部524及び絞り制御信号発生部525にて生成された制御信号は、駆動部60の対応箇所へそれぞれ送信される。
入出力部530は、メモリカードI/F部412及びLCD表示I/F部413と接続され、操作部100からの指示信号等に対応して、撮影画像に対して所定の画像処理を行った後、その撮影画像信号をメモリカード107に記録させたり、LCD表示部106に表示させたり、或いは逆にメモリカード107から画像信号を取り入れたりする出入力作用を為す。
分割設定部540は、操作部100(選択決定スイッチ106)からの指示信号に基づいて、階調変換部409のDR圧縮処理における線形/対数画像の領域分割位置を設定するものである。具体的には、分割パラメータθの位置を、θ=Ythの位置とするか、或いはθ<Ythにおける何れの位置とするかの設定を行う。ただし、θ<Ythの位置においては、予め所定の下限値まで段階的に設定された所定数の位置情報の中からユーザが選択して設定する構成としてもよいし、θ<Ythとなる所定位置に1つ設定され、θ=Ythが選択されなかった場合に自動的にこの位置が設定される構成であってもよい。もちろんθ≦Ythの位置に固定値として1つ設定しておき、例えばユーザにより操作部100でコントラスト改善モードが指定されるのに応じてこれが自動的に設定される構成であってもよい。
図2に戻って、駆動部60は、前記制御信号発生部520で生成された制御信号に基づいて、実際に当該デジタルカメラ1が具備するメカ駆動部を動作させるもので、シャッタ駆動部61、ズーム/フォーカス駆動部62及び絞り駆動部63を備えている。シャッタ駆動部61は、前記シャッタ制御信号発生部523から与えられる制御信号に応じて、シャッタ23が所定時間開放されるようシャッタ23を開閉駆動する。ズーム/フォーカス駆動部62は、ズーム/フォーカス制御信号発生部524から与えられる制御信号に応じて、レンズ群21のズームレンズブロックまたはフォーカスレンズブロックを動作させるモータ等を動作させ、前記レンズブロックを焦点位置に移動させる。さらに絞り駆動部63は、絞り制御信号発生部525から与えられる制御信号に応じ、絞り22を駆動し、所定の開口量に絞りを設定するものである。
(本実施形態で用いる撮像センサの基本的特性について)
ところで、本実施形態においては、その光電変換特性として入射光量に対して電気信号が線形的に変換されて出力される線形特性領域と、入射光量に対して電気信号が対数的に変換されて出力される対数特性領域とを備える撮像センサ30を用いることが前提とされている関係上、先ずこの撮像センサ30の基本的特性について、その具体的な一例を詳述する。
図4は、撮像センサ30の一例である二次元のMOS型固体撮像装置の概略構成図である。同図において、G11〜Gmnは、行列(マトリクス)配列された画素を示している。この画素G11〜Gmnからなる画素部の外周縁部近傍には、垂直走査回路301と水平走査回路302とが配設されている。垂直走査回路301は、行のライン(信号線)304−1、304−2、・・・304−n(これらを纏めて行ライン304という)を順次走査する。水平走査回路302は、各画素から出力信号線306−1、306−2、・・・306−m(これらを纏めて出力信号線306という)に導出された光電変換信号を画素毎に水平方向に順次読み出す。なお、各画素は電源ライン305により電力供給がなされている。各画素には、前記各ラインや出力信号線だけでなく、他のライン(例えばクロックライン)も接続されているが、図4では図示を省略している。
出力信号線306−1、306−2、・・・306−mには、それぞれ、後述のトランジスタT5と対になって増幅回路を構成する定電流源307−1、307−2、・・・307−m(これらを纏めて定電流源307という)が設けられている。ただし、この増幅回路として、定電流源307に代えて抵抗やトランジスタ(MOSトランジスタ)を設けてもよい。この出力信号線306を介して出力される各画素の撮像時の画像データ及びリセット時の補正データが、順次、選択回路(サンプルホールド回路)308−1、308−2、・・・308−m(これらを纏めて選択回路308という)に出力される。この選択回路308に対して、行毎に画像データ及び補正データが出力されてサンプルホールドされる。サンプルホールドされた画像データ及び補正データは、列毎に、補正回路309に出力され、補正回路309において、感度バラツキによるノイズ成分が除去されるように、補正データに基づいて画像データの補正が行われる。そして、補正回路309から各画素の感度バラツキが補正された画像データが、各画素毎にシリアルに出力される。
図5は、図4に示す各画素G11〜Gmnの構成例を示す回路図である。同図に示すように、画素は、フォトダイオードPD、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)としてのトランジスタT1〜T6、及び積分用のコンデンサとしてのキャパシタCから構成されている。トランジスタT1〜T6は、ここではPチャンネルMOSFETが採用されている(NチャンネルMOSFEを採用してもよい)。φVD、φV、φVPS、φRST、φS及びRSBは、各トランジスタやキャパシタCに対する信号(電圧)を示し、GNDは接地を示している。
フォトダイオードPDは、感光部(光電変換部)であり、被写体からの入射光量に応じた電気信号(光電流IPD)を出力する。トランジスタT5は、図4に示す定電流源307と対になってソースフォロワ増幅用の増幅回路(ソースフォロワアンプ)を構成するものであり、後述する電圧VOUTに対する増幅(電流増幅)を行う。トランジスタT6は、ゲートに印加する電圧に応じてオン、オフされるスイッチとして動作する信号読み出し用のトランジスタである。すなわち、トランジスタT6のソースは、図4に示す出力信号線306に接続されており、オンした場合、トランジスタT5で増幅された電流を出力電流として出力信号線306へ導出する。
トランジスタT2は、同トランジスタのゲートに、光電流IPDに対して線形変換又は対数変換した電圧を発生させる。ところで、MOSFETでは、ゲート電圧が閾値以下の時に、サブスレッショルド電流と呼ばれる微小電流が流れるが、トランジスタT2はこのサブスレッショルド特性を利用して前記線形変換又は対数変換を行う。
具体的には、撮像する被写体の輝度が低い(被写体が暗い)場合、すなわち、フォトダイオードPDに入射される入射光量が少ない場合には、トランジスタT2のゲート電位が同トランジスタのソース電位より高くなっており、トランジスタT2が所謂カットオフ状態でありトランジスタT2にサブスレッショルド電流が流れず(トランジスタT2がサブスレッショルド領域で動作せず)、フォトダイオードPDで発生する光電流がフォトダイオードPDの寄生容量に流れて電荷が蓄積され、蓄積電荷量に応じた電圧が発生する。このときT1はオンされているので、上記の寄生容量に蓄積された電荷の量に応じた電圧が、電圧VGとしてトランジスタT2、T3のゲートに発生する。この電圧VGにより、トランジスタT3に電流が流れ、この電圧VGに比例した量の電荷がキャパシタCに蓄積される(トランジスタT3とキャパシタCとで積分回路を構成している)。そして、トランジスタT3とキャパシタCとの接続ノードa、すなわち出力VOUTには、光電流IPDの積分値に対して線形的に比例した電圧が現れる。このときトランジスタT4はオフ状態である。そして、トランジスタT6がオンされると、キャパシタCに蓄積された電荷がトランジスタT5を介して出力電流として出力信号線306に導出される。この出力電流は、光電流IPDの積分値を線形的に変換した値となっている。これが撮像センサ30の線形特性領域における動作である。
一方、撮像する被写体の輝度が高く(被写体が明るく)、フォトダイオードPDに入射される入射光量が多い場合には、トランジスタT2のゲート電位が同トランジスタのソース電位以下となり、トランジスタT2にサブスレッショルド電流が流れ(トランジスタT2がサブスレッショルド領域で動作し)、光電流IPDを自然対数的に変換した値の電圧VGがトランジスタT2、T3のゲートに発生する。そして、この電圧VGにより、トランジスタT3に電流が流れ、キャパシタCに、光電流IPDの積分値を自然対数的に変換した値と同等の電荷が蓄積される。これにより、キャパシタCとトランジスタT3との接続ノードa(出力VOUT)には、光電流IPDの積分値を自然対数的に変換した値に比例した電圧が生じる。このときトランジスタT4はオフ状態である。そして、トランジスタT6がオンされると、キャパシタCに蓄積された電荷がトランジスタT5を介して出力電流として出力信号線306に導出される。この出力電流は、光電流IPDの積分値を自然対数的に変換した値となっている。これが当該撮像センサ30の、対数特性領域における動作である。以上のように、各画素によって、入射光量(被写体輝度)に応じて線形的又は自然対数的に比例した電圧が出力される。
トランジスタT1は、リセット時のノイズデータ(トランジスタT2の製造バラツキに起因して発生するノイズ信号)を取り出す際に用いるスイッチである。トランジスタT1は、リセット時以外にはオン状態とされており、トランジスタT2(のドレイン)及びフォトダイオードPD間に光電流IPDが流れるようになっている。リセット時には、オフ状態となりフォトダイオードPDの光電流IPDが遮断され、前記のバラツキ分だけが取り出される。この取り出されたバラツキ分(ノイズ信号)は、後述の映像信号から減算される。トランジスタT4は、該トランジスタT4のゲートに印加される電圧に応じてオン、オフされるスイッチとして動作する、キャパシタCをリセットするためのトランジスタである。トランジスタT4がオンされるとリセット電圧(前記信号RSBの電圧)が印加され、キャパシタCに蓄積されていた電荷(電荷量)が元の状態、すなわち積分開始前の状態に戻される。
図6は、撮像センサ30(画素)の撮像動作に関するタイミングチャートの一例である。ここではPチャンネルMOSFETの極性上、以下のようにHi(ハイ)でオフ、Low(ロー)でオンとなる。先ず、信号φVが符号311に示す位置でLowとなり、トランジスタT6がオンされ、映像信号が読み出される、すなわちキャパシタCに蓄積されている電荷が出力電流(映像信号)として出力信号線306に導出される。次に信号φSが符号312に示す位置でHiとなり、トランジスタT1がオフされてフォトダイオードPDが切り離される。次に信号φVPSが符号313に示す位置でHiとなり、トランジスタT2のリセットが行われる。また、トランジスタT2がリセットされるのと同時に、信号φRSTが符号314に示す位置でLowとなり、トランジスタT4がオンされ、キャパシタC(接続ノードa)に信号RSBによるリセット電圧が印加されて(接続ノードaの電位がRSBの電位(VRSB)となり)、キャパシタCの(電荷の)リセットが行われる。このようにトランジスタT2及びキャパシタCがリセットされた後、符号315に示す位置で信号φVが再度LowとなってトランジスタT6がオンされ、出力信号線306にノイズ信号が導出される。
次に、信号φSが符号316に示す位置でLowになり(トランジスタT1がオンされ)、フォトダイオードPDの切り離しが解除される。そして、信号φVPSが符号318に示す位置で中電位Mとなって、残像低減のためにフォトダイオードPDの寄生容量のリセットを行う。また、次フレームの積分開始電圧を一定にするために、信号φRSTが符号317に示す位置で再度LowとなってトランジスタT4がオンされ、キャパシタCのリセットが再度行われる。
その後、信号φVPSが符号319に示す位置でMからLowになり、フォトダイオードPDの寄生容量のリセットが終了する。併せて、信号φRSTもLowからHiとなりキャパシタCのリセット動作も終了される。このときの時刻t1からキャパシタCの積分が開始され、信号φVがHiからLowとなる符号311に示す位置、すなわち次フレームにおける映像信号の読み出しが開始される時刻t2までの間、当該積分が継続される。この時刻t1、t2間の時間がキャパシタCの積分時間、すなわち撮像における露光時間となる。この露光時間は、前記中電位Mとなる信号φVPSを与える時間ΔS(長さ)を制御することで制御される。この時間ΔSは、タイミング生成回路31を介したセンサ露光時間制御信号発生部522によって制御される。信号φVDは、前記増幅回路(ソースフォロワアンプ)の動作範囲に合わせ込むべく、或いは映像信号やノイズ信号に発生するオフセットの調整を行うべく電位操作を行うものである。信号φVDのVh、Vm及びVlは、それぞれ高電位、中電位及び低電位を示している。
撮像センサ30は、上述のように被写体の輝度に応じて線形変換又は対数変換した出力信号を得ることが可能であり、図7に示すような光電変換特性320を有している。同図に示すように、光電変換特性320は、変曲点321を境にして線形特性領域と対数特性領域とに分かれている。この変曲点321は、線形特性領域から対数特性領域へ切り替わる点であり、この変曲点321のセンサ出力の値をVthで示している。一般的に、線形特性領域では、幅広い輝度範囲の被写体の撮像は不可能であるものの(ダイナミックレンジが狭い)、画像全体の階調性を高くすることができ(高いコントラストを得ることができ)、暗い被写体(例えば曇天時や日陰での被写体)であっても階調性豊かな高品位な画像を得ることができる。一方、対数特性領域では、高輝度での階調性は乏しくなるが、幅広い輝度範囲の被写体の撮像が可能であり(ダイナミックレンジが広い)、明るい被写体(例えば直射日光が照射されていたり、直射日光が背後に存在たりする被写体)であっても、暗い部分も含め、奥行きのある高品位な画像を得ることができる。
ところで、この光電変換特性320(変曲点321)は、トランジスタT2のソースに入力されている信号φVPSの、Hi及びLowの電圧の差を変化させることにより変化(移動)させることができる。すなわち、当該Hi時の電圧をVPHとし、Low時の電圧をVPLとすると、電圧の差ΔVPS(=VPH−VPL)(図9参照)を変化させることにより、図11に示すように、光電変換特性320(変曲点321)から、光電変換特性322(変曲点324)や光電変換特性323(変曲点325)へ任意に変化させることができる。このように光電変換特性が変化することにより、線形特性領域と対数特性領域との比率が変化し、光電変換特性322に示すように線形特性領域の割合が大きな光電変換特性、或いは光電変換特性323に示すように対数特性領域の割合が大きな光電変換特性を得ることができる。この場合、光電変換特性の全てが線形特性領域又は対数特性領域となるように変化させてもよい。
本実施形態では、電圧VPHを変化させることによりΔVPSを変化させ、撮像センサ30の光電変換特性を変化させている。図8では、VPHが高くなるほど(ΔVPSが大きくなるほど)、線形特性領域の割合が増えて光電変換特性322側へ変化し、VPHが低くなるほど(ΔVPSが小さくなるほど)、対数特性領域の割合が増えて光電変換特性323側へ変化する。この電圧VPHは、タイミング生成回路31を介したダイナミックレンジ制御信号発生部521によって制御される。なお、光電変換特性を上述のように変化させるために、電圧VPHとなる信号φVPSを与える時間ΔTを変化させてもよい。この場合、時間ΔTを長いほど線形特性領域の割合が大きくなり、短いほど対数特性領域の割合が大きくなるように光電変換特性が変化する。図8では、前記時間ΔTが長い場合が光電変換特性322に、時間ΔTが短い場合が光電変換特性323に相当する。
このようにして撮像センサ30により撮像されて得られた線形/対数画像は、信号処理部40に送られ、各処理ブロック(アナログ信号処理部401、A/D変換器402…)において所定の信号処理がなされた後、階調変換部409に入力される。そして階調変換部409において、本発明に係る線形/対数画像に対するDR圧縮処理が実行される。以下、このDR圧縮処理について詳述する。
図9は、図2に示す階調変換部409の機能を説明するための機能ブロック図である。図9に示すように階調変換部409は、領域分割抽出部4091、照明成分抽出部4092、照明成分圧縮部4093及び画像合成部4094を備えている。領域分割抽出部4091は、階調変換部409に入力された線形/対数画像(基画像Iとする)に対し、対数特性領域を含む部分(対数特性領域全体からなる部分、或いは対数特性領域全体と線形特性領域の一部とからなる部分)と、残りの線形特性領域の部分との2つの領域に分割し、この基画像Iから当該分割してなる各領域の画像データ(それぞれ画像I1、I2とする)を抽出するものである。
照明成分抽出部4092は、前記分割抽出された画像(画像I1)から照明成分を抽出するものである。照明成分圧縮部4093は、照明成分抽出部4092により抽出された照明成分画像に対する圧縮処理を行うものである。画像合成部4094は、領域分割抽出部4091で分割抽出された各画像I1、I2及び基画像Iに基づいて合成画像を作成するものである。これら各部の動作(演算処理)について以下に詳述する。
図9において、先ず、階調変換部409に入力される基画像Iは、例えば図10に示す光電変換特性600を有しており、この光電変換特性600は、入力輝度x(対数値ではない)に対する画素値yとして以下の(1-1)、(1-2)式で表される。同図に示す座標Xth及びYthは、光電変換特性600における対数特性領域601と線形特性領域602ととが切り替わる点すなわち変曲点603の各(x、y)座標の値である。ただし、同図の「入力輝度」及び「画素値」はそれぞれ上記図7、8に示す「センサ入射輝度」及び「センサ出力」に相当する。
y=a*x+b(0≦x≦Xth) …(1-1)
y=α*log(x)+β(Xth≦x)…(1-2) (*:乗算、以降も同じ)
(式(1-1)は線形特性領域602を、式(1-2)は対数特性領域601を表している)
領域分割抽出部4091では、以下の条件式(2-1)〜(2-4)に示すように、基画像I(ここでは2次元画像であることを示すべく画像I(x、y)と表現している)を構成する各画素に対し、画素値が所定の値「θ」以上の領域と「θ」未満の領域とに分割する(θによって基画像Iを各特性領域の上限、下限位置で所謂クリップする)。この「θ」のことを以降、適宜、分割パラメータと称する。ただし、分割パラメータθの値は、本実施形態における対数特性領域でのコントラスト改善という目的において、少なくとも対数特性領域601を含むよう設定されることになるYth以下の任意の値とする。
if(I(x、y)≧θ)
then
I1(x、y)=I(x、y) …(2-1)
I2(x、y)=0(ゼロ) …(2-2)
else
I1(x、y)=0(ゼロ) …(2-3)
I2(x、y)=I(x、y) …(2-4)
endif
これはつまり、画像I(x、y)において画素値がθ以上となる領域の画像が画像I1(画像I1(x、y))であり、画素値がθより小さい(θ未満)となる領域の画像が画像I2(画像I2(x、y))となることを示している。
領域分割抽出部4091は、このような基画像Iが入力されると、操作決定スイッチ106の指示情報等に基づき分割設定部540に設定された境界パラメータθの値に応じて、すなわち以下の「場合1:θ=Yth」及び「場合2:θ<Yth」の各場合となるθの値を分割の境目として、基画像Iから画像I1と画像I2との分割抽出処理を行う。なお、この境界パラメータθの設定情報は、階調変換部409(例えば領域分割抽出部4091)に記憶されていてもよい。
ところで上記背景技術で説明したRetinex理論において、基画像Iは、該基画像Iにおける照明成分を照明成分L、反射率成分を反射率成分Rとすると、以下の(3-1)式で表される。
I=L*R …(3-1)
ただし、(3-1)式は、線形特性領域画像としての基画像Iに対するものであり、対数特性領域画像としての基画像Iに対しては、上記(3-1)式は以下の(4-1)式に示す変形式で表される。
Log(I)=Log(L)+Log(R) …(4-1)
(場合1:θ=Yth)
図10に示すように、分割パラメータθの値がYthとなる場合、基画像Iにおいて画素値がθ(=Yth)以上となる画像I1は、領域604における上記(1-2)式に相当する対数特性領域601の画像であることを示しており、以下(5-1)式で表される。なお、画像I2は、領域605における上記(1-1)式に相当する線形特性領域602の画像となる。
I1=α*log(x)+β …(5-1)
対数変換前の画素値、つまり画像I1の1つの画素を「i1」と表すと、
前記(4-1)式の左辺はLog(i1)となり、このLog(i1)は(5-1)式の変形から、以下(6-1)式で表されることになる。
log(i1)=(I1−β)/α …(6-1)
照明成分抽出部4092は、画素値がθ(変曲点Yth)以上の上記画像I1中の照明成分としてのLog(L1)(すなわち画像I1の照明成分L1の対数値)を抽出する。この照明成分は画像の低周波成分で近似できるので、以下(7-1)式と表される。
Log(L1)=F(log(i1)) …(7-1)
この“F”に示す変換は、ガウシンア或いは平均化に関する線形のローパスフィルタ(LPF)を示している。このようにフィルタが線形の場合、(7-1)式は、上記(6-1)式を代入することで以下(8-1)式と表される(“線形フィルタ”であるため、“F”が(I1)の項のみに係る式で表される)。(8-1)式は、照明成分Log(L1)が、LPFを用いた(8-1)式の右辺によって画像I1から求められることを示している。
Log(L1)=(F(I1)−β)/α …(8-1)
ただし、上記線形フィルタに限定されず、要は、所謂“ぼかした画像”が得られるのであれば、例えばメディアンフィルタ等の非線形フィルタを用いてもよい。この場合、上非線形フィルタを適用したとしても大きく値が変わらないため当該処理に使用可能となる。
なお、照明成分を求める際、画像I1の代わりに基画像Iを用いて同様に演算を行うと、画像I1を用いた場合よりも、線形/対数画像における線形特性領域と対数特性領域との境界(変曲点603)における擬似輪郭を緩和することができる。この擬似輪郭とは、当該線形特性と対数特性との切り替わり位置(変曲点位置)における段差に起因する所謂階調反転を示す。
次に、照明成分圧縮部4093では、照明成分抽出部4092において抽出された上記 照明成分Log(L1)に対する所定の圧縮処理を行い、当該照明成分L1を圧縮してなる照明成分L1’の対数値Log(L1’)として出力する。DR圧縮における圧縮率(DR圧縮率)を「r」とすると、照明成分圧縮部4093から出力されるLog(L1’)は、以下の(9-1)式で示されるものとなる。
Log(L1’)=Log(L1)×r …(9-1)
画像I1に対するDR圧縮後の画像を画像I1’とし、画像I1における反射率成分をR1とすると、上記(4-1)式は以下(10-1)式と表されるので、
Log(I1’)=Log(L1’)+Log(R1) …(10-1)
画像I1’は、以下(11-1)式で表される。
I1’=exp(Log(L1’)+Log(R1)) …(11-1)
ただし、図9に示すように、上記Log(R1)は、符号4095に示す減算部(減算部4095)によって、ルートAを送信されてくる画像I1からルートBを送信されてくる照明成分Log(L1)を減算することで得られる。また、画像I1’は、符号4096に示す加算部(加算部4096)によって、照明成分圧縮部4093からの圧縮照明成分Log(L1’)と前記減算部4095からの反射率成分Log(R1)とを加算することで得られる。なお上述では、画像がルートを“送信”されると表現しているが、実際の動作としては画像データ信号(映像信号)が該当するルート全体に印加された状態となっている。
画像合成部4094は、このようにして得られた画像I’、ルートCを送信されてきた画像I2、及びルートDを送信されてきた基画像Iに基づいて合成画像Oを作成する。ただし、実際の処理においては、画像I2を用いず、画像I’と基画像Iとから合成画像Oを作成する。この場合、基画像Iにおける画素値がθ以上となる領域を画像I1’と入れ替える処理(書換え処理)を行うことで合成画像Oを作成する。
なお、上記態様では、画像I2を使用せずに基画像Iを使用して画像I1’との合成画像Oを作成する構成(回路構成)としているが、ルートDの回路を設けず、ルートCの回路を送信される画像I2を当該画像I2を内包する基画像Iとし(つまり画像I2を基画像Iに置き換える)、この画像I2(=基画像I)と画像I1’とを合成して合成画像Oを作成する構成としてもよい。
(場合2:θ<Yth)
図11に示すように、分割パラメータθの値がYthより小さい場合、基画像Iにおいて画素値がθ(=Yth)以上となる画像I1は、対数特性領域601の画像(領域604)と線形特性領域602の画像の一部(領域606)とからなる領域607に示す画像となる。画像I2は領域608での画像となる。ここでは、領域分割抽出部4091は、このようにして基画像Iから画像I1(及び画像I2)の分割抽出を行う。ただし、当該線形特性領域画像の一部を併せもつ画像I1のことを、適宜、部分線形対数画像B1と表現する。
ところで、θ<Ythとなる分割パラメータθは、線形特性領域における変曲点近傍位置つまり数特性領域との隣接位置に設定されることが好ましい。これは、実際の撮影動作においては、線形特性領域は既に上述のAE制御によって最適な状態(例えば最適な露光量、コントラストが得られる状態)に調整されているため、この線形特性領域側をなるべくそのままの状態で維持しつつ対数特性領域側のコントラストを高めようということであって、線形特性領域と対数特性領域との境界(特性線のつなぎ目)に発生する擬似輪郭を緩和するための画像処理を容易に実施可能とするべく、後述の基画像Iとの重複部分が得られる位置にθを設定するものである。
照明成分抽出部4092は、上記の部分線形対数画像B1から照明成分を抽出する。この照明成分には対数特性領域及び線形特性領域それぞれの照明成分が含まれている。当該部分線形対数画像B1における対数特性領域画像及び線形特性領域画像の照明成分をそれぞれLog(La)、Lbとすると(反射率成分はそれぞれLog(Ra)、Rbとする)、照明成分圧縮部4093は、これら照明成分に対し、つまりLog(La)に対しては、上記(9-1)式と同様にして以下(12-1)式に示すようにDR圧縮を行い、
Log(La’)=Log(La)×r …(12-1)
Lbに対しては、以下(12-2)式に示すようにDR圧縮を行う。
Lb’=exp(Log(Lb)×c) …(12-2)
ただし、上記「c」は線形特性領域部でのDR圧縮率
なお、照明成分Log(La’)、Lb’は、これら纏めて図9に示すLog(L1’)に相当し(Log(La)、Lbは纏めてLog(L1)に相当する)、反射率成分Log(Ra)、Rbは同じく纏めてLog(R1)に相当する。すなわち、このθ<Ythの場合における図9の画像I1は、線形特性領域画像及び対数特性領域画像を含むものとしての画像I1であり、よってこの照明成分Log(L1)やこれを圧縮したLog(L1’)、及び反射率成分Log(R1)も線形特性領域画像及び対数特性領域画像を含むものとして扱うこととする。(12-2)式に示すDR圧縮については後述の実施形態2の場合と同様であり、ここでの説明を省略する。
このようにして、照明成分圧縮部4093により、画像I1(部分線形対数画像B1)における領域604での対数特性画像とともに、領域606での線形特性画像がDR圧縮される。なお、上述においては、説明の便宜上、対数特性領域及び線形特性領域の照明成分を、Log(La’)、Lb’として区別して扱っているが、実際のDR圧縮処理においては、これらLog(La’)、Lb’が合成されてなる1つのLog(L1)として扱われ、このLog(L1)に対してDR圧縮処理が施されるものである。したがって、対数特性領域が線形特性領域の一部と一緒にDR圧縮されるため、DR圧縮時の対数特性領域と線形特性領域との境界に発生する擬似輪郭を緩和(防止)することが可能となる。
画像合成部4094は、上記場合1と同様、当該画像I1がDR圧縮処理されてなる画像I1’(図9に示す画像I1’に相当)、画像I2、及び基画像I(図9に示すルートDの基画像Iに相当)に基づいて合成画像Oが作成される(実際の動作においては、画像I2を使用せずに画像I1’と基画像Iとを用いて合成画像Oを作成する。この場合も上記場合1と同様、ルートDを削除して画像I2を基画像Iとして扱ってもよい)。
ただし、場合2では、図12に示すように、画像I1’(領域607で示す画像I1)と基画像I(領域609)とに基づく合成画像Oの作成において、画像I1’の線形特性領域と基画像Iの線形特性領域(符号610に示す線形特性画像ILIN)とに重複部分Wが存在することになる。この「重複部分」とは、空間的に重複した部分、輝度レベルで重複した部分という2つの意味があるが、ここでの重複部分Wは、輝度レベルで重複した部分を示している。したがって、画像合成部4094は、基画像Iにおける分割パラメータθ以上の領域に対し、画像I1’における対数特性領域の部分はそのまま基画像Iと入れ替え、重複部分Wでは以下のように基画像Iとの合成処理をしてなる画像と入れ替える処理を行うことで合成画像Oを作成する。
上記重複部分Wにおける基画像Iと画像I1’との合成は、例えば平均化処理、すなわち以下(13-1)式で示す加算平均処理によってなされる。ただし、画像Iwは、合成画像Oの重複部分Wにおける画像データを示す。
Iw=(I1’+ILIN)/2 …(13-1)
なお、上記画像I1’と基画像Iとの合成処理(重複部分Wにおける画像Iwの算出)においては、平均化処理に限らず、例えば重み付け平均処理を用いてもよい。この重み付け平均処理は、例えば図13に示すように、画素値が「θ」となるときには画像ILINを100%使用し(ILINの重み=1.0/I1’の重み=0)、画素値がYthに近づくにしたがって画像I1’の重みを増加させるとともに画像ILINの重みを減少させ、最終的に、画素値が「Yth」となるときに画像I1’を100%使用する(ILINの重み=0/I1’の重み=1.0)といったように、画素値θからYthの各位置に応じた画像ILIN及び画像I1’に対する重み付けを行う処理である。なお、図13に示す重複部分Wでの重みの変化グラフは、要は、画素値がθの位置でILINに対する重みが100%、Ythの位置でI1’に対する重みが100%となればよく、符号611、612に示すような直線形でなく所定の曲線形であってもよい。この場合、ILINに対する重みの変化に対応させて画像I1’に対する重みを変化させる必要はない(個別に重みを設定してもよい)。
本実施形態1では、以上のようにDR圧縮処理(階調変換処理)を行うことで、例えば図14に示すように、DR圧縮処理実施前の光電変換特性600が例えば変換特性620へと変化する。ただし図14は上記重複部分を重み付け平均した場合であり、符号623に示すように当該重複部分が所謂立った状態のグラフ形状となっている。この変化により、対数特性領域の画素値幅が幅621から幅622へと増大し、これにより、線形特性領域602をそのまま維持しつつ(線形特性グラフの傾きや形状を保ちつつ)、すなわち線形特性領域602のコントラストが強調され過ぎたり失われないようにして、光電変換特性全体で見たときの対数特性領域の画素値幅の割合をより大きくすることで、対数特性領域におけるコントラスト改善(向上)を図ることができる。そして、対数特性領域のコントラストが改善されるようDR圧縮処理された画像データを扱うことができるため、例えばディスプレイ系への表示における画像の高画質化を図ることが可能となる。
図15は、デジタルカメラ1の階調変換部409におけるDR圧縮処理の一例を示すフローチャートである。先ず撮像センサ30による撮像によって線形/対数画像が得られる(ステップS1)。この線形/対数画像データが信号処理部40に送信され、信号処理部40におけるアナログ信号処理部401等の各処理ブロックで所定の信号処理が行われた後、階調変換部409に入力される(ステップS2)。次に、領域分割抽出部4091によって、階調変換部409に入力された線形/対数画像(基画像I)が分割パラメータθを境として対数特性領域の画像I1(又は線形特性領域の一部を含む画像I1(=画像B1))と線形特性領域での画像I2とに分割され、この各画像I1、I2が基画像Iから抽出される(ステップS3)。分割パラメータθの値が変曲点位置のYthである場合には(ステップS4のYES)、照明成分抽出部4092によって対数特性領域の画像I1に対する照明成分Log(L1)の抽出処理が行われ(この抽出された照明成分Log(L1)が減算部4095によって画像I1から減算されて反射率成分Log(R1)が得られ)(ステップS5)、さらに、照明成分圧縮部4093によってステップS5で抽出処理された照明成分Log(L1)が圧縮処理されて照明成分Log(L1’)とされ(この圧縮された分照明成分Log(L1’)と上記反射率成分Log(R1)とが加算部4096によって加算され)、画像I1’が求められる(ステップS6)。そして、画像合成部4094によって画像I1’、I2及び基画像Iに基づいて合成画像Oが作成される(ここでは基画像Iにおける画素値がθ以上となる領域を画像I1’と入れ替える処理が行われる)(ステップS7)。
一方、分割パラメータθの値が変曲点位置のYthより小さい場合には(ステップS4のNO)、照明成分抽出部4092によって対数特性領域と線形特性領域の位置とからなる画像I1(画像B1)に対する各領域の照明成分Log(La)、Lb(これらは纏めてLog(L1’)に相当する)の抽出処理が行われ(この抽出された照明成分Log(La)、Lbが減算部4095によって画像I1から減算され反射率成分Log(Ra)、Rbが得られ)(ステップS8)、さらに、照明成分圧縮部4093によってステップS8で抽出処理された照明成分Log(La)、Lbが圧縮処理されて照明成分Log(La’)、Lb’とされ(この圧縮された照明成分Log(La’)、Lb’と上記反射率成分Log(Ra)、Rbとが各特性領域毎に加算部4096によって加算され)、画像I1’が求められる(ステップS9)。そして画像合成部4094によって画像I1’、I2及び基画像Iに基づいて合成画像Oが作成され(ここでは、基画像Iと画像I1’とから合成画像Oが作成され、当該画像合成処理において各画像の重複部分Wで平均化処理や重み付け平均処理がなされる)(ステップS10)、当該合成画像Oが階調変換部409から画像メモリや411やLCD表示部107に出力される(ステップS11)。
(実施形態2)
図16は、本発明の実施形態2に係るデジタルカメラ1aの階調変換部409aを説明するための機能ブロック図である。図16に示すように階調変換部409aは、概略的にいうと、図9に示す階調変換部409において、画像I2に対する対照明成分抽出及び照明成分圧縮を行うための回路(処理ブロック)が備えられている点が異なる。その他同符号である各部の構成は、図9に示す階調変換部409のものと同じであり、その説明を省略する。ただし、説明の便宜上、画像I1に対する照明成分抽出部4092を第1照明成分抽出部4092、照明成分圧縮部4093を第1照明成分圧縮部4093と表す。
階調変換部409aは、領域分割抽出部4091a、第2照明成分抽出部701、第2照明成分圧縮部702、及び画像合成部4094aを備えている。領域分割抽出部4091aは、領域分割抽出部4091と同様、階調変換部409aに入力された基画像Iに対し、分割パラメータθによって対数特性領域と残りの線形特性領域の部分との2つの領域に分割し、この基画像Iから当該分割してなる画像I1、I2を抽出する。ただし、実施形態2では、線形特性領域側の画像I2に対しても照明成分の抽出・圧縮処理がなされる構成であり、実施形態1のようにθ<Ythの場合(重複部分)を考慮せずとも、自ずと線形特性領域と対数特性領域とは(滑らかに)接続されるので、分割パラメータθをYthの値のみに固定して設定し、実施形態1と同様にして、基画像Iから当該θ(=Yth;変曲点)の位置を境とする上記図10に示す領域604の画像I1と領域605の画像I2との分割抽出処理を行う。
なお、領域分割抽出部4091aにより抽出された画像I1は、実施形態1と同様に、第1照明成分抽出部4092及び第1照明成分圧縮部4093(並びに減算部4095、加算部4096)によってDR圧縮が施され、その結果、画像I1’が得られて画像合成部4094aに入力される。一方、画像I2は、第2照明成分抽出部701及び第2照明成分圧縮部702による下記の方法でDR圧縮が施され、画像I2’として画像合成部4094aに入力される。
第2照明成分抽出部701は、同図に示すように、領域分割抽出部4091aにより抽出された画像I2から照明成分L2を抽出する。この画像I2からの照明成分L2の抽出処理は以下(14-1)式で示される。
L2=F(I2) …(14-1)
ここで、上記“F”は実施形態1と同様、ガウシアン或いは平均化に関する線形のローパスフィルタを示している。このフィルタはメディアンフィルタ等の非線形フィルタであってもよい。一方、画像I2の反射率成分R2は、R2=I2/L2で求められる((3-1)式参照)。
第2照明成分圧縮部702は、第2照明成分抽出部701により得られた照明成分L2に対する所定の圧縮処理を行い、当該照明成分を圧縮してなる照明成分L2’を出力する。DR圧縮率を「c」で表すと、この圧縮照明成分L2’は以下(15-1)式で与えられる。
L2’=exp(Log(L2)*c) …(15-1)
第2照明成分圧縮部702により得られた圧縮照明成分L2’は、符号704に示す乗算部(乗算部704)によって反射率成分R2と乗算され、その結果、画像I2に対するDR圧縮後の画像I2’が得られる。反射率成分R2は、符号703に示す除算部(除算部703)によって、ルートEを送信されてくる画像I2からルートFを送信されてくる照明成分L2を除算することで得られる。
画像合成部4094aは、上記画像I1に対するDR圧縮により得られた画像I1’と当該画像I2’と、(ルートGで送信されてくる)基画Iとに基づいて合成画像Oを作成する。この場合、先ず画像I1’と画像I2’とからこれらを合成してなる画像I’を作成する。この画像I’は以下の条件式((16-1)、(16-2)式)によって与えられる。
if(I(x、y)≧Yth)
then
I’(x、y)=I1’(x、y) …(16-1)
else
I’(x、y)=I2’(x、y) …(16-2)
endif
続いて、画像I’と基画像Iとから合成画像Oを作成する。この画像I’及び画像Iに基づく合成画像Oの作成は、例えば以下(a)〜(c)の方法で行われる。
<(a)の方法>
図17に示すように符号801に示す光電変換特性(光電変換特性801)を基画像I、符号802に示す変換特性(変換特性802)を画像I’とすると、合成画像Oを、以下(17-1)式に示すように画像Iと画像I’とを平均化(中間値;加算平均値)したものとする。この場合、合成画像Oは例えば符号803の光電変換特性で示される。
O=(I(x、y)+I’(x、y))/2 …(17-1)
なお、上記(17-1)式に示すように単純な加算平均ではなく、画像Iと画像I’とを所定の比率で平均する、具体的には例えば以下(17-1)’式によって平均してもよい。
O=(1*I(x、y)+2*I’(x、y))/3 …(17-1)’
<(b)の方法>
図18に示すように、光電変換特性801を基画像I、変換特性802を画像I’とすると、合成画像Oを以下の条件式((18-1)、(18-2)式)で与えられるものとする。
if(I(x、y)≧Xth)
then
O=(I(x、y)+I’(x、y))/2 …(18-1)
else(即ちI(x、y)<Xth)
O=I …(18-2)
endif
図18では、上記(18-2)式に相当する光電変換特性801(基画像I)における符号8011に示す線形特性領域(線形特性8011)の部分と、上記(18-1)に相当する変換特性804(図17の光電変換特性803の対数特性領域側の部分に相当)とで示されるものが合成画像Oとなる。ただしこの場合、線形特性8011と変換特性804との繋ぎ目(端点8012及び端点8041)に段差が生じることになるが、この段差は、図19(a)に示すように、実施形態1の図12、13で説明した重み付け平均処理と同様、重複部分Tにおける線形特性8011の画像と変換特性804の画像とに対する重み付け平均処理を行うことによって(接続部分805の特性グラフに示すように)滑らかに接続される。
なお、基画像I及び画像I’に基づく合成画像Oは、以下の条件式((19-1)、(19-2)式)で与えられてもよい。
if(I(x、y)≧Yth)
then
O=(I(x、y)+I’(x、y))/2 …(19-1)
else(即ちI(x、y)<Yth)
O=I …(19-2)
endif
この場合の線形特性8011と変換特性804とのつなぎ目(端点8012及び端点8042)は、図19(b)に示すように、所定の係数(重み付け係数)等を用いて、接続部分806の特性グラフに示すように滑らかに接続されてもよい。
この場合も上記(19-1)式のように単純な加算平均でなく、画像Iと画像I’とを所定の比率で平均する、具体的には例えば以下(19-1)’式によって平均してもよい。
O=(1*I(x、y)+2*I’(x、y))/3 …(19-1)’
<(c)の方法>
図20に示すように、光電変換特性801を有する画像を基画像I、変換特性802を有する画像を画像I’とすると、合成画像Oを以下の条件式((20-1)、(20-2)式)で与えられるものとする。
if(I’(x、y)/I(x、y)>e)
then
O(x、y)=I(x、y) …(20-1)
else
O(x、y)=I’(x、y) …(20-2)
endif
ただし、上記「e」は、強調率(ゲイン)を示しており、「0」以上の値をとる。ここでのDR圧縮においては、通常、上記I’(x、y)/I(x、y)の値は1.0以上の値となる。ここでは、増幅率eの値を例えば「1.0」に設定すると、上記条件式により、画像I’のゲインが基画像Iのゲインよりも大きくなる場合はゲインの小さい画像I’の方を採用し、そうでない場合には画像Iの方を採用するというようにして合成画像Oに用いる特性(画像I’又は基画像I)を選択する。この結果、合成画像Oは、光電変換特性801における符号812に示す線形特性領域の部分と、変換特性802における符号811に示す特性領域との合成により得られるものとなる。
ところで、上記(c)の方法は、DR圧縮を行ったとしても基画像Iの線形特性領域の部分はそのまま維持したい(特にコントラストが増加する方向には特性グラフを持ち上げたくない)という目的を満たしつつ合成画像を作成することにある。DR圧縮によってI’(x、y)/I(x、y)>1.0(=e)となる領域は、図20に示すように一般的に変曲点(Yth)より小さい範囲(領域)となる。したがって、上記条件式を用いて「e」を例えば1.0と設定した場合、合成画像Oにおける線形特性領域部分は、符号813に示す特性部分での画像I’ではなく、符号812に示す特性部分の基画像Iが採用されることになり、線形特性領域側を維持したいという目的は自ずと満たされる。このように、上記条件式でe=1.0の場合、線形特性領域では、DR圧縮によりゲインアップが行われないため、出力画像(合成画像O)のS/N比は基画像Iを下回らないものとなり、したがって、線形特性領域において特性グラフが持ち上がり、コントラストが強調され過ぎてしまうといったことなく現状を維持しつつ、対数特性領域に対する画素値幅を幅814から幅815に拡大させてコントラストを向上(改善)させることができる。
ただし、DR圧縮において線形特性領域部分はそのまま維持するということを明確にした条件式とするべく、上記if(I’(x、y)/I(x、y)>e)の式の前に例えばif(I(x、y)<Yth)、then、という条件式を置いたものとしてもよい。この場合、I(x、y)≧Ythとなる範囲での合成画像Oに用いる画像I’又は基画像Iの選択に関しては、例えば固定値として予め設定された画像I’の方を採用するようにしてもよいし、同様に、I’(x、y)/I(x、y)>eの条件式に基づいていずれかの画像を採用するようにしてもよい。
図21は、実施形態2に係るデジタルカメラ1aの階調変換部409aにおけるDR圧縮処理の一例を示すフローチャートである。先ず撮像センサ30による撮像によって線形/対数画像が得られる(ステップ21)。この線形/対数画像データが信号処理部40に送信され、信号処理部40におけるアナログ信号処理部401等の各処理ブロックで所定の信号処理が行われた後、階調変換部409aに入力される(ステップS22)。次に、領域分割抽出部4091aによって、階調変換部409aに入力された線形/対数画像(基画像I)が分割パラメータθ(=Yth)を境として対数特性領域の画像I1と線形特性領域での画像I2とに分割され、この各画像I1、I2が基画像Iから抽出される(ステップS23)。次に、第1照明成分抽出部4092によって対数特性領域の画像I1に対する照明成分Log(L1)の抽出処理が行われる(この抽出された照明成分Log(L1)が減算部4095によって画像I1から減算され反射率成分Log(R1)が得られ)(ステップS24)。そして、第1照明成分圧縮部4093によって上記ステップS24で抽出処理された照明成分Log(L1)が圧縮処理されてLog(L1’)とされて(この圧縮された照明成分Log(L1’)と上記反射率成分Log(R1)とが加算部4096によって加算され)、画像I1’が求められる(ステップS25)。
一方、第2照明成分抽出部701によって線形特性領域の画像I2に対する照明成分L2の抽出処理が行われる(この抽出された照明成分L2が除算部703によって画像I2から除算されて反射率成分R2が得られる)(ステップS26)。そして、第2照明成分圧縮部702によって上記ステップS24で抽出処理された照明成分L2の圧縮処理が行われて照明成分L2’とされ(この圧縮された照明成分L2’と上記反射率成分R2とが乗算部704によって乗算され)、画像I2’が求められる(ステップS27)。そして画像合成部4094aによって先ず画像I1’及び画像I2’との合成画像I’が作成され、さらにこの画像I’及び基画像Iに基づいて(上記(a)〜(c)の各場合等の合成処理方法によって)合成画像Oが作成され(ステップS28)、当該作成された合成画像Oが、階調変換部409aから画像メモリや411やLCD表示部107に出力される(ステップS29)。
以上のように、本実施形態の撮像装置(デジタルカメラ1、1a)によれば、照明成分抽出部4092(第1照明成分抽出部4092、第2照明成分抽出部701)によって、線形特性領域(入射光量に対して所定の割合で変化する電気信号が出力される第1領域)及び対数特性領域(入射光量に対する変化の割合が上記第1領域よりも小さい電気信号が出力される第2領域)を含む光電変換特性を有する撮像センサ30によって得られる撮影画像である基画像Iから照明成分(Log(L1)、L2)が抽出され、減算部4095(除算部703)(反射率成分決定手段)によって基画像Iと照明成分とに基づいて反射率成分(Log(R1)、R2)が決定される。そして、照明成分圧縮部4093(第1照明成分圧縮部4093、第2照明成分圧縮部702)(圧縮手段)によって基画像Iにおける少なくとも対数特性領域の照明成分(Log(L1))に対するDR圧縮が行われ、画像合成部4094(4094a)によって、当該DR圧縮が行われた照明成分と反射率成分とに基づいて基画像Iに対する新たな画像(合成画像O)が生成されるため、撮像センサ30(LN/LOGセンサ)により得られる線形/対数画像における少なくとも対数特性領域の画像(照明成分)に対してはDR圧縮が行われることになり、よって、線形/対数画像における線形特性領域でのコントラストを維持しつつ(即ち線形特性領域に対してはDR圧縮を施さず、或いはDR圧縮を施したとしても所定の方法でコントラストを維持し、線形特性領域でのコントラストが強調され過ぎたり失われてしまわないようにして)、対数特性領域におけるコントラストを改善(向上)することが可能となり、ひいては撮影画像のディスプレイ系等に対する高画質表示(高画質化;画質改善)が可能となる。
また、上記照明成分抽出手段による対数特性領域の照明成分抽出時に、該対数特性領域近傍の線形特性領域の画像情報が用いられるため、線形/対数画像に対するDR圧縮処理を行うに際して、この線形特性領域の画像情報を利用して線形特性領域と対数特性領域との境界に発生する擬似輪郭を緩和する(或いは擬似輪郭の発生を防止する)ための処理を行うことが容易となる。
また、上記照明成分抽出手段により抽出された対数特性領域及び部分線形特性領域の照明成分(Log(La)、Lb)に対するDR圧縮が上記圧縮手段によって行われるため、すなわち線形特性領域の一部も対数特性領域と一緒にDR圧縮されるため、DR圧縮時の対数特性領域と線形特性領域との境界に発生する擬似輪郭を緩和(防止)することができる。また、画像I1’(圧縮画像)と基画像Iとから合成画像Oを生成(合成)するに際して、基画像Iの画像I1’に対する部分だけそのまま単に入れ替えるというのではなく、重複部分Wを設定してこの部分で所定の合成処理を行い、基画像I(基画像Iの線形特性領域部;画像ILIN)と画像I1’(像I1’の線形特性領域部)とを好適に(例えば滑らかに)接続することができる。
また、所定の重み付け平均処理(図13参照)によって重複部分Wの合成処理が行われるため、簡易な方法でかつ精度良く(滑らかに)この重複部分Wの基画像I及び画像I1’同士を接続することができる。
また、基画像Iにおける線形特性領域及び対数特性領域それぞれについてDR圧縮が行われるため、対数特性領域におけるコントラストの改善(向上)だけでなく、これと同時に線形特性領域におけるコントラストの調整を図ることが可能となる。
また、線形特性領域及び対数特性領域つまり光電変換特性全体にDR圧縮が施されてなる全域圧縮画像と、基画像Iとが所定の平均処理(加算平均処理や所定比率での平均処理)されて合成画像Oが生成されるため、簡易な合成方法によって全域圧縮画像(図17、18、20の変換特性802に示す画像I’)と基画像Iとからこの合成画像Oを得ることができる。
また、変曲点位置(Xth又はYth;図18、19参照)を境とした対数特性領域側における画像I’(全域圧縮画像)と基画像Iとの所定の平均処理により得られる平均画像(変換特性804)と、線形特性領域側における基画像I(線形特性8011)とが合成されて合成画像Oが得られるため、線形特性領域と対数特性領域とにDR圧縮を行う方法で対数特性領域のコントラスト改善を図るに際して、線形特性領域側のコントラストをそのまま維持した状態で、対数特性領域側のコントラストを向上(変化)させることが容易に行えるようになる。
また、基画像Iと画像I’との平均処理により得られる対数特性領域側の変換特性804と、基画像Iの線形特性領域側の線形特性8011との繋ぎ目部分の合成に際して所定の重み付け平均処理が行われるため(図19参照)、簡易な方法でかつ精度良く(例えば滑らかに)この繋ぎ目部分の画像同士(線形特性8011及び変換特性804同士)を接続することができる。
また、画像合成部4094aにより生成される合成画像Oは、少なくとも線形特性領域において、画像I’(全域圧縮画像)のゲインが基画像Iのゲインよりも大きくなる部分ではゲインが小さい基画像Iの方が選択(採用)されるため(図20参照)、画像I’と基画像Iとから生成されるこの合成画像Oにおける、線形特性領域でのDR圧縮によるゲインアップを防ぐことができ、換言すれば、線形特性領域における出力画像(合成画像O)のS/N比の低下を抑えることができ、ひいてはより好適にコントラスト調整、ここでは対数特性領域でのコントラスト改善がなされた画像を得ることが可能となる。
また、以上のように、本実施形態の画像処理方法(DR圧縮方法;階調変換方法)によれば、第1の工程において、照明成分抽出部4092(第1照明成分抽出部4092、第2照明成分抽出部701)により、線形特性領域及び対数特性領域からなる光電変換特性を有する撮像センサ30によって得られる撮影画像である基画像Iから照明成分(Log(L1)、L2)が抽出され、第2の工程において、減算部4095(除算部703)(反射率成分決定手段)により基画像Iと照明成分とに基づいて反射率成分(Log(R1)、R2)が決定される。そして、第3の工程において、照明成分圧縮部4093(第1照明成分圧縮部4093、第2照明成分圧縮部702)(圧縮手段)により基画像Iにおける少なくとも対数特性領域の照明成分(Log(L1))に対するDR圧縮が行われ、第4の工程において、画像合成部4094(4094a)により、当該DR圧縮が行われた照明成分と反射率成分とに基づいて基画像Iに対する新たな画像(合成画像O)が生成されるため、撮像センサ30(LN/LOGセンサ)により得られる線形/対数画像における少なくとも対数特性領域の画像(照明成分)に対してはDR圧縮が行われることになり、よって、線形/対数画像における線形特性領域でのコントラストを維持しつつ(即ち線形特性領域に対してはDR圧縮を施さず、或いはDR圧縮を施したとしても所定の方法でコントラストを維持し、線形特性領域でのコントラストが強調され過ぎたり失われてしまわないようにして)、対数特性領域におけるコントラストを改善(向上)することが可能となり、ひいては撮影画像のディスプレイ系等に対する高画質表示(高画質化;画質改善)が可能となる。
また、上記実施形態においては、上述のように入射光量に対して所定の割合で変化する電気信号が出力される第1領域が線形特性領域であり、入射光量に対する変化が第1領域よりも小さい電気信号が出力される第2領域が対数特性領域である、複数種類の特性領域からなる光電変換特性として撮像センサ30が採用されているが、このように撮像センサとしてLN/LOGセンサを用いることで、当該第1領域及び第2領域を含む光電変換特性を有する撮像センサを容易に得ることができる。
なお、本発明は、以下の態様をとることができる。
(A)上記実施形態においては、分割パラメータθがθ=Yth、及びθ<Ythとなる場合について(これらの一方がユーザに選択されて)画像I1、I2の分割抽出処理を行う構成となっているが、この分割パラメータθの値を、θ=Yth、又はθ<Ythのいずれか一方を予め固定値として設定しておき、当該DR圧縮処理の際には当該一方の場合のみで分割抽出処理を行う構成としてもよい。
(B)上記実施形態においては、撮像センサ30による撮影画像(基画像I)に対するDR圧縮処理をデジタルカメラ1(1a)内の処理によって、すなわち階調変換部409(409a)において実行する構成となっているが、これに限らず当該DR圧縮処理をカメラ外で実行する構成としてもよい。具体的には、例えばデジタルカメラ1(1a)とUSB等による直接接続又は無線LAN等によるネットワーク接続がなされた、或いはストレージメディア(メモリカード108)等を用いて情報伝達可能に構成された、ユーザーインターフェイス(UI)を備える所定のホスト(例えばPC(Personal Computer)やPDA(Personal Digital Assistant;個人向け携帯情報端末)においてこのDR圧縮処理が実行される。
この場合、ホストは、デジタルカメラ1(1a)で得られた光電変換特性の変曲点に関する情報とともに、DR圧縮処理(階調変換処理)前の状態であって例えば画像メモリ411に記憶された画像信号が全体制御部50において圧縮処理された静止画像や動画像、すなわちJPEG(Motion−JPEG等も含む)画像やMPEG画像、或いはそのままのRAWフォーマット画像を受け取り、この画像情報(変曲点位置情報)をホストのモニタ表示部に所定のアプリケーションソフト(ビューワソフト)等を用いて表示させる。そして、このアプリケーションソフトによって、ユーザによる指示入力(操作)に応じて上記実施形態1又は実施形態2のDR圧縮処理方法(例えば図12に示す重複部分Wの合成処理方法や、図17、18、20に示す画像Iと画像I’との合成処理方法)が選択され、これに基づいて例えばDR圧縮処理(画像変換処理)用のLUTが作成されるなどして当該DR圧縮処理が実行されるという構成であってもよい。なお、上記光電変換特性の変曲点情報等は、一般的にデジタルカメラの画像ファイルが有している当該カメラの内部情報が記憶されるExifヘッダ等に記述されていてもよいし、変曲点情報専用の情報ファイルに別途記述されたものとしてもよい。