JP4734574B2 - 受信アレーアンテナの校正行列の算出方法、受信アレーアンテナの自己校正方法、受信アレーアンテナの校正行列算出装置、および自己校正装置 - Google Patents

受信アレーアンテナの校正行列の算出方法、受信アレーアンテナの自己校正方法、受信アレーアンテナの校正行列算出装置、および自己校正装置 Download PDF

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Description

本発明は、受信アレーアンテナの自己校正に関し、特に、アレーアンテナにおけるアレー素子間の相互結合の影響をアレー単体で自己校正する方法、自己校正に用いる校正行列を算出する方法および装置に関する。
アレーアンテナの自己校正において、アレーアンテナを端子対回路としてモデル化し、インピーダンス行列を求めることで校正行列を求める手法が知られている。
アレーアンテナを用いた空間信号処理技術としてビームフォーミングや到来方向推定等の研究が古くから行われている。近年では,MIMO伝送や時空間符号化に代表されるように送受信システムの両端や片端にアレーアンテナを用いた高度な無線通信技術が活発に研究されている。
アレーアンテナの性能を最大限に発揮させるためには、劣化要因を取り除く必要がある。主な劣化要因としては,アンテナ素子の性能のばらつき、アンテナ素子の配置位置の誤差、アンテナ素子間の相互結合などがある。
前記劣化要因の内で、アンテナ素子の性能のばらつき、およびアンテナ素子の配置位置の誤差による劣化要因は製作誤差に起因するものであるため、製作段階で改善することが可能である。一方、残るアンテナ素子間の相互結合による劣化はアンテナに流れる電流がアンテナ素子間で電磁結合する現象であるため、結合の弱いアンテナを用いたり、アンテナ素子配置を工夫することで相互結合の影響を軽減できるものの、アンテナ素子間の相互結合は本質的に存在するものであるため、軽減できる程度は制限される。
したがって、アレーアンテナの本質的な性能劣化要因である素子間相互結合を要因とするアレーアンテナの性能の劣化の影響を補償することが求められている。
アンテナの素子間相互結合などの影響を補償するアレー校正方法は、従来様々な方法が提案されている。
従来提案される校正方法を大別すると、アレー単体で行う自己校正法(非特許文献1,2,3参照)、電磁界解析などの数値計算結果を利用する数値解析方法(非特許文献4、5参照)、外部参照波を用いる参照波方法(非特許文献6参照)に分類できる。
数値解析法では、実際のアレーアンテナと数値解析で用いるアレーアンテナのモデルに差があると校正誤差の原因になるという問題点がある。校正を行うには、測定したデータを基に校正できる方法が望ましい。
また、参照波法は非常に精度の高い校正結果が得られるが、暗室や入射波を発生するアンテナ等が必要となるため校正システムの規模が大きくなるという問題点がある。校正では、実用的で簡易に実現できる自己校正法が望ましい。
自己校正法では、全ての素子の端子電圧・電流をインピーダンス行列で関係づける回路方程式を利用して校正行列の導出を行う。非特許文献1で提案されるopen-circuit voltage法は、端子が開放状態にある素子の影響を受けないという仮定に基づいて校正を行うため、精度の高い校正を実現できるアレーアンテナは限られるという問題がある。
近年では、アンテナの素子間相互結合の影響を考慮した正確なインピーダンス行列に基づく校正法が提案されている(例えば非特許文献2,7参照)。また、給電素子(電源を持つ素子)に関係する相互インピーダンスと無給電素子(電源を持たない素子)に関係する相互インピーダンスが異なることを考慮して回路方程式を再定義し、高い校正精度を実現する校正行列を導出することも提案されている(非特許文献3参照)。
しかしながら、受信アレーの回路方程式に含まれる受信開放電圧は相互結合の影響を含んだ電圧である。そのため、正確なインピーダンス行列に基づいて生成した校正行列を用いても、相互結合の影響を取り除くことはできないという問題がある。
したがって、従来提案されている回路方程式はアレー校正を扱うのに適するものではない。
I.J. Gupta and A.A. Ksienski, "Effect of mutual coupling on the performance of adaptive arrays,"[EEE Trans. Antennas Propagat., vol. AP-31, pp.795-791, Sept. 1983. H.T. Hui, "Reduction the mutual coupling effect in adaptive nulling using a re-defined mutual impedance," IEEE Microwave and Wireless Components Lett., vol.12, no.5, pp.178-180, May 2002. 山田寛喜,小川恭孝,山口芳雄,"受信アレーアンテナの相互インピーダンスとその校正行列について," 進学技法 vol.AP2004-332, pp.173-178, 2005年 3月. R.S. Adve and T.K. Sarkar,"Compensation for the effects of mutual coupling on direct data domain adaptive algorithms,"IEEE Trans. Antennas and Propagat., vol.48, pp.86-94, Jan. 2000. H.T. Hui, "A practical approach to compensate for the mutual coupling effect in an adaptive dipole array," IEEE Trans. Antennas and Propagat., vol.52, pp.1262-1269, May 2004. 新井隆宏,原 六蔵,山田寛喜,山口芳雄,"既知の波源を用いたスーパレゾリューションアレー校正法について," 信学論, vol.J-86-B no.3, pp.527-535, 2003年 3月. 山田寛喜,原 六蔵,小川恭孝,山口芳雄,"アレーアンテナの素子間相互結合校正法とその精度に関する比較検討," 進学技法 vol.AP2002-218, pp.179-186, 2003年 3月. W.L. Stutzman and G.A. Thiele, Antenna Theory and Design, 2nd ed., Wiley, New York. 1998. 虫明康人,アンテナ・電波伝搬,38版,コロナ社,東京,2001年. R. O. Schmidt,"Multiple emitter location and signal parameter estimation," IEEE Trans. Antennas Propagat., vol. AP-34, no.3, pp.276-281, Mar. 1986. B.D. Rao and K.V.S. Hari, "Performance analysis of root-music," IEEE Trans. Acoust., Speech, Signal Processing., vol. ASSP-37, no.12, pp.1939-1949, Dec. 1989.
以下、一般的な送信・受信アレーの回路方程式、自己校正法での校正行列の導出、および受信アレーで行う自己校正法に含まれる校正誤差について説明する。
はじめに、アレーアンテナの回路方程式について説明する。L素子アレーアンテナの送信・受信時において、各素子の端子からみた回路方程式はそれぞれ次式で表される(非特許文献9参照)。
式(1)は送信時の回路方程式を示し、式(2)は受信時の回路方程式を示している。
Figure 0004734574
Figure 0004734574
ここで、V=[V1,V2,... ,VLTは各素子に給電した電源電圧を表し、I=[I1,I2,...,ILTは各素子の端子に流れる電流を表し、ZはL×Lのインピーダンス行列を表す。また、行列の対角成分Ziiを自己インピーダンスと呼び、非対角成分Zij(i≠j)を相互インピーダンスと呼ぶ。
また、Vo=[Vo1,Vo2,... ,VoLTは入射波(外部電界)が各素子の端子に誘起する受信開放電圧であり、全ての素子の端子を開放したときに各素子の端子に誘起する開放電圧である。すなわち,Voは端子を開放した素子間に生じる相互結合の影響を含んだ電圧である。
次に、従来の自己校正法における校正行列について説明する。Open-circuit voltage法では、受信開放電圧Voは他の開放素子の影響を受けないと仮定し、相互結合の影響を含んだ電流Iに関する端子電圧V=−ZLIを式(2)に代入して、校正行列C´=(Z+ZLL)/ZL(ELはL×Lの単位行列)を導く(非特許文献1)。なお、ここでは、以後の説明と合わせるために、相互結合の影響を含まない電流を導入して同様の校正行列を導出する。
電源電圧Vを持つ各素子が単独で存在するときに流れる端子電流(以後、放射電流と記述する)をI(t)=[I1 (t),I2 (t) ,…,IL (t)Tとする。このとき、各素子で成立する回路方程式をまとめてV−ZL(t)=Zin(t)(Zinはアンテナ素子の入力インピーダンス)と表現し、式(1)に代入してI(t)とIの関係を導くと、
Figure 0004734574
となる。相互結合の影響を消すことがアレー校正の目的であるから、校正行列Cは次の行列である。
Figure 0004734574
式(4)の校正行列Cと前述した校正行列C´は定数倍の関係C=ZL/(Zin+ZL)C´にあるため、アレー校正における性能は同じである。以後は、式(4)の校正行列を用いたアレー校正を従来の自己校正法として扱う。
受信アレーにおいて校正行列の適用の仕方は様々な方法があるが、例えば、受信電流に校正行列を掛けることでアレー校正を行う方法がある。このアレー校正によれば、式(2)の電流Iに式(4)の校正行列Cを掛けて校正を行うと、
Figure 0004734574
となり、校正後の値はVoと比例する。すなわち、従来の自己校正法によるアレー校正では、相互結合の影響が残ったままである。したがって、従来の自己校正法では本質的に校正誤差が生じる。
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、アレーアンテナにおけるアレー素子間の相互結合の影響を除去してアレー単体で自己校正することを目的とする。
また、アレーアンテナの本質的な性能劣化要因である素子間相互結合を要因とするアレーアンテナの性能の劣化の影響を補償することを目的とする。
本発明は、アレーアンテナにおいて、各アレー素子が結合状態にあるときにアレー素子に流れる端子電流を、アンテナ素子が単独で存在し動作しているときの電流と、アレー素子の相互結合が起因して生じる電流との和であると捉え、この各電流に対応する回路方程式を形成し、この回路方程式に基づいてアレーアンテナのインピーダンス行列を再定義し、このインピーダンス行列に基づいて校正行列を生成する。
アレー校正では、相互結合に起因して生じる端子電流や端子電圧などの量を正確に把握することが重要である。本発明は、結合状態において各素子に流れる電流を各素子が単独で存在し、相互結合の影響がない電流と、相互結合によって生じる電流の和であると捉え、各電流に対して独立にインピーダンス行列を定義した回路方程式を定式化し、この回路方程式に基づいて校正行列を導出する。
本発明の自己校正法は、リニアアレーでは3素子以上の場合に適用可能であり、端子電流の測定値のみを利用して校正行列を数値的に求めることができる。
本発明は、校正行列を算出する方法および装置、算出した校正行列を用いて受信アレーアンテナを校正する自己校正方法および装置の各態様とすることができる。
本発明の校正行列を算出する方法の態様は、受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正に用いる校正行列を算出する方法であって、複数のアレー素子の端子電流を、アレー素子が単独で存在し動作したときに流れる真の受信電流と、相互結合に起因して流れる再放射電流とに区分する。
入力インピーダンスZ in を有するL個の同一形状のアレー素子の端子対に負荷インピーダンスZ を直列接続してなる端子対回路モデルを定め、この端子対回路モデルにおいて、アレー素子が単独で存在し動作したときの真の受信電流I (r) が流れたときの電圧関係を表す回路方程式と、相互結合に起因して流れる再放射電流I (s) が流れたときの電圧関係を表す回路方程式とから、アレー素子に真の受信電流I (r) と再放射電流I (s) が同時に流れたときの電圧状態を表す回路方程式を、真の受信電流I (r) に係る受信インピーダンス行列Z (r) と再放射電流I (s) に係る再放射インピーダンス行列Z (s) とを用いて求める。求めた回路方程式において、受信インピーダンス行列Z (r) と再放射インピーダンス行列Z (s) とが一致する条件を用いて、受信電流Iのとの積によって、再放射電流I (s) を含まない真の受信電流I (r) を算出する、L個の同一形状のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列C
C=(Z (s) +Z )/(Z in +Z ) (E は単位行列)
を算出する。
本発明の校正行列を算出する方法の別の態様は、受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正に用いる校正行列を算出する方法であって、アレーアンテナを構成するL個の同一形状の全アレー素子に負荷インピーダンス を接続した状態において、アレー素子の1素子ずつに一定の電源電圧を給電し、各給電時において各アレー素子に流れる端子電流を測定して端子電流I …I を求め、
送信アレーのアレー素子の端子電圧の電圧−電流関係を表す回路方程式
VE =V(Z (t) −Z (s) )/(Z in +Z )+(Z (s) +Z )[I …I
求めた端子電流 …I からなる行列[I …I を代入して得られる連立方程式を解き、Z in を含む再放射インピーダンス行列Z(s) の各成分を求め、求めた再放射インピーダンス行列Z(s)と、アレー素子の負荷インピーダンス と、アレー素子の入力インピーダンスZinと、単位行列Eとから、C=(Z(s)+Z)/(Z in +Z により、L個の同一形状のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列Cを算出する。
上記した校正行列を算出する方法を実現する受信アレーアンテナの校正行列算出装置の態様は、受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正に用いる校正行列を算出する装置であって、アレーアンテナを構成する全アレー素子の1素子ずつに個別に一定の電源電圧を給電する電圧供給手段と、この各給電時において各アレー素子に流れる各端子電流を測定する端子電流測定手段と、端子電流測定手段で測定した端子電流を、送信アレーの回路方程式を表す連立方程式に代入して再放射インピーダンス行列Z(s)を算出し、算出した再放射インピーダンス行列Z(s)と、アレー素子の負荷インピーダンスZLと、アレー素子の入力インピーダンスZinと、単位行列ELとから、C=(Z(s)+ZLL)/Zin+ZLの演算を行い、L個のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列Cを算出する演算手段を備える。
また、本発明のアレーアンテナを自己校正する方法の態様は、受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正方法であって、相互結合により生じる電流を含む受信電流を、本発明の校正行列の算出方法で求めたアレーアンテナの校正行列Cによって校正し、アレー素子間相互結合を補償して電流を得る。
また、本発明のアレーアンテナの自己校正装置は、受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正装置であって、受信アレーアンテナの各アレー素子の受信電流を測定する測定手段と、測定した受信電流をアレーアンテナの校正行列Cを用いて校正する校正手段とを備える。
校正手段が用いる校正行列Cは、前記した本発明の校正行列の算出方法で求めた校正行列を用いることができる。
以上説明したように、本発明によれば、アレーアンテナにおけるアレー素子間の相互結合の影響を除去してアレー単体で自己校正することができる。
また、アレーアンテナの本質的な性能劣化要因である素子間相互結合を要因とするアレーアンテナの性能の劣化の影響を補償することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の受信アンテナアレーの概略を説明するための概略図である。アレーアンテナ1は、等間隔リニアアレー(ULA:Uniform Linear Array)であり、同一形状のダイポールアンテナをアンテナ素子2として、x軸に沿って間隔dでL素子配置する。なお、ダイポールアンテナ2のアンテナ長を2h、アンテナ半径をaとしている。
ここで、全てのアンテナ素子2の給電点はx軸上にあり、1番目のアンテナ素子(#1)の給電点は座標の原点に存在する。また各アンテナ素子2の端子には共通の負荷インピーダンスZLが接続されている。
以下では、アレーアンテナのモデルと電磁界解析手法のモーメント法について説明する。ここでは、素子間相互結合は、アンテナ素子に流れる電流の電磁結合とし、回路や給電線において生じる結合や周囲の散乱物によって生じる結合は含まれないとし、また、熱雑音の影響を無視する。
モーメント法を用いてアレーアンテナの電磁界解析を行うにあたって2つの仮定を設定する。第1の仮定は、アンテナが完全導体であるとし、電流はアンテナ表面だけに流れる。第2の仮定は、アンテナ表面を流れる電流はz軸に沿って流れる。また、モーメント法は展開関数に区分正弦波(piecewise sinusoidal basis)を用いて1つの素子をN区間に区分して、ガラーキン法を採用する。また、ダイポールアンテナの給電部はデルタギャップモデルを採用する。
はじめに、インピーダンス行列を定め、次にこのインピーダンス行列に基づいて回路方程式を導出する。
従来に回路方程式は相互結合の影響を含んだ端子電流を用いて定義される。しかしながら、アレー校正の観点から考えると、相互結合に起因して生じる電流や電圧の量を正確に把握することが重要である。
そこで、本発明では、相互結合の影響を含んだ電流を、素子が単独で存在しているときに流れる電流と相互結合によって生じる電流に分け、それぞれの電流に対してインピーダンス行列を定義し、このインピーダンス行列に基づいて回路方程式を導く。
はじめに、送信アレーの回路方程式について示す。電源電圧Vを給電したL素子のアレーアンテナに流れる端子電流Iは、放射電流I(t)と相互結合に起因して生じる電流(以後,再放射電流と記述する)I(s)=[I1 (s),I2 (s),…IL (s)Tを合成した電流である。すなわち、送信アレーでは、各アンテナ素子には放射電流I(t)を生じる送信アンテナの状態と再放射電流I(s)を生じる受信アンテナの状態が混在している。
図2は、送信アレーの送信アンテナ状態と受信アンテナ状態を説明するための説明図であり、図3は送信アンテナ状態と受信アンテナ状態の各状態における等価回路を示している。
図2(a)は、各アンテナ素子2に放射電流I(t)が流れる送信アンテナ状態を示し、図3(a)は、この送信アンテナ状態における等価回路を示している。一方、図2(b)は、各アンテナ素子2に再放射電流I(t)が流れる受信アンテナ状態を示し、図3(b)は、この受信アンテナ状態における等価回路を示している。
なお、Z11は負荷インピーダンス、Zin12はアンテナ素子の入力インピーダンス、V13は給電電圧、V (t)21,V (s)22はそれぞれ周囲の素子の放射電流および再放射電流によって各アンテナ素子に誘起する受信開放電圧である。
この送信アンテナ状態および受信アンテナ状態において成立する回路方程式は、それぞれ以下の式で表される。
Figure 0004734574
Figure 0004734574
ここで,i番目のアンテナ素子(以下,≠iと記述する)の受信開放電圧は
Figure 0004734574
と表現できる。
ここで、Zij (t),Zij (s)は放射相互インピーダンス、再放射相互インピーダンスと呼び、それぞれ次式で計算できる。
Figure 0004734574
Figure 0004734574
ここで,Eij (t)(z),Eij (s)(z)は#jの放射電流と再放射電流が#iのアンテナ表面に誘導する電界を表す。また、Ii (t/V)(z)およびIi (t/V)は任意の電源電圧Vを給電した#iが単独で存在しているときに素子上を流れる電流と端子電流である。
式(6)、(7)を合計した全体の回路方程式は、
Figure 0004734574
となる。
ここで,Z(t)を放射インピーダンス行列Z(s)を再放射インピーダンス行列と定義する。各行列の対角成分は入力インピーダンスZinである。同一素子からなるアレーの場合、各素子に生じる放射電流の分布は等しい。したがって,任意の2素子間に定義される放射相互インピーダンスZij (t),Zji (t)は等しく、その値は素子間隔に依存する。すなわち,放射インピーダンス行列は対称行列であり,特にULAでは対称Toeplitz行列になる。なお、各素子の再放射電流の分布は他の全ての素子に流れる電流に関連して生じるために、周囲の素子の電源電圧の大小や素子の配置によって異なる。したがって,任意の2素子間に定義される再放射相互インピーダンスZij (t),Zji (t)は一致せず,再放射インピーダンス行列は対称行列にはならない。しかし、2素子間の再放射相互インピーダンスの値が大きく異なるのは素子間隔が狭い場合であり、素子間隔が広いほどZij (s),Zji (s)の値は近づく。
なお、素子間隔が狭いときは,電界分布に激しい変動をもたらす電磁界(準静電界,誘導界)の影響が素子間に働くため、各素子の再放射電流の分布が一致せず、再放射相互インピーダンスZij (s),Zji (s)の値が異なる。しかし,素子間隔が遠方界(放射界が支配的)とみなせる場合、素子上の電流が他の素子表面に誘導する電界分布が平面波に近づく。したがって,各素子の再放射電流の分布が似てくるので、Zij (s),Zji (s)の値が近づく。
一例として2素子の半波長ダイポールアンテナにそれぞれ電源電圧V1=1[V],V2=0.5[V]を与えたときの素子間隔に対する各相互インピーダンスの値を図4に示す。図4より、再放射相互インピーダンスZ21 (s),Z12 (s)は素子間隔が狭いときは値が一致しないが、素子間隔が広ければほぼ同値となる。以下では、再放射インピーダンス行列を対称行列と仮定する。
次に、受信アレーの回路方程式の導出について説明する。入射波が存在する環境においても、前記した送信アレーと同様に、結合状態において各素子の端子に流れる電流Iは素子が単独でアレーの所定位置にあるときに流れる電流(以下、真の受信電流と記述する)I(r)=[I1 (r),I2 (r),…IL (r)Tと再放射電流I(s)を合成した電流である。
すなわち、各アンテナ素子には真の受信電流を生じる受信アンテナの状態と再放射電流を生じる受信アンテナの状態が混在している。
図5は、受信アレーの真の受信電流を生じる状態と再放射電流を生じる状態を説明するための説明図であり、図6は受信アレーの各状態における等価回路を示している。
図5(a)は、入射波によって各アンテナ素子2に真の受信電流I(r)が流れ、この真の電流I(r)が相互結合によって受信開放電圧Vo20を生じさせる状態を示し、図6(a)は、このときの等価回路を示している。
一方、図5(b)は、各アンテナ素子2に再放射電流I(s)が流れ、この再放射電流I(s)が相互結合によって受信開放電圧Vo (s)を生じさせる状態を示し、図6(b)は、このときの等価回路を示している。
各状態において成立する回路方程式は、
Figure 0004734574
Figure 0004734574
である。
式(11)では、アンテナ素子の端子において、真の受信電流I(r)が流れることにより負荷インピーダンス11に生じる電圧(ZL(r))と、アンテナ素子2側で真の受信電流I(r)が流れることにより入力インピーダンスZin12に生じる電圧(Zin(r))と、受信開放電圧との和の電圧(Zin(r)+Vo)とが釣り合い、式(12)では、アンテナ素子の端子において、再放射電流I(s)が流れることにより負荷インピーダンス11に生じる電圧(ZL(s))と、アンテナ素子側で再放射電流I(s)が流れることにより入力インピーダンスZin12に生じる電圧(Zin(s))と、受信開放電圧Vo (r)およびVo (s)の電圧との和の電圧(Zin(s)+Vo (r)+Vo (s))とが釣り合う。
ただし,V=[Vo1,Vo2…,VoLは各アンテナ素子が単独でアレーの所定位置に存在するときに、入射波によって誘起する受信開放電圧である。また、Vo(r)は他のアンテナ素子を流れる真の受信電流によって誘起する受信開放電圧を表し、#iの成分は
Figure 0004734574
と表現できる。
ここで、Zil (r)を受信相互インピーダンスと呼び、#iの真の受信電流が#iのアンテナ表面に誘導する電界Eil (r)(z)を用いて次式で計算される。
Figure 0004734574
式(11)、(12)を合計した全体の回路方程式は次のように表される。
Figure 0004734574
ここで、Z(r)を受信インピーダンス行列と定義する。前述した2つのインピーダンス行列Z(t),Z(s)と同様に、受信インピーダンス行列の対角成分は入力インピーダンスである。また,受信インピーダンス行列は放射インピーダンス行列と同様に対称行列である。しかし、真の受信電流の分布は入射波の到来する仰角によって変わるため、受信相互インピーダンスの値も入射角によって変動する。厳密には再放射相互インピーダンスも入射波の到来角によって変化するが、再放射インピーダンス行列が対称行列と近似できる範囲では、受信相互インピーダンスの変化量に比べて無視できるほど小さい。
図7は、上記した全体の回路方程式を表す等価回路を示している。図7(a)は、アンテナ素子の端子において、負荷インピーダンス 11に生じる電圧は、真の受信電流I(r)が流れることによりに生じる電圧(Z(r))27と、再放射電流I(s)が流れることによりに生じる電圧(Z(s))28であることを示し、アンテナ素子2側に生じる電圧は、真の受信電流I(r)が流れることにより入力インピーダンスZin12に生じる電圧(Zin(r))23と、再放射電流I(s)が流れることにより入力インピーダンスZin12に生じる電圧(Zin)24と、受信開放電圧V (r)21およびV (s)22と受信開放電圧V20であることを示している。
図7(b)は、式(14)に対応する等価回路を示し、アンテナ素子2側の電圧は、真の受信電流I(r)が流れることによる電圧(Z(r)(r))25と、再放射電流I(s)が流れることによる電圧(Z(s)(s))26、受信開放電圧Vo20であることを示している。ここで、電圧(Z(r)(r))25は、真の受信電流I(r)が流れることにより入力インピーダンスZin12に生じる電圧(Zin(r))23と受信開放電圧Vo (r)21を合わせた電圧を示し、電圧(Z(s)(s))26は、再放射電流I(s)が流れることにより入力インピーダンスZin12に生じる電圧(Zin(r))24と受信開放電圧Vo (s)22を合わせた電圧を示している。
図8,図9は、2素子のダイポールアンテナを用いて受信した時の各相互インピーダンスの特性を示す。図8は,入射波の到来角が(Φinc,θinc)=(90°,90°)のときの半波長ダイポールアンテナの素子間隔に対する相互インピーダンスの値である。
図8から、再放射相互インピーダンスZ21 (s)、Z12 (s)および送信アレーの再放射相互インピーダンスZ21 (s)(図4のZ21 (s)の破線)は素子間隔が広ければ同値と近似できる。また,この諸元においては受信相互インピーダンスZ21 (r)と再放射相互インピーダンスの値はほぼ一致する。
図9は素子間隔が半波長、入射波の到来する方位角が90°のときの入射波の到来する仰角に対する受信相互インピーダンスと再放射相互インピーダンスの比α=Z21 (r)/Z21 (s)を複数のアンテナ長0.3λ、0.5λ、0.7λ、0.9λで計算した結果を示す。
図9より、アンテナ長が半波長以下のダイポールアンテナに対しては,入射波の到来する仰角によらずα≒1が成立するのでZ21 (r)≒Z21 (s)の近似が成立する。しかし、それ以上のアンテナ長では仰角によって係数の値が変化するため、Z21 (r)≒Z21 (s)の近似は適当ではない。
次に、求めた回路方正式に基づく受信アレー校正行列の導出および算出について説明する。
校正行列Cは、相互結合の影響を含んだ受信電流Iに対してこの校正行列Cをかけることで真の受信電流I(r)が出力されるものとして定められる。したがって、校正行列Cは次の条件
Figure 0004734574
を満たす校正行列が望ましい。ここで,式(11),(14),(15)から正確な校正行列は次式のように導出される。
Figure 0004734574
受信インピーダンス行列Z(r)は入射波の到来する仰角によって変わるので、正確な校正行列も到来波の入射角によって変わる。しかし,アレー単体で行う自己校正法では外部参照波を利用できないので、Z(r)求める手段がない。そのため、このままでは正確な校正行列を求めることができない。
そこで、本発明は、Z(r)=Z(s)とおいて、自己校正法の範囲内で算出できる校正行列を導出する。これによって、校正行列Cは、
Figure 0004734574
と表すことができる。
本発明の校正行列Cは、Z(r)≒Z(s)が成り立つ範囲に限り、精度の良いアレー校正を実現することができる。
したがって、ダイポールアンテナで構成したアレーアンテナでは、図9よりアンテナ素子のアンテナ長が半波長程度の範囲で、良好な校正が期待される。
以下、本発明の校正行列の数値的な算出について説明する。実際に校正を行うには、校正行列を数値的に求めておく必要がある。
前記した式(17)の校正行列Cには、未知数として再放射インピーダンス行列Z(s)が含まれている。したがって、数値的に表した校正行列Cを算出するには、校正行列Cに含まれる未知の再放射インピーダンス行列Z(s)を推定する必要がある。なお、図7で示したように、ZinはZ(s)に含まれる。
そこで、本発明は、再放射インピーダンス行列Z(s)を推定するために、式(10)に示す送信アレーの回路方程式を利用してZ(s)を推定し、校正行列Cを算出する。
以下、校正行列Cを算出する算出手順の一例を、図10のフローチャートを用いて示す。
はじめに、一定の電源電圧Vでアンテナ素子の1素子ずつに給電し(S1)、この給電によって各アンテナ素子に流れる端子電流を測定する。測定は全ての素子が負荷インピーダンスZLに接続した状態で行う(S2)。#iに給電したときの端子電流をIi=[I1i,I2i,…,ILiTとする(S3)。
測定した電流を送信アレーの回路方程式を修正した次の行列方程式に代入する。
Figure 0004734574
ただし、Z´=(Z(t)−Z(s))/(Zin+ZL)である(S4)。
次に、前記の行列方程式から連立一次方程式をたてる(S5)。行列Z´の非対角成分は分子と分母の両方に未知数があるため、この行列Z´のままでは、非線形連立方程式を解く必要がある。
そこで、Z´ij=(Zij (t)−Zij (s))/(Zin+ZL)を1つの未知数とおくことで方程式を線形化する。
同一素子からなるULAの場合,Z´,Z(s)は対称Toeplitz行列である。したがって,行列方程式に含まれる未知数Zin,Z´12,…,Z´1L,Z12 (s),…,Z1L (s)の総数は2L−1である。また、式(18)にはL2の方程式が含まれているが、素子配置の対称性を考慮すると独立な方程式の数は〈L2/2〉である。なお、ここでは、〈・〉の記号は小数点以下を切り上げる演算を表すものとする。
したがって,3素子以上のULAでは未知数の総数以上の独立な方程式を用意でき、全ての未知数が求められる。
なお、上記したULA以外の素子配置の他に、任意の2素子間の距離が全て異なる不等間隔アレーアンテナ(L≧3)についても適用することができる。このとき、対称行列Z´,Z(s)に含まれる未知数Z´ij(i>j),Z(s) ij(i>j),Zinの総数は(L2−L+1)である。また,式(18)の回路方程式のL2の方程式は全て互いに独立である。したがって、全ての場合において未知数が全て求まるので本発明を適用することができる。
なお、本発明の適用が不適な例として等間隔円形アレー(UCA:Uniform Circular Array)がある。UCAでは行列Z´,Z(s)が循環行列になり、求めるべき未知数の数は(2《L/2》+1)になる。なお、ここでは、《・》は小数点以下を切り捨てる演算を表すものとする。
また,式(18)の回路方程式中の独立な方程式の数は〈(L+1)/2〉である。したがって、UCAを構成できる3素子以上の場合は常に未知数の総数が独立な方程式の総数より多くなり、一意に未知数の解を定めることができない。
次に、連立方程式を解き校正行列を計算する。S5の工程でたてた連立一次方程式を解いて未知数を求める。独立な方程式の数が求めるべき未知数の数より多い場合は、一般化逆行列を用いて連立方程式を解いて(S6)、再放射インピーダンス行列Z(s)と入力インピーダンスZinを求める(S7)。
求めた再放射インピーダンス行列Z(s)と入力インピーダンスZinを式(17)で表される校正行列C
Figure 0004734574
に代入して校正行列を計算する(S8)。
次に、本発明の受信アレーアンテナの校正行列算出装置の構成例について図11を用いて説明し、本発明の受信アレーアンテナの自己校正装置の構成例について図12を用いて説明する。
図11において、校正行列算出装置30は、一定電圧を給電する給電電源部31と、給電電源部31からアレーアンテナ1の各アンテナ素子2に対して、1アンテナ素子ずつ電圧を切り替えて給電する給電切替部32と、給電時にアンテナ素子2の受信電流を測定する測定部33と、測定部33で測定した測定データを記憶するデータ記憶部34と、データ記憶部34から測定データを読み出し、前記した再放射インピーダンス行列Z(s)、入力インピーダンスZin、および、校正行列Cの演算を行う演算部35を備える。
測定部33は、各給電時において各アレー素子に流れる各端子電流を測定する。演算部35は、測定した端子電流値を、送信アレーの回路方程式を表す連立方程式に代入して再放射インピーダンス行列Z(s)を算出し、算出した再放射インピーダンス行列Z(s)と、アレー素子の負荷インピーダンスZLと、アレー素子の入力インピーダンスZinと、単位行列ELとから、C=(Z(s)+ZLL)/Zin+ZLの演算を行って、L個のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列Cを算出する。
なお、給電切替部32による給電切り替え処理、測定部33による測定処理、およびデータ記憶部34へに記憶処理、演算部35の演算処理は、制御部36によって制御される。演算部35からは、アレーアンテナ1で受信して受信電流から相互結合による影響を除した受信電流を取得する校正行列Cを出力する。
図12において、自己校正装置40は、アンテナ素子2の受信電流を測定する測定部41と、測定部41で測定した受信電流の測定データを校正行列Cにより演算処理を行って、相互結合による影響を排除した受信電流を出力する校正部42を備える。校正行列Cの各成分は、校正行列算出装置30で求めた値を用いる。
以下、本発明の自己校正によって校正したアレーアンテナの性能評価について説明する。ここでは、アレーアンテナの性能評価をモーメント法(非特許文献8参照)を利用した計算機シミュレーションで行い、従来の自己校正法と比べて精度の高い校正結果が得られることを定量的に示し、モーメント法を利用した計算機シミュレーションによって、ダイポールアンテナをアンテナ素子として構成したアレーアンテナにおいて本発明による校正の有効性を定量的に評価する。
ここでは、3素子のULAの校正に関する性能評価を計算機シミュレーションを用いて、本発明の自己校正法と次の3方式による自己校正法とを比較する。比較する自己校正法は、従来の自己校正法(Classical method)、非特許文献3に示される自己校正法(Yamada's method)、非特許文献3に示される参照波法(Reference signal method)である。なお、参照波法の校正行列(結合行列)の導出には2つの波源を用い、各波源の入射角は(θinc,Φinc)=(90°,70°),(90°,80°)を採用している。
はじめに、各方式で算出した校正行列を数値的に比較する。高い校正精度を実現する参照波法の校正行列の値に近いほど精度の高い校正が期待できる。比較するにあたって各校正行列は,(1,1)成分で規格化する。
Figure 0004734574
表1に計算結果を示す。
Figure 0004734574
表1に示す結果より、本発明の校正行列は他の自己校正法の校正行列に比べて参照波法の校正行列に近い値をとることが確認される。したがって、本発明の校正行列は他の自己校正法よりも高い校正精度が期待できる。
次に、入射波の到来する方位角に対する性能について評価する。受信アレーにおけるアレー校正の性能評価を到来方向(DOA:Direction of Arrival)推定の精度を利用して行う。校正精度が優れている校正行列ほど,DOA推定誤差が小さいことを利用した評価方法である。
本発明では、MUSIC法(非特許文献10参照)、およびRoot-MUSIC法(非特許文献11参照)を利用してDOA推定を行う。ここで、入射波は平面波として到来する無変調連続波とし、また熱雑音の影響はないとする。したがって、アレーの基準素子の入力(端子電流等)の位相を固定とすれば、アレー入力の相関行列は一意に決定する。すなわち,正確なアレー校正が行われた場合、MUSIC法では真のDOAに対してスペクトルのピークが発散する。MUSICスペクトルは次の掃引関数から求められる。
Figure 0004734574
ここで、A(φ),ENはそれぞれアレーアンテナのモードベクトル(ステアリングベクトル)を示し、アレー入力を受信電流Iとしたときの雑音部分空間を張る正規直交基底行列を示す。
また,Root-MUSIC法では受信電流Iに校正行列Cを掛けた後の信号に対してRoot-MUSICの処理を行い、入射波の到来する方位角の推定値φinc *を計算する。
図13は仰角90°,方位角45°の方向から平面波がアレーに入射しているときのMUSIC法の推定結果を示す。図13より、本発明の自己校正法による推定結果から、他の自己校正法と比べて最も鋭く高いピークが真のDOA付近にたっている様子を確認することができる。
次に,図14は入射波(仰角90°)の方位角に対するDOA推定誤差の絶対値|φinc *−φinc|をRoot-MUSIC法を用いて算出した結果である。図中のφinc=0°,90°以外で誤差が落ち込んでいる現象は推定誤差が正から負、もしくは負から正に切り換わることを表している。
図14から、本発明の校正法のDOA推定誤差は最大でも0.1°程度であり、他の自己校正法に比べて最もDOA推定誤差が小さく、参照波法に次ぐ性能を示している。
次に、入射波の到来する仰角に対する性能について説明する。入射波の到来する仰角によって生じる性能劣化の様子を複数のアンテナ長のアレーアンテナで確かめる。
図15はアンテナ長0.3λ、0.5λ、0.7λ、0.9λにおける入射波の到来する仰角に対するDOA推定値φinc *をRoot-MUSIC法にて求めたものである。各校正法とも同様の特性を示すため、本発明の校正法による特性のみ表示する。図15より、アンテナ長が長いほどDOA推定結果が劣化するが、アンテナ長が半波長程度のダイポールアンテナで構成したアレーでは入射波の到来する仰角によらず良好に校正が行えていることが分かる。
次に、素子間隔に対する校正精度の比較について説明する。素子間隔dに対する校正精度の比較を行う。図16に入射波の到来する仰角を90°,方位角を15°,30°,45°,60°,75°としたときの素子間隔に対するRoot-MUSIC法によるDOA推定の推定値φinc *を示す。図16より、本発明の校正法は素子間隔が半波長付近の領域では参照波法と同等の良好な校正精度を示すが、素子間隔が狭い場合はDOA推定誤差が増加しており、特に素子間隔が0.1λ以下の領域では他の自己校正法の方が優れた特性を示している。推定誤差が増加する原因は,再放射インピーダンス行列を対称行列とみなす近似が素子間隔が狭いときには成立しないため、算出した校正行列が実際の結合状態を反映していないからである。
本発明は、同一形状のダイポールアンテナをx軸に沿って間隔dでL素子配置した等間隔リニアアレー(ULA:Uniform Linear Array)の素子配置の他に、任意の2素子間の距離が全て異なる不等間隔アレーアンテナ(L≧3)についても適用することができる。
本発明の受信アンテナアレーの概略を説明するための概略図である。 送信アレーの送信アンテナ状態と受信アンテナ状態を説明するための説明図である。 送信アンテナ状態と受信アンテナ状態の各状態における等価回路である。 2素子の半波長ダイポールアンテナの素子間隔に対する各相互インピーダンスの値を示す図である。 受信アレーの真の受信電流を生じる状態と再放射電流を生じる状態を説明するための説明図である。 受信アレーの各状態における等価回路である。 全体の回路方程式を表す等価回路である。 2素子のダイポールアンテナを用いて受信した時の各相互インピーダンスの特性を示す図である。 2素子のダイポールアンテナを用いて受信した時の各相互インピーダンスの特性を示す図である。 校正行列Cを算出する算出手順の一例を説明するためのフローチャートである。 本発明の受信アレーアンテナの校正行列算出装置の構成例を説明するための図である。 本発明の受信アレーアンテナの自己校正装置の構成例を説明するための図である。 仰角90°,方位角45°の方向から平面波がアレーに入射しているときのMUSIC法の推定結果を示す図である。 入射波(仰角90°)の方位角に対するDOA推定誤差の絶対値|φinc *−φinc|をRoot-MUSIC法を用いて算出した結果である。 アンテナ長0.3λ、0.5λ、0.7λ、0.9λにおける入射波の到来する仰角に対するDOA推定値φinc *をRoot-MUSIC法で求めた結果である。 入射波の到来する仰角を90°,方位角を15°,30°,45°,60°,75°としたときの素子間隔に対するRoot-MUSIC法によるDOA推定の推定値φinc *を示す図である。
符号の説明
1…アレーアンテナ
2…アンテナ素子
11…負荷インピーダンス
12…入力インピーダンス
30…校正行列算出装置
31…給電電源部
32…給電切替部
33…測定部
34…データ記憶部
35…演算部
40…自己校正装置
41…測定部
42…校正部

Claims (5)

  1. 受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正に用いる校正行列を算出する方法であって、
    入力インピーダンスZ in を有するL個の同一形状のアレー素子の端子対に負荷インピーダンスZ を直列接続してなる端子対回路モデルにおいて、
    受信電流Iとの積によって、再放射電流I (s) を含まない真の受信電流I (r) を算出する、L個の同一形状のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列Cを、
    前記負荷インピーダンスZ と、
    前記入力インピーダンスZ in と、
    相互結合に起因する再放射電流I (s) に係わるインピーダンスを表す再放射インピーダンス行列Z (s) とを用いて、
    C=(Z (s) +Z )/(Z in +Z ) (E は単位行列)
    の演算により算出することを特徴とする受信アレーアンテナの校正行列の算出方法。
  2. 受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正に用いる校正行列を算出する方法であって、
    アレーアンテナを構成するL個の同一形状の全アレー素子に負荷インピーダンス を接続した状態において、アレー素子の1素子ずつに一定の電源電圧を給電し、
    各給電時において各アレー素子に流れる端子電流を測定して端子電流I …I を求め
    送信アレーのアレー素子の端子電圧の電圧−電流関係を表す回路行列方程式
    VE =V(Z (t) −Z (s) )/(Z in +Z )+(Z (s) +Z )[I …I
    求めた前記端子電流 …I からなる行列[I …I を代入して得られる連立方程式を解き、Z in を含む再放射インピーダンス行列Z(s) の各成分を求め、
    求めた再放射インピーダンス行列Z(s)と、アレー素子の負荷インピーダンスZと、アレー素子の入力インピーダンスZinと、単位行列Eとから、
    C=(Z(s)+Z)/(Z in +Z
    により、L個の同一形状のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列Cを算出することを特徴とする受信アレーアンテナの校正行列の算出方法。
  3. 受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正方法であって、
    相互結合により生じる電流を含む受信電流を、前記請求項1又は請求項2に記載の校正行列の算出方法で求めたアレーアンテナの校正行列Cによって校正し、アレー素子間相互結合を補償して電流を得ることを特徴とする、受信アレーアンテナの自己校正方法。
  4. 受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正に用いる校正行列を算出する装置であって、
    アレーアンテナを構成するL個の同一形状の全アレー素子の1素子ずつに個別に一定の電源電圧を給電する電圧供給手段と、
    前記各給電時において各アレー素子に流れる端子電流を測定する端子電流測定手段と、
    前記端子電流測定手段で測定した端子電流から得られる端子電流I …I からなる行列[I …I を、送信アレーの回路行列方程式
    VE =V(Z (t) −Z (s) )/(Z in +Z )+(Z (s) +Z )[I …I
    に代入して得られる連立方程式を解き、Z in を含む再放射インピーダンス行列Z(s) の各成分を算出し、算出した再放射インピーダンス行列Z(s)と、アレー素子の負荷インピーダンスZと、アレー素子の入力インピーダンスZinと、単位行列Eとから、C=(Z(s)+Z)/(Z in +Z の演算を行い、L個の同一形状のアレー素子からなるアレーアンテナの校正行列Cを算出する演算手段を備えることを特徴とする受信アレーアンテナの校正行列算出装置。
  5. 受信アレーアンテナのアレー素子間相互結合を補償する自己校正装置であって、
    受信アレーアンテナの各アレー素子の受信電流を測定する測定手段と、
    前記測定した受信電流をアレーアンテナの校正行列Cを用いて校正する校正手段とを備え、
    前記校正行列Cは前記請求項1又は請求項2に記載の校正行列の算出方法で求めた校正行列であることを特徴とする、自己校正装置。
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