JP4722370B2 - ポリリン酸を蓄積する変異株の取得方法、及び、取得した変異株の利用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリリン酸を多量に蓄積することができる微生物の変異株を取得する取得方法に関し、さらに、該取得方法によって得られた変異株及びその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
リン(P)は、農業用肥料として使用されることにより、農産物の生産量を飛躍的に増大させるので、食料生産に必須の元素となっている。リンはリン鉱石として産出され、世界のリン鉱石の埋蔵量は、1990年代後半の試算にて約140億トンと見積もられている。現在、リン鉱石の採掘量は、年間約1億4000万トンであるため、今後100年、あるいは、世界の人口増加率を考慮すると今後数十年にて、リンが枯渇してしまうことが懸念されている。このような限りあるリン資源を有効利用するための技術開発が求められている。
【0003】
ところで、農業生産時に肥料として使用されたリンの約80%は、土壌中に存在している鉄やアルミニウム等と結合し、植物が利用することができない不溶性リン金属塩として固定化されてしまっている。従って、土壌に固定化された不溶性リン金属塩中のリンを植物が利用できるようになれば、使用される肥料の量を低減し、さらには、リン資源を節約することが可能になると考えられる。
【0004】
土壌中には、この不溶性リン金属塩を可溶化できる微生物が存在することが知られている(S.Metha,C.S.Nautiyal,Current Microbiology,43,p.51-56(2001))。この微生物によって不溶性リン金属塩が溶解されると、微生物は、この不溶性リン金属塩中のリンをポリリン酸として体内に蓄積する。植物は、この微生物の死滅後、放出されるリン酸を吸収して利用することができる。従って、微生物が有する不溶性リン金属塩の可溶化能を利用することによって、肥料等に用いられるリン資源を有効利用することが可能になると考えられる。
【0005】
また、上記土壌中の微生物を用いる以外に、活性汚泥と称される微生物を利用して、河川や湖等に含まれるリンの除去や回収を行う手法や、微生物が有するリン酸のポリマー(ポリリン酸)を合成する能力を利用する手法もある。これらの手法は、下水中に排出され、その結果、河川や湖等の水圏に含まれることになったリンを除去したり、回収するために行われている。具体的には、前者の手法では、活性汚泥と称される微生物の集団に、下水に含まれる有機物を分解させるとともに、この微生物のリン吸収能力を利用する。後者の手法では、好気槽や嫌気槽を設けて、各槽にて微生物を繁殖させ、微生物体内にポリリン酸を蓄積させる。
【0006】
これらの手法によれば、微生物を用いて下水中に含まれるリンを除去することができるので、リンを含む下水が河川や湖等の閉鎖性水域に流入して引き起こされる富栄養化現象を防止することができる。これにより、水圏での赤潮やアオコの大量発生を防ぎ、環境保全に役立てることができる。
【0007】
このように、微生物を利用して、土壌中に固定化されている不溶性リン金属塩の可溶化や、水圏に存在するリンの除去及び回収を行うことができれば、環境保全とともに、リンをリサイクルする循環型社会を構築することができるので、リンの有効利用にもつながる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記微生物は、浸透圧のために多量のリン酸を体内に吸収して蓄積することができないという問題を有している。つまり、上記微生物は、体内に蓄積できるリン酸量に限度があり、所定量以上のリン酸を微生物の体内に取り込むことができない。特に、土壌中に存在し、不溶性リン金属塩を溶解する能力を有する微生物では、一定以上の不溶性リン金属塩を溶解しないように遺伝的に制御されていたり、細胞内へのリン酸の取り込み量が制限されている。従って、たとえ、不溶性リン金属塩を多量に溶解することが可能であったとしても、微生物の体内へ取り込まれなかったリン酸は、再び不溶性リン金属塩に戻ってしまう。
【0009】
このような浸透圧の問題は、微生物のポリリン酸合成能力を利用する手法を用いれば回避することができるが、微生物のポリリン酸蓄積量の検定には、多大な時間や労力が必要となるという新たな問題が生じる。すなわち、ポリリン酸を多量に蓄積することができる微生物を簡単に取得する手法や、微生物が有するポリリン酸の蓄積能をさらに向上させる手法の開発が期待されている。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ポリリン酸を体内に多量に蓄積することができる微生物の変異株を簡単に取得し得る方法、及び該取得方法によって、リン濃縮能力及びリン除去能力に優れた微生物の変異株を提供することにある。また、不溶性リン金属塩を可溶化できる微生物の変異株に対して、ポリリン酸を多量に蓄積することができるように遺伝的改変を加えることによって、不溶性金属塩の可溶化能をさらに向上させ、かつ、ポリリン酸蓄積能にも優れた微生物の変異株を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、微生物のリン代謝に関する遺伝子群であるリン酸レギュロンによって、微生物のリン代謝が制御されていることに着目し、微生物に変異処理を施した後、リン酸レギュロンによる制御をアルカリホスファターゼ活性によって確認することによって、リン酸レギュロンによるリン代謝の制御に異常を有し、ポリリン酸を多量に蓄積することができる微生物の変異株が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のポリリン酸を蓄積する微生物の変異株の取得方法は、微生物に変異処理を施し、アルカリホスファターゼ活性の検出が可能である培地にて、ポリリン酸を蓄積する変異株を選択して取得する方法である。
【0013】
上記変異処理とは、後述するphoU遺伝子等のリン酸レギュロンに属する遺伝子に変異を施すことができる手法であれば特に限定されない。具体的には、紫外線照射による変異処理や、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(以下、NTGと記載する)を含む培地中にて微生物を培養する変異処理(以下、NTG変異処理と記載する)等を挙げることができる。
【0014】
また、上記アルカリホスファターゼの検出が可能である培地とは、アルカリホスファターゼ活性を検出することができる試薬等が含まれている培地である。このような試薬としては、特に限定されるものではないが、例えば、5−ブロモー4−クロロ−3−インドリルリン酸(5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphate;X−リン酸)を挙げることができる。このX−リン酸は、アルカリホスファターゼによって分解され、青色の色素を遊離する。
【0015】
さらに、上記ポリリン酸は、リン酸が縮合したものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、数十〜数百のリン酸の縮合体、それらの混合物、及び、それらの塩(ナトリウム塩およびカリウム塩など)又はそれらの塩の混合物、等を指す。
【0016】
上記したように、微生物のリン代謝は、リン酸レギュロンによって制御されている。つまり、リン酸レギュロンに属する遺伝子には、微生物のポリリン酸の蓄積に関する遺伝子や、アルカリホスファターゼの合成に関する遺伝子が含まれ、これらの遺伝子の少なくとも一つによって、通常、微生物のリン代謝が負に制御されていると考えられている。これに対し、リン酸レギュロンに異常や変異等が生じて、リン酸レギュロンによる負の制御が行われなくなると、微生物のポリリン酸を蓄積する能力が高まり、アルカリホスファターゼが生産されるようになる。
【0017】
従って、ポリリン酸蓄積能を有する微生物に対して変異処理を施した後、アルカリホスファターゼを検出することによって、多量のポリリン酸を蓄積することができる変異株を効率よく、且つ多量に取得することが可能になる。これにより、微生物のポリリン酸蓄積量を一つ一つ検定することなく、ポリリン酸を多量に蓄積する変異株を容易に選択することが可能になる。
【0018】
具体的には、上記したX−リン酸を含む培地中では、アルカリホスファターゼによってX−リン酸が分解され、この分解によって青色の色素を遊離する。つまり、ポリリン酸を蓄積する変異株のコロニーは、培地中に添加されたX−リン酸が指示薬となって青色を呈する。それゆえ、青色コロニーを取得すれば、ポリリン酸を蓄積する変異株を簡単に取得することができる。
【0019】
上記取得方法に用いられる微生物は、種々の環境に存在する微生物であって、特に限定されるものではないが、土壌中から分離され、不溶性リン金属塩を溶解する微生物であることが好ましい。
【0020】
上記の方法を土壌中に存在する微生物に対して応用すると、不溶性リン金属塩を溶解する能力や、ポリリン酸を蓄積する能力がさらに向上した微生物を取得することができる。これにより、土壌中にて、植物が利用できない不溶性リン金属塩として固定化されてしまっているリンを有効に利用することが可能になる。
【0021】
また、本発明には、上記いずれかの取得方法によって取得された微生物が含まれる。
【0022】
土壌中から分離され、不溶性リン金属塩を溶解する微生物として、例えば、Pseudomonas sp.、Pseudomonas sp. NZ096、Pseudomonas sp. WBC−3、Arthrobacter nicotianae、Brevibacterium liquefaciens、Pseudomonas putida、Pseudomonas monteilii、Bacillus megaterium、Paenibacillus chibensis等を得ることができる。これらの微生物に対して、変異処理を施すことにより、さらにポリリン酸蓄積能を向上するとともに、不溶性リン金属塩の溶解能も向上することができる。このうち、Pseudomonas sp.、Pseudomonas sp. NZ096、Pseudomonas sp. WBC−3、Pseudomonas putida、Pseudomonas monteilii、Paenibacillus chibensisに対して変異処理を施すことにより、ポリリン酸蓄積能や不溶性リン金属塩の可溶化能が大幅に向上される。
【0023】
また、上記微生物の変異株を用いることにより、農業生産時に肥料として用いられたために土壌中に残留するリンや、下水に排出された結果、河川や湖に含まれることになるリンを除去するとともに、回収することができる。特に、土壌中の微生物の変異株は、不溶性リン金属塩を可溶化して、ポリリン酸として体内に蓄積することができる。植物は、微生物が蓄積している上記ポリリン酸を利用することができるので、植物による土壌中のリン利用効率を向上することができる。
【0024】
これにより、土壌中にて固定化されてしまったリンを回収して再利用することができ、また、河川や湖での富栄養化を防止することができるので、環境保全にもつなげることができる。このように、本願発明は、排水処理等の環境技術、リン資源のリサイクル技術に応用することが可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。
【0026】
微生物では、リン代謝に関係する遺伝子群は、リン酸レギュロンと称され、このリン酸レギュロンの働きによってリン代謝が制御されている。本発明者らは、土壌に存在する微生物(以下、土壌細菌と記載する)のリン代謝が、リン酸レギュロンによって制御されていることに着目し、ポリリン酸を多量に蓄積することができる微生物の取得を試みた。
【0027】
リン酸レギュロンに属する遺伝子の一つとして、大腸菌(Esherichia coli)に関する研究から、phoU遺伝子が知られている(文献:M.Amemura,K.Makino,H.Shinagawa,A.Kobayashi,A.Nakata,J.Mol.Biol.,20,p.241-250(1985)、B.L.Wanner,J.Cell.Biochem,51,p.47-54,(1993))。
【0028】
大腸菌では、上記phoU遺伝子等の発現により、リン酸化を触媒するキナーゼの働きが制御され、細胞内へのリン酸の取り込みが負に制御されると考えられ、微生物のリン代謝が負に制御されていると推定されている。つまり、上記phoU遺伝子等を含むリン酸レギュロンの発現により、細胞外のリン酸濃度が所定値以上である場合にキナーゼの働きが抑制され、リン酸濃度が所定値よりも低下したリン酸飢餓状態では、キナーゼの働きが脱抑制されるように働く。それゆえ、リン酸飢餓状態では、この脱抑制により、リン酸が微生物の細胞内に取り込まれてポリリン酸が形成されて蓄積される。
【0029】
これに対し、リン酸レギュロンに属するphoU遺伝子等に異常が生じた場合、細胞外のリン酸濃度に関らず、リン酸化が生じ、細胞内に過剰にリン酸が取り込まれることがある。細胞内に流れ込んだリン酸は、キナーゼの働きにより、通常、数十〜数千のリン酸が直鎖状に結合したポリリン酸を形成し、微生物の細胞内にてポリリン酸として蓄積される。それゆえ、リン酸レギュロンに異常を有する微生物の変異株を得ることにより、体内にポリリン酸を多量に蓄積し、排水や土壌に含まれるリンを回収することが可能になると考えられる。特に、土壌中では、農業生産時に肥料として使用されたリンが多量に存在するため、土壌中のリンを可溶化して植物が利用可能な形態に変える手法として、微生物の変異株を利用することは、非常に有用である。
【0030】
ところで、微生物のリン代謝では、キナーゼによるリン酸化が生じると、このリン酸化に依存して、リン酸レギュロンに属する遺伝子であって、アルカリホスファターゼをコードする遺伝子が発現することが知られている。そのため、微生物がアルカリホスファターゼ活性を示す場合、リン酸レギュロンによる負の制御が行われていないことを意味していると考えることができる。通常、細胞外のリン酸濃度が十分に満たされた状態では、リン酸レギュロンが負に制御されている。しかしながら、リン酸濃度が十分に満たされた状態においても、微生物がアルカリホスファターゼ活性を有する場合、リン酸レギュロンに属するその他の遺伝子(アルカリホスファターゼをコードする遺伝子以外の遺伝子であって、ポリリン酸の蓄積に関係する遺伝子)も同時に発現していることが示唆される。それゆえ、リン酸濃度が十分に満たされた状態にて、アルカリホスファターゼ活性を確認することができれば、ポリリン酸蓄積能に優れた微生物の変異株を取得することができると考えられる。
【0031】
上記アルカリホスファターゼは、前述したように、X−リン酸を指示薬として用いることによって、簡単に検出することができる。それゆえ、アルカリホスファターゼ活性を指標とし、X−リン酸を用いてアルカリホスファターゼ活性を容易に認識することにより、ポリリン酸を多量に蓄積することができる変異株を容易に取得することができる。
【0032】
そこで、本発明者らは、
(1)農業用地から土壌を採取し、不溶性リン金属塩を唯一のリン源とした培地にて、上記土壌中の微生物を培養することにより、不溶性リン金属塩を可溶化している土壌細菌を取得して、この土壌細菌のポリリン酸蓄積量の測定、及び、菌の同定を行い、
(2)同定した土壌細菌が、リン酸レギュロンにてリン代謝が調節されていることを確認し、
(3)同定した土壌細菌に対して変異処理を施した後、
(4)X−リン酸を含む培地にて培養して、青色のコロニーを取得することにより、リン酸レギュロンに変異を有し、ポリリン酸を多量に蓄積することができるポリリン酸蓄積能に優れた変異株を取得した。
【0033】
以下、上記(1)〜(4)の各研究分析結果について説明する。なお、実験方法等の詳細は、後の実施例において説明する。
【0034】
(1)土壌細菌のポリリン酸蓄積量の測定、及び、土壌細菌の同定
土壌から土壌細菌の取得は、農業用地等から採取した土壌を滅菌水に懸濁させ、不溶性リン金属塩の粉末を唯一のリン源とした培地に植菌して培養し、増殖した土壌細菌を取得すればよい。
【0035】
上記不溶性リン金属塩は、鉄、アルミニウム、カルシウム等の金属とリンとが結合したものであり、例えば、土壌中等にて植物が利用できない不溶性リン金属塩として固定化されているものを挙げることができる。具体的には、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、リン酸鉄等を挙げることができる。また、複数種類のリン金属塩の混合物であってもよい。
【0036】
上記培地は、上記不溶性リン金属塩が含まれ、培養する土壌細菌が生育可能なものであれば特に限定されない。寒天やゼラチン等で固化された固形培地、凝固成分をわずかに含む半固形培地、凝固成分を含まない液体培地等、限定されるものではない。
【0037】
培地に含まれる成分は、通常、培地として使用される場合に含まれる基本成分に、X−リン酸を含んでいればよい。土壌細菌を培養する場合の基本成分としては、具体的には、Na、K、Ca、Mg、P、Cl等の基本無機成分に、炭素源、窒素源、アミノ酸、ビタミン、ホルモン等の基本有機成分を加えたものであればよい。
【0038】
培養条件は、培養する菌の性質に応じて適宜設定すればよい。例えば、大腸菌の場合には、培養温度は、20℃〜38℃が好ましく、30℃〜37℃が特に好ましい。培養時間は、2時間〜24時間が好ましく、12時間が特に好ましい。また、培養pHは、pH6〜pH8であることが好ましく、pH7が特に好ましい。また、一般的な土壌細菌では、培養温度は10℃〜20℃が好ましく、培養時間は1日〜2日が好ましく、培養pHは6〜8が好ましい。
【0039】
上記の培地及び培養条件にて取得した土壌細菌について、ポリリン酸の抽出及び定量を行った結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
ポリリン酸の抽出及び定量は、例えば、文献(D.Ault-Riche,C.D.Fraley,C.M.Tzeng,A.Kornberg,J.Bacteriol.,180,p.1841-1847(1998))に従って行えばよい。具体的には、ポリリン酸量の定量にあたっては、上記土壌細菌から抽出したポリリン酸をポリリン酸キナーゼによってATP(アデノシン三リン酸)に変換し、そのATPをルシフェラーゼ(ATP Bopluminesecence Assay Kit CLS II、BOEHRINGER MANNHEIM社)を用いて定量する。そして、あらかじめ作製しておいたATP希釈系列から、ポリリン酸量を定量すればよい。
【0042】
また、表1では、定量したポリリン酸量は、細胞中に含まれるタンパク質量を基準として表している。土壌細菌のタンパク質量は、タンパク質定量試薬を利用して吸光度を測定し、この吸光度を標準タンパク質系列によって換算することによって決定することができる。
【0043】
なお、表1には、比較のために、大腸菌(Esherichia coli)の野生株のポリリン酸量も併せて記載している(文献:A.Kuroda,H.Murphy,M.Cashel,A.Kornberg,J.Biol.Chem.,272,p.21240-21243(1997))。
【0044】
表1に示すように、不溶性リン金属塩を含む培地にて培養した土壌細菌の菌株は、大腸菌が含んでいる以上のポリリン酸を含んでいる。具体的には、表1に示す土壌細菌は、大腸菌の1倍〜290倍のポリリン酸を蓄積している。つまり、表1の土壌細菌は、ポリリン酸を蓄積する能力が高い微生物を含んでいることがわかる。
【0045】
また、表1に示す土壌細菌の菌株は、培地中の不溶性リン金属塩を溶解している。このことから、上記菌株は、培地中の不溶性リン金属塩を溶解してリン酸を生成し、このリン酸からポリリン酸を合成して菌体内にポリリン酸を蓄積していると考えることができる。
【0046】
さらに、上記土壌細菌は、表1に示すように、各菌株に対して、高い相同性を有している。具体的には、上記土壌細菌の染色体DNAを抽出して、相同性検索を行った結果、それぞれの菌株に対して、表1に示すように、高い相同性を有している。なお、この相同性検索は、DDBJ(日本DNAデータバンク)のFASTA解析システムを用いて行い、土壌細菌の染色体上の16srRNAをPCR(Polymerase Chain Reaction)により増幅して決定した塩基配列に対して行ったものである。
【0047】
従って、土壌細菌として得られたPseudomonas sp.、Pseudomonas sp. NZ096、Pseudomonas sp. WBC−3、Arthrobacter nicotianae、Brevibacterium liquefaciens、Pseudomonas putida、Pseudomonas monteilii、Bacillus megaterium、Pseudomonas chibensisは、大腸菌と同程度、もしくは、それ以上のポリリン酸蓄積能を有していることがわかる。このうち、特に優れたポリリン酸蓄積能を有しているのは、Pseudomonas sp.、Pseudomonas sp. NZ096、Pseudomonas sp. WBC−3、Pseudomonas putida、Pseudomonas monteilii、Pseudomonas chibensisであり、大腸菌の約40倍〜約290倍程度のポリリン酸蓄積能を有している。
【0048】
(2)リン代謝がリン酸レギュロンにて制御されていることの確認
上記したように、リン酸レギュロンの発現により、細胞外のリン酸濃度が所定値以上である場合にキナーゼの働きが抑制され、リン酸濃度が所定値よりも低下したリン酸飢餓状態では、キナーゼの働きが脱抑制される。また、リン酸レギュロンは、アルカリホスファターゼの活性を調節しており、キナーゼによるリン酸化が生じると、アルカリホスファターゼを活性化する。そのため、X−リン酸を指示薬として添加しておけば、アルカリホスファターゼによりX−リン酸が分解され、青色色素を遊離するので、このX−リン酸を指標として、アルカリホスファターゼ活性を確認するとともに、リン酸レギュロンによるリン代謝の制御が行われていることを確認することができる。
【0049】
そこで、X−リン酸を添加した2種類のリン酸濃度の培地にて、表1の土壌細菌を培養すると、リン酸濃度の高い培地では白いコロニーを確認することができ、リン酸濃度の低い培地では青いコロニーを確認することができる。具体的には、X−リン酸50μg/mLを含むリン酸濃度2mMのMOPS培地(文献:F.C.Neidhardt,P.L.Bloch,D.F.Smith,J.Bacteriol.,119,p.736-747(1974))では、白いコロニーが見られ、同培地にてリン酸のみを除去したMOPS培地では、青色のコロニーが見られる。
【0050】
これにより、表1に示す各土壌細菌は、培地のリン酸濃度に応じてアルカリホスファターゼ活性を示しているので、リン代謝がリン酸レギュロンによって制御されていることがわかる。
【0051】
(3)リン酸レギュロンに対する変異処理
微生物では、リン酸レギュロンを制御する遺伝子に異常が生じると、リン酸レギュロンが正常に機能せず、ポリリン酸を多量に蓄積するようになる。
【0052】
そこで、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(以下、NTGと記載する)によって、上記土壌細菌に対して変異処理を施し、リン酸レギュロンに異常を有する変異株を構築する。本発明者らは、細胞外にリン酸が十分な濃度で存在しても、アルカリホスファターゼ活性を示す変異大腸菌は、リン酸レギュロンのphoU遺伝子に異常を生じていることを確認している。
【0053】
具体的には、NTG処理を施した大腸菌に見られたリン酸レギュロンの制御異常が、正常なphoU遺伝子を形質導入する相補性検定を行うことによって見られなくなることを確認している。この相補性検定の結果は、NTG処理によってphoU遺伝子が変異することを示している。また、NTG処理を施した大腸菌のphoU遺伝子の塩基配列に変異が生じていることを確認するために、シークエンス解析により塩基配列を決定した結果、phoU遺伝子に点変異が見られることを確認している。
【0054】
それゆえ、このNTG変異処理を行い、かつX−リン酸を含む培地から、青色を呈するコロニーを選択することは、ポリリン酸を多量に蓄積する変異株を得るために有効な処理方法であり、土壌細菌に対してNTG変異処理を施すことによっても、土壌細菌のphoU遺伝子等に異常を生じ、リン酸レギュロンに異常を有する変異株を構築することができると考えられる。
【0055】
上記NTG処理は、NTG溶液を添加したバッファ中にて行えばよい(文献:J.Sambrook,E.F.Fritsch,T.Maniatis,“Molecular cloning: a laboratory manual,2nd ed.”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY(1989)参照)。バッファとしては、特に限定されないが、例えば、リン酸バッファ、Trisバッファ、MOPSバッファ等を挙げることができる。
【0056】
また、バッファ中のNTG濃度は、変異処理を施す微生物によって適宜選択すればよいが、10mg/L〜1000mg/Lが好ましく、特に50mg/L〜200mg/Lが好ましい。また、NTGを含むバッファ中での変異処理時間は、変異処理を施す微生物によって適宜選択すればよいが、5分間〜60分間が好ましく、特に15分間〜30分間が好ましく、変異処理温度は、10℃〜40℃が好ましく、特に30℃〜37℃が好ましい。さらに、振とう培養を行いながら変異処理を行うことが好ましい。
【0057】
(4)リン酸レギュロンに異常を有する微生物の取得
上記(3)にて、NTG処理を施した土壌細菌を、X−リン酸を含む培地にて培養することにより、phoU遺伝子に変異を有する微生物のスクリーニングを行うことができる。
【0058】
具体的には、上記したように、NTG変異処理を施した土壌細菌(以下、土壌細菌の変異株と記載する)を、X−リン酸を含む培地に植菌し培養する。リン酸レギュロンに異常を有する場合、アルカリホスファターゼ活性を示してX−リン酸が分解され、培地中にて青色を呈するコロニーを得ることができる。この青色コロニーを採取することにより、ポリリン酸を多量に蓄積する土壌細菌の変異株を取得することができる。
【0059】
上記土壌細菌の変異株は、不溶性リン金属塩を含む培地中にて培養されると、NTG変異処理を施していない土壌細菌の10倍〜20倍程度のポリリン酸を蓄積することができる。また、土壌細菌の変異株は、NTG変異処理を施していない土壌細菌に比べて、培地中の不溶性リン金属塩をより多く溶解することができる。このことは、上記土壌細菌の変異株は、NTG変異処理を施すことにより、不溶性リン金属塩の可溶化能を高めることができるとともに、可溶化されて得られたリン酸をポリリン酸として合成し、菌体内に多量のポリリン酸を蓄積することが可能であることを示している。
【0060】
なお、培地に混合するX−リン酸量は、変異を有するリン酸レギュロンの発現によって生成するアルカリホスファターゼが、X−リン酸を分解したときに遊離する青色色素を確認できる程度であれば特に限定されない。好ましくは、培地に対して、10mg/L〜100mg/Lとなるように添加するのがよく、さらに好ましくは、培地に対して、20mg/L〜50mg/Lがよい。また、X−リン酸はアルカリホスファターゼの働きによって分解されるので、培養pHは、pH6以上であることが好ましく、pH7が特に好ましい。
【0061】
また、上記培地は、培養する菌が生育可能な成分に、X−リン酸を添加したものであれば特に限定されない。培地の形態、培地に含まれる成分、各成分の含有量、培養条件等は、上記(1)と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
上記(1)〜(4)に基づいて説明したように、土壌細菌の中から、ポリリン酸を多量に蓄積する変異株を取得することができるが、本発明は、上記(1)〜(4)に限定されるものではない。すなわち、不溶性リン金属塩を含む培地にて増殖した土壌細菌にNTG変異処理を施すのではなく、土壌から採取された全ての土壌細菌に対してNTG変異処理を施した後、(1)又は(4)の手法によって、ポリリン酸蓄積能に優れた変異株を取得してもよい。
【0063】
また、土壌細菌から取得されたポリリン酸蓄積能に優れた変異株は、加熱することによって、変異株体内のポリリン酸顆粒を簡単に溶出させることができる。このポリリン酸顆粒は、少量のカルシウムを添加することによって、容易に回収することができる。つまり、本発明のポリリン酸を蓄積する変異株は、土壌や活性汚泥に含まれるリンをポリリン酸として菌体内に蓄積することができ、さらに上記の回収方法を用いることによって簡単に回収することができる。
【0064】
これにより、微生物を用いたバイオリン鉱石を生産することができ、リンをリサイクルすることが可能になる。また、河川や湖での富栄養化による環境破壊の防止にも役立てることができる。
【0065】
さらに、上記土壌細菌から取得されたポリリン酸蓄積能に優れた変異株は、この不溶性リン金属塩を溶解することができる。従って、この変異株を用いることにより、農業生産時に肥料として使用され、土壌中の鉄やアルミニウム等の金属と結合して植物が利用できない不溶性リン金属塩として固定されてしまったリンを植物が利用できる形態へ変化させることができる。特に、土壌細菌内に蓄積されたリン酸は、効率よく植物へ移行することが知られており(文献:河野憲治、『日本土壌肥料科学雑誌』、67巻、p.716-725(1996))、本発明の変異株を用いた不溶性リン金属塩の可溶化方法は、不溶性リン金属塩の有効利用に大いに役立つと考えられる。
【0066】
【実施例】
〔MOPS培地〕
リン酸濃度がXmMであるMOPS培地をMOPS(X)培地として記載する。各成分は、以下のとおりである。
【0067】
MOPS(X)培地は、成分A(200mM MOPS-KOH,20mM Tricin,50mM NaCl2,7.6mM NH4Cl4 2.615mM MgCl2:pH7.4)200mL、成分B(250μM CaCl2,1.5μM (NH4)6Mo7O24,200μM H3BO3,15μM CoCl2,5μM CuSO4,40μM MnCl2,5μM ZnSO4,5mM FeSO4)2mL、0.276M K2SO4 1mL、20mM thiamine 1mL、1M glucoseに、目的のリン酸濃度が得られるように、56mM K2HPO4 を加え、最終的なMOPS(X)培地が1.0Lになるように滅菌水を加えた。
【0068】
〔YG培地〕
YG培地は、glucose 1g、酵母抽出物1g、K2HPO4 0.3g、KH2PO4 0.2g、MgSO4・7H2O 0.2g、寒天15gを混合し、最終的なYG培地が1.0Lになるように滅菌水を加えた。
【0069】
〔土壌細菌のスクリーニング〕
農業用地から土を採取し、滅菌水中にて10〜106倍に希釈して懸濁液とした。次いで、不溶性のリン酸アルミニウムの粉末を唯一のリン酸源とし、リン酸アルミニウム1g/L添加した上記MOPS培地にて、この懸濁液を植菌して培養し、コロニーを形成させ、このコロニーの菌株を取得した。取得した各コロニーの菌株が有するポリリン酸蓄積量を文献(D.Ault-Riche,C.D.Fraley,C.M.Tzeng,A.Kornberg,J.Bacteriol.,180,p.1841-1847(1998))に従って、決定した。その結果を表1に示す。
【0070】
表1に示すように、菌株No.1〜5、8〜11、13、14は、大腸菌(Esherichia coli)が有するポリリン酸量の20〜290倍のポリリン酸を蓄積しており、ポリリン酸を蓄積することができる微生物であることがわかる。
【0071】
〔土壌細菌の相同性検索〕
上記スクリーニングによって得られた菌株を、文献(J.R.Marchesi,et al.,Applied and Environmental Microbiology,64,p.795-799(1998))に従って、染色体DNAを抽出、染色体上の16sRNAを増幅した。
【0072】
具体的には、16srRNAをPCRにより増幅し、PCRには、プライマーとして、5’−CAGGCCTAACACATGCAAGTC−3’、及び、5’−GGGCGGWGTGTACAAGGC−3’を用いた。なお、Wは、A又はTを表す。PCRの反応条件は、まず、72℃にて5分間反応させた後、95℃にて1分間のステップ、55℃にて1分間のステップ、72℃にて1.5分間のステップからなる3つのステップを1サイクルとして30サイクル行って、16srRNAを増幅した。得られた増幅断片について、シークエンス(DYEnamic ET Terminator、アプライドバイオシステムズ社製)を行うことにより、塩基配列を決定した。
【0073】
その後、DDBJ(日本DNAデータバンク)のFASTA解析システムにて相同性検索を行うことにより、得られた菌株を同定した。その結果を表1に示す。このうち、増殖がよく、ポリリン酸としてリン酸を多量に蓄積しているPseudomonas putida近種(菌株No.11)をP.putida MY11株と命名した。
【0074】
〔P.putida MY11株を用いた解析〕
(a)アルカリホスファターゼ活性の確認
MOPS(2)培地及びMOPS(0)培地のそれぞれに、X−リン酸(5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphate;ナカライテスク社製)を50mg/Lを加えた培地を用意し、上記にて得られたP.putida MY11株を、28℃にて20時間培養した。
【0075】
その結果、MOPS(2)培地では白色のコロニーを確認し、MOPS(0)培地では青色のコロニーを確認した。このことから、P.putida MY11株は、アルカリホスファターゼ活性を有し、リン代謝がリン酸レギュロンによって制御されていることがわかった。
【0076】
(b)NTG変異処理
上記P.putida MY11株をYG培地にて培養した。また、NTG処理を行う30分前までに、NTG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン;ナカライテスク社製)溶液1g/Lを調製した。次いで、YG培地にて培養されたP.putida MY11株をアシストチューブに集菌し、0.1mMリン酸バッファ(ナカライテスク社製)にて洗浄し、0.1mMリン酸バッファ約5mLに懸濁し、懸濁液から2mLを別のアシストチューブに移した。その後、上記にて調製したNTG溶液を200μL添加して、室温にて60分間振とう培養した。続いて、得られた菌をリン酸バッファにて2回洗浄し、YG培地を2mL加えて、28℃にて2時間振とう培養した。
【0077】
(c)青色コロニーの形成
上記(b)にて得られた培養液を10〜107に希釈し、X−リン酸を50mg/L添加したMOPS(0.2)培地に、希釈液200μLをプレーティングし、28℃にて20時間培養した。
【0078】
その結果、青色を呈するコロニーを確認することができた。
【0079】
(d)不溶性リン金属塩の可溶化能の比較
MOPS(2)培地に、リン酸アルミニウムを1g/Lとなるように添加し、P.putida MY11株を28℃にて20時間培養した。その結果、図1に示すようにコロニーが形成され、コロニーを洗い流すと、リン酸アルミニウムが溶解したHaloを確認することができた。
【0080】
そこで、P.putida MY11株と、(b)にて得られたNTG変異処理を施したP.putida MY11株との不溶性リン金属塩の可溶化能の比較を行うために、不溶性リン金属塩としてリン酸カルシウムを用い、検定用プレート(10g/L glucose、0.373g/L NH4NO3、0.41g/L MgSO4、0.295g/L KCl、0.2g/L NaCl、3mg/L FeCl3、0.7g/L Ca3HPO4)に、P.putida MY11株及び(b)にて得られたNTG変異処理を施したP.putida MY11株をプレーティングし、28℃にて20時間培養した。その結果を図2に示す。
【0081】
図2に示すように、形成されたHaloは、NTG変異処理を施したP.putida MY11株(図中、P.putida MY11 mutant)が、16mmであり、P.putida MY11株(図中、P.putida MY11)が13mmであった。このことより、NTG変異処理を施したP.putida MY11株がより多くの不溶性リン金属塩を溶解する能力があることがわかった。
【0082】
また、得られたコロニー内の菌を集菌し、ポリリン酸を定量した結果を図3に示す。図中、mutantは、NTG変異処理を施した変異株であることを示す。図3に示すように、NTG変異処理を施すことにより、ポリリン酸蓄積量が飛躍的に増大していることがわかる。
【0083】
さらに、NTG変異処理を施したP.putida MY11株のポリリン酸量を、乾燥菌体重量に対して決定するために、培養20時間後の培地を、0.45μmのポアサイズを有するメンブレンフィルター(ADVANTEC、Toyo Roshi Kaisya)を用いて吸引した。その後、メンブレンフィルター上に残った菌体を100℃の乾熱器にて一晩乾燥させ、菌体の重量を測定した結果、乾燥菌体重量の約30%のポリリン酸(リン酸として換算)を蓄積していることがわかった。大腸菌のポリリン酸蓄積量は、乾燥菌体重量の約3〜5%程度であるので、NTG変異処理を施したP.putida MY11株は、菌体内に多量のポリリン酸を蓄積する能力を有していることがわかる。
【0084】
以上より、NTG変異処理を施されたP.putida MY11株は、不溶性リン金属塩であるリン酸カルシウムを溶解してリン酸を生成し、このリン酸をポリリン酸として菌体内に蓄積していることがわかる。
【0085】
【発明の効果】
本発明のポリリン酸を蓄積する微生物の変異株は、以上のように、リン酸が培地中に多量に存在しても、アルカリホスファターゼを高発現する。アルカリホスファターゼは、ポリリン酸を検出する手法に比べると、非常に簡単に検出することができる。
【0086】
それゆえ、培地中のアルカリホスファターゼを検出することにより、ポリリン酸を多量に蓄積する変異株を、容易に選択して取得することができるという効果を奏する。
【0087】
また、上記の取得方法によって得られた微生物の変異株を用いることにより、土壌中にて固定化されてしまった不溶性リン金属塩を、微生物の体内にてポリリン酸として蓄積させて植物が利用可能な形態に変えることができるという効果を奏する。また、汚水や排水処理にて、上記微生物の変異株を利用すれば、リンによる富栄養化を防止することができるので、環境保全につなげることができるという効果を奏する。さらに、排水中に含まれるリンの回収やリサイクルにも利用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるポリリン酸蓄積能に優れた微生物が形成したコロニーを示す写真である。
【図2】 P.putida MY11株と、NTG変異処理を施したP.putida MY11株とが形成するHaloを示す写真である。
【図3】 P.putida MY11株及び、NTG変異処理を施したP.putida MY11株のポリリン酸蓄積量を示すグラフである。
Claims (5)
- シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス モンテイリイ(Pseudomonas monteilii)、または、パエニバチルス チベンシス(Paenibacillus chibensis)に変異処理を施して変異株を取得する工程と、
上記変異株の中から、リン酸濃度が十分に満たされた状態にてアルカリホスファターゼ活性を示す変異株を選択する工程と、を有することを特徴とする不溶性リン金属塩の可溶化能が向上した微生物の生産方法。 - 請求項1記載の生産方法によって得られる、微生物。
- 請求項2記載の微生物を用いてリンを回収する、方法。
- 請求項2記載の微生物を用いて土壌中の不溶性リン金属塩を溶解させる、方法。
- 微生物の、不溶性リン金属塩を溶解する能力を向上させる方法であって、
シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス モンテイリイ(Pseudomonas monteilii)、または、パエニバチルス チベンシス(Paenibacillus chibensis)に変異処理を施して変異株を取得する工程と、
上記変異株の中から、リン酸濃度が十分に満たされた状態にてアルカリホスファターゼ活性を示す変異株を選択する工程と、を有することを特徴とする方法。
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