JP4703801B2 - ホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法及び処理装置 - Google Patents

ホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法及び処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホルモン様活性によって内分泌系を攪乱するおそれのある化学物質を含む液体を処理して上記化学物質のホルモン様活性作用を低減あるいは不活性化する方法及び装置に関する。上述の化学物質は、正式には外因性内分泌攪乱化学物質、通称では環境ホルモンと呼ばれるもので、本明細書では、このホルモン様活性を有するために内分泌系を攪乱するおそれのある化学物質を環境ホルモンと称する。本発明に係る処理方法及び処理装置は、特に限定されないが、例えば下水、浸出汚水、産業給水・排水、浄水の工程で使用される水、河川水といった、環境ホルモン、環境ホルモンであると疑われる化学物質、環境ホルモンと類似したホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理に使用される。
【0002】
【従来の技術】
最近、様々な化学物質がホルモン様活性によって内分泌系を攪乱すること、すなわち環境ホルモンとして作用することが明らかになってきている。現状では、環境ホルモンに関する研究は、動物に対する影響の実態把握、検出法の研究が中心になっている。
【0003】
環境ホルモンと疑われる化学物質は、ダイオキシン、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸類、スチレン類等を代表として極めて多数あり、個々にはこれらを発生させない方法や、発生した化学物質を分解処理する方法についての研究はなされている。しかし、環境ホルモンのホルモン様活性を低減あるいは不活性化する手段についてはこれまで十分に検討されておらず、ある化学物質を分解処理した場合に分解生成物がホルモン様活性を呈することがあり、また分解処理することで逆に活性が高まってしまう可能性もあるという問題が指摘されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これに対し、本発明者は、ホルモン様活性を有する化学物質をオゾン、ヒドロキシラジカル等を用いて酸化処理することにより、該化学物質の活性作用を低減あるいは不活性化できることを見いだした。このような処理では、ホルモン様活性を有する化学物質の活性作用が確実に低減あるいは不活性化されているか否かを確認しつつ処理を行う必要がある。そして、上記の確認結果に基づいて処理条件を制御することが好ましい。
【0005】
現在、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質をオゾン、ヒドロキシラジカル等の酸化剤を用いて酸化処理する場合、処理状況を確認するために処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質を検出する方法としては、ホルモン受容体を組み込んだ酵母を用いる測定法や、蛍光偏光度を用いる受容体結合測定法などが採用されている。
【0006】
しかし、ホルモン受容体を組み込んだ酵母を用いる測定法や、蛍光偏光度を用いる受容体結合測定法は、処理液をサンプリングした後、この処理液を実験室に持ち帰って測定を行う必要がある上、測定自体に時間がかかる。そのため、これらの方法では、ホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を直ちに確認することができず、しかも一時的な処理結果しか知ることができない。したがって、これらの方法によってホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を確認しても、その結果に基づいて上記化学物質の処理条件(例えば、被処理液への酸化剤の注入量、被処理液の処理量など)を適切に制御することは難しかった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質を処理する方法及び装置であって、上記化学物質の処理状況を直ちに確認することができ、したがってその確認の結果に基づいて上記化学物質の処理条件を適切に制御することが可能な方法及び装置を提供することを第1の目的とし、被処理液中に含まれる上記化学物質の濃度を直ちに確認することができ、したがってその確認の結果に基づいて上記化学物質の処理条件を適切に制御することが可能な方法及び装置を提供することを第2の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述したように、本発明者は、ホルモン様活性を有する化学物質をオゾン、ヒドロキシラジカル等の酸化剤を用いて酸化処理することにより、該化学物質の活性作用を低減あるいは不活性化できることを既に見いだした。また、ホルモン様活性作用を有する多くの化学物質がベンゼン環を基本骨格として有しており、この化学物質を酸化してベンゼン環を開裂すれば、その完全分解(CO2までの分解)まで行うことなく、上記化学物質のホルモン様活性作用を低減あるいは不活性化できることも知見した。
【0009】
本発明者は、前述した第1の目的を達成するために、上記知見に基づいて検討を行った結果、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質を処理するに当たり、処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視すれば、その監視結果に基づいて、ホルモン様活性を有する化学物質の処理条件を適切に制御できることに想到した。
【0010】
すなわち、ホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を確認するために、前述したホルモン受容体を組み込んだ酵母を用いる測定法や、蛍光偏光度を用いる受容体結合測定法によって、処理液中に残存するホルモン様活性を有する化学物質を直接検出する場合は、酵母の培養や上記化学物質と受容体との反応を伴うため、オンラインで自動測定することが難しく、上記化学物質の処理状況を直ちに確認することは困難であった。これに対し、ホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を確認するための指標として、処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を選択した場合は、オンラインで自動測定することが比較的容易であり、したがってこの手法によれば、ホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を直ちに確認することができ、その確認の結果に基づいて上記化学物質の処理条件を適切に制御できることを知見したものである。
【0011】
また、本発明者は、ホルモン様活性作用を有する多くの化学物質がベンゼン環を基本骨格として有していることから、被処理液中に含まれるホルモン様活性作用を有する化学物質の指標として被処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を選択した場合には、被処理液中に含まれる上記化学物質の濃度を直ちに知ることができ、したがってその結果に基づいて上記化学物質の処理条件を適切に制御できることを知見した。
【0012】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたもので、下記(1)〜(16)に示すホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法及び処理装置を提供する。
(1)被処理液中に含まれるベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理を行うに当たり、被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視するとともに、該ベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理条件を制御することを特徴とするホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(2)被処理液及び/又は処理液の一部を検体として採取し、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を濃縮した後、該ベンゼン環を有する化学物質を検出する(1)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(3)クロマトグラフィーにより試料成分を分離した後に、ベンゼン環を有する化学物質を検出する(1)又は(2)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(4)ベンゼン環を有する化学物質をUV検出器により検出する(1)〜(3)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(5)被処理液中に含まれる前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を低減又は不活性化する処理が、酸化剤による前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質の酸化処理である(1)〜(4)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(6)酸化剤がオゾン又はヒドロキシラジカルである(5)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(7)ベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、被処理液への酸化剤の注入量を制御する(5)又は(6)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(8)前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質が、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸類、フタル酸エステル類、スチレン類、PCB、DDT、DDE、ビンクロリゾン及び17−β−エストラジオールから選ばれる1種以上である(1)〜(7)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
(9)被処理液中に含まれるベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理を行う装置において、被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出することにより、該ベンゼン環を有する化学物質を監視するモニタリング装置を具備するとともに、該モニタリング装置によるベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理条件を制御することを特徴とするホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(10)前記モニタリング装置が、被処理液及び/又は処理液の一部を検体として採取し、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を濃縮した後、該ベンゼン環を有する化学物質を検出するものである(9)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(11)クロマトグラフィーにより試料成分を分離した後に、ベンゼン環を有する化学物質を検出する(9)又は(10)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(12)ベンゼン環を有する化学物質をUV検出器により検出する(9)〜(11)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(13)被処理液中に含まれる前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を低減又は不活性化する処理が、酸化剤による前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質の酸化処理である(9)〜(12)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(14)酸化剤がオゾン又はヒドロキシラジカルである(13)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(15)ベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、被処理液への酸化剤の注入量を制御する(13)又は(14)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
(16)前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質が、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸類、フタル酸エステル類、スチレン類、PCB、DDT、DDE、ビンクロリゾン及び17−β−エストラジオールから選ばれる1種以上である(9)〜(15)のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
【0015】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明において、「ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質」とは、環境ホルモン、環境ホルモンであると疑われる化学物質、環境ホルモンと類似したホルモン様活性を有する化学物質等の正常なホルモン作用を攪乱する疑いのある物質であって、ベンゼン環を基本骨格として有する物質を全て包含する。このような化学物質としては、例えば、本来のホルモンが結合すべき生体内のレセプターに結合することによって、遺伝子が誤った指令を受けてホルモン作用がもたらされるもの(PCB、DDT、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸エステル類等)、レセプターに結合することによって、本来のホルモンのレセプターへの結合を阻害するもの(DDE、ビンクロリゾン等)などが挙げられる。
【0016】
本発明では、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質を処理する処理方法に特に限定はなく、どのような処理方法を用いた場合でも本発明は適用可能であるが、好ましい処理方法の1つとして、オゾンを用いた酸化法を挙げることができる。すなわち、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質を、オゾンを用いた酸化法で酸化することにより、そのホルモン様活性作用を低減あるいは不活性化することができる。
【0017】
この場合、オゾンを用いた酸化法としては、必ずしも限定されないが、(a)被処理液にオゾンを添加する方法、(b)被処理液にアルカリ性条件下でオゾンを添加する方法、(c)被処理液にオゾンを添加するとともに、オゾンを添加した被処理液に紫外線を照射する方法、又は、(d)被処理液にオゾン及び過酸化水素を添加する方法を好適に採用することができる。酸化法(a)は、ホルモン様活性を有する化学物質をオゾンに接触させて酸化するものである。酸化法(b)〜(d)は、ホルモン様活性を有する化学物質を、オゾンとアルカリとの反応、オゾンと紫外線との反応、又は、オゾンと過酸化水素との反応によって生じるヒドロキシラジカルに接触させて酸化するものである。
【0018】
前記酸化法(b)においては、被処理液のpHが10〜12のアルカリ性条件下で被処理液にオゾンを添加することが適当である。また、酸化法(b)では、被処理液のpH調整を行った後に被処理液へのオゾン添加を行ってもよく、被処理液へのオゾン添加を行った後に被処理液のpH調整を行ってもよく、被処理液のpH調整と被処理液へのオゾン添加とを同時に行ってもよい。
【0019】
前記酸化法(c)において、オゾンを添加した被処理液に紫外線を照射する紫外線照射機構としては、特に限定されず、高圧紫外線ランプを備えたもの、低圧紫外線ランプを備えたもののいずれでも用いることができるが、主に365nm付近の波長の紫外線を発生する高圧紫外線ランプを備えたものを用いることがより適当である。
【0020】
前記酸化法(d)においては、被処理液ヘの過酸化水素の添加量を0.5〜10mg/Lとすることが好ましい。また、酸化法(d)では、被処理液ヘの過酸化水素の添加を行った後にオゾン添加を行ってもよく、被処理液へのオゾン添加を行った後に過酸化水素の添加を行ってもよく、被処理液にオゾン及び過酸化水素を同時に添加してもよい。
【0021】
また、化学物質のホルモン様活性作用を低減あるいは不活性化する方法としては、前述したオゾンを用いた酸化法の他に、下記▲1▼に示すホルモン様活性作用の低減あるいは不活性化方法や、下記▲2▼〜▲4▼に示す液体中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質の濃度低減方法がある。したがって、オゾンを用いた酸化法と下記▲1▼〜▲4▼の方法とを併用することにより、ホルモン様活性を有する化学物質をさらに効率的に不活性化することが可能となる。
【0022】
▲1▼液体中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質に紫外線を照射することで、該化学物質のホルモン様活性作用を低減あるいは不活性化する方法。
▲2▼ホルモン様活性を有する化学物質が含まれる液体を吸着剤に接触させて該化学物質を吸着分離することで、液体中に含まれる前記化学物質の濃度を低減させる方法。
▲3▼ホルモン様活性を有する化学物質が含まれる液体を膜処理装置に通して該化学物質を濃縮分離することで、液体中に含まれる前記化学物質の濃度を低減させる方法。
▲4▼ホルモン様活性を有する化学物質が含まれる液体を生物処理して該化学物質を汚泥側に濃縮することで、液体中に含まれる前記化学物質の濃度を低減させる方法。
【0023】
方法▲1▼で用いる紫外線照射機構としては、前述したのと同様のものを用いることができる。方法▲2▼における吸着剤としては、環境ホルモンは疎水性のものが多いことから、疎水性吸着剤又は活性炭が好ましく用いられる。疎水性吸着剤としては、例えば合成吸着剤アンバーライトXAD−4(ロームアンドハース社製)を好ましいものとして例示することができ、この使用により疎水性物質である環境ホルモンを効率よく吸着できる。また、活性炭の使用は処理コストを低減できるという点で有効である。方法▲3▼における膜処理装置としては、ホルモン様活性を有する化学物質を非透過側に分離濃縮するために、限外濾過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)等の除去しようとするホルモン様活性を有する化学物質の分子量に応じて選択したものを分離膜として用いることができる。方法▲4▼における生物処理としては、代表的には、下水、産業排水等を生物学的に処理するいわゆる活性汚泥法を挙げることができる。
【0024】
本発明では、前記のようにして被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質を処理するに当たり、被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視する。この場合、ベンゼン環を有する化学物質の検出方法に限定はなく、ベンゼン環の存在を検出できる方法であればいずれの方法でも構わないが、UV検出器(紫外吸光検出器)又は蛍光検出器によって検出する方法を好適に採用することができ、特にUV検出器を用いることが好ましい。UV検出器としては、波長250〜300nm、例えば260nm付近又は285nm付近の吸光度を測定するものを用いることが適当である。
【0025】
また、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質は低濃度であることが多く、したがって被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質も低濃度であることが多い。したがって、本発明では、被処理液及び/又は処理液の一部を検体として採取し、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を濃縮した後、該ベンゼン環を有する化学物質を検出することが好ましい。
【0026】
さらに、被処理液及び/又は処理液中に夾雑物が含まれている場合は、クロマトグラフィーにより試料成分を分離した後に、ベンゼン環を有する化学物質を検出することが望ましい。
【0027】
本発明では、被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視するとともに、その監視結果に基づいて、ホルモン様活性を有する化学物質の処理条件を制御する。例えば、処理液中にベンゼン環を有する化学物質が検出された場合には、被処理液への酸化剤の注入量を増やしたり、被処理液の処理量を減らしたりし、処理液中にベンゼン環を有する化学物質が検出されない場合には、被処理液への酸化剤の注入量を減らしたり、被処理液の処理量を増やしたりする。また、被処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質の濃度が高い場合には、被処理液への酸化剤の注入量を増やしたり、被処理液の処理量を減らしたりし、被処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質の濃度が低い場合には、被処理液への酸化剤の注入量を減らしたり、被処理液の処理量を増やしたりする。
【0028】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る処理装置の一実施形態を示すフロー図であり、本装置はホルモン様活性を有する化学物質の処理方法として、被処理液にオゾン及び過酸化液素を添加する方法(前記方法d)を使用したものである。
【0029】
本装置において、2は原水タンク、4は反応塔、6は原水タンク2と反応塔4との間に設けられた被処理液導入管を示す。被処理液導入管6には、上流側から順次ポンプ8、過酸化水素添加機構10が設けられている。また、図中14はオゾン発生装置、16は反応塔4の底部に設置された散気板、18はオゾン発生装置14と散気板16とを接続するオゾン注入管、20は反応塔4の上部に連結された排オゾンガス流出管、22は排オゾンガス流出管20に介装されたオゾン分解装置、24は反応塔4の下部に連結された処理液流出管を示す。処理液流出管24の下流側にはポンプ28を介してモニタリング装置30が接続されている。モニタリング装置30は、処理液の一部を検体として採取する採取装置32と、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を濃縮する濃縮装置34と、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を検出する検出装置36とからなる。
【0030】
モニタリング装置30の詳細は図2に示す通りである。採取装置32は、三方切替弁38を備えている。三方切替弁38は、検体採取時には図中実線で示す流路とし、処理液流出管24からポンプ28により導入された処理液を濃縮装置34に送る。また、検体非採取時には図中点線で示す流路とし、ポンプ28により導入された処理液を排出管40を介して処理液流出管24を流れる処理液中に戻すか、別途廃棄する。
【0031】
濃縮装置34は、六方切替弁42を備えている。六方切替弁42は、試料濃縮時には図中実線で示す流路とし、採取装置32からの採取検体(処理液)を吸着カートリッジ(固相カートリッジ)44に通液し、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を吸着カートリッジ44に濃縮する。このとき、溶離液46はポンプ48の作動により図中実線で示す流路を通って検出装置36に送られている。また、試料溶出時には図中点線で示す流路とし、溶離液46をポンプ48の作動により吸着カートリッジ44に通液し、吸着カートリッジ44に濃縮されたベンゼン環を有する化学物質を溶出させて検出装置36に導入する。なお、このとき処理液は採取装置32の排出管40に流してもよく、濃縮装置34の排出管41に流してもよい。なお、必要に応じ、濃縮工程の前に吸着カートリッジ44にコンディショニング溶媒を流して吸着カートリッジ44のコンディショニングを行ったり、濃縮工程と溶出工程との間に吸着カートリッジ44に固相洗浄溶媒を流して吸着カートリッジ44の洗浄を行ったり、採取検体をサンプル輸送溶媒を用いて吸着カートリッジ44に通液したりすることができる。
【0032】
検出装置36は、分離カラム(クロマト管)50と検出器52を備えている。検出器52はUV検出器であり、フローセルを含む光学系部と、電気系部とから構成されている。検出装置36では、濃縮装置34から送られてきた溶離液中の試料成分が分離カラム50によって分離され、この試料成分が検出器52で検出される。
【0033】
また、本実施形態の装置では、検出装置36と過酸化水素添加機構10、検出装置36とオゾン発生装置14とはそれぞれ計装的に接続されており、検出装置36で測定した処理液中のベンゼン環を有する化学物質の濃度に対応する信号56、58が検出装置36から過酸化水素添加機構10及びオゾン発生装置14にそれぞれ送られ、その信号に応じて過酸化水素添加機構10による被処理液への過酸化水素添加量及び/又はオゾン発生装置14におけるオゾン発生量が制御される。
【0034】
本実施形態の装置によれば、以下のようにして被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質が処理される。まず、ポンプ8の作動により原水タンク2に貯留した被処理液が被処理液導入管6に流出する。そして、まず被処理液に過酸化水素添加機構10により過酸化水素が添加される。被処理液中の過酸化水素濃度は、通常、0.5〜10mg/L程度(例えば5mg/L)である。その後、被処理液は反応塔4内に導入される。そして、反応塔4においてホルモン様活性を有する化学物質がオゾン及び過酸化水素の反応によって生じたヒドロキシラジカルによって酸化され、不活性化する。その後、反応塔4内の処理液は処理液流出管24に流出する。なお、排オゾンガスは排オゾンガス流出管20に流出し、オゾン分解装置22で分解される。
【0035】
また、本実施形態の装置では、前記のようにしてモニタリング装置30によって処理液流出管24を流れる処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質が検出される。そして、その濃度に対応する信号56、58が検出装置36から過酸化水素添加機構10及びオゾン発生装置14にそれぞれ送られ、その信号に応じて過酸化水素添加機構10による被処理液への過酸化水素添加量及び/又はオゾン発生装置14におけるオゾン発生量が制御される。すなわち、処理液中にベンゼン環を有する化学物質が検出された場合には、過酸化水素添加機構10による被処理液への過酸化水素添加量を増やしたり、オゾン発生装置14におけるオゾン発生量を増やしたりする。また、処理液中にベンゼン環を有する化学物質が検出されない場合には、過酸化水素添加機構10による被処理液への過酸化水素添加量を減らしたり、オゾン発生装置14におけるオゾン発生量を減らしたりする。
【0036】
なお、上記実施形態では処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質のみを検出したが、被処理液中及び処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出してもよく、被処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質のみを検出してもよい。
【0037】
【実施例】
環境ホルモンの疑いを有すると考えられているビスフェノールAを純水に添加したサンプル液を調製し(ビスフェノールA濃度:10mg/L)、このサンプル液を図1に示した装置によって処理した。この場合、モニタリング装置30の採取装置32によって処理液の一部(1L程度)を所定時間ごとに採取し、この採取検体を濃縮装置34の吸着カートリッジ44に通液し、採取検体中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を吸着カートリッジ44に濃縮した(濃縮倍率:10倍)。吸着カートリッジ44としては、ベンゼン環を有する化学物質を吸着できる疎水性吸着カートリッジ(例えばSep-pakプラスC-18カラム:ウォーターズ社製)を用い、固相抽出によって濃縮を行った。また、溶出工程においては、溶離液46(メタノール、DMSO等)を吸着カートリッジ44に少量(10mL程度)流し、吸着された物質を溶離して検出装置36に導入した。なお、本実験では分離カラム50は省略した。検出器52としてはUV検出器を用い、溶離液に波長285nmの紫外線を照射して吸光度を測定することにより、処理液中のベンゼン環類を検出した。この吸光度を監視することにより、ホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を把握することができた。
【0038】
ここで、被処理液及び処理液の17−β−エストラジオール等量値、ビスフェノールA濃度並びにTOC濃度を図3に示し、被処理液及び処理液の波長285nmの紫外線の吸光度(ベンゼン環を有する化学物質の濃度に対応)を図4に示す。図3及び図4より、ビスフェノールA濃度とベンゼン環を有する化学物質の濃度とは良好な相関を示し、本発明によれば被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を直ちに確認できること、またホルモン様活性を有する化学物質の処理条件を適切に制御できることが分かった。なお、17−β−エストラジオール等量値は下記のようにして求めた。
【0039】
(エストロジェン様活性作用の測定)
1.試験サンプルに含まれるエストロジェン様活性作用を有する環境ホルモンの酸化処理前後における活性作用は次のようにして測定した。染色体に、hER(human estrogen receptor)と、ERE(estrogen responsive sequence)及びレポータ遺伝子としてlac−z(β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子)を組み込んだプラスミドを挿入した酵母を用い(「Environmental Toxicology and Chemistry」:Vol.15, pp.241-248, 1996)の方法に準拠して、以下のようにβ−ガラクトシダーゼ活性値を測定算出した後、代表的な生体内ホルモンである17−β−エストラジオールに等量換算して評価した。
【0040】
2.測定対象サンプルをSep-pakプラスC-18カラムを使用して100倍濃縮後、適当な濃度に段階希釈したサンプルを、各々10μLずつ96穴マイクロタイタプレートに注入し、これらの各穴に培地を含む上記酵母とβ−ガラクトシダーゼの基質となるCPRG(Chlorophenol red-β-D-galactopyranoside)の混合溶液を200μL注入する。次いでタイタプレートシェーカーで5分間攪拌後、30℃で3日間インキュベートする。インキュベート後、マイクロプレートリーダーを用いて540nmで吸光度を測定し、このときポジティブコントロールとして、代表的な生体内ホルモンである17−β−エストラジオールを一緒に測定しておき、サンプルの17−β−エストラジオール等量値を算出し、活性を評価する。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明において、処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視しつつ、ホルモン様活性を有する化学物質の処理を行った場合には、ホルモン様活性を有する化学物質の処理状況を直ちに確認することができ、したがってその確認の結果に基づいて上記化学物質の処理条件を適切に制御して、効率的な処理を行うことができる。また、本発明において、被処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視しつつ、ホルモン様活性を有する化学物質の処理を行った場合には、被処理液中に含まれるホルモン様活性を有する化学物質の濃度を直ちに確認することができ、したがってその確認の結果に基づいて上記化学物質の処理条件を適切に制御して、効率的な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】図1の装置のモニタリング装置の詳細を示すフロー図である。
【図3】実施例における被処理液及び処理液の17−β−エストラジオール等量値、ビスフェノールA濃度並びにTOC濃度を示すグラフである。
【図4】実施例における被処理液及び処理液の波長285nmの紫外線の吸光度を示すグラフである。
【符号の説明】
2 原水タンク
4 反応塔
6 被処理液導入管
10 過酸化水素添加機構
14 オゾン発生装置
24 処理液流出管
30 モニタリング装置
32 採取装置
34 濃縮装置
36 検出装置
38 三方切替弁
42 六方切替弁
44 吸着カートリッジ
46 溶離液
50 分離カラム
52 検出器

Claims (16)

  1. 被処理液中に含まれるベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理を行うに当たり、被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出し、該ベンゼン環を有する化学物質を監視するとともに、該ベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理条件を制御することを特徴とするホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  2. 被処理液及び/又は処理液の一部を検体として採取し、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を濃縮した後、該ベンゼン環を有する化学物質を検出する請求項1に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  3. クロマトグラフィーにより試料成分を分離した後に、ベンゼン環を有する化学物質を検出する請求項1又は2に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  4. ベンゼン環を有する化学物質をUV検出器により検出する請求項1〜3のいずれか1項に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  5. 被処理液中に含まれる前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を低減又は不活性化する処理が、酸化剤による前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質の酸化処理である請求項1〜4のいずれか1項に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  6. 酸化剤がオゾン又はヒドロキシラジカルである請求項5に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  7. ベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、被処理液への酸化剤の注入量を制御する請求項5又は6に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  8. 前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質が、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸類、フタル酸エステル類、スチレン類、PCB、DDT、DDE、ビンクロリゾン及び17−β−エストラジオールから選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理方法。
  9. 被処理液中に含まれるベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理を行う装置において、被処理液及び/又は処理液中に含まれるベンゼン環を有する化学物質を検出することにより、該ベンゼン環を有する化学物質を監視するモニタリング装置を具備するとともに、該モニタリング装置によるベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を、該ベンゼン環を開裂することにより低減又は不活性化する処理条件を制御することを特徴とするホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  10. 前記モニタリング装置が、被処理液及び/又は処理液の一部を検体として採取し、採取検体中のベンゼン環を有する化学物質を濃縮した後、該ベンゼン環を有する化学物質を検出するものである請求項9に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  11. クロマトグラフィーにより試料成分を分離した後に、ベンゼン環を有する化学物質を検出する請求項9又は10に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  12. ベンゼン環を有する化学物質をUV検出器により検出する請求項9〜11のいずれか1項に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  13. 被処理液中に含まれる前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質のホルモン様活性作用を低減又は不活性化する処理が、酸化剤による前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質の酸化処理である請求項9〜12のいずれか1項に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  14. 酸化剤がオゾン又はヒドロキシラジカルである請求項13に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  15. ベンゼン環を有する化学物質の監視結果に基づいて、被処理液への酸化剤の注入量を制御する請求項13又は14に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
  16. 前記ベンゼン環を基本骨格としホルモン様活性を有する化学物質が、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸類、フタル酸エステル類、スチレン類、PCB、DDT、DDE、ビンクロリゾン及び17−β−エストラジオールから選ばれる1種以上である請求項9〜15のいずれか1項に記載のホルモン様活性を有する化学物質を含む液体の処理装置。
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