JP4698174B2 - 鋼管内面劣化検知方法およびその装置 - Google Patents
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(1)鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性体合金あるいはこれらの強磁性体元素を含む合金からなる鋼管に配設した励磁手段に励磁電流を流して磁気飽和の状態として透磁率を略均一化した状態において、前記鋼管に透過磁束を発生させ、前記鋼管に巻回して配設した検出手段により所定位置における誘導電圧を検出し、
前記鋼管と同一または同等の鋼管から、鋼管断面積と誘導電圧との関係データを含む基準情報を取得してそれを保有(保持)し、
検出された前記誘導電圧と前記基準情報とを比較することにより前記鋼管の断面積を取得して、前記鋼管内面の劣化の程度を検知(判定)する鋼管内面劣化検知(判定)方法とした。
前記誘導電圧と前記基準情報とは、鋼管材料の磁束密度が飽和する飽和領域で検出または取得される。
鋼管10に巻回して配設されて所定位置における誘導電圧を検出する検出コイル14と、
前記鋼管10と同一または同等の鋼管から、鋼管断面積と誘導電圧との関係データを含む基準情報を取得してそれを保有する手段と、
検出された前記誘導電圧と前記基準情報とを比較することにより前記鋼管10の断面積を取得して、前記鋼管10の内面の劣化の程度を検知(判定)する手段と、を備える鋼管内面劣化検知(判定)装置とした。
前記励磁コイル12は、前記鋼管10の表面に巻回配置されて磁気回路を形成するよう構成される。
(5)(3)の鋼管内面劣化検知装置において、
前記励磁コイル12は、鋼管10の外部に配置されて鋼管10に磁気回路を形成するよう構成される。
(1)検出されたこの誘導電圧と予め保有している基準情報とを対比または比較することにより鋼管の内面劣化を検知する鋼管内面劣化検知方法としたので、局部的な亀裂や凹凸などだけではなく、腐食・侵食などのような広範囲に及ぶ劣化が定量的に検知(判定)できるようになった。
(2)この誘導電圧とこの基準情報とは、鋼管材料の磁束密度が飽和する飽和領域で検出または取得されることで、正確な相関関係を有するデータが得られる。
(4)この鋼管内面劣化検知装置は、励磁コイルは鋼管表面に直に巻回配置されて磁気回路を形成するよう構成されるので、装置の構造は安定していて励磁コイルからの磁束の漏れも少なく、極めて正確な鋼管内面劣化検知が可能となる。
(5)この鋼管内面劣化検知装置は、励磁コイルは鋼管外部に配置されて鋼管に磁気回路を形成するよう構成されているので、励磁コイルを直に鋼管表面に巻き付けたりする手間がかからず、作業性よく簡単で便利に効率良い装置を用いて、優れた鋼管内面劣化検知が可能となる。また、(5)における直巻きタイプの装置とこの磁気回路タイプの装置の2種類を、必要に応じてそれぞれ使い分けて使用することができる。
鋼管に巻き付けた励磁コイルに交流電流を流すと、励磁電流Iは、
I=I0sin(2πft+ψ) ……… (1)
ここで、I0:最大電流値、f:周波数、t:時間、ψ:初期位相角、
となり、電流により鋼管内部に磁界が生じる。
ここで、磁界の強さHと電流Iとの関係 H∝Iにより、
そのときの鋼管内部の磁束密度Bは
B=(μ0H+J)sin(2πft+ψ) ……… (2)
ただし、磁界密度Jは、J=μ0(μS−1)H、となり
ここでは、μ0:真空中透磁率、μS:比透磁率、である。
よって、磁束数φは、S:鋼管断面積とすれば、φ=BSの関係により
φ=S(μ0H+J)sin(2πft+ψ) ……… (3) となる。
e=−2πfN2S(μ0H+J)cos(2πft+ψ) ……… (4)
となり、これを実効値で表すと
e=√2πfN2S(μ0H+J) ……… (5)
が得られる。
図4(2)は、飽和領域における鋼管断面積Sと誘導電圧eの関係を示すグラフ図であり、誘導電圧eと鋼管断面積Sとの間に傾きが√2πfN2(μ0H+J)である式(5)による一定の相関関係が成り立つ様子を示す。
このように、飽和領域においては、誘導電圧eと鋼管断面積Sと間には式(5)による一定の相関関係が成り立つので、磁束密度が飽和する飽和領域においては、検出コイルの誘導電圧を測定検出することにより、鋼管断面積が把握できるようになる。
基準情報(基準値)を取得するための健全な鋼管(基準となる鋼管)としては、劣化判定される鋼管と同一の(同じ)鋼管か、同等(均等)とみなせる鋼管が用いられる。すなわち、劣化判定される鋼管と材質/形状/内径/外形などの仕様(スペック)が全く同じである鋼管があればそれを用いるし、全く同じ鋼管がないときには、劣化判定される鋼管と同等または均等と当業者がみなせるものを用いることができる。
試験用の鋼管には、劣化のない健全な基本標準鋼管を用いており、試験条件等は、次に示すとおりである。
1)鋼管:管の外形φ=48.6mm、肉厚t=1.0、3.0、5.0mmの3種類。
2)励磁コイル:コイル太さφ2.0mm、コイル巻き数100ターン
3)検出コイル:コイル太さφ2.0mm、コイル巻き数10ターン
4)周波数:50Hz
5)励磁コイルと検出コイルのコイル間距離:5mm
得られたデータより、それらの比較を試みると、図6のような関係が得られたが、ここに示すように実験値と計算値とはほぼ一致する結果となった。
また、図5および図6により、誘導電圧e(V)は鋼管断面積Sに依存していることが明らかに示されている。
図7においては、試験用の鋼管には、劣化のない健全な基本標準鋼管を用いており、試験条件等は、次に示すとおりである。
1)鋼管:管の外形φ=10.0mm、肉厚t=0.5、0.7、1.0mmの3種類。
2)励磁コイル:コイル線径φ1.0mm、コイル巻き数100ターン
3)検出コイル:コイル線径φ1.0mm、コイル巻き数10ターン
4)周波数:50Hz
5)励磁コイルと検出コイルのコイル間距離:5mm
1)鋼管:管の外形φ=48.6mm、肉厚t=1.0、3.0、5.0mmの3種類。
2)励磁コイル:コイル線径φ2.0mm、コイル巻き数100ターン
3)検出コイル:コイル線径φ2.0mm、コイル巻き数10ターン
4)周波数:50Hz
5)励磁コイルと検出コイルのコイル間距離:5mm
この記憶装置32に記憶されたデータが、演算処理部34に読み込まれ、キー操作部36の操作による処理命令および判定用データベース38からの判定用データに基づいて適宜処理され、鋼管の劣化の判断がなされ、その結果が表示部40で表示画面等に表示され、またこれらの処理データが記憶部42に記憶保存される。
本発明における基準情報は、判定用データベース38で予め保有されており、測定で検出された誘導電圧で得られたデータ類は、演算処理部34においてこの基準情報と比較検討されて、劣化の検知・判定がなされる。
このデータと、劣化判定される鋼管と同一または同等(均等)とみなせる鋼管から予め取得されてそれを保有している基準情報とを、対比または比較することにより鋼管の内面劣化を検知または判定できるようになる。
図7(2)、図8(2)、図9に示す基準情報は「誘導電圧と鋼管断面積」の関係データであり、これは鋼管材料の磁束密度が飽和する飽和領域で検出または取得されたデータから得られた基準情報である。これらの基準情報は、検知の対象となる鋼管の種類や材料等を予め調査しておいて、前もって実験室的に求めておくことができるし、それを判定用データベース38に記憶保存しておく。そして、演算処理部34では、これらの基準情報を基にして、得られたデータ類との対比または比較することによって、鋼管の内面劣化の程度の判定や検知を行なう。
図1においては、励磁コイル12は、鋼管表面で巻回配置されて磁気回路を形成していたが、実用上は、励磁コイル12を直に鋼管表面で巻き付けするわけにはいかないので、励磁コイル12を半割りの収納ケースに入れて、ケース毎鋼管の外面を取り巻くように設定している。しかし近年のように、鋼管が大型化してくると、コイル巻き数も増加し、数百ターン以上のコイルケースに収納して鋼管を巻きつけることは、大変面倒なことになる。
そこで、磁気回路を構成する鉄鋼材料からなるコイル保持体12Aの中心基体12bは、測定する鋼管の断面積よりも大きく設定することが望ましいし、また、コイル保持体12Aと延長する鋼管取付部12aは、鋼管10と電気的に接触させた状態に保持することが望ましい。
図11(1)は図1に示した直巻きタイプの装置であり、励磁部12Cは励磁コイル12等の励磁手段を内設し、検出部14Cは検出コイル14等の検出手段を内設する。励磁部12Cと検出部14Cとは、非磁性体材料からなる連結部14bを介して一体的に連結されて構成がなされる。この装置は全体が略円筒形をなしており、装置が鋼管10の長手方向に容易に移動できるように、内径R2は鋼管10の外径R1に合わせて形成されている。
<軽量化> 磁気回路タイプにおいては、コイル保持体12Aの材料に普通の鉄鋼材料を用いると重くなってしまうので、透磁率のなるべく高い材料にして、体積が小さくとも、多くの磁束を通すようにするとよい。これにより装置の軽量化がなされて、持ち運びが楽で便利になり作業性も向上する。
よって、円環筒状体となっている検出部14C、励磁部12C、鋼管取付部12aは、半割のビス留め方式などにして、取付け易いものとするのがよく、鋼管10の端部10aから通さずとも、横方向から鋼管にセットできる構造のものとするのがよい。こうした管を把持または握持する構造については、従来からある技術を適宜採用すればよいので、ここでは詳述しない。
ところが、発明者らの実験によれば、電圧に低下が起きたとしても電圧は一様に低下していることがわかった。よって、励磁コイルの内径R2と測定する鋼管の外径R1とにギャップが各種あったとしても、一つの励磁コイルでの検出測定が可能となる。
10a 鋼管端部
12 励磁コイル
12A コイル保持体
12a 鋼管取付部
12C 励磁部
14 検出コイル、
14C 検出部
30 中央演算装置
34 演算処理部
38 判定用データベース
Claims (5)
- 強磁性体合金あるいは強磁性体元素を含む合金からなる鋼管に配設した励磁手段に交流励磁電流を流すことにより磁場の変化に対し、誘導電圧の変化の割合を一定にできる磁気飽和の状態とし、透磁率を一定と見なせる前記透磁率を略均一化した状態において、前記鋼管に透過磁束を発生させ、前記鋼管に巻回して配設した検出手段により所定位置において検出した誘導電圧と前記鋼管の断面積とを比例関係とし、
前記鋼管と同一または同等の鋼管から、同様に、鋼管断面積と誘導電圧との関係を基に得られた基準誘導電圧値のデータを含む基準情報を取得してそれを保有し、
検出された前記誘導電圧と前記基準情報とを比較することにより前記鋼管の断面積を取得して、前記鋼管内面の劣化を検知し、劣化の度合いを判定する、
ことを特徴とする鋼管内面劣化検知方法。 - 請求項1記載の鋼管内面劣化検知方法において、
前記誘導電圧と前記基準情報とは、鋼管材料の磁束密度が飽和する飽和領域で検出または取得される、ことを特徴とする鋼管内面劣化検知方法。 - 鋼管に交流励磁電流を流すことにより磁場の変化に対し、誘導電圧の変化の割合を一定にできる磁気飽和の状態とし、透磁率を一定と見なせる前記透磁率を略均一化した状態において、透過磁束を発生させる励磁コイルと、
前記鋼管に巻回して配設されて所定位置における誘導電圧を検出する検出コイルと、を備え、
前記検出コイルにより前記鋼管の所定位置において検出した誘導電圧と前記鋼管の断面積とを比例関係とし、
さらに、前記鋼管と同一または同等の鋼管から、鋼管断面積と誘導電圧との関係を基に得られた基準誘導電圧値のデータを含む基準情報を取得してそれを保有する手段と、
検出された前記誘導電圧と前記基準情報とを比較することにより前記鋼管の断面積を取得して、前記鋼管の内面の劣化を検知し劣化の度合いを判定する手段と、
を備え、
検出された前記誘導電圧と前記基準情報とを比較することにより前記鋼管の断面積を取得して、前記鋼管内面の劣化を検知し、劣化の度合いを判定する、ことを特徴とする鋼管内面劣化検知装置。 - 請求項3記載の鋼管内面劣化検知装置において、
前記励磁コイルは、前記鋼管表面に巻回配置されて磁気回路を形成するよう構成される、ことを特徴とする鋼管内面劣化検知装置。 - 請求項3記載の鋼管内面劣化検知装置において、
前記励磁コイルは、鋼管外部に配置されて鋼管に磁気回路を形成するよう構成される、ことを特徴とする鋼管内面劣化検知装置。
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