以下、本発明による内燃機関(ディーゼル機関)の混合気濃度推定装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の混合気濃度推定装置を含んだ混合気温度推定装置を4気筒内燃機関(ディーゼル機関)10に適用したシステム全体の概略構成を示している。このシステムは、燃料供給系統を含むエンジン本体20、エンジン本体20の各気筒の燃焼室(筒内)にガスを導入するための吸気系統30、エンジン本体20からの排ガスを放出するための排気系統40、排気還流を行うためのEGR装置50、及び電気制御装置60を含んでいる。
エンジン本体20の各気筒の上部には燃料噴射弁(噴射弁、インジェクタ)21が配設されている。各燃料噴射弁21は、図示しない燃料タンクと接続された燃料噴射用ポンプ22に燃料配管23を介して接続されている。燃料噴射用ポンプ22は、電気制御装置60と電気的に接続されていて、電気制御装置60からの駆動信号(後述する指令最終燃料噴射圧力Pcrfinに応じた指令信号)により燃料の実際の噴射圧力(吐出圧力)が指令最終燃料噴射圧力Pcrfinになるように同燃料を昇圧するようになっている。
これにより、燃料噴射弁21には、燃料噴射用ポンプ22から指令最終燃料噴射圧力Pcrfinまで昇圧された燃料が供給されるようになっている。また、燃料噴射弁21は、電気制御装置60と電気的に接続されていて、電気制御装置60からの駆動信号(指令燃料噴射量(質量)Qfinに応じた指令信号)により噴射期間TAUだけ開弁し、これにより各気筒の燃焼室内に指令最終燃料噴射圧力Pcrfinにまで昇圧された燃料を指令燃料噴射量Qfinだけ直接噴射するようになっている。
吸気系統30は、エンジン本体20の各気筒の燃焼室にそれぞれ接続された吸気マニホールド31、吸気マニホールド31の上流側集合部に接続され吸気マニホールド31とともに吸気通路を構成する吸気管32、吸気管32内に回動可能に保持されたスロットル弁33、電気制御装置60からの駆動信号に応答してスロットル弁33を回転駆動するスロットル弁アクチュエータ33a、スロットル弁33の上流において吸気管32に順に介装されたインタクーラー34と過給機35のコンプレッサ35a、及び吸気管32の先端部に配設されたエアクリーナ36とを含んでいる。
排気系統40は、エンジン本体20の各気筒にそれぞれ接続された排気マニホールド41、排気マニホールド41の下流側集合部に接続された排気管42、排気管42に配設された過給機35のタービン35b、及び排気管42に介装されたディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、「DPNR」と称呼する。)43を含んでいる。排気マニホールド41及び排気管42は排気通路を構成している。
EGR装置50は、排気ガスを還流させる通路(EGR通路)を構成する排気還流管51と、排気還流管51に介装されたEGR制御弁52と、EGRクーラー53とを備えている。排気還流管51はタービン35bの上流側排気通路(排気マニホールド41)とスロットル弁33の下流側吸気通路(吸気マニホールド31)を連通している。EGR制御弁52は電気制御装置60からの駆動信号に応答し、再循環される排気ガス量(排気還流量、EGRガス流量)を変更し得るようになっている。
電気制御装置60は、互いにバスで接続されたCPU61、CPU61が実行するプログラム、テーブル(ルックアップテーブル、マップ)、及び定数等を予め記憶したROM62、CPU61が必要に応じてデータを一時的に格納するRAM63、電源が投入された状態でデータを格納するとともに同格納したデータを電源が遮断されている間も保持するバックアップRAM64、並びにADコンバータを含むインターフェース65等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース65は、吸気管32に配置された熱線式エアフローメータ71、スロットル弁33の下流であって排気還流管51が接続された部位よりも下流の吸気通路に設けられた吸気温センサ72、スロットル弁33の下流であって排気還流管51が接続された部位よりも下流の吸気通路に配設された吸気管圧力センサ73、クランクポジションセンサ74、アクセル開度センサ75、燃料噴射用ポンプ22の吐出口の近傍の燃料配管23に配設された燃料温度センサ76、及び、スロットル弁33の下流であって排気還流管51が接続された部位よりも下流の吸気通路に配設された吸気酸素濃度センサ77と接続されていて、これらのセンサからの信号をCPU61に供給するようになっている。
また、インターフェース65は、燃料噴射弁21、燃料噴射用ポンプ22、スロットル弁アクチュエータ33a、及びEGR制御弁52と接続されていて、CPU61の指示に応じてこれらに駆動信号を送出するようになっている。
熱線式エアフローメータ71は、吸気通路内を通過する吸入空気の質量流量(単位時間当りの吸入空気量、単位時間あたりの新気量)を計測し、質量流量Ga(空気流量Ga)を表す信号を発生するようになっている。吸気温センサ72は、エンジン10のシリンダ(即ち、燃焼室、筒内)に吸入されるガスの温度(即ち、吸気温度)を検出し、吸気温度Tbを表す信号を発生するようになっている。吸気管圧力センサ73は、エンジン10のシリンダに吸入されるガスの圧力(即ち、吸気管圧力)を検出し、吸気管圧力Pbを表す信号を発生するようになっている。
クランクポジションセンサ74は、各気筒の絶対クランク角度を検出し、実クランク角度CAactを表すとともにエンジン10の回転速度であるエンジン回転速度NEをも表す信号を発生するようになっている。アクセル開度センサ75は、アクセルペダルAPの操作量を検出し、アクセル操作量Accpを表す信号を発生するようになっている。燃料温度センサ76は、燃料配管23を通過する燃料の温度を検出し、燃料温度Tcrを表す信号を発生するようになっている。吸気酸素濃度センサ77は、吸気中の酸素濃度を検出し、吸気酸素濃度RO2inを表す信号を発生するようになっている。
(混合気の空気過剰率の推定方法の概要)
次に、上記のように構成された混合気濃度推定装置を含んだ混合気温度推定装置(以下、「本装置」と云う。)による、混合気濃度相当値としての混合気の空気過剰率の推定方法について説明する。
図2は、或る一つの気筒のシリンダ内(筒内、燃焼室内)に吸気マニホールド31からガスが吸入され、燃焼室内に吸入されたガスが排気マニホールド41へ排出される様子を模式的に示した図である。図2に示したように、燃焼室内に吸入されるガス(従って、筒内ガス)には、吸気管32の先端部からスロットル弁33を介して吸入された新気と、排気還流管51からEGR制御弁52を介して吸入されたEGRガスが含まれる。
吸入される新気量(新気質量)と吸入されるEGRガス量(ガス質量)の和に対するEGRガス量の割合(即ち、EGR率)は、運転状態に応じて電気制御装置60(CPU61)により適宜制御されるスロットル弁33の開度、及びEGR制御弁52の開度に応じて変化する。
かかる新気、及びEGRガスは、吸気行程において開弁している吸気弁Vinを介してピストンの下降に伴って燃焼室内に吸入されて筒内ガスとなる。筒内ガスは、ピストンが圧縮下死点に達する時点近傍で吸気弁Vinが閉弁することにより燃焼室内に密閉され、その後の圧縮行程においてピストンの上昇に伴って圧縮される。
そして、ピストンが圧縮上死点近傍に達すると(具体的には、後述する最終燃料噴射開始時期(クランク角度)CAinjfinが到来すると)、本装置は、指令燃料噴射量Qfinに応じた噴射期間TAUだけ燃料噴射弁21を開弁することで燃料を燃焼室内に直接噴射する。この結果、燃料噴射弁21の噴孔から噴射された液体の(液滴)燃料は、時間の経過に伴って筒内ガスを取り込みながら混合気となって燃焼室内において円錐状に拡散していく。
ここで、指令燃料噴射量Qfinの燃料は、実際には、最終燃料噴射開始時期CAinjfinから噴射期間TAUだけ連続して噴射されるが、以下においては便宜上、指令燃料噴射量Qfinの燃料が最終燃料噴射開始時期CAinjfinにて一時(瞬時)に噴射されるものとして説明を続ける。
図3(a)は、燃料噴射弁21の噴孔から、指令燃料噴射量(質量)Qfinの燃料が一時に噴射された時点(即ち、噴射後経過時間t=0)での質量Qfinの液滴燃料の様子を模式的に示した図である。図3(b)は、その後の或る時点(任意の噴射後経過時間t)での図3(a)に示した質量Qfinの燃料の様子を模式的に示した図である。
図3(b)に示すように、質量Qfinの燃料は、最終燃料噴射開始時期CAinjfin(即ち、噴射後経過時間t=0)において噴射された後、噴霧角θをもって円錐状に拡散しながら筒内ガスを順次取り込んでいく。そして、質量Qfinの燃料は、任意の噴射後経過時間tにおいて、噴射後経過時間tの関数である質量Gの筒内ガス(以下、「混合気形成筒内ガス」と云うこともある。)と混ざり合って質量(Qfin+G)の混合気となっているものと仮定する。本装置は、係る混合気の任意の噴射後経過時間tにおける混合気濃度相当値としての空気過剰率λを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に推定するものである。
噴射後経過時間tにおける空気過剰率λは、下記(1)式に示すように定義される。下記(1)式において、stoichは、単位質量の燃料の燃焼に必要な筒内ガスの質量(以下、「筒内ガス理論空燃比stoich」と呼ぶ。)である。筒内ガス理論空燃比stoichの値は、吸気中の酸素濃度に応じて変化すると考えられるから、上記吸気酸素濃度RO2inを引数とする所定の関数に従って取得され得る。また、上述したように、Gは混合気形成筒内ガスの質量であり、Qfinは指令燃料噴射量(質量)である(図3を参照)。
このように定義される空気過剰率λは、例えば、上述した非特許文献1にて紹介された、運動量保存則を利用して得られる式である下記(2)式、及び下記(3)式に基づいて噴射後経過時間tの関数として求めることができる。
上記(3)式において、tは上記噴射後経過時間であり、(dλ/dt)baseは噴射後経過時間tの関数である混合気希釈速度(基本混合気希釈速度)である。また、cは収縮係数、dは燃料噴射弁21の噴孔径、ρfは液滴燃料の密度、Lは論理希釈ガス量であって、これらの各値は全て定数である。
上記(3)式において、ΔPは有効噴射圧力であって、上記最終燃料噴射圧力Pcrfinから噴射開始時点(即ち、噴射後経過時間t=0)での筒内ガス圧力Pg0を減じた値である。筒内ガス圧力Pg0は、圧縮行程(及び膨張行程)における筒内ガスの状態が吸気弁Vinの閉弁時(即ち、筒内ガスが密閉された時点。以下、「IVC」と呼ぶ。)以降、断熱変化するとの仮定のもと、下記(4)式に従って求めることができる。
上記(4)式において、PgivcはIVCにおける筒内ガス圧力である。上述したように、IVCは圧縮下死点近傍であるから、IVCにおいて筒内ガス圧力は吸気管圧力Pbと略等しいと考えられる。従って、IVCにおいて吸気管圧力センサ73により検出される吸気管圧力PbがPgivcとして使用され得る。Vg(CAivc)はIVCにおけるクランク角度CAに対応する筒内容積であり、Vg(CAinj)は噴射後経過時間t=0におけるクランク角度CAに対応する筒内容積である。筒内容積Vgは機関10の設計諸元に基づいてクランク角度CAの関数Vg(CA)として取得することができるから、Vg(Caivc),Vg(CAinj)も取得することができる。κは筒内ガスの比熱比(本例では、一定)である。
また、上記(3)式において、θは図3(b)に示した噴霧角である。噴霧角θは、噴射開始時点(即ち、噴射後経過時間t=0)における筒内ガスの密度ρg0、及び上記有効噴射圧力ΔPに応じて変化すると考えられるから、筒内ガスの密度ρg0、及び有効噴射圧力ΔPと噴霧角θとの関係を予め規定したテーブルMapθに基づいて取得することができる。筒内ガスの密度ρg0は、筒内ガスの全質量Mgを、噴射後経過時間t=0における上記筒内容積Vg(CAinj)で除することで取得することができる。筒内ガスの全質量Mgは、IVCにおける気体の状態方程式に基づく下記(5)式に従って取得され得る。下記(5)式において、TgivcはIVCにおける筒内ガス温度である。IVCは圧縮下死点近傍であるから、IVCにおいて筒内ガス温度は吸気温度Tbと略等しいと考えられる。従って、IVCにおいて吸気温センサ72により検出される吸気温度TbがTgivcとして使用され得る。Rは筒内ガスのガス定数(本例では、一定)である。
また、上記(3)式において、ρgは噴射後経過時間tにおける筒内ガス密度であって、前記筒内ガスの全質量Mgを、噴射後経過時間tにおける上記筒内容積Vg(CA)で除することで、噴射後経過時間tの関数として取得することができる。
以上のことから、有効噴射圧力ΔPと噴霧角θとを上述のようにして求めれば、噴射後経過時間tの値と同噴射後経過時間tの関数である筒内ガス密度ρgの値とを使用して、上記(3)式に従って基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseが噴射後経過時間tの関数として求められる。そして、噴射後経過時間t=0から微小時間Δt(例えば、0.1msec)毎に求めた基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値を上記(2)式に従って時間で積分(積算)していくことで噴射後経過時間tにおける空気過剰率λ(後述する補正がなされていない空気過剰率)を噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に取得することができる。
なお、上記(3)式から取得される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値は常に正の値となることから上記(2)式から取得される空気過剰率λの値は噴射後経過時間tの増大に従って増加していく。そうすると、上記(1)式から理解できるように、混合気形成筒内ガスの質量Gが噴射後経過時間tの増大に従って増加していく。このことは、噴射後の燃料蒸気が円錐状に拡散していくことに伴って燃料蒸気と混ざり合う(燃料蒸気が取り込む)筒内ガス(従って、混合気形成筒内ガス)の量が増大していくことに対応している。
(空気過剰率(混合気希釈速度)の補正)
混合気が燃焼室内を移動していく過程では、実際には、燃料と筒内ガスとが混ざり合う程度を変化させるような様々な現象が混合気に対して起こり得る。係る現象が発生すると、混合気希釈速度(従って、空気過剰率λ)が大きく変化することが考えられる。本例では、係る現象として、以下のように、ブレークアップ、蒸発、及び熱膨張が考慮される。
<ブレークアップを考慮した空気過剰率(混合気希釈速度)の補正>
混合気が燃焼室内を移動していく過程において混合気にブレークアップが発生することが知られている。このブレークアップが発生すると、混合気内の液滴燃料の運動エネルギーの一部が内部エネルギーに変換されること等に起因して、混合気の分散の程度がより一層進み易くなる。即ち、ブレークアップが発生すると、液滴燃料が筒内ガスを取り込み易くなり、以降、ブレークアップが発生していない場合に比して混合気希釈速度(従って、空気過剰率λ)が大きくなる傾向があると考えられる。
しかしながら、上記(3)式に従って運動量保存則を利用して算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseは、係るブレークアップが全く考慮されずに算出される値である。従って、ブレークアップを考慮すると、ブレークアップが発生した時点以降、上記(3)式に従って算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値を大きくなる方向に補正する必要がある。
他方、混合気のブレークアップが発生する位置(燃料噴射弁21の噴孔からの距離。以下、「ブレークアップ発生位置Xbreak」と称呼する。)は、例えば、周知の下記(6)式に従って求めることができる。
上記(6)式において、C0は燃料噴射弁21の形状定数(ノズル形状定数)である。また、上記(3)式と同様、dは燃料噴射弁21の噴孔径であり、ρfは液滴燃料の密度であり、ρgは噴射後経過時間tにおける筒内ガス密度である。このように、ブレークアップ発生位置Xbreakは、上記(6)式に従って筒内ガス密度ρgの関数(従って、噴射後経過時間tの関数)として求められる。
また、噴射開始時点以降における混合気(先頭部)の燃料噴射弁21の噴孔からの到達距離(以下、「混合気到達距離X」と称呼する。)は、例えば、上記非特許文献1にて紹介された式である下記(7)式、(8)式に基づいて噴射後経過時間tの関数として求めることができる。下記(8)式において、dX/dtは噴射後経過時間tの関数である混合気移動速度である。なお、下記(8)式の右辺に示される各種値は、上記(3)式の右辺に示されるものと同一である。
即ち、噴射後経過時間tの値と噴射後経過時間tの関数である筒内ガス密度ρgの値とにより、上記(8)式に従って混合気移動速度dX/dtを逐次求めていき、逐次求めた混合気移動速度dX/dtの値を上記(7)式に従って時間で積分していくことで噴射後経過時間tにおける混合気到達距離Xを取得することができる。
そこで、本装置は、上記(7)式に従って算出される混合気到達距離Xが上記(6)式に従って算出されるブレークアップ発生位置Xbreakに達した時点で混合気にブレークアップが発生したと判定する。本装置は、希釈係数K1を導入し、ブレークアップが発生したと判定する前の段階では希釈係数K1の値を「1」に設定し、ブレークアップが発生したと判定した時点以降、希釈係数K1の値を一定値α(>1)に設定する。
そして、本装置は、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に希釈係数K1を乗じることで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正する。これにより、ブレークアップが発生した時点以降、係るブレークアップの観点から、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値が大きくなる方向に補正されていく。
<蒸発を考慮した空気過剰率(混合気希釈速度)の補正>
混合気が燃焼室内を移動していく過程において混合気の温度が燃料の蒸発温度に達すると、混合気内の液滴燃料が蒸発する。液滴燃料が蒸発すると、混合気の粘度が大きくなり、燃料(燃料蒸気)が筒内ガスを取り込み難くなる。即ち、液滴燃料が蒸発した時点以降、係る蒸発が発生していない場合に比して混合気希釈速度(従って、空気過剰率λ)が小さくなる傾向があると考えられる。
しかしながら、上記(3)式に従って運動量保存則を利用して算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseは、係る液滴燃料の蒸発が全く考慮されずに算出される値である。従って、液滴燃料の蒸発を考慮すると、液滴燃料が蒸発した時点以降、上記(3)式に従って算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値を小さくなる方向に補正する必要がある。
更には、液滴燃料が蒸発した時点以降、混合気の温度が高くなるほど、気体としての混合気の粘度が高くなって、燃料(燃料蒸気)と筒内ガスとがより混ざり合い難くなる。換言すれば、混合気の温度が高くなるほど、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値を小さくなる方向に補正する程度を大きくする必要がある。他方、混合気の温度(混合気温度Tmix)は、後述するように、噴射後経過時間tの関数として求めることができる。
そこで、本装置は、後述する混合気温度Tmixが燃料の蒸発温度に達した時点で混合気内の液滴燃料が蒸発したと判定する。本装置は、希釈係数K2を導入し、液滴燃料が蒸発したと判定する前の段階では希釈係数K2の値を「1」に設定し、液滴燃料が蒸発したと判定した時点以降、希釈係数K2の値を、図4に示したように、「1」未満の値であって、混合気温度Tmixが高いほどより小さい値に設定する。
そして、本装置は、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に希釈係数K2を乗じることで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正する。これにより、液滴燃料が蒸発した時点以降、係る蒸発の観点から、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値が小さくなる方向に補正されていく。
<熱膨張を考慮した空気過剰率(混合気希釈速度)の補正>
混合気内の液滴燃料が蒸発した時点以降、気体として燃焼室内を移動していく混合気は、混合気内にて発生する燃焼に代表される種々の反応により発生する熱により熱膨張し得る。このように混合気が熱膨張すると、混合気と混合気を取り巻く筒内ガスとの相対速度が大きくなり、混合気における筒内ガスとの境界部分に乱れが発生し易くなる。このことは、燃料(燃料蒸気)と筒内ガスとが混ざり合い易くなることを意味する。即ち、液滴燃料が蒸発した時点以降、係る熱膨張が発生しない場合に比して混合気希釈速度(従って、空気過剰率λ)が大きくなる傾向があると考えられる。
しかしながら、上記(3)式に従って運動量保存則を利用して算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseは、係る熱膨張が全く考慮されずに算出される値である。従って、熱膨張を考慮すると、液滴燃料が蒸発した時点以降、上記(3)式に従って算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値を大きくなる方向に補正する必要がある。
更には、混合気の熱膨張の速度(膨張速度)が大きくなるほど、上述した混合気の乱れの程度が大きくなって、燃料(燃料蒸気)と筒内ガスとがより混ざり合い易くなる。換言すれば、混合気の膨張速度が大きくなるほど、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値を大きくなる方向に補正する程度を大きくする必要がある。他方、図5に示すように、気体としての混合気が球形状を呈していると仮定すれば、混合気の膨張速度dr/dtは、下記(9)式にて表すことができる。
上記(9)式において、r0は、混合気内の液滴燃料が蒸発した時点以降の任意の噴射後経過時間t=tにおける球形状の混合気の半径である。この半径r0は、気体の状態方程式に基づく下記(10)式から得られる球形状の混合気の体積Vmixを使用して、下記(11)式に従って求めることができる。
上記(10)式において、Mmixは混合気の総質量(混合気質量)、Tmixは上記混合気温度、Pgは筒内ガス圧力、Rは混合気のガス定数(本例では、一定)である。混合気質量Mmix、混合気温度Tmix、及び筒内ガス圧力Pgは、それぞれ後述するように噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に求めることができる。従って、半径r0も、微小時間Δt毎に求めることができる。
他方、上記(9)式において、rは、噴射後経過時間t=tからの微小時間Δtの間において混合気内にて発生する化学反応による反応熱Hr(詳細は、後述する。)により熱膨張した混合気の噴射後経過時間t=(t+Δt)における半径(r>r0)である。この微小時間Δtの間において混合気内にて発生する反応熱Hrにより混合気温度TmixがΔTだけ上昇したものとすると、熱膨張後の混合気の半径rは、微小時間Δtに亘って筒内ガス圧力Pg、及び混合気質量Mmixが一定であるとの仮定の下、気体の状態方程式を利用して、下記(12)式に従って求めることができる。
上記(12)式において、反応熱Hrによる混合気の温度上昇量ΔTは、下記(13)式に従って求めることができる。下記(13)式において、Cmixは混合気の定圧比熱であり、後述するように噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に求めることができる。従って、半径rも、微小時間Δt毎に求めることができる。
以上より、混合気内の液滴燃料が蒸発した時点以降、上記(9)式にて表される混合気の膨張速度dr/dtも微小時間Δt毎に求めていくことができる。
そこで、本装置は、希釈係数K3を導入し、液滴燃料が蒸発したと判定する前の段階では希釈係数K3の値を「1」に設定し、液滴燃料が蒸発したと判定した時点以降、希釈係数K3の値を、図6に示したように、「1」より大きい値であって、上記(9)式に従って求められる混合気の膨張速度dr/dtに係数Kr(一定)を乗じた値(以下、「乱れ強度B」と称呼する。)が大きいほどより大きい値に設定する。
そして、本装置は、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に希釈係数K3を乗じることで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正する。これにより、液滴燃料が蒸発した時点以降、混合気の熱膨張の観点から、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値が大きくなる方向に補正されていく。
以上のように、本装置は、実際には、下記(14)式に従って、上記基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値にブレークアップ、蒸発、及び熱膨張にそれぞれ対応する上記希釈係数K1,K2,K3を乗じた値である補正後混合気希釈速度dλ/dtを、噴射後経過時間t=0から微小時間Δt(例えば、0.1msec)毎に求め、それぞれの補正後混合気希釈速度dλ/dtの値を下記(15)式に従って時間で積分(積算)していくことで噴射後経過時間tにおける空気過剰率λ(補正後の空気過剰率)を噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に求める。
図7は、本装置により上記(14)、(15)式に従って求められた噴射後経過時間tに対する補正後の空気過剰率λの変化の一例を示したグラフである。この例では、噴射後経過時間t=t1にて混合気のブレークアップが発生し、その後のt=t2にて混合気内の液滴燃料が蒸発し、その後のt=t3にて着火(燃焼。熱炎)が発生した場合が示されている。なお、図7における破線は、上記(1)、(2)式に従って求められる補正前の空気過剰率λbaseの変化を示している。
図7に示すように、この場合、t=t1以前では、希釈係数K1,K2,K3の全てが「1」に設定される。これにより、補正後混合気希釈速度dλ/dtが基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseと一致するから、補正後の空気過剰率λも補正前の空気過剰率λbaseと一致する。
混合気のブレークアップが発生するt=t1以降、希釈係数K1がα(>1、一定値)に設定される。混合気内の液滴燃料の蒸発が発生するt=t2以降、希釈係数K2が「1」未満の値(図4を参照)に設定されるとともに希釈係数K3が「1」より大きい値(図6を参照)に設定される。この結果、t=t1以降、補正後混合気希釈速度dλ/dtが基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseと一致しなくなるから、補正後の空気過剰率λも補正前の空気過剰率λbaseから偏移していく。
なお、着火が発生するt=t3以降の短期間に亘って、補正後の空気過剰率λが急激に増大している。これは、着火の発生により上記反応熱Hrが一時的に非常に大きい値になって上記温度上昇量ΔT(上記(13)式を参照)が一時的に非常に大きい値になることで、膨張速度dr/dt(従って、乱れ強度B)、ひいては希釈係数K3が一時的に非常に大きい値になることに基づく。
なお、図7では、混合気のブレークアップが発生した後に混合気内の液滴燃料が蒸発する例が示されているが、機関の状態によっては、混合気内の液滴燃料が蒸発した後に混合気のブレークアップが発生する場合も発生し得る。以上が、空気過剰率(混合気希釈速度)の補正の概要である。
(混合気温度Tmixの取得)
次に、上述のように噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に取得される補正後の空気過剰率λの値を利用して任意の噴射後経過時間tにおける混合気温度Tmixを取得する方法について説明する。一般に、混合気の熱エネルギー(エンタルピ)Hmixは、混合気温度Tmixを用いて下記(16)式に従って表すことができる。
上記(16)式において、Mmixは上述した混合気の総質量(混合気質量)、Cmixは上述した混合気の定圧比熱である。従って、混合気のエンタルピHmix、混合気質量Mmix、及び混合気の定圧比熱Cmixをそれぞれ噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていく(更新していく)ことで、下記(17)式に従って混合気温度Tmixを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができる。以下、先ず、混合気質量Mmixの求め方について説明する。
<混合気質量Mmix>
上述したように、質量Qfinの燃料蒸気は、任意の噴射後経過時間tにおいて質量Gの混合気形成筒内ガスと混ざり合って質量(Qfin+G)の混合気となっているから、任意の噴射後経過時間tにおける混合気質量Mmixは(Qfin+G)である。ここで、上記(1)式より「G=stoich・λ・Qfin」と表すことができるから、混合気質量Mmixは、空気過剰率λを用いて下記(18)式にて表すことができる。
よって、上述したように噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に取得され得る空気過剰率λの値を上記(18)式に順次適用していくことで、混合気質量Mmixを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に取得することができる。
<混合気の定圧比熱Cmix>
次に、混合気の定圧比熱Cmixの求め方について説明する。一般に、混合気の定圧比熱Cmixは、同混合気内の酸素濃度[O2]mix、及び混合気温度Tmixに大きく依存すると考えられる。ここで、混合気内の酸素濃度[O2]mixは、後述するように、噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができる。従って、混合気温度Tmixを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができれば、下記(19)式に従って、混合気の定圧比熱Cmixを微小時間Δt毎に求めることができる。
上記(19)式において、funcCmixは、混合気の酸素濃度[O2]mix、及び混合気温度Tmixを引数とする混合気の定圧比熱Cmixを求めるための関数である。なお、上記(19)式を使用して混合気の定圧比熱Cmixを微小時間Δt毎に求めていく際における[O2]mix,Tmixの引数値としては、それぞれ現時点(即ち、噴射後経過時間t)よりも微小時間Δt前の値が使用される。
<混合気のエンタルピHmix>
次に、混合気のエンタルピHmixの求め方について説明する。いま、噴射後経過時間(t−Δt)における混合気のエンタルピHmix(t−Δt)が既知である場合において、同噴射後経過時間(t−Δt)から噴射後経過時間tまでの微小時間Δtの間における混合気のエンタルピの増加分ΔHmixについて考える。この混合気のエンタルピの増加分ΔHmixとしては、微小時間Δtの間に混合気に新たに取り込まれる筒内ガスの熱エネルギーΔHgと、同微小時間Δtの間において混合気内で発生する化学反応による上記反応熱Hrとが挙げられる。
先ず、上記筒内ガスの熱エネルギーΔHgは、下記(20)式により表すことができる。ここにおいて、gは微小時間Δtの間に混合気に新たに取り込まれる筒内ガスの質量である。この質量gは、噴射後経過時間tにおける混合気形成筒内ガスの質量から噴射後経過時間(t−Δt)における混合気形成筒内ガスの質量を減じた値である。従って、上述した関係「G=stoich・λ・Qfin」を利用して下記(21)式により求めることができる。(21)式において、λ(t),λ(t−Δt)はそれぞれ、噴射後経過時間t,(t−Δt)における空気過剰率であり、上記(14)式、(15)式から求めることができる。
また、上記(20)式において、Tgは、噴射後経過時間tにおける筒内ガスの温度であり、筒内ガスの状態がIVC以降断熱変化するとの仮定のもと、下記(22)式に従って求めることができる。下記(22)式において、上述したように、TgivcはIVCにおける筒内ガス温度であり、Vg(CAivc)はIVCにおけるクランク角度CAに対応する筒内容積である。また、Vg(CA)は現時点(即ち、噴射後経過時間t)における上記筒内容積Vg(CA)である。
また、上記(20)式において、Cgは、噴射後経過時間tにおける筒内ガスの定圧比熱であり、混合気の定圧比熱Cmixを求める上記(19)式と同様、下記(23)式に従って求めることができる。下記(23)式において、funcCgは、吸気中の酸素濃度[O2]in、及び筒内ガス温度Tgを引数とする筒内ガスの定圧比熱Cgを求めるための関数である。
なお、上記(23)式を使用して筒内ガスの定圧比熱Cgを微小時間Δt毎に求めていく際における[O2]inの引数値としては、吸気酸素濃度センサ77により検出される上記吸気酸素濃度RO2inが使用される。また、上記筒内ガス温度Tgの引数値としては、現時点(即ち、噴射後経過時間t)における値が使用される。以上により、上記(20)式の右辺の項の全てを求めることができるから、同(20)式に従って上記筒内ガスの熱エネルギーΔHgを求めることができる。
次に、上記微小時間Δtの間において混合気内で発生する化学反応による反応熱Hrは、下記(24)式で表すことができる。下記(24)式において、Hfは所定の定数であり、qrは上記微小時間Δtの間において混合気内で発生する化学反応による燃料消費量である。
上記燃料消費量qrの対象となる化学反応としては、前駆物質Pの生成反応、着火反応(熱炎反応)、低温酸化反応(冷炎反応)のみならず、その他の種々の化学反応が含まれる。この燃料消費量qrは、混合気内の酸素濃度[O2]mix、混合気内の燃料濃度[Fuel]mix、混合気温度Tmixに大きく依存すると考えられるから、下記(25)式に従って表すことができる。
上記(25)式において、funcqrは、混合気内の酸素濃度[O2]mix、混合気内の燃料濃度[Fuel]mix、及び混合気温度Tmixを引数とする上記燃料消費量qrを求めるための関数である。混合気内の燃料濃度[Fuel]mixも、上記混合気内の酸素濃度[O2]mixと同様、後述するように、噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができる。上記(25)式を使用して上記燃料消費量qrを微小時間Δt毎に求めていく際における[O2]mix,[Fuel]mixの引数値としては、ぞれぞれ現時点(即ち、噴射後経過時間t)よりも微小時間Δt前の値が使用される。
また、上記(25)式の混合気温度Tmixの引数値としては化学反応前の混合気温度Tpreが使用される。この化学反応前の混合気温度Tpreは、上記(21)式にて算出される質量gの筒内ガスが混合気に新たに取り込まれた後であって、且つ、噴射後経過時間(t−Δt)からの上記微小時間Δtの間における化学反応が発生する前の段階における混合気温度であり、下記(26)式に従って求めることができる。
上記(26)式において、Mmix(t−Δt),Cmix(t−Δt)はそれぞれ、噴射後経過時間(t−Δt)における混合気質量、及び混合気の定圧比熱であって、上記(18)式、及び上記(19)式によりそれぞれ取得され得る。更には、噴射後経過時間(t−Δt)における混合気のエンタルピHmix(t−Δt)は既知である。以上により、上記化学反応前の混合気温度Tpreを求めることができる。従って、上記(25)式の右辺の引数値を全て取得することができるから、(25)式,(24)式に従って上記化学反応による反応熱Hrを求めることができる。
以上のことから、噴射後経過時間(t−Δt)における混合気のエンタルピHmix(t−Δt)が既知である場合において、同噴射後経過時間(t−Δt)から噴射後経過時間tまでの微小時間Δtの間における混合気のエンタルピの増加分ΔHmix(=ΔHg+Hr)が求められるから、噴射後経過時間tにおける混合気のエンタルピHmix(t)(=Hmix(t−Δt)+ΔHmix)を求めることができる。
更には、噴射後経過時間t=0における混合気は、筒内ガスが取り込まれる前の状態(即ち、液滴燃料のみ)であるから(図3(a)を参照)、この時点での混合気のエンタルピHmix(0)は、下記(27)式にて求めることができる。ここにおいて、Cfは燃料(蒸気)の定圧比熱(ここでは、定数)である。
また、Tfは、燃料蒸気そのものの温度であり、液体の燃料が噴射直後に燃料蒸気に変化する際の単位質量当たりの潜熱Qvaporを考慮して下記(28)式に従って求めることができる。下記(28)式において、Tcrは噴射後経過時間t=0において燃料温度センサ76により検出される液体の燃料温度である。αcrは燃料が燃料噴射用ポンプ22の吐出口近傍から燃料噴射弁21までの燃料配管23を通過する際の熱損失分を考慮するための補正係数である。
従って、噴射後経過時間t=0における混合気のエンタルピHmix(0)も求めることができる。以上より、混合気のエンタルピHmixを、噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に取得することができる。
このようにして、混合気のエンタルピHmix、混合気質量Mmix、及び混合気の定圧比熱Cmixがそれぞれ噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求められるから、上記(17)式に従って混合気温度Tmixを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができる。
<混合気内の燃料濃度[Fuel]mixの取得>
次に、混合気内の燃料濃度[Fuel]mixを取得する方法について説明する。噴射後経過時間tにおける混合気内の燃料濃度[Fuel]mixは、上記(18)式により取得される噴射後経過時間tにおける混合気質量Mmixに対する、「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する燃料の質量」の割合である。
ここで、「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する燃料の質量」は、噴射後経過時間t=0にて噴射された燃料量(指令燃料噴射量Qfin)から、噴射から現時点(噴射後経過時間t)までの間に化学反応で消費された燃料分を減じた値である。従って、噴射後経過時間tにおける混合気内の燃料濃度[Fuel]mixは、下記(29)式で表すことができる。
上記(29)式において、「Σqr」は、噴射から現時点(噴射後経過時間t)まで微小時間Δt毎に上記(25)式に従って逐次取得・更新されていくそれぞれの燃料消費量qrの和である。このように、燃料消費量qr、及び混合気質量Mmixをそれぞれ噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めることで、上記(29)式に従って混合気内の燃料濃度[Fuel]mixを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができる。
<混合気内の酸素濃度[O2]mixの取得>
次に、混合気内の酸素濃度(質量濃度)[O2]mixを取得する方法について説明する。噴射後経過時間tにおける混合気内の酸素濃度[O2]mixは、噴射後経過時間tにおける上記混合気質量Mmixに対する、「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する酸素の質量」の割合である。
ここで、「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する筒内ガスの質量」は、上述した噴射後経過時間tにおける混合気形成筒内ガスの質量Gから、噴射から現時点(噴射後経過時間t)までの間に化学反応で消費された筒内ガス分を減じた値である。上記微小時間Δtにおける燃料消費量qrの燃料と反応して同微小時間Δtの間において混合気内で化学反応により消費される筒内ガスの消費量grは、下記(30)式にて表すことができる。
従って、「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する筒内ガスの質量」は、「G−Σgr」と表すことができる。ここで、「Σgr」は、噴射から現時点(噴射後経過時間t)まで微小時間Δt毎に上記(30)式に従って逐次取得・更新されていくそれぞれの筒内ガス消費量grの和である。
「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する酸素の質量」は、上記「噴射後経過時間tにおいて混合気内に存在する筒内ガスの質量」に、筒内ガス内の酸素濃度(従って、上記吸気中の酸素濃度[O2]in)を乗じることで求めることができる。以上のことから、噴射後経過時間tにおける混合気内の酸素濃度[O2]mixは、下記(31)式で表すことができる。
このように、混合気形成筒内ガスの質量G、筒内ガス消費量gr、及び混合気質量Mmixをそれぞれ噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めることで、上記(31)式に従って混合気内の酸素濃度[O2]mixを噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に逐次求めていくことができる。
<筒内ガス圧力Pgの取得>
次に、筒内ガス圧力Pgを取得する方法について説明する。筒内ガス圧力Pgは、筒内ガスの状態がIVC以降断熱変化するとの仮定のもと、下記(32)式に従って求めることができる。下記(32)式において、上述したように、PgivcはIVCにおける筒内ガス圧力であり、Vg(CAivc)はIVCにおけるクランク角度CAに対応する筒内容積である。また、Vg(CA)は現時点(即ち、噴射後経過時間t)における上記筒内容積Vg(CA)である。以上、混合気温度Tmixの推定に必要となる各種物理量の推定方法について説明した。以上が、上述した補正後の空気過剰率λの値を利用した、任意の噴射後経過時間tにおける混合気温度Tmixの取得方法の概要である。
(燃料噴射制御の概要)
本装置は、目標着火時期を所定時期(CAref、例えば、ATDC10°)に設定し、混合気(先頭部)の着火時期を目標着火時期CArefに一致させるため、クランク角度CAがCArefとなる時点において取得された混合気温度Tmix(以下、「制御用混合気温度」と称呼する。)が所定の目標混合気温度Tmixrefになるように、燃料噴射開始時期、及び燃料噴射圧力をフィードバック制御する。
具体的には、本装置は、上述した空気過剰率λ、混合気温度Tmix等の計算を筒内ガスの量が確定するIVCの直後に開始し、燃料噴射開始時期の到来前に上記制御用混合気温度の推定を完了する。
そして、本装置は、上記制御用混合気温度が目標混合気温度Tmixrefよりも高いとき、今回の燃料噴射気筒についての燃料噴射開始時期を基本燃料噴射開始時期よりも所定量だけ遅らせ、且つ、燃料噴射圧力を基本燃料噴射圧力よりも所定量だけ低くする。これにより、今回の燃料噴射気筒についての目標着火時期CArefにおける実際の混合気温度が低くなるように制御され、この結果、今回の燃料噴射気筒の実際の着火時期が目標着火時期CArefに一致せしめられる。
一方、上記制御用混合気温度が目標混合気温度Tmixrefよりも低いとき、今回の燃料噴射気筒についての燃料噴射開始時期を基本燃料噴射開始時期よりも所定量だけ早め、且つ、燃料噴射圧力を基本燃料噴射圧力よりも所定量だけ高くする。これにより、今回の燃料噴射気筒についての目標着火時期CArefにおける実際の混合気温度が高くなるように制御され、この結果、今回の燃料噴射気筒の実際の着火時期が目標着火時期CArefに一致せしめられる。以上が、燃料噴射制御の概要である。
(実際の作動)
次に、上記のように構成された内燃機関の混合気濃度推定装置を含んだ混合気温度推定装置の実際の作動について説明する。
<空気過剰率、及び混合気温度の算出>
CPU61は、図8〜図12に一連のフローチャートにより示した空気過剰率、及び混合気温度の算出を行うためのルーチンを所定時間の経過毎に、気筒毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ800から処理を開始し、ステップ805に進んで吸気弁Vinが開状態から閉状態へと変化したか否か(即ち、IVCが到来したか否か)を判定し、「No」と判定する場合、ステップ895に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、或る気筒においてIVCが到来したものとすると、CPU61はステップ805に進んだとき「Yes」と判定してステップ810に進み、IVC時クランク角度CAivcをクランクポジションセンサ74から取得される現時点での実クランク角度CAactの値に設定し、IVC時筒内ガス圧力Pgivcを吸気管圧力センサ73から得られる現時点での吸気管圧力Pbの値に設定し、IVC時筒内ガス温度Tgivcを吸気温センサ72から得られる現時点での吸気温度Tbの値に設定し、吸気酸素濃度[O2]inを吸気酸素濃度センサ77から得られる現時点での吸気酸素濃度RO2inの値に設定する。
続いて、CPU61はステップ815に進んで、上記設定されたIVC時筒内ガス圧力Pgivcと、上記設定されたIVC時筒内ガス温度Tgivcと、上記(5)式とに基づいて筒内ガスの全質量Mgを求める。
次いで、CPU61はステップ820に進み、アクセル開度センサ75により得られる現時点でのアクセル開度Accp、クランクポジションセンサ74から取得される現時点でのエンジン回転速度NE、及び図13に示したテーブル(マップ)MapQfinから指令燃料噴射量Qfin(実際には、燃料噴射期間TAU)を求める。テーブルMapQfinは、アクセル開度Accp及びエンジン回転速度NEと指令燃料噴射量Qfinとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
次に、CPU61はステップ825に進み、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及び図14に示したテーブルMapCAinjbaseから基本燃料噴射開始時期(クランク角度)CAinjbaseを決定する。テーブルMapCAinjbaseは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと基本燃料噴射開始時期CAinjbaseとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
続いて、CPU61はステップ830に進んで、指令燃料噴射量Qfin、エンジン回転速度NE、及び図15に示したテーブルMapPcrbaseから基本燃料噴射圧力Pcrbaseを決定する。テーブルMapPcrbaseは、指令燃料噴射量Qfin及びエンジン回転速度NEと基本燃料噴射圧力Pcrbaseとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
次に、CPU61はステップ835に進み、燃料温度センサ76から得られる現時点での燃料温度Tcrと、上記(28)式とに基づいて燃料温度Tfを求める。続いて、CPU61はステップ840に進んで、上記吸気酸素濃度[O2]inと、[O2]inを引数とする筒内ガス理論空燃比stoichを求めるための関数funcstoichとに基づいて筒内ガス理論空燃比stoichを求める。
次に、CPU61はステップ845に進み、現時点でのエンジン回転速度NEと、微小時間Δt(例えば、0.1msec)と、NE,Δtを引数とする微小クランク角度ΔCAを求めるための関数funcΔCAとに基づいて、同微小時間Δtに相当するクランク角度である微小クランク角度ΔCAを求める。この微小クランク角度ΔCAは、エンジン回転速度NEが現時点(即ち、IVC直後)での値である場合における、微小時間Δtに相当するクランク角度である。
続いて、CPU61はステップ850に進み、先のステップ815にて求めた筒内ガスの全質量Mgを、先のステップ825にて求めた基本燃料噴射開始時期CAinjbaseから得られる燃料噴射開始時筒内容積Vg(CAinjbase)で除することで燃料噴射開始時筒内ガス密度ρg0を求める。
続いて、CPU61はステップ855に進み、先のステップ610にて求めたIVC時筒内ガス圧力Pgivcと、上記IVC時筒内容積Vg(CAivc)と、上記燃料噴射開始時筒内容積Vg(CAinjbase)と、上記(4)式に相当する式とに基づいて燃料噴射開始時筒内ガス圧力Pg0を求める。
次に、CPU61はステップ860に進んで、先のステップ830にて求めた基本燃料噴射圧力Pcrbaseから上記燃料噴射開始時筒内ガス圧力Pg0を減じることで有効噴射圧力ΔPを求め、続くステップ865にて、上記求めた有効噴射圧力ΔPと、筒内ガス密度ρg0と、テーブルMapθとに基づいて噴霧角θ(図3を参照)を求める。
次いで、CPU61は図9のステップ905に進み、空気過剰率前回値λbを初期値「0」に設定し、続くステップ910にて混合気形成筒内ガス質量Gの値を初期値「0」に設定するとともに、続くステップ915にて燃料消費量積算値sumqr、及び筒内ガス消費量積算値sumgrを共に初期値「0」に設定する。
続いて、CPU61はステップ920に進んで、混合気のエンタルピHmixを、上記(27)式に相当する式に従って、初期値(即ち、先のステップ820にて求めた指令燃料噴射量Qfinと、燃料の定圧比熱Cfと、先のステップ835にて求めた燃料温度Tfの積)に設定する。
次に、CPU61はステップ925に進み、混合気の定圧比熱Cmixを初期値である上記燃料の定圧比熱Cfに設定し、続くステップ930にて混合気質量Mmixを初期値である指令燃料噴射量Qfinに設定する。
次いで、CPU61はステップ935に進んで、酸素濃度[O2]mixを初期値「0」に設定するとともに、混合気内の燃料濃度[Fuel]mixを初期値「1」に設定する。続いて、CPU61はステップ940に進み、噴射後経過時間tを初期値「0」に設定するとともに、クランク角度CAを初期値である基本燃料噴射開始時期CAinjbaseに設定する。これにより、噴射後経過時間tが基本燃料噴射開始時期CAinjbaseからカウントされることになる。
続いて、CPU61はステップ945に進んで、混合気温度Tmixを初期値である、ステップ835にて求められている燃料温度Tfに設定し、続くステップ950にて混合気到達距離Xを初期値「0」に設定する。
そして、CPU61はステップ955に進み、フラグXBU、フラグXVAの値を共に初期値「0」に設定する。ここで、フラグXBUは、その値が「1」のとき混合気のブレークアップが発生していることを示し、その値が「0」のとき混合気のブレークアップが発生していないことを示す。フラグXVAは、その値が「1」のとき混合気内の液滴燃料が蒸発していることを示し、その値が「0」のとき混合気内の液滴燃料が蒸発していないことを示す。このようにして、各種初期値が決定される。
次に、CPU61は図10のルーチンに進み、(補正後の)空気過剰率λの算出のための処理を開始する。具体的には、CPU61は先ずステップ1005に進み、噴射後経過時間tの値(現時点では、「0」)を微小時間Δtだけ増大・更新させるとともに、クランク角度CAの値(現時点では、「CAinjbase」)を微小クランク角度ΔCAだけ増大・更新させる。このように、クランク角度CAの値が噴射後経過時間tに対応する値に維持されていく。これにより、以降、噴射後経過時間t=Δtとなり、クランク角度CA=CAinjbase+ΔCAとなる。
続いて、CPU61はステップ1010に進んで、先のステップ815にて求めた筒内ガスの全質量Mgを、上記ステップ1005にて更新されたクランク角度CAに対応する筒内容積Vg(CA)で除することで噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における筒内ガス密度ρgを求める。
次に、CPU61はステップ1015に進んで、上記ステップ810にて求められたIVC時筒内ガス圧力Pgivcと、上記IVC時筒内容積Vg(CAivc)と、上記クランク角度CAに対応する筒内容積Vg(CA)と、上記(32)式とに基づいて噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における筒内ガス圧力Pgを求める。
次いで、CPU61はステップ1020に進み、上記ステップ810にて求められたIVC時筒内ガス温度Tgivcと、上記IVC時筒内容積Vg(CAivc)と、上記クランク角度CAに対応する筒内容積Vg(CA)と、上記(22)式とに基づいて噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における筒内ガス温度Tgを求める。
次に、CPU61はステップ1025に進んで、上記ステップ810にて求められた上記吸気酸素濃度[O2]inと、ステップ1020にて求めた筒内ガス温度Tgと、[O2]in,Tgを引数とする筒内ガスの定圧比熱Cgを求めるための関数funcCgと、上記(23)式とに基づいて噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における筒内ガスの定圧比熱Cgを求める。
続いて、CPU61はステップ1030に進み、先のステップ1010にて求めた筒内ガス密度ρgと、先のステップ865にて求めた噴霧角θと、先のステップ860にて求めた有効噴射圧力ΔPと、先のステップ1005にて更新した噴射後経過時間tと、上記(3)式とに基づいて基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを求める。
次いで、CPU61はステップ1035を経由して図18にフローチャートにより示した希釈係数K1を決定するためのルーチンの処理を開始する。即ち、CPU61はステップ1800からステップ1805に進むと、フラグXBUの値が「0」であるか否かを判定する。
現時点では、先のステップ955の処理によりフラグXBUの値は「0」になっている。従って、CPU61はステップ1805にて「Yes」と判定してステップ1810に進み、先のステップ1010にて求めた筒内ガス密度ρgと、ρgを引数とする上記(6)式に対応する関数funcXbreakとに基づいてブレークアップ発生位置Xbreakを求める。
続いて、CPU61はステップ1815に進んで、先のステップ1010にて求めた筒内ガス密度ρgと、先のステップ865にて求めた噴霧角θと、先のステップ860にて求めた有効噴射圧力ΔPと、先のステップ1005にて更新した噴射後経過時間tと、上記(8)式とに基づいて混合気移動速度dX/dtを求める。
次に、CPU61はステップ1820に進み、上記(7)式に従って、混合気到達距離Xを、その時点での値(現時点では、ステップ950の処理により「0」)に、上記求めた混合気移動速度dX/dtに微小時間Δtを乗じた値「dX/dt・Δt」を加えた値に更新する。これにより、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気到達距離Xが求められる。
次いで、CPU61はステップ1825に進んで、上記更新された混合気到達距離Xがステップ1810にて求めたブレークアップ発生位置Xbreak未満である(即ち、ブレークアップが発生していない)か否かを判定する。現時点は噴射開始直後に対応するから混合気到達距離Xはブレークアップ発生位置Xbreak未満である。従って、CPU61はステップ1825にて「Yes」と判定してステップ1830に進み、希釈係数K1の値を「1」に設定してステップ1895に進む。
一方、(その後、図18のルーチン(特に、ステップ1820)が繰り返し実行されて)混合気到達距離Xがブレークアップ発生位置Xbreak以上となっている場合、CPU61はステップ1825にて「No」と判定してステップ1835に進み、フラグXBUの値を「0」から「1」に変更し、その後、ステップ1840に進んで、希釈係数K1の値を値α(>1)に設定してステップ1895に進む。この場合、以降、フラグXBUの値が「1」になっているから、CPU61はステップ1805に進んだとき、「No」と判定してステップ1840に直ちに進むようになる。このようにして、希釈係数K1の値は、ブレークアップが発生する前では「1」に設定され、ブレークアップが発生した後は値αに設定される。
CPU61はステップ1895を経由して図10のステップ1035に戻ると、次に、ステップ1040を経由して図19にフローチャートにより示した希釈係数K2を決定するためのルーチンの処理を開始する。即ち、CPU61はステップ1900からステップ1905に進むと、フラグXVAの値が「0」であるか否かを判定する。
現時点では、先のステップ955の処理によりフラグXVAの値は「0」になっている。従って、CPU61はステップ1905にて「Yes」と判定してステップ1910に進み、先のステップ1015にて求めた筒内ガス圧力Pgと、Pgを引数とする燃料の蒸発温度Tvapを求めるための関数funcTvapとに基づいて燃料の蒸発温度Tvapを求める。
続いて、CPU61はステップ1915に進んで、混合気温度Tmixの値(現時点では、ステップ945の処理により燃料温度Tfの値と等しい)がステップ1910にて求めた燃料の蒸発温度Tvap未満である(即ち、液滴燃料が蒸発していない)か否かを判定する。現時点は噴射開始直後に対応するから混合気温度Tmixは蒸発温度Tvap未満である。従って、CPU61はステップ1915にて「Yes」と判定してステップ1920に進み、希釈係数K2の値を「1」に設定してステップ1995に進む。
一方、(その後、図19のルーチンが繰り返し実行されて)後述するステップ1145にて繰り返し更新されている混合気温度Tmixがステップ1910にて求めた蒸発温度Tvap以上となっている場合、CPU61はステップ1915にて「No」と判定してステップ1925に進み、フラグXVAの値を「0」から「1」に変更し、その後、ステップ1930に進んで、混合気温度Tmixと、図4に示したグラフに対応するテーブルとに基づいて希釈係数K2の値(<1)を決定してステップ1995に進む。この場合、以降、フラグXVAの値が「1」になっているから、CPU61はステップ1905に進んだとき、「No」と判定してステップ1930に直ちに進むようになる。このようにして、希釈係数K2の値は、液滴燃料が蒸発する前では「1」に設定され、液滴燃料が蒸発した後は「1」より小さい値に設定される。
CPU61はステップ1995を経由して図10のステップ1040に戻ると、次に、ステップ1045を経由して図20にフローチャートにより示した希釈係数K3を決定するためのルーチンの処理を開始する。即ち、CPU61はステップ2000からステップ2005に進むと、フラグXVAの値が「0」であるか否かを判定する。
現時点では、上述のごとく、フラグXVAの値は「0」になっている。従って、CPU61はステップ2005にて「Yes」と判定してステップ2010に進んで、希釈係数K3の値を「1」に設定してステップ2095に進む。
一方、(その後、上述したステップ1925の処理が実行されて)フラグXVAの値が「0」から「1」に変更されている場合、CPU61はステップ2005にて「No」と判定してステップ2015に進み、ステップ1015、後述するステップ1115、1145にてそれぞれ繰り返し更新されている筒内ガス圧力Pg、混合気質量Mmix、混合気温度Tmixと、及び上記(10)式、(11)式に相当するステップ2015内に記載の式とに基づいて半径r0を求める。
続いて、CPU61はステップ2020に進み、後述するステップ1115、1135、1175にてそれぞれ繰り返し更新されている混合気質量Mmix、反応熱Hr、混合気の定圧比熱Cmixと、上記(13)式とに基づいて温度上昇量ΔTを求める。次に、CPU61はステップ2025に進み、上記混合気温度Tmixと、上記温度上昇量ΔTと、ステップ2025内に記載の式とに基づいて値Aを求め、続くステップ2030にて、上記半径r0と、値Aと、上記(9)式、(12)式に相当するステップ2030内に記載の式とに基づいて膨張速度dr/dtを求める。
次いで、CPU61はステップ2035に進み、上記求めた膨張速度dr/dtに係数Krを乗じることで乱れ強度Bを求め、続くステップ2040にて、乱れ強度Bの値と、図6に示したグラフに対応するテーブルとに基づいて希釈係数K3の値(>1)を決定してステップ2095に進む。この場合、以降も、フラグXVAの値が「1」になっているから、CPU61はステップ2005に進んだとき「No」と判定して、ステップ2015〜2040の処理を繰り返し実行する。このようにして、希釈係数K3の値は、液滴燃料が蒸発する前では「1」に設定され、液滴燃料が蒸発した後は「1」より大きい値に設定される。
CPU61はステップ2095を経由して図10のステップ1045に戻ると、次に、ステップ1050に進んで、先のステップ1030にて求めた基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseに上記希釈係数K1,K2,K3を乗じることで補正後混合気希釈速度dλ/dtを求める。
続いて、CPU61はステップ1055に進んで、上記(15)式に従って、補正後の空気過剰率λを、その時点での空気過剰率前回値λb(現時点では、ステップ905の処理により「0」)に、上記求めた補正後混合気希釈速度dλ/dtに微小時間Δtを乗じた値「dλ/dt・Δt」を加えた値に更新する。これにより、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気の補正後の空気過剰率λが求められる。
次に、CPU61は図11のステップ1105に進み、先のステップ840にて求めた筒内ガス理論空燃比stoichと、ステップ1055にて求めた補正後の空気過剰率λと、空気過剰率前回値λb(現時点では、ステップ905の処理により「0」。次回からは、後述するステップ1150にて設定されている値)と、ステップ820にて設定された指令燃料噴射量Qfinと、上記(21)式に相当する式とに基づいて微小時間Δt(噴射後経過時間(t−Δt)〜tの間)において混合気に新たに取り込まれた筒内ガス質量gを求める。
続いて、CPU61はステップ1110に進んで、混合気形成筒内ガス質量Gを、その時点での値(現時点では、ステップ910の処理により「0」)に上記新たに取り込まれた筒内ガス質量gを加えた値に更新する。これにより、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気形成筒内ガス質量Gが求められる。
次に、CPU61はステップ1115に進み、混合気質量Mmixを、その時点での値(現時点では、ステップ930の処理により指令燃料噴射量Qfinと等しい)に上記新たに取り込まれた筒内ガス質量gを加えた値に更新する。これにより、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気質量Mmixが求められる。
続いて、CPU61はステップ1120に進んで、化学反応前の混合気のエンタルピHpreを、その時点での混合気のエンタルピHmix(現時点では、ステップ920の処理により値「Qfin・Cf・Tf」)に、上記(20)式に従って求められる「上記新たに取り込まれた筒内ガスの熱エネルギーΔHg=g・Cg・Tg」を加えた値に設定する。
次に、CPU61はステップ1125に進み、上記求めた化学反応前の混合気のエンタルピHpreを、上記ステップ1115にて求めた混合気質量Mmixにその時点での混合気の定圧比熱Cmix(現時点では、ステップ925の処理により燃料の定圧比熱Cf。次回からは、後述するステップ1175にて設定されている値)を乗じた値で除することにより上記(26)式に相当する式に従って化学反応前の混合気の温度Tpreを求める。
次いで、CPU61はステップ1130に進んで、その時点での混合気内の酸素濃度[O2]mix(現時点では、ステップ935の処理により「0」。次回からは、後述するステップ1170にて設定されている値)と、燃料濃度[Fuel]mix(現時点では、ステップ935の処理により「1」。次回からは、後述するステップ1165にて設定されている値)と、上記求めた化学反応前の混合気の温度Tpreと、上記(25)式とに基づいて微小時間Δt(噴射後経過時間(t−Δt)〜tの間)において混合気内で発生する化学反応による燃料消費量qrを求める。
続いて、CPU61はステップ1135に進み、上記求めた消費燃料量qrと、上記(24)式とに基づいて微小時間Δt(噴射後経過時間(t−Δt)〜tの間)において混合気内で発生する化学反応による反応熱Hrを求め、続くステップ1140にて混合気のエンタルピHmixを、上記求めた化学反応前の混合気のエンタルピHpreに上記求めた反応熱Hrを加えた値に設定・更新する。これにより、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気のエンタルピHmixが求められる。
そして、CPU61はステップ1145に進んで、上記ステップ1140にて求めた混合気のエンタルピHmixと、上記ステップ1115にて求めた混合気質量Mmixと、その時点での混合気の定圧比熱Cmix(現時点では、ステップ925の処理により燃料の定圧比熱Cf。次回からは、後述するステップ1175にて設定されている値)と、上記(17)式とに基づいて混合気温度Tmixを算出する。これにより、噴射後経過時間t=Δt(従って、クランク角度CA=CAinj+ΔCA)における混合気温度Tmixが求められる。
次に、CPU61はステップ1150に進んで、次回の計算の準備のため、空気過剰率前回値λbを上記ステップ1055にて求めた空気過剰率λの値に設定する。この値は、以降、上述したステップ1055にて使用される。このようにして、噴射後経過時間tにおける混合気温度Tmixが算出される。
次に、CPU61はステップ1155に進み、上記ステップ1130にて求めた微小時間Δt(噴射後経過時間(t−Δt)〜tの間)において混合気内で発生する化学反応による燃料消費量qrと、ステップ840にて求めた筒内ガス理論空燃比stoichと、上記(30)式とに基づいて、微小時間Δt(噴射後経過時間(t−Δt)〜tの間)において混合気内で発生する化学反応による筒内ガス消費量grを求める。
続いて、CPU61はステップ1160に進んで、燃料消費量積算値sumqrを、その時点での値(現時点では、ステップ915の処理により「0」)にステップ1130にて求めた上記燃料消費量qrを加えた値に設定・更新し、筒内ガス消費量積算値sumgrを、その時点での値(現時点では、ステップ915の処理により「0」)にステップ1155にて求めた上記筒内ガス消費量grを加えた値に設定・更新する。これにより、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における燃料消費量積算値sumqr、及び筒内ガス消費量積算値sumgrが求められる。
次いで、CPU61はステップ1165に進み、ステップ820にて求めた指令燃料噴射量Qfinと、上記求めた燃料消費量積算値sumqrと、ステップ1115にて求めた混合気質量Mmixと、上記(29)式に相当する式とに基づいて、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気内の燃料濃度[Fuel]mixを求める。
次に、CPU61はステップ1170に進んで、ステップ1110にて求めた混合気形成筒内ガス質量Gと、上記求めた筒内ガス消費量積算値sumgrと、ステップ810にて設定された吸気酸素濃度[O2]inと、ステップ1115にて求めた混合気質量Mmixと、上記(31)式とに基づいて、噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気内の酸素濃度[O2]mixを求める。
続いて、CPU61はステップ1175に進み、上記ステップ1170にて求めた混合気内の酸素濃度[O2]mixと、ステップ1145にて求めた混合気温度Tmixと、上記(19)式とに基づいて噴射後経過時間t(従って、クランク角度CA)における混合気の定圧比熱Cmixを求める。この値は、以降、ステップ1125、1145にて使用される。
次いで、CPU61は図12のステップ1205に進み、クランク角度CAが目標着火時期CArefに一致したか否かを判定する。現時点では、上述のごとく、クランク角度CAは、基本燃料噴射開始時期CAinjbaseに微小クランク角度ΔCAを加えた値であるから目標着火時期CArefに達していない。
従って、現時点では、CPU61はステップ1205にて「No」と判定して図10のステップ1005に戻り、噴射後経過時間t(現時点では、「1・Δt」)を微小時間Δtだけ増大・更新させるとともに、クランク角度CA(現時点では、「CAinjbase+ΔCA」)を微小クランク角度ΔCAだけ増大・更新させた後、上述した図10のステップ1010〜図12のステップ1205の処理を再び実行する。
これにより、噴射後経過時間t=2・Δt(クランク角度CA=CAinjbase+2・ΔCA)における、混合気の空気過剰率λ(ステップ1055を参照。)、混合気温度Tmix(ステップ1145を参照。)、及び各種濃度([Fuel]mix,[O2]mix。ステップ1165、1170を参照。)が算出される。
そして、図12のステップ1205の判定において「No」と判定される毎に、図10のステップ1005〜図12のステップ1205の処理が繰り返し実行されていく。これにより、図12のステップ1205の判定において「No」と判定される限りにおいて、混合気の空気過剰率λ、混合気温度Tmix、及び各種濃度([Fuel]mix,[O2]mix)が微小時間Δt毎に(即ち、CAinjbaseから微小クランク角度ΔCA毎に)更新されていく。
そして、クランク角度CAが目標着火時期CArefに達した場合、CPU61は図12のステップ1205に進んだとき「Yes」と判定してステップ1210以降に進む。
CPU61はステップ1210に進むと、混合気温度偏差ΔTmixを、上記目標混合気温度Tmixrefからステップ1145にて求められている現時点での混合気温度Tmix(上記制御用混合気温度)を減じた値に設定する。
続いて、CPU61はステップ1215に進んで、噴射時期補正値Δθを、上記混合気温度偏差ΔTmixと図16に示したテーブルMapΔθとから決定する。テーブルMapΔθは、混合気温度偏差ΔTmixと噴射時期補正値Δθとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
その後、CPU61はステップ1120に進んで、噴射圧力補正値ΔPcrを、上記混合気温度偏差ΔTmixと図17に示したテーブルMapΔPcrとから決定する。テーブルMapΔPcrは、混合気温度偏差ΔTmixと噴射圧力補正値ΔPcrとの関係を規定するテーブルであり、ROM62内に格納されている。
次いで、CPU61はステップ1225に進み、基本燃料噴射開始時期CAinjbaseを噴射時期補正値Δθで補正して最終燃料噴射開始時期CAinjfinを決定する。これにより、混合気温度偏差ΔTmixに応じて噴射時期が補正されることになる。この場合、図16から明らかなように、混合気温度偏差ΔTmixが正の大きい値になるほど噴射時期補正値Δθが正の大きな値となって最終燃料噴射開始時期CAinjfinが進角側となり、混合気温度偏差ΔTmixが負の大きい値(絶対値が大きい値)になるほど噴射時期補正値Δθは負の大きな値となって最終燃料噴射開始時期CAinjfinが遅角側に移行される。
続いて、CPU61はステップ1230に進み、基本燃料噴射圧力Pcrbaseを噴射圧力補正値ΔPcrで補正して指令最終燃料噴射圧力Pcrfinを決定する。これにより、混合気温度偏差ΔTmixに応じて噴射圧力が補正されることになる。この場合、図17から明らかなように、混合気温度偏差ΔTmixが正の大きい値になるほど噴射圧力補正値ΔPcrが正の大きな値となって指令最終燃料噴射圧力Pcrfinが高圧側となり、同混合気温度偏差ΔTmixが負の大きい値(絶対値が大きい値)になるほど噴射圧力補正値ΔPcrは負の大きな値となって指令最終燃料噴射圧力Pcrfinが低圧側に移行される。
そして、CPU61はステップ1235に進むと、実際の燃料噴射圧力が上記設定された指令最終燃料噴射圧力Pcrfinになるように燃料噴射用ポンプ22(の駆動回路)に対して制御指示を行い、ステップ895に進んで図8〜図12の一連の本ルーチンを一旦終了する。以降、CPU61は、次のIVCが到来するまでの間、ステップ805に進む毎に「No」と判定し続ける。
この結果、本ルーチンの実行により、IVCが到来する毎に、燃料噴射形態(噴射量、噴射圧力、噴射時期)が決定されるとともに空気過剰率λ、混合気温度Tmix等が直ちに推定され、係る推定結果に基づいて噴射時期、噴射圧力が補正されていく。
また、CPU61は、図21にフローチャートにより示した燃料噴射制御を行うためのルーチンを所定時間の経過毎に、気筒毎に、繰り返し実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPU61はステップ2100から処理を開始し、ステップ2105に進んで実クランク角度CAactが先のステップ1225にて決定されている最終燃料噴射開始時期CAinjfinに一致したか否かを判定し、「No」と判定する場合、ステップ2195に直ちに進んで本ルーチンを一旦終了する。
いま、実クランク角度CAactが最終燃料噴射開始時期CAinjfinに一致したものとすると、CPU61はステップ2110に進んで、対応する燃料噴射弁21に対してステップ820にて決定されている指令燃料噴射量Qfinの燃料の噴射指示(具体的には、燃料噴射期間TAUに亘る開弁指示)を行い、ステップ2195に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、指令燃料噴射量Qfinの燃料が上記指令最終燃料噴射圧力Pcrfinをもって噴射される。
以上、説明したように、本発明による混合気濃度推定装置の実施形態を含んだ混合気温度推定装置によれば、運動量保存則を利用して得られる式(上記(3)式を参照)から算出される基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に、ブレークアップ、蒸発、及び熱膨張にそれぞれ対応する希釈係数K1,K2,K3を乗じた値である補正後混合気希釈速度dλ/dt(=(dλ/dt)base・K1・K2・K3)を、噴射後経過時間t=0から微小時間Δt(例えば、0.1msec)毎に求める。
希釈係数K1,K2,K3は、噴射後経過時間t=0では全て「1」に設定される。混合気のブレークアップが発生すると(図7のt=t1を参照)、それ以降、K1のみが値α(>1、一定値)に変更される。混合気内の液滴燃料が蒸発すると(図7のt=t2)、それ以降、希釈係数K2は「1」未満の値であって混合気温度Tmixが高いほどより小さい値(図4を参照)に設定されるとともに、希釈係数K3は「1」より大きい値であって膨張速度dr/dt(乱れ強度B)が大きいほどより大きい値(図6を参照)に設定される。
これにより、混合気が燃焼室内を移動していく過程において燃料と筒内ガスとが混ざり合う程度を変化させる現象となる混合気のブレークアップ、混合気内の液滴燃料の蒸発、及び気体としての混合気の熱膨張が考慮されて補正後混合気希釈速度dλ/dtが噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に算出される。
そして、それぞれの補正後混合気希釈速度dλ/dtの値を時間で順に積分(積算)していくことで混合気の空気過剰率λが噴射後経過時間t=0から微小時間Δt毎に求められる。従って、混合気のブレークアップ、混合気内の液滴燃料の蒸発、及び気体としての混合気の熱膨張が考慮されて混合気の空気過剰率λが精度良く算出され得る。
更には、このように精度良く算出された空気過剰率λを利用して噴射後経過時間tにおける混合気温度Tmixが算出されるから、混合気温度Tmixも精度良く算出され得る。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に、ブレークアップ、蒸発、及び熱膨張にそれぞれ対応する希釈係数K1,K2,K3を全て乗じることで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正しているが、希釈係数K1,K2,K3のうちの少なくとも1つを基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseに乗じることで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正してもよい。
また、上記実施形態においては、混合気内の液滴燃料が蒸発した時点以降、希釈係数K2を「1」未満の値であって混合気温度Tmixに応じた値に設定しているが、希釈係数K2を「1」未満の一定値に設定してもよい。同様に、混合気内の液滴燃料が蒸発した時点以降、希釈係数K3を「1」より大きい値であって乱れ強度Bに応じた値に設定しているが、希釈係数K3を「1」より大きい一定値に設定してもよい。
また、上記実施形態においては、ブレークアップ、蒸発、及び熱膨張にそれぞれ対応する希釈係数K1,K2,K3を求め、基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に希釈係数K1,K2,K3を乗じることで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正しているが、ブレークアップ、蒸発、及び熱膨張に対応する補正値をそれぞれ求め、基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseの値に各補正値をそれぞれ加減算することで基本混合気希釈速度(dλ/dt)baseを補正してもよい。
加えて、上記実施形態においては、混合気内の液滴燃料が蒸発した時点以降において希釈係数K3を求めるに際し、混合気の膨張速度dr/dt(従って、乱れ強度B)を球形状の混合気が熱膨張すると仮定して算出しているが、楕円体、多面体、垂体等の形状を呈した混合気が熱膨張すると仮定して混合気の膨張速度(従って、乱れ強度B)を算出してもよい。
21…燃料噴射弁、60…電気制御装置、61…CPU、72…吸気温センサ、73…吸気管圧力センサ、74…クランクポジションセンサ、76…燃料温度センサ、77…吸気酸素濃度センサ