以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具10を示す正面図である。また、図2は、図1のII-II 線方向矢視図であり、図3は、図1のIII-III 線方向矢視図であり、図4は、図2のIV-IV 線断面図である。
これらの図に示すように、この車両用照明灯具10は、ヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に、車両前後方向に延びる光軸Ax1、Ax2を有する2つの灯具ユニット20、40が、左右に隣接するように配置された状態で収容されてなっている。
灯具ユニット20は、上端縁に水平カットオフラインを有する配光パターンを形成するための灯具ユニットであり、灯具ユニット40は、上端縁に斜めカットオフラインを有する配光パターンを形成するための灯具ユニットである。
これら各灯具ユニット20、40は、いずれも図示しないエイミング機構を介してランプボディ12に傾動可能に支持されており、これら各エイミング機構によるエイミング調整が完了した段階では、その光軸Ax1、Ax2は、車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びるようになっている。
次に、灯具ユニット20の詳細な構成について説明する。
図1、2および4に示すように、この灯具ユニット20は、その光軸Ax1上に配置された投影レンズ22と、この投影レンズ22の後側焦点F1よりも後方側において、光軸Ax1に関して左右対称の位置関係で配置された2つの光源ユニット30A、30Bと、上面28aが光軸Ax1を含む水平面として構成された光制御部材28とを備えてなっている。
投影レンズ22は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸レンズで構成されており、光制御部材28の前端部に固定支持されている。
右側に位置する光源ユニット30Aは、灯具前方へ向けて光軸Ax1寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax1a上において鉛直上向きに配置された発光素子24Aと、この発光素子24Aからの光を前方へ向けて基準軸Ax1a寄りに反射させるリフレクタ26Aとを備えてなっている。一方、左側に位置する光源ユニット30Bは、灯具前方へ向けて光軸Ax1寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax1b上において鉛直上向きに配置された発光素子24Bと、この発光素子24Bからの光を前方へ向けて基準軸Ax1b寄りに反射させるリフレクタ26Bとを備えてなっている。
各発光素子24A、24Bは、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形の発光チップ24aを有する白色発光ダイオードであって、その発光チップ24aが光軸Ax1aを含む水平面上に鉛直上向きになるように配置された状態で、光制御部材28の後端部に形成された各光源支持凹部28bの上面に固定されている。
各リフレクタ26A、26Bは、各発光素子24A、24Bに対応する位置において、各発光素子24A、24Bを上方側から覆うように配置されている。その際、各リフレクタ26A、26Bは互いに一体で構成されており、その周縁下端部において光制御部材28の上面28aに固定されている。
これら各リフレクタ26A、26Bの反射面26aは、その基準軸Ax1a、Ax1bを含む断面形状が略楕円形状に設定されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そして、これら各リフレクタ26A、26Bは、各発光素子24A、24Bからの光を前方へ向けてその基準軸Ax1a、Ax1b寄りに反射させて、鉛直面内においては投影レンズ22の後側焦点F1の前方近傍位置に略収束させるとともに、水平面内においては後側焦点F1よりもかなり前方の位置に略収束させるようになっている。
光制御部材28は、その上面28aにアルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されており、これにより該上面28aは反射面として構成されている。この上面28aの前端縁28a1は、その投影レンズ22の後方側に位置する部分が、該投影レンズ22の後側焦点F1を含む後側焦点面に沿って略円弧状に延びるように形成されている。
そして、この光制御部材28は、その上面28aにおいて各リフレクタ26A、26Bの反射面26aからの反射光の一部の直進を阻止して投影レンズ22からの上方出射光を除去するようになっている。その際、光制御部材28の上面28aは反射面として構成されているので、この上面28aに入射した各リフレクタ26A、26Bからの反射光は、図4に示すように上向きに反射して投影レンズ22に入射し、この投影レンズ22から下向き光として出射することとなる。
次に、灯具ユニット40の詳細な構成について説明する。
図1および3に示すように、この灯具ユニット40は、その光軸Ax2上に配置された投影レンズ42と、この投影レンズ42の後側焦点F2よりも後方側において、光軸Ax2に関して略左右対称の位置関係で配置された2つの光源ユニット50A、50Bと、上面48aが光軸Ax2を含むとともに水平面に対して右側へ15°傾斜した下向き傾斜面として構成された光制御部材48とを備えてなっている。
投影レンズ42は、上記投影レンズ22と全く同様の構成を有しており、光制御部材48の前端部に固定支持されている。
右側に位置する光源ユニット50Aは、灯具前方へ向けて光軸Ax2寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax2a上において、鉛直上向きから右側へ15°傾斜した方向に斜め上向きに配置された発光素子44Aと、この発光素子44Aからの光を前方へ向けて基準軸Ax2a寄りに反射させるリフレクタ46Aとを備えてなっている。一方、左側に位置する光源ユニット50Bは、灯具前方へ向けて光軸Ax2寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax2b上において上記斜め上向きに配置された発光素子44Bと、この発光素子44Bからの光を前方へ向けて基準軸Ax2b寄りに反射させるリフレクタ46Bとを備えてなっている。
その際、これら2つの基準軸Ax2a、Ax2bの、光軸Ax2寄りの傾斜角度は、基準軸Ax2aよりも基準軸Ax2bの方が大きい値に設定されている。そして、基準軸Ax2aは、投影レンズ42の後側焦点F2からやや右側に離れた位置でその後側焦点面(すなわち光制御部材48の上面48aの前端縁48a1)と交差しており、基準軸Ax2bは投影レンズ42の後側焦点F2付近でその後側焦点面と交差している。
各発光素子44A、44Bは、上記各発光素子24A、24Bと同様、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形の発光チップ44aを有する白色発光ダイオードであって、その発光チップ44aが光軸Ax2を含む下向き傾斜面上において斜め上向きに配置された状態で、光制御部材48の後端部に形成された各光源支持凹部48bの上面に固定されている。
各リフレクタ46A、46Bは、各発光素子44A、44Bに対応する位置において、これら各発光素子44A、44Bを上方側から覆うように配置されている。その際、各リフレクタ46A、46Bは互いに一体で構成されており、その周縁下端部において光制御部材48の上面48aに固定されている。
これら各リフレクタ46A、46Bの反射面46aは、その基準軸Ax2a、Ax2bを含む断面形状が略楕円形状に設定されており、その離心率が上面48aと垂直な断面から該上面48aに沿った断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そして、これら各リフレクタ46A、46Bは、各発光素子44A、44Bからの光を前方へ向けてその基準軸Ax2a、Ax2b寄りに反射させて、上面48aと垂直な平面内においては投影レンズ42の後側焦点F2の前方近傍位置に略収束させるとともに、上面48aに沿った平面内においては後側焦点F2よりもある程度前方の位置に略収束させるようになっている。
その際、これら各リフレクタ46A、46Bの反射面46aの各断面を構成する楕円の離心率は、上記各リフレクタ26A、26Bの反射面26aの場合よりも全体的に小さい値に設定されており、これにより各リフレクタ46A、46Bからの反射光の集光性を高めるようになっている。
光制御部材48は、その上面48aにアルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されており、これにより該上面48aは反射面として構成されている。この上面48aの前端縁48a1は、その投影レンズ42の後方側に位置する部分が、該投影レンズ42の後側焦点F2を含む後側焦点面に沿って略円弧状に延びるように形成されている。
そして、この光制御部材48は、その上面48aにおいて各リフレクタ46A、46Bの反射面46aからの反射光の一部の直進を阻止して投影レンズ42からの上方出射光を除去するようになっている。その際、光制御部材48の上面48aは反射面として構成されているので、この上面48aに入射した各リフレクタ46A、46Bからの反射光は、上向きに反射して投影レンズ42に入射し、この投影レンズ42から下向き光として出射することとなる。
図5は、車両用照明灯具10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL1を透視的に示す図である。
このロービーム用配光パターンPL1は、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁にカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線よりも右側の対向車線側部分が水平に延びる水平カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この水平カットオフラインCL1から斜めに立ち上がる斜めカットオフラインCL2として形成されている。そして、このロービーム用配光パターンPL1において、水平カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との交点であるエルボ点Eの位置は、H−Vの0.5〜0.6°程度下方の位置に設定されており、このエルボ点Eを囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。
このロービーム用配光パターンPL1は、4つの配光パターンP1A、P1B、P2A、P2Bの合成配光パターンとして構成されており、その水平カットオフラインCL1は、図6(a)に示す2つの配光パターンP1A、P1Bにより形成されるとともに、その斜めカットオフラインCL2は、図6(b)に示す残り2つの配光パターンP2A、P2Bにより形成されるようになっている。
図6(a)に示す2つの配光パターンP1A、P1Bは、灯具ユニット20を点灯させたときに形成される配光パターンであって、その2つの光源ユニット30A、30Bにおけるリフレクタ26A、26Bで反射した発光素子24A、24Bからの光によって投影レンズ28の後側焦点面上に形成された光源像を、投影レンズ22により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成されるようになっている。そして、その水平カットオフラインCL1は、光制御部材28の上面28aの前端縁28a1の反転投影像として形成されるようになっている。
これら2つの配光パターンP1A、P1Bは、2つの光源ユニット30A、30Bが光軸Ax1に関して左右対称の位置関係で配置されていることから、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成される。その際、これら各配光パターンP1A、P1Bは、各リフレクタ26A、26Bの反射面26aが、略楕円形の断面形状を有しており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなっているので、横長の配光パターンとして形成される。また、2つの光源ユニット30A、30Bに対して単一の光制御部材28が配置されているので、各光源ユニット30A、30Bがたとえ正確に位置決めされていない場合であっても、水平カットオフラインCL1は常に同じ位置に一直線状に形成される。
一方、図6(b)に示す2つの配光パターンP2A、P2Bは、灯具ユニット40を点灯させたときに形成される配光パターンであって、その2つの光源ユニット50A、50Bにおけるリフレクタ56A、56Bで反射した発光素子44A、44Bからの光によって投影レンズ48の後側焦点面上に形成された光源像を、投影レンズ42により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成されるようになっている。そして、その斜めカットオフラインCL2は、光制御部材48の上面48aの前端縁48a1の反転投影像として形成されるようになっている。
この灯具ユニット40においても、2つの光源ユニット50A、50Bに対して単一の光制御部材48が配置されているので、各光源ユニット50A、50Bがたとえ正確に位置決めされていない場合であっても、斜めカットオフラインCL2は常に同じ位置に一直線状に形成されることとなる。
これら2つの配光パターンP2A、P2Bは、光制御部材48の上面48aおよび2つの光源ユニット50A、50Bが水平面に対して右側へ15°傾斜していることから、上記2つの配光パターンP2A、P2Bをエルボ点Eを基準にして右側へ15°傾斜させたような配光パターンとなっている。
その際、これら2つの配光パターンP2A、P2Bは、その大きさが上記2つの配光パターンP2A、P2Bに比してかなり小さいものとなっているが、これは各光源ユニット50A、50Bのリフレクタ46A、46Bからの反射光の集光性を高めるようにしたことによるものである。そして、このように2つの配光パターンP2A、P2Bを他の2つの配光パターンP1A、P1Bに比してかなり小さいものとすることにより、図5に示すホットゾーンHZの明るさを増大させるようになっている。
また、これら2つの配光パターンP2A、P2Bは、エルボ点Eに対して左寄りに位置しているが、これは、光源ユニット50Aの基準軸Ax2aが投影レンズ42の後側焦点F2からやや右側に離れた位置でその後側焦点面と交差しているとともに、光源ユニット50Bの基準軸Ax2aが投影レンズ42の後側焦点F2付近でその後側焦点面と交差していることによるものである。そして、このように2つの配光パターンP2A、P2Bをエルボ点Eに対して左寄りに形成することにより、図5に示すように、車両前方路面の近距離領域が過度に明るくなって配光ムラが発生してしまうのを防止するとともに左側の路肩部分の視認性を高めるようになっている。
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、2つの灯具ユニット20、40を備えているが、灯具ユニット20は、投影レンズ22を介して2つの光源ユニット30A、30Bからの光を前方へ照射するように構成されており、また、灯具ユニット40は、投影レンズ42を介して2つの光源ユニット50A、50Bからの光を前方へ照射するように構成されているので、従来のように投影レンズを介して単一の光源ユニットからの光を前方へ照射するように構成されている場合に比して、十分な照射光量を確保することが可能となる。
しかも、灯具ユニット20の各光源ユニット30A、30Bは、灯具前方へ向けて光軸寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax1a、Ax1b上において略上向きに配置された発光素子24A、24Bからの光を、リフレクタ26A、26Bにより前方へ向けて基準軸Ax1a、Ax1b寄りに反射させるように構成されているので、発光素子24A、24Bからの光を効率良く投影レンズ22に入射させることができる。また、灯具ユニット40の各光源ユニット50A、50Bは、灯具前方へ向けて光軸寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax2a、Ax2b上において略上向きに配置された発光素子44A、44Bからの光を、リフレクタ46A、46Bにより前方へ向けて基準軸Ax2a、Ax2b寄りに反射させるように構成されているので、発光素子44A、44Bからの光を効率良く投影レンズ42に入射させることができる。したがってこの点においても、十分な照射光量を確保することが可能となる。
さらに、灯具ユニット20は、単一の光制御部材28により各光源ユニット30A、30Bからの光の一部の直進を阻止して投影レンズ22からの上方出射光を除去するようになっているので、各光源ユニット30A、30Bがたとえ正確に位置決めされてなくても、所定位置に水平カットオフラインCL1を有する配光パターンP1A、P1Bを形成することができる。また、灯具ユニット40は、単一の光制御部材48により各光源ユニット50A、50Bからの光の一部の直進を阻止して投影レンズ42からの上方出射光を除去するようになっているので、各光源ユニット50A、50Bがたとえ正確に位置決めされてなくても、所定位置に斜めカットオフラインCL2を有する配光パターンP2A、P2Bを形成することができる。
したがって、各灯具ユニット20、40の光軸調整により、水平カットオフラインCL1と斜めカットオフラインCL2との位置関係を調整するだけで、所定位置にロービーム用配光パターンPL1を形成することができる。そしてこれにより、車両用照明灯具10の光軸調整を短時間で行うことができる。
また、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、その灯具ユニットの必要個数を少なくすることができるので、車両用照明灯具10をコンパクトに構成することができる。
しかも、灯具ユニット20は、その光制御部材28の上面28aが反射面として構成されているので、該上面28aに入射した各光源ユニット30A、30Bからの光も、配光パターンP2Aを形成するために用いることができ、これにより各発光素子24A、24Bからの光に対する光束利用率を一層高めて、照射光量を一層増大させることができる。さらに、この灯具ユニット20においては、2つの光源ユニット30A、30Bが共通の光制御部材28に取り付けられているので、灯具ユニット20の部品点数削減を図ることができるとともに、光照射制御の精度を高めることができる。
同様に、灯具ユニット40は、その光制御部材48の上面48aが反射面として構成されているので、該上面48aに入射した各光源ユニット50A、50Bからの光も、配光パターンP2Bを形成するために用いることができ、これにより各発光素子44A、44Bからの光に対する光束利用率を一層高めて、照射光量を一層増大させることができる。さらに、この灯具ユニット40においては、2つの光源ユニット50A、50Bが共通の光制御部材48に取り付けられているので、灯具ユニット20の部品点数削減を図ることができるとともに、光照射制御の精度を高めることができる。
ところで、上記実施形態においては、灯具ユニット20と灯具ユニット40とが別体で構成されているものとして説明したが、これらを一体で構成することも可能である。このようにした場合には、両灯具ユニット20、40の光軸調整を一括して行うことができるので、光軸調整に要する時間を一層短縮することができる。なお、このようにした場合においても、水平カットオフラインCL1の形成と斜めカットオフラインCL2の形成とが両灯具ユニット20、40間で分担して行われる構成となっているので、その交点としてのエルボ点Eの位置は一義的に決定されることとなり、したがって光軸調整を何ら支障なく行うことができる。なお、両灯具ユニット20、40を一体で構成するための具体的な方法としては、例えば、灯具ユニット20の光制御部材28と灯具ユニット40の光制御部材48とを連結固定したり、あるいは両光制御部材28、48を一体で構成する方法が採用可能である。
なお、上記実施形態においては、車両用照明灯具10が両灯具ユニット20、40を1組だけ備えているものとして説明したが、ロービーム用配光パターンPL1の明るさを増大させるために、両灯具ユニット20、40を複数組用いるようにしてもよい。このようにした場合には、車両用照明灯具10からの照射光量を増大させることができる反面、光軸調整の手間は増えることとなるが、従来のように単一の光源ユニットを備えた灯具ユニットを複数個用いるようにした場合に比して、光軸調整に要する時間を大幅に短縮することができる。
また、上記実施形態においては、各発光素子24A、24B、44A、44Bの発光チップ24a、44aが、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形に形成されているものとして説明したが、これ以外の外形形状(例えば横長の矩形形状等)に形成されたものを用いることも可能である。
また、上記実施形態においては、灯具ユニット20の光制御部材28が、光軸Ax1を含む水平面として構成された上面28aを有するとともに、その前端縁28a1が投影レンズ22の後側焦点面に沿って延びるように形成され、また、灯具ユニット40の光制御部材48が、光軸Ax2を含む下向き傾斜面として構成された上面48aを有するとともに、その前端縁48a1が投影レンズ42の後側焦点面に沿って延びるように形成されているものとして説明したが、このように構成する代わりに、上端縁が各光制御部材28、48の後側焦点面に沿って略円弧状に延びるように形成された立壁状のシェードを各光制御部材として用いることも可能である。
次に、上記実施形態の第1変形例について説明する。
図7は、本変形例に係る灯具ユニット60を示す正面図であり、図8は、図7のVIII-VIII 線方向矢視展開図である。
これらの図に示すように、この灯具ユニット60は、上記実施形態における2つの灯具ユニット20、40を部分的に組み合わせたような構成となっている。
すなわち、この灯具ユニット60は、その光軸Ax3上に配置された投影レンズ62と、この投影レンズ62の後側焦点F3よりも後方側において、光軸Ax3の両側に配置された2つの光源ユニット70A、70Bと、光制御部材68とを備えているが、その上面68aは、光軸Ax3を境にして、その左側領域68aLが該光軸Ax3を含む水平面で構成されるとともに、その右側領域68aRが該光軸Ax3を含む水平面に対して右側へ15°傾斜した下向き傾斜面で構成されている。
投影レンズ62は、上記実施形態の投影レンズ22と全く同様の構成を有しており、光制御部材68の前端部に固定支持されている。
そして、右側に位置する光源ユニット70Aは、上記実施形態の光源ユニット50Aと略同様の構成を有しており、左側に位置する光源ユニット70Bは、上記実施形態の光源ユニット30Bと略同様の構成を有している。
これら各光源ユニット70A、70Bの発光素子64A、64Bは、上記光源ユニット50Aの発光素子44Aおよび上記光源ユニット30Bの発光素子24Bと同様、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形の発光チップ64aを有する白色発光ダイオードであって、その発光チップ64aが光軸Ax3を含む下向き傾斜面および水平面上において斜め上向きおよび鉛直上向きに配置された状態で、光制御部材68の後端部に形成された各光源支持凹部68bの上面に固定されている。
光源ユニット70Aの基準軸Ax3aは、投影レンズ62の後側焦点F3からやや右側に離れた位置でその後側焦点面(すなわち光制御部材68の上面68aの前端縁68a1)と交差しており、光源ユニット70Bの基準軸Ax3bは投影レンズ42の後側焦点F3でその後側焦点面と交差している。
また、光源ユニット70Aにおけるリフレクタ66Aの反射面66aの各断面を構成する楕円の離心率は、光源ユニット70Bにおけるリフレクタ66Bの反射面66aの場合よりも全体的に小さい値に設定されており、これによりリフレクタ66Aのからの反射光の集光性をより高めるようになっている。
なお、本変形例においても、リフレクタ66Aとリフレクタ66Bとが一体で構成されている。
図9は、本変形例に係る灯具ユニット60から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL2を透視的に示す図である。
このロービーム用配光パターンPL2も、上記実施形態のロービーム用配光パターンPL1と同様、上端縁にカットオフラインCL1、CL2を有しており、そのエルボ点Eを囲むようにしてホットゾーンHZが形成されている。
このロービーム用配光パターンPL2は、2つの配光パターンP3A、P3Bの合成配光パターンとして構成されており、そのカットオフラインCL1、CL2も両配光パターンP3A、P3Bにより形成されるようになっている。その際、水平カットオフラインCL1は主として配光パターンP3Bにより形成され、一方、斜めカットオフラインCL2は主として配光パターンP3Aにより形成されるようになっている。
配光パターンP3Bは、V−V線を中心にして左右両側に広がっており、ロービーム用配光パターンPL2の全体形状を形成している。これは、光源ユニット70Bの基準軸Ax3bが、投影レンズ62の後側焦点F3でその後側焦点面と交差しており、また、そのリフレクタ66Bの反射面66aの各断面を構成する楕円の離心率が、全体的に大きい値に設定されていることによるものである。
一方、配光パターンP3Aは、エルボ点Eを左寄りに囲むようにして、配光パターンP3Bよりもかなり小さい配光パターンとして形成されている。これは、光源ユニット70Aの基準軸Ax3aが投影レンズ62の後側焦点F3からやや右側に離れた位置でその後側焦点面と交差しており、また、そのリフレクタ66Rの反射面66aの各断面を構成する楕円の離心率が、全体的に小さい値に設定されていることによるものである。
本変形例の構成を採用することにより、単一の灯具ユニット60により、上端縁にカットオフラインCL1、CL2を有するロービーム用配光パターンPL2を形成することができる。
なお、ロービーム用配光パターンPL2の明るさを増大させるために、本変形例の灯具ユニット60を複数個用いるようにしてもよいし、本変形例の灯具ユニット60を上記実施形態の灯具ユニット20あるいは灯具ユニット40と組み合わせて用いるようにしてもよい。このようにした場合には、車両用照明灯具からの照射光量を増大させることができる反面、光軸調整の手間は増えることとなるが、従来のように単一の光源ユニットを備えた灯具ユニットを複数個用いるようにした場合に比して、光軸調整に要する時間を大幅に短縮することができる。
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
図10は、本変形例に係る灯具ユニット80を示す平面図である。
この灯具ユニット80は、上記実施形態の灯具ユニット40と同様、上端縁に水平カットオフラインを有する配光パターンを形成するための灯具ユニットであるが、光源ユニットの個数が上記灯具ユニット40の場合と異なっている。
すなわち、同図に示すように、この灯具ユニット80は、その光軸Ax4上に配置された投影レンズ82と、この投影レンズ82の後側焦点F4よりも後方側において、光軸Ax4上およびその両側に左右対称の位置関係で3つずつ配置された7つの光源ユニット90A、90B、90C、90D、90E、90F、90Gと、光制御部材88とを備えている。
投影レンズ82は、上記実施形態の投影レンズ22と全く同様の構成を有しており、光制御部材88の前端部に固定支持されている。
光制御部材88は、上記実施形態の光制御部材28と同様、その上面88aが反射面として構成されており、その前端縁88a1は、その投影レンズ82の後方側に位置する部分が、該投影レンズ82の後側焦点F4を含む後側焦点面に沿って略円弧状に延びるように形成されている。
7つの光源ユニット90A、90B、90C、90D、90E、90F、90Gは、灯具前方へ向けて光軸Ax4寄りに傾斜した方向に延びる基準軸Ax4a、Ax4b、Ax4c、Ax4d、Ax4e、Ax4f、Ax4g上において鉛直上向きに配置された発光素子84A、84B、84C、84D、84E、84F、84Gと、これら各発光素子84A〜84Gからの光を前方へ向けて基準軸Ax4a〜Ax4g寄りに反射させるリフレクタ86A、86B、86C、86D、86E、86F、86Gとを備えてなっている。
これら各光源ユニット90A〜90Gの発光素子84A〜84Gは、上記実施形態の発光素子24A、24Bと同様、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形の発光チップ84aを有する白色発光ダイオードであって、その発光チップ84aが光軸Ax4を含む水平面上において鉛直上向きに配置された状態で、光制御部材88の後端部に形成された各光源支持凹部88bの上面に固定されている。
7つの光源ユニット90A〜90Gのうち、光軸Ax4上に位置する光源ユニット90Dは、その基準軸Ax4dが光軸Ax4と同一軸線上に位置している。この光源ユニット90Dの両側に位置する2つの光源ユニット90C、90Eは、その基準軸Ax4c、Ax4eが、投影レンズ82の後側焦点F4近傍において投影レンズ82の後側焦点面(すなわち光制御部材88の上面88aの前端縁88a1)と交差するように延びている。また、これら光源ユニット90C、90Eの両側に位置する2つの光源ユニット84B、84Fは、その基準軸Ax4b、Ax4fが、後側焦点F4から左右両側にやや離れた位置において上記後側焦点面と交差するように延びている。そして、これら光源ユニット84B、84Fの両側に位置する2つの光源ユニット90A、90Gは、その基準軸Ax4a、Ax4gが、後側焦点F4から左右両側にさらに離れた位置において上記後側焦点面と交差するように延びている。
また、これら7つの光源ユニット90A〜90Gは、そのリフレクタ86A〜86Gからの反射光の、水平面内における基準軸Ax4a〜Ax4g寄りの集光度が、光源ユニット80D→光源ユニット80C、80E→光源ユニット80B、80F→光源ユニット80A、80Gの順で小さくなるように設定されている。
これを実現するため、各リフレクタ86A〜86Gの反射面86aの水平断面を構成する楕円の離心率は、光軸Ax4から離れた位置にある光源ユニットほど大きな値に設定されている。
なお、本変形例においても、7つのリフレクタ86A〜86Gが一体で構成されている。
図11は、本変形例に係る灯具ユニット80を構成する各光源ユニット90A〜90Gを点灯させたときに該灯具ユニット80から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示す図である。
すなわち、同図(a)は、光源ユニット90Dを点灯したときに形成される配光パターンP4Dを示しており、同図(b)は、光源ユニット90C、90Eを点灯したときに形成される配光パターンP4C、P4Eを示しており、同図(c)は、光源ユニット90B、90Fを点灯したときに形成される配光パターンP4B、P4Fを示しており、同図(d)は、光源ユニット90A、90Gを点灯したときに形成される配光パターンP4A、P4Gを示している。
これら7つの配光パターンP4A〜P4Gは、7つの光源ユニット90A〜90Gが光軸Ax4に関して左右対称の位置関係で配置されていることから、V−V線に関して左右対称の位置関係で形成される。その際、これら各配光パターンP4A〜P4Gは、各リフレクタ86A〜86Gの反射面86aが、略楕円形の断面形状を有しており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなっているので、横長の配光パターンとして形成される。ただし、中央に位置する配光パターンP4Dは、ほとんど略半円状に形成され、配光パターンP4D→配光パターンP4C、P4E→配光パターンP4B、P4F→配光パターンP4A、P4Gの順で横長の度合が大きくなっている。
図12は、本変形例に係る灯具ユニット80を、上記実施形態に係る車両用照明灯具10における灯具ユニット20の代わりに用いた場合において、この車両用照明灯具10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL3を透視的に示す図である。
このロービーム用配光パターンPL3も、上記実施形態のロービーム用配光パターンPL1と同様、上端縁にカットオフラインCL1、CL2を有しており、そのエルボ点Eを囲むようにしてホットゾーンHZが形成されている。
このロービーム用配光パターンPL3は、灯具ユニット80からの光照射によって形成される7つの配光パターンP4A、P4B、P4C、P4D、P4E、P4F、P4Gと、灯具ユニット40からの光照射によって形成される2つの配光パターンP2A、P2Bとの合成配光パターンとして構成されている。そして、その水平カットオフラインCL1は、7つの配光パターンP4A〜P4Gにより形成されるとともに、その斜めカットオフラインCL2は、2つの配光パターンP2A、P2Bにより形成されるようになっている。
本変形例に係る灯具ユニット80は、7つの光源ユニット90A〜90Gからの光により7つの配光パターンP4A〜P4Gを形成するようになっているので、ロービーム用配光パターンPL3をかなり明るいものとすることができる。
しかも、これら各光源ユニット90A〜90Gは、そのリフレクタ86A〜86Gからの反射光の、水平面内における上記基準軸Ax4a〜Ax4g寄りの集光度が、光軸Ax4から離れた位置のある光源ユニットほど小さくなるように設定されているので、7つの配光パターンP4A〜P4Gにおける左右方向の中心領域の光度を高めることができ、これによりロービーム用配光パターンPL3のホットゾーンHZを十分に明るいものとすることができる。
また、本変形例に係る灯具ユニット80においても、その7つの光源ユニット90A〜90Gに対して単一の光制御部材88が配置されているので、各光源ユニット90A〜90Gがたとえ正確に位置決めされていない場合であっても、水平カットオフラインCL1を常に同じ位置に一直線状に形成することができる。そしてこれにより、車両用照明灯具10の光軸調整を、上記実施形態の場合と同じ工数で短時間で行うことができる。