JP4680522B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
ここで、耐衝撃性を向上する手段としては、ポリアセタール樹脂に、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填材等の強化用充填剤を添加することが考えられる。しかしながら、一般に強化用充填剤はポリアセタール樹脂よりも硬く、摺動時に強化用充填剤がポリアセタール樹脂を削り、摩耗量の増大を招く恐れがある。
そこで摺動性、寸法安定性等といったポリアセタール樹脂の特長を損なうことなく耐衝撃性を向上する手段として、特許文献1には、衝撃強度改質剤としてアクリル架橋ゴムグラフト共重合体を特定範囲で添加することが提案されている。具体的には、コアシェル型のグラフト共重合体を添加することが提案され、その場合、ウレタン系エラストマーを添加する場合より耐衝撃性が高いことが示されている。
このようなことから、ポリアセタール樹脂自身の分解に対する耐性を向上させる方法あるいはpH調整剤を添加する方法などが提案され実施されている。また、特許文献2には実質的にアニオンが検出されないポリマーが開示されており、特許文献3には、熱分解等に起因する熱老化性を改良する目的で、特定の安定剤を添加した樹脂組成物が開示されている。
本発明は、ポリアセタール樹脂の分解が防止されているとともに耐衝撃性が高い熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
ビニル基を有する界面活性剤および該界面活性剤の少なくとも一部が化学結合したグラフト重合体が含まれる衝撃強度改質剤とを含有することを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、ビニル基を有する界面活性剤の存在下で、ゴム成分に単量体を乳化重合した後、水を除去して衝撃強度改質剤を得る衝撃強度改質剤製造工程と、
該衝撃強度改質剤とポリアセタール樹脂とを配合する配合工程とを有することを特徴とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂と特定の衝撃強度改質剤とを含有するものである。
ポリアセタール樹脂としては特に限定されないが、オキシメチレン基を主たる繰り返し単位とし、炭素数2以上のオキシアルキレン基を含むポリオキシメチレン共重合体を主成分とする樹脂が好ましい
具体的には、ホルムアルデヒド、又はその環状オリゴマーであるトリオキサンを主モノマーとし、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキセパン、1,4−ブタンジオールホルマール、ジエチレングリコールホルマール等の少なくとも1つの炭素間結合を有する環状エーテル及び/又は環状アセタールの中から選ばれた少なくとも1種をコモノマーとし、カチオン性触媒の存在下で共重合することで得られるものが好ましい。コモノマーとしては特に、コモノマー分散性が良好なことから、ポリマー中に連鎖移動を生じさせない1,3−ジオキソラン及び/又は1,3,5−トリオキセパンが好ましい。
ポリオキシメチレン共重合体の製造にあたっては、バッチ式、連続式、いずれの製造方式を採用しても良く、また、溶融重合、溶液塊状重合等、いずれの重合法を採用しても良いが、工業生産性を考慮すれば、原料として液体モノマーを用い、必要に応じて不活性液体触媒の存在下、重合の進行とともに固体粉塊状のポリマーを得る連続式塊状重合法が好適である。
重合温度は特に限定されないが、64〜120℃が一般的であり、この範囲内でも比較的低温が好適である。
重合時間は触媒量に応じて好適範囲が変動し、特に制限はないが、0.5〜100分が一般的である。
好適な重合時間を経過した後は、重合装置から排出される粗重合体に対して、直ちに失活剤を混合接触させ、重合触媒の失活化を行うことが好ましい。失活剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン類と、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等の無機アルカリ性物質等とを混合した溶液等が挙げられる。用いる失活剤は水溶液であることが好ましい。
添加する安定剤、加工性改良剤として好適な有機化合物としては、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ジ−ステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)等のヒンダードフェノール類に代表される酸化防止剤、ナイロン6・10、ナイロン6・66・610、ポリアクリルアミド等のポリアミド、メラミン、ジシアンジアミド等及びホルムアルデヒドとの重縮合物に代表される含窒素化合物、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のステアリン酸の如き高級脂肪酸及び水酸基等の置換基を有する置換高級脂肪酸の塩等の金属含有化合物等に代表される耐熱安定剤、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類に代表される紫外線吸収剤、また、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート等のヒンダードアミン類に代表される光安定剤、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の高級脂肪酸エステル類、エチレンビス(ステアリルアミド)等の高級脂肪酸アミドに代表される滑剤、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリプロピレン共重合体等の可塑剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
中でも特に、酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス−{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)フロピオニルオキシ−〕1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等のヒンダードフェノール類が好ましく、含窒素化合物としては、メラミン、ジシアンジアミド等及びホルムアルデヒドとの重縮合が好ましく、金属含有化合物としては、マグネシウム、カルシウムの高級脂肪酸及び置換高級脂肪酸の塩が好ましい。
ポリアセタール樹脂に安定剤として添加される化合物の総量は特に限定されないが、0.1〜2.0質量%であることが好ましく、0.1〜1.0質量%であることが特に好ましい。
衝撃強度改質剤は、反応性を有する界面活性剤(以下、反応性界面活性剤と略す)と、反応性界面活性剤の少なくとも一部が化学結合したグラフト重合体とが含まれるものである。このように、反応性界面活性剤の少なくとも一部がグラフト重合体に化学結合していることで、溶融状態においてブリード等を起こさず、その結果、ポリアセタール樹脂の分解を抑制することができる。
衝撃強度改質剤中の反応性界面活性剤の含有量は、グラフト重合体100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部、さらに好ましくは0.4〜7質量部の範囲である。
衝撃強度改質剤のゴム成分としては、例えば、ジエン系単量体の重合体であるジエン系ゴム、(メタ)アクリル系単量体の重合体であるアクリル系ゴム、シリコーン系単量体の重合体とジエン系単量体あるいはアクリル系単量体の重合体との複合ゴムなどが挙げられる。ゴム成分の種類は要求性能に応じて適宜選択されるが、特に高い靭性が要求される場合にはジエン系単量体を含んだものが好ましい。
また、耐衝撃性を損なわない範囲、具体的には30質量%以下の範囲で、これらと共重合可能な他の単量体が共重合されていてもよい。他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種ビニル系単量体が挙げられる。
さらに、上記ゴム成分には、必要に応じて、架橋剤および/またはグラフト交叉剤が共重合されていてもよい。
架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン等の芳香族多官能ビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3ブタンジオールジアクリレート等の多価アルコールのジカルボン酸エステル、多官能メタクリル基変性シリコーンなどのシリコーン等が好適である。
また、グラフト交叉剤としては、トリメタクリル酸エステル;トリアクリル酸エステル;アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル等のカルボン酸アリルエステル;ジアリルフタレート、ジアリルセバケート、トリアリルトリアジン等のジまたはトリアリル化合物、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が好適である。なお、アリルメタクリレートは架橋剤として用いることもできる。
これら架橋剤およびグラフト交叉剤は、1種を単独で用いても良いし、2種以上併用することもできる。
また、アクリル系ゴムにおいて、架橋剤および/またはグラフト交叉剤の含有量は、耐衝撃性付与効果を損なわないことから、好ましくは20質量%以下、より好ましくは0.1〜18質量%の範囲である。
質量平均粒子径(dw)が80nm未満では、耐衝撃性付与効果が小さくなる恐れがあり、300nm超では、耐応力白化性が悪化する恐れがある。ここで、ゴム成分の質量平均粒子径(dw)は、公知の方法により測定できる。例えば、市販のキャピラリー式粒度分布計を用いて、測定することができる。
メタクリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられる。
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン、アルキル置換スチレン等が挙げられる。
その他共重合可能なビニル系単量体の具体例としては、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル系単量体等が挙げられる。
乳化重合時に必要に応じて鉄化合物を添加する場合、鉄化合物の量は10ppm以下とすることが好ましく、5ppm以下とすることがより好ましい。これは、ポリアセタール樹脂の分解を抑制する意味があり、上記範囲を超えるとポリアセタール樹脂を分解させる恐れがあり、好ましくない。
なお、凝固法において使用する酸としては硫酸、塩酸が好ましく、塩類としてはカルシウム塩、マグネシウム塩が好ましい。なお、アルミニウム塩は、ポリアセタール樹脂の分解を促進する傾向があるため好ましくない。
ゴム成分がポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとを含む複合ゴムである場合、衝撃強度改質剤中のポリオルガノシロキサンの含有量が8〜70質量%、複合ゴムの含有量が65〜90質量%であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、配合工程にて、ポリアセタール樹脂に対して、衝撃強度改質剤を所定量配合することで得られる。その方法としては特に制限はなく、樹脂組成物の調製に一般に用いられる公知の方法を適宜選択することができる。例えば、ポリアセタール樹脂と衝撃強度改質剤を、直接、又は予め混和した後、1軸又は2軸の押出機等により混練し、ペレット化して熱可塑性樹脂組成物を調製することができる。
また、熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、以上のようにして目的組成に調製されたペレットを成形する方法が好適であるが、一旦組成の異なる複数種のペレットを調製した後、これらを所定比で混合(希釈)して成形に供し、成形後に目的組成とする方法を採用することもできる。なお、ペレットの調製に際しては、基体であるポリアセタール樹脂(A)の一部又は全部を予め粉砕しておくことが、これに配合される成分の分散性を良くするため、好適である。
(製造例1)衝撃強度改質剤(1)
ジャケットおよび攪拌機を備えた圧力容器に、表1に示す成分からなる第1のゴム成分用単量体混合物を仕込んだ。その第1のゴム成分用単量体混合物を攪拌しながら50℃に昇温し、イオン交換水20部に溶解した和光純薬製「V−50」0.05部を投入して重合を開始した。重合開始後、ジャケットを60℃で90分保持し、容器内温度を60℃に調整した後、イオン交換水20部に溶解した和光純薬製「V−50」0.2部を投入した。
次いで、表1に示す第2のゴム成分用単量体混合物を、ホモミキサーにて10000rpm、5分間攪拌処理し、それを90分かけて滴下し、重合した。ここで得られたゴム成分の粒子径は150nmであった。
その後、ジャケット温度60℃にて、90分間保持した後、表1に示す成分からなるグラフト成分用単量体混合物を調製し、そのグラフト成分用単量体混合物を40分かけて滴下した後、ジャケット温度60℃にて90分間保持し、重合を完了した。
得られたラテックスを、酢酸カルシウム5部を溶解し、70℃に調温したイオン交換水200部中に投入して凝固した後、遠心脱水した。次いで、遠心脱水により得られた湿粉を70℃に調温したイオン交換水200部中に投入し、再び遠心脱水する工程を合計4サイクル行った。その後60℃の乾燥機中で48時間乾燥して、粉体状の衝撃強度改質剤(1)を得た。
得られたラテックスをイオン交換水で希釈したものを試料とし、米国MATEC社製、CHDF2000型粒度分布計を用いて測定した。測定条件は、MATEC社が推奨する標準条件で行った。すなわち、専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジおよびキャリア液を用い、液性はほぼ中性、流速1.4ml/min、圧力約4000psi、温度35℃の状態を保ち、濃度約3%の希釈ラテックス試料0.1mlに対して測定を行った。なお、標準粒子径物質としては、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンを0.02μm〜0.8μmの範囲内で合計12点用いた。
製造例1における反応性界面活性剤として花王製ラテムルPD−104を使用した以外は製造例1と同様にして、ゴム成分の粒子径が140nmである衝撃強度改質剤(2)を得た。
2−エチルヘキシルアクリレート99.5部、アリルメタクリレート0.2部を混合し、(メタ)アクリレート単量体混合物100部を得た。
次いで、反応性界面活性剤である花王製ラテムルPD−104を2部(固形分)溶解したイオン交換水195部に、上記(メタ)アクリレート単量体混合物100部を加え、ホモミキサーにて10,000rpmで予備撹拌した後、ホモジナイザーにて300kg/cm2 の圧力下、乳化・分散させて、(メタ)アクリレートエマルジョンを得た。
このエマルジョンをコンデンサーおよび撹拌翼を備えたセパラブルフラスコに移し、窒素置換および混合撹拌しながら昇温し、50℃になった時点で和光純薬製アゾ系開始剤V−50を0.5部、およびイオン交換水10部を添加した。その後5時間放置して重合を完結し、アクリルゴム(Q1)ラテックスを得た。
得られたアクリルゴム(Q1)ラテックスの重合率は99.9%であった。また、このラテックスをエタノールで凝固乾燥して固形物を得、トルエンで90℃、12時間抽出し、ゲル含量を測定したところ93.7%であった。
次いで、得られたアクリルゴム(Q1)ラテックスに花王製ラテムルPD−104を固形分として1.0部追加した。このラテックスを、アリルメタクリレートを含むポリ2−エチルヘキシルアクリレートの固形分が20部となるように採取し、撹拌機を備えたセパラブルフラスコに入れ、系内のイオン交換水量が195部となるようにイオン交換水を追加した。
このラテックスを一部採取し、ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムの粒子径分布の測定を行ったところ、質量平均粒子経は140nmであった。また、このラテックスを乾燥して固形物を得、トルエンで90℃、12時間抽出し、ゲル含量を測定したところ、98.3%であった。
得られたポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムラテックスに、メチルメタクリレート11.5部およびブチルアクリレート0.5部とを含む単量体混合物を70℃にて15分間にわたり滴下し、その後70℃で4時間保持し、ポリアルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムへのグラフト重合を完了し、アクリルゴム系グラフト共重合体ラテックスを得た。
得られたラテックスを、酢酸カルシウム5部を溶解し、70℃に調温したイオン交換水200部中に投入して凝固した後、遠心脱水した。次いで、遠心脱水により得られた湿粉を70℃に調温したイオン交換水200部中に投入し、再び遠心脱水する工程を合計4サイクル行った。その後60℃の乾燥機中で48時間乾燥して、粉体状の衝撃強度改質剤(3)を得た。
反応性界面活性剤である花王製ラテムルPD−104を0.5部(固形分)、イオン交換水70部をオートクレーブに仕込んだ後、表2に示す成分の第1のゴム成分用単量体混合物を仕込み、昇温を開始し、43℃になった時点で、下記レドックス系開始剤を添加して反応を開始した。その後さらに65℃まで昇温した。
レドックス系開始剤:
硫酸第一鉄 0.0008部
デキストローズ 0.2部
イオン交換水 5部
重合開始から3時間後に花王製ラテムルPD−104を1.5部(固形分)、およびイオン交換水75部を反応系内に添加し、開始剤であるp−メンタンハイドロパーオキサイド0.2部をさらに添加し、その直後から表2に示す成分の第2のゴム成分用単量体混合物を8時間かけて連続滴下した。
重合開始から14時間後、ブタジエン系ゴム重合体(R1)ラテックスを得た。このブタジエン系ゴム重合体(R1)ラテックスの質量平均粒子径(dw)は120nmであった。また、ラテックス中のブタジエン系ゴム重合体(R1)の転化率は95.1%であった。
上記で得られたブタジエン系ゴム重合体(R1)75部(固形分)を窒素置換したフラスコ内に仕込み、内温を70℃に保持した。また花王製ラテムルPD−104を1.5部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部を仕込んだ。
次いで、表2に示す成分のグラフト成分用単量体混合物を1時間かけて滴下し、その後1時間保持した。なお、クメンハイドロキシパーオキサイドの添加量は、グラフトモノマーの合計量100%に対して0.3%とした。
重合反応終了後、グラフト共重合体ラテックスを得た。
得られたラテックスを、酢酸カルシウム5部を溶解し、60℃に調温したイオン交換水200部中に投入しえ凝固した後、遠心脱水した。次いで、遠心脱水により得られた湿粉を70℃に調温したイオン交換水200部中に投入し、再び遠心脱水する工程を合計4サイクル行った。その後60℃の乾燥機中で48時間乾燥し、粉体状の衝撃強度改質剤(4)を得た。
製造例4において、反応性界面活性剤ラテムルPD−104の代わりに東邦化学製反応性界面活性剤FP−120のアンモニア中和品を使用した以外は製造例4と同様にして、ゴム成分の粒子径が130nmの衝撃強度改質剤(5)を得た。
製造例1において、第1のゴム成分用単量体混合物中の反応性界面活性剤ラテムルS−180 1.0部の代わりにアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム0.5部を用い、第2のゴム成分用単量体混合物中の反応性界面活性剤ラテムルS−180 2.0部の代わりにアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム2.0部を用いたこと以外は製造例1と同様にして、ゴム成分の粒子径が150nmの粉体状の衝撃強度改質剤(6)を得た。
トリオキサンと少量の1,3−ジオキソラン(コモノマー)との混合物を、三フッ化ホウ素エーテラート(触媒)の存在下に重合して、オキシエチレン基として0.75重量%、1.00重量%及び1.50重量%の3種類の共重合体を調製した。重合後、トリエチルアミン(失活剤)による触媒の失活をさせ、さらに末端安定化工程を経てペレット化した。
表3に示す割合で、ポリアセタール樹脂78部と衝撃強度改質剤22部とを配合し、東芝機械製TEM35B型2軸押出機にてペレット化して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。次いで、各種の評価試験を行うため、得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを三条機械製SAV60型射出成形機にて通常の条件で射出成形し、試験片を調製した。
得られた熱可塑性樹脂組成物を以下のように評価した。結果を表3に示す。
1)アイゾット衝撃強度
サンプル厚みが1/8インチ、ノッチ付きの試験片のアイゾット衝撃強度を、ASTMD256に従って23℃で測定した。
2)曲げ弾性率
サンプル厚みが1/4インチの試験片の曲げ弾性率をASTM D790に従って23℃で測定した。
3)樹脂の分解性試験
W50E型2軸タイプのヘッドを装着したブラベンダー社製プラストミルを200℃に調温し、これを用いて熱可塑性樹脂組成物のペレット60gを5分間混練した。その際の、におい、ガス発生状況から、分解の程度を○、△、×3段階で評価した。○は、ほぼ臭いが無く、ガスの発生のないもの、△はやや臭いがする、あるいはガスが発生するもの。×は非常に臭いが強く、またガスが発生するものを示し、○が最も良好である。
反応性界面活性剤を使用した実施例は、ポリアセタール樹脂の分解が抑えられており、良好な耐衝撃性を示した。特に、衝撃強度改質剤のゴム成分がジエン系ゴムである実施例4,5は、非常に優れた耐衝撃性を示した。
これら対して反応性界面活性剤を使用しなかった比較例は、ポリアセタール樹脂の分解が見られ、耐衝撃性は低かった。
Claims (2)
- ポリアセタール樹脂と、
ビニル基を有する界面活性剤および該界面活性剤の少なくとも一部が化学結合したグラフト重合体が含まれる衝撃強度改質剤とを含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - ビニル基を有する界面活性剤の存在下、ゴム成分に単量体を乳化重合した後、水を除去して衝撃強度改質剤を得る衝撃強度改質剤製造工程と、
該衝撃強度改質剤とポリアセタール樹脂とを配合する配合工程とを有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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JP2000053842A (ja) * | 1990-12-28 | 2000-02-22 | Takeda Chem Ind Ltd | 低光沢性ポリアセタ―ル樹脂組成物 |
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