JP4677081B2 - 遠心式液体ポンプ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液などの医療用液体を搬送するための遠心式液体ポンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近では、人工心肺装置における体外血液循環に遠心式血液ポンプを使用する例が増加している。遠心ポンプとしては、外部とポンプ内の血液室との物理的な連通を完全に排除し、細菌等の侵入を防止できることにより、外部モータからの駆動トルクを磁気結合を用いて伝達する方式のものが用いられている。そして、このような遠心式血液ポンプは、血液流入ポートと血液流出ポートを有するハウジングと、ハウジング内で回転し、回転時の遠心力によって血液を送液するインペラを有している。また、インペラは、内部に永久磁石を備え、インペラの磁石を吸引するための磁石を備えるロータおよびこのロータを回転させるモータを備えた回転トルク発生機構により回転する。また、インペラは、ロータと反対側にも磁力により吸引されており、ハウジングに対して非接触状態にて回転する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなマグネットカップリングを利用する遠心式液体ポンプでは、回転負荷の過度の増加により、マグネットカップリングが脱調を起こす危険性がある。そして、脱調が生じると、インペラの回転は停止する。よって、マグネットカップリングの脱調は、確実に把握できることが望ましい。しかし、脱調検出機能としては、脱調していないにもかかわらず、脱調状態であると判断することが極力ないことが望ましい。
【0004】
本発明の目的は、遠心式液体ポンプ装置において、マグネットカップリングの脱調を外部より確実に確認することができ、かつ、脱調状態でない場合に脱調であると判断することも極めて少ない脱調状態検出機能を備える遠心式液体ポンプ装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するものは、液体流入ポートと液体流出ポートとを有するハウジングと、内部に磁性体を備え、前記ハウジング内で回転し、回転時の遠心力によって液体を送液するインペラを有する遠心式液体ポンプ部と、前記遠心式液体ポンプ部の前記インペラの第1の磁性体を吸引するための磁石を備えるロータと、該ロータを回転させるモータを備えるインペラ回転トルク発生部と、前記インペラの第2の磁性体を吸引するための電磁石を備えるインペラ位置制御部と、前記インペラの位置を検出するための位置センサを備え、前記ハウジングに対して前記インペラが非接触状態にて回転する遠心式液体ポンプ装置本体部と、該遠心式液体ポンプ装置本体部のための制御装置とを備える遠心式液体ポンプ装置であって、該制御装置は、電磁石電流モニタリング機能と、モータ駆動電流モニタリング機能と、モータ回転数モニタリング機能と、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値と前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値と前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用するインペラ脱調状態判定機能を備えており、かつ、
前記インペラ脱調状態判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値が第1の所定値以下の場合と、前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応する第1のモータ駆動電流所定値よりも前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が小さい場合に、インペラが脱調状態であると判定するものである遠心式液体ポンプ装置である。
また、上記目的を達成するものは、液体流入ポートと液体流出ポートとを有するハウジングと、内部に磁性体を備え、前記ハウジング内で回転し、回転時の遠心力によって液体を送液するインペラを有する遠心式液体ポンプ部と、前記遠心式液体ポンプ部の前記インペラの第1の磁性体を吸引するための磁石を備えるロータと、該ロータを回転させるモータを備えるインペラ回転トルク発生部と、前記インペラの第2の磁性体を吸引するための電磁石を備えるインペラ位置制御部と、前記インペラの位置を検出するための位置センサを備え、前記ハウジングに対して前記インペラが非接触状態にて回転する遠心式液体ポンプ装置本体部と、該遠心式液体ポンプ装置本体部のための制御装置とを備える遠心式液体ポンプ装置であって、該制御装置は、電磁石電流モニタリング機能と、モータ駆動電流モニタリング機能と、モータ回転数モニタリング機能と、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値と前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値と前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用するインペラ脱調状態判定機能を備えており、かつ、
前記インペラ脱調状態判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値が第1の所定値以下であり、かつ、前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応する第1のモータ駆動電流所定値よりも前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が小さい場合に、インペラが脱調状態であると判定するものである遠心式液体ポンプ装置である。
【0006】
そして、前記インペラ脱調状態判定機能は、脱調判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式を記憶していることが好ましい。さらに、前記インペラ脱調状態判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値の所定時間平均を用いるものであることが好ましい。
【0007】
そして、前記制御装置は、前記インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調状態と判定された場合に、前記モータを所定時間停止させた後、モータ回転を再開する一時停止型脱調解消試行機能を備えていてもよい。また、前記制御装置は、前記インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調状態と判定された場合に、前記モータを所定時間低速回転させた後、モータ回転数を上げる一時低速型脱調解消試行機能を備えていてもよい。
【0008】
さらに、前記制御装置は、モータ回転高負荷状態判定機能を備えており、該モータ回転高負荷状態判定機能は、前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応し、かつ前記第1のモータ駆動電流所定値より大きい第2のモータ駆動電流所定値よりも前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が大きい場合に、モータ回転が高負荷状態であると判定するものであることが好ましい。そして、前記モータ回転高負荷状態判定機能は、負荷状態判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式を記憶していることが好ましい。
【0009】
また、前記制御装置は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能と、インペラ位置異常判定機能を備えており、該インペラ位置異常判定機能は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能による位置出力値が、第1の記憶値以上もしくは第2の記憶値以下となった場合に、インペラ位置が異常であると判定するものであることが好ましい。さらに、前記インペラ位置異常判定機能は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能による出力値の所定時間平均を用いるものであることが好ましい。
【0010】
また、前記制御装置は、磁気軸受異常判定機能を備え、該磁気軸受異常判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値が第2の所定値以上となった場合に、磁気軸受異常であると判定するものであることが好ましい。そして、前記磁気軸受異常判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値の所定時間平均が第2の所定値以上となった場合に、磁気軸受異常であると判定するものであることが好ましい。さらに、前記制御装置は、該制御装置内温度検知機能を備えていることが好ましい。
【0011】
また、前記制御装置は、前記判定機能により、異常と判定された場合に作動する警報出力器を備えていることが好ましい。そして、前記警報出力器は、前記判定機能における異常判定項目により異なる形態の警報を出力するものであることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の遠心式液体ポンプ装置を血液ポンプに応用した実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の遠心式液体ポンプ装置の実施例のブロック図である。図2は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される遠心式液体ポンプ装置本体部の一例の正面図である。図3は、図2の遠心式液体ポンプ装置本体部をインペラ部分にて切断した断面図である。図4は、図2に示した実施例の遠心式液体ポンプ装置の縦断面図であり、インペラのみ図3の屈曲した一点破線により切断した状態を模式的に示してある。図5は、図2に示した遠心式液体ポンプ装置本体部の平面図である。
【0013】
本発明の遠心式液体ポンプ装置1は、液体流入ポート22と液体流出ポート23を有するハウジング20と、内部に第1の磁性体(具体的には、永久磁石)25を備え、ハウジング20内で回転し、回転時の遠心力によって液体を送液するインペラ21を有する遠心式液体ポンプ部2と、遠心式液体ポンプ部2のインペラ21の第1の磁性体25を吸引するための磁石33を備えるロータ31と、ロータ31を回転させるモータ34を備えるインペラ回転トルク発生部3と、インペラ21を吸引するための電磁石41(具体的には、インペラ21に設けられた第2の磁性体28を吸引するための電磁石41)を備えるインペラ位置制御部4と、インペラの位置を検出するための位置センサ42(具体的には、インペラ21に設けられた第2の磁性体28の位置を検出するための位置センサ)を備え、ハウジングに対してインペラ21が非接触状態にて回転する遠心式液体ポンプ装置本体部5と、遠心式液体ポンプ装置本体部5のための制御装置6とを備える遠心式液体ポンプ装置である。制御装置6は、電磁石電流モニタリング機能と、モータ駆動電流モニタリング機能と、モータ回転数モニタリング機能と、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値と前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値と前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用するインペラ脱調状態判定機能を備えている。
【0014】
図2ないし図5に示すように、この実施例の遠心式液体ポンプ装置本体部5は、血液流入ポート22と血液流出ポート23を有するハウジング20と、ハウジング20内で回転し、回転時の遠心力によって血液を送液するインペラ21を有する遠心式液体ポンプ部2と、インペラ21のためのインペラ回転トルク発生部(非制御式磁気軸受構成部)3と、インペラ21のためのインペラ位置制御部(制御式磁気軸受構成部)4とを備える。
インペラ21は、非制御式磁気軸受構成部および制御式磁気軸受構成部の作用により、ハウジング20内の所定位置に保持された状態で回転する。
【0015】
ハウジング20は、血液流入ポート22と血液流出ポート23とを備え、非磁性材料により形成されている。ハウジング20内には、血液流入ポート22および血液流出ポート23と連通する血液室24が形成されている。このハウジング20内には、インペラ21が収納されている。血液流入ポート22は、ハウジング20の上面の中央付近よりほぼ垂直に突出するように設けられている。血液流出ポート23は、ほぼ円筒状に形成されたハウジング20の側面より接線方向に突出するように設けられている。
ハウジング20内に形成された血液室24内には、中央に貫通口を有する円板状のインペラ21が収納されている。インペラ21は、下面を形成するドーナツ板状部材(下部シュラウド)27と、上面を形成する中央が開口したドーナツ板状部材(上部シュラウド)28と、両者間に形成された複数(6つ)のベーン18を有する。そして、下部シュラウドと上部シュラウドの間には、隣り合うベーン18で仕切られた複数(6個)の血液通路26が形成されている。血液通路26は、インペラ21の中央開口と連通し、インペラ21の中央開口を始端とし、湾曲して外周縁まで延びている。言い換えれば、隣り合う血液通路26間にベーン18が形成されている。なお、この実施例では、血液通路26およびベーン18は、等角度間隔にかつほぼ同じ形状に設けられている。
【0016】
そして、インペラ21には、複数(具体的には、6つ)の第1の磁性体25(永久磁石、従動マグネット)が埋設されている。埋設された磁性体25(永久磁石)は、後述するインペラ回転トルク発生部3のロータ31に設けられた永久磁石33によりインペラ21を血液流入ポート22と反対側に吸引し、かつ回転トルクをインペラ回転トルク発生部より伝達可能にするために設けられている。また、このようにある程度の個数の磁性体25を埋設することにより、後述するロータ31との磁気的結合も十分に確保できる。磁性体25(永久磁石)の形状としては、円形であることが好ましい。あるいは、リング状のマグネットを多極(例えば、24極)に分極したもの、言い換えれば、複数の小さな磁石を磁極が交互となるように、かつ、リング状に並べたものでもよい。
また、インペラ21は、上部シュラウドそのものもしくは上部シュラウド内に設けられた第2の磁性体28を備える。この実施例では、上部シュラウドの全体が、磁性体28により形成されている。磁性体28は、後述するインペラ位置制御部の電磁石41によりインペラ21を血液流入ポート22側に吸引するために設けられている。磁性体28としては、磁性ステンレスまたはニッケルまたは軟鉄部材等が使用される。
【0017】
インペラ位置制御部4およびインペラ回転トルク発生部3により、非接触式磁気軸受が構成され、インペラ21は、相反する方向より引っ張られることにより、ハウジング20内において、ハウジング20の内面と接触しない適宜位置にて安定し、非接触状態にてハウジング20内を回転する。
インペラ回転トルク発生部3は、ハウジング20内に収納されたロータ31とロータ31を回転させるためのモータ34(内部構造を省略する)からなる。ロータ31は、回転板32と回転板32の一方の面(液体ポンプ側の面)に設けられた複数の永久磁石33からなる。ロータ31の中心は、モータ34の回転軸に固定されている。永久磁石33は、インペラ21の永久磁石25の配置形態(数および配置位置)に対応するように、複数かつ等角度ごとに設けられている。
インペラ回転トルク発生部3としては、上述のロータおよびモータを備えるものに限られず、例えば、インペラ21の永久磁石25を吸引し、かつ回転駆動させるための複数のステーターコイルからなるものでもよい。
【0018】
インペラ位置制御部4は、インペラの磁性体28を吸引するための固定された複数の電磁石41と、インペラの磁性体28の位置を検出するための位置センサ42を備えている。具体的には、インペラ位置制御部4は、ハウジング20内に収納された複数の電磁石41と、複数の位置センサ42を有する。インペラ位置制御部の複数(3つ)の電磁石41および複数(3つ)の位置センサ42は、それぞれ等角度間隔にて設けられており、電磁石41と位置センサ42も等角度間隔にて設けられている。電磁石41は、鉄心とコイルからなる。電磁石41は、この実施例では、3個設けられている。電磁石41は、3個以上、例えば、4つでもよい。3個以上設け、これらの電磁力を位置センサ42の検知結果を用いて調整することにより、インペラ21の中心軸(z軸)方向の力を釣り合わせ、かつ中心軸(z軸)に直交するx軸およびy軸まわりのモーメントを制御することができる。
【0019】
位置センサ42は、電磁石41と磁性体28との隙間の間隔を検知し、この検知出力は、電磁石41のコイルに与えられる電流もしくは電圧を制御する制御部51にフィードバックされる。また、インペラ21に重力等による半径方向の力が作用しても、インペラ21の永久磁石25とロータ31の永久磁石33との間の磁束の剪断力および電磁石41と磁性体28との間の磁束の剪断力が作用するため、インペラ21はハウジング20の中心に保持される。また、位置センサ42を用いずに、電磁石に流れる電流波形より該インペラの磁性体位置を検出するための演算回路を備えるものでもよい。
【0020】
次に、制御装置6について、図1を用いて説明する。
制御装置6は、磁気カップリング用のモータ34のためのパワーアンプ52およびモータ制御回路53を備えるモータドライバ、電磁石41のためのパワーアンプ54とセンサ42のためのセンサ回路55およびPID補償器56を備える磁気軸受制御器、パワーアンプ54により電磁石41に供給される電磁石電流をモニタリングする第1の磁気カップリング異常検出器57、パワーアンプ52によりモータ34に供給されるモータ駆動電流およびモータ制御回路より出力されるモータ回転数をモニタリングする第2の磁気カップリング異常検出器58、制御部51を備える。制御部51は、第1の磁気カップリング異常検出器57および第2の磁気カップリング異常検出器58と電気的に接続されている。具体的には、2つの検出器57,58より信号が入力されるように接続されている。また、制御部51は、モータドライバのモータ制御回路53および磁気軸受制御器のパワーアンプ54とも電気的に接続されており、これらを制御する機能を備えている。
【0021】
そして、制御装置6は、電磁石電流モニタリング機能による電流値とモータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値とモータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用してインペラ脱調(言い換えれば、磁気カップリング脱調)状態判定する機能を備えている。具体的には、インペラ脱調状態判定機能は、電磁石電流モニタリング機能による電流値が第1の所定値以下である場合、もしくは、モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応する第1の記憶モータ駆動電流値よりもモータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が小さい場合に、インペラが脱調状態であると判定するものである。
【0022】
インペラ脱調状態判定機能は、上記のように2つの方法によって判定できるが、脱調状態でないにもかかわらず脱調であると誤判断を防止するためには、上述の2つの判定の両者を利用することにより脱調状態を判定すればよい。
インペラ脱調状態判定機能は、電磁石電流モニタリング機能による電流値が第1の所定値以下であるかどうかを判断するための第1の磁気カップリング異常検出器57を備える。
【0023】
図6は、遠心式液体ポンプ装置におけるインペラ脱調(磁気軸受カップリング脱調)が生じた時の磁気軸受電流変化を説明するための説明図である。磁気カップリングに脱調が起こると、ハウジング内での不規則な変位あるいはインペラはモータ側から離れ電磁石側に寄った位置への変位が生じる。そのため、インペラがモータ側に吸引されなくなり、電磁石電流も低下する。そこで、電磁石電流がある閾値(図6におけるD)より小さくなった場合に磁気カップリング異常と判定する。
電磁石電流をモニタリングする第1の磁気カップリング異常検出器57としては、例えば、図7に示すような回路100が好適である。図7は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるインペラ脱調(磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の一例を示すブロック図である。
【0024】
この回路100では、遠心ポンプが備える磁気軸受のための電磁石数(この実施例では3つ)に対応した個々の電流値(I1,I2,I3)がモニタリングされ、第1のオペアンプにより電流値の加算処理が行われ、加算値が閾値Dより小さい場合(具体的には、第2のオペアンプの出力がHの場合)に異常と判定する。なお、磁気カップリング異常検出器としては、このような回路に限定されるものではなく、個々の電磁石電流について、いずれかが閾値より小さい場合、もしくは2つ以上が閾値より小さい場合に異常と判定するものであってもよい。また、このようなアナログ式のものでなく、デジタル式のものでもよい。さらに、上記の磁気カップリング異常検出器において判断情報となる電流値としては、電流の所定時間の加算値、電流の所定時間の加算平均値、所定時間の電流の平均値を用いるものとしてもよい。
【0025】
電流の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。電流の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。所定時間の電流の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
そして、インペラ脱調状態判定機能は、モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応する第1のモータ駆動電流所定値よりもモータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が小さいかどうかを判断するための第2の磁気カップリング異常検出器58を備えている。
【0026】
図8は、遠心式液体ポンプ装置におけるモータ回転数とモータ電流の関係を説明するための説明図であり、正常にインペラが浮上回転している時の各回転数におけるモータ電流値は、図8のB領域にあることおよび磁気カップリングに脱調が起こるとA領域に移動することを本発明者らは実験により確認した。そこで、モータ回転数とモータ電流値の関係がA領域にある場合を磁気カップリング異常と判断する。
人工心臓等の血液ポンプにおいては、所定粘度(例えば、3mPa.s)の血液を充填し、閉塞状態(流量0L/min)で浮上回転させた時のモータ電流値以下の場合が異常と考える。そこで、上記の状態において、いくつかのモータ回転数におけるモータ電流値を測定し、測定値より、磁気カップリング異常判定用の関係式(第1の関係式)を算出した。ここでは、関係式は、最小二乗法を用いて算出した1次回帰式とした。なお、関係式は、2次以上の回帰式としてもよい。
【0027】
第2の磁気カップリング異常検出器58としては、例えば、図9に示すような回路110が好適である。図9は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される第2のインペラ脱調(第2の磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の一例を示すブロック図である。
この回路110では、モニタリングされるモータ回転数より、磁気カップリング異常と判断される電流値を演算し、この演算電流値とモニタリングされるモータ電流値とを比較し、モータ電流値が演算電流値より低い場合には、磁気カップリング異常と判断するものとなっている。演算電流値算出用回路81は、脱調判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式、例えば、上述の磁気カップリング異常判定用の関係式(第1の関係式)もしくはこの式より導かれた電流値演算式を記憶し、記憶する関係式もしくは演算式と入力されるモータ回転数を用いて限界電流値(下限電流値)を演算する機能を備えている。具体的には、入力されるモータ回転数信号がデジタル信号である場合にはそのまま用い、アナログ信号の場合にはデジタル信号に変換し、回転数のデジタル信号を演算部に入力させ、演算部において記憶している磁気カップリング異常判定用の関係式(第1の関係式)もしくはこの式より導かれる電流値演算式より限界電流値(下限電流値)を演算する。そして、演算電流値をアナログ変換して比較器に入力させ、モータ電流値と演算電流値を比較し、モータ電流値が演算電流値より小さい場合に、磁気カップリング異常と判断する。なお、第2の磁気カップリング異常検出器は、上述にデジタル式に限定されるものではなく、図10に示すようなアナログ式のものでもよい。このアナログ回路110aでは、モータ電流値演算部81の出力I'がモータ回転数値に比例する場合を想定したものである。
【0028】
さらに、上記の磁気カップリング異常検出器において判断情報となるモータ電流値としては、所定時間の加算値、所定時間の加算平均値、所定時間の時間平均値を用いるものとしてもよい。
電流の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。電流の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。所定時間の電流の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
【0029】
なお、第2の磁気カップリング異常検出器58としては、上述のものに限定されるものではなく、例えば、図11に示すような回路120であってもよい。図11は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される第2のインペラ脱調(第2の磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の他の例を示すブロック図である。
この回路120では、モニタリングされるモータ電流値より、磁気カップリング異常と判断されるモータ回転数を演算し、この回転数演算値とモニタリングされるモータ回転数とを比較し、モータ回転数が回転数演算値より大きい場合に磁気カップリング異常と判断するものである。この場合、第2の磁気カップリング異常検出器演算電流値算出用回路81ではなく、回転数演算回路82を備えるものとなる。回転数演算回路は、脱調判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式、例えば、上述の磁気カップリング異常判定用の関係式(第1の関係式)もしくはこの式より導かれた回転数演算式を記憶し、記憶する関係式もしくは演算式と入力されるモータ電流値を用いて限界回転数(上限回転数)を演算する機能を備えるものとなる。具体的には、入力されるモータ電流値をデジタル信号に変換し、電流値のデジタル信号を演算部に入力させ、演算部において記憶している磁気カップリング異常判定用の関係式(第1の関係式)もしくはこの式より導かれる回転数演算式より回転数演算値(限界回転数、上限回転数)を演算する。そして、回転数演算値をアナログ変換して比較器に入力させ、モータ回転数と比較し、モータ回転数が回転数演算値より大きい場合に、磁気カップリング異常と判断する。
【0030】
さらに、上記の磁気カップリング異常検出器において判断情報となるモータ回転数としては、所定時間の加算値、所定時間の加算平均値、所定時間の時間平均値を用いるものとしてもよい。
回転数の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。回転数の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。回転数の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
【0031】
そして、制御装置6は、インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調(言い換えれば、磁気カップリング脱調)状態と判定された場合に行われる脱調解消試行機能を備えていることが好ましい。
磁気カップリングが脱調した場合に、一旦回転を停止する、あるいは低回転(例えば、300rpm)以下に低下させることによって、復調する場合が多いことを実験により確認した。
脱調解消試行機能としては、インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調(言い換えれば、磁気カップリング脱調)状態と判定された後、モータを停止させた後、モータ回転を再開する一時停止型脱調解消試行機能が好適である。
【0032】
一時停止型脱調解消試行機能としては、例えば、図12に示すフローチャートのように制御することにより行うことができる。図12は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される脱調解消試行機能の一例を説明するためのフローチャートである。
この実施例の一時停止型脱調解消試行機能では、図12に示すように、モータ回転継続中常時インペラが脱調していないか判断し、インペラが脱調と判断されると、モータの回転を停止し、再度通常回転数(1600〜2600rpm、好ましくは、1800〜2400rpm)でモータ回転を開始する。そして、所定時間、例えば、10〜20秒経過後、再び、インペラが脱調していないか判断し、脱調していない場合には、モータの回転を継続する。また、モータの回転停止およびモータ回転の再開を数回(例えば、3〜10回、この実施例では3回)繰り返して行っても脱調を解消できない場合には、モータ回転を停止した後、所定低回転数、例えば、1000〜1500rpm程度にてモータ回転を開始する。
【0033】
また、図13に示すように、脱調解消後、通常回転数にモータ回転を上昇させず、所定低回転数(例えば、1000〜1500rpm程度)にモータ回転を上昇させた後、所定時間(例えば、10秒〜300秒)経過後、再びインペラが脱調していないか判断し、脱調していない場合には、通常回転数にモータ回転を上昇させ、モータの回転を継続するようにしてもよい。この場合においては、通常回転数にモータ回転数を復帰させた後の再脱調が数回(例えば、3〜10回、この実施例では3回)繰り返して発生した場合には、所定低回転数(例えば、1000〜1500rpm程度)にて回転を継続させるように制御するものとなっている。
【0034】
また、脱調解消試行機能としては、インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調状態と判定された後、モータを所定時間(例えば、2〜10秒間)、低速回転(例えば、100〜500rpm)させた後、モータ回転数を上げていく一時低速型脱調解消試行機能も好適である。
この一時低速型脱調解消試行機能としては、例えば、図14に示すフローチャートのように制御することにより行ってもよい。この実施例の一時低速型脱調解消試行機能は、回転数の一時低速によっても脱調が解消されない場合には、一時停止型脱調解消試行機能を行う複合型となっている。図14に示すように、モータ回転継続中常時インペラが脱調していないか判断し、インペラが脱調と判断されると、モータの回転を所定回転数(例えば、100〜500rpm)に低下させる。そして、所定時間(例えば、1〜10秒)経過後、再び、インペラが脱調していないか判断し、脱調していない場合には、通常回転数にモータ回転を上昇させ、モータの回転を継続する。また、モータの回転数低下によっても脱調状態を解消できない場合には、モータの回転を停止し、再度モータ回転を通常回転数にて開始する。そして、所定時間(例えば、1〜20秒)経過後、再び、インペラが脱調していないか判断する。モータの回転停止およびモータ回転の再開を数回(例えば、3〜10回、この実施例では3回)繰り返して行っても脱調を解消できない場合には、モータ回転を停止し、再度モータを所定低回転数(例えば、1000〜1500rpm)で回転を開始する。
【0035】
また、図15に示すように、脱調解消後、通常回転数にモータ回転を上昇させず、所定低回転数(例えば、1000〜1500rpm程度)にモータ回転を上昇させた後、所定時間(例えば、10〜300秒)経過後、再びインペラが脱調していないか判断し、脱調していない場合には、通常回転数にモータ回転を上昇させ、モータの回転を継続するようにしてもよい。この場合においては、通常回転数にモータ回転数を復帰させた後の再脱調が数回(例えば、3〜10回、この実施例では3回)繰り返して発生した場合には、所定低回転数(例えば、1000〜1500rpm程度)にて回転を継続させるように制御するものとなっている。
【0036】
そして、制御装置6は、モータ回転高負荷状態判定機能を備えていることが好ましい。モータ回転高負荷状態判定機能は、モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応し、かつ第1のモータ駆動電流所定値より大きい第2のモータ駆動電流所定値よりもモータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が大きい場合に、モータ回転が高負荷状態であると判定するものである。
モータ回転高負荷状態判定機能は、高負荷状態判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式を記憶している。
前述のように正常にインペラが浮上回転している時の各回転数におけるモータ電流値は、図8のB領域にあるが、ポンプ室内の血栓形成、インペラの浮上異常、モータ内への異物侵入、モータ部ベアリング部の不良、モータ制御回路の異常等が発生した場合には、B領域からC領域に移動することがある。そこで、このモータ回転数とモータ電流値の関係がC領域にある場合を異常と判定する。具体的には、人工心臓等の血液ポンプにおいては、6mPa.sの血液を所定流量(例えば、10〜15L/min程度)で浮上回転させた時のモータ電流値以上の場合が異常と考えられる。モータ回転高負荷状態の検出も上述した磁気カップリング異常の検出と類似した方法(回路)により行うことができる。
【0037】
モータ回転高負荷状態判定のためのモータ異常検出器63としては、例えば、図16に示すような回路130が好適である。図16は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるモータ回転高負荷状態判定用回路の一例を示すブロック図である。
この回路130では、モニタリングされるモータ回転数値より、モータ回転高負荷状態と判断される電流値を演算し、この演算電流値とモニタリングされるモータ電流値とを比較し、モータ電流値が演算電流値より高い場合には、モータ回転高負荷状態と判断するものとなっている。演算電流値算出用回路83は、高負荷状態判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式、例えば、モータ回転高負荷状態判定用の関係式(第2の関係式)もしくはこの式より導かれた電流値演算式を記憶し、記憶する関係式もしくは演算式と入力されるモータ回転数を用いて限界電流値(上限電流値)を演算する機能を備えている。具体的には、入力されるモータ回転数信号がデジタル信号である場合にはそのまま用い、アナログ信号の場合にはデジタル信号に変換し、回転数のデジタル信号を演算部に入力させ、演算部において記憶しているモータ回転高負荷状態判定用の関係式(第2の関係式)もしくはこの式より導かれる電流値演算式より限界電流値(上限電流値)を演算する。そして、演算電流値をアナログ変換して比較器に入力させ、モータ電流値と演算電流値を比較し、モータ電流値が演算電流値より大きい場合に、モータ回転高負荷状態と判断する。
【0038】
さらに、上記のモータ回転高負荷状態検出器において判断情報となるモータ電流値およびモータ回転数としては、所定時間の加算値、所定時間の加算平均値、所定時間の時間平均値を用いるものとしてもよい。
電流の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。電流の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。所定時間の電流の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
【0039】
なお、モータ異常検出器63としては、上述のものに限定されるものではなく、例えば、図17に示すような回路140であってもよい。図17は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるモータ回転高負荷状態判定用回路の他の例を示すブロック図である。
この回路140では、モニタリングされるモータ電流値より、モータ回転高負荷状態と判断されるモータ回転数所定値を演算し、この回転数演算値とモニタリングされるモータ回転数とを比較し、モータ回転数が回転数演算値より低い場合にモータ回転高負荷状態と判断するものであってもよい。このため、図17の回路では、電流値算出用回路83ではなく、回転数演算回路84を備えている。回転数演算回路は、高負荷状態判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式、例えば、上述のモータ回転高負荷状態判定用の関係式(第2の関係式)もしくはこの式より導かれた回転数演算式を記憶し、記憶する関係式もしくは演算式と入力されるモータ電流値を用いて限界回転数値(下限回転数)を演算する機能を備えるものとなる。具体的には、入力されるモータ電流値をデジタル信号に変換し、電流値のデジタル信号を演算部に入力させ、演算部において記憶しているモータ回転高負荷状態判定用の関係式(第2の関係式)もしくはこの式より導かれる回転数演算式より回転数演算値(限界回転数、下限回転数)を演算する。そして、回転数演算値をアナログ変換して比較器に入力させ、モータ回転数と比較し、モータ回転数が回転数演算値より小さい場合に、モータ回転高負荷状態と判断する。
【0040】
回転数の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。回転数の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。回転数の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
さらに、制御装置6は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能と、インペラ位置異常判定機能を備えていることが好ましい。インペラ位置異常判定機能は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能による位置出力値が、第1の記憶値以上もしくは第2の記憶値以下となった場合に、インペラ位置が異常であると判定するものである。
【0041】
磁気軸受位置センサ出力は、インペラの軸方向の浮上位置を示すものであり、センサ出力が0となるように、制御装置は浮上制御を行っている。磁気軸受センサ回路に異常が発生した場合、あるいはポンプ室内に血栓などの異物が形成された場合には、このセンサ出力値が0から離れる。そこで、センサ出力値がある値より大きくなった場合には、インペラ位置異常(第1の磁気軸受異常)と判断する。
インペラ位置異常(第1の磁気軸受異常)のための磁気軸受制御異常検出器65としては、例えば、図18に示すような回路150が使用できる。図18は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるインペラ位置異常(磁気軸受異常)検出回路の一例を示すブロック図である。
【0042】
この実施例の装置では、3つのセンサからの出力(この実施例ではS1、S2、S3)が用いられており、回路150は、これらセンサからの出力をオペアンプOP1で閾値Aと比較演算し、またオペアンプOP2で閾値−Aと比較演算する。OP1およびOP2はそれぞれセンサ出力が閾値を超えた場合に+の電圧が出力される。また閾値を超えない場合には−の電圧が出力されるが、ダイオードD1とD2によって抵抗R1には出力されない。この+の電圧出力は抵抗R1とコンデンサC1で構成される1次ローパスフィルタを通しオペアンプOP3の非反転端子に入力される。すなわち、OP1もしくはOP2が+の電圧を出力した積算時間に比例した電圧をOP3の非反転端子に入力されることになる。このOP3の非反転端子電圧と閾値Bとを比較し、異常と判断する。ここで、R2は、このOP3の非反転端子電圧を放電させる役目を持ち、センサ出力の異常が連続性を持たない場合には、異常と判断しないようにしている。
【0043】
回路150では各センサ出力を監視し、異常の判定を行ったが、各センサ出力の総和を監視し異常の判定を行うものであってもよい。
また、各センサを監視する場合にも、回路150で示したように、いずれか1つのセンサ出力に異常があった場合にもインペラ位置異常と判定するする方法以外に、2つ以上のセンサが異常と判定された場合のみにインペラ位置異常と判定するものでもよい。
さらに、上記の磁気軸受制御異常検出器において、判断情報となるセンサ出力値としては、所定時間の加算値、所定時間の加算平均値、所定時間の平均値を用いるものとしてもよい。
【0044】
図19および図20は、遠心式液体ポンプ装置における磁気軸受異常(インペラ位置異常)が発生した時の磁気軸受センサ出力および磁気軸受センサ出力異常の積算値と時間との関係を説明するための説明図である。
具体的には、図19は、インペラがモータ側に張り付いて動かなくなってしまったような静的な異常状態におけるセンサ出力を実線により示し、二点鎖線は、OP3の非反転端子電圧を示している。OP3の非反転端子電圧(二点鎖線)が閾値Bを越えた時点で異常と判定される。
【0045】
また、図20は、インペラが軸方向に大きく振動しているような動的な異常をモデルしたものであり、このような状態におけるセンサ出力を実線により示し、二点鎖線は、OP3の非反転端子電圧センサ出力の積分値を示している。OP3の非反転端子電圧(二点鎖線)が閾値Bを越えた時点で異常と判定される。
さらに、上記の磁気軸受制御異常検出器において判断情報となるセンサ出力値としては、所定時間の加算値、所定時間の加算平均値、所定時間の時間平均値を用いるものとしてもよい。
センサ出力値の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。センサ出力値の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。センサ出力値の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
【0046】
さらに、制御装置6は、磁気軸受異常判定機能(第2の磁気軸受異常判定機能、磁気軸受電流異常判定機能)を備えることが好ましい。磁気軸受異常判定機能は、電磁石電流モニタリング機能による電流値が第2の所定値以上となった場合に、磁気軸受異常であると判定するものである。
図21は、遠心式液体ポンプ装置における磁気軸受異常(電磁石電流異常)が発生した時の磁気軸受センサ出力および電磁石電流と時間との関係を説明するための説明図である。例えば、図21に示すように、インペラと電磁石側ハウジングの隙間に血栓が形成された場合には、センサ出力には変化がなくても、電磁石電流の増加が起こりうる。そこで、電磁石電流がある閾値より大きくなった場合に磁気軸受異常(磁気軸受電流異常)と判定する。
第2の磁気軸受異常判定のための磁気軸受電流異常検出器64としては、例えば、図22に示すような回路170が好適である。図22は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される磁気軸受異常(電磁石電流異常)検出回路の一例を示すブロック図である。
【0047】
この回路170では、遠心ポンプが備える磁気軸受のための電磁石数(この実施例では3つ)に対応した個々の電流値(I1,I2,I3)がモニタリングされ、電流値の和が閾値−Cより大きい場合に異常と判定される。具体的には、個々の電流値(I1,I2,I3)は、第1のオペアンプにより加算処理され、加算電流値が第2のオペアンプにより閾値−Cと比較され、第2のオペアンプ(入力値が閾値より小さい場合に出力がHとなる)の出力がLの場合に異常と判定される。なお、磁気カップリング異常検出器としては、このような回路に限定されるものではなく、個々の電磁石電流について、いずれかが閾値より大きい場合、もしくは2つ以上が閾値より大きい場合に異常と判定するものであってもよい。また、このようなアナログ式のものでなく、デジタル式のものでもよい。さらに、上記の磁気軸受電流異常検出器において判断情報となる電流値としては、電流の所定時間の加算値、電流の所定時間の加算平均値、所定時間の電流の平均値を用いるものとしてもよい。
電流の所定時間の加算値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。電流の所定時間の加算平均値を用いる場合には、デジタル処理が使用される。所定時間の電流の時間平均値を用いる場合には、ローパスフィルタを用いたアナログ回路もしくはデジタル処理が使用できる。
【0048】
さらに、制御装置6は、制御装置内温度検知機能を備えていることが好ましい。この実施例では、制御装置内温度検知機能のために制御装置温度異常検出器66を備えており、制御装置温度異常検出器66は、サーミスタ、熱電対などの温度検出素子を利用した温度検出器である。そして、例えば、60℃以上の温度が検出された時に、異常と判定する。
そして、制御装置6は、上述した各判定機能により、異常と判定された場合に作動する警報出力器59を備えている。そして、警報出力器は、判定機能における異常判定項目により異なる形態の警報を出力するものとなっている。例えば、警報出力器がアラーム手段の場合であれば、インペラ脱調(言い換えれば、磁気カップリング脱調)状態と判定された場合には、最も強い警報音を発し、以下、モータ回転高負荷状態の判定時、インペラ位置異常(第1の磁気軸受異常)判定時、磁気軸受電流異常(第2の磁気軸受異常)判定時、制御装置温度異常判定時の順に、警報音レベルが低下するものとすることが好ましい。警報音レベルの変化は、音量、周波数、周期、警報音の種類もしくはその組み合わせにより行うことができる。また、複数の異常を同時に検出した場合には、上記のようにあらかじめ各々の異常に優先順位をつけておき、優先度の高い異常に対応する警告を出力することが好ましい。なお、上記の異常の優先順位は生体へ障害を与える影響の高い順としている。
なお、異常を外部に出力する手段はブザー音に限らず、コントローラ等に設けられたディスプレイへの異常状況の表示、あるいはエラーランプの点灯、さらにはボイス機能による発声などの手段を用いてもかまわない。この時も前述のようにエラーに優先順位を設け、対応することが望まれる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の遠心式液体ポンプ装置は、液体流入ポートと液体流出ポートとを有するハウジングと、内部に磁性体を備え、前記ハウジング内で回転し、回転時の遠心力によって液体を送液するインペラを有する遠心式液体ポンプ部と、前記遠心式液体ポンプ部の前記インペラの第1の磁性体を吸引するための磁石を備えるロータと、該ロータを回転させるモータを備えるインペラ回転トルク発生部と、前記インペラの第2の磁性体を吸引するための電磁石を備えるインペラ位置制御部と、前記インペラの磁性体の位置を検出するための位置センサを備え、前記ハウジングに対して前記インペラが非接触状態にて回転する遠心式液体ポンプ装置本体部と、該遠心式液体ポンプ装置本体部のための制御装置とを備える遠心式液体ポンプ装置であって、該制御装置は、電磁石電流モニタリング機能と、モータ駆動電流モニタリング機能と、モータ回転数モニタリング機能と、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値と前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値と前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用するインペラ脱調状態判定機能を備えている。
このため、送液停止状態であり、遠心ポンプとして最も大きな異常であるインペラの脱調状態を確実に検知できるとともに、脱調状態でないにもかかわらず誤って脱調と判断することが極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の遠心式液体ポンプ装置の実施例のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される遠心式液体ポンプ装置本体部の一例の正面図である。
【図3】図3は、図2の遠心式液体ポンプ装置本体部をインペラ部分にて切断した断面図である。
【図4】図4は、図2に示した実施例の遠心式液体ポンプ装置の縦断面図である。
【図5】図5は、図2に示した遠心式液体ポンプ装置本体部の平面図である。
【図6】図6は、遠心式液体ポンプ装置におけるインペラ脱調(磁気軸受カップリング脱調)が生じた時の磁気軸受電流変化を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるインペラ脱調(磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の一例を示すブロック図である。
【図8】図8は、遠心式液体ポンプ装置におけるモータ回転数とモータ電流の関係を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される第2のインペラ脱調(第2の磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の一例を示すブロック図である。
【図10】図10は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される第2のインペラ脱調(第2の磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の一例を示すブロック図である。
【図11】図11は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される第2のインペラ脱調(第2の磁気軸受カップリング脱調)検出用回路の他の例を示すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される脱調解消試行機能の一例を説明するためのフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される脱調解消試行機能の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される脱調解消試行機能の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される脱調解消試行機能の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図16】図16は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるモータ回転高負荷状態判定用回路の一例を示すブロック図である。
【図17】図17は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるモータ回転高負荷状態判定用回路の他の例を示すブロック図である。
【図18】図18は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用されるインペラ位置異常(磁気軸受異常)検出回路の一例を示すブロック図である。
【図19】図19は、遠心式液体ポンプ装置における磁気軸受異常(インペラ位置異常)が発生した時の磁気軸受センサ出力および磁気軸受センサ出力異常の積算値と時間との関係を説明するための説明図である。
【図20】図20は、遠心式液体ポンプ装置における異なるタイプの磁気軸受異常(インペラ位置異常)が発生した時の磁気軸受センサ出力および磁気軸受センサ出力異常の積算値と時間との関係を説明するための説明図である。
【図21】図21は、遠心式液体ポンプ装置における磁気軸受異常(電磁石電流異常)が発生した時の磁気軸受センサ出力および電磁石電流と時間との関係を説明するための説明図である。
【図22】図22は、本発明の遠心式液体ポンプ装置に使用される磁気軸受異常(電磁石電流異常)検出回路の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 遠心式液体ポンプ装置
2 遠心式液体ポンプ部
3 インペラ回転トルク発生部
4 インペラ位置制御部
5 遠心式液体ポンプ装置本体部
6 制御装置
21 インペラ
25 磁性体
31 ロータ
34 モータ
41 電磁石

Claims (15)

  1. 液体流入ポートと液体流出ポートとを有するハウジングと、内部に磁性体を備え、前記ハウジング内で回転し、回転時の遠心力によって液体を送液するインペラを有する遠心式液体ポンプ部と、前記遠心式液体ポンプ部の前記インペラの第1の磁性体を吸引するための磁石を備えるロータと、該ロータを回転させるモータを備えるインペラ回転トルク発生部と、前記インペラの第2の磁性体を吸引するための電磁石を備えるインペラ位置制御部と、前記インペラの位置を検出するための位置センサを備え、前記ハウジングに対して前記インペラが非接触状態にて回転する遠心式液体ポンプ装置本体部と、該遠心式液体ポンプ装置本体部のための制御装置とを備える遠心式液体ポンプ装置であって、該制御装置は、電磁石電流モニタリング機能と、モータ駆動電流モニタリング機能と、モータ回転数モニタリング機能と、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値と前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値と前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用するインペラ脱調状態判定機能を備えており、かつ、
    前記インペラ脱調状態判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値が第1の所定値以下の場合と、前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応する第1のモータ駆動電流所定値よりも前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が小さい場合に、インペラが脱調状態であると判定するものであることを特徴とする遠心式液体ポンプ装置。
  2. 液体流入ポートと液体流出ポートとを有するハウジングと、内部に磁性体を備え、前記ハウジング内で回転し、回転時の遠心力によって液体を送液するインペラを有する遠心式液体ポンプ部と、前記遠心式液体ポンプ部の前記インペラの第1の磁性体を吸引するための磁石を備えるロータと、該ロータを回転させるモータを備えるインペラ回転トルク発生部と、前記インペラの第2の磁性体を吸引するための電磁石を備えるインペラ位置制御部と、前記インペラの位置を検出するための位置センサを備え、前記ハウジングに対して前記インペラが非接触状態にて回転する遠心式液体ポンプ装置本体部と、該遠心式液体ポンプ装置本体部のための制御装置とを備える遠心式液体ポンプ装置であって、該制御装置は、電磁石電流モニタリング機能と、モータ駆動電流モニタリング機能と、モータ回転数モニタリング機能と、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値と前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値と前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値を利用するインペラ脱調状態判定機能を備えており、かつ、
    前記インペラ脱調状態判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値が第1の所定値以下であり、かつ、前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応する第1のモータ駆動電流所定値よりも前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が小さい場合に、インペラが脱調状態であると判定するものであることを特徴とする遠心式液体ポンプ装置。
  3. 前記インペラ脱調状態判定機能は、脱調判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式を記憶している請求項1または2に記載の遠心式液体ポンプ装置。
  4. 前記インペラ脱調状態判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値の所定時間平均を用いるものである請求項1ないし3のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  5. 前記制御装置は、前記インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調状態と判定された場合に、前記モータを所定時間停止させた後、モータ回転を再開する一時停止型脱調解消試行機能を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  6. 前記制御装置は、前記インペラ脱調状態判定機能によりインペラ脱調状態と判定された場合に、前記モータを所定時間低速回転させた後、モータ回転数を上げる一時低速型脱調解消試行機能を備えている請求項1ないし4のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  7. 前記制御装置は、モータ回転高負荷状態判定機能を備えており、該モータ回転高負荷状態判定機能は、前記モータ回転数モニタリング機能によるモータ回転数値に対応し、かつ前記第1のモータ駆動電流所定値より大きい第2のモータ駆動電流所定値よりも前記モータ駆動電流値モニタリング機能によるモータ駆動電流値が大きい場合に、モータ回転が高負荷状態であると判定するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  8. 前記モータ回転高負荷状態判定機能は、負荷状態判定用のモータ回転数とモータ駆動電流値関係式を記憶している請求項7に記載の遠心式液体ポンプ装置。
  9. 前記制御装置は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能と、インペラ位置異常判定機能を備えており、該インペラ位置異常判定機能は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能による位置出力値が、第1の記憶値以上もしくは第2の記憶値以下となった場合に、インペラ位置が異常であると判定するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  10. 前記インペラ位置異常判定機能は、インペラ位置センサ出力値モニタリング機能による出力値の所定時間平均を用いるものである請求項9に記載の遠心式液体ポンプ装置。
  11. 前記制御装置は、磁気軸受異常判定機能を備え、該磁気軸受異常判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値が第2の所定値以上となった場合に、磁気軸受異常であると判定するものである請求項1ないし10のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  12. 前記磁気軸受異常判定機能は、前記電磁石電流モニタリング機能による電流値の所定時間平均が第2の所定値以上となった場合に、磁気軸受異常であると判定するものである請求項11に記載の遠心式液体ポンプ装置。
  13. 前記制御装置は、該制御装置内温度検知機能を備えている請求項1ないし12のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  14. 前記制御装置は、前記判定機能により、異常と判定された場合に作動する警報出力器を備えている請求項1ないし13のいずれかに記載の遠心式液体ポンプ装置。
  15. 前記警報出力器は、前記判定機能における異常判定項目により異なる形態の警報を出力するものである請求項14に記載の遠心式液体ポンプ装置。
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