(液晶装置の実施形態)
以下、本発明に係る液晶装置を実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がその実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を用いて各種の構造を例示するが、これらの図面に示される構造は特徴的な部分を分かり易く示すために実際の構造に対して寸法を異ならせて示す場合があることに注意を要する。
図1は、本発明に係る液晶装置の一実施形態を示している。図2は、図1のA−A線に従った断面図である。図3は、図2における画素部分を拡大して示す断面図である。図1において、液晶装置1は、電気光学パネルとしての液晶パネル2と、この液晶パネル2に付設された照明装置3と、液晶パネル2に接続された配線基板としてのFPC(Flexible Printed Circuit:可撓性プリント回路)基板4とを有する。この液晶装置1に関しては矢印Aが描かれた側が観察側であり、上記の照明装置3は液晶パネル2に関して観察側と反対側に配置されてバックライトとして機能する。
液晶パネル2は、長方形又は正方形で環状のシール材6によって互いに貼り合わされた一対の基板7及び8を有する。基板7はスイッチング素子が形成される素子基板である。また、素子基板7に対向する基板である基板8はカラーフィルタが形成されるカラーフィルタ基板である。シール材6はその一部に液晶注入口6aを有し、この液晶注入口6aを介して素子基板7とカラーフィルタ基板8との間に電気光学物質としての液晶が注入される。液晶注入口6aは液晶の注入が完了した後に樹脂によって封止される。
照明装置3は、光源としてのLED(Light Emitting Diode)13と、導光体14とを有する。光源としては、LEDのような点状光源以外に、冷陰極管のような線状光源を用いることもできる。導光体14は、例えば、透光性を有する樹脂を材料とする成形加工によって形成され、LED13に対向する側面が光入射面14aであり、液晶パネル2に対向する面が光出射面14bである。矢印Aで示す観察側から見て導光体14の背面には、必要に応じて、光反射層16が設けられる。また、導光体14の光出射面14bには、必要に応じて、光拡散層17が設けられる。
素子基板7は、図2において、第1の透光性の基板7aを有する。この第1透光性基板7aは、例えば、透光性のガラス、透光性のプラスチック等によって形成される。この第1透光性基板7aの外側表面には偏光板18aが、例えば、貼着によって装着される。必要に応じて、偏光板18a以外の光学要素、例えば位相差板を付加的に設けることもできる。他方、第1透光性基板7aの内側表面には、図3に示すように、複数のデータ線19が紙面垂直方向(すなわち、図1の行方向X)に互いに平行に形成されている。個々のデータ線19は図3の左右方向(すなわち、図1の列方向Y)に延びている。そして、スイッチング素子として機能する非線形抵抗素子である複数のTFD素子21がそれらのデータ線19に沿って且つ該データ線19に接続して形成される。
それらのTFD素子21及びデータ線19を覆うように層間絶縁層としてのオーバーレイヤ22が形成され、このオーバーレイヤ22の表面に画素電極23及びフォトスペーサ24が形成されている。オーバーレイヤ22及びフォトスペーサ24のそれぞれは、例えば、透光性、感光性、及び絶縁性を有する樹脂、例えばアクリル樹脂をフォトリソグラフィ処理によってパターニングすることによって形成する。フォトスペーサ24は、立った状態の円柱又は角柱形状に形成されており、セルギャップGが均一な寸法を維持するように機能する。なお、フォトスペーサ24はギャップ材と呼ばれることがある。
画素電極23は、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等といった金属酸化物によって形成される。複数の画素電極23は図1に示すように個々がドット状に形成されており、それらが縦横方向、すなわち行列方向、すなわちX−Y方向へマトリクス状に並ぶように形成される。図4(a)は、図3において矢印B方向、すなわち観察側の反対側から素子基板7を見た場合の、その素子基板7の画素部分の平面構造を示している。また、図4(b)は図4(a)のB−B線に従った断面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、個々のデータ線19は平面的に見て、すなわち平面視で個々の画素電極23と重なる位置に形成されている。つまり、データ線19は互いに隣り合う画素電極23,23の間ではなく、1つの画素電極23の下方位置に形成されている。
図3において、フォトスペーサ24及び画素電極23の上には配向膜26aが形成される。この配向膜26aは、例えばポリイミド等によって形成される。配向膜26aには配向処理、例えばラビング処理が施され、これにより、素子基板7の近傍における液晶分子の初期配向が決められる。
オーバーレイヤ22は、データ線19及びTFD素子21を覆うように形成される。画素電極23は、このオーバーレイヤ22の上に形成されている。このオーバーレイヤ22には、画素電極23とTFD素子21とを電気的に接続するためのコンタクトホール27が形成される。このコンタクトホール27は、オーバーレイヤ22とフォトスペーサ24とをフォトリソグラフィ処理によって一体に形成する際に同時に形成される。このコンタクトホール27は、平面的に見てすなわち平面視で、TFD素子21とは重ならない位置であって、画素電極23と重なる位置に形成される。また、TFD素子21は、図4(a)に示すように、2つのTFD要素である第1TFD要素21aと第2TFD要素21bとを直列に接続することによって、いわゆるバック・ツー・バック(Back-to-Back)構造として形成されている。
TFD素子21は、図4(b)に示すように、第1素子電極34、絶縁膜35、そして第2素子電極36をその順で重ねることによって形成されている。第1素子電極34は、例えば、Ta(タンタル)又はTa合金によって形成される。Ta合金としては、例えば、TaW(タンタル・タングステン)を用いることができる。絶縁膜35は、例えば、陽極酸化処理によって形成される。第2素子電極36は、例えばCr、モリブデン・タングステン合金によって形成される。
第1TFD要素21aの第2素子電極36は、図4(a)に示すように、データ線19から延びている。つまり、データ線19はCrによって形成されている。第2TFD要素21bの第2素子電極36はその先端に広がった端子部36aを有し、コンタクトホール27はこの端子部36aに対応する位置に形成される。そして、このコンタクトホール27を通して画素電極23と第2素子電極36とが導通する。
上記のように、画素電極23の下にオーバーレイヤ22を設けることにより、画素電極23の層とTFD素子21の層とを別の層に分けている。この構造は、画素電極23とTFD素子21とを同じ層に形成する構造に比べて、図2の素子基板7の表面を有効に活用できる。例えば、画素電極23の面積、すなわち画素面積を大きくすることができるので、液晶装置1において表示を見易くできる。
図4(b)において、データ線19の隣に素子側遮光部材29が設けられている。これらの遮光部材29はTFD素子21を形成する際に同時にそのTFD素子21と同じ材料によって形成される。すなわち、遮光部材29は、第1素子電極34と同じTa又はTa合金か、絶縁膜35と同じ酸化膜か、又は第2素子電極36と同じCr、モリブデン・タングステン合金によって形成される。遮光部材29は、また、それらの材料の積層構造であっても良い。遮光部材29は、図4(a)に示すように、互いに隣り合う画素電極23,23の間に形成される間隙であってデータ線19と同じ方向(すなわち、列方向Y)に延びる複数の線状の間隙に平面視で重なるように基板7a上に形成されている。
個々の遮光部材29は共通線28につながっている。この共通線28は液晶パネル内の適所、例えば、図1においてシール材6の1辺の近傍に設けられる。この共通線28は、例えば、遮光部材29と同じ材料によって遮光部材29を形成するのと同時に形成される。複数の遮光部材29を共通線28によって結ぶことにより、それらの遮光部材29は電気的に同じ電位に設定されている。この場合、複数の遮光部材29の具体的な電位は特定の値に限定されない。例えば、液晶装置の全体の接地電位であっても良いし、電圧0Vであっても良いし、接地電位及び0V以外の適宜の電位であっても良い。
なお、図4(b)の第1素子電極34、データ線19、及び遮光部材29が第1透光性基板7aから剥れることを防止したり、第1透光性基板7aから第1素子電極34等へ不純物が拡散しないようにするために、TFD素子21と第1透光性基板7aとの間、データ線19と第1透光性基板7aとの間、及び遮光部材29と第1透光性基板7aとの間に下地層を設けることもできる。
図2において、素子基板7に対向するカラーフィルタ基板8は、矢印Aで示す観察側から見て長方形又は正方形の第2の透光性の基板8aを有する。この第2透光性基板8aは、例えば、透光性のガラス、透光性のプラスチック等によって形成される。この第2透光性基板8aの外側表面には偏光板18bが、例えば、貼着によって装着される。必要に応じて、偏光板18b以外の光学要素、例えば位相差板を付加的に設けることもできる。
第2透光性基板8aの内側表面には、図3に示すように、樹脂膜41が形成され、その上に光反射膜42が形成される。光反射膜42は、例えば、Al(アルミニウム)、Al合金等によって形成される。光反射膜42の上には複数の着色要素43が形成され、それらの着色要素43の間にカラーフィルタ側遮光部材44が形成され、それらの上にオーバーコート層46が形成され、その上に紙面垂直方向へ直線的に延びる複数の帯状電極47が形成され、さらにその上に配向膜26bが形成される。配向膜26bには配向処理、例えばラビング処理が施され、これにより、カラーフィルタ基板8の近傍における液晶分子の初期配向が決められる。
上記の樹脂膜41の表面には凸部又は凹部が形成されて凹凸パターンが形成されている。この凹凸パターンは矢印A方向から見てランダム(すなわち、無秩序)になっている。樹脂膜41の表面にこのような凹凸パターンを設けることにより、その上に積層された光反射膜42も同じ凹凸パターンを持つことになる。このため、光反射膜42で反射する光は散乱光となる。これにより、光反射膜42で鏡面反射が生じることを防止できる。
図3において、オーバーコート層46は、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等といった感光性の樹脂によって形成される。図3の紙面垂直方向に帯状に延びる複数の電極47は、例えばITO等といった金属酸化物によって形成される。また、その上に形成された配向膜26bは、例えばポリイミド等によって形成される。
素子基板7上に設けられた複数の画素電極23は矢印A方向から見て、縦横にマトリクス状に並ぶ、いわゆるドットマトリクス状に配列されている。つまり、複数の画素電極23は、図3の左右方向へ直線状に並べられると共に、図3の紙面垂直方向へ直線状に並べられている。一方、カラーフィルタ基板8上に設けられた複数の帯状電極47は、図3において左右方向に等間隔で紙面垂直方向に延びている。画素電極23及び帯状電極47は以上の構成により矢印A方向から見て平面視で重なり合っており、その重なり合った領域が表示のための最小単位であるサブ画素Dを形成している。これらのサブ画素Dが縦横にマトリクス状に並ぶことにより図1の表示領域Vが形成され、この表示領域Vに文字、数字、図形等といった像が表示される。
図3の光反射膜42は、例えばフォトエチング処理によって形成されるが、そのフォトエチング処理の際、光反射膜42はサブ画素Dごとに一部が部分的に除去される。このため、個々のサブ画素Dの中には、光反射膜42が存在する領域と、光反射膜42が存在しない領域51とが設けられる。図5(a)は、図3において矢印A方向、すなわち観察側の方向からカラーフィルタ基板8を見た場合のそのカラーフィルタ基板8の画素近傍の平面構図を示している。この図5(a)に示すように、光反射膜42が存在しない領域51は、サブ画素Dのほぼ中央に長方形状の領域として形成されている。なお、領域51は長方形状等といった特定の形状に限られものではない。
図3において、個々のサブ画素Dの中で光反射膜42が存在する領域が反射部Rであり、光反射膜42が存在しない領域51が透過部Tである。矢印Aで示す観察側から入射した外部光、すなわち素子基板7側から入射した外部光L0は、反射部Rで反射する。一方、図2の照明装置3の導光体14から出射した図3の光L1は、透過部Tを透過する。
複数の着色要素43は、1つ1つがサブ画素Dに対応して矢印A方向から見て長方形のドット状に形成されている。これらの着色要素43の1つ1つは、B(青)、G(緑)、R(赤)の3原色のいずれか1つの光を通す材料によって形成されている。これら各色の着色要素43は、本実施形態では、縦方向(すなわち、図5(a)の列方向Y)に同じ色が並び、横方向(すなわち、図5(a)の行方向X)に順々に異なる色が並ぶという色配列であるストライプ配列に並べられている。配列としては、ストライプ配列に代えてデルタ配列、モザイク配列、その他適宜の配列を選択しても良い。なお、着色要素43は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の3原色によって形成することもできる。
本実施形態のように、B,G,Rの3色から成る着色要素43を用いてカラー表示を行う場合は、B,G,Rの3色に対応する3つの着色要素43に対応する3つのサブ画素Dによって1つの画素が形成される。他方、白黒又は任意の1色でモノカラー表示を行う場合は、1つのサブ画素Dによって1つの画素が形成される。
図5(b)は図5(a)のC−C線に従った断面構造を示している。図5(b)のカラーフィルタ側遮光部材44は、例えばCr(クロム)等といった遮光性の材料によって形成される。これらの遮光部材44は、図5(a)に斜線で示すように、互いに隣り合う帯状電極47,47の間隙に平面視で重なるように線状、すなわち帯状に形成されている。なお、遮光部材44は、Cr等といった特定の材料によって形成されることに限られず、例えば、着色要素43を構成するB,G,R又はC,M,Yの各着色要素を重ねること、すなわち積層することによっても形成することができる。
以上のように、本実施形態では、カラーフィルタ基板8上に遮光部材44が設けられる。この遮光部材44は、複数の帯状電極47の間に形成されていて行方向Xに延びる間隙を遮光する。カラーフィルタ基板8上の列方向Yには遮光部材は設けられない。一方、図4(a)及び図4(b)に関連して説明したように、素子基板7上にも遮光部材29が設けられる。この遮光部材29は、複数の画素電極23の間隙のうちの列方向Yに延びる間隙を遮光する。素子基板7上の行方向Xには遮光部材は設けられない。
本実施形態では、素子基板7とカラーフィルタ基板8とを貼り合わせたときに、サブ画素Dに対して行方向(X方向)に延びる間隙がカラーフィルタ側遮光部材44によって遮光され、列方向(Y方向)に延びる間隙が素子側遮光部材29によって遮光される。つまり、素子側遮光部材29とカラーフィルタ側遮光部材44とが協働してブラックマスクとして機能する。このブラックマスクの働きにより、着色要素43を透過した光によって表示される像のコントラストが向上する。
なお、図5(a)のカラーフィルタ側遮光部材44は、対向基板である素子基板7側に設けられたTFD素子21及びコンタクトホール27の両方を遮光するのに十分な幅Wを持っている。遮光部材44の幅WのうちTFD素子21に対応する部分で細く、コンタクトホール27に対応する部分で太いのは、コンタクトホール27の部分では比較的広い範囲で光が不安定になるので、その不安定な光が外部から視認されるのを防ぐためである。
以上の構成から成る素子基板7及びカラーフィルタ基板8が図3に示すように貼り合わされたとき、それらの基板の間に間隙、いわゆるセルギャップGが形成され、そのセルギャップG内に液晶が封入されて液晶層12が形成される。そして、素子基板7上に形成したフォトスペーサ24によってセルギャップGの高さ、すなわち液晶層12の層厚が一定に維持される。フォトスペーサ24は、サブ画素Dに対する特定の位置に設けたり、サブ画素Dとは無関係の位置に設けたり、個々のサブ画素Dごとに設けたり、サブ画素Dのいくつか毎に1つ設けたり、あるいはその他の任意の形態で設けることができる。
次に、図2において、素子基板7を構成する第1透光性基板7aはカラーフィルタ基板8の外側へ張り出す張出し部52を有している。この張出し部52のうちの矢印Aで示す観察側と反対側の表面には、配線54がフォトエチング処理等によって形成されている。配線54は複数本形成されており、それらの複数本が紙面垂直方向へ互いに等間隔で平行に並べられている。また、張出し部52の辺端には複数の外部接続用端子56が紙面垂直方向へ互いに等間隔で平行に並ぶように形成されている。図1に示したFPC基板4に形成される配線は、図2の外部接続用端子56に導電接続する。
複数の配線54の一部はデータ線19となって第1透光性基板7aの表面上を延びている。また、複数の配線54の残りの一部はシール材6の中にランダム(すなわち、無秩序)に含まれる導通材57を介してカラーフィルタ基板8上に設けられた帯状電極47に導電接続されている。導通材57は、図2では模式的に大きく描かれているが、実際にはシール材6の断面の幅よりも小さいものであり、シール材6の1つの断面内に複数の導通材57が含まれるのが普通である。
張出し部52の表面には、ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)58を用いたCOG(Chip On Glass)技術によって、駆動用IC53が実装されている。駆動用IC53は、本実施形態では図1に示すように複数、例えば3個実装されている。例えば、中央の1つの駆動用IC53は、データ線19へデータ信号を伝送する。他方、両側の駆動用IC53,53は、カラーフィルタ基板8上に形成された帯状電極47へ走査信号を伝送する。帯状電極47へ走査信号が伝送されるとき、帯状電極47は走査線として機能する。
以上のように構成された液晶装置1によれば、図2において、液晶装置1が明るい室外や明るい室内に置かれる場合は、太陽光や室内光等といった外部光を用いて反射型の表示が行われる。一方、液晶装置1が暗い室外や暗い室内に置かれる場合は、照明装置3をバックライトとして用いて透過型の表示が行われる。
上記の反射型表示を行う場合、図3において、観察側である矢印Aの方向から素子基板7を通して液晶パネル2内へ入射した外部光L0は、液晶層12を通過してカラーフィルタ基板8内へ入った後、反射部Rにおいて光反射膜42で反射して再び液晶層12へ供給される。他方、上記の透過型表示を行う場合、図2の照明装置3の光源13が点灯し、それからの光が導光体14の光入射面14aから導光体14へ導入され、さらに、光出射面14bから面状の光として出射する。この出射光は、図4の符号L1で示すように透過部Tにおいて光反射膜42が存在しない領域51を通って液晶層12へ供給される。
以上のようにして液晶層12へ光が供給される間、素子基板7側の画素電極23とカラーフィルタ基板8側の帯状電極47との間には、走査信号およびデータ信号によって特定される所定の電圧が印加され、これにより、液晶層12内の液晶分子の配向がサブ画素Dごとに制御され、この結果、液晶層12に供給された光がサブ画素Dごとに変調される。この変調された光が、素子基板7側の偏光板18a(図2参照)を通過するとき、その偏光板18aの偏光特性に従ってサブ画素Dごとに通過を許容または通過を阻止され、これにより、素子基板7の表面に文字、数字、図形等といった像が表示され、これが、矢印A方向から視認される。
従来の液晶装置では、表示のコントラストを上げるためのブラックマスクは、専ら、図2のカラーフィルタ基板8に設けられていた。通常は、サブ画素Dの周囲の4辺の全てを囲むブラックマスクをカラーフィルタ基板8上に設けていた。これに対し本実施形態では、上記の通り、サブ画素Dに対する列方向(Y方向)のブラックマスクを素子側遮光部材29によって形成し、行方向(X方向)のブラックマスクをカラーフィルタ側遮光部材44によって形成した。
一般に、遮光部材をカラーフィルタ基板8上だけに設ける場合には、素子基板7とカラーフィルタ基板8とを貼り合わせる際に両基板間に位置ズレが発生したときでも、サブ画素Dの周囲を遮光部材によって確実に遮光するために、遮光部材の幅を基板の位置ズレを見込んで予め広く形成する必要がある。しかしながらこのように遮光部材を広く形成すると、サブ画素Dに占める遮光部材の面積が大きくなるので、表示領域に関する開口率が低くなり、表示品質が低下するという問題が発生する。
このことに関し、本実施形態では図4(a)において、素子基板7上において隣り合う画素電極23,23の間隙を遮光する遮光部材29をカラーフィルタ基板8上ではなくて素子基板7上に設けるようにしたので、素子基板7とカラーフィルタ基板8との間の組みズレを見込んで遮光部材29の幅を広く形成する必要がなくなった。そして、それ故、サブ画素Dの開口率を上げることができ、鮮明な表示を提供できるようになった。
ところで、液晶装置の表示に関してはクロストークの問題がある。このクロストークには、縦クロストーク及び横クロストークがある。また、横クロストークには、表示領域に黒色領域のウインドウ表示を行った際に現れる横クロストークと、表示領域に白色領域のウインドウ表示を行った際に現れる横クロストークがある。
縦クロストークとは、表示領域の列方向、すなわち縦方向に発生する表示の異常のことであり、例えば、灰色等を背景色として赤、青、緑等の単色、あるいは赤、青、緑の各色に対して補色の関係にあるシアン、マゼンタ、イエロー等の色を矩形状に表示したときに、矩形表示領域の上下方向に位置する領域が、本来表示されるべき背景色よりも明るく表示されてしまうことである。また、例えば、白色サブ画素及び黒色サブ画素が行及び列において交互に配置する市松模様や、1行毎に白色サブ画素及び黒色サブ画素が反転するゼブラパターン等を表示する場合に、列方向の表示が本来表示されるべき階調とは異なった階調となってしまうことである。この縦クロストークについては、例えば、特開2001−147671号公報にも記載されている。
白色領域のウインドウ表示を行った際に現れる横クロストークとは、例えば図18(a)に示すように、領域B−Eに白色のウインドウ表示を行ったとき、その白色領域B−Eに対して行方向(すなわち、横方向)で隣接する領域B−D、B−Fが、本来であれば、他の灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fと同じ明度であるべきところ、それらの領域間に明度差が生じることである。
また、黒色領域のウインドウ表示を行った際に現れる横クロストークとは、例えば図18(b)に示すように、領域B−Eに黒色のウインドウ表示を行ったとき、その黒色領域B−Eに対して行方向(すなわち、横方向)で隣接する領域B−D、B−Fが、本来であれば、他の灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fと同じ明度であるべきところ、それらの間に明度差が生じることである。
本実施形態によれば、図4(a)において、複数の線状の遮光部材29を共通線28で結ぶことによって同電位に設定したので、表示領域に黒色領域のウインドウ表示を行った際の横クロストークを改善できるようになった。このことは本発明者の実験により明確に確認されていることであるが、以下、その原因について考えることにする。
図23は、本実施形態において隣接する画素間の等価回路を示している。図4(a)及び図4(b)に示したようにTFD素子21が形成された基板7に遮光部材29を設けた場合、遮光部材29は図23の等価回路において符号C1で示すように隣接する画素間の容量成分になる。以下、本実施形態の液晶装置によって、(1)中間調のみで表示を行う場合、(2)中間調及び「白」の表示を行う場合、及び(3)中間調及び「黒」の表示を行う場合について考える。
(中間調のみで表示を行う場合)
表示領域に中間調のみで画像を表示する場合、走査線に供給される駆動波形は図24のCOMであり、データ線に供給される駆動波形は図24のSEGである。また、時点aでの等価回路は図25(a)に示す通りであり、時点bでの等価回路は図25(b)に示す通りである。図25(a)及び図25(b)では、全てが同時に切り替わるので、C1に電流は流れない。つまり、C1による影響は無い。次に、図24の駆動波形の実効値に関しては、T0領域及びT1領域の両方において、素子側に遮光領域を設けない通常の場合と、本実施形態のように素子側に遮光部材を設けた場合とで、容量に変化が無いために実効値に違いは生じない。このように、中間調のみで表示を行う場合は寄生容量による影響が無いので、波形なまりに違いは生じない。
(中間調及び「白」の表示を行う場合)
表示領域に中間調及び白で画像を表示する場合、走査線に供給される駆動波形は図26のCOMであり、データ線に供給される駆動波形は図26のSEG1及びSEG2である。また、時点cでの等価回路は図27(a)に示す通りであり、時点dでの等価回路は図27(b)に示す通りである。図27(a)では、全てが同時に切り替わるのでC1に電流は流れない。つまり、C1による影響は無い。また、図27(b)では、C1とC_LCD’、C_TFDとの合成容量が保持容量の役目を果たし、COMの電圧変動を抑える。これにより、波形なまりは小さくなる。次に、図26の駆動波形の実効値に関しては、T0領域において、通常の場合と素子側に遮光部材を設けた場合とで、容量に変化が無いために実効値に違いは生じない。一方、T1領域において、素子側に遮光部材を設けた場合は容量が減ったために短い時間で所定電位Vまで到達する。このように、1ラインで中間調と白とが混ざっている場合は、寄生容量の影響により電圧変動が抑えられるので、波形なまりは小さくなる。
(中間調及び黒の表示を行う場合)
表示領域に中間調及び黒で画像を表示する場合、走査線に供給される駆動波形は図28のCOMであり、データ線に供給される駆動波形は図28のSEG1及びSEG2である。また、時点eでの等価回路は図29(a)に示す通りであり、時点fでの等価回路は図29(b)に示す通りである。図29(a)では、COMが変化しているので、合成容量はC_LCD”+((C_LCD×C1)/(C_LCD+C1))となり、容量が増加したために波形なまりは大きくなる。また、図29(b)では、C1とC_LCD’、C_TFDとの合成容量が保持容量の役目を果たし、COMの電圧変動を抑える。このため、波形なまりは小さくなる。
図28の駆動波形の実効値に関しては、T0領域において、素子側に遮光部材を設けた場合は、容量が増えたために所定電圧V1まで到達するのに時間がかかる。一方、T1領域において、素子側に遮光部材を設けた場合は、容量が減ったために短い時間で所定電圧Vまで到達する。この場合、前半のT0領域のVs は約16Vであり、後半のT1領域のVs は約4Vであり、よって、前半の影響が強い。
1ラインで中間調と黒が混ざっている場合は、時点eで波形なまりが大きくなり、時点fで波形なまりが小さくなる。この影響はI=C×ΔVに比例し、時点eの方が時点fよりも電圧変化が大きいので、影響が大きい。よって、波形なまりは大きくなる。
クロストークは階調ベタ表示との比較で表され、階調ベタとの輝度差が大きいほどクロストークは悪くなる。本来、階調ベタは波形なまりが大きく、クロストークが最も悪い条件であるので、階調ベタでの波形なまりを小さくするのがクロストーク対策なのであるが、他の条件で波形なまりを大きくし、階調ベタとの輝度差を少なくすることでもクロストーク対策になる。
よって、上記の3つの場合に関しては、階調ベタでは波形なまりに変化は無く、「黒」が入った場合には波形なまりが大きくなるのでクロストークは良くなり、「白」が入った場合には逆に波形なまりが小さくなるのでクロストークは悪くなる。以上により、本実施形態のように素子基板側に遮光部材を設けることにより、黒色ウインドウ表示の際の横クロストークが改善されることが理解される。
次に、本実施形態では、クロストーク、特に、縦クロストーク及び白色ウインドウ表示の際の横クロストークの問題を改善するために、図1の駆動用IC53に改善を加えている。以下、この点について説明する。図6は、本実施形態の液晶装置の電気的なブロック図を示している。
この図に示されるように、液晶装置1は、液晶パネル2、制御回路400、及び電圧生成回路500を有する。制御回路400及び電圧生成回路500は、例えば図1のFPC基板4を介して液晶パネル2に接続される。液晶パネル2には、複数のデータ線19が列方向Yに延在して形成され、一方、複数の走査線47が行方向Xに延在して形成されている。走査線47は、図1の帯状電極47のことである。そして、データ線19と走査線47とが交差する部分にサブ画素Dが形成されている。
各サブ画素Dは、液晶容量118と、TFD素子21との直列接続から成り、液晶容量118は走査線47とそれに対向する画素電極23とそれらによって挟持された液晶とによって構成される容量である。なお、本実施形態では、説明の便宜上、走査線47の総数を320本とし、データ線19の総数を240本として、縦320行×横240列のマトリクス状に配置されたサブ画素Dによって表示を行うものとする。しかしながら、本発明がこのマトリクス表示に限定されるものでないことは、もちろんである。
複数の走査線47は走査線駆動回路350の出力端子に接続される。また、複数のデータ線19はデータ線駆動回路250の出力端子に接続される。走査線駆動回路350は、例えば、図1の両側の駆動用IC53によって構成される。また、データ線駆動回路250は、例えば、図1の中央の駆動用IC53によって構成される。
走査線駆動回路350は、走査信号Y1,Y2,Y3,……,Y320を、それぞれ1行目、2行目、3行目、……、320行目の走査線47に供給する。具体的には、走査線駆動回路350は、320本の走査線47を1水平走査期間毎に1本ずつ選択すると共に、選択した走査線47には選択電圧を供給し、他の走査線47には非選択電圧を供給する。
データ線駆動回路250は、走査線駆動回路350によって選択された走査線47に位置するサブ画素Dに対し、その表示内容(すなわち、階調)に応じたデータ信号X1,X2,X3,……,X240を、それぞれ1列目、2列目、3列目、……、240列目のデータ線19へ供給する。なお、データ線駆動回路250及び走査線駆動回路350の構成の詳細については後述する。
制御回路400は、液晶パネル2を水平走査するための各種制御信号やクロック信号等をデータ線駆動回路250へ供給する。また、制御回路400は、液晶パネル2を垂直走査するための各種制御信号やクロック信号等を走査線駆動回路350へ供給する。さらに、制御回路400は、サブ画素Dの階調を「0」から「7」までの8段階で指示する3ビットの階調データDnを、垂直走査及び水平走査に同期して供給する。
ここで、前提として、3ビットの階調データDnがオフ階調である(000)が最も明るい白色の表示を指示し、3ビットの値が上がるにつれて徐々に輝度が低下することを指示し、階調データDnが(111)である場合が最も暗い黒色の表示を指示するものとする。さらに、液晶パネル2が無電圧印加状態のときに白表示が行われるノーマリーホワイトモードであるとする。
また、本明細書で、「点灯電圧」とは、ある1本の走査線47が選択された期間に着目した場合に、データ線19に印加されるデータ信号の電圧のうち、その期間において着目走査線47に印加される選択電圧とは逆極性の電圧をいう。また、「非点灯電圧」とは、着目走査線が選択された期間に、データ線に印加されるデータ信号の電圧のうち、その期間において着目走査線に印加される選択電圧と同一極性の電圧をいう。また、電圧の極性は、データ信号がとる点灯電圧、非点灯電圧の中間電圧を基準として高電位側が正極とし、低電位側を負極とする。点灯電圧は、選択電圧とは逆極性にあるデータ信号の電圧をいうので、ノーマリーホワイトモードでは、サブ画素Dに点灯電圧が印加されると、サブ画素Dが暗くなる点に留意する必要がある。
電圧生成回路500は、液晶パネル2に用いられる電圧±VS及び電圧±VD/2をそれぞれ生成する。このうち、電圧±VSは、走査信号における選択電圧として用いられ、それぞれ走査線駆動回路350に供給される。また、電圧±VD/2は、走査信号における非選択電圧と、データ信号におけるデータ電圧とで兼用されるものであり、それぞれ、データ線駆動回路250及び走査線駆動回路350に供給される。
図6において、データ線19に印加されているデータ電圧にかかわらず、TFD素子21を強制的に導通状態(すなわち、ON状態)にさせる選択電圧+VS又は−VSのいずれかを走査線47に印加すると、当該走査線47及び当該データ線19の交差部分に対応するTFD素子21がON状態となって、そのTFD素子21に接続された液晶容量118に、当該選択電圧及び当該データ電圧の差に応じた電荷が蓄積される。その電荷蓄積後、走査線47に非選択電圧を印加して、当該TFD素子21をOFF状態にしても、液晶容量118における電荷の蓄積が維持される。
液晶容量118では、蓄積される電荷量に応じて、液晶12の配向状態が変化し、偏光板18aを通過する光量が蓄積された電荷量に応じて変化する。従って、選択電圧が変動しないことを前提とすれば、当該選択電圧が印加されたときのデータ電圧によって、液晶容量118における電荷の蓄積量をサブ画素D毎に制御することで、所定の階調表示が可能になる。
次に、説明の便宜上、図6における制御回路400によって生成される制御信号やクロック信号、その他の各種信号について説明する。まず、図8を参照して、Y側(すなわち、垂直走査側)に用いられる信号について説明する。第1に、スタートパルスDYは1垂直走査期間(1F)の最初に出力されるパルスである。第2に、クロック信号YCKはY側の基準信号であり、このクロック信号YCKは1水平走査期間(1H)の周期を有する。
第3に、極性指示信号POLは、走査線47が選択されたときに印加すべき選択電圧の極性を指定する信号であり、例えば、Hレベルであれば正極性の選択電圧+VSを指定し、Lレベルであれば負極性の選択電圧−VSを指定する。この極性指示信号POLは、同一の垂直走査期間内では、1水平走査期間(1H)毎に論理レベルが反転する。また、極性指示信号POLは、隣接する垂直走査期間において、同一の水平走査期間では論理レベルが反転する。
第4に、制御信号INHは、1水平走査期間(1H)における選択電圧の印加期間を規定するための信号である。後述するように、本実施形態では、1水平走査期間(1H)の後半期間において選択電圧を印加するので、制御信号INHは当該後半期間にHレベルとなる。
次に、図10を参照して、X側(すなわち、水平走査側)に用いられる信号について説明する。第1に、ラッチパルスLPは、1水平走査期間(1H)の最初に出力されるパルスである。第2に、リセット信号RESは、1水平走査期間(1H)の前半期間の最初及び後半期間の最初にそれぞれ出力されるパルスである。第3に、交流駆動信号MXは、データ線側においてサブ画素を交流駆動するための信号であり、Y側の極性指示信号POLよりも位相が90度進んだ関係となっている。このため、交流駆動信号MXは、選択電圧として正極性の電圧+VSが指定される1水平走査期間(1H)では、その前半期間においてHレベルとなり、その後半期間においてLレベルとなる。一方、交流駆動信号MXは、選択電圧として負極性の電圧−VSが指定される1水平走査期間(1H)では、その前半期間においてLレベルとなり、その後半期間においてHレベルとなる。
第4に、階調コードパルスGCPRは、本実施形態では、黒色を除く色の各々に応じて、点灯電圧及び非点灯電圧の切替えタイミングを、その立下りにおいて規定するためのパルス列であり、1水平走査期間の前半期間及び後半期間のそれぞれにおいて、灰色(110)、(101)、(100)、(011)、(010)、(001)に対応して十進値で表記されたものが順に対応して配列すると共に、これらの配列の先頭に、白色の(000)に対応するものが位置している。
ここで、前半及び後半期間の開始タイミングから、白色の(000)に対応する階調コードパルスGCPR(図10において「0」と表記)の立下りタイミングまでの期間t1は、当該白色よりも1段階暗い灰色の(001)に対応する階調コードパルスGCPR(図10において「1」と表記)の立下りタイミングから、前半及び後半期間の終了タイミングまでの期間t2よりも短くなるように設定されている。また、階調コードパルスGCPRは、サブ画素の印加電圧−濃度特性(すなわち、V−T特性)を考慮して設定されるものであり、実際には、等間隔ではない。
次に、図7は、図6の走査線駆動回路350を示している。図7に示す走査線駆動回路350において、シフトレジスタ352は、走査線47の総数に応じた320ビットの段数を有し、1垂直走査期間の最初に供給されるスタートパルスDYをクロック信号YCKによって順次にシフトして、転送信号Ys1,Ys2,Ys3,……,Ys320として順次に出力する。ここで、転送信号Ys1,Ys2,Ys3,……,Ys320は、それぞれ1行目、2行目、3行目、……、320行目の走査線47にそれぞれ1対1に対応するものであって、いずれかの転送信号がHレベルになると、それに対応する走査線47を選択すべき水平走査期間(1H)であることを示している。
続いて、電圧選択信号形成回路354は、転送信号の他に極性指示信号POL及び制御信号INHから、1行の走査線47について、当該走査線47への印加電圧を指定すると共に、互いに排他的にアクティブレベル(Hレベル)となる電圧選択信号a,b,c,dを出力する。ここで、電圧選択信号aがHレベルになると+VS(正極性選択電圧)の選択が指示される。同様に、電圧選択信号b,c,dがHレベルになると、それぞれ+VD/2(正極性非選択電圧)、−VD/2(負極性非選択電圧)、−VS(負極性選択電圧)の選択が指示される。
本実施形態では、上述したように、選択電圧+VS又は−VSが印加される期間は、1水平走査期間(1H)の後半期間である。また、非選択電圧は、選択電圧+VSが印加された後では+VD/2であり、選択電圧−VSが印加された後では−VD/2であって、直前の選択電圧によって一義的に定まっている。
このため、電圧選択信号形成回路354は、走査信号の電圧レベルが次の関係になるように、1行の走査線47について電圧選択信号a,b,c,dを出力する。すなわち、転送信号Ys1,Ys2,Ys3,……,Ys320のいずれかがHレベルになって、それに対応する走査線47を選択すべき水平走査期間である旨が指定され、さらに、制御信号INHがHレベルとなって、当該水平走査期間の後半期間であることが通知されると、電圧選択信号形成回路354は、当該走査線47への走査信号の電圧レベルを、第1に、極性指示信号POLの信号レベルに対応した極性の選択電圧とし、第2に、その後半期間が終了すると、当該選択電圧に対応する非選択電圧となるように電圧選択信号を生成する。
具体的には、電圧選択信号形成回路354は、制御信号INHがHレベルとなる期間において、極性指示信号POLがHレベルであれば正極性選択電圧+VSを選択させる電圧選択信号aを当該後半期間にHレベルとし、この後半期間が終了して、制御信号INHがLレベルに遷移すれば、正極性非選択電圧+VD/2を選択させる電圧選択信号bをHレベルとして出力する。一方、電圧選択信号形成回路354は、制御信号INHがHレベルとなる後半期間において、極性指示信号POLがLレベルであれば負極性選択電圧−VSを選択させる電圧選択信号dを当該期間にHレベルとし、この後、制御信号INHがLレベルに遷移すれば、負極性非選択電圧−VD/2を選択させる電圧選択信号cをHレベルとして出力することになる。
セレクタ群358は、1本の走査線47について、4個のスイッチ3581〜3584を有する。これらのスイッチ3581〜3584の各一端は、それぞれ、電圧+VS、+VD/2、−VD/2、−VSの供給線に接続されている。他方、各スイッチ3581〜3584の他端は、対応する走査線47に共通に接続されると共に、各ゲートには、それぞれ電圧選択信号a,b,c,dが供給されている。そして、スイッチ3581〜3584は、それぞれゲート入力する電圧選択信号a,b,c,dがHレベルになると、それぞれ一端及び他端間において導通状態となる。従って、各走査線47には、スイッチ3581〜3584のうち、ON状態になったものを介して、電圧+VS、+VD/2、−VD/2、−VSのいずれかが印加される。
次に、上記構成の走査線駆動回路350によって供給される走査信号の電圧波形について説明する。まず、スタートパルスDYは、図8に示すように、シフトレジスタ352によりクロック信号YCKに従って1水平走査期間(1H)毎に順次にシフトされて、これが転送信号Ys1,Ys2,Ys3,……,Ys320として出力される。
ここで、ある1行の走査線47に対応する転送信号がHレベルになる1水平走査期間において、その後半期間(1/2H)に至ると、当該後半期間における極性指示信号POLの論理レベルに応じて、当該走査線への選択電圧が定められる。具体的には、ある1行の走査線に供給される走査信号の電圧は、当該走査線が選択される1水平走査期間の後半期間(1/2H)において、極性指示信号POLが例えばHレベルであれば正極性選択電圧+VSとなり、その後、当該選択電圧に対応する正極性非選択電圧+VD/2を保持する。そして、1垂直走査期間(1F)が経過して、1水平走査期間の後半期間においては、極性指示信号POLが反転してLレベルになるので、当該走査線に供給される走査信号の電圧は、負極性選択電圧−VSとなり、その後、当該選択電圧に対応する負極性非選択電圧−VD/2を保持することになる。
このため、ある垂直走査期間において1行目の走査線47への走査信号Y1は、図8に示すように、当該水平走査期間の後半期間において、極性指示信号POLのHレベルに対応して正極性選択電圧+VSとなり、その後、正極性非選択電圧+VD/2を保持する。次の1水平走査期間の後半期間においては、極性指示信号POLのレベルが前回の選択とは論理反転したLレベルになるので、当該走査線への走査信号Y1は、負極性選択電圧−VSとなり、その後、負極性非選択電圧−VD/2を保持する。以下、このサイクルの繰り返しとなる。
また、極性指示信号POLは、1水平走査期間(1H)毎に論理レベルが反転するので、各走査線47に供給される走査信号は、1水平走査期間(1H)毎に、すなわち、走査線47の1行毎に交互に極性が反転する関係となる。例えば、あるフレームにおいて、1行目の走査信号Y1の選択電圧が正極性選択電圧+VSであれば、1水平走査期間経過後において、2行目の走査信号Y2の選択電圧は負極性選択電圧−VSとなる。
次に、図9は、図6のデータ線駆動回路250を示している。図9に示すデータ線駆動回路250において、アドレス制御回路252は、階調データの読み出しに用いる行アドレスRadを生成する。アドレス制御回路252は、当該行アドレスRadを、1フレームの最初に供給される開始パルスDYによってリセットすると共に、1水平走査期間毎に供給されるラッチパルスLPで歩進させる構成となっている。
表示データRAM254は、縦320行×横240列のサブ画素に対応した記憶領域を有するデュアルポートRAMであり、書込み側では、図6における制御回路400から供給される階調データDnが、同じく制御回路400からの書込みアドレスWadで指定された番地に書き込まれる一方、読出し側では、行アドレスRadで指定された番地の階調データDnの1行分240個が、一括して読み出される構成となっている。
次に、デコーダ256は、データ信号X1,X2,……,X240のデータ電圧をそれぞれ選択するための電圧選択信号e,fを、読み出された240個の階調データDnに応じて、リセット信号RES、交流駆動信号MX、階調コードパルスGCPRとから排他的に生成するものである。ここで、電圧選択信号eは+VD/2の選択を、電圧選択信号fは−VD/2の選択を、それぞれ指定する。本実施形態において、階調データDnは、3ビット(8階調)であるので、デコーダ256は、読み出された240個のうち、ある列の階調データDnについて着目すると、次のような電圧選択信号を生成する。
すなわち、デコーダ256は、極性指示信号POLがHレベルである1水平走査期間(1H)において、階調データDnが白色(000)及び黒色(111)以外の中間階調を指定するものであれば、第1に、1水平走査期間の前半期間(1/2H)の最初に供給されるリセット信号RESによって、交流駆動信号MXのレベルとは反対側のレベルにリセットし、第2に、階調コードパルスGCPRのうち、当該階調データDnに対応するものの立下りにて、交流駆動信号MXと同一側のレベルにセットし、第3に、1水平走査期間の後半期間(1/2H)の最初に供給されるリセット信号RESを無視し、第4に、階調コードパルスGCPRのうち、当該階調データDnに対応するものの立下りにて、交流駆動信号MXと同一側のレベルに再セットするような電圧選択信号を生成する。
但し、デコーダ256は、極性指示信号POLがHレベルである1水平走査期間(1H)において、階調データDnが黒色(111)であれば、交流駆動信号MXとは同一のレベルとなるように、それぞれ電圧選択信号e、fを生成する。また、階調データDnが白色の(000)であれば、第1に、1水平走査期間の前半期間(1/2H)の最初に供給されるリセット信号RESによって、交流駆動信号MXのレベルとは同一側のレベルにリセットし、第2に、階調コードパルスGCPRのうち、最初、すなわち(000)に対応するものの立下りにて、交流駆動信号MXと反対側のレベルにセットし、第3に、1水平走査期間の後半期間(1/2H)の最初に供給されるリセット信号RESを無視し、第4に、階調コードパルスGCPRのうち、最初のものの立下りにて、交流駆動信号MXと反対側のレベルに再セットするような電圧選択信号を生成する。このような電圧選択信号の生成を、デコーダ256は、読み出された240個の階調データDnの各々に対応して実行する。
セレクタ群258は、1列のデータ線19について、2個のスイッチ2581、2582を有する。これらのスイッチ2581,2582の各一端は、それぞれ電圧+VD/2、−VD/2の供給線に接続されている。また、スイッチ2581,2582の他端は、対応するデータ線19に共通に接続されると共に、各ゲートには、それぞれ電圧選択信号e,fが供給されている。そして、スイッチ2581,2582は、ゲート入力する電圧選択信号e,fがアクティブレベルになると、それぞれ一端及び他端において導通状態となる。従って、各データ線19は、スイッチ2581,2582のうち、ON状態になったものを介して、電圧+VD/2、−VD/2のいずれかが印加される。
結局、データ線駆動回路250によって供給されるデータ信号Xjの電圧波形は、図10に示すようになる。なお、図10は、デコーダ256に入力される階調データDnの2進数表示と、それをデコードした結果であるデータ信号Xjとの関係を示すものである。特に、本実施形態では、階調データDnが(000)であり、サブ画素を白色(すなわち、オフ階調)とする場合には、1水平走査期間のうち、選択電圧が印加される後半期間(1/2H)の開始タイミングでは点灯電圧が印加され、その後、期間t1が経過して、非点灯電圧が印加される。
図11は、i行目の走査線47へ伝送される走査信号Yiと、これよりも1行下の走査線47へ伝送される走査信号Yi+1と、j列目のデータ線19へ伝送されるデータ信号Xjとにおける各信号波形を示している。なお、データ信号Xjについては、i行目及びi+1行目の走査線47と、j列目のデータ線19に位置するサブ画素を、白色表示、黒色表示、及びその中間色の灰色表示をする場合についてそれぞれ示している。
同図に示されるように、1水平走査期間(1H)が2分割されて前半期間と後半期間とに分けられると共に、走査信号Yi、Yi+1は、後半期間(1/2H)にわたって選択電圧をとり、データ信号Xjは、サブ画素を暗くするにつれて、点灯電圧をとる期間が長くなる。ここで、点灯電圧は、選択電圧が正極性の+VSであれば、負極性のデータ電圧−VD/2であり、反対に選択電圧が負極性の−VSであれば正極性のデータ電圧+VD/2である。一方、当該後半期間に先立つ前半機関におけるデータ信号は、当該後半期間におけるデータ信号とは電圧が逆転した関係となっている。
従って、1水平走査期間(1H)でみたとき、データ信号Xjは、電圧+VD/2と−VD/2とをそれぞれ50%の割合でとることになる。このため、サブ画素の階調がいかなるパターンで連続したとしても、1垂直走査期間(1F)において、データ信号Xjが電圧−VD/2をとる期間の累計と、電圧+VD/2をとる期間の累計とは互いに同一となる。このことは、非選択期間においてサブ画素に印加される電圧実効値が、全てのサブ画素にわたって等しいことを意味するものである。
ところで、クロストークとして、縦クロストーク、白色ウインドウ表示の際の横クロストーク、及び黒色ウインドウ表示の際の横クロストークがあることは既述した。本実施形態において、上記のように、非選択期間においてサブ画素に印加される電圧実効値が全てのサブ画素にわたって等しくなるように駆動を行えば、縦クロストークの発生を確実に抑えることができる。
次に、本実施形態との比較のために基本的な駆動波形について説明する。図17は、基本的なデータ信号Xjを、階調データDnとの関係において示す波形図である。この波形図において、図10に示す本実施形態の波形図と相違する点は、次の通りである。すなわち、図17では、階調コードパルスGCPRのうち、階調データDn(000)に対応するものが存在せず、また、サブ画素を白色とする場合には、1水平走査期間の後半期間(1/2H)の全域にわたって非点灯電圧が印加される点にある。
この基本波形において、例えば図12(a)に示すように、液晶パネルの表示領域Vに灰色を背景として矩形状の白色領域をウインドウ表示する場合を考える。この場合、実際に表示される画像では、図18(a)に示すように、白色領域B−Eとは行方向(すなわち、横方向)で隣接する領域B−D、B−Fが他の灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fと比べて暗くなってしまう。この明度差は、行方向に発生することから、上記の縦方向クロストークと区別する意味で、横クロストークと呼ばれている。
なお、図12(b)に示すように、液晶パネルの表示領域Vに、灰色を背景として矩形状の黒色領域をウインドウ表示する場合、実際に表示される画像は、図18(b)に示すように、白色領域をウインドウ表示する場合と比較して、それほど背景の灰色に目立った明度差が生じない。つまり、黒色領域をウインドウ表示する場合は、白色領域をウインドウ表示する場合に比べて、横クロストークの発生が小さい。しかも、本実施形態では、図4(a)に示したように、素子基板7側に複数の線状の遮光部材29を設けると共にそれらの遮光部材29を共通線28で結ぶことによって同電位に設定したので、表示領域に黒色領域のウインドウ表示を行った際の横クロストークを改善できるようになった。従って、本実施形態では、黒色領域のウインドウ表示を行う際の横クロストークは確実に抑えることができるようになった。
次に、上記の横クロストーク、特に、白色領域をウインドウ表示する際の横クロストークについて検討する。図6の液晶パネル2では、走査線47がITO等の比較的抵抗率の大きな導電体によって形成されるため、ある行の走査線47は、1列目から240列目までの全てのデータ線19と容量的に結合する。また、走査線47だけでなく、液晶パネル2における配線や信号線の全てについても、同様に、全てのデータ線19と少なからず容量的に結合する。このため、データ線19が電圧+VD/2、−VD/2の一方から他方へ切り替わると、スパイク(すなわち、微分波形ノイズ)として走査線、配線、供給線に現れる。
続いて、このスパイクが、液晶容量に印加される信号波形に、どのように影響するのか検討してみる。図12(a)又は図18(a)において、行範囲A又は行範囲Cに属する走査線が選択された場合、当該走査線に位置するサブ画素は、全て背景の灰色であるので、当該走査線に正極性の選択電圧+VSが印加されるのであれば、データ信号では、電圧の切替えが、図19(a)に示すように、1水平走査期間(1H)の最初、前半期間の途中及び後半期間の途中にて、それぞれ発生する。さらに、この電圧の切替えは、全てのデータ線において同時に発生する。従って、走査信号には、データ電圧の切り替わる方向に比較的大きなスパイクS0,S1,S3が現れることになる。
このうち、スパイクS0,S1は走査信号をして非選択電圧をとる期間、すなわちTFD21が非導通状態のときに現れるので、その影響は小さいが、スパイクS3は、走査信号として選択電圧をとる期間、すなわちTFD素子21が導通状態のときに現れるので、当該選択電圧+VSを変動させる。このため、走査信号とデータ信号との差で示されるサブ画素への印加電圧波形は、図19(a)の部分Pにて大きく歪み、当該サブ画素に印加される電圧実効値を小さくなる方向に作用させてしまう。
なお、図19(a)では、後半期間において正極性の選択電圧+VSをとる1水平走査期間について説明したが、負極性の選択電圧−VSをとる1水平走査期間では、図示の波形を、電圧基準点を中心に極性反転したものとなるので、同様に、サブ画素への印加電圧波形が大きく歪んで、当該サブ画素に印加される電圧実効値を小さくなるように作用させてしまう。
従って、行範囲A及び行範囲Cに属するサブ画素(すなわち、領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fに属するサブ画素)は、印加電圧が目的とする本来の値から大きく減少するので、図12(a)又は図18(a)において、行範囲Bに属する走査線が選択された場合、当該走査線に位置するサブ画素は、背景色の灰色と白色との2種類となる。このため、データ信号は、図19(b)に示すように、当該走査線に正極性の選択電圧+VSが印加されるのであれば、背景にかかる列範囲D、Fに属するデータ線に供給されるものと、白色領域にかかる列範囲Eに属するデータ線に供給されるものとの2種類に分かれる。
換言すれば、行範囲A又は行範囲Cに属する走査線が選択される場合であれば、全てのデータ信号が同一灰色に相当するものであったのに対し、行範囲Bに属する走査線が選択される場合であれば、当該灰色に相当するデータ信号の数がおおよそ半分となる。従って、行範囲Bに属する走査線が選択される場合に現れるスパイクS0,S1,S3は、行範囲A又は行範囲Cに属する走査線が選択される場合と比較して小さくなる。このため、後半期間に現れるスパイクS3は、走査信号がとる選択電圧+VSをそれほど大きく変動させず、サブ画素への印加電圧波形における部分Pでの歪みも小さい。負極性の選択電圧−VSをとる1水平走査期間でも同様である。従って、領域B−D、B−Fのサブ画素に印加される電圧実効値の減少の程度は、行範囲A及び行範囲Cに属するサブ画素と比較して小さいので、領域B−D、B−Fのサブ画素は、わずかに明るくなる程度である。
この結果、同一階調となるはずの領域B−D、B−Fのサブ画素と、領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fに属するサブ画素とは、図18(a)に示すように、前者領域のサブ画素が後者領域のサブ画素よりも暗くなり、これが横クロストークとして視認される。
このように考えると、図18(a)に示す横クロストークは、灰色領域B−D、B−Fが暗くなるのではなく、灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fが明るくなることに起因して発生する。但し、白色領域に隣接する灰色領域又はそれ以外の灰色領域のいずれかが明るくなるのか、暗くなるのかについては、あまり重要ではなく、本来同じ明るさとなるべき領域同士において明度差が生じてしまうことが重要な問題なのである。すなわち、この明度差が明確に視認されて、表示上の品位を低下させるからである。
ところで、横クロストークの原因がデータ信号の電圧切り替わりに伴うスパイクだけであるならば、灰色を背景として黒色領域をウインドウ表示させたときに、横クロストークが目立たない理由を説明できない。すなわち、横クロストークの発生は、スパイク以外の原因が関与していることになる。そこで、スパイク以外の原因を検討するために、灰色を背景として白色領域と黒色領域とをウインドウ表示するときの相違点について検討してみる。
灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合に、図12(a)又は図18(a)において行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、当該走査線には灰色と白色との2種類のサブ画素が存在する。灰色サブ画素となる列範囲D、Fに属するデータ線へのデータ信号、又は白色サブ画素となる列範囲Eに属するデータ線へのデータ信号は、図19(b)に示すように、当該走査線に選択電圧が印加される開始タイミングでは、いずれも点灯電圧をとらない。すなわち、正極性選択電圧+VSの印加開始タイミングでは、いずれのデータ信号も正極性において非点灯電圧となる電圧+VD/2をとる。
一方、灰色を背景として黒色領域をウインドウ表示する場合に、図12(b)又は図18(b)において行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、当該走査線には灰色と黒色との2種類のサブ画素が存在する。このうち、黒色サブ画素となる列範囲Eに属するデータ線へのデータ信号は、図19(c)に示すように、当該走査線に選択電圧が印加される開始タイミングでは点灯電圧をとる。
ここで、走査線47とデータ線19との間には、電気的にみれば、TFD素子21と液晶容量118との直列接続による合成容量が挿入されている、と考えられる。選択電圧が走査線47に印加された瞬間において、データ線19が点灯電圧であるとき、合成容量に印加される電圧差は比較的大きいので、当該合成容量の積分によって選択電圧の波形が大きく鈍る、と考えられる。
従って、灰色を背景として黒色領域をウインドウ表示する場合に、行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、当該走査線には黒色サブ画素が存在するので、当該走査線に印加される走査信号は、図19(c)の部分Rに示すように鈍化して歪む。
ところで、灰色を背景として白色領域又は黒色領域をウインドウ表示する場合に、行範囲A又はCに属する走査線が選択されるとき、当該走査線には灰色しか存在しないので、当該走査線に印加される信号は、図19(a)に示すように、部分Rでは歪まない(あるいは、その歪みは無視できるほどに小さい)が、スパイクS3による歪みは大きい。
一方、灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合に、行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、当該走査線には黒色サブ画素が存在しないので、当該走査線に印加される走査信号は、図19(b)に示すように、部分Rでは歪まないし、スパイクS3による歪みも小さい。
また、灰色を背景として黒色領域をウインドウ表示する場合に、行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、当該走査線に印加される走査信号は、図19(c)に示すように、部分Rでは歪むが、スパイクS3による歪みは小さい。
このため、ウインドウ表示領域に隣接する領域B−D、B−Fのサブ画素への印加電圧は、灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合と黒色領域をウインドウ表示する場合とで比較すると、黒色領域をウインドウ表示する場合の方が、白色領域をウインドウ表示する場合よりも部分Rでの波形鈍りの分だけ、減少する。すなわち、領域B−D、B−Fはノーマリーホワイトであれば、黒色領域をウインドウ表示する場合の方が白色領域をウインドウ表示する場合よりも明るくなる。このため、領域B−D、B−Fは、他の灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fと共に明るくなる方向に作用するので、両者の明度差が小さくなり、明度差として視認され難いのである。
以上のように、横クロストークを解消するためには、データ信号の電圧切り替わりに伴うスパイクだけではなく、選択電圧の印加開始タイミングにおける波形の鈍りについても考慮しなければならないことが分かる。
一方、上述したように横クロストークは、本来同じ明るさとなるべき領域同士の明度差に起因する。この明度差を小さくして視認され難くするためには、明るくなってしまう灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fを暗くするように補正する方法と、白色領域に隣接する領域B−D、B−Fを逆に明るくするように補正する方法との2通りが考えられるが、条件を特定し易い後者の方が容易であると考えられる。なお、横クロストークを解消するために、電圧の切り替わる画素電極数や検出したスパイク等に応じてデータ信号を補正する技術も考えられるが、この技術は構成の複雑化を招くので採用しない方が良いと考えられる。
そこで、本実施形態では、スパイクと波形鈍りとを用いて、白色領域に隣接する領域B−D、B−Fを逆に明るくするような構成を採用するものとする。なお、黒色領域に隣接する横クロストークは、図4(a)に関連して記述した通り、素子基板7の列方向Yに遮光部材29を設けること、及びそれらの遮光部材29を共通線28で結んで同電位に設定することにより、改善できるようになった。つまり、本実施形態では、遮光部材の形成の仕方と液晶パネルの駆動方法との両方を工夫することにより、白色領域のウインドウ表示を行う場合と黒色領域のウインドウ表示を行う場合の両方の場合に関して横クロストークを改善している。
具体的には、本実施形態では、図10に示したように、階調データDnが(000)であって、サブ画素を白色とする場合には、1水平走査期間のうち、選択電圧が印加される後半期間(1/2H)の開始タイミングでは点灯電圧が印加され、その後、期間t1が経過して、非点灯電圧が印加されるような構成を採用している。
この構成によれば、灰色を背景として白色領域ウインドウ表示をする場合であって、図12(a)において行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、白色サブ画素となる列範囲Eに属するデータ線へのデータ信号は、図13(b)に示すように、当該走査線に選択電圧が印加される開始タイミングにおいて点灯電圧をとる。従って、当該走査線に印加される走査信号は、同図に示すように、部分Rにて歪む。なお、正極性の電圧+VSである場合、データ信号は、後半期間(1/2H)の開始タイミングから期間t1が経過した時点において、点灯電圧−VD/2から非点灯電圧+VD/2となるので、この電圧切り替わりに伴うスパイクS2が走査信号に現れるものの、この電圧切り替わりは、全てのデータ線ではなく半数程度でしか実行されていないために、スパイクS2の程度は小さい。
また、本実施形態では、階調データDnが(000)である場合に相当するデータ信号のみを変化させているので、灰色を背景として白色領域又は黒色領域をウインドウ表示する場合に、行範囲A又はCに属する走査線が選択されるときの走査信号、データ信号、及びサブ画素への印加電圧は、図13(a)に示す通りであり、図19(a)と変わらない。同様に、灰色を背景として黒色領域をウインドウ表示する場合であって、行範囲Bに属する走査線が選択されるときの走査信号、データ信号、及びサブ画素への印加電圧は、図13(c)に示す通りであり、図19(c)と変わらない。
従って、本実施形態によれば、灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合に、当該白色領域に隣接する領域B−D、B−Fのサブ画素への印加電圧は、走査信号が図13(b)の部分Rにおいて鈍るだけ減少する。このため、本実施形態では、灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合でも、黒色領域をウインドウ表示する場合と同様に、領域B−D、B−Fは、他の灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fとの明度差がなくなるので、横クロストークの発生が抑えられることとなる。
さらに、本実施形態では、階調コードパルスGCPRに階調データDn(000)に相当するものが1つだけ増発されて、そのパルスをデータ線駆動回路250(特に、デコーダ256)で処理するようにしただけの構成であるので、補正回路を別途設ける場合と比較して構成が大幅に簡略化される。
なお、本実施形態では、白色領域に隣接する領域B−D、B−Fを明るくするために、データ信号を、階調データDnに対して図10に示すような波形としたが、例えば、図14に示すように波形としても良い。具体的には、図14に示す波形では、階調データDnが(000)であって、サブ画素を白色とする場合には、1水平走査期間のうち、選択電圧が印加される後半期間(1/2H)の開始タイミングよりも期間t1だけ先行するタイミングにて非点灯電圧に切り替えておき、その後、後半期間(1/2H)の終了タイミングよりも期間t1だけ先行するタイミングにて点灯電圧に切り替える構成となっている。
このような波形は、例えば、階調コードパルスGCPRを、同図に示すように1水平走査期間の前半期間、後半期間のそれぞれにおいて、階調データDnの(110)、(101)、(100)、(011)、(010)、(001)の各々に対応するものの最後に、(000)に対応するものを配列させる一方、デコーダ256(図9参照)が、リセット信号RESによって交流駆動信号MXのレベルとは反対側のレベルにリセットした後、階調コードパルスGCPRのうち、(111)を除いた各々に対応するものの立下りにて、交流駆動信号MXと同一側のレベルにセットするような電圧選択信号を生成する構成によって実現可能である。
また、図15は、図11と同様に、i行目の走査線47への走査信号Yiと、これよりも1行下の走査線47への走査信号Yi+1と、j列目のデータ線19へのデータ信号Xjとにおける各信号波形を示す図であり、図11とは、データ信号Xjについてi行目及びi+1行目の走査線47との交差部分に位置するサブ画素を白色表示とする場合についてのみ相違している。
データ信号が図14に示すような波形では、灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合に、図12(a)又は図18(a)において行範囲Bに属する走査線が選択されるとき、当該走査線には灰色と白色との2種類のサブ画素が存在する。このため、灰色サブ画素となる列範囲D、Fに属するデータ線へのデータ信号又は白色サブ画素となる列範囲Eに属するデータ線へのデータ信号は、図16(b)に示すように、当該走査線に選択電圧が印加される開始タイミングでは、いずれも非点灯電圧をとり、点灯電圧をとらない。このため、行範囲A、Cに属する走査線が選択される場合と同様に(図16(a)参照)、走査信号に選択電圧の印加開始タイミングにおいて波形鈍りは生じない。
一方、行範囲Bに属する走査線に選択電圧が印加される期間では、図16(b)に示すように、列範囲D、Fに属するデータ線が先に非点灯電圧から点灯電圧に切り替わった後に、列範囲Eに属するデータ線が非点灯電圧から点灯電圧へ切り替わる。
ここで、走査信号が正極性選択電圧+VSとなる期間では、当該走査信号にデータ信号の切り替わりに伴う下向きのスパイクS3、SCが現れる。但し、この電圧切り替わりは、全てのデータ線ではなく半数程度ずつで実行されるために、スパイクS3、SCの程度は小さい。なお、走査信号が負極性選択電圧−VSとなる期間では、特に図示しないが、当該走査信号にデータ信号の切り替わりに伴う上向きのスパイクが現れる。すなわち、走査信号が選択電圧となる期間では、当該走査信号にデータ信号の切り替わりに伴うスパイクS3、SCが、サブ画素の印加電圧を減少させる方向に現れる。
このため、灰色を背景として白色領域をウインドウ表示する場合に、当該白色領域に隣接する領域B−D、B−Fのサブ画素への印加電圧は、走査信号に現れる2つのスパイクS3、SCの分だけ減少して明るくなる結果、他の灰色領域A−D、A−E、A−F、C−D、C−E、C−Fとの明度差がなくなる。従って、データ信号が図14に示すような波形によっても、横クロストークの発生が抑えられることとなる。
なお、走査信号が選択電圧となる前の非選択期間では、スパイクSa、Sbが新たに生じるが、非選択期間におけるスパイクは、サブ画素の明るさに及ぼす影響が少ない点は上述した通りである。また、図16(a)及び図16(c)は、それぞれ、図13(a)及び図13(b)と同じになるので、その説明は省略している。
本実施形態では、中間階調である場合に、選択電圧が印加された期間に対し、点灯電圧が印加される期間を時間的に後方へ寄せて印加する後縁駆動を採用したが、これに限られず、点灯電圧を時間的に前方へ寄せて印加する前縁駆動を採用しても良い。
上記説明以外にも、階調データDnが(000)である場合,データ信号の点灯電圧と非点灯電圧の切替えのタイミングは、選択電圧の切替えのタイミングと一致しない限り、選択期間のいずれの位置にあっても良い。
また、本実施形態では、1水平走査期間(1H)を前半及び後半期間に分けて、このうち、後半期間に選択電圧を印加する構成としたが、前半期間に印加する構成としても良いし、1水平走査期間(1H)を前半及び後半期間に分けることなく、当該1水平走査期間にわたって選択電圧を印加する構成としても良い。
さらに、本実施形態では、無電圧印加状態において白色を表示するノーマリーホワイトモードであるとしたが、無電圧印加状態において黒色を表示するノーマリーブラックモードとしても良い。なお、ノーマリーブラックモードであれば、選択電圧が印加される期間において点灯電圧が印加される期間が長いほど、サブ画素が明るくなる。
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、図1の液晶パネル2は反射型表示と透過型表示の両方を選択的に実行できる半透過反射型の液晶パネルとしたが、反射型の液晶パネル又は透過型の液晶パネルとすることもできる。また、図6において、TFD素子21をデータ線19に接続し、液晶容量118を走査線47に接続したが、これとは逆に、TFD素子21を走査線47に接続し、液晶容量118をデータ線19に接続する構成とすることもできる。
また、TFD素子19は、2端子型のスイッチング素子の1例であり、他に、ZnO(酸化亜鉛)バリスタや、MSI(Metal Semi-Insulator)等と用いた素子を用いることができる。また、TFD素子、ZnO、MSI等といった素子を2つ逆向きに直列接続又は並列接続したもの等を、2端子型スイッチング素子として用いることができる。
また、以上の実施形態では、液晶としてTN型液晶を用いたが、STN型液晶や、ゲストホスト型液晶を用いることもできる。ゲストホスト型液晶とは、分子の長軸方向と短軸方向とで可視光の吸収に異方性を有する染料(ゲスト)を一定の分子配列の液晶(ホスト)に溶解して、染料分子を液晶分子と平行に配列させた構造の液晶である。
また、無電圧印加時には液晶分子が両基板に対して垂直方向に配列する一方、電圧印加時には液晶分子が両基板に対して水平方向に配列するという、垂直配向、すなわちホメオトロピック配向の構成としても良い。また、無電圧印加時には液晶分子が両基板に対して水平方向に配列する一方、電圧印加時には液晶分子が両基板に対して垂直方向に配列するという、平行配向、すなわち水平配向、すなわちホモジニアス配向の構成としても良い。
また、実施形態の説明では、8階調表示を例示したが、これよりも低階調の4階調表示とすることもできる。また、これよりも高階調の16、32、64、…階調とすることもできる。
(液晶装置の製造方法の実施形態)
次に、以上に説明した液晶装置1を製造するための製造方法の一実施形態を図20に示す工程図を参照して説明する。図20の工程P1〜工程P7に至る工程は図1の素子基板7を形成する工程である。また、工程P11〜工程P18に至る工程は図1のカラーフィルタ基板8を形成する工程である。また、工程P21〜工程P28に至る工程はそれらの基板を貼り合わせて製品である液晶装置を形成する工程である。
なお、本実施形態では、図1に示す素子基板7及びカラーフィルタ基板8を1つずつ形成するのではなく、素子基板7に関しては、複数の素子基板7を形成できる大きさの面積を有する素子側マザー透光性基板の上に素子基板7の複数個分の要素を同時に形成するものとする。また、カラーフィルタ基板8に関しては、複数のカラーフィルタ基板8を形成できる大きさの面積を有するカラーフィルタ側マザー透光性基板の上にカラーフィルタ基板8の複数個分の要素を同時に形成するものとする。素子側マザー透光性基板及びカラーフィルタ側マザー透光性基板は、例えば、透光性ガラス、透光性プラスチック等によって形成される。
まず、図20の工程P1において、素子側マザー透光性基板の表面にスイッチング素子である図4(b)のTFD素子21、データ線19、及び素子側遮光部材29をフォトエッチング処理(すなわち、フォトリソグラフィ処理とそれに続くエッチング処理の一連の処理)によって基板7a上に同時に形成する。具体的には、第1素子電極34を例えばTaWによって形成し、絶縁膜35を陽極酸化処理によって形成する。また、遮光部材29、データ線19、第2素子電極36、及び端子部36aを例えばCrによって形成する。なお、遮光部材29は、複数のサブ画素Dの間の列方向Yに延びる間隙と平面視で重なるような帯状、すなわち線状に形成される。この遮光部材29は、ブラックマスクとして機能する。
次に、工程P2において、層間絶縁層である図2のオーバーレイヤ22及びコンタクトホール27をフォトリソグラフィ処理によって基板7a上に形成する。これらは、それぞれ、別々のフォトリソグラフィ処理によって形成することができる。次に、工程P3において、図2の画素電極23をITOを材料としてフォトエッチング処理によって形成する。このとき、図4(b)においてコンタクトホール27の所で画素電極23とTFD素子19の第2電極36の端子部36aとの導通がとられる。
次に、工程P4において、図2のフォトスペーサ24をフォトリソグラフィ処理によって形成し、さらに、工程P5において図2の配向膜26aが、例えばポリイミドを印刷することによって形成される。次に、工程P6において、配向膜26aにラビング処理が施され、さらに工程P7において、シール材6が、例えばエポキシ系樹脂を印刷することによって形成される。以上により、素子側マザー透光性基板の上に素子基板7の複数個分の要素が形成されて大面積の素子側マザー基板が形成される。
次に図20の工程P11において、カラーフィルタ側マザー透光性基板の表面上に、図2の樹脂膜41を表面に凹凸パターンを持つように形成する。次に、工程P12において、フォトエチング処理によって光反射膜42を積層する。このとき、図3に示すようにサブ画素Dごとに光反射膜42が存在しない領域51が形成され、これにより、光反射部Rと光透過部Tが形成される。
次に、工程P13において、図2の遮光部材44を、例えばCrを材料としてフォトエッチング処理によって所定のパターン(本実施形態では、複数のサブ画素Dの間の行方向Xに延びる間隙と平面視で重なるような帯状)に形成する。この遮光部材44は素子基板側の遮光部材29と協働してブラックマスクとして機能する。次に、工程P14において、図2の着色要素43を形成する。着色要素43については、B,G,Rの各色ごとに順々に形成する。例えば、各色の顔料や染料を感光性樹脂に分散させて成る着色材料をフォトリソグラフィ処理によって所定の配列に形成する。なお、遮光部材44は、Cr等のような特定の材料によって形成するのに代えて、異なる色の着色要素43を積層することによって形成することもできる。この場合には、遮光部材形成工程P13と着色要素形成工程P14とは同じ工程ということになる。
次に、工程P15において、オーバーコート層46を、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等といった感光性樹脂を材料としてフォトリソグラフィ処理によって形成する。さらに、工程P16において、帯状電極47をITOを材料としてフォトエッチング処理によって形成し、さらに工程P17において配向膜26bを形成し、さらに工程P18において、配向処理としてのラビング処理を行う。以上により、カラーフィルタ側マザー透光性基板の上にカラーフィルタ基板8の複数個分の要素が形成されて大面積のカラーフィルタ側マザー基板が形成される。
その後、図20の工程P21において、素子側マザー基板とカラーフィルタ側マザー基板とを貼り合わせる。これにより、素子側マザー基板とカラーフィルタ側マザー基板とが個々の液晶パネルの領域において図1のシール材6を挟んで貼り合わされた構造の大面積のパネル構造体が形成される。
次に、以上のようにして形成された大面積のパネル構造体に含まれるシール材6を、工程P22において熱硬化または紫外線硬化によって硬化させて両マザー基板を接着して大面積のパネル構造体を形成する。次に、工程P23において、そのパネル構造体を1次切断、すなわち1次ブレイクして、図1の液晶パネル2の複数個が1列に並んだ状態で含まれる中面積のパネル構造体、いわゆる短冊状のパネル構造体を複数形成する。シール材6には予めその適所に開口6aが形成されており、上記の1次ブレイクによって短冊状のパネル構造体が形成されると、その開口6aが外部に露出する。
次に、工程P24において、上記のシール材6の開口6aを通して各液晶パネル部分の内部へ液晶を注入し、その注入の完了後、その開口6aを樹脂によって封止する。次に工程P25において、2回目の切断、すなわち2次ブレイクを行い、短冊状のパネル構造体から図1に示す個々の液晶パネル2を切り出す。
次に、工程P26において、図1の基板張出し部52の表面に駆動用IC53を実装する。さらに、工程P27において図1の偏光板18a及び18bを液晶パネル2に接着する。そしてさらに、工程P28において、図1の照明装置3を液晶パネル2に取付ける。これにより、液晶装置1が完成する。
(電子機器の実施形態)
以下、本発明に係る電子機器を実施形態を挙げて説明する。なお、この実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図21は、本発明に係る電子機器の他の実施形態である携帯電話機を示している。ここに示す携帯電話機130は、本体部131と、これに開閉可能に設けられた表示体部132とを有する。液晶装置等といった電気光学装置によって構成された表示装置133は、表示体部132の内部に配置され、電話通信に関する各種表示は、表示体部132において表示画面134によって視認できる。本体部131には操作ボタン136が配列されている。
表示体部132の一端部にはアンテナ137が伸縮自在に取付けられている。表示体部132の上部に設けられた受話部138の内部には、図示しないスピーカが配置される。また、本体部131の下端部に設けられた送話部139の内部には図示しないマイクが内蔵されている。表示装置133の動作を制御するための制御部は、携帯電話機の全体の制御を司る制御部の一部として、又はその制御部とは別に、本体部131又は表示体部132の内部に格納される。
表示装置133は、例えば、例えば、図1に示す液晶装置1を用いて構成できる。この液晶装置1によれば、図4(a)に示したように、素子基板7上において隣り合う画素電極23,23の間隙を遮光する遮光部材29をカラーフィルタ基板8上ではなくて素子基板7上に設けるようにしたので、素子基板7とカラーフィルタ基板8との間の組みズレを見込んで遮光部材29の幅を広く形成する必要がなくなり、それ故、サブ画素Dの開口率を上げることができ、鮮明な表示を提供できるようになった。従って、この液晶装置1を用いた携帯電話機130においても、表示画面134内に鮮明な画像を表示できる。
また、図1の液晶装置1によれば、図4(a)に示したように、複数の線状の遮光部材29を共通線28で結ぶことによって同電位に設定したので、表示領域に黒窓表示を行った際の横クロストークを改善できるようになった。従って、この液晶装置1を用いた携帯電話機130においても、横クロストークが発生しない鮮明な画像を表示できる。
(変形例)
なお、電子機器としては、以上に説明した携帯電話機等の他にも、パーソナルコンピュータ、液晶テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話機、POS端末器等が挙げられる。