JP4665171B2 - Swnt可飽和吸収光学材料の作製方法、パルスレーザー装置、全光型光スイッチ装置 - Google Patents

Swnt可飽和吸収光学材料の作製方法、パルスレーザー装置、全光型光スイッチ装置 Download PDF

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本特許はSWNTの光の可飽和吸収特性を安定に発現するための光学材料の製造方法ならびにそれを利用したレーザーおよび光スイッチ装置に関する特許であって、レーザーから数十〜数百フェムト秒(1フェムト秒=1×10-15 秒)の超短パルスを発生させるために利用される。また安価な超高速光-光スイッチを実現できる。
数ピコ秒以下の超短光パルスを発生させる方法としては、従来から「モード同期」が広く普及しており、これを実現するためには可飽和吸収体を利用する方法が、簡便な方法として多用されている。この方法は受動モード同期と呼ばれている。しかし、従来の光通信の波長帯である1.55 μm付近で作動する可飽和吸収体としては、化合物半導体の多重量子井戸系(非特許文献1)があるだけであった。この可飽和吸収体は製造コストが高く、光耐損傷性も弱く、それらのことが光通信用の超短光パルスレーザーを高価で壊れやすいものにしている。そこで、製造コストが低く、光耐損傷性に優れた可飽和吸収体の開発が望まれていた。
また単層カーボンナノチューブ(Single Walled Carbon Nanotube : 以下SWNT)はグラフェンシートの巻き方によって金属または半導体としての性質を示すことが知られている。特に、半導体の性質を示すSWNTの光学的特性については、光通信の波長帯である近赤外領域で、SWNTの可飽和吸収効果(光吸収率が光強度が大きくなると低下する)が報告されており、またこの可飽和吸収の回復時間が1 ps以下という超高速であることも確認されている(非特許文献2)。これらのカーボンナノチューブの光学的特性を利用して超短光パルスを発生させる受動モード同期ファイバーレーザーが既に報告されている(非特許文献3)。また、SWNTの近赤外波長領域での可飽和吸収効果を用いて全光型スイッチ、受動モード同期レーザーの可飽和吸収ミラー、超短パルスの波形整形器等の応用が試みられてきた。SWNTはその製造技術の発展と共に、低コスト化、高品質化、大量生産化も進められており、SWNTの持つ高い耐環境性より、次世代の可飽和吸収体として非常に有力な材料である。
しかしながらここで問題となるのが、個々のSWNT間の強い分子間引力によってSWNT同士が凝集して、束になりやすいことである。このために波長の4乗に逆比例する散乱係数をもつレイリー散乱と呼ばれる光損失が発生しやすい。現在、SWNTを可飽和吸収体として用いる場合、SWNTをジメチルホルムアミドやエタノールなどの有機溶媒に分散させて、ガラス基板上にスプレー散布して薄膜化する方法(特許文献1、非特許文献4)が主流である。しかしこの方法では、個々のSWNTがお互いに凝集し合っているために、レイリー散乱が顕著となる。モード同期レーザーへの応用に関しては、この散乱による損失よりも増幅の方が勝るために、レーザー発振が可能となるが、不安定なレーザーとなり易い。また、SWNTが常時空気や湿気にさらされているため 長期的な特性劣化が避けられない問題点があった。
このようなレイリー散乱の問題を解決するためには、SWNT同士が凝集しないように、光通信に用いる波長において透明な分散性媒質へ均一に分散させることが大変重要である。分散性媒質としてはポリマーや溶媒などが考えられる。その一例として、榊原らはこのポリマーにポリビニルアルコール(PVA)を用いることにより、散乱損失の低減を実現している(非特許文献5)。しかし、PVAではフイルム膜しか作製できず、また溶媒として水を使うためO-H基による1.55 μm帯の光の吸収が見られる。このためSWNTを分散させるポリマーとしては最適ではなかった。
本発明の目的は上述の問題点に鑑み、安定でかつ取り扱いやすいSWNTを利用した可飽和吸収プラスチック材料およびそれを利用したレーザーおよび光スイッチを提供することにある。
かかる目的を達成するために、本発明では光通信の分野で使用される透明性ポリマーとして、PMMAなどのポリアクリレート(PAc)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PEs)、ポリウレタン(PU)、ポリノルボルネン(PNB)等を利用し、これらのプラスチック中にSWNTを一様に分散することにより、吸収の少ないSWNT可飽和吸収体材料あるいはその導波路構造を実現するものである。さらにこれらをレーザー内部に挿入したり、あるいは光スイッチとして用いることにより光パルスの制御を行うものである。このためにはポリマーと溶剤とSWNTとの相性、また、相溶性の改善にSWNTの表面処理が重要となってくる。
本発明で得られるSWNT含有プラスチック材料においてはSWNTどうしの凝集がないため、低損失かつ光耐損傷性に優れた光学的可飽和吸収体あるいはその非線形光導波路構造を実現することができる。本可飽和吸収体をレーザーに挿入することにより、安定なパルス発振が可能で且つ低コストな光通信用の超短光パルスレーザーや小型光スイッチを実現することができる。
本発明のSWNT含有プラスチック材料の作製においては、クロロベンゼンあるいはテトラヒドロフラン(THF)を分散溶媒として用いる。まず、溶媒によく馴染ませたSWNT溶液、もしくはラジカル付加により表面処理を施したSWNT溶液に超音波処理を施す。次に上記透明ポリマーの一つを分散溶液に加え、SWNTがプラスチックに均一に分散するように超音波を与えよく撹拌する。最後に、分散液を数十度Cに熱した雰囲気中でゆっくりと十分乾燥させる。これによりSWNT可飽和光学材料を作製することができる。
PMMAなどのPAcおよびPSはプラスチック光ファイバー(POF)や光導波路として使用されるなど、光通信の分野ではよく用いられるポリマーである。PMMAおよびPSの屈折率はそれぞれ1.48~1.50、1.59~1.60であり、18.6 kg/cm2の曲げ荷重を加えたときの熱変形温度はそれぞれ102℃、104℃である。PAcはエタノール水溶液、アセトン、クロロホルム、メチルエチルケトン、クロロベンゼン、テトラヒドロフランなど、ケトン・エステル塩素化溶剤に可溶である。一方、PSはクロロホルム、メチルエチルケトン、エチルアセテート、テトラヒドロフランなど、芳香族・塩素化溶剤に可溶である。
本発明のポイントは、分散溶媒として、ホストポリマーの溶媒であり且つSWNTの分散溶媒を兼ねるクロロベンゼンあるいはテトラヒドロフラン(THF)を用いることである。これらの溶媒の線形吸収特性を図1に示す。同図にはジメチルホルムアミド(DMF)および精製水の線形吸収も併せて示している。各溶媒の吸収特性は厚さ1 mmの石英ガラスに囲まれた長さ5 mmの光学セルに入れて測定したものである。光通信の波長帯である1550 nmにおける透過率を見ると、THFが91.78 %、クロロベンゼンが99.62 %、DMFが94.87 %である。精製水はOH基による吸収のため、1550 nmの透過率はほぼ0 %である。これよりTHFもしくはクロロベンゼンが低損失化に有望であることがわかる。
従来検討されてきたSWNT可飽和吸収光学材料(スプレー法、PVA法)と比較すると、スプレー法はSWNT薄膜がはがれやすく外気にさらされているため、SWNTの長期信頼性に問題があった。またPVAへのSWNTの分散は水を利用しているが、図1にも示したようにOH基による光損失が大きく、またフイルム膜しか作製できないという欠点があった。それに対して、SWNT分散PAcやPS 、PC、PEs、PNBは、耐熱性、SWNTの分散性、1.55μm帯における低光損失性、SWNTの長期信頼性、のいずれをとっても優れた特性を有する。さらに薄膜だけでなく導波路構造の形成も可能であり、光スイッチ、変調器などへの様々な光応用を含めて可飽和光学材料として極めて有効である。
ここでポリマーとSWNTが一様に混ざる理由について、まずPAcの例としてPMMAの例を述べる。PMMAにSWNTを均一に分散させる働きがあるのは、SWNTの末端または六員環の欠陥部分とPMMAのカルボニル基が引きつけ合っているためであると考えられる。それを理解するためにSWNTとPMMAに分子間力が働く様子を図2に示す。例えば、SWNTと98 %硫酸と70 %硝酸の混酸に浸し、超音波処理することで、SWNTの末端または六員環の欠陥部分にカルボキシル基が結合することが知られている。PMMAのカルボニル基はカルボキシル基の水素原子がメチル基(-CH3)に置き換わっただけであり、構造はほぼ同じである。このため、PMMAのカルボニル基とSWNTとの間には微弱ながらも分子間力が働いており、SWNTの均一分散が可能になるものと考えられる。同様の理由によりカルボニル基を持つPC、PEs、PU、PNBもホストポリマーとして利用可能である。
一方SWNTとPSの間に分子間力が働くのは、グラファイトの構成と同じように、PSのベンゼン環とSWNT表面の六員環どうしがファンデルワールス力で引きつけ合い、互いに密接に結合しているためと考えられる。なお、この時のベンゼン環と六員環は完全に重ならずに少しずれた形で重なっている。PSのベンゼン環とSWNTの六員環のπ電子軌道の重なりによる結合の様子を図3(a)に示す。また図3(b)に、SWNT表面のまわりにPSがらせん状に密着している様子を模式的に示す。
ポリマーに分散させるSWNTの濃度が高すぎたり、ポリマーの分子量が小さすぎると、乾燥する過程でSWNTが凝集してしまう。したがってSWNTがホストポリマーに十分に分散した状態で保持され、SWNT含有プラスチックとして完成させるためには、
(1)SWNTに対するポリマー(プラスチック)の質量比が十分にあること、
(2)ポリマー分子の分子量が十分であること、
の2つの条件が必要である。(1),(2)の具体的な値については、SWNTの純度・品質によって変化するが、HiPCO (High-pressure carbon monoxide)法によって作製されたSWNTを例にとると、質量比はSWNTに対してプラスチックが約1000倍以上(SWNT濃度が1000 ppm以下)であること、プラスチック分子の分子量は約20,000以上が適当である。ただし、プラスチックの分子量があまりにも高すぎると、SWNT/ポリマー溶液の粘性が大きくなり、バルク材料として乾燥させるときに材料の均一度ならびに面精度・平行度が悪くなる。
以下に示す実施例1、2および3は、それぞれテトラヒドロフラン(THF)、クロロベンゼンを溶媒としてSWNTをPMMA中に分散させる方法の一例である。実施例4はクロロベンゼンを分散溶媒としてSWNTをPS中に分散させる方法の一例である。以下に記す分散溶媒の体積、SWNTやPMMAの質量、超音波処理等の条件はあくまで典型例であり、分散性が得られる限り特に限定されるものではなく、使用するSWNT、溶媒、プラスチックの種類等によって、適宜定めることが可能である。実施例5は実施例1~4のいずれかによって得られたSWNT可飽和吸収光学材料をレーザー共振器内部に挿入し可飽和吸収体として利用するパルスレーザー装置である。実施例6はSWNT可飽和吸収光学材料を利用した光スイッチである。
THFを溶媒としたSWNT分散PMMAの作製方法は以下の通りである。
(1) THF20 mlに0.5 mgのSWNT (28 ppm)を加え、超音波ホモジナイザーで約30分の超音波処理を行う。比率がこの程度であれば絶対量は問わない。
(2) 超音波を(1)の分散溶液に加えたまま、PMMA 2 gを少しずつ加え、投入後3時間程度の超音波処理を行う。PMMAの量は(1)に対応しており、(1)の量が多ければそれに応じて増やす。
(3) (2)の分散溶液をシャーレまたは石英基板上に取り、およそ2日間自然乾燥させる。
THFは揮発性が高いため、PMMAが急激に乾燥することにより、表面が細かく波打ち縁には気泡が生じる。1 mm以上の厚さを持つPMMAのバルクを作製するためには空気が混入しないように注意しなければならない。
THFを溶媒としたSWNT分散PMMAの別の作製方法は以下の通りである。
(1) PMMA のモノマーであるメチルメタクリレート(MMA)にメタクリル基を有するシラン処理剤で表面処理したSWNT及びラジカル重合開始剤を加え、超音波ホモジナイザーで約30分の超音波処理を行う。
(2) 超音波処理した溶液をアンプル中に封管し、脱気後、加熱重合する.得られたSWNT含有PMMA2gをTHF20 mlに溶かし、超音波ホモジナイザーで3時間程度の超音波処理を行う。
(3) (2)の分散溶液をシャーレまたは石英基板上に取り、およそ2日間自然乾燥させる。
重合した材料はPMMA2.0 gに対してSWNTを2 mg分散させても凝集体は観測されないが、THFは揮発性が高いため、実施例1同様、PMMAが急激に乾燥することにより、表面が細かく波打ち縁には気泡が生じる。1 mm以上の厚さを持つPMMAのバルクを作製するためには空気が混入しないように注意しなければならない。
クロロベンゼンを溶媒としたSWNT分散PMMAの作製方法は以下の通りである。
(1) クロロベンゼン18 mlに1 mg (49 ppm)のSWNTを加え、メノウ乳鉢を用いてSWNTとクロロベンゼンを馴染ませる。比率がこの程度であれば絶対量は問わない。
(2) (1)の溶液を超音波ホモジナイザーで約30分の超音波処理を行う。
(3) 超音波を(2)の分散溶液に加えたまま、PMMA 2 gを少しずつ加え、投入後約1時間の超音波処理を行う。PMMAの量は(1)に対応しており、(1)の量が多ければそれに応じて増やす。
(4) (3)の分散溶液をフッ素樹脂製シャーレに取り、40 ℃程度に熱した雰囲気中で、およそ3日間乾燥させる。
クロロベンゼンは揮発性が低く、分散溶液はゆっくりと乾燥するため、シャーレに深さ1 cm以上の溶液を入れて乾燥させても、THFの時のように中が空洞化せず、厚さ1 mm以上の表面の平坦なSWNT混入PMMAを作製することが出来る。また、クロロベンゼンはTHFに比べてSWNTに対して良好な分散性を示すため、PMMA2.0 gに対してSWNTを1 mg分散させても凝集体は観測されず、一様に濃い色のSWNTが均一に混入したPMMAを作製することが出来る。なお、実施例2と同様の手法により、シラン処理剤を用いて表面処理したSWNTをMMAに分散、結合させた後、重合した材料はPMMA2.0 gに対してSWNTを2 mg分散させても凝集体は観測されず、一様に濃い色のSWNTが均一に混入したPMMAを作製することも可能である。
ポリスチレン(PS)も、実施例3と同じクロロベンゼンを分散溶媒として用いると、良好な状態で分散する。SWNT分散PSの作製方法は以下の通りである。
(1) クロロベンゼン18 mlに1 mgのSWNTを加え、メノウ乳鉢を用いてSWNTとクロロベンゼンを馴染ませる。比率がこの程度であれば絶対量は問わない。
(2) (1)の溶液を超音波ホモジナイザーで30分の超音波処理を行う。
(3) 超音波を(2)の分散溶液に加えたまま、PS 2 gを少しずつ加え、投入後2時間の超音波処理を行う。PSの量は(1)に対応しており、(1)の量が多ければそれに応じて増やす。
(4) (3)の分散溶液をフッ素樹脂製シャーレに取り、40 ℃程度に熱した雰囲気中で、3日間乾燥させる。
このようにすると厚み1 mm以上でSWNTが均一混入したPSが作製できる。
SWNT含有プラスチックを可飽和吸収体とした受動モード同期ファイバーレーザーの構成を図3に示す。本レーザーは利得媒質1、偏波保持ファイバー2、偏波保持光アイソレーター3、CNT光学系4、光フィルター5、偏波制御素子6、偏波保持光カップラー7で構成される。さらにCNT光学系4は、コリメーター41、レンズ42、両端面を光学研磨したSWNT含有プラスチック43、Z軸可変ステージ44で構成される。
利得媒質1としては、1.55μm帯に利得を持つエルビウム添加光ファイバーあるいは半導体光増幅器を使用する。フェムト秒のパルスを安定に発振させるために、共振器を偏波保持ファイバー2で構成し、偏波保持光アイソレーター3、光フィルター5を挿入する。また、SWNT含有プラスチックは偏波保持ではないので、共振器中に偏波制御素子6を挿入する。光パルスは偏波保持光カップラーを介して出力される。CNT光学系4では、Z軸可変ステージ44でSWNTへの入射光強度を数MW/cm2〜1 GW/cm2の範囲で調整することによって、最適な可飽和吸収効果を生み出す。従来報告されているスプレー法、PVAビニールへの含有法、あるいは光コネクター端面にSWNTを成長させる方法においては、任意の厚みの光学研磨は不可能であったが、本プラスチック材料は容易に任意の厚みの高精度光学研磨が実現出来ることが大きな相違点である。これにより光デバイスへの応用範囲が圧倒的に広くなる。また、サンプルの移動や屈折率・厚みの違うサンプルを挿入したときの光の接続損失を最小にするために、受光レンズ42をZ軸方向に調整できる機構(Z軸可変ステージ44)を設けることが望ましい。
溶媒中のSWNTの分散濃度を100~10,000 ppmまで変化させると可飽和の起こる割合を調整することができる。SWNTの分散状態が同じであれば、可飽和吸収体としての性能は分散濃度と厚さの積で決まる。
例えば、SWNTをPMMAへ1000 ppmで分散させて、SWNT含有PMMAの厚さを0.5 mmとしたときのパルス発振特性は、濃度500 ppm・厚さ1 mmの場合と同じである。しかるに、濃度1000 ppmのSWNT含有PMMAの厚さを1 mmと厚くすると、SWNTによる吸収が大きいため、共振器内で光が発振できなくなる。さらに分散濃度を増加させると、PMMAが分散できる限界を超えるため、SWNT同士が凝集しレイリー散乱が増大する。実際に、このSWNT含有PMMAを可飽和吸収体としてレーザーの発振特性を測定すると、光パルスが発振する状態は2〜3秒しか持続できず非常に不安定になる。一方、厚さが1 mmのときに分散濃度を200 ppmに減少させると、逆にSWNTの吸収が小さ過ぎるため、パルス発振に必要な可飽和吸収効果が得られない。その結果、CW発振はするものの、パルス発振が行われない。以上の結果、パルス発振に最適な分散濃度と厚さの条件は、次式(1)で与えられる。
このような状況において得られた光パルスの出力波形を図5に示す。パルス幅は375 fsと狭い安定なパルスが得られている。
図6(a)および(b)はSWNT含有プラスチックをコア材料として、そのまわりを光導波路を形成するためにわずかに屈折率の低い材料でクラッドをつけた導波路およびプラスチックファイバーを用いた光スイッチをそれぞれ示している。これらのデバイスは従来法では実現出来ないものである。いずれもSWNTの高速な可飽和吸収の緩和を利用したスイッチであり、信号光パルスλSに対して同期した制御光パルスλCが入射すると、制御光がない場合吸収飽和でλSは透過できないが、λCが入射すると光が高速に飽和して両者がオーバーラップするときのみλSが透過してくるものである。λSとλCは波長が同じでもよいが、異なるものに設定すれば図6(b)のような使い方ができる。波長選択フィルターはλSを透過し、λCを反射するように設計されている。これらのスイッチはフェムト秒領域においても動作する高速なものなので、超高速光スイッチとして利用できる特徴がある。バルク材料では非線形光学効果を起こすために光を焦点距離の短いレンズで集光する必要があるが、図6に示す導波型光デバイスにすると相互作用長が大幅に長くできるため低パワー動作の高効率な光スイッチが実現できる。
以上詳細に説明したように、PAc、PS、PC、PEs、PU、PNBのように波長1.55 μm帯で透明なプラスチック材料にSWNTを均一に分散させることにより、光通信波長帯で問題となるOH基による吸収やレイリー散乱を抑制した低損失な可飽和吸収材料を実現することができる。またSWNT含有プラスチック材料を導波路構造にすることにより耐光損傷性を向上することができる。その結果、本材料を用いることにより、光耐損傷性が強く且つ安定なパルス発振が可能な光通信用超短光パルスレーザーや、高性能・高機能な超高速光スイッチを実現することが可能となる。本プラスチック材料は従来報告されてきたSWNT可飽和吸収材料とは異なり、容易に任意の厚みの高精度光学研磨が実現出来ることが特徴である。その結果、本材料は各種光デバイスへの幅広い応用が可能である。
THF、クロロベンゼン、DMF、精製水の線形吸収特性 SWNTとPMMAに分子間力が働く様子 PSのベンゼン環とSWNTの六員環のπ電子軌道の重なりによる結合の様子 SWNTを可飽和吸収体とした受動モード同期ファイバーレーザーの構成 受動モード同期レーザーからのフェムト秒光パルス出力 SWNT含有プラスチックを可飽和吸収光導波路およびファイバーとして用いた光スイッチの構成。(a) 光導波路型、(b) 光ファイバー型
符号の説明
1 利得媒質
2 偏波保持ファイバー
3 偏波保持光アイソレーター
4 CNT光学系
5 光フィルター
6 偏波制御素子
7 偏波保持光カップラー
41 コリメーター
42 レンズ
43 SWNT含有プラスチック
44 Z軸可変ステージ

Claims (6)

  1. 単層カーボンナノチューブ(SWNT)が有する光の可飽和吸収特性を安定に発現させるための光学材料作製方法において、溶剤としてクロロベンゼン(CLB)を用いることにより、該SWNTをPMMA、ポリスチレンを包含する透明性プラスチック材料から選択され且つ導波路化
    が可能で任意の厚みの高精度光学研磨が容易な透明性プラスチック材料に均一に分散せしめ且つ含有せしめることを特徴とするSWNT可飽和吸収光学材料の作製方法。
  2. 単層カーボンナノチューブ(SWNT)が有する光の可飽和吸収特性を安定に発現させるための光学材料作製方法において、溶剤としてクロロベンゼン(CLB)を用いることにより、該SWNTをPMMA、ポリスチレンを包含する透明性プラスチック材料から選択され且つ導波路化
    が可能で任意の厚みの高精度光学研磨が容易な透明性プラスチック材料に、次式(1)
    の分散濃度と厚さの条件で、均一に分散せしめ且つ含有せしめることを特徴とする請求項1に記載のSWNT可飽和吸収光学材料の作製方法。
  3. 前記請求項1において、クロロベンゼン中のSWNTの分散濃度を100〜10,000 ppmとして可
    飽和吸収の起こる割合を調整することを特徴とする請求項1に記載のSWNT可飽和吸収光学材料の作製方法。
  4. 前記請求項1において、SWNTがプラスチックに均一に混ざるように該分散液(溶剤)に超音波を与え、よく撹拌した後、数十度Cに熱した雰囲気中でゆっくりと十分乾燥させるこ
    とを特徴とする請求項1に記載のSWNT可飽和吸収光学材料の作製方法。
  5. 前記請求項1に記載の方法によって得られたSWNT可飽和吸収光学材料の両端面を光学研摩し、光材料としてレーザー共振器内部に挿入し、可飽和吸収体として利用することにより、安定してパルス発振を行うことを特徴とするパルスレーザー装置。
  6. 前記請求項1に記載の方法によって得られたSWNT可飽和吸収光学材料をコア材とし、それ
    よりも屈折率の低いクラッド材でコアをつつむことにより可飽和吸収光導波路を作製し、該光導波路に信号光パルスおよび同期した制御光パルスを入射することにより、信号光パルスを超高速にON-OFFする全光型光スイッチ装置。
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