JP4656553B2 - 帯電防止剤 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止剤やそれを用いた帯電防止能を有する成型体、詳しくは、酵素処理した酵母から可溶性菌体成分を除去した菌体残さを酸性水溶液で処理し、さらに可溶化物を除去した残さからなる酸処理酵母細胞壁画分を主成分とする帯電防止剤やそれを用いた帯電防止機能を備えた成型体に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電気の発生現象については、これまでいろいろ研究されているが、現象が複雑であるために、現在でも理論的究明が完全になされておらず、一般的には静電気の発生現象は異種又は同種の物質を摩擦したり、分離した場合、物体間で電子又はイオンの移動が起こり静電気が発生するといわれている。静電気等により電荷を帯びた物体から電荷を除去する帯電防止方法は、外的帯電防止方法と内的帯電防止方法の2つの方法に大別することができる。対象物が導体である場合にはアースを行い電荷を放出させることで簡単に除電することができるが、対象物が絶縁体である場合の外的帯電防止方法としては、除電ブラシ・リボンなどでコロナ放電を発生させ電荷を除去したり、除電器により帯電物質と逆の電荷のイオンを電極より発生させ帯電を中和させることにより電荷を除去する方法が知られている。また、外気の湿度・室温を上昇させることで帯電を環境的に防止する方法も知られている。
【0003】
他方、合成樹脂などの高分子化合物は、ほとんど電気的に不良導体であるため帯電をしやすく、製品の帯電による汚れの吸着、性能低下、印刷や接着不良を起こし問題となっている。かかる合成樹脂などの絶縁物質に対しては導電性物質の添加・練り込みや、帯電防止物質のコーティングなど帯電物質本体を導電化させる内的帯電防止方法もよく知られている。例えば、低分子界面活性剤をプラスチック製品や合成繊維などに練り込んだり、表面に塗布したりすることが行われているが、拭き取りや洗濯などにより容易に除去されるという問題があり、そこで、半永久的に効果を持続させるために、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリスチレンスルホン酸ソーダ等の合成高分子型の帯電防止剤が現在多く使われてきている。
【0004】
このような合成高分子系のものに対し、デキストラン、プルラン、カードラン、キサンタンガム、ゲランガム、ヒアルロン酸等の植物・動物・微生物由来の種々の多糖類が、天然系の物質であり安全性も高いため医薬、食品、化粧品といった分野で利用が拡大されつつある。例えば、微生物由来のものとして、特開平8−319475号公報には、アグロバクテリウム属細菌が生産する構成糖が、D−グルコース、D−ガラクトース、D−グルクロン酸、D−リボースおよびD−リブロン酸の5種類からなり、その構成モル比が、D−グルコース:D−ガラクトース:D−グルクロン酸:D−リボース:D−リブロン酸=10:1.8〜2.9:1.8〜2.6:0.5〜1.7:0.5〜1.7でO−アセチル基含有量が0〜10重量%である優れた帯電防止能を持つ多糖類を成分とした多糖類系帯電防止剤が記載されている。また、特開平9−13011号公報には、クレプシェラ属オキシトカ種の一変異種株菌によって生産される多糖類であるD−グルクロン酸、L−ラムノース、D−ガラクトースおよびD−グルコースからなり、その構成モル比が、D−グルクロン酸:L−ラムノース:D−ガラクトース:D−グルコース=0.8〜1.2:2.4〜3.6:0.8〜1.2:0.8〜1.2である優れた帯電防止能を持つ多糖類を有効成分とした多糖類系帯電防止剤が記載されている。
【0005】
一方、酵母からフィルム素材を開発しようとする試みもなされており、例えば、特公昭56−19971号公報には、脱核酸酵母から酵母細胞膜成分を除去して、水に可溶性のタンパク質を主成分とする可食性タンパク質フィルムが開示され、特開昭53−45385号公報には、酵母などの微生物菌体を熱アルカリ処理後、酸を加えて等電点沈殿処理を施し、生成した沈殿物のpHを6〜8に調節して得られるゲル形成性微生物菌体に可塑剤を配合してなる組成物を製膜するフィルムの製造方法が開示されている。また、酵母エキスを抽出する際に残さとして残った細胞壁を主体とする物質を脱色・脱臭方法も知られており、例えば、特開平4−248968号公報には、抽出残さをアルカリ及び酸で処理した後、1000〜2000ppmのオゾンで処理するとともに、該オゾン処理の前後にエタノールで処理する酵母エキス抽出残さの脱色・脱臭方法が開示され、また特開平9−103266号公報には、酵母自己消化不溶物をエタノールで懸濁させてアルカリ下で攪拌処理する酵母自己消化不溶物の無味無臭化方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
帯電防止方法は概ね確立されているということができるが、除電器などは除電スピードが遅かったり、除電ブラシの接触による除電では帯電を除去したい物質自体を傷つけてしまうことが問題となる。また、絶縁物質の導電化についても帯電防止剤(PEGオレイン酸エステル等)のような合成高分子系のものを添加する場合、直接皮膚に接触するものや、経口的に摂取するものに対してはその使用範囲が制限されるという問題がある。また、植物・動物・微生物由来の多糖類系のものについてはゲルろ過等の精製操作が必要であり、特に微生物由来の多糖類の場合、製造時に微生物の培養を行う必要があり、工程が煩雑になるという問題がある。
【0007】
また、粉体などの帯電に影響を受けやすい物質を充填する包材の一つとしてカプセルが挙げられるが、カプセルはほとんどの場合、帯電が発生し易いゼラチンで出来ており、このため、カプセル自体が有する帯電し易いという性質により多くの問題が生じる。かかる問題としては、例えば、カプセル自体の帯電により生じるブロッキングによるカプセルの搬送不良、1カプセルづつに分ける仕分けの不良等のカプセル中への粉体等の充填の前工程での問題や、カプセル外面に発生した静電気により内部の粉体・顆粒等内包薬剤がカプセル外面に付着することで、カプセルによる苦味・臭気等の防止効果が喪失したり、外面に付着した内包薬剤の吸湿や変質によるカプセルのブロッキング・変性・変色・破損・強度劣化等が発生するという問題や、静電気により飛散した粉体等により光学的なカプセル充填の検査機のレンズを汚すことで検査不良を引き起こし易くなるという問題などが挙げられる。
【0008】
粉体・顆粒などのコーティングに、エチルセルロース等の高分子系コーティング剤を使用し、流動層造粒でコーティングが行われている。かかるコーティング工程において、粉体の帯電による造粒機壁面への付着により、不均一なコーティング物が作られたり、顆粒同士が帯電により結着し不均一な粒子径の顆粒ができたりする問題がある。また、帯電性の強いコーティング剤を使用した場合、回収時に壁面に衝撃を加えて付着分を落とさなければならない等の作業性の悪化や回収できない部分による収率低下などの問題がある。
【0009】
本発明の課題は、上記の問題を解決しうる、安全でその適用範囲が制限されることがなく、かつ煩雑な工程を要することなく製造することができる帯電防止剤を用いて、優れた帯電防止機能の他、紫外線遮光機能、防湿機能、ガスバリア機能等に優れた性状・物性を有する成型体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、酵母細胞壁画分についての研究過程で、従来の脱臭・脱色の目的で行われていたアルカリ処理・酸処理の併用による酵母の処理条件とは異なり、酵母細胞壁画分を単に酸性水溶液を用いて処理し、さらに可溶化物を除去した残さからなる酸処理酵母細胞壁画分から成型した成型体が優れた帯電防止作用を有することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した菌体残さを酸性水溶液で処理し、さらに可溶化物を除去した残さからなる酸処理酵母細胞壁画分を主成分とし、さらに可塑剤を含むことを特徴とする帯電防止剤(請求項1)や、請求項1記載の帯電防止剤を用いて成型したことを特徴とする帯電防止能を有する成型体(請求項2)や、基体に帯電防止剤を単層又は複層にコーティングすることにより得られることを特徴とする請求項2記載の帯電防止能を有する成型体(請求項3)や、シート形状又はフィルム形状に成型されたことを特徴とする請求項2又は3記載の帯電防止能を有する成型体(請求項4)や、顆粒形状に成型されたことを特徴とする請求項3記載の帯電防止能を有する成型体(請求項5)や、カプセル形状に成型されたことを特徴とする請求項2記載の帯電防止能を有する成型体(請求項6)や、23℃、RH50%における表面固有抵抗が、10〜10Ωであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の帯電防止能を有する成型体(請求項7)に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の帯電防止剤としては、酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した菌体残さを酸性水溶液で処理し、さらに可溶化物を除去した残さからなる酸処理酵母細胞壁画分を主成分とするものであればどのようなものでもよく、また、本発明の帯電防止能を有する成型体としては、酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した菌体残さを酸性水溶液で処理し、さらに可溶化物を除去した残さからなる酸処理酵母細胞壁画分を主成分とする帯電防止剤を用いて成型した成型体であれば特に制限されるものではない。
【0013】
(原料酵母)
本発明の帯電防止剤の原料となる酵母としては、分類学上酵母に属するものであればどのような酵母を用いてもよく、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母等を挙げることができ、より具体的には、サッカロマイセス属のサッカロマイセス・セレビッシェ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ルーキシ(Saccharomyces rouxii)、サッカロマイセス・カールスバーゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、キャンディダ・ウティリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、キャンディダ・フレーベリ(Candida flaveri)等を例示することができる。そして、これら酵母は、単独あるいは組み合わせて使用することができる。また、酵母としては生酵母を用いることが好ましいが、乾燥酵母等の生酵母以外の形態の酵母を用いる場合であっても、例えば水中等に懸濁して生酵母同様に処理することもできる。さらに、使用する酵母の形状や大きさに特に制限はないが、形状としてはなるべく球形に近い形状のものが好ましく、また、その大きさは1〜20μmの範囲のものが好ましい。
【0014】
(酸処理酵母細胞壁画分)
酵母には、水もしくは極性溶剤に可溶性の菌体内成分、例えばたんぱく質、アミノ酸、糖質、核酸、有機酸などの成分が存在しており、酵母からこれら可溶性菌体内成分を除去して酵母細胞壁画分を得るためには、酵素処理によりこれらの菌体内成分を可溶化して菌体外に除去することが必要である。そして、酵素処理としては、酵母菌体内の酵素を使用するいわゆる自己消化法や、外部からプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、β−グルカナーゼ、エステラーゼ、リパーゼ等の酵素を添加する酵素添加方法や、それらを併用する方法等、いずれも酵母菌体内成分を食用に可溶化する際に用いられている方法であれば、どのような酵素処理法をも用いることができる。また、酵素処理を速やかに行うなどの目的で、酵母の酵素処理の前に、高圧ホモジナイザーなどにより細胞壁の物理的な破壊を伴う前処理を行ってもよく、この高圧ホモジナイザーを用いる場合は、例えば100〜1000kg/cm2の圧力下で処理することが好ましい。酵素処理を終えた酵母は、例えば遠心分離等の可溶性菌体内成分の除去処理を施すことによって、その菌体残さとして酵母細胞壁画分が得られる。このように、化学的処理を特に施すことなく得られる酵母細胞壁画分は、グルカン、マンナン、キチン層からなる物理的、化学的に比較的丈夫な皮膜を含んでいる。その他必要に応じて、酵母の洗浄処理、pH・温度・圧力の調整処理等を組み入れて、酵母細胞壁画分を調製することもできる。
【0015】
酸処理酵母細胞壁画分は、酵母の酵素処理により可溶性菌体内成分を除去することによって得られた上記酵母細胞壁画分を酸性水溶液で処理し、さらに可溶化分を除去した酵母菌体残さとしてを調製することができ、より具体的には上記酵母細胞壁画分を0.01〜2N、好ましくは0.1〜0.5Nの例えば塩酸、硫酸、硝酸等の酸で処理した後、その懸濁液を遠心分離等により上清と酵母菌体残さに分離し、この酵母菌体残さを採取することにより調製することができる。また、酸処理に際しては80℃前後に加熱することが好ましい。かかる酸処理酵母細胞壁画分は天然素材であり、素材的に安全性も高い。また、この酸処理酵母細胞壁画分は、ラットへの経口投与で腸内細菌で分解することが確認されているように、生分解性を有することから廃棄上も問題がない。かかる酸処理酵母細胞壁画分の構成成分を以下の表1に示す。なお、表1中の「食物繊維」にはβグルカン以外にキチン等も含まれ、また、タンパク質係数としては6.25が用いられている。
【0016】
【表1】
Figure 0004656553
【0017】
(帯電防止剤)
本発明の酸処理酵母細胞壁画分を主成分とする帯電防止剤には、酸処理酵母細胞壁画分からなる帯電防止剤の他に、酸処理酵母細胞壁画分に必要に応じて添加剤が配合された帯電防止剤も含まれる。酸処理酵母細胞壁画分をそのまま用いても優れた帯電防止剤となるが、コーティングする場合の伸展性やそれから成型した成型体の耐水性などの向上を目的として、可塑剤等の添加剤を用いることもできる。これら添加剤としては、食品分野における場合、グリセリン、ソルビトール、アミノ酸類、有機酸類、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、MCTを中心とした油脂類、ゼラチン、寒天・キトサン等の多糖類、砂糖等の糖類などを可塑剤として具体的に例示することができ、また、医薬品分野における場合、トリアセチン、クエン酸トリエチル、アセチル化モノグリセリドなどの医薬品添加剤リスト収載の全ての可塑剤、保湿剤、結合剤などを挙げることができる。また、本発明の帯電防止剤の形態としては、スラリー状、乾燥粉体状等を挙げることができ、乾燥粉体状のものは水等の水性媒体で分散させて使用されるが、スラリー状のものは塑性流動体であり、乾燥工程を必要としない点で有利に用いることができる。本発明の帯電防止剤は、また、従来の多糖類系帯電防止剤と比べて、粘性の割に仕上がりにべとつきがないという特徴を有している。
【0018】
(帯電防止能を有する成型体の成型)
本発明の帯電防止能を有する成型体は、上記本発明の帯電防止剤を用いて成型することにより得ることができる。かかる成型方法としては特に制限されるものでなく、例えば、帯電防止能を付与したい基体の片面若しくは両面又は一部若しくは全体に、スラリー状の本発明の帯電防止剤を単層又は複層にコーティングし、乾燥することにより、帯電防止能を有する被膜と基体からなる本発明の成型体が得られ、かかる成型体の基体から被膜を剥離することによりシート形状やフィルム形状の本発明の成型体を得ることができる。そして、かかるフィルム形状等の成型体は単独又は基体に貼着して用いることができる。上記基体の形状としては板状、粒状物状等特に制限されるものではなく、また基体の材質も特に制限されないが、例えばプラスティック等の高分子素材、硝子、天然繊維、布、紙類、粒状薬剤等を例示することができる。また、スラリー状の本発明の帯電防止剤に所望の形状の型をディッピングした後乾燥することにより、カプセル形状等の種々の形状の成型体を成型することができる。
【0019】
(帯電防止能を有する成型体の性状・物性)
本発明の成型体は帯電防止機能の他、紫外線遮光機能、防湿機能、ガスバリア機能等優れた性状を有している。成型体の帯電防止能としては、ASTM D257による測定法に基き測定した場合の表面固有抵抗が、23℃、RH50%において、109Ω以下、例えば106〜109Ωの低抵抗値が好ましい。またフィルム状成型体のガスバリア性について、酸素、水素・二酸化炭素・窒素についてのガス透過係数を酸素はJISK7126 B法(モコン法)、炭酸ガスはモコン法、水素・窒素はJISK7126 A法に基づき測定したところ、酸素透過係数は0.003cm3・mm/m2・24h・atm、水素透過係数は0.77cm3・mm/m2・24h・atm、二酸化炭素透過係数は0.15cm3・mm/m2・24h・atm、窒素透過係数は0.03cm3・mm/m2・24h・atmであり、一般的な高分子フィルムに比べても高いガスバリア性を有し、特に酸素バリア性については、一般的な高分子フィルムのポリエチレンテレフタレート(1.0cm3・mm/m2・24h・atm)をはるかに上回り、既存フィルムで最も高い酸素バリア性をもつエバールに匹敵する。さらに、本発明の成型体は、光学的にも遮光物質を混ぜ込むことなく波長300nm以下の紫外領域の光について完全な遮光性を有する。したがって、本発明のシート状・フィルム状成型体は、食品、医薬品、化成品、飼料、農業など幅広い分野に適用することができる。
【0020】
また、本発明のカプセル形状の成型体は、既存のゼラチンカプセルやHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)カプセルに比較して、上記のように、帯電防止機能の他、紫外線遮光機能、防湿機能、ガスバリア機能等優れた物性を有し、可食性でハンドリングもよく、カプセルの帯電によるブロッキングや粉体の飛散・付着等の前記問題を解決することができる。また本発明の帯電防止剤を用いた流動層造粒成型においては、除電バグフィルター等でコロナ放電による除電を行うことなく、流動層造粒によるコーティング及び造粒を行うことができ、紫外線防止機能・低帯電性・防湿性・ガスバリア性に優れた顆粒・造粒物のコーティング物を調製することができる。
【0021】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中に示された酵母菌体重量は、すべて実状態での重量(ドライウエイト)である。
実施例1(酸処理酵母細胞壁画分の調製)
ビール工場よりビール酵母スラリ―を入手し、4500rpm、10分の条件で遠心分離して得られた泥状生酵母を固形分が5重量%になるように水に懸濁した。この懸濁物を50℃、17時間の反応条件で自己消化させた後、再度遠心分離して、可溶性菌体内成分を除去した自己消化残さを酵母細胞壁画分とした。次に、この酵母細胞壁画分の固形分が5%重量になるように0.1N塩酸に懸濁して、80℃、20分間酸処理した後、4500rpm、15分の条件で遠心分離し、可溶化分を除去して得られた残さを酸処理酵母細胞壁画分とした。
【0022】
実施例2(フィルム表面抵抗の測定)
各種フィルムについて、一般に帯電性と相関があるといわれる表面固有抵抗をASTM D257の方法に従い、23℃、50%RHの条件にて測定した。実施例1で調製した酸処理酵母細胞壁画分を水に分散させ、固形分8重量%のスラリーとし、40℃において自然乾燥する被膜成型により、厚さ50μmのフィルムを調製し、本件フィルムとした。[本件フィルム1]はグリセリンを添加することなくpHを4.0に調整したもの、[本件フィルム2]はグリセリンを酸処理酵母細胞壁の固形分に対して30重量%添加しpHを3.0に調整したもの、[本件フィルム3]はグリセリンを酸処理酵母細胞壁の固形分に対して20重量%添加しpHを3.0に調整したもの、[本件フィルム4]はグリセリンを酸処理酵母細胞壁の固形分に対して20重量%添加しpHを1.0に調整したもの、からそれぞれ調製したフィルムである。
【0023】
また、対照として、本件フィルムと同様に調製したHPMCフィルム、グリセリンを30重量%添加し、pHを3.0に調整したものから調製したHPMCフィルム及び本件フィルムと同様に調製したゼラチンフィルムと、高分子系フィルムをコロナ放電により導電化率を高めた市販の帯電防止フィルムを用いた。表面固有抵抗Ωの比較結果を表2に示す。なお、対照の市販フィルムの測定方法のみJISk−6911(湿度65%)を用いたため、ASTMでは若干高めとなっている。表2に示されるように、本件フィルムは対照のフィルムに比較し、有意に抵抗値が低く帯電性も低いことがわかる。また、本件フィルムの中でも、グリセリンを添加したものがより低い抵抗値を示すことがわかった。
【0024】
【表2】
Figure 0004656553
【0025】
実施例3(フィルム帯電圧減衰の測定)
各種フィルムについて、印加電圧8kV、印加時間30秒で帯電させたフィルムの電位の半減期及びピークの電位を、23℃、50%RHの条件にて測定した。各種フィルムとしては、実施例2において用いたフィルムに加えて、[本件フィルム5]として、酸処理酵母細胞壁画分の固形分を8重量%及びグリセリンを酸処理酵母細胞壁画分の固形分に対して10重量%添加し、pHを4.0に調整したものから調製したフィルムを用いた。また、この帯電圧減衰の測定には、スタチックオネストメーター(シシド静電気社製)を用いた。結果を表3に示す。表3に示されるように、本件フィルムは対照のフィルムに比較し、電位・半減期とも“0”と測定され、帯電圧減衰において有意に優れていることがわかった。
【0026】
【表3】
Figure 0004656553
【0027】
実施例4(カプセルの帯電電位の測定)
23℃、50%RHの条件下、各種カプセル各150個を175×245mmのステンレス製のバットに一様に置き、30mmの振幅で200回/分の周期で振動を与え、振動開始5分後の振動状体及び振動停止1分後の静止状態における、カプセルに発生した静電気による帯電電位を電位測定計(シシド電気社製「STATIRON M2」)を用いてカプセルから50mmの距離から測定した。各種カプセルとしては、実施例1で調製した酸処理酵母細胞壁画分の固形分を15重量%及びグリセリンを10重量%添加しpHを4.0に調整したスラリー状の帯電防止剤に、3号カプセルと同等の大きさの型をディッピングし、40℃で乾燥することで水分を蒸発させ作製した[本件カプセル]と、対照としての市販ゼラチンカプセル及び市販HPMCカプセルとを用いた。結果を表4に示す。表4に示されているように、本件カプセルの帯電電位は“0”であり、対照品である市販ゼラチンカプセル及び市販HPMCカプセルに比べ、帯電防止機能において有意に優れていることがわかった。また、温度50℃、湿度70%の条件下で、市販ゼラチンカプセル及び市販HPMCカプセルがべたつくのに対し、本件カプセルはべたつきがなく、防湿性の面でも優れていることがわかった。
【0028】
【表4】
Figure 0004656553
【0029】
実施例5(流動層造粒)
コーティング剤として、本発明の帯電防止剤と対照としてのエチルセルロースを用い、結晶セルロース製球形顆粒 (旭化成社製「セルフィア」)に対して、転動流動層コーティング装置(パウレック製「マルチプレックスMP−01型」)で流動層コーティングを行った。コーティング量はともに、結晶セルロース製球形顆粒に対し20重量%とした。本発明の帯電防止剤からなるコーティング剤としては、実施例1で調製した酸処理酵母細胞壁画分の固形分を6〜10重量%及びグリセリンを0.3〜3.0重量%添加し、pHを3.0〜4.5に調整したスラリー状の帯電防止剤を用いた。また、対照のエチルセルロースからなるコーティング剤としては、エチルセルロース1.0〜8.0重量%でエタノール中に溶解させて調製したスラリーを用いた。
【0030】
コーティング中、転動流動層コーティング装置の壁面の状態を目視により観察行った結果、壁面は十分乾燥していたが、対照のエチルセルロースの場合、帯電によるコーティング顆粒の壁面への付着が漸次増加し堆積していった。これに対し、本発明の帯電防止剤の場合、コーティング顆粒の壁面への付着はほとんど見られず、壁面付着において有為に差が認められた。また、コーティング顆粒を顕鏡したところ、対照のエチルセルロースの場合、顆粒同士の帯電による結着で発生する2つ又は3つの顆粒が繋がった多連コーティング顆粒や、未コーティング顆粒が見られたが、本発明の帯電防止剤の場合、多連コーティング顆粒や未コーティング顆粒は見い出せなかった。そして、コーティング工程に続く乾燥工程に入っても、本発明の帯電防止剤の場合には帯電によるコーティング顆粒同士の付着は見られなかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の帯電防止剤を用いて成型した成型体は、表面固有抵抗が23℃、RH50%において106〜109Ωの低帯電性を示し、優れた帯電防止機能を備えている他、紫外線遮光機能、防湿機能、ガスバリア機能等優れた性状・物性を有している。したがって、本発明のシート状・フィルム状成型体は、食品、医薬品、飼料、農業など幅広い分野に適用することができる。また、本発明のカプセル形状の成型体は、帯電防止機能の他、紫外線遮光機能、防湿機能、ガスバリア機能等優れた物性を有し、可食性でハンドリングもよく、カプセルの帯電によるブロッキングや粉体の飛散・付着等の問題がない。さらに、本発明の帯電防止剤を用いて顆粒をコーティング成型する場合、流動層造粒装置壁面への付着がなく、顆粒同士の帯電による繋がった多連コーティング顆粒や、未コーティング顆粒の発生等のコーティング不良を防止することができる。

Claims (7)

  1. 酵素処理した酵母から可溶性菌体内成分を除去した菌体残さを酸性水溶液で処理し、さらに可溶化物を除去した残さからなる酸処理酵母細胞壁画分を主成分とし、さらに可塑剤を含むことを特徴とする帯電防止剤。
  2. 請求項1記載の帯電防止剤を用いて成型したことを特徴とする帯電防止能を有する成型体。
  3. 基体に帯電防止剤を単層又は複層にコーティングすることにより得られることを特徴とする請求項2記載の帯電防止能を有する成型体。
  4. シート形状又はフィルム形状に成型されたことを特徴とする請求項2又は3記載の帯電防止能を有する成型体。
  5. 顆粒形状に成型されたことを特徴とする請求項3記載の帯電防止能を有する成型体。
  6. カプセル形状に成型されたことを特徴とする請求項2記載の帯電防止能を有する成型体。
  7. 23℃、RH50%における表面固有抵抗が、10〜10Ωであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか記載の帯電防止能を有する成型体。
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