JP4631510B2 - 脳機能情報モニタリング装置 - Google Patents
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Description
本発明は、また、NIRSの他に、fMRI(機能的MRI)、MEG(脳磁計)、EEG(脳波計)等による測定に基づいてなされる他の脳機能情報モニタリング装置にも利用される。
例えば、近赤外光は、皮膚組織や骨組織を透過し、かつ、血液中のオキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンにより吸収される性質を有するので、近赤外光のこのような性質を利用して、非侵襲で脳活動の測定を行うことができる、NIRSを用いた経頭蓋的測定が行われている。
峻別のための1つの方法は、計測の際に、被験者にタスクを与えておき、視覚的評価により、タスクに同期している信号のみを脳賦活信号(脳機能信号)として扱うことである。
さらに他の方法として、複数の計測位置において計測し、それぞれの計測位置から得られたヘモグロビン変化信号から、その統計的有意性を判定する評価量を求め、この評価量又は評価量に基づいて判定した結果をモニタに表示することが提案されている(特許文献1参照)。評価量は、例えば、ヘモグロビン変化信号からT値(検定統計量)及び/又はP値〈有意確率〉を求め、T値又はP値から検定関数を定義し、各計測位置の判定関数を合算したものを評価量として用いている。
また、トレッドミル等を用いた歩行運動などをタスクとして与えた場合における脳活動を測定するとき、心拍数が変化し、皮膚血流もタスクに同期している可能性がある。
よって、これらの脳活動とは直接関係しない信号であっても、タスクと同期する信号は、タスクとの同期に基づいて信号を峻別する従来の方法では除去できない。
ここで、脳機能信号とそれ以外の信号とは、それぞれ独立な発生源の信号と考え、複数の独立な発生源の信号のうちで、脳機能信号の発生源とは異なる、他の独立な発生源の信号(すなわち不必要な発生源の信号)を所定の判定演算により相関の有無を見出して、該当する他の独立な発生源の信号の影響を除去するように処理した上で、残りの発生源の信号だけを混合することにより、検出信号を変形検出信号に置換するようにする。
X1(t)、X2(t)、・・・、Xn(t)は、各検出位置での検出信号
S1(t)、S2(t)、・・・、Sn(t)は、それぞれ独立な信号発生源の信号(独立成分信号)
X2(t)=a21S1(t)+a22S2(t)+・・・+a2n(t)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Xn(t)=an1S1(t)+an2S2(t)+・・・+ann(t) (2)
そこで、脳機能信号以外の他の独立な信号発生源の予想が付く場合、その信号発生源の信号形状を別の計測によって取得して、参照信号として導入する。
あるいは、(2)式において信号発生源の信号Sj(t)に対応する混合行列の列ベクトル{a1j、a2j、・・・anj}を0ベクトルに置換する。
すなわち、レーザ血流計による皮膚血流信号を参照信号とすることにより、皮膚血流を発生源とする不必要な信号を除去してもよい。また、振動計により被検体の局所的な振動(例えば、顎の運動、呼吸運動、脈動)を発生源とする不必要な信号を除去してもよい。また、アイカメラによる眼の動き(筋肉運動)を発生源とする不必要な信号を除去してもよい。また、NIRSによる測定の場合に、送光部と受光部との距離を短くして測定感度が高い領域の深さを頭部表面近傍に合わせるようにすることで、低深度測定用NIRSによる皮膚血流信号を発生源とする不必要な信号を除去してもよい。
ここで、各発生源信号と参照信号との一致度を判定する相互相関関数Ri(Δt)とは、(3)式で示す関数である。
相互相関係数Ri(Δt)とは、2つの時系列波形がどの程度相互依存しているか、もしくは類似しているかを示すものであり、2つの波形間における位相のずれ時間Δtの関数として表される。
この関数は、Si(t)とP(t)との相関係数(統計学的な意味での相関係数)を、Δtを増加させながら計算することにより求めるものである。
あるΔtにおける相互相関係数Ri(t)は、Si(t)とP(t+Δt)とが完全一致する場合に1、符合反転で一致する場合に−1、全く一致しない場合に0の値をとるように規格化しているので、Ri(t)の値に応じて相関の強さを判定することができる。
そして、Ri(t)では、Δtごと時間を増加させながら計算をしているので、2つの信号に時間的なずれがある場合でも、一方の信号の時間をずらして相関係数を計算することにより、波形が類似、一致している場合には、相関があるものとして判定されることになる。
このマルチチャンネル生体光計測装置10は、信号検出部11と、観測信号ベクトル生成部12と、独立成分信号ベクトル推定部13と、参照信号取得部14と、判定部15と、不必要成分除去部16と、変形観測信号ベクトル導出部17と、画像処理部18と、表示部19とから構成される。このうち、観測信号ベクトル生成部12、独立成分信号ベクトル推定部13、参照信号取得部14、判定部15、不必要成分除去部16、変形観測信号ベクトル導出部17、画像処理部18は、CPU、ROM、RAM等で構成されるコンピュータ20およびソフトウェアにより構成されている。
送光部31と受光部32とは、約3cm程度離れて互いに隣接するようにプローブ33上に配置され、隣接する送光部31と受光部32との中間位置が、検出位置(感度の高い領域)となるようにしてある。
送光部31の光源には、LED(発光ダイオード)またはLD(レーザダイオード)が用いられる。受光部32には、検出器としてフォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子増倍管が用いられ、これらは光ファイバによりプローブ33の各取付位置と光学的に接続されている。また、送光部31の光源および受光部32の検出器は、図示しないタイミング制御回路により、検出動作が制御されるようにしてある。
独立成分信号ベクトル推定部13は、独立成分分析の手法により、観測信号ベクトルXを元に、混合行列A、および、それぞれ独立な発生源の信号に分離した発生源信号Sj(t)をベクトル成分とする独立成分信号ベクトルSを導出する処理を行う。
なお、独立成分分析手法の一例については、後述する。
不必要成分除去部16は、判定部15が、ある発生源信号Sj(t)と参照信号(t)との間に相関があると判定した場合に、独立成分信号ベクトルSの該当する発生源信号のベクトル成分Sj(t)を0に置換した変形独立成分信号ベクトルS’((4)式参照)、あるいは、混合行列Aのうちの不必要な発生源信号に対応する列ベクトルを0ベクトルに置換した変形混合行列A’((5)式参照)を導出する。
この演算処理により、検出信号Xi(t)をベクトル成分とするようにして生成された観測信号ベクトルXは、不必要成分が除去された変形検出信号X’(t)をベクトル成分とする変形観測信号ベクトルX’に置換することができたことになる。
表示部19は、生成された2次元画像データを図示しない表示器の画面に表示する処理を行う。
まず、プローブ33(図2)を用いて、検出位置#1〜#36における脳機能信号を含む信号を計測し、検出信号Xi(t)を取得する(s101)。
続いて、計測した36の各検出信号のそれぞれをベクトル成分とする観測信号(列)ベクトル{X1(t)、X2(t)、・・・、Xn(t) ;n=36}を生成する(s103)。
続いて、生成した観測信号ベクトル{X1(t)、X2(t)、・・・、Xn(t)}に対し、独立成分分析を行い、混合行列Aを推定するとともに、発生源信号Si(t)をベクトル成分として有する独立成分信号ベクトルSを推定する((1)式参照)(s104)。
判定の結果、参照信号P(t+Δt)と、一致または、類似する発生源信号Sj(t)が見出されたとき、独立成分信号ベクトルSを構成するベクトル成分(発生源信号)のうちで、該当する発生源信号Sj(t)のベクトル成分を0に置換した変形独立成分信号(列)ベクトルS’(={S1(t)、S2(t)、・・・、0(=Sj(t))、・・・、Sn(t)})((4)式参照)を導出する。あるいは、混合行列Aのうち、該当する発生源信号Sj(t)に対応する列ベクトルを0ベクトルに置換した変形混合行列A’((5)式参照)を導出する(s106)。
図4は、不必要成分と予測される皮膚血流を、レーザ血流計により測定した結果の波形図形であり、時間に対する皮膚血流の変化を示している。横軸は時間(秒)である。
この測定と同時に、頭部の36個所でオキシヘモグロビンの測定を行っている。その際、3回のタスク期間を設けている。この測定データを用いて、独立成分分析を行ったときの発生源信号(すなわち独立成分信号ベクトルの各成分((1)式))を図5に示す。図5中の数字は、独立成分信号波形の番号である。
図7は、3回目のタスク期間後半(375秒〜420秒)結果の信号について、空間マッピングを行った画像データであり、図7(a)は、不要成分を除去しないとき、図7(b)は、不要成分を除去したときの画像データである。図に見られるように、(b)では、皮膚血流波形に基づく信号成分が除去された結果、脳の活動箇所を明確に表示することができている。
次に、独立成分分析の一例について説明する。
(1)ICA(独立成分分析)問題の設定
nチャンネルのpサンプル観測信号
x(t)=(x1(t),x2(t),・・,xn(t))T :(t=1,2,・・p)は、n個の独立な信号源s(t)=(s1(t),s2(t),・・,sn(t))Tと線形作用素Aを用いて、
x(t)=As(t) (A1)
と表わせると仮定する。このとき、ICA問題とは、
y(t)=Wx(t) (A2)
として、観測信号x(t)からy〈t〉が相互に独立であるという条件のみを利用して、独立成分y(t)と変換行列Wを求める問題となる。実際には、W=A−1がわかっておらず、Wは要素の順番の入れ違いとその大きさの任意性が残るため、適当な置換行列Pと対角行列Dを用いて、
WA=PD (A3)
を満たすWを推定する問題となり、時間tでのWの候補をWtとして、yi=Wtxiを観測するたびに、これをWt+1=Wt+ΔWtに変えていくアルゴリズムとして解くことになる。
ICAは、信号源の独立性の基準としての評価関数として、Kullback−Liebler情報量、最尤法、エントロピー最小化、情報量最大化、高次モーメント、キュムラント、相互相関最小化などを用いる方法がある。また、アルゴリズムとして、勾配法、不動点法、Jacobi法などの方法があり、その評価関数とアルゴリズムによって様々な手法が提案されている(Jutten and Heraut(1991)、Bell and Sejowski(1995)、Amari at al(1996)、Cardoso and Laheld(1996)、Girolami and Fyfe(1996)、・Molgedey and Schuster(1994)、Hyvarinen and Oja(1997)、Comon(1994)、Cardoso and Souloumiac(1993)、Matsuokaet al.(1995))。
ここでは、ICAの例として、Molgedey and Schusterによる手法について説明する。信号s(t)の相互相関関数がゼロであるとすると、(A1)、(A2)、(A3)式によりy(t)の関数は、
<y(t)y(t+τ)T>=W<x(t)x(t+τ)T>WT
=WA<s(t)s(t+τ)T>ATWT
=WARATWT
=PDRDTPT (A4)
と表せる。Molgedey and Schusterは、τ=0とτ=τ0の両方において相互相関係数がゼロであることを要求している。ここで、s(t)のいくつかの相互相関関数がゼロになるとすると、(A4)式の非対角要素の2乗和を表す次式(A5)の関数f(W)を最小にする問題を解くことになる。
今、行列Vの平方根を、次式(A9)で表すことにする。
は、対角行列Λ−1の各成分の平方根を要素とする対角行列である。このとき、
により、観測信号x(t)を、
と変換する。すると、x’(t)の相関関数は、
となり(Iは単位行列)、x’(t)は直交化している。
ここで、x、yは次式A(14)で示す行列Gの最も大きい固有値に対応する固有ベクトルである。
また、独立成分y(t)は、次式A(16)と求められる。
11:信号検出部
12:観測信号ベクトル生成部
13:独立成分信号ベクトル推定部
14:参照信号取得部
15:判定部
16:不必要成分除去部
17:変形観測信号ベクトル導出部
18:画像処理部
19:表示部
20:コンピュータ
31:送光部
32:受光部
33:プローブ
Claims (4)
- 脳機能信号の測定が可能な複数の検出位置においてそれぞれの検出位置での脳機能信号を含む検出信号を取得する信号検出部と、
各検出位置から取得した検出信号をベクトル成分として有する観測信号ベクトルを生成する観測信号ベクトル生成部と、
観測信号ベクトルから、独立成分分析手法により、混合行列とともに、複数の発生源信号をベクトル成分として有する独立成分信号ベクトルを推定する独立成分信号ベクトル推定部と、
脳機能信号以外の参照信号を取得する参照信号取得部と、
各発生源信号と参照信号との相関をそれぞれ求めることにより各発生源信号のなかから不必要な発生源信号を判定する判定部と、
不必要な発生源信号と判定された発生源信号について、独立成分信号ベクトルの該当する発生源信号のベクトル成分を0に置換するか、混合行列のうちの不必要な発生源信号に対応する列ベクトルを0ベクトルに置換するかによって、不必要な発生源信号の影響を除去した変形混合行列または変形独立成分信号ベクトルを導出する不必要成分除去部と、
導出した変形混合行列と独立成分信号ベクトルとの積、または、混合行列と変形独立成分信号ベクトルとの積のいずれかを計算することにより、不必要な発生源信号の影響を除去した変形検出信号をベクトル成分として有する変形観測信号ベクトルを導出する変形観測信号ベクトル導出部とを備えたことを特徴とする脳機能情報モニタリング装置。 - 信号検出部が取得する検出信号は、NIRS(近赤外分光分析)、fMRI(機能的MRI)、MEG(脳磁計)、EEG(脳波計)のいずれかにより取得する検出信号であることを特徴とする請求項1に記載の脳機能情報モニタリング装置。
- 参照信号取得部が取得する参照信号は、レーザ血流計、振動計、眼の動きを検出するアイカメラ、表面血流信号を検出する低深度測定用NIRS(近赤外分光分析装置)のいずれかが取得する信号であることを特徴とする請求項1に記載の脳機能情報モニタリング装置。
- 判定部は、相互相関関数を用いた各発生源信号と参照信号との一致度に基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載の脳機能情報モニタリング装置。
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