JP4622977B2 - 円形加速装置、電磁波発生装置、及び電磁波撮像システム - Google Patents
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Description
電子の周回軌道を径方向に移動させている場合でも、電子ビームは径方向に広がって周回しているので、周回軌道半径を徐々に変化させることによって、継続して電子ビームとターゲットとの衝突を起こすことができ、X線を連続して発生させることができる。また、ターゲットに衝突しても衝突した全ての電子が完全に消滅するわけではなく、衝突後も、エネルギーが減少した電子が残る。この残留電子も通常安定に周回できるエネルギーの範囲内にあるので、周回毎に加速磁場により再度エネルギーを付与され、衝突軌道に復帰することができるものがある。このように、この加速器を利用すれば周回電子ビームを効率よく活用して電磁波を発生させることができる。(特許文献1)
本実施の形態に係る発明は、電子発生手段で発生させる電子のエネルギーを変化させつつ円形加速器に入射することにより円形加速器中の電子周回軌道を径方向に拡大するというものである。この方法により、偏向磁場強度の時間変化を従来技術のように複雑に制御することなく、加速磁場強度の時間変化パターンと同じにしても、入射加速する電子の周回軌道を径方向に広がったものとすることができる。従って、簡便な手段により、周回電子の空間電荷密度が実効的に低減し、大電流の加速蓄積が可能となる。ここでは、まず、装置全体の概要を説明し、その後に電子発生手段で発生させる電子のエネルギーを変える手段について説明する。
13は円形加速器2の周回軌道12上を走行する電子を加速する機能を持つ電子加速手段、14は周回軌道12で構成される面上で、加速されつつ走行する電子の走行方向を偏向させる電子偏向手段である。電子加速手段13及び電子偏向手段14には電源(図示していない)により、50Hzから数10kHz程度の交流磁場がかけられており、それぞれを加速磁界、偏向磁界と呼ぶこととする。
図1の例では、電子発生手段1を円形加速器2の外側に配置し、その外周から電子を入射させる構成を採り、これに対してX線等電磁波発生用ターゲット3は円形加速器2の内側に配置している。図2に示すような加速磁場強度21と偏向磁場強度22の時間変化の環境下では、相互の強度比率を予め所定の値にしておけば、その値に依存して電子の周回軌道を加速中に径方向内側に移動させることができる。上記のとおり円形加速器2の径方向に拡大された電子周回軌道を、加速磁界強度21と偏向磁界強度22との関係を所定の関係に定めておくことにより、徐々に内径方向に移動させて、X線等電磁波用ターゲット3に衝突させ、周回軌道の径方向幅に対応した移動時間の間、連続してX線等の電磁波を発生させることができる。また、加速が終了した時点で偏向磁界に摂動を加えることにより周回軌道を変えてX線等電磁波発生用ターゲット3に衝突させても同様の効果を得ることができる。このように大電流化した電子ビームをX線等電磁波発生用ターゲット3に衝突させることが可能なので、X線等電磁波発生用ターゲット3のサイズを小さくしても相応強度のX線等電磁波を得ることができる。即ち、高輝度化が可能となる。
本実施の形態は、電子発生装置1に印加するパルス状高電圧23の時間波形をパルスの立ち下がり部で鈍らせ、この立下り部で発生する電子を円形加速器2に入射するというものである。図3の時間帯25を入射時間帯として利用することでパルス状高電圧23のパルス立下り部で発生する低エネルギーの電子までを入射電子として利用することができる。図4には、本実施の形態の他のパルス状高電圧23の時間波形の例を示す。パルス立下り部を利用するため、パルス立ち上がり部の形状は特に問わない。図では従来どおり、急峻に立ち上がるものについて示してある。安定して加速できる入射エネルギー範囲と入射時間という制約から定まる入射時間帯はここでは25で示している。即ち、パルスのピーク部で始まり、立下り部の所定の時点までの時間帯である。図3、図4のいずれの場合であっても、電子発生手段1に印加される高電圧は、最初に高く、時間の経過とともに低下していくので、それに対応して、最初に高いエネルギーの電子が円形加速器2に入射され、時間の経過とともにより低いエネルギーの電子が円形加速器2に入射されることになる。従って、入射完了時点での入射電子のエネルギーの広がりは、図3の場合とは異なり、各入射時のエネルギーの違いよりも拡大することになり、これに対応して入射電子の周回軌道も径方向に広がりを持つ。このように、パルス状高電圧23の時間波形の立下り部を鈍らせ、この部分を入射に利用した場合も電子周回軌道を径方向に拡大することができるので、実施の形態1の場合と同様に、円形加速器での大電流化を図ることができる。従って、このような円形加速装置を利用した場合、X線等電磁波発生装置で発生するX線等電磁波の高輝度化が可能となる。
本実施の形態は、電子の入射時間帯を図3の24と25とで示す時間帯を併せたものにするというものである。この場合は実施の形態1及び2で述べた効果を兼ね備えることになるため、やはり電子周回軌道を径方向に拡大することができ、実施の形態1の場合と同様に、円形加速器での大電流化を図ることができる。従って、このような円形加速装置を利用した場合、X線等電磁波発生装置で発生するX線等電磁波の高輝度化が可能となる。但し、既に説明した通り、入射時間帯には上限があるので、実施の形態1、2でそれぞれ説明した時間帯を単純に併せたものにすることはできない場合がある。このような場合は、両時間帯を併せたものが入射時間帯として許容できる時間幅となるように全体のパルス幅を狭めることにすればよい。
本実施の形態では、電子発生手段1に対して図3に示すパルス状高電圧23を印加するための手段について説明する。従来のベータトロン加速器等のパルス高圧電源は高電圧発生装置で発生した電荷をコンデンサーに蓄積し、サイラトロン等の真空管でスイッチングすることで発生させていた。しかし、この方法では、電源の大きさが大きく、高価格で、真空管も頻繁に交換しなければならないという問題があった。本願発明では、図5に示すような簡単な電源回路で図3に示すパルス状高電圧を発生させることができる。
実施の形態1ではX線等電磁波発生用ターゲット3は電子の周回軌道12中の内側に配置されていたが、図7に示す様に外側に配置しても実施の形態1と同様の効果を奏する。電子加速手段13と電子偏向手段14には電磁石電源により50Hzから数10kHz程度の交流磁場がかけられており、両者の磁場強度の関係を所定の値にすると電子ビームは大きく軌道を変化しないである領域の中を安定に加速する。加速された電子ビームは電子加速手段13と電子偏向手段14の磁場強度の関係を少し変えると外側に移動し、安定周回領域に設置されたX線等電磁波発生用ターゲット3に衝突してX線等の電磁波を発生する。なお、外側にX線等電磁波発生用ターゲット3を配置した場合、入射直後に一部の電子ビームがX線等電磁波発生用ターゲット3に衝突する。しかしながら、X線等電磁波発生用ターゲット3の大きさが数μm程度であれば、入射時にX線等電磁波発生用ターゲット3に衝突する電子ビームは僅かであり、大部分の電子ビームは安定に加速することが可能である。
図8は本実施の形態によるX線撮像システム(広義には電磁波撮像システム)の概略構成図である。この撮像システムは、電磁波発生装置71と、被撮像体、ここでは人体72と、撮像検出器73と、データ処理装置74とで構成されている。電磁波発生装置71で発生した高輝度X線75は、人体72に照射され、撮像検出器73で検出され、データ処理装置74で処理され、透視画像となる。電磁波発生装置71では光源サイズ数μmから数10μm程度の高輝度のX線を発生させることができるので、X線の微小な屈折を利用した撮像方法である屈折コントラスト撮像が可能となる。この方法は、屈折の効果が微小であるため、光源サイズが小さくないと利用できなかった。しかし光源サイズを小さくすると通常はX線強度が低下してしまうので、十分な統計精度の画像を取ることが困難であった。そのため、従来はSpring8等の直径が数100m程度の高輝度放射光装置でしか実現できず医学利用が進まなかったが、本発明では、従来のX線管球と同じ程度か、よりコンパクトな電磁波発生装置71を用いて屈折コントラスト撮像が実現できるので、医学利用が大きく促進されると考えられる。屈折コントラスト撮像法を用いると密度の異なる微小物質の境界を強調した撮像が可能となり、拡大画像をとることもできるので、数mm程度の微小ながんを識別することができる。しかも、屈折コントラストによる撮像画像では従来の吸収コントラスト撮像画像の10倍以上の高コントラストが実現できるので、従来の撮像方法と比較して1/10程度の低被曝線量で撮像が実現できる。
Claims (8)
- 高電圧電源から供給されるパルス状電圧を印加することにより電子をパルス的に発生する電子発生手段と、前記電子発生手段で発生した電子を入射し、この入射した電子を加速する電子加速手段、及び前記入射した電子を偏向させるための偏向磁界発生手段を有するハイブリッド加速器とを具備する円形加速装置において、前記高電圧電源は、前記電子発生手段で発生する電子パルスに対応した時間幅を有する低電圧パルスを昇圧する回路要素を有し、前記回路要素は、前記電子発生手段に印加する前記パルス状電圧の立ち上がり時間波形及び立ち下がり時間波形の少なくとも一方を鈍らせることを特徴とする円形加速装置。
- パルス状電圧を電子発生手段に印加することにより発生した電子のうち、前記パルス状電圧のピーク値に至る立ち上がり部分に含まれる所定の時点から前記ピーク値を示す所定の時点までに発生する電子を選択してハイブリッド加速器に入射することを特徴とした請求項1に記載の円形加速装置。
- パルス状電圧を電子発生手段に印加することにより発生した電子のうち、前記パルス状電圧のピーク値を示す所定の時点から、前記ピーク値到達後の立ち下がり部分に含まれる所定の時点までに発生する電子を選択してハイブリッド加速器に入射することを特徴とした請求項1に記載の円形加速装置。
- パルス状電圧を電子発生手段に印加することにより発生した電子のうち、前記パルス状電圧のピーク値に至る立ち上がり部分に含まれる所定の時点から、前記ピーク値到達後の立ち下がり部分に含まれる所定の時点までに発生する電子を選択してハイブリッド加速器に入射することを特徴とした請求項1に記載の円形加速装置。
- ハイブリッド加速器に入射する電子の入射エネルギーの広がりは、5%を超えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の円形加速装置。
- 電子発生手段用の高電圧電源は、回路要素としてのトランスにより、パルス立ち上がり部の電圧値が時間とともに単調に変化する高電圧パルスを整形するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の円形加速装置。
- 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の円形加速装置と、前記円形加速装置を構成するハイブリッド加速器の電子安定周回軌道上に配置した、電子との衝突により電磁波を発生する電磁波発生用ターゲットとを備えたことを特徴とする電磁波発生装置。
- 請求項7に記載の電磁波発生装置と、この電磁波発生装置で発生した電磁波を計測する計測部と、この計測部で計測されたデータを処理するデータ処理部とを備えたことを特徴とする電磁波撮像システム。
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