以下、本発明の液晶表示素子の製造方法および液晶表示素子について詳細に説明する。
A.液晶表示素子の製造方法
まず、本発明の液晶表示素子の製造方法について説明する。本発明においては、光配向膜の形成方法により2つの実施態様に分けることができる。以下、それぞれの実施態様について説明する。
1.第1実施態様
本発明の液晶表示素子の製造方法の第1実施態様は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材の上記第1電極層形成側の表面に光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第1基材側から光を照射することにより第1光配向膜を形成して第1基板とする第1基板形成工程と、
第2基材、第2電極層および第2偏光層を有する第2偏光層付基材の上記第2電極層形成側の表面に光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第2基材側から光を照射することにより第2光配向膜を形成して第2基板とする第2基板形成工程と、
上記第1基板の第1光配向膜および上記第2基板の第2光配向膜が向かい合うように配置し、上記第1基板および上記第2基板間に強誘電性液晶を注入して挟持させることにより液晶層を形成する液晶層形成工程と
を有することを特徴とするものである。
本実施態様の液晶表示素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施態様の液晶表示素子の製造方法の一例を示す工程図である。図1(a)に示すように、本実施態様においては、まず、第1基材1a上に第1偏光層2aおよび第1電極層3aを順次形成することにより、第1偏光層付基材11を形成する。さらに、第1偏光層付基材11の第1電極層3a上に所定の材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、第1基材1a側から光21を照射することにより、第1光配向膜4aを形成する(図1(b))。これにより、第1基板13を形成する(第1基板形成工程)。
従来では、光配向膜を形成する際、偏光を制御した光を照射していたが、本実施態様においては、第1光配向膜4aを形成する際、第1基材1a側から光21を照射するため、照射された光21は第1偏光層2aを透過する際に偏光が制御され、この偏光した光が光配向膜形成用塗工液に照射されることとなる。したがって、偏光を制御した光を照射する必要がなく、無偏光光を照射することができるため、製造工程を簡略化することができる。
次に、本実施態様においては、第2基材1b上に第2偏光層2bおよび第2電極層3bを順次形成することにより、第2偏光層付基材12を形成する(図1(c))。さらに、第2偏光層付基材12の第2電極層3b上に所定の材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第2基材1b側から光を照射することにより第2光配向膜4bを形成する(図1(d))。これにより、第2基板14を形成する(第2基板形成工程)。
上述したように、第2基板形成工程においても、偏光を制御した光を照射する必要がなく、無偏光光を照射することができ、製造工程を簡略化することができる。
最後に、本実施態様においては、上記第1基板13の第1光配向膜4aおよび上記第2基板14の第2光配向膜4bが向かい合うように配置し、上記第1基板13および上記第2基板14間に強誘電性液晶を注入して挟持させることにより液晶層5を形成する液晶層形成工程が行われる(図1(e))。
図2は、図1(e)の液晶表示素子の概略斜視図であり、液晶層は省略している。図2に示すように、本実施態様においては、第1基板13および第2基板14は、第1基板13の第1偏光層の偏光方向22aと第2基板14の第2偏光層の偏光方向22bとが90°ねじれて配置されるように対向している。第1基板13の第1光配向膜の構成材料は、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料であり、このような光二量化を利用した光反応型の材料は偏光方向に対して平行に配向することから、第1光配向膜の配向方向24aは、第1偏光層の偏光方向22aと平行となる。一方、第2基板14の第2光配向膜の構成材料は、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料であり、このような光異性化型材料は偏光方向に対して垂直に配向することから、第2光配向膜の配向方向24bは、第2偏光層の偏光方向22bと垂直となる。
ここで、液晶として強誘電性液晶を用いた液晶表示素子における上下の配向膜はそれぞれの配向方向が平行となるように配置され、上下の偏光層はそれぞれの偏光方向が90°となるように配置される。本実施態様においては、第1光配向膜および第2光配向膜の光配向膜形成用塗工液に所定の材料を含有させることにより、第1基板および第2基板を、第1偏光層および第2偏光層の偏光方向が90°となるように対向するだけで、第1光配向膜および第2光配向膜の配向方向が平行となる液晶表示素子を製造することができ、製造効率を向上させることが可能となる。
また本実施態様においては、第1光配向膜および第2光配向膜は、互いに異なる材料を含有する光配向膜形成用塗工液を用いて形成されるので、配向欠陥が形成されることなく強誘電性液晶を配向させることができるという効果を奏する。特に、スメクチックA相(SmA)を持たない強誘電性液晶を用いた場合、ダブルドメインの発生を抑制することができる。さらにこの場合、電界印加徐冷方式によらずに光配向膜を用いて配向処理を行うので、相転移以上に昇温してもその配向を維持し、配向乱れの発生を抑制することができるという利点を有する。
以下、このような液晶表示素子の製造方法の各工程について説明する。
(1)第1基板形成工程
本実施態様の液晶表示素子の製造方法における第1基板形成工程は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材の上記第1電極層形成側の表面に光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第1基材側から光を照射することにより第1光配向膜を形成して第1基板とする工程である。
本工程は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材を形成する第1偏光層付基材形成工程と、上記第1偏光層付基材の第1電極層形成側の表面に光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第1基材側から光を照射することにより第1光配向膜を形成する第1光配向膜形成工程とに分けることができる。以下、このような第1基板形成工程の各工程について説明する。
(i)第1偏光層付基材形成工程
本実施態様における第1偏光層付基材形成工程は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材を形成する工程である。
本実施態様において、第1偏光層付基材は、例えば図3(a)に示すように第1基材1a上に第1偏光層2aおよび第1電極層3aが順次形成されたものであってもよく、図3(b)に示すように第1基材1a上に第1電極層3aおよび第1偏光層2aが順次形成されたものであってもよく、図3(c)に示すように第1基材1aの一方の面に第1偏光層2aが形成され、他方の面に第1電極層3aが形成されたものであってもよい。上記の中でも、本発明においては、第1基材上に第1偏光層および第1電極層が順次形成されたもの、または第1基材上に第1電極層および第1偏光層が順次形成されたものであることが好ましく、特に第1基材上に第1偏光層および第1電極層が順次形成されたものであることが好ましい。このように第1偏光層を第1基材よりも液晶層側に形成することにより、第1偏光層の反りや剥がれの発生を防止することができるからである。また、第1電極層上に第1偏光層を形成するよりも、第1基材上に第1偏光層を形成する方が容易であるからである。
また、第1偏光層を第1基材の外側に形成した場合、液晶層、第1基材および第1偏光層の順に光が出射されるため、第1基材に複屈折があると偏光状態が乱れてしまう。一方、上述したように第1基材の内側に第1偏光層を形成すると、液晶層、第1偏光層および第1基材の順に光が出射されるため、液晶層を透過した偏光は、その偏光状態を維持したまま第1偏光層を透過する。したがって、第1基材が複屈折を有する場合であっても、この複屈折の影響を受けることなく光が出射されるため、偏光状態の乱れを抑制することができ、また、第1基材の材料の選択肢が広がるという利点を有する。
以下、このような第1偏光層付基材形成工程における第1電極層の形成方法および第1偏光層の形成方法に分けて説明する。
(第1電極層の形成方法)
本実施態様においては、第1電極層および第2電極層の少なくとも一方が透明導電体であることが好ましい。上記透明導電体の形成方法としては、CVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の蒸着方法を用いることができる。
また、本実施態様により製造された液晶表示素子を、TFT素子を用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子とする場合には、第1電極層および第2電極層のうち一方を透明導電体からなる全面共通電極とし、他方をマトリックス状に配列したx電極とy電極とし、x電極とy電極で囲まれた部分にTFT素子および画素電極を形成する。
上記x電極およびy電極は、クロム、アルミニウム等の金属の導電膜を上記の蒸着方法により形成し、これをマトリックス状にパターニングすることにより形成することができる。パターニング方法としては、フォトリソグラフィ法等の一般的な方法を用いることができる。
(第1偏光層の形成方法)
本実施態様に用いられる第1偏光層の形成方法としては、第1基材または第1電極層上に偏光層形成用塗工液を塗布し、乾燥させる方法が挙げられる。
本実施態様に用いられる偏光層形成用塗工液は、偏光させる機能を有する第1偏光層を形成することができる材料を含有するものであれば特に限定はされないが、二色性染料を含有することが好ましい。二色性染料を配向させることで第1偏光層を形成することができるからである。
このような二色性染料としては、例えばアントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、ナフタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、インダンスレン系色素、アクリジン系色素、ペリレン系色素、ピラゾロン系色素、アクリドン系色素、ピランスロン系色素、およびイソビオラントロン系色素からなる群から選択される色素等が挙げられる。これらの二色性染料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、上記二色性染料は、偏光層形成用塗工液の塗布後、カラム構造を形成するものであることが好ましい。例えば図4に示すように、二色性染料42がカラム(筒)状の構造を形成していることにより、塗布方向43に沿って配向しやすくなるため、偏光特性の良好な第1偏光層を形成することができるからである。
このようなカラム構造を形成する二色性染料としては、例えばスルホン酸基等の親水性基を有する二色性染料、または長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する二色性染料が挙げられる。中でも、親水性基を有する二色性染料を用いることが好ましい。親水性基を有する二色性染料は、この親水性基が小さく、隣接するカラム構造同士の距離が近いため、容易にカラム構造を配列させることができるからである。また、塗布、乾燥後にスルホン酸基等の親水部を中和して水に難溶もしくは不溶とすることで固定化処理が容易となるからである。上記親水性基としては、スルホン酸基、スルホン酸ナトリウム基、スルホン酸アンモニウム基、スルホン酸リチウム基、スルホン酸カリウム基等のスルホン酸系の親水性基、カルボキシル基、カルボン酸ナトリウム基、カルボン酸アンモニウム基、カルボン酸リチウム基、カルボン酸カリウム基等のカルボン酸系の親水性基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。中でも、スルホン酸系の親水性基であることが好ましい。
ここで、二色性染料がカラム構造を形成しているとは、二色性染料を含有する偏光層形成用塗工液を用いて形成した第1偏光層を、X線回折装置を用いて測定することにより確認することがきる。
本実施態様に用いられる二色性染料としては、上記の中でも、溶液中でカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すものであることが好ましい。このような二色性染料は、溶液中で自己組織化によりカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すので、この二色性染料を含有する偏光層形成用塗工液を塗布することにより、塗布方向に沿ってカラム構造を形成した二色性染料を容易に配向させることができ、偏光度の高い第1偏光層を形成することができるからである。
このような溶液中でリオトロピック液晶相を示す二色性染料としては、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す二色性染料、または有機溶媒中でリオトロピック液晶相を示す二色性染料が挙げられる。上記の溶液の種類は、上記二色性染料の置換基によって異なるものであり、二色性染料がスルホン酸基等の親水性基を有する場合は水溶液が用いられ、長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する場合は有機溶媒が用いられる。本実施態様においては、中でも、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す二色性染料を用いることが好ましい。このような二色性染料は、水溶液中でカラム構造を形成し、リオトロピック液晶相を示すので、この二色性染料を含有する偏光層形成用塗工液を塗布することにより、自己組織化を利用してカラム構造を容易に配向させることができるとともに、二色性染料が水溶性であることにより、上記カラム構造を固定化するための固定化処理が容易となるからである。
このような親水性基を有し、水溶液中でリオトロピック液晶相を示す二色性染料として、具体的には下記に示す化学式で表されるような物質が挙げられる。
上記各化学式中のアルキル基は、炭素原子1〜4個を有するものであることが好ましい。また、上記各化学式中のハロゲンとしては、Cl、Brであることが好ましい。さらに、上記各化学式中のカチオンとしては、H+、Li+、Na+、K+、Cs+またはNH4 +が挙げられる。
本実施態様においては、上記の物質の中でも、上記化学式I〜Vで表される物質が好適に用いられる。
また、上記二色性染料としては、上述したようなリオトロピック液晶相を示すものに限定されるものではなく、サーモトロピック液晶相を示すものであってもよい。
さらに、本実施態様に用いられる偏光層形成用塗工液は、上記二色性染料の他に、液晶材料を含有していてもよい。例えば、二色性染料が配向しにくいものであったとしても、液晶材料を配向させることにより、この液晶材料の配向方向に沿って二色性染料を配向させることができるからである。上記液晶材料としては、一般に偏光層を形成するために用いることができる液晶材料を使用することができる。また、上記液晶材料と二色性染料との液晶組成物は、リオトロピック液晶相を示すものであっても、サーモトロピック液晶相を示すものであってもよいが、通常はサーモトロピック液晶相を示すものが用いられる。
上記偏光層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記二色性染料に導入された置換基によって適宜選択される。例えばスルホン酸基等の親水性基が導入されている場合は、溶媒としては水が用いられる。一方、長鎖のアルキル基等の疎水性基が導入されている場合は、有機溶媒が用いられる。このような有機溶媒としては、一般的なものを使用することができる。また、上記偏光層形成用塗工液は、必要に応じて例えばポリエチレングリコール等の界面活性剤等の各種添加剤を含有していてもよい。上記の中でも、本実施態様においては、偏光層形成用塗工液が水系であることが好ましい。本実施態様に用いられる二色性染料として、カラム構造を形成し、親水性基を有しており、水溶液中でリオトロピック液晶相を示すものが好適に用いられるからである。
また、偏光層形成用塗工液の塗布方法としては、上記二色性染料を一定方向に配向させることができる方法であれば特に限定はされないが、例えばマイヤーバーコート、グラビアコート、ダイコート、ディップコート、スプレーコート等の各種塗装方法や、スクリーン印刷法やインクジェット法等を用いることが可能であるが、中でも、マイヤーバーコート、スロットダイコート、スライドコート等のようにせん断応力がかかる塗布方法であることが好ましく、特にスロットダイコートが好ましい。このような方法を用いることにより、容易に二色性染料を一定方向に整列して配向させることができ、偏光特性の良好な第1偏光層を形成することができるからである。
本工程においては、上述したように、せん断応力がかかる塗布方法により偏光層形成用塗工液を塗布することにより、上記二色性染料を配向させることができるものである。上記偏光層形成用塗工液を塗布した後は、その偏光層形成用塗工液中に含有される溶媒を乾燥させる。この溶媒の乾燥方法としては、一般的に溶媒の乾燥に用いられている方法、例えば加熱乾燥、常温乾燥、凍結乾燥、遠赤外乾燥等を用いることができる。
さらに本工程においては、上記偏光層形成用塗工液を乾燥させた後、上記二色性染料の配向状態を固定化することにより、第1偏光層を形成することができる。上記二色性染料の配向状態の固定化方法としては、二色性染料を架橋させる方法を用いることができる。この二色性染料の架橋方法としては、上記二色性染料に導入された置換基によって異なるものである。
上記二色性染料がスルホン酸基等の親水性基を有する場合、この親水性基を疎水化処理する架橋方法が用いられる。上記二色性染料の親水性基を疎水化処理すると、隣接する二色性染料間で架橋が形成され、二色性染料の配向状態が固定化されるのである。上記二色性染料が水溶液中でリオトロピック液晶相を示すものであるときは、このような疎水化処理を行わないと、耐水性が悪く、空気中の湿気等により配向状態が乱れ易く、不安定となる場合がある。
上記疎水化処理の際に用いられる疎水化処理液としては、上記親水性基を疎水化できるものであれば特に限定されるものではなく、用いられる二色性染料の親水性基により異なるものであるが、隣接する二色性染料間で架橋を形成できるものであることが好ましい。例えば2価の金属の塩の水溶液を用いることができる。2価の金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。具体的には、塩化バリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、塩化カルシウム水溶液等を用いることができる。
隣接する二色性染料が架橋される機構は以下の通りである。例えば、二色性染料がSO3Na基を有しており、塩化バリウム水溶液を用いて疎水化処理する場合、二色性染料のSO3Na基のSO3イオンと、塩化バリウム水溶液中のBaイオンとが結合することにより、隣接する二色性染料が架橋され、配向状態が固定化されるのである。
また、疎水化処理の方法としては、上記親水性の置換基を疎水化できる方法であれば特に限定されるものではなく、上記偏光層形成用塗工液を乾燥させた後、上記疎水化処理液を塗布する方法、上記疎水化処理液に浸漬する方法などが挙げられる。この疎水化処理液の塗布後または浸漬後は、洗浄および乾燥することにより、第1偏光層とすることができる。
一方、上記二色性染料が長鎖のアルキル基等の疎水性基を有する場合、例えば二色性染料のコア部分やアルキル側鎖の一部に重合性基を導入し、この重合性基を重合させることにより、二色性染料を線状または網目状に架橋させ、配向状態を固定化する架橋方法が用いられる。
さらに、上記偏光層形成用塗工液が上述した液晶材料を含有する場合は、この液晶材料を重合させることによっても二色性染料の配向状態を固定化することができる。この場合、上記液晶材料は重合性基を有している必要がある。
なお、第1基材、第1電極層および第1偏光層のその他の点については、後述する「B.液晶表示素子」の欄に記載するため、ここでの説明は省略する。
(ii)第1光配向膜形成工程
次に、上記第1基板形成工程における第1光配向膜形成工程について説明する。
本実施態様における第1光配向膜形成工程は、例えば図1(b)に示すように、上記第1偏光層付基材11の第1電極層3a形成側の表面に光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、第1基材1a側から光21を照射することにより第1光配向膜4aを形成する工程である。
本実施態様によれば、第1基材1a側から光21を照射することから、照射された光21は第1偏光層2aを透過する際に偏光が制御され、この偏光した光が光配向膜形成用塗工液に照射されることとなるため、偏光を制御した光を照射する必要がなく、無偏光光を照射することができ、製造工程を簡略化することができる。
本実施態様に用いられる第1光配向膜の構成材料は、光を照射して光二量化反応を生じることにより、強誘電性液晶を配向させる効果(光配列性:photoaligning)を有するものであれば特に限定されるものではない。ここで、光二量化反応とは、光照射により偏光方向に配向した反応部位がラジカル重合して分子2個が重合する反応をいう。この反応により偏光方向の配向を安定化し、第1光配向膜に異方性を付与することができる。
上記第1光配向膜の構成材料が光二量化反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
また、光二量化反応を利用した光反応型の材料としては、光二量化反応により第1光配向膜に異方性を付与することができる材料であれば特に限定されるものではないが、ラジカル重合性の官能基を有し、かつ、偏光方向により吸収を異にする二色性を有する光二量化反応性化合物を含むことが好ましい。偏光方向に配向した反応部位をラジカル重合することにより、光二量化反応性化合物の配向が安定化し、第1光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。また、光二量化反応性化合物は露光感度が高く、材料選択の幅が広いという利点を有するからである。
このような特性を有する光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリン、キノリンおよびカルコン基から選ばれる少なくとも1種の反応部位を有する二量化反応性ポリマーを挙げることができる。これらのなかでも光二量化反応性化合物としては、側鎖としてケイ皮酸エステル、クマリンまたはキノリンのいずれかを含む二量化反応性ポリマーであることが好ましい。偏光方向に配向したα、β不飽和ケトンの二重結合が反応部位となってラジカル重合することにより、第1光配向膜に容易に異方性を付与することができるからである。
上記側鎖としてケイ皮酸エステルを含む二量化反応性ポリマーは、偏光を照射することにより、例えば、下記式に示すように偏光方向に配向した隣接分子間のケイ皮酸エステルがラジカル重合し、下記式(A)または(B)のいずれかの二量体が生成される。このようにして、上記二量化反応性ポリマーは偏光方向と平行に配向するようになる。本実施態様においては、第1光配向膜の構成材料として上記の光二量化反応を利用した光反応型の材料を用いることにより、第1光配向膜の配向方向を上記第1偏光層の偏光方向と平行とすることができる。
また、上記二量化反応性ポリマーの主鎖としては、ポリマー主鎖として一般に知られているものであれば特に限定されるものではないが、芳香族炭化水素基などの、上記側鎖の反応部位同士の相互作用を妨げるようなπ電子を多く含む置換基を有していないものであることが好ましい。
上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、5,000〜40,000の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10,000〜20,000の範囲内である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。上記二量化反応性ポリマーの重量平均分子量が小さすぎると、第1光配向膜に適度な異方性を付与することができない場合がある。逆に、大きすぎると、光配向膜形成用塗工液の粘度が高くなり、均一な塗膜を形成しにくい場合がある。
二量化反応性ポリマーとしては、下記式(1)で表される化合物を例示することができる。
上記式(1)において、M1およびM2は、それぞれ独立して、単重合体または共重合体の単量体単位を表す。例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、2−クロロアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、2−クロロアクリルアミド、スチレン誘導体、マレイン酸誘導体、シロキサンなどが挙げられる。M2としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートであってもよい。xおよびyは、共重合体とした場合の各単量体単位のモル比を表すものであり、それぞれ、0<x≦1、0≦y<1であり、かつ、x+y=1を満たす数である。nは4〜30,000の整数を表す。D1およびD2は、スペーサー単位を表す。
R1は、−A−(Z1−B)z−Z2−で表される基であり、R2は−A−(Z1−B)Z−Z3−で表される基である。ここで、AおよびBは、それぞれ独立して、共有単結合、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、または置換基を有していてもよい1,4−フェニレンを表す。また、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、共有単結合、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CONR−、−RNCO−、−COO−または−OOC−を表す。Rは、水素原子または低級アルキル基であり、Z3は、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシ、シアノ、ニトロ、ハロゲンである。zは、0〜4の整数である。Cは、光二量化反応部位を表し、例えば、ケイ皮酸エステル、クマリン、キノリン、カルコン基、シンナモイル基などが挙げられる。jおよびkは、それぞれ独立して、0または1である。
このような二量化反応性ポリマーとして、より好ましくは、下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記二量化反応性ポリマーの中でも、下記式で表される化合物1〜4であることが特に好ましい。
上記光二量化反応性化合物の含有量としては、光配向膜形成用塗工液中に0.05重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.2重量%〜2重量%の範囲内であることがより好ましい。含有量が上記範囲より小さいと、第1光配向膜に適度な異方性を付与することが困難となり、逆に含有量が上記範囲より大きいと、光配向膜形成用塗工液の粘度が高くなるので均一な塗膜を形成しにくくなるからである。
本工程に用いられる光配向膜形成用塗工液は、第1光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、重合開始剤、重合禁止剤などが挙げられる。重合開始剤または重合禁止剤は、一般に使用されているものの中から光二量化反応性化合物の種類によって適宜選択して用いればよい。また、重合開始剤または重合禁止剤の含有量は、光二量化反応性化合物に対して0.001重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。
また、上記光配向膜形成用塗工液は適当な溶媒に希釈して用いられる。溶媒としては、一般的な有機溶媒を用いることができる。
本工程においては、上記光配向膜形成用塗工液を、第1偏光層付基材の第1電極層形成側の表面に塗布するものである。ここで、第1偏光層付基材の第1電極層形成側とは、第1偏光層付基材の構成により異なるものとなる。例えば、図3(a)に示すように第1偏光層付基材11が第1基材1a、第1偏光層2aおよび第1電極層3aの順に構成されている場合は、上記光配向膜形成用塗工液は第1電極層3a上に塗布する。また、図3(b)に示すように第1偏光層付基材11が第1基材1a、第1電極層3aおよび第1偏光層2aの順に構成されている場合は、上記光配向膜形成用塗工液は第1偏光層2a上に塗布する。さらに、図3(c)に示すように第1偏光層付基材11が第1偏光層2a、第1基材1aおよび第1電極層3aの順に構成されている場合は、上記光配向膜形成用塗工液は第1電極層3a上に塗布する。
このような光配向膜形成用塗工液の塗布方法としては、例えばスピンコート、ロールコート、スプレーコート、エアナイフコート、スロットダイコート、フレキソ印刷法などを用いることができる。
また、上記光配向膜形成用塗工液を塗布することにより得られる高分子膜の厚みは、1nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは3nm〜100nmの範囲内である。高分子膜の厚みが上記範囲より薄いと十分な光配列性を得ることができない可能性があり、逆に厚みが上記範囲より厚いとコスト的に不利になる場合があるからである。
得られた高分子膜は、光を照射することにより、光二量化反応を生じさせて異方性を付与することができる。本実施態様においては、光を照射する際に偏光を制御する必要はなく、無偏光光を照射すればよい。照射する光の波長領域は、第1光配向膜の構成材料に応じて適宜選択すればよいが、紫外光域の範囲内、すなわち100nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは250nm〜380nmの範囲内である。
本工程において、光は第1基材側から照射されるものであり、第1偏光層を透過して光配向膜形成用塗工液に達するように照射されていれば特に限定はされない。照射された光は、第1偏光層を透過する際に偏光となり、この偏光が光配向膜形成用塗工液に照射されるので、本実施態様においては光を照射する際に偏光を制御する必要がないのである。
(2)第2基板形成工程
次に、本実施態様の液晶表示素子の製造方法における第2基板形成工程について説明する。
本実施態様における第2基板形成工程は、第2基材、第2電極層および第2偏光層を有する第2偏光層付基材の上記第2電極層形成側の表面に光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第2基材側から光を照射することにより第2光配向膜を形成して第2基板とする工程である。
本工程は、第2基材、第2電極層および第2偏光層を有する第2偏光層付基材を形成する第2偏光層付基材形成工程と、上記第2偏光層付基材の第2電極層形成側の表面に光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、上記第2基材側から光を照射することにより第2光配向膜を形成する第2光配向膜形成工程とに分けることができる。以下、このような第2基板形成工程の各工程について説明する。なお、第2偏光層付基材形成工程については、上述した「(1)第1基板形成工程」の第1偏光層付基材形成工程に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(i)第2光配向膜形成工程
本実施態様において、第2光配向膜形成工程は、第2偏光層付基材の第2電極層形成側の表面に光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する光配向膜形成用塗工液を塗布し、第2基材側から光を照射することにより第2光配向膜を形成する工程である。
本実施態様によれば、第2基材側から光を照射することから、上述したように照射された光は第2偏光層を透過する際に偏光が制御され、この偏光した光が光配向膜形成用塗工液に照射されることとなるため、偏光を制御した光を照射する必要がなく、無偏光光を照射することができ、製造工程を簡略化することができる。
本実施態様に用いられる第2光配向膜の構成材料は、光を照射して光異性化反応を生じることにより、強誘電性液晶を配向させる効果(光配列性:photoaligning)を有するものであれば特に限定されるものではない。ここで、光異性化反応とは、光照射により単一の化合物が他の異性体に変化する現象をいう。このような光異性化型材料を用いることにより、光照射により、複数の異性体のうち安定な異性体が増加し、それにより第2光配向膜に容易に異方性を付与することができる。
上記第2光配向膜の構成材料が光異性化反応を生じる光の波長領域は、紫外光域の範囲内、すなわち10nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜380nmの範囲内であることがより好ましい。
光異性化型材料としては、光異性化反応により第2光配向膜に異方性を付与することができる材料であれば特に限定されるものではないが、偏光方向により吸収を異にする二色性を有し、かつ、光照射により異性化反応を生じる光異性化反応性化合物を含むことが好ましい。このような特性を有する光異性化反応性化合物の偏光方向に配向した反応部位の異性化を生じさせることにより、上記第2光配向膜に容易に異方性を付与することができる。
上記光異性化反応性化合物において、上記異性化反応は、シス−トランス異性化反応であることが好ましい。光照射によりシス体またはトランス体のいずれかの異性体が増加し、それにより第2光配向膜に異方性を付与することができるからである。
本実施態様に用いられる光異性化反応性化合物としては、単分子化合物、または、光もしくは熱により重合する重合性モノマーを挙げることができる。これらは、用いられる強誘電性液晶の種類に応じて適宜選択すればよいが、光照射により第2光配向膜に異方性を付与した後、ポリマー化することにより、その異方性を安定化することができることから、重合性モノマーを用いることが好ましい。このような重合性モノマーのなかでも、第2光配向膜に異方性を付与した後、その異方性を良好な状態に維持したまま容易にポリマー化できることから、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーであることが好ましい。
上記重合性モノマーは、単官能のモノマーであっても、多官能のモノマーであってもよいが、ポリマー化による第2光配向膜の異方性がより安定なものとなることから、2官能のモノマーであることが好ましい。
このような光異性化反応性化合物としては、具体的には、アゾベンゼン骨格やスチルベン骨格などのシス−トランス異性化反応性骨格を有する化合物を挙げることができる。
この場合に、分子内に含まれるシス−トランス異性化反応性骨格の数は、1つであっても2つ以上であってもよいが、強誘電性液晶の配向制御が容易となることから、2つであることが好ましい。
上記シス−トランス異性化反応性骨格は、液晶分子との相互作用をより高めるために置換基を有していてもよい。置換基は、液晶分子との相互作用を高めることができ、かつ、シス−トランス異性化反応性骨格の配向を妨げないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基、スルホン酸ナトリウム基、水酸基などが挙げられる。これらの構造は、用いられる強誘電性液晶の種類に応じて、適宜選択することができる。
また、光異性化反応性化合物としては、分子内にシス−トランス異性化反応性骨格以外にも、液晶分子との相互作用をより高められるように、芳香族炭化水素基などのπ電子が多く含まれる基を有していてもよく、シス−トランス異性化反応性骨格と芳香族炭化水素基は、結合基を介して結合していてもよい。結合基は、液晶分子との相互作用を高められるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、−COO−、−OCO−、−O−、−C≡C−、−CH2−CH2−、−CH2O−、−OCH2−などが挙げられる。
なお、光異性化反応性化合物として、重合性モノマーを用いる場合には、上記シス−トランス異性化反応性骨格を、側鎖として有していることが好ましい。上記シス−トランス異性化反応性骨格を側鎖として有していることにより、第2光配向膜に付与される異方性の効果がより大きなものとなり、強誘電性液晶の配向制御に特に適したものとなるからである。この場合に、前述した分子内に含まれる芳香族炭化水素基や結合基は、液晶分子との相互作用が高められるように、シス−トランス異性化反応性骨格と共に、側鎖に含まれていることが好ましい。
また、上記重合性モノマーの側鎖には、シス−トランス異性化反応性骨格が配向しやすくなるように、アルキレン基などの脂肪族炭化水素基をスペーサーとして有していてもよい。
上述したような単分子化合物または重合性モノマーの光異性化反応性化合物のなかでも、本実施態様に用いられる光異性化反応性化合物としては、分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物であることが好ましい。アゾベンゼン骨格は、π電子を多く含むため、液晶分子との相互作用が高く、強誘電性液晶の配向制御に特に適しているからである。
アゾベンゼン骨格は、直線偏光紫外光を照射すると、下記式(C)に示されるように、分子長軸が偏光方向に配向しているトランス体のアゾベンゼン骨格が、シス体に変化する。
アゾベンゼン骨格のシス体は、トランス体に比べて化学的に不安定であるため、熱的にまたは可視光を吸収してトランス体に戻るが、このとき、上記式(C)の左のトランス体になるか右のトランス体になるかは同じ確率で起こる。そのため、紫外光を吸収し続けると、右側のトランス体の割合が増加し、アゾベンゼン骨格の平均配向方向は第2偏光層の偏光方向に対して垂直になる。このように本実施態様においては、第2光配向膜の構成材料として光異性化型材料を用いることにより、第2光配向膜の配向方向を第2偏光層の偏光方向と垂直とすることができる。
本実施態様においては、上述したように第1光配向膜および第2光配向膜の構成材料として、上述したような所定の材料を用いることにより、例えば図2に示すように、第1基板13においては第1偏光層の偏光方向22aと第1光配向膜の配向方向24aとが平行となり、第2基板14においては第2偏光層の偏光方向22bと第2光配向膜の配向方向24bとが垂直なることから、第1偏光層および第2偏光層の偏光方向が90°ねじれて配置されるように第1基板および第2基板を対向することにより、第1光配向膜および第2光配向膜の配向方向が平行となる。したがって、所定の向きで第1基板および第2基板を対向するだけでよく、製造効率を向上させることができる。
本実施態様に用いられる分子内にアゾベンゼン骨格を有する化合物のうち、単分子化合物としては、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
また、本実施態様に用いられる分子内にアゾベンゼン骨格を側鎖として有する重合性モノマーとしては、例えば、下記式で表される化合物を挙げることができる。
上記光異性化反応性化合物の含有量は、上述した第1光配向膜形成工程における光二量化反応性化合物の場合と同様とする。
なお、光配向膜形成用塗工液のその他の点については、上述した「(1)第1基板形成工程」の第1光配向膜形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記の光異性化反応性化合物の中でも重合性モノマーを用いた場合には、光照射を行った後、加熱することにより、ポリマー化し、第2光配向膜に付与された異方性を安定化することができる。
(3)液晶層形成工程
次に、本実施態様の液晶表示素子の製造方法における液晶層形成工程について説明する。
本実施態様における液晶層形成工程は、上記第1基板の第1光配向膜および上記第2基板の第2光配向膜を向かい合うように配置し、上記第1基板および上記第2基板間に強誘電性液晶を注入して挟持させることにより液晶層を形成する工程である。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができる。例えば、第2基板の第2光配向膜上にスペーサーとしてビーズを分散させ、周囲にシール剤を塗布して、第1基板の第1光配向膜と第2基板の第2光配向膜とが対向するように貼り合わせ、熱圧着させる。そして、注入口からキャピラリー効果を利用し、強誘電性液晶を加熱して等方相またはネマチック相の状態で注入し、注入口を紫外線硬化樹脂等により封鎖する。その後、強誘電性液晶は徐冷することにより配向させることにより、液晶層を形成することができる。
2.第2実施態様
次に、本発明の液晶表示素子の製造方法の第2実施態様について説明する。
本発明の液晶表示素子の製造方法の第2実施態様は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材の上記第1電極層形成側の表面に、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料または光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する第1光配向膜形成用塗工液を塗布して第1基板とする第1基板調製工程と、
第2基材および第2電極層を有する第2電極層付基材の上記第2電極層上に、上記第1光配向膜形成用塗工液に含有される材料と同一の反応系の材料を含有する第2光配向膜形成用塗工液を塗布して第2基板とする第2基板調製工程と、
上記第1基板の第1光配向膜形成用塗工液の塗布面および上記第2基板の第2光配向膜形成用塗工液の塗布面が向かい合うように配置し、上記第1基材側から光を照射することにより第1光配向膜および第2光配向膜を形成する光配向膜形成工程と、
上記第1基板および上記第2基板間に強誘電性液晶を注入して挟持させることにより液晶層を形成する液晶層形成工程と
を有することを特徴とするものである。
本実施態様の液晶表示素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。図5は、本実施態様の液晶表示素子の製造方法の一例を示す工程図である。図5(a)に示すように、本実施態様においては、まず、第1基材1a上に第1偏光層2aおよび第1電極層3aを形成することにより、第1偏光層付基材11を形成する。さらに、第1偏光層付基材11の第1電極層3a上に、所定の材料を含有する第1光配向膜形成用塗工液34aを塗布する(図5(b))。これにより、第1基板13を調製する(第1基板調製工程)。
次に、本実施態様においては、第2基材1b上に第2電極層3bを形成することにより、第2電極層付基材12を形成する(図5(c))。さらに、第2電極層付基材12の第2電極層3b上に、所定の材料を含有する第2光配向膜形成用塗工液34bを塗布する(図5(d))。これにより、第2基板14を調製する(第2基板調製工程)。
さらに、図5(e)に示すように、第1基板13の第1光配向膜形成用塗工液34aの塗布面および第2基板14の第2光配向膜形成用塗工液34bの塗布面が向かい合うように配置し、第1基材1a側から光21を照射することにより第1光配向膜4aおよび第2光配向膜4bを形成する光配向膜形成工程が行われる。
本実施態様によれば、第1基材1a側から光21を照射することにより、照射された光21は第1偏光層2aを透過する際に偏光が制御され、この偏光した光が第1光配向膜形成用塗工液34aおよび第2光配向膜形成用塗工液34bに照射されることとなる。したがって、偏光を制御した光を照射する必要がなく、無偏光光を照射することができ、また、一度の光照射により第1光配向膜および第2光配向膜を同時に形成することができるため、製造工程を簡略化することができる。
最後に、図5(f)に示すように、第1基板13および第2基板14間に強誘電性液晶を注入して挟持させることにより液晶層5を形成する液晶層形成工程が行われる。
図2は、図5(e)の概略斜視図である。本実施態様において、第1光配向膜形成用塗工液および第2光配向膜形成用塗工液に含有される材料は、光二量化反応または光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する材料であり、それぞれの光配向膜形成用塗工液に用いる材料は同一の反応系の材料である。例えば、第1光配向膜形成用塗工液および第2光配向膜形成用塗工液が光二量化反応を利用した光反応型の材料を含有する場合、図5(e)に示すように第1基材1a側から光21を照射すると、第1偏光層2aにより偏光が制御され、光二量化反応を利用した光反応型の材料は、第1偏光層の偏光方向と平行となるように配向する。すなわち、図2に示すように、第1光配向膜の配向方向24aおよび第2光配向膜の配向方向24bは、共に第1偏光層の偏光方向22aと平行となる。
ここで、液晶として強誘電性液晶を用いた液晶表示素子における上下の配向膜はそれぞれの配向方向が平行となるように配置され、上下の偏光層はそれぞれの偏光方向が90°となるように配置されるので、第2基板側に第2偏光層を形成してもよい。本実施態様においては、第1光配向膜および第2光配向膜の光配向膜形成用塗工液に所定の材料を含有させ、第1基材側から光照射することにより、第1光配向膜および第2光配向膜の配向方向を平行とすることができるものである。したがって、第2偏光層の偏光方向は、第1光配向膜および第2光配向膜の配向方向に影響しないため、第2偏光層は上記第1偏光層の偏光方向と90°となるように形成すればよい。
また本実施態様においては、上記第1光配向膜形成用塗工液および上記第2光配向膜形成用塗工液の固形分組成が、異なることが好ましい。これにより、強誘電性液晶を配向欠陥が形成されることなく配向させることができるからである。特に、スメクチックA相(SmA)を持たない強誘電性液晶を用いた場合、ダブルドメインの発生を抑制することができる。さらにこの場合、電界印加徐冷方式によらずに光配向膜を用いて配向処理を行うので、相転移以上に昇温してもその配向を維持し、配向乱れの発生を抑制することができるという利点を有する。
以下、このような液晶表示素子の製造方法の各工程について説明する。なお、液晶層形成工程については、上述した第1実施態様の液晶層形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(1)第1基板調製工程
本実施態様における第1基板調製工程は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材の上記第1電極層形成側の表面に、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料または光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する第1光配向膜形成用塗工液を塗布して第1基板とする工程である。
本工程は、第1基材、第1電極層および第1偏光層を有する第1偏光層付基材を形成する第1偏光層付基材形成工程と、上記第1偏光層付基材の第1電極層形成側の表面に、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料または光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する第1光配向膜形成用塗工液を塗布する光配向膜形成用塗工液塗布工程とに分けることができる。以下、このような第1基板調製工程における各工程について説明する。なお、第1偏光層付基材形成工程については、上述した第1実施態様の第1偏光層付基材形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(i)光配向膜形成用塗工液塗布工程
本実施態様において、光配向膜形成用塗工液塗布工程は、第1偏光層付基材の第1電極層形成側の表面に、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料または光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料を含有する第1光配向膜形成用塗工液を塗布する工程である。
本実施態様に用いられる第1光配向膜形成用塗工液は、光二量化反応を利用した光反応型の材料または光異性化型材料のどちらを含有していてもよいが、光二量化反応を利用した光反応型の材料を含有していることが好ましい。光二量化反応を利用した光反応型の材料は、露光感度が高いからである。これにより、後述する光配向膜形成工程において光照射とは反対側の基板に塗布された光配向膜形成用塗工液に含有される材料も、十分に光二量化反応を起こすことができる。
なお、第1光配向膜形成用塗工液、および塗布方法等については、上述した第1実施態様の第1光配向膜形成工程および第2光配向膜形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)第2基板調製工程
次に、本実施態様における第2基板調製工程について説明する。
本実施態様において、第2基板調製工程は、第2基材および第2電極層を有する第2電極層付基材の上記第2電極層上に、上記第1光配向膜形成用塗工液に含有される材料と同一の反応系の材料を含有する第2光配向膜形成用塗工液を塗布して第2基板とする工程である。
本工程は、第2基材および第2電極層を有する第2電極層付基材を形成する第2電極層付基材形成工程と、上記第2偏光層付基材の第2電極層上に、上記第1光配向膜形成用塗工液に含有される材料と同一の反応系の材料を含有する第2光配向膜形成用塗工液を塗布する光配向膜形成用塗工液塗布工程とに分けることができる。以下、このような第2基板調製工程の各工程について説明する。
(i)第2電極層付基材形成工程
本実施態様における第2電極層付基材形成工程は、第2基材および第2電極層を有する第2電極層付基材を形成する工程である。
本実施態様においては、後述する光配向膜形成工程の際、第1基材側から光を照射するので、第2基板側には偏光層が形成されていなくてもよいのである。
本実施態様の液晶表示素子の製造方法により製造された液晶表示素子をTFTを用いたアクティブマトリックス方式により駆動させる場合は、第1電極層および第2電極層のうちの一方を全面共通電極とし、他方をマトリックス状のx電極、y電極とするが、第1偏光層上にx電極、y電極を形成するよりも、共通電極を形成する方が容易であることから、第2電極層をx電極、y電極とし、第1電極層を共通電極とすることが好ましい。
なお、第2電極層の形成方法については、上述した第1実施態様の第1偏光層付基材形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(ii)光配向膜形成用塗工液塗布工程
本実施態様において、光配向膜形成用塗工液塗布工程は、第2電極層付基材の第2電極上に、上記第1光配向膜形成用塗工液に含有される材料と同一の反応系の材料を含有する第2光配向膜形成用塗工液を塗布する工程である。
本実施態様に用いられる第2光配向膜形成用塗工液は、上記第1光配向膜形成用塗工液に含有される材料と同一の反応系の材料を含有するものであれば特に限定はされなく、光二量化反応を利用した光反応型の材料または光異性化型材料のどちらを含有していてもよいが、中でも、光二量化反応を利用した光反応型の材料を含有していることが好ましい。光二量化反応を利用した光反応型の材料は、露光感度が高いからである。これにより、後述する光配向膜形成工程において光照射とは反対側の基板に塗布された光配向膜形成用塗工液に含有される材料も、十分に光二量化反応を起こすことができる。
ここで、同一の反応系とは、光励起反応の種類が同じであることを意味するものである。例えば第1光配向膜形成用塗工液が光二量化反応を利用した光反応型の材料を含有する場合は、第2光配向膜形成用塗工液も光二量化反応を利用した光反応型の材料を含有することを意味する。また、光励起反応の種類が同じであればよいので、例えば光二量化反応部位、シス−トランス異性化反応性骨格、置換基などは同一であっても異なっていてもよい。
さらに本実施態様において、第2光配向膜形成用塗工液の固形分組成は、第1光配向膜形成用塗工液と異なる組成であることが好ましい。これにより、配向欠陥が形成されることなく強誘電性液晶を配向させることができるからである。
第2光配向膜形成用塗工液の固形分組成を第1光配向膜形成用塗工液と異なるものとするには、これらの光配向膜形成用塗工液が光二量化反応を利用した光反応型の材料を含有する場合、上述した第1実施態様の第1光配向膜形成工程の欄に記載した光二量化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、光二量化反応部位や置換基を種々選択することにより、固形分組成を変化させることができる。この場合に、用いられる光二量化反応性化合物の光二量化反応部位は同じであっても異なっていてもよい。また、光二量化反応性化合物は、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。その場合には、それらの組み合わせを変えることによっても、固形分組成を変化させることが可能である。さらに、同一の組み合わせを用いる場合でも、それぞれの光二量化反応性化合物の添加量を変化させることによって固形分組成を異なるものとすることができる。
一方、第1光配向膜形成用塗工液および第2光配向膜形成用塗工液が光異性化型材料を含有する場合、上述した第1実施態様の第2光配向膜形成工程の欄に記載した光異性化反応性化合物の中から、要求特性に応じて、シス−トランス異性化反応性骨格や置換基を種々選択することにより、固形分組成を変化させることができる。この場合に、用いられる光異性化反応性化合物として、シス−トランス異性化反応性骨格が同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いることもできる。また、2種類以上の光異性化反応性化合物を組み合わせて用いることもでき、組み合わせを変えたり、同一の組み合わせであっても組成比を変えたりすることにより、固形分組成を変化させることができる。
また、第1光配向膜形成用塗工液および第2光配向膜形成用塗工液は、第1光配向膜および第2光配向膜の光配列性を妨げない範囲内で添加剤を含んでいてもよいものである。この場合、添加剤の添加量を変えることによって、第1光配向膜形成用塗工液および第2光配向膜形成用塗工液の固形分組成を変化させることもできる。
(3)光配向膜形成工程
次に、本実施態様における光配向膜形成工程について説明する。
本実施態様において、光配向膜形成工程は、上記第1基板の第1光配向膜形成用塗工液の塗布面および上記第2基板の第2光配向膜形成用塗工液の塗布面が向かい合うように配置し、上記第1基材側から光を照射することにより第1光配向膜および第2光配向膜を形成する工程である。
本実施態様においては、第1基材側から光照射すると、照射された光は第1偏光層を透過する際に偏光が制御され、この偏光した光が第1光配向膜形成用塗工液および第2光配向膜形成用塗工液に照射されることとなるため、偏光を制御した光を照射する必要がなく、無偏光光を照射することができ、また、一度の光照射により第1光配向膜および第2光配向膜を同時に形成することができ、製造工程を簡略化することが可能となる。
光を照射する方向としては、第1基材側からであればよく、第2基板の表面に塗布されている第2光配向膜形成用塗工液に含まれる材料に光二量化反応または光異性化反応を生じさせることができるように照射されていれば特に限定はされない。
また、第1基板および第2基板間の距離としては、光照射する側と反対の基板に塗布されている光配向膜形成用塗工液に含まれる材料に光二量化反応または光異性化反応を生じさせることができる距離であれば特に限定はされない。中でも、目的とする液晶層の厚みと同一の距離にすることが好ましい。第1基板および第2基板間距離を液晶層の厚みと同一とすることにより、光配向膜を形成した後にそのまま強誘電性液晶を注入すれば液晶層を形成することができるので、製造工程を簡略化することができるからである。
なお、光の照射方法等については、上述した第1実施態様の第1光配向膜形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(4)その他
本実施態様の液晶表示素子の製造方法は、上記第2基板側に第2偏光層を形成する第2偏光層形成工程を有していてもよい。この第2偏光層形成工程は、上記第2電極層付基材形成工程中に行われてもよく、上記第2電極層付基材形成工程後に行われてもよく、上記光配向膜形成工程後に行われてもよく、または上記液晶層形成工程後に行われてもよい。上記第2偏光層形成工程がどの工程で行われるかは、後述する第2偏光層の形成位置によって異なる。
本実施態様において、上記第2偏光層の形成位置としては、第2基材の外側であってもよく、第2基材と第2電極層との間であってもよく、第2電極層と第2光配向膜との間であってもよい。例えば第2偏光層を第2基材と第2電極層との間に形成する場合、第2偏光層形成工程は、上記第2電極層付基材形成工程中に行われる。また、第2偏光層を第2電極層と第2光配向膜との間に形成する場合、第2偏光層形成工程は、上記第2電極層付基材形成工程後に行われる。さらに、第2偏光層を第2基材の外側に形成する場合、上記のいずれの工程で行ってもよい。
上記第2偏光層を形成する際には、その偏光方向が、上記第1偏光層の偏光方向と90°となるように形成する。これにより、上下の配向膜の配向方向が平行であり、上下の偏光層の偏光方向が90°とすることができ、強誘電性液晶を用いることが可能な液晶表示素子とすることができる。本実施態様においては、第1光配向膜および第2光配向膜の光配向膜形成用塗工液に所定の材料を含有させ、第1基材側から光照射することにより、第1光配向膜および第2光配向膜の配向方向を平行とすることができるものである。したがって、第2偏光層の偏光方向は、第1光配向膜および第2光配向膜の配向方向に影響しないため、第2偏光層を形成する際には、第1偏光層の偏光方向のみを考慮すればよいのである。
なお、第2偏光層の形成方法および構成材料については、上述した第1実施態様の第1偏光層付基材形成工程の欄に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
また、第2偏光層を第2基材の外側に形成する場合は、基体上に第2偏光層が形成された第2偏光板を貼付することもできる。この第2偏光板としては、一般に液晶表示素子の偏光板として用いられているものを使用することができる。
B.液晶表示素子
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。
本発明の液晶表示素子は、光配向膜の構成材料により2つの実施態様に分けることができる。以下、それぞれの実施態様について説明する。
1.第3実施態様
本発明の液晶表示素子の第3実施態様は、2枚の基材間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、上記基材の対向面上にそれぞれ電極層、偏光層および光配向膜が形成されており、一方の光配向膜の構成材料が光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料であり、他方の光配向膜の構成材料が光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料であることを特徴とするものである。
本実施態様の液晶表示素子について図面を参照しながら説明する。図6は、本実施態様の液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。図6に示すように、本実施態様の液晶表示素子は、2枚の基板13、14を有するものであり、上記基板13は基材1aと、この基材1a上に形成された偏光層2aと、この偏光層2a上に形成された電極層3aと、この電極層3a上に形成された光配向膜4aとを有しており、また第2基板14は第1基板13と同様の構成となっている。また、このような2枚の基板13、14の間に強誘電性液晶を挟持させることにより液晶層5が構成されている。
このような液晶表示素子は、上述した液晶表示素子の製造方法により製造することができることから、上述したように光配向膜の形成時に光を照射する際に偏光を制御する必要がないため、製造工程を簡略化することができる。また、光配向膜の構成材料として所定の材料を用いることにより、2枚の基板を上下の偏光層の偏光方向が90°となるように対向するだけで、上下の光配向膜の配向方向が平行となるので、製造効率のよい液晶表示素子とすることができる。
また、従来では基材の外側に偏光板が形成されており、光が出射される際には、液晶層、基材、偏光板の順に光が透過するため、基材に複屈折があると偏光状態が乱れる場合がある。これに対し、本実施態様においては、図6に示すように、偏光層2aは基材1aおよび液晶層5の間に形成されているので、例えば基材1a側から光が出射される場合、液晶層5、偏光層2aおよび基材1aの順に光が透過するため、液晶層5を透過した偏光は、その偏光状態を維持したまま偏光層2aを透過する。したがって、基材が複屈折を有する場合であっても、この複屈折の影響を受けることなく光が出射されるため、偏光状態の乱れを抑制することができ、また、基材の材料の選択肢が広がるという利点を有する。
さらに、従来では基材の外側に偏光板を貼り合わせていたため、特にプラスチック基材を用いた場合には可撓性を有しているために偏光板の反りや剥がれが生じやすいという不具合があったが、本実施態様においては、偏光層2a、2bを基板13、14の外側ではなく内側に形成することにより、偏光層の反りや剥がれの発生を防止することができる。
また、本実施態様の液晶表示素子は、一方の光配向膜の構成材料を光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料とし、他方の光配向膜の構成材料が光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料とすることにより、配向欠陥が形成されることなく強誘電性液晶を配向させることができるという効果を奏する。特に、スメクチックA相(SmA)を持たない強誘電性液晶を用いた場合、ダブルドメインの発生を抑制することができる。さらにこの場合、電界印加徐冷方式によらずに光配向膜を用いて配向処理を行うので、相転移以上に昇温してもその配向を維持し、配向乱れの発生を抑制することができるという利点を有する。
本実施態様の液晶表示素子では、例えば図2に示すように、基板13、14は、それぞれの偏光層の偏光方向22a、22bが90°ねじれて配置されるように対向している。これにより、電圧非印加状態と印加状態における液晶分子の光軸の方向や複屈折率の大きさを制御し、強誘電性液晶分子を白黒シャッターとして用いることにより、明状態と暗状態をつくることができる。例えば、電圧非印加状態では、基板13の偏光層を液晶分子の配向と揃うように設置することにより、基板13の偏光層を透過した光は、偏光方向を90°回転することができず、基板14の偏光層により遮断され、暗状態となる。これに対し、電圧印加状態では、電圧により液晶分子の方向が変化し、初期状態から角度θだけ回転することにより、光の偏光方向が90°ねじれて基板14の偏光層を透過し、明状態となる。そして、印加電圧により透過光量を制御することにより階調表示が可能となる。このように本実施態様の液晶表示素子は、強誘電性液晶を白黒シャッターとして用いるものであるので、応答速度を速くすることができるという利点を有する。
また、本実施態様の液晶表示素子は、例えば図7に示すように、一方の基板14を薄膜トランジスタ(TFT)7がマトリックス状に配置されたTFT基板とし、他方の基板13を共通電極8aが全域に形成された共通電極基板として、この2つの基板を組み合わせたものであることが好ましい。このようなTFTを用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子について以下に説明する。
図7においては、基板13は電極層が共通電極8aであり、共通電極基板となっており、一方、基板14は電極層がx電極8b、y電極8cおよび画素電極8dから構成され、TFT基板となっている。このような液晶表示素子において、x電極8bおよびy電極8cはそれぞれ縦横に配列しているものであり、これらの電極に信号を加えることによりTFT素子7を作動させ、強誘電性液晶を駆動させることができる。x電極8bおよびy電極8cが交差した部分は、図示しないが絶縁層で絶縁されており、x電極8bの信号とy電極8cの信号とは独立に動作することができる。x電極8bおよびy電極8cにより囲まれた部分は、本実施態様の液晶表示素子を駆動する最小単位である画素であり、各画素には少なくとも1つ以上のTFT素子7および画素電極8dが形成されている。本実施態様の液晶表示素子では、x電極8bおよびy電極8cに順次信号電圧を加えることにより、各画素のTFT素子7を動作させることができる。なお、図7においては液晶層、光配向膜、および偏光層を省略している。
さらに、本実施態様の液晶表示素子は、上記共通電極8aと基材1aとの間にTFT素子をマトリックス状に配置させたマイクロカラーフィルタを形成し、カラーディスプレイとして用いることもできる。
このような本実施態様の液晶表示素子の各構成部材について以下に詳細に説明する。
(1)光配向膜
まず、本実施態様に用いられる光配向膜について説明する。本実施態様においては、一方の光配向膜の構成材料が光二量化反応を生じることにより上記光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料であり、他方の光配向膜の構成材料が光異性化反応を生じることにより上記光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料であることを特徴とする。
光配向膜は、上述した光配向膜の構成材料を塗布した基板に光を照射し、光二量化反応または光異性化反応を生じさせて得られた膜に異方性を付与することにより、その膜上の液晶分子を配向させるものである。
上述したように、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料は、偏光方向に対して平行に配向し、一方、光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料は、偏光方向に対して垂直に配向する。例えば、図2において基板13側の光配向膜の構成材料を光二量化反応を利用した光反応型の材料とした場合、基板13においては偏光層の偏光方向22aと光配向膜の配向方向24aとが平行となり、基板14においては偏光層の偏光方向22bと光配向膜の配向方向24bとが垂直なる。したがって、上下の偏光層の偏光方向が90°ねじれて配置されるように基板13および14を対向することにより、上下の光配向膜の配向方向が平行となる。このように本実施態様の液晶表示素子は、偏光層および光配向膜を有する第1基板および第2基板をそれぞれの偏光層の偏光方向が90°となるように対向するだけで、光配向膜が平行となる液晶表示素子とすることができるので、製造効率がよいという利点を有する。また、上記の構成とすることにより、液晶を白黒シャッターとして用いる液晶表示素子とすることができる。
なお、光配向膜の構成材料等については、上述した「A.液晶表示素子の製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
(2)偏光層
次に、本実施態様に用いられる偏光層について説明する。偏光層は、基材上または電極層上に形成されるものである。形成位置としては、基材と電極層との間であってもよく、電極層と光配向膜との間であってもよい。中でも、基材と電極層との間に偏光層が形成されていることが好ましい。電極層上に偏光層を形成するよりも、基材上に偏光層を形成する方が容易であるからである。
また本実施態様においては、偏光層は二色性染料を含有することが好ましい。二色性染料としては、上述した「A.液晶表示素子の製造方法」に記載したものが挙げられる。このような二色性染料を含有することにより、容易に偏光層を形成することができるのである。
なお、偏光層に用いられる材料等については、上述した「A.液晶表示素子の製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
上記偏光層の厚みは、上記の二色性染料の種類や目的とする透過率により異なるものであるが、通常20nm〜1500nmとし、中でも100nm〜1000nmの範囲内とすることが好ましい。
(3)基材
本実施態様に用いられる基材は、一般に液晶表示素子の基材として用いられるものであれば特に限定されるものではなく、例えばガラス板、プラスチック板などが好ましく挙げられる。また、基材の表面粗さ(RSM値)は、10nm以下であることが好ましく、より好ましくは3nm以下、さらに好ましくは1nm以下の範囲内である。なお、上記表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した値とする。
(4)電極層
本実施態様に用いられる電極層は、一般に液晶表示素子の電極層として用いられているものであれば特に限定されるものではないが、少なくとも一方が透明導電体で形成されることが好ましい。透明導電体材料としては、酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)等が好ましく挙げられる。
本実施態様の液晶表示素子を、TFTを用いたアクティブマトリックス方式の液晶表示素子とする場合には、2枚の基板の電極層のうち、一方を上記透明導電体で形成される全面共通電極とし、他方にはx電極とy電極をマトリックス状に配列し、x電極とy電極で囲まれた部分にTFT素子および画素電極を配置する。
(5)液晶層
次に、本実施態様に用いられる液晶層について説明する。本実施態様における液晶層は、強誘電性液晶を上記光配向膜により挟持させることにより構成されている。上記液晶層に用いる強誘電性液晶は、カイラルスメクチックC相(SmC*)を発現するものであれば特に限定されるものではないが、強誘電性液晶の相系列が、ネマチック相(N)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメクチックC相(SmC*)、またはネマチック相(N)−カイラルスメクチックC相(SmC*)と相変化し、スメクチックA相(SmA)を経由しない材料であることが好ましい。特に、本実施態様の液晶表示素子をフィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させる場合には、SmA相を経由しない、単安定性を有する液晶材料を用いることが好ましい。このような材料を用いることにより、電圧変調により階調制御が可能になり、高精細で高品位の表示を実現することができる。
ここで、単安定性とは、電圧非印加時に1つの安定状態のみを有する性質をいう(図8)。強誘電性液晶としては、電圧非印加時に安定状態を二つ有する双安定性のものが広く知られているが(図8)、電圧印加により明状態にした後、電圧をOFFにしてもメモリ性があり、明状態が維持されるため、階調を表現するのが困難である場合がある。これに対し、単安定性を有するものは、電圧変化により液晶のダイレクタ(分子軸の傾き)を連続的に変化させ透過光度をアナログ変調することで階調表示を可能とするものとして注目されている。
このような単安定性を有する液晶材料の中でも、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動するものが、白黒シャッターの開口時間を長くとることができ、明るいカラー表示を実現することができる点で特に好ましい。
また、本実施態様に用いられる強誘電性液晶としては、単一相を構成するものであることが好ましい。ここで単一相を構成するとは、高分子安定化法やポリマー安定化法などのように、ポリマーネットワークが形成されていないことをいう。このように、単一相の強誘電性液晶を用いることにより、製造工程が容易となり、駆動電圧を低くすることができるという利点がある。
本実施態様に用いられる強誘電性液晶としては、例えば、クラリアント社より販売されている「R2301」が挙げられる。
上記強誘電性液晶で構成される液晶層の厚みは、1.2μm〜3.0μmの範囲内であるのが好ましく、より好ましくは1.3μm〜2.5μm、さらに好ましくは1.4μm〜2.0μmの範囲内である。液晶層の厚みが薄すぎるとコントラストが低下するおそれがあり、逆に液晶層の厚みが厚すぎると強誘電性液晶が配向しにくくなる可能性があるからである。
(6)液晶表示素子の用途
次に、本実施態様の液晶表示素子の用途について説明する。
本実施態様の液晶表示素子は、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス方式により駆動させることが好ましく、さらにカラーフィルタ方式またはフィールドシーケンシャルカラー方式を採用することによりカラーの液晶表示素子とすることができる。本実施態様においては、TFT基板側または共通電極基板側にマイクロカラーフィルタを配置することにより、カラー表示が可能であるが、強誘電性液晶の高速応答性を利用することにより、マイクロカラーフィルタを用いることなく、LED光源と組み合わせてフィールドシーケンシャルカラー方式によるカラー表示が可能になる。また、本実施態様の液晶表示素子を用いたカラーの液晶表示素子は、配向欠陥を生じることなく強誘電性液晶を配向させることができるので、視野角が広く、高速応答性を有し、高精細なカラー表示を実現することができる。
これらのなかでも、本実施態様の液晶表示素子は、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させることが好ましい。
ここで、フィールドシーケンシャルカラー方式とは、バックライトをR・G・B・R・G・B…と時間的に切り替え、それに同期させて強誘電性液晶の白黒シャッターを開閉し、網膜の残像効果により色を時間的に混合させ、これによりカラー表示を実現させるものである。このフィールドシーケンシャルカラー方式は、カラーフィルタ方式のように1画素をサブピクセルに形成する必要がないため高精細化が容易であり、また、カラーフィルタによる光の吸収もないため光の利用効率が高く、低消費電力および低コストを実現することができる点で有用である。一方、フィールドシーケンシャルカラー方式は1画素を時間分割するものであるので、良好な動画表示特性を得るためには白黒シャッターとしての液晶が高速応答性を有していることが必要である。この点、本実施態様の液晶表示素子は強誘電性液晶を用いるものであり、応答速度が速く、視野角が広いので動画表示特性が優れており、フィールドシーケンシャルカラー方式により駆動させることにより、高精細なカラー表示が可能となる。
この場合に、強誘電性液晶としては、Ch相からSmA相を経由しないでSmC*相を発現する、単安定性を有する液晶材料を用いることが好ましく、特に、正負いずれかの電圧を印加したときにのみ液晶分子が動作するハーフV字駆動する材料を用いることが好ましい。このようなハーフV字駆動する材料を用いることにより、暗部動作時(白黒シャッター閉口時)の光漏れを少なくすることができ、白黒シャッターとしての開口時間を十分に長くとることができる。それにより時間的に切り替えられる各色をより明るく表示することができ、明るいカラーの液晶表示素子を実現することができる。
本実施態様の液晶表示素子は、上記強誘電性液晶が単安定性を示す場合、基本的にはTFTを用いたアクティブマトリックス方式により駆動させるが、セグメント方式による駆動も可能である。
2.第4実施態様
次に、本発明の液晶表示素子の第4実施態様について説明する。
本発明の液晶表示素子の第4実施態様は、2枚の基材間に強誘電性液晶を挟持してなる液晶表示素子であって、上記基材の対向面上にそれぞれ電極層および光配向膜が形成され、少なくとも一方の基材の対向面側に偏光層が形成されており、上記光配向膜の構成材料は、上記強誘電性液晶を挟んで互いに同一の反応系の材料であることを特徴とするものである。
このような液晶表示素子は、上述した液晶表示素子の製造方法により製造することができることから、上述したように光配向膜の形成時に光を照射する際に偏光を制御する必要がなく、また、一度の光照射により上下の光配向膜を同時に形成することができるため、製造効率のよい液晶表示素子とすることができる。
また、偏光層を基材の内側に形成することにより、偏光層の反りや剥がれの発生を防止することができる。さらに、上記の構成とすることにより、出射される光は、基材、偏光層、液晶層、偏光層、基材の順に透過するため、液晶層を透過した偏光はその偏光状態を維持したまま偏光層を透過する。したがって、基材が複屈折を有する場合であっても、この複屈折の影響を受けることなく光が出射されるため、偏光状態の乱れを抑制することができ、また、基材の材料の選択肢が広がるという利点を有する。
また本実施態様においては、上記光配向膜の構成材料は、光二量化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光反応型の材料、または光異性化反応を生じることにより光配向膜に異方性を付与する光異性化型材料であることが好ましい。さらには、上記光配向膜の構成材料は、強誘電性液晶を挟んで互いに異なる組成であることが好ましい。スメクチックA相(SmA)を持たない強誘電性液晶を用いた場合、ダブルドメイン等の配向欠陥の発生を抑制することができるからである。またこの場合、電界印加徐冷方式によらずに光配向膜を用いて配向処理を行うので、相転移以上に昇温してもその配向を維持し、配向乱れの発生を抑制することができるという利点を有する。
本実施態様において、偏光層は少なくとも一方の基材の対向面側に形成されていればよく、片方の基材側のみに形成されていても、両方の基材側に形成されていてもよいが、通常は両方の基材側に形成されているものとする。上記偏光層の形成位置としては、基材と電極層との間であっても、電極層と光配向膜との間であってもよいが、中でも基材と電極層との間に偏光層が形成されていることが好ましい。電極層上に偏光層を形成するよりも、基材上に偏光層を形成する方が容易であるからである。また、両方の基材側に偏光層が形成されている場合、いずれか一方の偏光層は基材の外側に形成されていてもよい。この際、基体上に偏光層が形成された偏光板が基材の外側に貼付されていてもよい。この偏光板としては、一般に液晶表示素子に用いられる偏光板を使用することもできる。
なお、液晶表示素子の各構成部材および用途については、上述した第3実施態様に記載したものと同様であり、また、光配向膜の構成材料、偏光層の構成材料等については、上述した「A.液晶表示素子の製造方法」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。