JP4611455B2 - 変圧器励磁突入電流抑制装置 - Google Patents

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Description

本発明は、変圧器を三相電源に実質的に三相同時に投入及び遮断する三相遮断器において、当該投入時に発生する励磁突入電流を抑制する変圧器励磁突入電流抑制装置に関する。
変圧器の励磁突入電流を抑制する方式の一つとして、三相電源の特定の位相において遮断器を投入する位相制御投入方式が挙げられる。本発明は、位相制御投入方式を用いた変圧器励磁突入電流抑制装置に関するものである。
従来のこの種の変圧器励磁突入電流抑制装置においては、例えば、特許文献1に記載の変圧器励磁突流抑制装置は、電子装置としての最適投入位相演算装置の入力信号に適するように三相変圧器の相電圧を降圧する降圧手段により、三相変圧器が遮断されたときの過渡的に変化し最終的に零になる各相の相電圧を降圧し、この降圧された3つの相電圧を入力信号として残留磁束演算手段により電圧を時間積分することによって三相変圧器の鉄心内の残留磁束を演算し、投入位相演算手段により投入時の磁束と投入位相及び残留磁束との関係式から導出される計算式を用いて励磁突流の発生しない3相それぞれ異なる最適の投入位相を演算してこの演算結果を最適投入位相演算装置の出力信号とし、この出力信号を遮断器の位相制御装置の投入位相信号として遮断器で各相個別に投入させている。
また、特許文献2記載の変圧器励磁突入電流抑制装置は、三相のうちのいずれかの一相を閉極第一相とし、残り二相については、基準相の位相0度を基準点とし、前記残り二相の残留磁束を0として、前記閉極第一相の電源側電圧と変圧器側電圧との差である前記閉極第一相の極間電圧の電圧値よりも低い、前記残り二相の電源側電圧と変圧器側電圧との差である前記残り二相の極間電圧を、予め求められている前記三相遮断器のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性に対して対応させることによって、投入磁束誤差が最小となる閉極位相を算出して前記残り二相の目標閉極位相として設定し、前記基準点から前記残り二相の目標閉極位相までの時間と前記閉極第一相の投入後に前記残り二相の残留磁束の直流分が0になる時間に基づいて予め設定しておいた前記三相電源の周期の整数倍に相当する遅延時間とを合計した時間を前記残り二相の目標閉極時刻として設定し、閉極指令が入力されると、前記目標閉極時刻において前記残り二相を閉極させる。
特許第2685574号公報。 特許第3804606号公報。 特許第3716691号公報。
しかしながら、特許文献1に記載の変圧器励磁突流抑制装置では、遮断器の投入位相を決定するときに、当該遮断器の機械的な閉極時間のばらつき及びプレアークの影響が考慮されておらず、これらの要素により、実際には最適投入位相からずれた点で投入が行われることがあり、その際に過大な励磁突入電流が発生してしまうという問題点があった。また、特許文献2に記載の変圧器励磁突入電流抑制装置は、変圧器を三相電源に投入するときに、相毎に最適な目標閉極時刻を設定する。従って、変圧器を三相電源に対して三相同時に投入する遮断器には適用できなかった。
本発明は上記従来の課題を解決し、三相変圧器を三相電源に実質的に三相同時に投入及び遮断する三相遮断器において、当該投入時に当該三相変圧器に発生する励磁突入電流を抑制できる変圧器励磁突入電流抑制装置を提供することにある。
本発明に係る変圧器励磁突入電流抑制装置は、三相変圧器を三相電源に対して三相同時に投入する三相遮断器において当該投入時に当該三相変圧器に発生する励磁突入電流を抑制する変圧器励磁突入電流抑制装置であって、第1相の閉極位相を0〜360度の範囲で変化させながら上記三相遮断器を閉極したときに上記三相遮断器の投入後の定常状態において発生する変圧器磁束の中心値の最大ずれ量に相当する第1乃至第3相の投入磁束誤差を算出して第1乃至第3相の投入磁束誤差の評価値を最小にする目標閉極位相を決定する目標閉極位相決定手段と、上記三相遮断器を上記目標閉極位相決定手段によって決定された上記目標閉極位相で閉極するように制御する三相遮断器制御手段とを備え、上記目標閉極位相決定手段は、上記三相変圧器の第1乃至第3相の残留磁束値と、上記三相遮断器のプレアーク特性に基づく耐電圧直線の傾きのばらつきと、上記三相遮断器の閉極時間のばらつきと、上記三相変圧器の上記三相遮断器が接続されている側の巻線の結線条件とに基づいて上記耐電圧直線の傾き及び上記閉極時間の取りうる値で変化させて第1乃至第3相の投入磁束誤差を算出することを特徴とする変圧器励磁突入電流抑制装置である。
本発明に係る変圧器励磁突入電流抑制装置によれば、三相変圧器を三相電源に対して三相同時に投入する三相遮断器において当該投入時に当該三相変圧器に発生する励磁突入電流を抑制する変圧器励磁突入電流抑制装置であって、第1相の閉極位相を0〜360度の範囲で変化させながら上記三相遮断器を閉極したときに上記三相遮断器の投入後の定常状態において発生する変圧器磁束の中心値の最大ずれ量に相当する第1乃至第3相の投入磁束誤差を算出して第1乃至第3相の投入磁束誤差の評価値を最小にする目標閉極位相を決定する目標閉極位相決定手段と、上記三相遮断器を上記目標閉極位相決定手段によって決定された上記目標閉極位相で閉極するように制御する三相遮断器制御手段とを備え、上記目標閉極位相決定手段は、上記三相変圧器の第1乃至第3相の残留磁束値と、上記三相遮断器のプレアーク特性に基づく耐電圧直線の傾きのばらつきと、上記三相遮断器の閉極時間のばらつきと、上記三相変圧器の上記三相遮断器が接続されている側の巻線の結線条件とに基づいて上記耐電圧直線の傾き及び上記閉極時間の取りうる値で変化させて第1乃至第3相の投入磁束誤差を算出するので、励磁突入電流を、三相全てにおいて抑制することができる。
本発明の実施の形態1に係る変圧器励磁突入電流抑制装置40の構成を示すブロック図である。 三相遮断器3が接続されている側の3つの巻線L1,L2及びL3がスター結線されかつ当該スター結線の中性点が接地されていない結線条件Iを示す回路図である。 巻線L1,L2及びL3がデルタ結線されている結線条件IIを示す回路図である。 巻線L1,L2及びL3がスター結線されかつ当該スター結線の中性点が接地されている結線条件IIIを示す回路図である。 (a)は図1の三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性を示すグラフであり、(b)は、(a)の電圧位相θ1,θ2,θ3で接触子を投入した後の各変圧器磁束及び当該変圧器磁束の中心値φc1,φc2,φc3を示すグラフである。 図1の目標閉極位相決定回路8によって算出された、各閉極位相θcaに対するA相,B相,C相の各投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの一例を示すグラフである。 (a)は、A相,B相,C相の電源電圧ypa,ypb,ypcをそれぞれ示すグラフであり、(b)は、図6の目標閉極位相θtaで閉極し電圧位相θcloseで投入したときのA相,B相,C相の変圧器電圧yta,ytb,ytcをそれぞれ示すグラフであり、(c)は、図6の目標閉極位相θtaで閉極したときのA相,B相,C相の極間電圧の絶対値|yia|,|yib|,|yic|及び耐電圧直線ywaをそれぞれ示すグラフであり、(d)は、図6の目標閉極位相θtaで閉極し電圧位相θcloseで投入したときのA相,B相,C相の三相投入後における各変圧器磁束を示すグラフである。 本発明の実施の形態3に係る変圧器励磁突入電流抑制装置40Aの構成を示すブロック図である。
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る変圧器励磁突入電流抑制装置40の構成を示すブロック図である。図1において、変圧器励磁突入電流抑制装置40は、残留磁束測定回路6と、三相遮断器特性メモリ7と、目標閉極位相決定回路8と、三相遮断器コントローラ9とを備えて構成される。
図1において、三相電源2は、A相、B相及びC相の各電源電圧ypa,ypb及びypcを発生して、三相遮断器の各接触子3a,3b及び3cにそれぞれ出力する。さらに、三相遮断器3の各接触子3a,3b及び3cは三相変圧器1の三相遮断器3側の巻線L1,L2及びL3に接続される。
三相変圧器1において、三相遮断器3が接続されている側の3つの巻線L1,L2及びL3は、以下の結線条件I,II,IIIのうちのいずれかひとつで互いに結線されている。図2は、三相遮断器3が接続されている側の3つの巻線L1,L2及びL3がスター結線(星形結線又はY結線ともいう。)されかつ当該スター結線の中性点が接地されていない結線条件Iを示す回路図であり、図3は、巻線L1,L2及びL3がデルタ結線(三角結線ともいう。)されている結線条件IIを示す回路図であり、図4は、巻線L1,L2及びL3がスター結線されかつ当該スター結線の中性点が接地されている結線条件IIIを示す回路図である。なお、三相変圧器1の、三相遮断器3が接続されていない側の各巻線(図示しない。)は、結線条件I〜IIIのいずれかによって接続されている。また、三相変圧器1は負荷に接続されていない無負荷の状態にある。
三相遮断器3の接触子3a,3b,3cは、三相遮断器コントローラ9からの開極制御信号So及び閉極制御信号Scに応答して、連動して実質的に同時に開極及び閉極される。また、電圧測定器5は、基準相であるA相の対地電圧を測定して、当該測定結果を示す測定信号Svaを発生して三相遮断器コントローラ9に出力する。電圧測定器4は、電圧測定器4a,4b及び4cを備える。電圧測定器4a,4b及び4cは、A相、B相及びC相の三相変圧器1の対地電圧をそれぞれ測定して、当該測定結果を示す測定信号S4a、S4b及びS4cを発生して残留磁束測定回路6に出力する。ここで、電圧測定器5,4a,4b,4cはそれぞれ、高電圧回路において一般的に用いられる交流電圧測定用センサによって構成される。
次に、図5を参照して、三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性を説明する。図5において、(a)は、図1の三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性を示すグラフである。なお、三相遮断器3の各接触子3a,3b,3cは互いに同一のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性を有し、以下、接触子3a,3b,3cを区別しないときには、単に、接触子又は三相遮断器3という。
三相遮断器3の接触子3a,3b,3cはそれぞれ、入力される閉極指令信号Scに応答して、当該閉極指令信号Scが出力されてから所定の機械的な動作時間が経過した後に、機械的に接触する。接触子が機械的に接触するタイミングを閉極といい、上記機械的な動作時間を閉極時間という。閉極時間は、三相遮断器3の周囲温度や操作油圧、制御電圧及び休止時間に依存する。また、閉極前に先行放電によって接触子に主回路電流が流れ始めることが知られている。この先行放電はプレアークと呼ばれており、上記主回路電流が流れ始めるタイミングを投入という。ここで、投入のタイミングは、後述するように、三相遮断器3の接触子の極間に印加される電圧である極間電圧の絶対値に依存する。以下の各実施の形態において、接触子のプレアークの特性をプレアーク特性という。上述のように、接触子3a,3b,3cは、同一のプレアーク特性を有する。
さらに、各接触子は機械的な動作ばらつきを有しており、所定のタイミングで閉極指令信号を入力したときに、実際に接触子が閉極するタイミングの確率分布は、当該所定のタイミングに対応する閉極時間を中心としてばらつく正規分布になる。この接触子の閉極時間のばらつきの特性を、閉極時間ばらつき特性という。接触子3a,3b,3cは、同一の閉極時間ばらつき特性を有する。
図5(a)において、耐電圧直線Lwは、接触子を電圧位相θ0を有する閉極点P0において閉極させたときの、当該接触子の極間電圧の電圧位相(以下、接触子の電圧位相という。)に対する当該接触子の極間の耐電圧値の関係を示す。接触子において、耐電圧値よりも極間電圧の絶対値が低いときには当該接触子は投入されず、耐電圧直線Lwと極間電圧の絶対値との交点である投入点P1では、接触子間の耐電圧値が極間電圧の絶対値と等しくなるのでプレアークが発生して当該接触子が投入される。このように、接触子において、投入点P1の電圧位相θ1は閉極時の電圧位相θ0とは異なるので、励磁突入電流を抑制するために最適な目標閉極位相を決定するときには、プレアーク特性を考慮する必要がある。
さらに、上述のように、三相遮断器3の接触子は閉極時間ばらつき特性を有するので、目標閉極位相θ0で閉極するように制御しても、投入点P1で投入されるとは限らない。図5(a)に、閉極時間ばらつきが±1ミリ秒(電圧位相ばらつきΔθvに対応する)であるときの、耐電圧直線Lwの変動範囲を破線Lw1及びLw2で示す。さらに、三相遮断器3の接触子には極間の放電ばらつきが存在するので、耐電圧直線Lwの傾きはばらつく。図5(a)に、閉極時間ばらつきが±1ミリ秒であり、かつ耐電圧直線Lwの傾きが±10%だけばらつくときの、耐電圧直線Lwの変動範囲を実線Lw3及びLw4で示す。接触子の閉極時間ばらつき及び耐電圧直線Lwの傾きのばらつきを考慮すると、図5(a)に示した例では、目標閉極点P0で閉極するように制御しても、最小の耐電圧値を有する耐電圧直線Lw3と極間電圧の絶対値との交点P2の電圧位相θ2と、最大の耐電圧値を有する耐電圧直線Lw4と極間電圧の絶対値との交点P3の電圧位相θ3との間のいずれかの電圧位相で投入されることになる。
ここで、三相遮断器3の投入後の定常状態において、正弦波形状を有する変圧器磁束が発生する。三相遮断器3の投入後に三相変圧器1に発生する励磁突入電流を抑制するためには、電圧位相θ2〜θ3のうち上記正弦波形状を有する発生する変圧器磁束の中心値(最大値と最小値との平均値である)の絶対値が最も小さくなる電圧位相で当該三相遮断器3の接触子を投入すればよい。図5において、(b)は、図5(a)の電圧位相θ1,θ2,θ3で接触子を投入した後の各変圧器磁束及び当該変圧器磁束の中心値φc1,φc2,φc3を示すグラフである。図5(b)において、電圧位相θ2,θ3間の各電圧位相で投入された後における変圧器磁束の中心値の絶対値の最大値を投入磁束誤差Δφと定義する。例えば、図5(b)に示した例では、投入磁束誤差Δφは電圧位相θ3で投入したときの変圧器磁束の中心値φc3の絶対値である。
図1の変圧器励磁突入電流抑制装置40において、残留磁束測定回路6は、電圧測定器4からの測定信号S4a,S4b,S4cをそれぞれ積分する3つの積分回路と、三相遮断器コントローラ9からの開極制御信号Soに応答して、測定信号S4a,S4b,S4c及び当該各積分結果の各信号に基づいて、三相遮断器3の遮断(開極)後の各相毎の残留磁束値φra,φrb,φrcを演算し、残留磁束値φra,φrb,φrcを示す信号S6a、S6b、S6cを発生して出力する演算回路とを備える。上記演算回路は、開極指令信号を受信した後、測定信号S4aに基づいてA相の電圧値がゼロに収束したタイミングを検出し、当該タイミングにおける測定信号S4aの積分結果の信号に基づいてA相の残留磁束値φraを演算する。さらに、A相の残留磁束値φraと同様に、B相の残留磁束値φrb及びC相の残留磁束値φrcを演算する。
三相遮断器特性メモリ7は、予め測定された三相遮断器3のプレアーク特性に関するデータ、閉極時間ばらつき特性に関するデータ及び三相変圧器1の三相遮断器3側の巻線L1,L2,L3の結線条件に関するデータを格納する。ここで、プレアーク特性に関するデータは、電源電圧の電圧位相が0度のときの当該電源電圧の接線の傾きを1としたときの耐電圧直線Lwの傾きの値及び当該傾きのばらつきの値(%)であり、閉極時間ばらつき特性に関するデータは、閉極時間のばらつきの値(ミリ秒)である。また、三相変圧器1の三相遮断器3側の巻線L1,L2,L3の結線条件に関するデータは、上記結線条件I〜IIIを示す所定のフラグ値である。
目標閉極位相決定回路8は、所定のタイミングで三相遮断器特性メモリ7から三相遮断器3のプレアーク特性、閉極時間ばらつき特性及び三相変圧器1の三相遮断器3側の巻線の結線条件に関するデータに関する各データを読み出し、残留磁束測定回路6からの残留磁束値φra,φrb,φrcを示す信号S6a,S6b,S6cと、読み出された三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性に関するデータと、三相変圧器1の三相遮断器3が接続されている側の巻線の結線条件と、三相電源2の各相間の電圧位相差(120度である。)に基づいて、後述するように、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcを、基準相の閉極位相毎に算出する。さらに、目標閉極位相決定回路8は、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの最大値を最小にするように、基準相(以下、A相として説明する)の目標閉極位相θtaを決定し、決定された目標閉極位相θtaを示す信号を発生して三相遮断器コントローラ9に出力する。
三相遮断器コントローラ9は、上位の制御装置から入力される開極指令Coに応答して、開極制御信号Soを発生して三相遮断器3及び残留磁束測定回路6に出力する。また、三相遮断器コントローラ9は、上位の制御装置から入力される閉極指令Ccに応答して、目標閉極位相決定回路8からの目標閉極位相に基づいて接触子3aの電圧位相が0度であるタイミングから当該目標閉極位相に対応するタイミングまでの経過時間(以下、目標閉極時間という。)を算出すると共に、電圧測定器5からのA相の対地電圧を示す測定信号Svaに基づいて、A相の電圧位相が0度であるタイミングを検出する。そして、三相変圧器1が負荷に接続されていない無負荷時に、検出されたタイミングから上記目標閉極時間だけ時間が経過したタイミングで三相遮断器3が閉極されるように、閉極制御信号を発生して三相遮断器3に出力する。
次に、目標閉極位相決定回路8において各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcを算出する方法を、定格電圧印加時における三相変圧器1の磁束振幅を定格値で規格化して1PU(Per Unit)として説明する。
目標閉極位相決定回路8は、基準相(A相)の電源電圧を基準とした閉極電圧位相(以下、閉極位相という。)θcaを0度〜360度の範囲内で所定の間隔(例えば、1度である。)で変化させ、各閉極電圧位相毎に各投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcを以下のようにそれぞれ算出する。
三相遮断器3の各接触子の閉極時間ばらつきが±1ミリ秒であり、耐電圧直線の傾きのばらつきが±10%であるときには、A相の閉極電圧位相α、B相の閉極電圧位相β及びC相の閉極電圧位相γを以下の式(1)〜(3)の範囲内で所定の間隔でそれぞれ変化させ、かつ、耐電圧直線の傾きrを、耐電圧直線の傾きの中心値raを用いて、以下の式(2)の範囲内で所定の間隔で変化させる。
(θca−Δθv)≦α≦(θca+Δθv) (1)
(θca−Δθv)≦β≦(θca+Δθv) (2)
(θca−Δθv)≦γ≦(θca+Δθv) (3)
ra×0.9≦r≦ra×1.1 (4)
ここで、式(1)〜(3)において、Δθvは、閉極時間ばらつきの大きさ(例えば、1ミリ秒である。)に対応する電圧位相ばらつきの大きさである。
目標閉極位相決定回路8は、各相の閉極電圧位相α,β,γ及び耐電圧直線の傾きrを式(1)〜(4)の範囲内でそれぞれ変化させ、各相の耐電圧直線と極間電圧の絶対値の交点(例えば、図5の交点P1である。)である各投入電圧位相θa,θb,θcと、投入後の変圧器磁束の中心値の各絶対値φca,φcb,φccとをそれぞれ求め、当該変圧器磁束の中心値の各絶対値φca,φcb,φccの各最大値である各投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcをそれぞれ求める。ここで、変圧器磁束の中心値の各絶対値φca,φcb,φccは、三相変圧器1の三相遮断器3側の巻線の結線条件I〜III及び投入された相の数に依存する。
次に、変圧器磁束の中心値の各絶対値φca,φcb,φccの計算方法を、三相変圧器1の三相遮断器3側の巻線の結線条件I〜III毎に説明する。なお、A相,B相,C相の各電源電圧ypa,ypb,ypcを、A相の電圧位相θを用いて以下のようにそれぞれ定義する。
ypa=sinθ
ypb=sin(θ−120°)
ypc=sin(θ−240°)
I. 三相遮断器3が接続されている側の3つの巻線L1,L2,L3がスター結線されかつ当該スター結線の中性点が接地されていない結線条件Iの場合:
(1)1相目投入時:
A相,B相,C相の各変圧器電圧yta,ytb,ytcは、以下のようにゼロである。
yta=0
ytb=0
ytc=0
このとき、A相,B相,C相の各極間電圧yia,yib,yicはそれぞれ、以下の式で表される。
yia=ypa−yta=ypa
yib=ypb−ytb=ypb
yic=ypc−ytc=ypc
また、A相,B相,C相の各耐電圧直線ywa,ywb,ywcはそれぞれ、以下の式で表される。
ywa=r×(θ−α)
ywb=r×(θ−β)
ywc=r×(θ−γ)
以下の3式を電圧位相θに関してそれぞれ解くことにより、各相の投入電圧位相を算出し、算出された投入電圧位相のうち、最も早く投入された相の投入電圧位相を求める。
|yia|=ywa
|yib|=ywb
|yic|=ywc
例えば、A相が最も早く投入されたとすると、A相の位相を投入電圧位相θaと決定する。なお、複数の相の投入位相が同一の場合は、当該同一の位相を当該複数の相の投入電圧位相と決定してよい。
(2)2相目投入時:
1相目投入後のA相,B相,C相の各変圧器電圧yta,ytb,ytcは、投入第1相の電源電圧に一致する。従って、例えば、A相が投入第1相であるときには、A相,B相,C相の各変圧器電圧yta,ytb,ytcはそれぞれ、以下の式で表される。
yta=ypa
ytb=ypa
ytc=ypa
このとき、A相,B相,C相の各極間電圧yia,yib,yicはそれぞれ、以下の式で表される。
yia=ypa−yta=0
yib=ypb−ytb=ypb−ypa
yic=ypc−ytc=ypc−ypa
未投入相、すなわち本例ではB相及びC相に関して、以下の2式を電圧位相θに関してそれぞれ解くことにより、各相の投入電圧位相を算出し、算出された投入電圧位相のうち、最も早く投入された相の投入電圧位相を求める。
|yib|=ywb
|yic|=ywc
例えば、B相が最も早く投入されたとすると、B相の位相を投入電圧位相θbと決定する。なお、複数の相の投入位相が同一の場合は、当該同一の位相を当該複数の相の投入電圧位相と決定してよい。
(3)3相目投入時:
2相目投入後のA相,B相,C相の各変圧器電圧yta,ytb,ytcは、投入済の相については電源電圧に一致し、未投入相については、投入済二相の電源電圧の平均値に一致する。従って、例えば、未投入相がC相であるときには、A相,B相,C相の各変圧器電圧yta,ytb,ytcはそれぞれ、以下の式で表される。
yta=ypa
ytb=ypb
ytc=(ypa+ypb)/2
このとき、A相,B相,C相の各極間電圧yia,yib,yicはそれぞれ、以下の式で表される。
yia=ypa−yta=0
yib=ypb−ytb=0
yic=ypc−ytc=ypc−(ypa+ypb)/2
未投入相、すなわち本例ではC相に関して、以下の式を電圧位相θに関して解くことにより、C相の投入電圧位相θcを決定する。
|yic|=ywc
このとき、三相投入後の各変圧器磁束の中心値の絶対値φca,φcb,φccはそれぞれ、投入第二相の投入電圧位相Θ2を用いて以下のように求められる。
(1)投入電圧位相θa及びθbが投入位相θc以下(θa,θb≦θc)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
(2)投入電圧位相θb及びθcが投入位相θa以下(θb,θc≦θa)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
(3)投入電圧位相θc及びθaが投入位相θb以下(θc,θa≦θb)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
II. 三相遮断器3が接続されている側の3つの巻線L1,L2,L3がデルタ結線されている結線条件IIの場合:
A相,B相,C相の各投入電圧位相θa,θb,θcは、上述した結線条件Iの時と同様に算出される。さらに、三相投入後の各変圧器磁束の中心値の絶対値φca,φcb,φccはそれぞれ、投入第二相の投入電圧位相Θ2及び投入第3相の投入電圧位相Θ3を用いて以下のように求められる。
(1)投入電圧位相θa及びθbが投入位相θc以下(θa,θb≦θc)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
(2)投入電圧位相θb及びθcが投入位相θa以下(θb,θc≦θa)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
(3)投入電圧位相θc及びθaが投入位相θb以下(θc,θa≦θb)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
III. 三相遮断器3が接続されている側の3つの巻線L1,L2,L3がスター結線されかつ当該スター結線の中性点が接地されている結線条件IIIの場合:
(1)1相目投入時:
上述した結線条件I,IIにおける1相目投入時と同様に投入電圧位相が算出される。
(2)2相目及び3相目投入時:
1相目投入後は、投入第1相に対応する変圧器電圧は当該投入第1相の電源電圧に一致し、残り二相の変圧器電圧は、投入第1相の電源電圧の逆相の1/2となる。従って、例えば、A相が投入第1相であるときには、A相,B相,C相の各変圧器電圧yta,ytb,ytcはそれぞれ、以下の式で表される。
yta=ypa
ytb=−ypa/2
ytc=−ypa/2
このとき、A相,B相,C相の各極間電圧yia,yib,yicはそれぞれ、以下の式で表される。
yia=ypa−yta=0
yib=ypb−ytb=ypb+ypa/2
yic=ypc−ytc=ypc+ypa/2
未投入相、すなわち本例ではB相及びC相に関して、以下の2式を電圧位相θに関してそれぞれ解くことにより、各相の投入電圧位相を算出し、算出された投入電圧位相のうち、最も早く投入された相の投入電圧位相を求める。
|yib|=ywb
|yic|=ywc
例えば、B相が最も早く投入されたとすると、B相の位相を投入電圧位相θbと決定する。なお、2相投入された時点で、残りの1相の変圧器に発生している磁束は三相投入後の変圧器磁束と同様となるので、当該残りの1相の投入電圧位相θcもB相の投入電圧位相θbと同じである。
このとき、三相投入後の各変圧器磁束の中心値の絶対値φca,φcb,φccはそれぞれ、投入第二相の投入電圧位相Θ2を用いて以下のように求められる。
(1)投入電圧位相θaが投入位相θb,θc以下(θa≦θb,θc)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
(2)投入電圧位相θbが投入位相θc,θa以下(θb≦θc,θa)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
(3)投入電圧位相θcが投入位相θa,θb以下(θc≦θa,θb)の場合:
Figure 0004611455
Figure 0004611455
Figure 0004611455
以上のようにして求められた三相投入後の各変圧器磁束の中心値の絶対値φca,φcb,φccについて、式(1)〜(4)の範囲内での最大値を相毎に算出し、閉極位相θcaでの各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcとする。
図6は、図1の目標閉極位相決定回路8によって算出された、各閉極位相θcaに対するA相,B相,C相の各投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの一例を示すグラフである。なお、図6において、以下の値を仮定した。
(1)結線条件が上記結線条件Iである(スター結線であって中性点非接地);
(2)閉極時間ばらつきの値=±1ミリ秒;
(3)電源電圧が0度のときの接線の傾きを1としたときの耐電圧直線の傾き=0.8;
(4)上記耐電圧直線の傾きのばらつき=±10%;
(5)A相の残留磁束値φra=−0.5PU;
(6)B相の残留磁束値φrb=0PU;
(7)C相の残留磁束値φrc=+0.5PU.
次に、図6を参照して、目標閉極位相決定回路8において基準相(A相)の目標閉極位相θtaを決定する方法を説明する。目標閉極位相決定回路8は、図6中の電圧位相0〜360度の中から、三相の各投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの最大値が最小となるようなA相の閉極電圧位相θcaを決定する。図6に示した例では、A相の閉極位相θcaが96度のときに、三相の各投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの最大値が最小となるので、目標閉極位相θtaは96度に決定される。
図7において、(a)は、A相,B相,C相の電源電圧ypa,ypb,ypcをそれぞれ示すグラフであり、(b)は、図6の目標閉極位相θtaで閉極し電圧位相θcloseで投入したときのA相,B相,C相の変圧器電圧yta,ytb,ytcをそれぞれ示すグラフであり、(c)は、図6の目標閉極位相θtaで閉極したときのA相,B相,C相の極間電圧の絶対値|yia|,|yib|,|yic|及び耐電圧直線ywaをそれぞれ示すグラフであり、(d)は、図6の目標閉極位相θtaで閉極し電圧位相θcloseで投入したときのA相,B相,C相の三相投入後における各変圧器磁束を示すグラフである。
以上詳述したように、本実施の形態によれば、目標閉極位相決定回路8は、各相の残留磁束値φra,φrb,φrcと、三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性と、三相変圧器1の三相遮断器3が接続されている側の巻線の結線条件と、三相電源2の各相間の電圧位相差に基づいて、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcを基準相であるA相の閉極位相毎に算出し、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの最大値を最小にするように、基準相であるA相の目標閉極位相θtaを決定するので、三相遮断器が投入されたときに三相変圧器1に発生する過渡電流としての励磁突入電流を従来技術に比較して安定して抑制することができる。
なお、本実施の形態において、残留磁束測定回路6において各相の残留磁束値φra,φrb,φrcをそれぞれ測定した。しかしながら、本発明はこれに限らず、残留磁束測定回路6を設けなくてもよい。このとき、目標閉極位相決定回路8は、残留磁束値φra,φrb,φrcに代えて、予め測定又は推定された各相の残留磁束値φraの上限値及び下限値と、残留磁束値φrbの上限値及び下限値と、残留磁束値φrcの下限値及び上限値と、三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性と、三相変圧器1の三相遮断器3が接続されている側の巻線の結線条件と、三相電源2の各相間の電圧位相差とに基づいて、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcを算出する。具体的には、電圧位相α,β,γを上述の式(1)〜(3)の範囲内で所定の間隔でそれぞれ変化させ、耐電圧直線の傾きrを閉極位相がθcaのときの耐電圧直線の傾きraに対して上述の式(4)の範囲内で所定の間隔で変化させ、かつ、A相,B相,C相の残留磁束値を上記下限値及び上限値の間の範囲内でそれぞれ変化させて、三相遮断器投入後の定常状態において発生する変圧器磁束の中心値の絶対値の最大値を、閉極位相θcaでの各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcとすればよい。これにより、電圧測定器4を設置できず、残留磁束値φra,φrb,φrcを測定できないときにも、三相遮断器が投入されたときに三相変圧器1に発生する過渡電流としての励磁突入電流を、三相全てにおいて抑制することができる。
実施の形態2.
実施の形態1において、接触子3a,3b,3cは閉極制御信号Scに応答して実質的に同時に閉極されると仮定した。しかしながら、実際には、全ての接触子3a,3b,3cを実質的に同時に閉極するように制御しても、B相及びC相の各閉極時間はそれぞれ、A相の閉極時間に対して所定の閉極時間平均値のずれ量だけずれる。
実施の形態2は、実施の形態1に比較して、
(1)三相遮断器特性メモリ7は、基準相であるA相の閉極時間に対するB相及びC相の各閉極時間平均値のずれ量を予めさらに格納し、
(2)目標閉極位相決定回路8はさらに、基準相であるA相の閉極時間に対する他の二相の各閉極時間平均値のずれ量に基づいて、三相遮断器3の目標閉極位相を決定することを特徴としている。
目標閉極位相決定回路8は、三相遮断器特性メモリ7から基準相であるA相の閉極時間に対するB相及びC相の各閉極時間平均値のずれ量を読み出し、当該各閉極時間平均値のずれ量を電圧位相差に変換する。例えば、基準相の閉極時間に対するB相及びC相の各閉極時間平均値のずれ量が+1ミリ秒及び+2ミリ秒であり、系統周波数が60Hzのときには、B相の閉極位相の120度からのずれの量Δdbは+21.6度になり、C相の閉極位相の240度からのずれの量Δdcは+43.2度になる。
これに対応して、前述の式(1)〜(3)を以下の式(5)〜(7)に置き換え、前述同様の演算を実行して、目標閉極位相θtaを決定する。
(θca−Δθv)≦α≦(θca+Δθv) (5)
(θca+Δdb−Δθv)≦β≦(θca+Δdb+Δθv) (6)
(θca+Δdc−Δθv)≦γ≦(θca+Δdc+Δθv) (7)
本実施形態によれば、三相遮断器が投入されたときに三相変圧器1に発生する励磁突入電流を、実施の形態1に比較してさらに抑制することができる。
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3に係る変圧器励磁突入電流抑制装置40Aの構成を示すブロック図である。図8において、本実施の形態に係る変圧器励磁突入電流抑制装置40Aは、実施の形態1に係る変圧器励磁突入電流抑制装置40(図1参照。)に比較して、各相の残留磁束値φra,φrb,φrcと基準相の目標閉極位相との間の関係を示すマップを格納するマップメモリ10をさらに備え、目標閉極位相決定回路8に代えて目標閉極位相決定回路8Aを備えたことを特徴としている。
図8において、目標閉極位相決定回路8Aは、A相,B相,C相の各残留磁束値φra,φrb,φrcの各組み合わせ毎に、各残留磁束値A相,B相,C相と、三相遮断器3のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性と、三相変圧器1の三相遮断器3が接続されている側の巻線の結線条件と、三相電源2の各相間の電圧位相差と、A相の閉極時間に対するB相及びC相の各閉極時間平均値のずれ量に基づいて、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcを基準相に対する閉極位相毎に決定し、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcに関する評価値を実質的に最小にするように、基準相に対する目標閉極位相を決定し、各相の各残留磁束値φra,φrb,φrcの各組み合わせ毎に決定された基準相の目標閉極位相に基づいて上記マップを作成して予めマップメモリ10に格納する。ここで、上記評価値は、投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの最大値である。目標閉極位相決定回路8Aは、上記マップを参照して、各相の残留磁束値φra,φrb,φrcに基づいて基準相の目標閉極位相を決定する。これにより、励磁突入電流抑制装置40Aの運用時における目標閉極位相の決定のための演算量を減少させることができ、安価な演算装置を用いて目標閉極位相を速く決定できる。なお、上記評価値は、投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの和であってもよい。
変形例.
上記各実施の形態において、目標閉極位相決定回路8、8Aは、各相の投入磁束誤差Δφa,Δφb,Δφcの和の値を最小にするように、基準相の目標閉極位相を決定してもよい。これにより、上記各実施の形態と同様に、三相遮断器が投入されたときに三相変圧器1に発生する励磁突入電流を抑制することができる。
また、上記各実施の形態において、電圧測定器5、4a,4b,4cは、三相変圧器1の一次巻線側における三相電源2の電圧をそれぞれ測定しているが、本発明はこれに限らず、三相変圧器1の二次巻線側又は三次巻線側の電圧を測定してもよい。また、電圧測定器5、4a,4b,4cは三相電源2からの各相の対地電圧を測定しているが、本発明はこれに限らず、相間電圧を測定してもよい。
さらに、三相遮断器コントローラ9を、特許文献2に記載の閉極制御手段又は特許文献3に記載の制御信号出力手段と同様に構成してもよい。
またさらに、三相の残留磁束φra,φrb,φrcの和はゼロであるので、電圧測定器4a,4b,4cのうちの2つの電圧測定器のみを設け、残留磁束測定回路6において二相の残留磁束値を算出し、残りの一相の残留磁束値を算出された二相の残留磁束値の和の逆符号として算出してもよい。また、三相遮断器3の開極位相を、残留磁束φra,φrb,φrcを所定値にするように制御してもよい。このときは、電圧測定器4及び残留磁束測定回路6を設けず、上記所定値を目標閉極位相決定回路8、8Aに出力すればよい。
以上詳述したように、本発明に係る変圧器励磁突入電流抑制装置によれば、三相電源の第1乃至第3相の各残留磁束値と、三相遮断器のプレアーク特性及び閉極時間ばらつき特性と、三相変圧器の三相遮断器が接続されている側の巻線の結線条件と、三相電源の各相間の電圧位相差とに基づいて、投入後の定常状態において発生する変圧器磁束の中心値の絶対値の最大値である投入磁束誤差を、各相に対して第1相の閉極位相毎に決定し、決定された第1乃至第3相の投入磁束誤差に関する評価値を実質的に最小にするように、第1相の目標閉極位相を決定する目標閉極位相決定手段を備えたので、励磁突入電流を、三相全てにおいて抑制することができる。
1 三相変圧器、2 三相電源、3 三相遮断器、3a,3b,3c 接触子、4、4a,4b,4c、5 電圧測定器、6 残留磁束測定回路、7 三相遮断器特性メモリ、8、8A 目標閉極位相決定回路、9 三相遮断器コントローラ、10 マップメモリ、40、40A 変圧器励磁突入電流抑制装置、L1,L2,L3 巻線。

Claims (6)

  1. 三相変圧器を三相電源に対して三相同時に投入する三相遮断器において当該投入時に当該三相変圧器に発生する励磁突入電流を抑制する変圧器励磁突入電流抑制装置であって、
    第1相の閉極位相を0〜360度の範囲で変化させながら上記三相遮断器を閉極したときに上記三相遮断器の投入後の定常状態において発生する変圧器磁束の中心値の最大ずれ量に相当する第1乃至第3相の投入磁束誤差を算出して第1乃至第3相の投入磁束誤差の評価値を最小にする目標閉極位相を決定する目標閉極位相決定手段と、
    上記三相遮断器を上記目標閉極位相決定手段によって決定された上記目標閉極位相で閉極するように制御する三相遮断器制御手段とを備え、
    上記目標閉極位相決定手段は、
    上記三相変圧器の第1乃至第3相の残留磁束値と、
    上記三相遮断器のプレアーク特性に基づく耐電圧直線の傾きのばらつきと、
    上記三相遮断器の閉極時間のばらつきと、
    上記三相変圧器の上記三相遮断器が接続されている側の巻線の結線条件とに基づいて
    上記耐電圧直線の傾き及び上記閉極時間の取りうる値で変化させて第1乃至第3相の投入磁束誤差を算出することを特徴とする変圧器励磁突入電流抑制装置。
  2. 上記評価値は、上記第1乃至第3相の投入磁束誤差の最大値であることを特徴とする請求項1記載の変圧器励磁突入電流抑制装置。
  3. 上記評価値は、上記第1乃至第3相の投入磁束誤差の和であることを特徴とする請求項1記載の変圧器励磁突入電流抑制装置。
  4. 上記目標閉極位相決定手段はさらに、上記第1相の閉極時間に対する他の二相の各閉極時間平均値のずれ量に基づいて上記投入磁束誤差を決定することを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つの請求項記載の変圧器励磁突入電流抑制装置。
  5. 上記目標閉極位相決定手段は、上記第1の残留磁束値の上限値及び下限値と、上記第2の残留磁束値の上限値及び下限値と、上記第3の残留磁束値の上限値及び下限値と、上記三相遮断器のプレアーク特性に基づく耐電圧直線の傾きのばらつき及び閉極時間ばらつきと、上記三相変圧器の上記三相遮断器が接続されている側の巻線の結線条件と、上記電圧位相差とに基づいて、上記投入磁束誤差を、上記各相に対して上記第1相の閉極位相毎に決定することを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つの請求項記載の変圧器励磁突入電流抑制装置。
  6. 各相の残留磁束値と上記目標閉極位相との間の関係を示すマップを格納するマップメモリをさらに備え、
    上記目標閉極位相決定手段は、
    上記第1乃至第3相の各残留磁束値の各組み合わせ毎に、上記第1乃至第3相の各残留磁束値と、上記三相遮断器のプレアーク特性に基づく耐電圧直線の傾きのばらつき及び閉極時間ばらつきと、上記三相変圧器の上記三相遮断器が接続されている側の巻線の結線条件と、上記電圧位相差とに基づいて、上記投入磁束誤差を上記各相に対して上記第1相の閉極位相毎に決定し、上記第1乃至第3相の投入磁束誤差に関する評価値を最小にするように、上記第1相の目標閉極位相を決定し、
    上記第1乃至第3相の各残留磁束値の各組み合わせ毎に決定された上記第1相の目標閉極位相に基づいて上記マップを作成して予め上記マップメモリに格納し、上記マップを参照して、上記第1乃至第3相の各残留磁束値に基づいて、上記第1相の目標閉極位相を決定することを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つの請求項記載の変圧器励磁突入電流抑制装置。
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