JP4611095B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
この方法は、転舵輪が路肩の縁石などに当った際に、その縁石からの反力を良好に再現して運転者に正確に伝達するのに大いに有用なものである。
即ち、本発明の第1の手段は、ハンドルに反力トルクを付与する反力モータを有する操舵機構と、転舵軸を駆動する転舵アクチュエータを有する転舵機構とを機械的に分離し、これら双方を連結する連結機構を電気的な連動機構にて構成したステアバイワイヤ式の車両用操舵装置において、運転者が操舵操作を行う際にハンドルに対して付与する操舵トルクを測定するトルクセンサと、ハンドルの回転角に基づいて決定される目標位置に転舵軸の位置を追従させる転舵軸位置制御手段と、外部から転舵軸に加わる転舵反力に基づいて、反力トルクの目標値となる目標トルクを求める目標トルク演算手段と、目標トルク演算手段により求められた目標トルクと、トルクセンサにより検出された前記操舵トルクとの偏差に基づいて求められる補償トルクにゲインを掛けた修正補償トルクを求めるトルク制御手段と、目標トルク演算手段の出力する目標トルクと、トルク制御手段の出力する修正補償トルクとに基づいて、反力モータの出力する反力トルクの指令値であるトルク指令値を決定し、そのトルク指令値に前記反力モータの出力を制御する反力トルク制御手段と、転舵軸に対する転舵アクチュエータからの出力と転舵軸の転舵速度に基づいてハンドルに対する運転者の操舵操作を規制すべきか否かを判定する規制要否判定手段と、操舵操作を規制すべきと規制要否判定手段によって判定された際に、トルク指令値を増大させて操舵操作を規制する操舵規制手段とを有し、操舵規制手段は、転舵軸の位置と目標位置との偏差が増大するに連れて大きくなる規制トルクを目標トルクに加算した値を、新たな目標トルクとし、補償トルクのゲインを、転舵軸の位置と目標位置との偏差が増大するに連れて、1から0に減少させることを特徴とする車両用操舵装置である。
以上の本発明の手段により、前記の課題を効果的、或いは合理的に解決することができる。
即ち、本発明の第1の手段によれば、転舵軸に対する転舵アクチュエータからの出力と転舵軸の転舵速度に基づいて、ハンドルに対する運転者の操舵操作を規制するか否かが適切に判定されるので、操舵操作を急速に実行した場合に転舵アクチュエータの位置制御の応答遅れによって、転舵軸の実際の位置と目標位置との偏差が大きくなってしまっても、その操舵が不本意に規制されてしまう恐れがない。
また、操舵操作を規制する反力トルクの値を上記の転舵軸の位置と目標位置との偏差に対して徐々に単調に変化させれば、操舵操作を急速に行っていた際にも操舵操作を規制する反力トルクが徐々に増大するので、操舵操作中の運転者に対するハンドルからの衝撃を適度に緩和することができる。
また、本発明の第1の手段によれば、上記の転舵軸の位置と目標位置との偏差に基づくゲイン決定処理(補償トルクゲイン制御手段)を追加するだけで、操舵操作を規制し得る反力モータの出力トルクを非常に簡単に決定することができる。
ただし、本発明の実施形態は、以下に示す個々の実施例に限定されるものではない。
1.システムのハードウェア構成
図1に車両用操舵装置100のシステム構成図を示す。この車両用操舵装置100は、運転者が操作するハンドル1を有する操舵機構と、転舵輪16を転舵する転舵機構と、これらの操舵機構と転舵機構との連動制御を電気的に行う制御装置(コンピュータ)8等から構成されている。
操舵機構は、操舵反力を生成する操舵アクチュエータ(反力モータ5)を備える。反力モータ駆動回路6は、制御装置8から与えられる電圧指令値Vh * に応じて反力モータ5を駆動する。反力モータ5の出力軸は減速器を介して操舵軸(ステアリングシャフト)2に連結されており、この操舵軸2はハンドル1に連結されている。
図2は、車両用操舵装置100の制御装置8の制御ブロック図である。この制御装置8の制御体系は、主に転舵モータの制御系(以下、転舵系と言うことがある。)と、反力モータの制御系(以下、操舵系と言うことがある。)と、本発明に特に深く係わる操舵規制制御42などから成る。
図3に、制御装置8の転舵モータの位置制御(即ち、本発明の構成要素である転舵軸位置制御手段)に関する制御ブロック図を示す。
(1)位置制御
位置制御23では、まず最初に、上記の位置偏差Δxr (≡xr * −xr )を求める。この目標位置xr * は、図2の目標位置演算22において、操舵角θh に所定の伝達比Gを乗じて求められた値であり、この伝達比Gは車速センサ7から入力される車速vの関数として定義されている。一方、転舵位置xr は、図2の転舵位置演算21において、ボールネジ機構のリードgbから定まる定数Gr (≡2 π/gb)で転舵モータ11の回転角Θr を除算して求められた値(=Θr /Gr =gbΘr /2 π)である。
次に、この位置制御23では、この位置偏差Δxr (≡xr * −xr )に基づくPID制御(比例積分微分制御)によって、転舵モータのトルク指令値ur * を算出する。即ち、図3の符号231はその積分処理を示しており、符号232はその微分処理を示している。
その後、次段の電流制御24ではこのトルク指令値ur * から算出した電流指令Ir * と実際に電流計9a(図1)で計測した電流Ir に基づくPI制御(比例積分制御)によって電圧指令Vr * を算出する。
図2の操舵規制制御42では、後述の制御(2.3.操舵系の制御)において操舵を適切に規制するために利用される2つの制御パラメータである補償ゲインGC と規制トルクTX を、上記の位置偏差Δxr (≡xr * −xr )に基づいて算出する。
図4に、この操舵規制制御42を実現するためのフローチャートを示す。
ステップ430では、図2の転舵速度演算41において転舵位置xr の微分演算によって算定された転舵速度vr の値が略0であるか否かを所定の閾値を用いて判定する。その結果、転舵速度vr の値が略0であればステップ450へ、そうでなければステップ440へ処理を移す。
本発明の規制要否判定手段は、本実施例1においては、上記のステップ420とステップ430によって実現されており、以下のステップ440では、平常時の処理が実行され、ステップ450では、操舵操作が規制されるべき時の処理が実行される。
一方、ステップ450では、転舵位置xr と目標位置xr * との偏差から、例えば図5−Aに例示される補償ゲインマップM1に従って補償ゲインGC を決定する(本実施例1の補償トルクゲイン制御手段)。この様な補償ゲインマップ(テーブルデータ)は、偏差が大きいほど補償ゲインGC が小さくなるように設定すれば良く、必ずしも直線的なグラフ形状にする必要はない。、
TX =GX Δxr =GX (xr * −xr ) …(1)
ただし、これに類似の関数をマップ(テーブルデータ)を用いて定義しても良い。
以上の処理によって、補償ゲインGC と規制トルクTX を、上記の位置偏差Δxr (≡xr * −xr )に基づいて算出することができる。
図6に制御装置8の操舵系の反力トルク制御の制御ブロック図を示す。
(1)目標トルクTh * の算定
微分演算処理33は、操舵角演算32によって、反力モータの回転角Θh を減速機の減速比で除算することで算出された操舵角θh を微分して操舵速度ωh を出力する。次に粘性補償トルク演算34は、この操舵速度ωh に粘性補償ゲインGdcを乗じて粘性補償トルクTdcを出力する。また、基準トルク演算35に従って転舵反力Fr から基準トルクTref が求められる。最後に、基準トルクTref 、粘性補償トルクTdc、及び先に操舵規制制御42で求めた規制トルクTX を加算することにより、操舵トルクの目標トルクTh * が算出される。
(目標トルクTh * の式)
Th * =Tdc+Tref +TX …(2)
トルク制御31は、操舵トルクTh と上記の目標トルクTh * から周知の比例微分制御にしたがって補償トルクTA を算出する。ここで用いられる微分演算は、出力する補償トルクTA の遅延を補償するためのものである。
上記の補償トルクTA と先に操舵規制制御42で求めた補償ゲインGC との乗算処理によって修正補償トルクTC を算出し、更にこの修正補償トルクTC と上記の目標トルクTh * とを加算して、反力モータのトルク指令値uh * を算出する。
(トルク指令値uh * の式)
uh * =−Th * −TC =−(Th * +GC TA ) …(3)
電流制御36は、トルク指令値uh * から算出した電流指令Ih * と実際の電流Ih から、周知のPI制御によって電圧指令Vh * を算出する。
以上の制御により、以下の様に、操舵を適切に規制する電圧指令Vh * を算出することができる。
本実施例1の車両用操舵装置100を車両に搭載すれば、転舵輪が縁石などに当たっていない時に、ハンドルを急速に操舵したことにより転舵軸の位置偏差が大きくなったとしても、転舵速度が略0でない限り大きな操舵反力トルクは生成されない。このため、転舵輪が縁石などに当たっていない時に、誤ってハンドルの操舵が規制されてしまう恐れがなくなる。
本発明の実施形態は、上記の形態に限定されるものではなく、その他にも以下に例示される様な変形を行っても良い。この様な変形や応用によっても、本発明の作用に基づいて本発明の効果を得ることができる。
(変形例1)
例えば、上記の実施例1では、転舵反力Fr から基準トルクTref を求める際に、マップ(テーブル)を用いたが、その他にも例えば、補償トルクTA を求めるトルク制御などにおいてもマップを用いることができる。この様な補償トルクの生成に係わるマップの構成例等については、例えば「特開2002−087300:電動パワーステアリング装置」などに関連する開示がある。
また、上記の実施例1では、転舵軸に働く転舵反力は力センサを用いて実測したが、転舵反力は外乱オブザーバを用いて推定する様にしても良い。その場合には、装置に力センサを具備する必要がなくなる。この様な外乱オブザーバの構成例等については、例えば「特開2002−370661:舵角中立点推定装置」などに関連する開示がある。
また、上記の実施例1では、粘性補償トルクTdcを生成する様にしているが、その他にも周知の摩擦補償トルクや慣性補償トルクなどを同様に生成して、同様の補償を実施する様にしても良い。上記の実施例1に合わせて更にこれらの補償トルクの生成を実施すれば、ハンドルの操舵感を更に良好なものにできる。
1 : ハンドル
4 : トルクセンサ
5 : 反力モータ
10 : 転舵モータの回転角センサ
11 : 転舵モータ
12 : 力センサ
Ih : 反力モータの駆動電流の測定値
Ir : 転舵モータの駆動電流の測定値
Θh : 反力モータの回転角 , Θr : 転舵モータの回転角
Fr : 転舵反力 , θh : 操舵角
xr : 転舵位置 , GC : 補償ゲイン
TC : 補償トルク , Tref : 基準トルク
TX : 規制トルク , Th : 操舵トルク
Claims (4)
- ハンドルに反力トルクを付与する反力モータを有する操舵機構と、転舵軸を駆動する転舵アクチュエータを有する転舵機構とを機械的に分離し、これら双方を連結する連結機構を電気的な連動機構にて構成したステアバイワイヤ式の車両用操舵装置において、
運転者が操舵操作を行う際に前記ハンドルに対して付与する操舵トルクを測定するトルクセンサと、
前記ハンドルの回転角に基づいて決定される目標位置に前記転舵軸の位置を追従させる転舵軸位置制御手段と、
外部から前記転舵軸に加わる転舵反力に基づいて、前記反力トルクの目標値となる目標トルクを求める目標トルク演算手段と、
前記目標トルク演算手段により求められた前記目標トルクと、前記トルクセンサにより検出された前記操舵トルクとの偏差に基づいて求められる補償トルクにゲインを掛けた修正補償トルクを求めるトルク制御手段と、
前記目標トルク演算手段の出力する前記目標トルクと、前記トルク制御手段の出力する前記修正補償トルクとに基づいて、前記反力モータの出力する前記反力トルクの指令値であるトルク指令値を決定し、そのトルク指令値に前記反力モータの出力を制御する反力トルク制御手段と、
前記転舵軸に対する前記転舵アクチュエータからの出力と前記転舵軸の転舵速度に基づいて前記ハンドルに対する運転者の操舵操作を規制すべきか否かを判定する規制要否判定手段と、
前記操舵操作を規制すべきと前記規制要否判定手段によって判定された際に、前記トルク指令値を増大させて前記操舵操作を規制する操舵規制手段と
を有し、
前記操舵規制手段は、
前記転舵軸の位置と前記目標位置との偏差が増大するに連れて大きくなる規制トルクを前記目標トルクに加算した値を、新たな前記目標トルクとし、
前記補償トルクのゲインを、前記転舵軸の位置と前記目標位置との偏差が増大するに連れて、1から0に減少させる
ことを特徴とする車両用操舵装置。 - 前記規制要否判定手段は、前記転舵軸に対する前記転舵アクチュエータからの出力が所定の閾値を超え、かつ、前記転舵軸が略停止している時に前記操舵操作を規制すべきと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用操舵装置。
- 前記目標トルク演算手段は、前記ハンドルの回転角の回転速度に基づいて決定される粘性補償トルクを、前記目標トルクに加えた値を、新たな目標トルクとして出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用操舵装置。
- 前記転舵軸位置制御手段は、前記転舵軸の位置と前記目標位置との前記偏差の時間積分値に基づいて前記転舵軸の位置を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両用操舵装置。
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