JP4604176B2 - 表面電位測定型センサー装置 - Google Patents

表面電位測定型センサー装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4604176B2
JP4604176B2 JP2004237173A JP2004237173A JP4604176B2 JP 4604176 B2 JP4604176 B2 JP 4604176B2 JP 2004237173 A JP2004237173 A JP 2004237173A JP 2004237173 A JP2004237173 A JP 2004237173A JP 4604176 B2 JP4604176 B2 JP 4604176B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sensor
unit
surface potential
nanosensor
reference electrode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004237173A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006058020A (ja
Inventor
徹 中村
恵美子 小山
英雄 徳久
亘 水谷
清美 塚越
泰久 内藤
敬雄 石田
デン フィファ
雅敏 金里
靖三 鈴木
祐司 川西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2004237173A priority Critical patent/JP4604176B2/ja
Publication of JP2006058020A publication Critical patent/JP2006058020A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4604176B2 publication Critical patent/JP4604176B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Description

本発明は、表面電位を直接測定する表面電位測定型センサー装置に関する。さらに、詳しくは電気製品、医療機器、及び測定機器等に用いられるナノメーターレベルのセンサーを用いた複数配線集積した集積センサー及びこれを用いたに表面電位測定型センサー装置に関するものである。
近年技術の進歩にともなって、さまざまな分野でセンサーの開発が行われてきている。さらなる発展において、センサーの感度の向上が重要となる。中でも分子レベルの選択的なセンシング技術の開発が重要な鍵である。
分子類を検知するため、電界効果型トランジスター、振動型コンデンサー、水晶振動子、表面プラズモン、走査型プローブ、発光消光現象を駆使したセンサーの作製が行われているが、電界効果型トランジスター、振動型コンデンサーを用いたセンサーは測定において、電流を感知しており、センシング感度を上げるための素子微細化には限界がある。
水晶振動子に関しては、水晶の微細化に難がある。また、表面プラズモン共鳴法を用いたセンサーチップが知られ、(特許文献1参照)、走査型プローブ、発光消光現象を用いたものも知られているが、光学系が必須であり複雑な形態となる。一般的に、現在応用されている分子センサーは、システム全体が複雑であり、感度向上や素子化において問題をかかえている。このことは、多大なエネルギー、コストを必要とする製品に即つながり、問題がある。
また、ビピリジンをセンシングユニットに用い、結合ユニットの末端にチオール基を有する化合物を用いたナノセンサーは、本発明者らによって、既に出願されている。(特許文献2)
特開2003−156434号公報 特開2005−127998号公報
ハイテクでありながら、よりローコスト、軽量、省エネルギー型の製品の提供が求められている。そこで、表面電位を直接モニターする分子センサーを構築すれば、上記の問題を解決できる。すなわち、表面電位はその面の大きさにかかわらず測定可能であり、感度を向上させながらその面を非常に微細化することができる。また、電位測定のための面と参照電極面、それらをつなぐ配線のみでセンサーを構築できるので微細化集積化にむいている。さらに、有機分子の特徴の一つである構造の膨大な多様性により、特定の検知対象物質をセンシングする選択性の高い分子センサーを随時設計、構築できる。この分子センサーシステムにより、製品の高密度化、軽量化、省エネ化、ローコスト化、高選択性、高感度化を可能にする。
本発明者らは、上記の課題を解決するには、感度向上のための新しい一分子膜の開発とその電位応答性が必須であるとの観点から、鋭意検討を重ねた結果、従来のセンサー系にはない新しい分子センサーを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、
本発明は、参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、次の化学式
で表わされるビピリジン誘導体であることを特徴とする表面電位測定型センサー装置を提供する。
また、本発明は、参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、ジアミドピリジン誘導体であることを特徴とする表面電位測定型センサー装置を提供する。
また、本発明では、センサー膜部位の金属表面に形成させたナノセンサーが、一種類もしくは複数種のホスト分子からなることを特徴とすることができる
また、本発明では、参照電極部位として、種類の異なる2つ以上の参照電極を用いることができる。
さらに、前記ナノセンサーのホスト分子を、センシング後に再生処理をすることができ、リサイクルすることができる。
また、本発明では、前記ナノセンサーのホストを形成する分子のすべてもしくは一部が、化学的外来刺激物質であるターゲット分子を捕捉するための官能基及び又はDNA配列を有することができる
さらに、本発明では、センサー膜部位の平均面積を、1nm2〜1cm2 とし、膜厚を1〜10μmとすることができる。
本発明の表面電位測定型センサー装置は、液体中および気体中で使用することができ、かつ、微小電極表面を用いることで感度を向上させることがでる。また、ホスト分子を工夫することで、特定の化学種に選択的なナノセンサーを構築できる。そのため、検査対象の微量異種多成分を同時測定しながら、経時変化をモニターすることかできる。これにより、簡便で、ローコストの選択的センサーを提供することができ、環境、医療、分析の分野に貢献できる。
(電位検知のための基本形態)
本発明の表面電位測定型センサー装置を作製するためには以下の基本構造が必須である。すなわち、センサー素子の構成は、チップ上の参照電極(Reference electrode、すなわち参照電極部位)とナノセンサーを配列させたセンサー電極(Sensing electrode、すなわちセンサー膜部位)および、それらをつなぐ配線網部位からなる(図1参照)。参照電極部位は検査対象に対して不活性な面で構成されており、電位測定における基準となる重要な部分である。センサー膜部位は検査対象に活性で、検査対象を取り込むもしくはそれと反応するナノセンサーを配列させた部位であり、表面電位変化を誘発し、電位を直接検知するための表面電位測定型センサー装置の心臓部である。電極に直接接合する配線網部位は各表面の電位をモニターするためのもので、配線自体は検査対象に不活性もしくは接触しないように配線する。
(電位検知のための基本原理)
本発明の表面電位測定型センサー装置は、参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位を用いるが、通常は、3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部(Integrated Sensing electrode)で検知し、表面状態変化を、ホスト分子のターゲット分子の取り込みもしくはそれとの反応により増幅し、誘起される表面電位により直接表示することでセンシングを行うものである。
そのため、検査対象(ターゲット分子)である気体、ガス、気相浮遊物、イオン、遷移金属イオン、無機物や、有機低分子および有機高分子、公害物質、汚染物質、糖、核酸塩基、核酸オリゴマー、DNA、RNA、酵素、たんぱく質、バクテリア、ウィルス、抗原抗体物質、細胞、および生態系の物質をふくむ有機系分子に対応したセンサー膜部位のホスト分子が重要である。
表面電位測定型センサー装置におけるナノセンサーの動作原理は、大きく2つに分類される。1つは、ターゲット分子のナノセンサー内のセンシングユニットへの吸着により、ンサー膜部位内の双極子モーメントもしくは電気二重層もしくは電気的鏡像体に由来した表面状態が変化して、表面電位に影響を与えるものであり、2つめは、ターゲット分子とセンシングユニットとの化学反応により、表面の状態変化が誘引され、もしくは反応による副生成物が発生し表面の状態変化を引き起こすものである。基本原理としていわゆるホスト−ゲスト化学および化学反応に基づく、これらの相互作用における分子選択、分子反応設計、配列技術が重要であり、表面において先述の物理的、化学的変化により、表面電位変化を誘発することがその機構の根幹をなしている。
(表面電位測定型センサー装置の形態)
本発明の表面電位測定型センサー装置は、通常は、参照電極部位、センサー膜部位、配線網部位の3要素部位を、シリコン等の基板上に、微小集積化して用いる(図2参照)。電位測定のため電極表面の面積や形に制約はなく、多彩なデバイス設計が可能である。面積は電位に対して影響が少ないから、小さなものから大きなものまで可能であるが、集積化を鑑みるにミクロンからナノメーターのディメンジョンが好ましい。
センサー膜部位の形に関しては、三角形、四角形、多角形、円、楕円、渦巻き型、球面、柱型、剣山型、不定形2次元、3次元体とあらゆる形態をとりうる。検査対象によっては、基準となる参照電極部位に影響を与える可能性があるため、本発明では、1つの参照電極部位でもよいが、種類の異なる2つ以上の参照電極部位を配置させ、測定環境もしくは配線の断線、リークの不測の事態に応じて、切り替えて使用しセンシングに用いる形態が好ましい。センサー膜部位は同一のホスト分子、もしくは異種のホスト分子からなる。前者の場合は、同一検知対象の位置存在率のモニターとして使用できる。後者の場合、複数の検知対象に対する目的に応じたオーダーメイドのセンサーを提供できる。
これらの集積センサーが配線を通して、被覆導線に接続され、最終的には各電極電位をモニターリングする一般のコンピューターシステムを含む測定用コントローラーにつながる形態をとる。
本発明の表面電位測定型センサー装置において、センサー膜部位に用いるナノセンサーは、ターゲット分子と相互作用を有する部位(センシングユニット)と基板に接続するための結合部位(結合ユニット)を有する構造をとることができる。すなわち、センシングユニットは、ナノセンサー内に存在する部分で、ターゲット分子と相互作用できるホスト分子を有し、その反応性や機能を制御するための官能基、および結合ユニットと接合するための官能基から成る。
ターゲット分子と相互作用を有する部位(センシングユニット)は、次の化学式
で表わされるビピリジン誘導体、又は、ジアミドピリジン誘導体である。
本発明のナノセンサーの基本的な概念を、図3に示す。
ナノセンサーは、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと基板表面に結合できる結合部位からなり、電極金属に結合している。具体的なナノセンサーの例を図4に示した。図4において、まずセンシングユニットにあるホスト分子であるビピリジンは、ターゲット分子である遷移金属錯体を捕捉したとき、シグマ結合により結合しているため、自由回転していた2つのピリジン環はシス位に固定されるとともに、ターゲット分子捕捉による電子状態の変化により、ナノセンサーに電位変化が生じる。参照電極との電位差変化を検出することにより、ターゲット分子の存在を検知できる。また、プロトンを捕捉した場合はビピリジンのシス位固定は強くなされないが、類似した電子状態の変化により、ナノセンサーに電位変化が生じる。さらに、遷移金属と錯化した分子系は、DNA中のグアニン部分と特異的な相互作用を有するため、DNAの特異塩基配列のセンシングにも使用できる。
次の例として、図5においては、DNAの構成物質のひとつであるチミン誘導体をターゲット分子として、多点水素結合を利用して捕捉できるジアミドピリジン誘導体を用いたナノセンサーの例を示した。この分子系は特定の核酸塩基誘導体を捕捉するのに適している。このように、ナノセンサーセンシングユニットを系統的に変化させることで多様な検知対象に対する対応が可能となる
(参照電極部位の形態)
参照電極部位の表面は、基本的に検査対象に対して、不活性であることが大切で、そのため表面としては、貴金属(金、銀、銅、プラチナ、パラジウム)、グラファイト、不定形炭素材料、有機薄膜、有機絶縁性ポリマー、シロキサンポリマー、絶縁性硝子からなる膜状物質が適している。本発明では、参照電極部位として、種類の異なる2つ以上の参照電極部位を用いることができる。集積センサー部に2つの参照電極部位がある場合、例えば、そのうちの1つを絶縁性硝子で被覆した金電極、他方を金属上に固定化したグラファイトを用いる。これに類して、2つ以上の参照電極部位を用いる場合、上記の材料を参照電極部位に被覆し、適宜選択し組み合わせることで本発明の電極システムを構築する。
(センサー膜部位の作製)
ナノセンサーを用いてセンサー膜部位を作製するには、インクジェット技術を用いるのが好ましい。これにより、異種のホスト分子を有するナノセンサー群を、シリコンや貴金属等の金属基板等の基板上にその場で適宜ぬりつけることができる。
それぞれのナノセンサー用のインクジェットノズルを高速変換することで目的に応じたオーダーメイドセンサーを提供できる。ぬりつけ作業をおえたあとは、余分の分子材料を大量の可溶性純粋溶媒でいっきに洗浄することでセンサー電極膜を作製する。各センサー膜部位上に吸着させるナノセンサーは、用途に応じて1種類もしくは2種類以上の混合系を用いる。2種類以上の混合系の場合、各構成成分の比率、表面への相互作用の違いを設定することで最適のセンサー電極部位にする。また、2種類以上の混合系の場合、1種類ずつの成分を順次上塗りする形で構成させる方法もある。膜の厚みは1〜10000nmの範囲であるが、感度の向上から数ナノメートルの分子薄膜が好ましい。
(配線網部位の形態)
参照電極(参照電極部位)、センサー電極(センサー膜部位)の電位をモニターするために各電極に対する配線は必須である。配線の方法は大きく分けて、3つある。1つは、デバイス同一表面上に配線する手法と(図)、2つめは、配線をデバイス最表面からみて下方にもぐらせる手法である(図)。
3つめは、電極もしくは近傍から、直接ハンダ付けにより接合する方法である。第1の手法の場合、表面に露出した配線部分および配線表面とシールド剤の界面をシールドすることが重要である。シールド剤は、有機ポリマー、レジスト材料、硝子、およびスパッタリングによる酸化無機膜が好ましい。第2の手法の場合も、シールドは必要で、配線もぐりこみの始めの部分および配線からアダプター取出し口への接続部分のシールドが必要である。形態としてデバイスチップ裏面に配線を接続するものと側面へ接続するものがある。第3の方法は、機械的もしくは手作業で配線を接合するものである。
デバイス同一表面上に配線する形態と配線をデバイス最表面からみて下方にもぐらせる形態どちらにおいても、配線数が増えた場合は、デバイスチップ中にFETトランジスターとオシレーターを導入することで配線数の削減を行う。センサー電極からのシグナルを順次、内部オシレータークロックゲート電界により自動高速スイッチング収集することで配線数の削減が行える。配線網を外部にとりだすためのワイヤー部分もここでの配線技術に入る。ワイヤーの形態は被覆導線であり、しなやかなもの剛直な素材どちらでもよい。ワイヤーを含めて、全体が鋭利な針状の構造に一体化した形状もある。この被覆導線部分で先の配線数の削減も行える。その被覆導線を計測用コントローラーおよび集積化センサーに接続するアダプターも重要である。各配線をセンサーチップから被覆導線へ、被覆導線途中、被覆導線から測定用コントローラーへ接続する役割を担う。特に、センサーチップと被覆導線の接合において、検査環境のなかで電気的なリークがおこらないようにシールドする技術は重要である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更及び他の態様又は実施例は、全て本発明に含まれる。
本発明の表面電位測定型センサー装置は、いわゆるホスト−ゲスト化学に基づく分子選択が重要である。センサー膜部位における、ホスト−ゲスト相互作用を確認するため、X線光電子分光、赤外線吸収、表面電位顕微鏡、および吸収端近傍X線吸収微細構造を用いて詳細に検討した。ホスト分子としてビピリジン骨格を、ターゲット分子として遷移金属錯体を一例としてあげる。
本発明で用いるナノセンサーとして、ターゲット分子と相互作用を有する部位(センシング部位)として、ホスト分子であるビピリジン誘導体を用いることが出来る。
ビピリジン誘導体の例としては、チオールを結合ユニットとした以下のものがある。
センサー膜部位におけるナノセンサー、ターゲット分子である遷移金属錯体、および該ターゲット分子を作用させたナノセンサーのX線光電子分光スペクトルから、ビピリジン誘導体は分子膜を形成しており、膜中でターゲット分子である遷移金属錯体を取り込むことがわかった。
一例として上記に示したビピリジン誘導体のうち、片側のみに硫黄を有するビピリジン誘導体を用いたナノセンサーのX線光電子分光スペクトルにおける窒素1sのbinding energy変化を図に示す。図8のスペクトルは、窒素1sの該ナノセンサー中の窒素の状態を示すものである。
8(i)はフリーの該ナノセンサーのN1sシグナルであり、約398.5eVに位置することがわかった。
8(ii)は、ナノセンサーから成る分子膜にターゲット分子である遷移金属Pd錯体を相互作用させた後のスペクトルである。398.5eVのシグナル以外に約400eV付近に新たなシグナルが現れることがわかった。これはターゲット分子である遷移金属Pd錯体がビピリジン誘導体中の窒素により捕捉され、窒素の電子密度が低下したことと一致して、高binding energyにシフトしたものである。
8(iii)はPd3d領域のXPSスペクトルであるが、約335eV付近に、センサー膜部位の基板に用いた金のシグナルが現れている。ターゲット分子である遷移金属Pd錯体をナノセンサー(ホスト分子膜に作用させると、図8(iv)に示したように約343と338eVにPd3dに対応したシグナルが観測された。これらのピークはPdがビピリジン骨格中の窒素により捕捉されたものである。
以下の各スペクトルにおいても、測定手法に応じた対応する物理量の変化が観測されているが、ここでは割愛する。赤外線吸収スペクトルを用いて、ナノセンサーターゲット分子である遷移金属錯体を作用させる前後において、ビピリジン骨格に対応する伸縮振動の変化がみられ、ターゲット分子である遷移金属錯体の取り込みが実証された。表面電位顕微鏡測定とそのX線光電子分光から、ナノセンサー(ピリジン誘導体分子膜)は、ターゲット分子である遷移金属錯体とりこみにより大きな電位変化をもたらせることが判明した。さらに、吸収端近傍X線吸収微細構造の測定からナノセンサーは、ターゲット分子である遷移金属錯体の取り込みにより、その配列状態が変化することが分かった。これらの結果は、センサー膜部位において、ナノセンサーがセンサとして作動が可能であることを示す。
参照電極としてAg/AgCl電極を用い、センサー膜部位として、マイカ上に厚み200nmで蒸着した1cm X 2cmの金(111)面にビピリジン誘導体を吸着させた分子膜を用いた。検査環境として、硫酸カリウム0.1M水溶液を用いた。このセンサー電極を遷移金属溶液と作用させたところ、作用させる前に比べて作用後の表面電位(以下OCP(Open Circuit Potential)と略す)が大きく変化した(図)。
その変化は約50mV前後であった。ビピリジン誘導体を吸着させていない金(111)面やターゲット分子に対して不活性な分子を吸着させたセンサー電極では大きな変化はなく、このOCP変化の現象はホスト分子の選択の重要性を示すものである。
次に、参照電極として比較的不活性な遷移金属である金電極を用いた。センサー膜部位として、金上にビピリジン誘導体を吸着させたものを採用した。ここで用いた電極の形状は、球体でありその直径は1〜3mmであり、先の金基板に比べてその表面積は非常に小さくしてある(約0.04〜0.38cm2)。検査環境として同様の、硫酸カリウム0.1M水溶液を用いた。このセンサー電極を遷移金属溶液と作用させたところ、作用させた後のOCPが大きく変化した(図10)。その変化は約100mV前後であった。その値は、先の金基板と同等もしくはそれ以上であり、電位検知においる面積の不問が証明された。また、参照電極として電気化学分野で使用されているもの以外も、本発明で活用できることが実証された。ビピリジン誘導体を吸着させていない球状の金や別の不活性な分子を吸着させた電極では、大きな変化はなくこれもOCP変化の現象はホスト分子選択の重要性を示すものである。
センサー膜部位として、金上にジアミドピリジン誘導体を吸着させたものを採用した。ここで用いた電極の形状は、球体でありその直径は1〜3mmであり、先の金基板に比べてその表面積は非常に小さくしてある。参照電極として不活性な長鎖アルカンチオール(ヘキサデカンチオール)修飾金電極を用いた。検査環境として同様の、硫酸カリウム0.1M水溶液を用いた。このセンサー電極を、この系におけるターゲット分子であるブチルチミンと作用させたところ、作用させた後のOCPが変化した(図11)。その変化は約80mV前後であった。ジアミドビピリジン誘導体を吸着させていない金(111)面や別の不活性な分子を吸着させたセンサー電極では、大きな変化はなくこれもOCP変化増幅の現象はホスト分子のよるものであると思われる。この一例は、ホスト分子の型は特定のものに限定されるものではなく、基本的にナノセンサーホスト分子は特定のターゲット分子と相互作用を有するものであれば、表面電位型センサー装置のセンシングユニットに使用できることを示すものである。また、不活性な有機薄膜(ヘキサデカンチオール)を用いた電極が参照電極として使用できることを証明している。
本発明の表面電位型センサー装置におけるセンサー膜部位のリサイクルの観点から、ターゲット分子である遷移金属錯体を取り込むことがわかったビピリジン誘導体一分子膜(実施例1−3)に対して、ターゲット分子である遷移金属錯体の脱離をこころみた。アミン系の化合物を脱離剤として作用させ、その挙動を、X線光電子分光、赤外線吸収、ケルビンプローブ顕微鏡を用いて詳細に検討した。分子内官能基および遷移金属のX線光電子分光スペクトルから、ビピリジン誘導体は脱離剤によって、取り込んだターゲット分子である遷移金属錯体を手放すことがわかった。赤外線吸収スペクトルにおいても、ビピリジン骨格に対応する伸縮振動から、脱離が実証された。ケルビンプローブ顕微鏡測定とそのX線光電子分光からも、ビピリジン誘導体一分子膜はターゲット分子である遷移金属錯体とりこみにより電位がもとにもどることが判明した。これらの結果は、センサーのリサイクル使用が可能であることを示す。
そこで、参照電極としてAg/AgCl電極を用い、センサー膜部位として、マイカ上に厚み200nmで蒸着した1cm X 2cmの金(111)面に遷移金属が吸着したビピリジン誘導体一分子膜を用いて、硫酸カリウム0.1M水溶液中、脱離剤であるエチレンジアミンの効果を検討したところ、脱離剤の作用によりOCPがもとにもどることが明らかとなった。10mMのエチレンジアミンのジクロロメタン溶液にセンサー膜部位を5分浸漬後、再度遷移金属のセンシングを行うと期待した電位変化が起こり、そのリサイクル使用を行えることがわかった(図1)。このリサイクルは、直径が1〜3mmの金球体電極でも同様であり(図1)、本発明の表面電位測定型センサー装置が微小電極を用いて、かつ適当な脱離過程をへることでリサイクル可能であることを実証した。
なお、物質系において無害で完全に安全なものは皆無といってよく、本発明において用いられる表面電位測定型センサー装置の材料の一部にも有毒とされるものがある可能性があり、注意が必要である。従って、製造工程、製品として用いる時の取り扱い、廃棄する際の回収方法も現在既存の技術を駆使して十分対処すべきであり、産業界における再利用の構築も大切である。
本発明の表面電位測定型センサー装置は、上述した表面電位計測用の微小電極を用いて簡便にかつ超高感度に被検体中の多成分をセンシングできるので、混合気体の分析、燃料自動車に用いる水素ガスの微量分析、地球大気の環境分析、都会の空気汚染物質の検知、室内および車内における汚染不快物質の検知、混合溶液中の物質検査、池、湖、地下水、海水の多成分微量元素の分析、ごみ処理場の汚染液体の監視、医療関連の分析、簡便なDNA鑑定、血液中物質の経時変化追跡、マイクロ流路と組み合わせた微量分析、分析研究機関のためのツールなどに適用でき、産業上幅広く利用できる。
本発明の実施態様の説明図 本発明の表面電位測定型センサー装置の見取図 本発明で用いるナノセンサーの一例 本発明で用いるナノセンサーの一例 本発明で用いるナノセンサーの一例 本発明で用いる配線網部位の説明図 本発明で用いる配線網部位の説明図 ナノセンサーのX線光電子分光スペクトルにおける窒素1sのbinding energy変化図 実施例2におけるOpen Circuit Potential測定結果 実施例3におけるOpen Circuit Potential測定結果 実施例4におけるOpen Circuit Potential測定結果 実施例5におけるOpen Circuit Potential測定結果 実施例におけるOpen Circuit Potential測定結果

Claims (6)

  1. 参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、次の化学式
    で表わされるビピリジン誘導体であることを特徴とする表面電位測定型センサー装置。
  2. 参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、ジアミドピリジン誘導体であることを特徴とする表面電位測定型センサー装置。
  3. センサー膜部位の金属表面に形成させたナノセンサーが、一種類もしくは複数種のホスト分子からなることを特徴とする請求項1又は2に記載した表面電位測定型センサー装置。
  4. 参照電極部位として、種類の異なる2つ以上の参照電極部位を用いる請求項1又は2に記載した表面電位測定型センサー装置。
  5. 前記ナノセンサーのホスト分子を、センシング後に再生処理をすることを特徴とする請求項1又は2に記載した表面電位測定型センサー装置。
  6. センサー膜部位の平均面積が、1nm2〜1cm2であり、膜厚が1nm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載した表面電位測定型センサー装置。
JP2004237173A 2004-08-17 2004-08-17 表面電位測定型センサー装置 Expired - Fee Related JP4604176B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004237173A JP4604176B2 (ja) 2004-08-17 2004-08-17 表面電位測定型センサー装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004237173A JP4604176B2 (ja) 2004-08-17 2004-08-17 表面電位測定型センサー装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006058020A JP2006058020A (ja) 2006-03-02
JP4604176B2 true JP4604176B2 (ja) 2010-12-22

Family

ID=36105617

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004237173A Expired - Fee Related JP4604176B2 (ja) 2004-08-17 2004-08-17 表面電位測定型センサー装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4604176B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4936536B2 (ja) * 2006-07-13 2012-05-23 国立大学法人富山大学 定量・定性分析方法
JP4945279B2 (ja) * 2007-03-23 2012-06-06 株式会社日立製作所 Dna分析方法および分析装置
US8648605B2 (en) 2007-09-28 2014-02-11 Hitachi Chemical Company, Ltd. Sensor, sensor system, portable sensor system, method of analyzing metal ions, mounting substrate, method of analyzing plating preventing chemical species, method of analyzing produced compound, and method of analyzing monovalent copper chemical species
JP2017044674A (ja) * 2015-08-28 2017-03-02 国立大学法人 東京大学 電極、センサー、流体デバイスおよび電極の製造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002031617A (ja) * 2000-07-13 2002-01-31 Matsushita Electric Ind Co Ltd 細胞外記録用一体化複合電極
JP2002514305A (ja) * 1997-05-14 2002-05-14 キーンセンス・インコーポレーテッド 分子ワイヤ注入センサ
JP2003021636A (ja) * 2001-07-06 2003-01-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 表面形状が変化するセンサ
JP2004117073A (ja) * 2002-09-24 2004-04-15 Univ Waseda 半導体センシングデバイスおよびその製造方法と、該デバイスを有してなるセンサ
JP2005127998A (ja) * 2003-09-30 2005-05-19 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 分子検出ナノセンサー

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09138213A (ja) * 1995-11-15 1997-05-27 Sangi Co Ltd 免疫センサ

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002514305A (ja) * 1997-05-14 2002-05-14 キーンセンス・インコーポレーテッド 分子ワイヤ注入センサ
JP2002031617A (ja) * 2000-07-13 2002-01-31 Matsushita Electric Ind Co Ltd 細胞外記録用一体化複合電極
JP2003021636A (ja) * 2001-07-06 2003-01-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 表面形状が変化するセンサ
JP2004117073A (ja) * 2002-09-24 2004-04-15 Univ Waseda 半導体センシングデバイスおよびその製造方法と、該デバイスを有してなるセンサ
JP2005127998A (ja) * 2003-09-30 2005-05-19 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 分子検出ナノセンサー

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006058020A (ja) 2006-03-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Beduk et al. One-step electrosynthesized molecularly imprinted polymer on laser scribed graphene bisphenol a sensor
Penner Chemical sensing with nanowires
Hwang et al. Tetrahydrocannabinol detection using semiconductor-enriched single-walled carbon nanotube chemiresistors
Shaikh et al. Electrochemical immunosensor utilizing electrodeposited Au nanocrystals and dielectrophoretically trapped PS/Ag/ab-HSA nanoprobes for detection of microalbuminuria at point of care
Taheri et al. Dual-template rectangular nanotube molecularly imprinted polypyrrole for label-free impedimetric sensing of AFP and CEA as lung cancer biomarkers
Wen et al. Ultrathin Pd nanowire as a highly active electrode material for sensitive and selective detection of ascorbic acid
Kashefi-Kheyrabadi et al. A MoS2@ Ti3C2Tx MXene hybrid-based electrochemical aptasensor (MEA) for sensitive and rapid detection of Thyroxine
EP3334652A1 (en) Electrodes, and methods of use in detecting explosives and other volatile materials
Hao et al. Modulating the linker immobilization density on aptameric graphene field effect transistors using an electric field
JP2010520476A (ja) センサー
CN102850795B (zh) 一种二茂铁接枝聚乙烯亚胺-石墨烯复合材料的制备方法
Tarahomi et al. A novel disposable sensor based on gold digital versatile disc chip modified with graphene oxide decorated with Ag nanoparticles/β-cyclodextrin for voltammetric measurement of naproxen
CN107085022B (zh) 3-硝基酪氨酸的分子印迹电化学传感器的制备及应用
Chen et al. Silver nanowires on coffee filter as dual-sensing functionality for efficient and low-cost SERS substrate and electrochemical detection
Mishra et al. Electrochemical sensor for rapid detection of fentanyl using laser-induced porous carbon-electrodes
Hua et al. A sensitive and selective electroanalysis strategy for histidine using the wettable well electrodes modified with graphene quantum dot-scaffolded melamine and copper nanocomposites
Yuan et al. Layered titanate nanosheets as an enhanced sensing platform for ultrasensitive stripping voltammetric detection of mercury (II)
Kubáň et al. CE of inorganic species–A review of methodological advancements over 2009–2010
EP1574854A1 (en) Immobilizing chemical or biological sensing molecules on semi-conducting nanowires
Yan et al. Development of biosensors based on the one-dimensional semiconductor nanomaterials
Ouedraogo et al. Laser-induced graphene electrodes on polyimide membranes modified with gold nanoparticles for the simultaneous detection of dopamine and uric acid in human serum
Zhang et al. Individually addressable microelectrode arrays fabricated with gold-coated pencil graphite particles for multiplexed and high sensitive impedance immunoassays
Mao et al. Ultrasensitive and highly reusable electrochemical sensor with ion imprinted nanobiochar
Samanman et al. Characterization and application of self-assembled layer by layer gold nanoparticles for highly sensitive label-free capacitive immunosensing
Uygun et al. Fullerene based sensor and biosensor technologies

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090811

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091222

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100323

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100524

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100907

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100908

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131015

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131015

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees