JP4604176B2 - 表面電位測定型センサー装置 - Google Patents
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Description
分子類を検知するため、電界効果型トランジスター、振動型コンデンサー、水晶振動子、表面プラズモン、走査型プローブ、発光消光現象を駆使したセンサーの作製が行われているが、電界効果型トランジスター、振動型コンデンサーを用いたセンサーは測定において、電流を感知しており、センシング感度を上げるための素子微細化には限界がある。
水晶振動子に関しては、水晶の微細化に難がある。また、表面プラズモン共鳴法を用いたセンサーチップが知られ、(特許文献1参照)、走査型プローブ、発光消光現象を用いたものも知られているが、光学系が必須であり複雑な形態となる。一般的に、現在応用されている分子センサーは、システム全体が複雑であり、感度向上や素子化において問題をかかえている。このことは、多大なエネルギー、コストを必要とする製品に即つながり、問題がある。
また、ビピリジンをセンシングユニットに用い、結合ユニットの末端にチオール基を有する化合物を用いたナノセンサーは、本発明者らによって、既に出願されている。(特許文献2)
本発明は、参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、次の化学式
また、本発明は、参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、ジアミドピリジン誘導体であることを特徴とする表面電位測定型センサー装置を提供する。
また、本発明では、センサー膜部位の金属表面に形成させたナノセンサーが、一種類もしくは複数種のホスト分子からなることを特徴とすることができる。
また、本発明では、参照電極部位として、種類の異なる2つ以上の参照電極を用いることができる。
さらに、前記ナノセンサーのホスト分子を、センシング後に再生処理をすることができ、リサイクルすることができる。
また、本発明では、前記ナノセンサーのホストを形成する分子のすべてもしくは一部が、化学的外来刺激物質であるターゲット分子を捕捉するための官能基及び又はDNA配列を有することができる。
さらに、本発明では、センサー膜部位の平均面積を、1nm2〜1cm2 とし、膜厚を1〜10μmとすることができる。
本発明の表面電位測定型センサー装置を作製するためには以下の基本構造が必須である。すなわち、センサー素子の構成は、チップ上の参照電極(Reference electrode、すなわち参照電極部位)とナノセンサーを配列させたセンサー電極(Sensing electrode、すなわちセンサー膜部位)および、それらをつなぐ配線網部位からなる(図1参照)。参照電極部位は検査対象に対して不活性な面で構成されており、電位測定における基準となる重要な部分である。センサー膜部位は検査対象に活性で、検査対象を取り込むもしくはそれと反応するナノセンサーを配列させた部位であり、表面電位変化を誘発し、電位を直接検知するための表面電位測定型センサー装置の心臓部である。電極に直接接合する配線網部位は各表面の電位をモニターするためのもので、配線自体は検査対象に不活性もしくは接触しないように配線する。
本発明の表面電位測定型センサー装置は、参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位を用いるが、通常は、3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部(Integrated Sensing electrode)で検知し、表面状態変化を、ホスト分子のターゲット分子の取り込みもしくはそれとの反応により増幅し、誘起される表面電位により直接表示することでセンシングを行うものである。
そのため、検査対象(ターゲット分子)である気体、ガス、気相浮遊物、イオン、遷移金属イオン、無機物や、有機低分子および有機高分子、公害物質、汚染物質、糖、核酸塩基、核酸オリゴマー、DNA、RNA、酵素、たんぱく質、バクテリア、ウィルス、抗原抗体物質、細胞、および生態系の物質をふくむ有機系分子に対応したセンサー膜部位のホスト分子が重要である。
表面電位測定型センサー装置におけるナノセンサーの動作原理は、大きく2つに分類される。1つは、ターゲット分子のナノセンサー内のセンシングユニットへの吸着により、センサー膜部位内の双極子モーメントもしくは電気二重層もしくは電気的鏡像体に由来した表面状態が変化して、表面電位に影響を与えるものであり、2つめは、ターゲット分子とセンシングユニットとの化学反応により、表面の状態変化が誘引され、もしくは反応による副生成物が発生し表面の状態変化を引き起こすものである。基本原理としていわゆるホスト−ゲスト化学および化学反応に基づく、これらの相互作用における分子選択、分子反応設計、配列技術が重要であり、表面において先述の物理的、化学的変化により、表面電位変化を誘発することがその機構の根幹をなしている。
本発明の表面電位測定型センサー装置は、通常は、参照電極部位、センサー膜部位、配線網部位の3要素部位を、シリコン等の基板上に、微小集積化して用いる(図2参照)。電位測定のため電極表面の面積や形に制約はなく、多彩なデバイス設計が可能である。面積は電位に対して影響が少ないから、小さなものから大きなものまで可能であるが、集積化を鑑みるにミクロンからナノメーターのディメンジョンが好ましい。
センサー膜部位の形に関しては、三角形、四角形、多角形、円、楕円、渦巻き型、球面、柱型、剣山型、不定形2次元、3次元体とあらゆる形態をとりうる。検査対象によっては、基準となる参照電極部位に影響を与える可能性があるため、本発明では、1つの参照電極部位でもよいが、種類の異なる2つ以上の参照電極部位を配置させ、測定環境もしくは配線の断線、リークの不測の事態に応じて、切り替えて使用しセンシングに用いる形態が好ましい。センサー膜部位は同一のホスト分子、もしくは異種のホスト分子からなる。前者の場合は、同一検知対象の位置存在率のモニターとして使用できる。後者の場合、複数の検知対象に対する目的に応じたオーダーメイドのセンサーを提供できる。
これらの集積センサー部が配線を通して、被覆導線に接続され、最終的には各電極電位をモニターリングする一般のコンピューターシステムを含む測定用コントローラーにつながる形態をとる。
本発明の表面電位測定型センサー装置において、センサー膜部位に用いるナノセンサーは、ターゲット分子と相互作用を有する部位(センシングユニット)と基板に接続するための結合部位(結合ユニット)を有する構造をとることができる。すなわち、センシングユニットは、ナノセンサー内に存在する部分で、ターゲット分子と相互作用できるホスト分子を有し、その反応性や機能を制御するための官能基、および結合ユニットと接合するための官能基から成る。
ターゲット分子と相互作用を有する部位(センシングユニット)は、次の化学式
本発明のナノセンサーの基本的な概念を、図3に示す。
ナノセンサーは、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと基板表面に結合できる結合部位からなり、電極金属に結合している。具体的なナノセンサーの例を図4に示した。図4において、まずセンシングユニットにあるホスト分子であるビピリジンは、ターゲット分子である遷移金属錯体を捕捉したとき、シグマ結合により結合しているため、自由回転していた2つのピリジン環はシス位に固定されるとともに、ターゲット分子捕捉による電子状態の変化により、ナノセンサーに電位変化が生じる。参照電極との電位差変化を検出することにより、ターゲット分子の存在を検知できる。また、プロトンを捕捉した場合はビピリジンのシス位固定は強くなされないが、類似した電子状態の変化により、ナノセンサーに電位変化が生じる。さらに、遷移金属と錯化した分子系は、DNA中のグアニン部分と特異的な相互作用を有するため、DNAの特異塩基配列のセンシングにも使用できる。
次の例として、図5においては、DNAの構成物質のひとつであるチミン誘導体をターゲット分子として、多点水素結合を利用して捕捉できるジアミドピリジン誘導体を用いたナノセンサーの例を示した。この分子系は特定の核酸塩基誘導体を捕捉するのに適している。このように、ナノセンサーのセンシングユニットを系統的に変化させることで多様な検知対象に対する対応が可能となる。
参照電極部位の表面は、基本的に検査対象に対して、不活性であることが大切で、そのため表面としては、貴金属(金、銀、銅、プラチナ、パラジウム)、グラファイト、不定形炭素材料、有機薄膜、有機絶縁性ポリマー、シロキサンポリマー、絶縁性硝子からなる膜状物質が適している。本発明では、参照電極部位として、種類の異なる2つ以上の参照電極部位を用いることができる。集積センサー部に2つの参照電極部位がある場合、例えば、そのうちの1つを絶縁性硝子で被覆した金電極、他方を金属上に固定化したグラファイトを用いる。これに類して、2つ以上の参照電極部位を用いる場合、上記の材料を参照電極部位に被覆し、適宜選択し組み合わせることで本発明の電極システムを構築する。
ナノセンサーを用いてセンサー膜部位を作製するには、インクジェット技術を用いるのが好ましい。これにより、異種のホスト分子を有するナノセンサー群を、シリコンや貴金属等の金属基板等の基板上にその場で適宜ぬりつけることができる。
それぞれのナノセンサー用のインクジェットノズルを高速変換することで目的に応じたオーダーメイドセンサーを提供できる。ぬりつけ作業をおえたあとは、余分の分子材料を大量の可溶性純粋溶媒でいっきに洗浄することでセンサー電極膜を作製する。各センサー膜部位上に吸着させるナノセンサーは、用途に応じて1種類もしくは2種類以上の混合系を用いる。2種類以上の混合系の場合、各構成成分の比率、表面への相互作用の違いを設定することで最適のセンサー電極部位にする。また、2種類以上の混合系の場合、1種類ずつの成分を順次上塗りする形で構成させる方法もある。膜の厚みは1〜10000nmの範囲であるが、感度の向上から数ナノメートルの分子薄膜が好ましい。
参照電極(参照電極部位)、センサー電極(センサー膜部位)の電位をモニターするために各電極に対する配線は必須である。配線の方法は大きく分けて、3つある。1つは、デバイス同一表面上に配線する手法と(図6)、2つめは、配線をデバイス最表面からみて下方にもぐらせる手法である(図7)。
3つめは、電極もしくは近傍から、直接ハンダ付けにより接合する方法である。第1の手法の場合、表面に露出した配線部分および配線表面とシールド剤の界面をシールドすることが重要である。シールド剤は、有機ポリマー、レジスト材料、硝子、およびスパッタリングによる酸化無機膜が好ましい。第2の手法の場合も、シールドは必要で、配線もぐりこみの始めの部分および配線からアダプター取出し口への接続部分のシールドが必要である。形態としてデバイスチップ裏面に配線を接続するものと側面へ接続するものがある。第3の方法は、機械的もしくは手作業で配線を接合するものである。
デバイス同一表面上に配線する形態と配線をデバイス最表面からみて下方にもぐらせる形態どちらにおいても、配線数が増えた場合は、デバイスチップ中にFETトランジスターとオシレーターを導入することで配線数の削減を行う。センサー電極からのシグナルを順次、内部オシレータークロックゲート電界により自動高速スイッチング収集することで配線数の削減が行える。配線網を外部にとりだすためのワイヤー部分もここでの配線技術に入る。ワイヤーの形態は被覆導線であり、しなやかなもの剛直な素材どちらでもよい。ワイヤーを含めて、全体が鋭利な針状の構造に一体化した形状もある。この被覆導線部分で先の配線数の削減も行える。その被覆導線を計測用コントローラーおよび集積化センサー部に接続するアダプター部も重要である。各配線をセンサーチップから被覆導線へ、被覆導線途中、被覆導線から測定用コントローラーへ接続する役割を担う。特に、センサーチップと被覆導線の接合において、検査環境のなかで電気的なリークがおこらないようにシールドする技術は重要である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。本発明の技術思想の範囲内での変更及び他の態様又は実施例は、全て本発明に含まれる。
本発明で用いるナノセンサーとして、ターゲット分子と相互作用を有する部位(センシング部位)として、ホスト分子であるビピリジン誘導体を用いることが出来る。
ビピリジン誘導体の例としては、チオールを結合ユニットとした以下のものがある。
一例として上記に示したビピリジン誘導体のうち、片側のみに硫黄を有するビピリジン誘導体を用いたナノセンサーのX線光電子分光スペクトルにおける窒素1sのbinding energy変化を図8に示す。図8のスペクトルは、窒素1sの該ナノセンサー中の窒素の状態を示すものである。
図8(i)はフリーの該ナノセンサーのN1sシグナルであり、約398.5eVに位置することがわかった。
図8(ii)は、該ナノセンサーから成る分子膜にターゲット分子である遷移金属Pd錯体を相互作用させた後のスペクトルである。398.5eVのシグナル以外に約400eV付近に新たなシグナルが現れることがわかった。これはターゲット分子である遷移金属Pd錯体がビピリジン誘導体中の窒素により捕捉され、窒素の電子密度が低下したことと一致して、高binding energyにシフトしたものである。
図8(iii)はPd3d領域のXPSスペクトルであるが、約335eV付近に、センサー膜部位の基板に用いた金のシグナルが現れている。ターゲット分子である遷移金属Pd錯体をナノセンサー(ホスト分子膜)に作用させると、図8(iv)に示したように約343と338eVにPd3dに対応したシグナルが観測された。これらのピークはPdがビピリジン骨格中の窒素により捕捉されたものである。
以下の各スペクトルにおいても、測定手法に応じた対応する物理量の変化が観測されているが、ここでは割愛する。赤外線吸収スペクトルを用いて、ナノセンサーにターゲット分子である遷移金属錯体を作用させる前後において、ビピリジン骨格に対応する伸縮振動の変化がみられ、ターゲット分子である遷移金属錯体の取り込みが実証された。表面電位顕微鏡測定とそのX線光電子分光から、ナノセンサー(ピリジン誘導体分子膜)は、ターゲット分子である遷移金属錯体のとりこみにより大きな電位変化をもたらせることが判明した。さらに、吸収端近傍X線吸収微細構造の測定からナノセンサーは、ターゲット分子である遷移金属錯体の取り込みにより、その配列状態が変化することが分かった。これらの結果は、センサー膜部位において、ナノセンサーがセンサーとして作動が可能であることを示す。
その変化は約50mV前後であった。ビピリジン誘導体を吸着させていない金(111)面やターゲット分子に対して不活性な分子を吸着させたセンサー電極では大きな変化はなく、このOCP変化の現象はホスト分子の選択の重要性を示すものである。
そこで、参照電極としてAg/AgCl電極を用い、センサー膜部位として、マイカ上に厚み200nmで蒸着した1cm X 2cmの金(111)面に遷移金属が吸着したビピリジン誘導体一分子膜を用いて、硫酸カリウム0.1M水溶液中、脱離剤であるエチレンジアミンの効果を検討したところ、脱離剤の作用によりOCPがもとにもどることが明らかとなった。10mMのエチレンジアミンのジクロロメタン溶液にセンサー膜部位を5分浸漬後、再度遷移金属のセンシングを行うと期待した電位変化が起こり、そのリサイクル使用を行えることがわかった(図12)。このリサイクルは、直径が1〜3mmの金球体電極でも同様であり(図13)、本発明の表面電位測定型センサー装置が微小電極を用いて、かつ適当な脱離過程をへることでリサイクル可能であることを実証した。
Claims (6)
- 参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、次の化学式
- 参照電極部位と、一種類もしくは複数種のホスト分子がターゲット分子を認識したとき、電位変化をシグナルとして発生させるセンシングユニットと、基板上に結合させるための結合ユニットからなるナノセンサーを基板表面に吸着させたセンサー膜部位、および、電位をモニターするための配線網部位の3要素部位をシリコン基板上に複数配線集積した集積センサー部と、シグナルをコントローラーに送るための被覆導線部と、それを接続するためのアダプター部と、それらがつながる計測コントローラー部からなる表面電位測定型センサー装置であって、前記センシングユニットが、ジアミドピリジン誘導体であることを特徴とする表面電位測定型センサー装置。
- センサー膜部位の金属表面に形成させたナノセンサーが、一種類もしくは複数種のホスト分子からなることを特徴とする請求項1又は2に記載した表面電位測定型センサー装置。
- 参照電極部位として、種類の異なる2つ以上の参照電極部位を用いる請求項1又は2に記載した表面電位測定型センサー装置。
- 前記ナノセンサーのホスト分子を、センシング後に再生処理をすることを特徴とする請求項1又は2に記載した表面電位測定型センサー装置。
- センサー膜部位の平均面積が、1nm2〜1cm2であり、膜厚が1nm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかひとつに記載した表面電位測定型センサー装置。
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