JP4587366B2 - 分極反転形成方法 - Google Patents

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本発明は、強誘電体基板の所望領域を分極反転させる分極反転形成方法に関し、特に基板の狭い領域を分極反転を行うと共に、分極反転領域間の間隔を狭くすることが可能な分極反転形成方法に関する。
光通信や光計測の分野において、波長変換素子や光変調器などの光学素子が利用されている。
波長変換素子の例としては、以下の特許文献1に示すように、強誘電体LiNbOなどの電気光学効果を有する基板上に周期的な分極反転構造を形成しているものがある。
また、光変調器の例としては、以下の特許文献2に示すように、電気光学効果を有する基板上に光導波路を形成すると共に、該光導波路に係る基板の一部を分極反転させ、チャープ発生の抑制や変調強度の消光比の向上を図るものが提案されている。
特開2000−147584 特開2003−202530
このような強誘電体基板上に分極反転領域を形成する方法としては、Ti熱拡散による方法、SiOを装荷した後に熱処理する方法、プロトン交換処理と熱処理とを行う方法などがある。また、強誘電体の自発分極が電界により反転することを利用して、約20kV/mm以上の電界を印加することにより、分極反転領域を形成する方法が知られている。
特に、電界の印加による分極反転は、分極反転領域を正確に形成できると共に、形成方法が簡便であることなどの理由から、分極反転形成方法として良く利用されている。
電界を用いた分極反転形成方法としては、図1に示すように、基板1の上面及び下面に電極2,3を形成し、両電極間に電圧4を印加することにより形成する方法や、図2に示すように、基板1の上面に絶縁性のマスクパターン5を施し、電極6及び7により、シール部材8,9を介して該基板を狭持すると共に、基板1と各電極6,7との間に導電性液体を充填し、電極6,7に電圧4を印加する方法などが知られている。なお、電極6及び7の代わりにアクリル板などの絶縁材料を利用する場合には、電圧4からの給電用に、電線を導電性液体に直接接触させるよう構成される。
これらの方法により、図1の場合には、電極2のパターンに応じた分極反転領域が、また、図2の場合には、マスクパターン5が形成されていない領域に対応した分極反転領域が、各々形成される。
しかしながら、図1に示す電極パターンや図2に示す絶縁性マスクパターンによる分極反転形成方法では、各パターンの線幅や間隔の形成精度に依存して、分極反転領域の微細かつ緻密が制限される上、製造工程中にパターン形成工程と、パターン除去工程を組み込む必要があり、製造工程が複雑化するという問題があった。
本発明の目的は、上述した問題を解決し、強誘電体基板に、分極反転領域を緻密かつ精度良く微細に形成する分極反転形成方法を提供することであり、しかも、製造工程の複雑化を抑制することが可能な分極反転形成方法を提供することである。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明では、強誘電体基板と、該基板表面及び裏面に基板内部に向かって、幅が徐々に狭くなるよう構成された凹部を形成し、該基板に電界を印加することにより、該凹部を形成した領域の基板の少なくとも一部を分極反転する分極反転形成方法において、該基板表面の凹部と該基板裏面の凹部との配置が、各凹部が形成する分極反転領域が異なるように設定されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明では、請求項1に記載の分極反転形成方法において、該基板の表面に凹部形成し分極反転を形成した後、該凹部を形成した基板表面を略平面に加工し、該基板表面の凹部と該基板裏面の凹部との配置が、各凹部が形成する分極反転領域が異なるように、該基板裏面に新たな凹部を形成し、該基板に電界を印加することにより、該凹部を形成した領域の基板の少なくとも一部を分極反転することを特徴とする。
また、請求項に係る発明では、請求項1又は2に記載の分極反転形成方法において、該電界を印加する際に、0を含む弱電界から所定の電界の強さまで、徐々に電界の強さを大きくすることを特徴とする。
また、請求項に係る発明では、請求項1乃至のいずれかに記載の分極反転形成方法において、該電界の印加が、液体電極を介して行われることを特徴とする。
請求項1に係る発明により、凹部の形状が、基板内部に向かって該凹部の幅が徐々に狭くなるよう構成されているため、凹部内の位置により基板の厚みが異なり、凹部の最深部を中心に凹部の入口に向かって徐々に基板の厚みが厚くなるよう構成されている。この構造により、該凹部の最深部を中心とすると共に該凹部の入口の幅の範囲内で、分極反転領域を、基板に印加する電界の強さに応じて、任意に形成することが可能となる。
つまり、凹部の入口の形状より幅の狭い分極反転領域を形成することが可能となる。
しかも、基板表面の凹部が形成する分極反転領域と、基板裏面の凹部が形成する分極反転領域とが基板内の異なる位置に形成されるため、複数の分極反転領域を緻密に配置・形成することが可能となる。
請求項2に係る発明により、基板表面に凹部を利用して基板の分極反転領域を形成した後、該凹部を形成した該基板表面を略平面に加工し、該基板表面の凹部と該基板裏面の凹部との配置が、各凹部が形成する分極反転領域が異なるように、該基板裏面に新たな凹部を形成して、新たな分極反転領域を形成するため、複数の分極反転領域を緻密に配置・形成することが可能となる。
請求項に係る発明により、分極反転形成時に、基板に印加する電界を、0を含む弱電界から所定の電界の強さまで、徐々に大きくなるように制御するため、該凹部の最深部を中心とすると共に該凹部の入口の幅の範囲内で、分極反転領域を、基板に印加する所定の電界の強さに応じて、任意に調整することが可能となる。
請求項に係る発明により、基板への電界の印加を液体電極を介して行うため、基板表面又は裏面に凹部を形成した場合でも、効率的に基板への電界を印加することが可能となる。
以下、本発明を好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の特徴は、強誘電体基板の表面又は裏面に凹部を形成し、該基板に電界を印加することにより、該凹部を形成した領域の基板の少なくとも一部を分極反転する分極反転形成方法において、該凹部の形状が、基板内部に向かって該凹部の幅が徐々に狭くなるよう構成されていることである。
具体的には、図3(a)に示すように、基板1の裏面に凹部10を形成し、該凹部が基板の内部に向かって凹部10の幅が徐々に狭くなるように構成されている。図3(a)は、強誘電体基板1の断面図を示す。
図3(a)のように加工した強誘電体基板1を、図2に示すように、電極6及び7により、シール部材8,9を介して該基板を狭持すると共に、基板1と各電極6,7との間に導電性液体を充填し、電極6,7に電圧4を印加する。
この際には、図2のように、絶縁性マスクパターンを基板1の表面又は裏面に形成する必要は無い。ただし、本発明は、必要に応じて、絶縁性マスクパターンを付加することを、排除するものではない。
基板1に電圧を印加する際には、凹部10の最深部が最も基板の厚みが薄いため、電界の強さが最も大きく、凹部の入口に向かうほど電界の強さが弱くなる。
このため、印加電圧値を適切に設定することにより、凹部の最深部を中心とすると共に該凹部の入口の幅の範囲内で、分極反転領域を、任意に形成することが可能となる。
具体的には、図3(b)のように電界の強さが弱い場合(印加電圧が低い場合)には、凹部の最深部付近に分極反転領域11が形成され、電界の強さをより大きくする場合(印加電圧が高い場合)には、該凹部の最深部を中心とする周辺領域12まで分極反転を形成することが可能となる。
したがって、分極反転形成時の基板に印加する電界の強さは、最初は0を含む弱電界を印加し、徐々に電界の強さを高め所定の電界の強さまで変化させることにより、凹部の最深部を中心とすると共に該凹部の入口の幅の範囲内で、分極反転領域を、基板に印加する所定の電界の強さに応じて、任意に調整することが可能となる。
基板1への凹部の形成方法としては、サンドブラストによる加工や、グラインダーを利用した機械的切削により形成することができる。また、ドライエッチングなどの化学的処理により形成することも可能である。サンドブラストやドライエッチングなどの際には、凹部を形成する領域以外をレジスト膜で被覆し、加工を行う。
また、基板1に電界を印加する際には、予め、基板1の凹部から気泡を十分排除することが必要であり、必要に応じて基板や導電性液体に超音波を印加し、十分な脱泡処理を行うことが好ましい。
次に、分極反転領域を緻密かつ微細に形成する方法について説明する。
図4は、分極反転領域を形成するプロセスを説明する図である。
図4(a)のように、強誘電体基板1の裏面に凹部20を形成し、その後、該基板1に図2に示すように、電極6及び7により、シール部材8,9を介して該基板を狭持すると共に、基板1と各電極6,7との間に導電性液体を充填し、電極6,7に電圧4を印加するすることにより、図4(b)に示すように各凹部の最深部を含む各領域に分極反転領域21を形成する。
分極反転領域を形成した図4(b)の基板の裏面を、切削・研磨し、凹部を消失させる。図4(c)は、該凹部が除かれた裏面22を示す。
凹部を消失させる方法としては、切削・研磨に限らず、該凹部に基板1と電気抵抗率がほぼ等しい材料を充填することで、代替することも可能である。
次に、図4(d)に示すように、再度、基板裏面に凹部23を形成し、電界を印加することで、図4(e)に示す新たな分極反転領域24を形成する。
最後に、基板裏面を切削・研磨し、凹部23を消失させる。図4(f)は、該凹部が除かれた裏面25を示す。
以上の製造工程により、図4(f)のように、基板1には、最初の分極反転領域21とその後の分極反転領域24が合わさって形成されるため、分極反転領域を緻密かつ微細に形成することが可能となる。
なお、2回目以降の凹部の形成は、基板表面1を利用することも可能である。
次に、分極反転領域を緻密かつ微細に形成する他の方法について説明する。
図5(a)に示すように、強誘電体基板1の表面と裏面に凹部30,31を形成する。
該凹部を形成した基板1に図2に示すように、電極6及び7により、シール部材8,9を介して該基板を狭持すると共に、基板1と各電極6,7との間に導電性液体を充填し、電極6,7に電圧4を印加することにより、図5(b)に示すような、各凹部の最深部を含む領域に、複数の分極反転領域32,33を形成することが可能となる。
その後、基板1の表面及び裏面を、切削・研磨することにより、図5(c)に示すような、複数の分極反転領域を緻密に配置した基板を得ることができる。基板の表面34及び裏面35には、分極反転形成時に利用した凹部が除かれている。
なお、本発明に係る凹部の形状としては、図3〜5に示したように三角の断面形状を有するものに限定されるものではなく、基板内部に向かって該凹部の幅が徐々に狭くなるよう構成されるものであれば、楕円形などの種々の断面形状を採用することが可能である。
本発明は、以上説明したものに限られるものではなく、必要に応じて当該技術分野における公知の技術を適用可能であることは、言うまでも無い。
以上、説明したように、本発明によれば、強誘電体基板に、分極反転領域を緻密かつ精度良く微細に形成する分極反転形成方法を提供することであり、しかも、製造工程の複雑化を抑制することが可能な分極反転形成方法を提供することが可能となる。
また、本発明の分極反転形成方法は、凹部を利用して分極反転を形成するため、基板の種類を選ばず、また、絶縁性マスクなども不要であるため、極めて工業的利用価値が高いものである。
従来の電極パターンを用いた分極反転方法を示す図である。 従来の液体電極法を示す図である。 本発明の分極反転形成方法の例を示す図であり、(a)は分極反転前の基板の構造を示す断面図、(b)は分極反転後の状態を示す図である。 本発明の分極反転形成方法で緻密かつ微細な分極反転領域を形成する方法を示す図である。 本発明の分極反転形成方法で緻密かつ微細な分極反転領域を形成する他の方法を示す図である。
符号の説明
1 強誘電体基板
2 パターン電極
3 裏面電極
4 印加電圧
5 絶縁性マスクパターン
6,7 電極
8,9 シール部材
10,20,23,30,31 凹部
11,21,24,32,33 分極反転領域

Claims (4)

  1. 強誘電体基板と、該基板表面及び裏面に基板内部に向かって、幅が徐々に狭くなるよう構成された凹部を形成し、該基板に電界を印加することにより、該凹部を形成した領域の基板の少なくとも一部を分極反転する分極反転形成方法において
    基板表面の凹部と該基板裏面の凹部との配置が、各凹部が形成する分極反転領域が異なるように設定されていることを特徴とする分極反転形成方法。
  2. 請求項1に記載の分極反転形成方法において、該基板の表面に凹部形成し分極反転を形成した後、該凹部を形成した該基板表面を略平面に加工し、該基板表面の凹部と該基板裏面の凹部との配置が、各凹部が形成する分極反転領域が異なるように、該基板裏面に新たな凹部を形成し、該基板に電界を印加することにより、該凹部を形成した領域の基板の少なくとも一部を分極反転することを特徴とする分極反転形成方法。
  3. 請求項1又は2に記載の分極反転形成方法において、該電界を印加する際に、0を含む弱電界から所定の電界の強さまで、徐々に電界の強さを大きくすることを特徴とする分極反転形成方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の分極反転形成方法において、該電界の印加が、液体電極を介して行われることを特徴とする分極反転形成方法。
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