しかしながら、上記特開平8−292413号公報に記載された液晶装置では、液晶層と半透過反射板との間に透明基板が介在するため、二重映りや表示のにじみなどが発生してしまうという問題点がある。
更に、近年の携帯機器やOA機器の発展に伴って液晶表示のカラー化が要求されるようになっており、反射型液晶装置を用いるような機器においてもカラー化が必要な場合が多い。ところが、上記公報に記載されている液晶装置とカラーフィルタを組み合わせた方法では、半透過反射板を液晶パネルの後方に配置しているため、液晶層やカラーフィルタと半透過反射板との間に液晶パネルの厚い透明基板が介在し、視差によって二重映りや表示のにじみなどが発生してしまい、十分な発色を得ることができないという問題点がある。
この問題を解決するために、特開平9−258219号公報では、液晶層と接するように反射板を配置する反射型カラー液晶装置が提案されている。しかしながら、この液晶装置では、周囲が暗くなると表示を認識することができない。
他方、特開平7−318929号公報では、液晶セルの内面に半透過反射膜を兼ねる画素電極を設けた半透過反射型の液晶装置が提案されている。また金属膜からなる半透過反射膜上に、ITO(Indium Tin Oxide)膜からなる透明画素電極を絶縁膜を介して重ねた構成を開示している。しかしながら、この液晶装置では、半透過反射膜を兼ねる画素電極に対して或いは透明画素電極が重ねられる半透過反射膜に対して、孔欠陥、凹入欠陥等の微細な欠陥部や微細な開口部を多数設ける必要が有るため、装置構成が複雑化すると共にその製造において特殊な工程が付加的に必要となり、信頼性のある画素電極或いは半透過反射膜を製造するのが困難である。
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、反射型表示と透過型表示とを切換え可能な液晶装置において、比較的簡単な装置構成を用いて、視差による二重映りや表示のにじみなどが発生せず、反射型表示時と透過型表示時の両方で高品位の画像表示が可能であると同時に装置信頼性が高い半透過反射型の液晶装置及びその液晶装置を用いた電子機器を提供することを課題とする。
透明な一対の第1及び第2基板と、該第1及び第2基板間に挟持された液晶層と、前記第2基板の前記液晶層側の面上に形成されており、前記第2基板に垂直な方向から平面的に見て相互に夫々分断されている複数の反射層と、前記反射層上に絶縁膜を介して形成され、前記反射層を完全に覆って前記反射層よりも一回り大きく形成された透明電極と、前記第2基板の前記液晶層と反対側に配置された照明装置と、前記第1基板の前記液晶層側の面上に形成された透明な対向電極とを備え、前記透明電極のうち前記反射層上に絶縁膜を介して形成された部分は、これと前記対向電極との間に印加される縦電界で駆動される前記液晶層の部分によって外光を用いての反射型表示が行われるように、画像表示領域を構成する各画素内で前記反射型表示用の画素電極として設けられており、前記透明電極のうち前記反射層よりも一回り大きく形成された部分は、これと前記対向電極との間に印加される縦電界で駆動される前記液晶層の部分によって前記照明装置からの光源光を用いて透過型表示が行われるように、前記各画素内で前記透過型表示用の画素電極として設けられていることを特徴とする。
本発明の液晶装置によれば、透明電極のうち反射層上に絶縁膜を介して形成された部分は、各画素内に反射型表示用の画素電極として機能する部分を有しており、反射型表示時には、反射層により、第1基板側から入射した外光を液晶層側に反射する。この際、反射層は、第2基板の液晶層側に配置されているため、該反射層と液晶層との間に間隙が殆どなく、そのため視差に起因する表示の二重映りや表示のにじみが発生しない。他方、透明電極のうち反射層よりも一回り大きく形成された部分は、各画素内に透過型表示用の画素電極として機能する部分を有しており、透過型表示時には、照明装置から発せられ、第2基板側から入射した光源光を、反射層の間隙及び透明電極を介して液晶層側に透過する。従って、暗所では光源光を用いて明るい表示が可能となる。
本発明の液晶装置では特に、反射層において、その上に透明電極が絶縁膜を介して形成された反射領域(非透過領域)で反射された外光は、該反射領域にある透明電極部分によって駆動される液晶部分を通過する。即ち、該反射領域にある透明電極部分により縦電界で駆動する液晶部分を用いて反射型表示を行える。他方、照明装置から発せられ、透明電極のうち反射層よりも一回り大きく形成された透過領域(非反射領域)を透過する光源光は、当該反射層よりも一回り大きく形成された透明電極部分を通過し、該透過領域にある透明電極部分によって駆動される液晶部分を通過する。即ち、該透過領域にある透明電極部分により縦電界で駆動する液晶部分を用いて透過型表示を行える。このように、反射層上に絶縁膜を介して形成された透明電極部分を用いて反射型表示時の液晶駆動を行い、反射層よりも一回り大きく形成された透明電極部分を用いて透過型表示時の液晶駆動を行うので、いずれの型の表示時にも縦電界で良好に液晶駆動を行うことが可能となり、各ドット内又は各画素内において液晶の配向方向が均一となり、配向方向の乱れに起因する表示品質の劣化を防止できる。尚、反射層において、その上に透明電極が形成されていない部分は、表示に寄与しない(即ち、コントラスト比を低下させる)ため、基本的に不要であり、限られた画像表示領域の有効利用の観点からも、この反射層において、その上に透明電極が形成されていない部分は、設けないように平面レイアウトするのが好ましい。
更に本発明の液晶装置では、前述した従来例の如く半透過反射膜を兼ねる画素電極に対して或いは透明画素電極が重ねられる半透過反射膜に対して、孔欠陥、凹入欠陥等の微細な欠陥部や微細な開口部を多数設ける必要がないため、装置構成が複雑化することはなく、また、その製造において特殊な工程が付加的に必要となることもない。この結果、信頼性のある反射層上に透明電極が積層された積層構造を構築することができ、最終的には、比較的簡単な装置構成を用いて、反射型表示時と透過型表示時の両方で高品位の画像表示が可能であると同時に装置信頼性が高い液晶装置が実現される。
このような反射層の材料としては、Al(アルミニウム)が主成分の金属が用いられるが、Cr(クロム)やAg(銀)などの可視光領域の外光を反射させることのできる金属であれば、その材料は特に限定されるものではない。
本発明の液晶装置の駆動方式としては、パッシブマトリクス駆動方式、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式、TFD(Thin Film Diode)アクティブマトリクス駆動方式、セグメント駆動方式等の公知の各種駆動方式を採用可能である。この際、反射型表示と透過型表示とでは液晶セルの電圧−反射率(透過率)特性が異なる場合が多いので、反射型表示時と透過型表示時とで駆動電圧を相異ならせ、各々で最適化した方が好ましい。また、第1基板上には、駆動方式に応じて適宜、複数のストライプ状やセグメント状の透明電極が形成されたり、第1基板のほぼ全面に透明電極が形成されたりする。これにより、第2基板側に設けられた透明電極のうち反射層上に絶縁膜を介して形成された部分と第1基板側の対向電極との間に印加される縦電界によって、反射型表示が行える。或いは、第2基板側に設けられた透明電極のうち反射層よりも一回り大きく形成された部分と対向電極との間に印加される縦電界によって、透過型表示が行える。但し、第1電極或いは、第1基板上に対向電極を設けることなく、第2基板上の透明電極間における基板に平行な横電界で駆動することも可能である。更に、液晶装置には、表示方式に応じて適宜、第1基板や第2基板の液晶層と反対側に、偏光板や位相差板などが夫々配置される。
本発明の液晶装置の一態様では、前記第1及び第2基板の少なくとも一方上に、前記複数の透明電極の夫々に対応して配置されたR(赤)、G(緑)及びB(青)の3色からなる着色領域を有するカラーフィルタを更に備えており、前記カラーフィルタの各着色領域は、前記透明電極のうち前記反射層上に絶縁膜を介して形成された部分に対向する領域における最低透過率と、前記透明電極のうち前記反射層よりも一回り大きく形成された部分に対向する領域における最低透過率とが夫々、25%〜50%となるように設定されている。この態様によれば、反射型表示を行う場合に、表示の明るさを低下させないように構成することができ、透過型表示を行なう場合にも表示の明るさを確保することができる。本発明の液晶装置の他の態様では、前記透明電極は、その面積が前記反射層の面積よりも大きくなるように形成されている。
この態様によれば、平面的に見て透明電極が反射層よりも大きいので、反射型表示に寄与する反射層上に絶縁膜を介して形成された透明電極部分や透過型表示に寄与する反射層よりも一回り大きく形成された透明電極部分が画像表示領域に占める割合を効率よく高めることができると同時に、これらどちらの型の表示にも寄与しないその上に透過電極が形成されていない反射層部分が画像表示領域に占める割合を削減できる。
例えば、平面的に見て、大きな透明電極の片側に寄せて小さな反射層を形成することも可能となる。このように構成すれば、反射層上に絶縁膜を介して形成された透明電極部分によって、反射型表示時に、当該反射層により反射される外光が通過する液晶部分を縦電界により駆動できる。また、反射層よりも一回り大きく形成された透明電極部分によって、透過型表示時に、当該透明電極部分を透過する光源光が通過する液晶部分を縦電界により駆動できる。
また、平面的に見て透明電極を反射層よりも一回り大きく形成すれば、反射層上に絶縁膜を介して形成された透明電極部分によって、反射型表示時に、当該反射層により反射される外光が通過する液晶部分を縦電界により駆動できる。また、反射層よりも一回り大きく形成された透明電極部分によって、透過型表示時に、当該透明電極部分を透過する光源光が通過する液晶部分を縦電界により駆動できる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記透明電極及び前記反射層は、ストライプ状に形成されている。
この態様によれば、平面的に見て、ストライプ状の反射層上に絶縁膜を介して形成されたストライプ状の透明電極部分により反射型表示を行うことができ、ストライプ状の反射層の片側又は両側に一回り大きく形成されたストライプ状の透明電極部分により透過型表示を行うことができる。従って、例えば単純マトリクス駆動方式の液晶装置において、比較的簡単な構成を用いて反射型表示及び透過型表示を高品位で行える。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記透明電極及び前記反射層は、島状に形成されている。
この態様によれば、平面的に見て、島状の反射層上に中央又は片側に寄って、形成された島状の透明電極部分により反射型表示を行うことができ、島状の反射層よりも一回り大きく形成された透明電極部分により透過型表示を行うことができる。従って、例えばアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置において、比較的簡単な構成を用いて反射型表示及び透過型表示を高品位で行える。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記透明電極は、前記反射層上に直接形成されている。
この態様によれば、透明電極は、反射層上に直接形成されているので、両者は電気的に接続される。このため、反射層をAl等の導電性材料から構成することにより、ストライプ状や島状の各反射層を対応する透明電極の冗長構造として機能させることができ、透明電極の電極としての低抵抗化或いはその配線の低抵抗化が可能となる。他方、反射層を絶縁性材料から構成すれば、透明電極を他の層から絶縁する機能や透明電極を保護する機能をも等外反射層に持たせることができ、積層構造全体の単純化が可能となる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記透明電極は、絶縁膜、カラーフィルタ及び保護膜のうち少なくとも一つを介して前記反射層上に形成されている。
この態様によれば、例えば、第2基板に近い側から順に反射層、カラーフィルタ、保護膜及び透明電極の順番で、又は反射層、絶縁膜、カラーフィルタ、保護膜及び透明電極の順番で積層される。或いは、第2基板に近い側から順に反射層、絶縁膜及び透明電極の順番で積層され、この場合には、第1基板の液晶層側の面上に、カラーフィルタ及び保護膜を形成すればよい。
特に、反射層上にカラーフィルタを形成すれば、外光による反射型カラー表示と照明装置を利用した透過型カラー表示を行うことができる。尚、カラーフィルタは、380nm以上780nm以下の波長範囲のすべての光に対して25%以上の透過率を有しているのが好ましい。このようにすることで、明るい反射型カラー表示と透過型カラー表示を実現できる。
また通常、反射層にはAlが主成分の金属が用いられるが、Al金属は耐溶剤性が弱く非常に扱いにくく、また傷がつきやすい。そこで、Al金属などの反射層における反射面を保護膜或いは絶縁膜で覆うことにより、Alが直接ITO膜等の透明電極形成用の現像液やカラーフィルタ形成用の現像液に触れないように構成するとよい。このような保護膜には、アクリル系の透明樹脂や酸化ケイ素などの材料を用いることができる。
更に、透明電極を絶縁膜上に形成すれば、透明電極とその下地層とを確実に絶縁できる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記透明電極は、絶縁膜を介して前記反射層上に形成されており、該絶縁膜は、前記反射層の表面部分が酸化されてなる。
この態様によれば、非常に薄く且つ絶縁性の高い絶縁膜が得られる。この場合においては、反射層としてアルミニウムを用いると好ましい。アルミニウムは酸化してもその反射率を維持できるからである。尚、このように絶縁膜を酸化する際には、反射層を陽極酸化してしてもよいし、熱酸化してよい。
この態様では、前記絶縁膜は、相異なる2種類以上の絶縁膜から積層形成されてもよい。
このように構成すれば、絶縁膜の絶縁性を高めることができる。尚、一方の絶縁膜としてアルミニウムの酸化物等を用い、他方の絶縁膜としてSiO2(酸化シリコン)膜や有機物質によるオーバーコート膜等を用いることができる。SiO2膜を形成する際には、蒸着、スパッタやCVD法により形成すればよく、有機膜を形成する際には、スピンコートなどにより形成すればよい。
本発明の液晶装置の他の態様では、非駆動時が暗(黒)状態である。
この態様によれば、非駆動時が暗状態であるので、透過型表示時に液晶が駆動されない画素間またはドット間からの光漏れを抑えることができ、よりコントラストが高い透過型表示を得ることができる。また、反射型表示時に、画素間やドット間からの表示に不要な反射光を抑えることができるので、よりコントラストが高い表示を得ることができる。このように一般にブラックマトリクス或いはブラックマスクと称される遮光膜を反射電極の間隙に対向する位置に設けることなく、透過型表示時及び反射型表示時におけるコントラストを向上させることが可能となる。加えて、このような遮光膜を設けることにより反射型表示時の明るさが低下する事態を未然に防ぐこともできる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記反射層は、95重量%以上のAlを含み、かつ層厚が10nm以上40nm以下である。
この態様によれば、比較的薄い反射層により良好な反射率が得られ、同時に各反射層を良好に分断できる。実験によると、この層厚の範囲で、反射率が50%以上95%以下であり、その間隙についての透過率が1%以上40%以下となるように反射層が作製できる。
本発明の液晶装置の他の態様では、前記反射層が凹凸を有する。
この態様によれば、反射層の鏡面感を凸凹によってなくし、散乱面(白色面)に見せることができる。また、凹凸による散乱によって、広視野角の表示が可能となる。この凹凸形状は、反射層の下地に感光性のアクリル樹脂等を用いて形成したり、下地のガラス基板自身をフッ酸によって荒らしたりすることによって形成することができる。尚、反射層の凹凸表面上に透明な平坦化膜を更に形成して、液晶層に面する表面(配向膜を形成する表面)を平坦化しておくことが液晶の配向不良を防ぐ観点から望ましい。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の液晶装置を備える。
本発明の電子機器によれば、比較的簡単な装置構成を用いて、視差による二重映りや表示のにじみがなく、反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできる装置信頼性の高い半透過反射型液晶装置や半透過反射型カラー液晶装置を用いた各種の電子機器を実現できる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)本発明に係る液晶装置の第1実施形態を図1から図6を参照して説明する。図1は本発明に係る液晶装置の第1実施形態の構造を示す概略縦断面図である。この実施形態は基本的に単純マトリクス型の液晶表示装置に関するものであるが、同様の構成によりアクティブマトリクス型の装置や他のセグメント型の装置、その他の液晶装置にも適用することは可能である。
図1において、第1実施形態の液晶装置では、2枚の透明基板201及び202の間に液晶層203が枠状のシール材204によって封止された液晶セルが形成されている。液晶層203は、所定のツイスト角を持つネマチック液晶で構成されている。上側の透明基板201の内面上にはカラーフィルタ213が形成され、このカラーフィルタ213には、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色層が所定パターンで配列されている。カラーフィルタ213の表面上には透明な保護膜212が被覆されており、この保護膜212の表面上に複数のストライプ状の透明電極211がITO(Indium Tin Oxide)膜などにより形成されている。透明電極211の表面上には配向膜210が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。
一方、下側の透明基板202の内面上には、上記カラーフィルタ213の着色層毎に形成されたストライプ状の反射層216上に反射層216より一回り面積の広いストライプ状の透明電極215が透明電極211と交差するように複数配列されている。
尚、TFD素子やTFT素子を備えたアクティブマトリクス型の装置である場合には、各透明電極215は矩形状に形成され、アクティブ素子を介して配線に接続される。
反射層216はCrやAlなどにより形成され、その表面は透明基板201の側から入射する光を反射する反射面となっている。透明電極215の表面上には配向膜214が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。
このように第1実施形態では、所定間隔を隔ててストライプ状に配列された複数の反射層216の各間隙が、バックライトからの光源光を透過する機能を担う。このような反射層216の間隔は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましい。このようにすることで、人間が認識することが困難であり、間隙を設けたことで生じる表示品質の劣化を抑えることができ、反射型表示と透過型表示を同時に実現できる。また、反射層216の間隙は反射層216に対して、5%以上30%以下の面積比で形成することが好ましい。このようにすることで、反射型表示の明るさの低下を抑えることができるとともに、反射層の間隙から液晶層に導入される光源光によって透過型表示が実現できる。
ここで、図2を参照して、第1実施形態において反射層216上に積層された透明電極215により液晶層203に印加される電界について説明する。図2(a)は、微細な(例えば2μm径の)開口部216a’が設けられた半透過反射層と画素電極とを兼ねる単一層構造の半透過反射電極216’を用いた比較例において、該半透過反射電極216’により液晶層に印加される電界の様子を図式的に示した概念図である。図2(b)は、第1実施形態において反射層216上に積層された透明電極215により液晶層に印加される電界の様子を図式的に示した概念図である。
図2(a)に示すように、比較例において単一導電層からなる半透過反射電極216’を利用する場合には、反射型表示時には、透過領域Atを除く非透過領域で反射される外光が通過する液晶部分を非透過領域にある半透過反射電極216’部分により縦電界Fr(基板に垂直な方向の電界)で駆動できる。しかしながら、透過型表示時には、半透過反射電極216’の開口部216a’から入射された光源光が通過する透過領域Atにある液晶部分を、非透過領域にある半透過反射電極216’部分により斜め電界Ft’で駆動せなばならない。即ち、透過型表示時には、透過領域Atにおける歪んだ電界により液晶を駆動して表示を行うため、縦電界により液晶を駆動する場合と比較して液晶配向の乱れにより表示品質が劣化してしまう。
図2(b)に示すように、これに対し第1実施形態において分断された反射層216上に積層形成された一回り大きい透明電極215を利用する場合には、反射型表示時には、反射層216に重なった透明電極215部分により縦電界Frで駆動できる。しかも、透過型表示時にも、反射層216の間隙から入射された光源光が通過する透過領域Atにおける液晶部分を、反射層216の間隙に対向する透明電極215部分により縦電界Ftで駆動できる。このように反射層216のパターンをどのようにしても透明電極215により液晶層に印加される電界には影響がないので、反射層216における間隙パターンに関係なく、透明電極215から印加される縦電界により各ドット内又は各画素内において液晶の配向方向が均一となり、配向方向の乱れに起因する表示品質の劣化を防止できる。
再び図1において、上側の透明基板201の外面上に偏光板205が配置され、偏光板205と透明基板201との間に位相差板206及び散乱板207がそれぞれ配置されている。また、液晶セルの下側には、透明基板202の背後に位相差板209が配置され、この位相差板209の背後に偏光板208が配置されている。そして、偏光板208の下側には、白色光を発する蛍光管218と、この蛍光管218に沿った入射端面を備えた導光板217とを有するバックライトが配置されている。導光板217は裏面全体に散乱用の粗面が形成され、或いは散乱用の印刷層が形成されたアクリル樹脂板などの透明体であり、光源である蛍光管218の光を端面にて受けて、図の上面からほぼ均一な光を放出するようになっている。その他のバックライトとしては、LED(発光ダイオード)やEL(エレクトロルミネセンス)などを用いることができる。
他方、散乱板207は、Al反射層216によって反射された反射光を広角に出射させることができ、反射層216の鏡面感を散乱板207によって散乱面(白色面)に見せることができる。なお、散乱板207の位置は、透明基板201の液晶層203と反対側であれば、どの位置にあっても特に構わない。散乱板207の後方散乱(外光が入射した場合、入射光側への散乱)の影響を考えると、本実施形態のように偏光板205と透明基板201との間に配置するのが望ましい。後方散乱は、液晶装置の表示には関係のない散乱光であり、この後方散乱が存在すると、反射型表示時のコントラストを低下させる。偏光板205と透明基板201との間に配置させることで、後方散乱光の光量を偏光板205によって約半分にすることができる。
このように第1実施形態では、液晶セルの上側に偏光板205及び位相差板206が配置されており、液晶セルの下側に偏光板208及び位相差板209が配置されているので、反射型表示と透過型表示とのいずれにおいても良好な表示制御ができる。より具体的には、位相差板206により反射型表示時における光の波長分散に起因する色付きなどの色調への影響を低減する(即ち、位相差板206を用いて反射型表示時における表示の最適化を図る)と共に、位相差板209により透過型表示時における光の波長分散に起因する色付きなどの色調への影響を低減する(即ち、位相差板206により反射型表示時における表示の最適化を図った条件下で、更に、位相差板209により透過型表示時における表示の最適化を図る)ことが可能となる。なお、位相差板206及び209については夫々、液晶セルの着色補償、もしくは視角補償により複数枚位相差板を配置することも可能である。このように位相差板206又は209として、位相差板を複数枚用いれば着色補償或いは視角補償の最適化をより容易に行える。更にまた、偏光板205、位相差板106、液晶層103及び反射層216における光学特性を反射型表示時におけるコントラストを高める設定とすると共に、この条件下で偏光板208及び位相差板209における光学特性を透過型表示時におけるコントラストを高める設定とすることにより、反射型表示と透過型表示とのいずれにおいても高いコントラスト特性を得ることができる。
次に図1を参照して、以上の如く構成された本実施形態における反射型表示及び透過型表示について説明する。
先ず反射型表示の場合、図の上側から当該液晶装置に入射する外光は、偏光板205、位相差板206及び散乱板207をそれぞれ透過し、カラーフィルタ213、液晶層203を通過後、反射層216によって反射され、再び偏光板205から出射される。このとき、液晶層203への印加電圧によって明状態と暗状態、及びその中間の明るさを制御することができる。
また透過型表示の場合、バックライトからの光は偏光板208及び位相差板209によって所定の偏光となり、反射層216の形成されていない間隙部分より液晶層203及びカラーフィルタ213に導入され、その後、散乱板207、位相差板206を透過する。このとき、液晶層203への印加電圧に応じて、偏光板205を透過(明状態)する状態と吸収(暗状態)する状態、及びその中間の状態(明るさ)を制御することができる。
ここで反射型表示と透過型表示について、図3から図6を用いて更に詳しく説明する。図3は、TFD素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の正面概略図である。走査線501に接続されたTFD素子(またはMIM素子)502が、島状のAl反射層503上に積層形成されておりAl反射層503よりも面積が一回り広い島状のITO透明電極504に接続されている。尚、 図3においては、ITO透明電極504はAl反射層503を完全に覆うようには形成されてはいないが、もちろん、ITO透明電極504は、Al反射層503を完全に覆うように形成されていても構わない。 ITO透明電極504がAl反射層503を完全に覆うように形成されていれば、バックライトからの光をより多く液晶層に透過させることができるのでより明るい透過型表示が実現する。図4は、単純マトリクス型の液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の一例における正面概略図である。液晶セルの上側透明基板内面に形成されたストライプ状のITO透明電極601に交差するように、下側透明基板内面にAl反射層602及びAl反射層602よりも面積が一回り広いストライプ状のITO透明電極603が形成されている。尚、 図4においては、ITO透明電極603はAl反射層602を完全には覆うように形成されてはいないが、もちろん、ITO透明電極603はAl反射層602を完全に覆うように形成されていても構わない。 ITO透明電極603がAl反射層602を完全に覆うように形成されていれば、バックライトからの光をより多く液晶層に透過させることができるのでより明るい透過型表示が実現する。また図5は、単純マトリクス型の液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の他の例における正面概略図である。液晶セルの上側透明基板内面に形成されたストライプ状のITO透明電極601に交差するように、下側透明基板内面に島状のAl反射層602’の各辺よりも幅が一回り広いストライプ状のITO透明電極603が形成されている。更にまた図6は、単純マトリクス型の液晶装置に本発明を適用したときの下側透明基板202の他の例における正面概略図である。液晶セルの上側透明基板内面に形成されたストライプ状のITO透明電極601に交差するように、下側透明基板内面にAl反射層602”及びAl反射層602”よりも面積が一回り広いストライプ状のITO透明電極603が形成されている。図4の例では、Al反射層602がITO透明電極603の中央に重なっているのに対し、図6の例ではAl反射層602”がITO透明電極603の片側に寄って重なっている反射型表示時には、液晶セルに入射した外光を反射層503(図3の場合)、反射層602(図4の場合)、反射層602’(図5の場合)又は反射層602”(図6の場合)により反射させる。つまり、外光は反射層503、602、602’又は602”に入射したものだけが液晶層に印加された電圧によって変調される。透過型表示時は、バックライトから液晶セルに入射した光のうち、反射層503、602、602’又は602”の間隙を通った光源光だけが、液晶層に導入される。しかし、画素電極またはドット電極以外に入射した光は、表示に関係がなく、透過型表示のコントラストを低下させるだけであるので、遮光膜(ブラックマトリクス層)や液晶層の表示モードをノーマリーブラックとすることで、遮断する。即ち、Al反射層503、602、602’又は602”と重なり合っていないITO透明電極504又は603部分に入射するバックライトからの光によって、透過型の表示が可能になる。
例えば図4における上側透明基板内面のITO透明電極601のライン幅(L)を198μmとし、下側基板内面のAl反射層602のライン幅(W1)を46μmとし、その上に形成したITO透明電極603のライン幅(W2)を56μmとすれば、液晶層に導入された外光のうち約70%を反射し、バックライトから出射し下側の透明基板に導入された光のうち約10%を透過させることができる。
上述したような本実施形態の構成によれば、二重映りや表示のにじみのない反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできるカラー液晶装置が実現される。特に本実施形態によれば、透過型表示時にバックライトからの光源光を透過させるために、反射層216に対して、孔欠陥、凹入欠陥等の微細な欠陥部や微細な開口部を多数設ける必要がないため、装置構成が複雑化することはなく、その製造において特殊な工程が付加的に必要となることもなく、液晶装置の信頼性も高まる。
また、本実施形態のAl反射層216はその表面にITO透明電極215を形成したので、Al反射層216に傷が付き難くすることができ、またAl反射層216とITO透明電極215の2つが電極ラインとなるので、電極ラインの低抵抗化が可能となる。尚、このような反射層216としては、好ましくは95重量%以上のAlを含み、かつ層厚が10nm以上40nm以下である。
更に、液晶セルの上側の面に配置した散乱板207は、Al反射層216によって反射された反射光を広角に出射させることができるので、広視野角の液晶装置が実現される。
(第2実施形態)本発明に係る液晶装置の第2実施形態を図7を参照して説明する。図7は本発明に係る液晶装置の第2実施形態の構造を示す概略縦断面図である。この実施形態は基本的に単純マトリクス型の液晶表示装置に関するものであるが、同様の構成によりアクティブマトリクス型の装置や他のセグメント型の装置、その他の液晶装置にも適用することは可能である。
この実施形態では、第1実施形態の場合と同様、2枚の透明基板301及び302の間に液晶層303が枠状のシール材304によって封止された液晶セルが形成されている。液晶層303は、所定のツイスト角を持つネマチック液晶で構成されている。上側の透明基板301の内面上にはカラーフィルタ313が形成され、このカラーフィルタ313には、R、G、Bの3色の着色層が所定パターンで配列されている。カラーフィルタ313の表面上には透明な保護膜312が被覆されており、この保護膜312の表面上に複数のストライプ状の透明電極311がITOなどにより形成されている。透明電極311の表面上には配向膜310が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。
一方、下側の透明基板302の内面上には、上記カラーフィルタ313の着色層毎に形成されたストライプ状の反射層317上にこの反射層317より一回り面積の広いストライプ状の透明電極315が保護膜316を介して形成されている。そして、透明電極311と交差するように複数配列されている。TFD素子やTFT素子を備えたアクティブマトリクス型の装置である場合には、各反射層317、透明電極315は矩形状に形成され、アクティブ素子を介して配線に接続される。この反射層317はCrやAlなどにより形成され、その表面は透明基板301の側から入射する光を反射する反射面となっている。透明電極315の表面上には配向膜314が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。
このように第2実施形態では、所定間隔を隔ててストライプ状に配列された反射層317の各間隙が、バックライトからの光源光を透過する機能を担う。
上側の透明基板301の外面上に偏光板305が配置され、偏光板305と透明基板301との間に位相差板306及び散乱板307がそれぞれ配置されている。また、液晶セルの下側には、透明基板302の背後に位相差板309が配置され、この位相差板309の背後に偏光板308が配置されている。そして、偏光板308の下側には、白色光を発する蛍光管319と、この蛍光管319に沿った入射端面を備えた導光板318とを有するバックライトが配置されている。導光板318は裏面全体に散乱用の粗面が形成され、或いは散乱用の印刷層が形成されたアクリル樹脂板などの透明体であり、光源である蛍光管319の光を端面にて受けて、図の上面からほぼ均一な光を放出するようになっている。その他のバックライトとしては、LED(発光ダイオード)やEL(エレクトロルミネセンス)などを用いることができる。
次に図7を参照して、以上の如く構成された本実施形態における反射型表示及び透過型表示について説明する。
先ず反射型表示の場合、図の上側から当該液晶装置に入射する外光は、偏光板305、位相差板306、散乱板307をそれぞれ透過し、カラーフィルタ313、液晶層303を通過後、反射層317によって反射され、再び偏光板305から出射される。このとき、液晶層303への印加電圧によって明状態と暗状態、及びその中間の明るさを制御することができる。
また透過型表示の場合、バックライトからの光は偏光板308及び位相差板309によって所定の偏光となり、反射層317の形成されていない間隙部分より液晶層303、カラーフィルタ313に導入され、その後、散乱板307、位相差板306を透過する。このとき、液晶層303への印加電圧に応じて、偏光板305を透過(明状態)する状態と吸収(暗状態)する状態、及びその中間の状態(明るさ)を制御することができる。
上述の透明電極315及び反射層317の平面形状については、第1実施形態の場合と同様に、TFD素子を用いたアクティブマトリクス型液晶装置に適用する場合には、図3に示した如きであり、単純マトリクス型の液晶装置に適用する場合には、図4から図6に示した如きである。
例えば図4における上側透明基板内面のITO透明電極601のライン幅(L)を240μmとし、下側基板内面のAl反射層602のライン幅(W1)を60μmとし、その上に保護膜を介して形成したITO透明電極603のライン幅(W2)を70μmとすれば、液晶層に導入された外光のうち約75%を反射し、バックライトから出射し、下側の透明基板に導入された光のうち約8%を透過させることができる。
上述したような本実施形態の構成によれば、二重映りや表示のにじみのない反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできるカラー液晶装置が実現される。特に、反射層317に対して、孔欠陥、凹入欠陥等の微細な欠陥部や微細な開口部を多数設ける必要がないため、装置構成が複雑化することはなく、その製造において特殊な工程が付加的に必要となることもない。
また、本実施形態のAl反射層317はその表面に保護膜316を形成してから、ITO透明電極315を形成しているので、Al反射層317はITO透明電極315の現像液やエッチング液と直接、触れることがない。さらに、保護膜316があるため、傷を付き難くすることができた。Al反射層317とITO透明電極315を短絡しておくことによって、断線の確率を小さくすることができるとともに、電極ラインの低抵抗化を行うことも可能となる。
更に液晶セルの上側の面に配置した散乱板307は、Al反射層317によって反射された反射光を広角に出射させることができるので、広視野角の液晶装置が実現される。
(第3実施形態)本発明に係る液晶装置の第3実施形態を図8を参照して説明する。図8は本発明に係る液晶装置の第3実施形態の構造を示す概略縦断面図である。第3実施形態は、上述した第2実施形態とほぼ同様の構成を有し、唯一反射層の構造が異なる。尚、図8において、第2実施形態に係る図7と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
即ち図8において、反射層317’は次のように形成される。
先ず、透明基板302の内面上に感光性レジストをスピンコートなどにより塗布し、微少な開口部を有するマスクを介して調整された光量にて露光する。その後、必要に応じて感光性レジストの焼成を行い、現像する。現像によってマスクの開口部に対応した部分が部分的に除去され、波形の断面形状を備えた支持層が形成される。ここで、上記フォトリソグラフィ工程によってマスクの開口部に対応する部分のみを除去したり、マスクの開口部に対応した部分のみを残したりし、その後、エッチングや加熱などによって凹凸形状を滑らかにして波形の断面形状を形成してもよく、また、一旦形成した上記支持層の表面状にさらに別の層を積層して表面をより滑らかに形成してもよい。
次に、支持層の表面上に金属を蒸着、スパッタリングなどによって薄膜状に被着して反射面を備えた金属膜を形成し、その後ストライプ状(図4又は図6参照)或いは島状(図3又は図5参照)にパターニングする。金属としては、Al、CrAg、Auなどが用いられる。反射層317’は、支持層の表面の波形凹凸に従った形状を反映して形成されるため、表面が全体的に粗面化されている。
上述したような本実施形態の構成によれば、二重映りや表示のにじみのない反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできるカラー液晶装置が実現できる。
特に本実施形態によれば、凹凸を付与した反射層317’は、反射光を広角に反射させることができるので、広視野角の液晶装置が実現される。
(第4実施形態)本発明に係る液晶装置の第4実施形態を図9及び図10を参照して説明する。図9は本発明に係る液晶装置の第4実施形態の構造を示す概略縦断面図である。この実施形態は基本的に単純マトリクス型の液晶表示装置に関するものであるが、同様の構成によりアクティブマトリクス型の装置や他のセグメント型の装置、その他の液晶装置にも適用することは可能である。
この実施形態では、2枚の透明基板401及び402の間に液晶層403が枠状のシール材404によって封止された液晶セルが形成されている。液晶層403は、誘電異方性が負のネマチック液晶で構成されている。上側の透明基板401の内面上には、複数のストライプ状の透明電極409がITOなどによって形成されていて、透明電極409の表面上には液晶を垂直に配向させる配向膜410が形成され、所定方向にラビング処理が施されている。このラビング処理によって、液晶分子はラビング方向に約85度のプレティルト角を有している。TFD素子やTFT素子を備えたアクティブマトリクス型の装置である場合には、透明電極409は矩形状に形成され、アクティブ素子を介して配線に接続される。
一方、下側の透明基板402の内面上には、感光性のアクリル樹脂によって高低さ約0.8μmの凹凸が形成されており、その表面上に1.0重量%のNdを添加したAlを25nmの厚みでスパッタし、その後ストライプ状(図4又は図6参照)或いは島状(図3又は図5参照)にパターニングして、反射層411を形成する。この反射層411上には、保護膜412を介して、カラーフィルタ414が形成され、このカラーフィルタ414には、R、G、Bの3色の着色層が所定パターンで配列されている。カラーフィルタ414の表面上には透明な保護膜415が被覆されており、この保護膜415の表面上に複数のストライプ状の透明電極416がITO膜などにより、上記カラーフィルタ414の着色層毎に上記透明電極409と交差するように形成されている。透明電極416の表面上には配向膜417が形成される。なお、この配向膜417にはラビング処理を施さない。
上側の透明基板401の外面上に偏光板405が配置され、偏光板405と透明基板401との間に位相差板(1/4波長板)406が配置されている。また、液晶セルの下側には、透明基板402の背後に位相差板(1/4波長板)408が配置され、この位相差板(1/4波長板)408の背後に偏光板407が配置されている。そして、偏光板407の後方には、白色光を発する蛍光管419と、この蛍光管419に沿った入射端面を備えた導光板418とを有するバックライトが配置されている。導光板418は裏面全体に散乱用の粗面が形成され、或いは散乱用の印刷層が形成されたアクリル樹脂板などの透明体であり、光源である蛍光管419の光を端面にて受けて、図の上面からほぼ均一な光を放出するようになっている。その他のバックライトとしては、LED(発光ダイオード)やEL(エレクトロルミネセンス)などを用いることができる。
この実施形態では、透過型表示のときに各ドット間の領域から光が漏れるのを防ぐために、カラーフィルタ414の各着色層の間に形成された遮光部であるブラックマトリクス層413が平面的にほぼ対応して設けられている。ブラックマトリクス層413はCr層を被着したり、感光性ブラック樹脂で形成する。
ここで図10(a)に示すように、偏光板405と偏光板407の透過軸P1及びP2は同方向に設定されており、これら偏光板の透過軸P1及びP2に対して、位相差板(1/4波長板)406及び408の遅相軸C1及びC2の方向は、θ=45度時計方向に回転した方向に設定されている。さらに、透明基板401の内面上の配向膜410のラビング処理の方向R1もまた、位相差板(1/4波長板)406及び408の遅相軸C1及びC2の方向と一致する方向に施されている。このラビング方向R1は、液晶層403の電界印加時における液晶分子長軸の倒れる方向を規定する。液晶層403には、負のネマティック液晶を用いる。
また図10(b)に、本実施形態による反射型表示における反射率Rの駆動電圧特性と、透過型表示における透過率Tの駆動電圧特性とを示す。電界無印加時の表示状態は暗(黒)である。この液晶セルを用いると、ブラックマトリクス層413を形成する必要がなくなる。
次に図9を参照して、以上の如く構成された本実施形態における反射型表示及び透過型表示について説明する。
先ず反射型表示の場合、図の上側から当該液晶装置に入射する外光は、偏光板405、位相差板406をそれぞれ透過し、液晶層403を通過後、カラーフィルタ414を通過し反射層411によって反射され、再び偏光板405から出射される。このとき、液晶層403への印加電圧によって明状態と暗状態、及びその中間の明るさを制御する。
また透過型表示の場合、バックライトからの光は偏光板407及び位相差板408によって所定の偏光となり、反射層411の各間隙より液晶層403に導入され、カラーフィルタ414、液晶層403を通過後、位相差板406を透過する。このとき、液晶層403への印加電圧に応じて、偏光板405から透過(明状態)した状態と吸収(暗状態)した状態、及びその中間の明るさを制御することができる。
上述したような本実施形態の構成によれば、二重映りや表示のにじみのない反射型表示と透過型表示とを切り換えて表示することのできるカラー液晶装置が実現される。
また、本実施形態の反射層411にはAlが主成分の金属層を用いて、この表面を保護膜412で覆い、その上にカラーフィルタ414や保護膜415、透明電極416を形成している。このため、Al金属層が直接ITO現像液やカラーフィルタ現像液と触れることがないので、Al金属層が現像液で溶解することがない。さらに、傷がつきやすいAl金属層を取り扱いやすくすることができる。例えば、1.0重量%のNdを添加した25nm厚のAlは、反射率80%及び透過率10%の値を示し、反射層411として十分に機能する。
更に凹凸を付与した反射層411は、反射光を広角に反射させることができるので、広視野角の液晶装置が実現される。
(第5実施形態)本発明に係る液晶装置の第5実施形態を図11を参照して説明する。図11は本発明に係る液晶装置の第5実施形態の概略縦断面図である。第5実施形態は、上述した第2実施形態とほぼ同様の構成を有し、反射層及びその保護膜に係る構造が異なる。尚、図11において、第2実施形態に係る図7と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
即ち図11において、反射層617は、アルミニウムからなる反射層として蒸着法により50〜300nmの厚みで各ドットごとに島状に或いはストライプ状に形成されている(図3から図6参照)。尚、反射層617としてはアルミニウムを用いると好ましいがクロム等の他の金属でも代用可能である。
更に、反射層617上には、第2実施形態のように保護膜が形成されてはおらず、蒸着後の反射層を陽極酸化することによってAl2O3か(酸化アルミニウム)からなる絶縁層616が形成される。陽極酸化は、サリチル酸アンモニウム1〜10重量%とエチレングリコール20〜80重量%とを含有する溶液を用いて化成電圧5〜250V、電流密度0.001〜0.1mA/cm2の条件で行えばよい。このように形成される酸化膜の膜厚は140nm又はその整数倍とすると干渉による着色の発生を防止できる。そして、絶縁層616上には、透明電極615が配置されており、その他の構成については図7に示した第2実施形態の場合と同様である。
以上説明したように第5実施形態によれば、非常に薄く且つ絶縁性の高い絶縁膜616が得られる。特に、アルミニウムから反射層617を形成することにより、酸化後もその反射率を維持できる。尚、このように絶縁膜616を酸化により形成する際には、陽極酸化を利用してもよいし、熱酸化を利用してもよい。
(第6実施形態)本発明に係る液晶装置の第6実施形態を図12を参照して説明する。図12は、本発明の第6実施形態におけるTFT駆動素子を画素電極等と共に拡大して示す断面図である。尚、第6実施形態における基板上にTFT駆動素子を形成し、この上に絶縁膜を介して形成された透明電極に接続する構成は、本発明の各実施形態に適用可能である。
図12において、透明基板702上に形成された層間絶縁膜721上は、ゲート電極722、ゲート絶縁膜723、i―Si層724、n+―Si層725、ソース電極726及びドレイン電極727を持つTFT素子が設けられている。アルミニウムからなる反射層728はTFT素子上に形成した層間絶縁膜731上に形成され、反射層728上には、蒸着後の反射層を陽極酸化して形成した絶縁層729が設けられている。絶縁層729上にはドレイン電極727にコンタクトホールを介して接続されたITOからなる透明電極730(画素電極)が形成されている。
以上説明したように第6実施形態によれば、TFT素子を介して各透明電極(画素電極)730に電力を供給するため、透明電極730間におけるクロストークを低減でき、より高品位の画像表示が可能となる。尚、このように構成されるTFT素子は、LDD構造、オフセット構造、セルフアライン構造等いずれの構造のTFTであってもよい。更に、シングルゲート構造の他、デュアルゲート或いはトリプルゲート以上で構成してもよい。
(第7実施形態)本発明に係る液晶装置の第7実施形態を図13を参照して説明する。図13は、本発明の第7実施形態におけるTFD駆動素子を画素電極等と共に拡大して示す断面図である。尚、第7実施形態における基板上にTFD駆動素子を形成し、この上に絶縁膜を介して形成された透明電極に接続する構成は、本発明の各実施形態に適用可能である。
図13においては、基板802上に形成された層間絶縁膜821上には、タンタルからなる第1導電層841が形成されており、第1導電層841上にはタンタルを陽極酸化して得た絶縁層842が形成されている。絶縁層842上にはクロムからなる第2導電層843が形成されている。また、アルミニウムからなる反射層844は層間絶縁膜821上に形成されており、反射層844上には蒸着後の反射層を陽極酸化して得た絶縁膜845が形成されている。絶縁膜845上に形成された透明電極(画素電極)846は、第2導電層843に接続されている。
以上説明したように第7実施形態によれば、TFD素子を介して各透明電極(画素電極)846に電力を供給するため、透明電極846間におけるクロストークを低減でき、より高品位の画像表示が可能となる。尚、図示したTFD素子に代えて、ZnO(酸化亜鉛)バリスタ、MSI(Metal Semi-Insulator)駆動素子、RD(Ring Diode)などの双方向ダイオード特性を有する2端子型非線形素子を設けるようにしてもよい。
(第8実施形態)本発明に係る液晶装置の第8実施形態を図14を参照して説明する。図14は本発明に係る液晶装置の第8実施形態の概略縦断面図である。第8実施形態は、上述した第5実施形態とほぼ同様の構成を有し、絶縁膜に係る構造が異なる。尚、図14において、第5実施形態に係る図11と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、その説明は省略する。
即ち図14において、所定間隔を隔てて配置された反射層617上に設けられる絶縁層は、絶縁膜616a及び616bを含む多層構造からなる。より具体的には、絶縁層として、金属からなる反射層617を陽極酸化して得た酸化膜616aに加えて、スピンコートにより有機物質を塗布した絶縁膜616bが積層形成されている。尚、絶縁膜616bとしては有機絶縁膜の他、SiO2膜等を蒸着してもよい。他の点については第5実施形態と同様であるので、ここではその説明は省略する。
以上説明したように第8実施形態によれば、絶縁膜の絶縁性を高めることができる。尚、一方の絶縁膜にアルミニウムの酸化物等を用い、他方の絶縁膜としては、SiO2膜や有機物質によるオーバーコート膜等を用いることができ、係るSiO2膜を形成する際には、蒸着、スパッタやCVD法により形成すればよく、有機膜を形成する際には、スピンコートなどにより形成すればよい。
尚、以上説明した各実施形態では反射層216、317、317’、411等の間隙をバックライトからの光が透過するように構成されているが、これに加えて、反射層自体に微細な開口部或いはスリットを形成することにより、バックライトからの光を間隙を介してだけではなく該開口部を介して液晶層に導入するように構成しても良い。この場合、各画素毎に一又は複数の正方形、矩形、スリット、円、楕円等の開口部を規則的に或いは不規則的に配置してよい。この際好ましくは、開口部の総面積は反射層の総面積に対して約10%の割合で設ける。このような開口部は、レジストを用いたフォト工程/現像工程/剥離工程で容易に作製することができる。また、反射層を形成するときに同時に開口部を開孔することも可能であり、このようにすれば製造工程数を増やさず済む。また、いずれの形状であっても、開口部の径は、0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、開口部は反射層に対して、5%以上30%以下の面積比で形成することが好ましい。
以上説明した第1から第10実施形態に用いるカラーフィルタ213、313、414等の着色層について図15を参照して説明する。図15は、カラーフィルタ213等の各着色層の透過率を示す特性図である。各実施形態においては、反射型表示を行う場合、入射光が一旦カラーフィルタ213等のいずれかの着色層を透過した後、液晶層を通過して反射層によって反射され、再び着色層を透過してから放出される。したがって、通常の透過型の液晶装置とは異なり、カラーフィルタ213等を二回通過することになるため、通常のカラーフィルタでは表示が暗くなり、コントラストが低下する。そこで、各実施形態では、図19に示すように、カラーフィルタ213等のR、G、Bの各着色層の可視領域における最低透過率61が25〜50%になるように淡色化して形成している。着色層の淡色化は、着色層の膜厚を薄くしたり、着色層に混合する顔料若しくは染料の濃度を低くしたりすることによってなされる。このことによって、反射型表示を行う場合に表示の明るさを低下させないように構成することができる。
このカラーフィルタ213等の淡色化は、透過型表示を行う場合にはカラーフィルタ213等を一回しか透過しないため、表示の淡色化をもたらすが、各実施形態では反射層によってバックライトの光が多く遮られることが多いため、表示の明るさを確保する上でむしろ好都合である。
(第9実施形態)本発明の第9実施形態を図16を参照して説明する。第9実施形態は、以上説明した第1から第8実施形態のいずれか一つを備えた電子機器の実施形態である。即ち、第9実施形態は、上述した第1から第8実施形態に示した液晶装置を様々な環境下で低消費電力が必要とされる携帯機器の表示部として好適に用いた各種電子機器に係わる。図16に本発明の電子機器の例を3つ示す。
図16(a)は、携帯電話を示し、本体71の前面上方部に表示部72が設けられる。携帯電話は、屋内屋外を問わずあらゆる環境で利用される。特に自動車内で利用されることが多いが、夜間の車内は大変暗い。従って携帯電話に利用される表示装置は、消費電力が低い反射型表示をメインに、必要に応じて補助光を利用した透過型表示ができる半透過反射型液晶装置が望ましい。上記した第1実施形態乃至第8実施形態に記載の液晶装置を携帯電話の表示部72として用いれば、反射型表示でも透過型表示でも従来より明るく、コントラスト比が高い携帯電話が得られる。
図16(b)は、ウォッチを示し、本体の中央73に表示部74が設けられる。ウォッチ用途における重要な観点は、高級感である。本発明の第1実施形態乃至第8実施形態に記載の液晶をウォッチの表示部74として用いれば、明るくコントラストが高いことはもちろん、光の波長による特性変化が少ないために色づきも小さい。従って、従来のウォッチと比較して、大変に高級感あるカラー表示が得られる。
図16(c)は、携帯情報機器を示し、本体75の上側に表示部76、下側に入力部77が設けられる。また表示部76の前面にはタッチ・キーを設けることが多い。通常のタッチ・キーは表面反射が多いため、表示が見づらい。従って、従来は携帯型と言えども透過型液晶装置を表示部として利用することが多い。ところが透過型液晶装置は、常時バックライトを利用するため消費電力が大きく、電池寿命が短かい。このような場合にも上記した第1実施形態乃至第8実施形態の液晶装置を携帯情報機器の表示部76として用いれば、反射型でも半透過反射型でも、透過型でも表示が明るく鮮やかな携帯情報機器を得ることができる。
本発明の液晶装置は、上述した各実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう液晶装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。