JP4562903B2 - 蒸気タービンにおける静翼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、蒸気タービンにおける静翼に係り、特に、この発明は、製作工程が短く、また、性能が向上され、さらに、シールフィンの交換が可能である蒸気タービンにおける静翼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蒸気タービンについて図4を参照して説明する。図4において、1はケーシング(翼環ないし車室)である。このケーシング1には、複数段の静翼2がそれぞれ円環に配列されている。また、図4において、3はロータである。このロータ3には、複数段の動翼4がそれぞれ円環に配列されている。前記ケーシング1中に蒸気を供給することにより、前記ロータ3が回転する。
【0003】
前記蒸気タービンにおける静翼2は、削り出しによって静翼単体を製作し、その静翼単体の群の内外周を溶接(たとえば、EBW溶接)して半円周分を一体化し、この一体化された半円周分を前記ケーシング1の溝に嵌め込んで固定されてなる。前記静翼2を前記ケーシング1に固定した後に、前記静翼2の内周にシールフィン(図示せず)を削り出しによって形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の静翼2は、静翼単体の群の内外周を溶接するものであるから、その溶接に伴なう熱処理(焼鈍)により製作工程が長くなる。また、熱処理の際に静翼2の表面の酸化により面粗度が低下して性能に影響が及ぶ。
【0005】
この発明は、製作工程が短く、また、性能が向上され、さらに、シールフィンの交換が容易である蒸気タービンにおける静翼を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、削り出しによって製作された静翼単体の群と、前記静翼単体の内周側に削り出しによって設けられたシュラウドと、前記静翼単体の外周側に削り出しによって設けられ、前記ケーシングに加工された植え込み用溝部に植え込まれる植え込み用突起部と、削り出しによって製作された複数個のピースから構成されており、前記シュラウドに着脱可能に結合されて円環形状に形成され、かつ、固定手段を介して前記シュラウドに固定されて前記ロータに対向するシールフィンと、から構成されていて、前記固定手段が、前記シールフィンのピースの両端と前記シュラウドとを固定したピンと、前記ピンの抜け止め用の点付け溶接と、からなる、ことを特徴とする。
【0007】
この結果、請求項1にかかる発明は、溶接を行わずに、削り出しによって静翼を構成するものであるから、溶接に伴なう熱処理が不要となり、その分、製作工程が短くできる。また、熱処理による面粗度の低下がないので、その分、性能が向上される。さらに、静翼の内周側のシュラウドにシールフィンが着脱可能に結合されているので、シールフィンが摩耗した際に、シールフィンの交換が容易である。
【0009】
また、請求項1にかかる発明は、ピンにより、シールフィンのピースの両端とシュラウドとを固定するので、その固定が確固である。また、点付け溶接により、ピンが抜けるのを防止できるので、さらに確固たる固定が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる蒸気タービンにおける静翼の実施の形態の1例を図1〜図3を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの蒸気タービンにおける静翼が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態の説明)
図1および図2は、この発明にかかる蒸気タービンにおける静翼の実施の形態を示す。図中、図4と同符号は同一のものを示す。
【0014】
図において、5はこの実施の形態における静翼である。この静翼5は、削り出しによって製作された静翼単体6の群からなる。この静翼単体6の内周側には、シュラウド7が削り出しによって設けられている。また、この静翼単体6の外周側には、植え込み用突起部8が削り出しによって設けられている。
【0015】
一方、ケーシング1には、断面エの字形状の植え込み用溝部9が加工されている。このケーシング1の植え込み用溝部9中に前記静翼単体6の植え込み用突起部8を植え込んで固定する。前記静翼単体6の群を前記ケーシング1に円環に配列し、かつ、前記静翼単体6の群の内周側のシュラウド7にシールフィン10を円環形状に設けることにより、前記静翼5が構成される。
【0016】
前記シールフィン10は、削り出しによって製作された複数個、この例では、8個のピースから構成されている。前記シールフィン10の内周側には、嵌め込み用の凹部11が設けられている。一方、前記シュラウド7の外周側には、嵌め込み用の凸部12が設けられている。
【0017】
前記シールフィン10の凹部11と前記シュラウド7の凸部12とを嵌め込んで、前記8個のシールフィン10のピースを前記シュラウド7に着脱可能に結合して円環形状に形成する。また、固定手段を介して前記8個のシールフィン10のピースと前記シュラウド7とを相互に固定することにより、前記シールフィン10は、ロータ3に対向する。
【0018】
前記固定手段は、ピン13と、点付け溶接14とからなる。すなわち、ピン13を前記8個のシールフィン10のピースの両端と、前記シュラウド7とに通して、シールフィン10とシュラウド7とを固定する。つぎに、そのピン13とシールフィン10ないしシュラウド7とに点付け溶接14を施す。なお、シールフィン10のシュラウド7への固定後に、シールフィン10の仕上げ工程を行っても良い。
【0019】
前記シールフィン10とシュラウド7とは、前記ピン13固定と、ピン13固定されておらず前記凹部11と凸部12との嵌め込みとにより、拘束されている。すなわち、前記シールフィン10は、シールフィンそのものと、前記シュラウド7を拘束する部材とを一体化したものでもある。
【0020】
この実施の形態における静翼5は、以上の如き構成、すなわち、溶接を行わずに、削り出しによって構成するものであるから、溶接に伴なう熱処理が不要となり、その分、製作工程が短くできる。また、熱処理による面粗度の低下がないので、その分、性能が向上される。さらに、静翼5の内周側のシュラウド7にシールフィン10が着脱可能に結合されているので、シールフィン10が摩耗した際に、シールフィン10のみを交換することができる。なお、シールフィン10の交換の際、点付け溶接14を破壊しても、シールフィン10自体を新しいものと交換するので特に問題はない。
【0021】
また、この実施の形態における静翼5は、ピン13により、8個のシールフィン10のピースの両端とシュラウド7とを固定するので、その固定が確固である。その上、点付け溶接14により、ピン13が抜けるのを防止できるので、さらに確固たる固定が得られる。
【0022】
(固定手段の変形例の説明)
図3は固定手段の変形例を示す一部断面図である。図中、図1、図2、図4と同符号は同一のものを示す。
【0023】
この変形例の固定手段は、8個のシールフィン10のピースとシュラウド7とを固定した蟻溝構造15と、その8個のシールフィン10のピースが周方向に回転するのを防ぐストッパ(図示せず、たとえば、埋め込みボルトなど)とからなるものである。
【0024】
この変形例の固定手段は、蟻溝構造15およびストッパにより、8個のシールフィン10のピースとシュラウド7とを固定するので、部品点数が少なくて済み、構造が簡単であり、組み付け工程も簡単である。
【0025】
なお、前記シールフィン10は、8個のピースから構成されているものであるが、この発明において、シールフィンは、2個以上のピースであっても良い。また、固定手段としては、ボルトナットなどであっても良い。
【0026】
【発明の効果】
以上から明らかなように、この発明にかかる蒸気タービンにおける静翼(請求項1)によれば、溶接を行わずに、削り出しによって静翼を構成するものであるから、溶接に伴なう熱処理が不要となり、その分、製作工程が短くできる。また、熱処理による面粗度の低下がないので、その分、性能が向上される。さらに、静翼の内周側のシュラウドにシールフィンが着脱可能に結合されているので、シールフィンが摩耗した際に、シールフィンの交換が容易である。
【0027】
また、この発明にかかる蒸気タービンにおける静翼(請求項1)によれば、ピンにより、シールフィンのピースの両端とシュラウドとを固定するので、その固定が確固である。また、点付け溶接により、ピンが抜けるのを防止できるので、さらに確固たる固定が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の蒸気タービンにおける静翼の実施の形態を示す一部縦断面図であって、図2におけるI−I線断面図、図4におけるI部の拡大断面図である。
【図2】同じく、静翼の正面図である。
【図3】固定手段の変形例を示し一部断面図である。
【図4】蒸気タービンを示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
3 ロータ
4 動翼
5 静翼
6 静翼単体
7 シュラウド
8 植え込み用突起部
9 植え込み用溝部
10 シールフィン
11 凹部
12 凸部
13 ピン
14 点付け溶接
15 蟻溝構造
Claims (1)
- ケーシングに円環に配列された静翼と、ロータに円環に配列された動翼とを備えた蒸気タービンにおいて、
前記静翼は、
削り出しによって製作された静翼単体の群と、
前記静翼単体の内周側に削り出しによって設けられたシュラウドと、
前記静翼単体の外周側に削り出しによって設けられ、前記ケーシングに加工された植え込み用溝部に植え込まれる植え込み用突起部と、
削り出しによって製作された複数個のピースから構成されており、前記シュラウドに着脱可能に結合されて円環形状に形成され、かつ、固定手段を介して前記シュラウドに固定されて前記ロータに対向するシールフィンと、
から構成されていて、
前記固定手段は、前記シールフィンのピースの両端と前記シュラウドとを固定したピンと、前記ピンの抜け止め用の点付け溶接と、からなる、
ことを特徴とする蒸気タービンにおける静翼。
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