JP4536838B2 - サンドイッチパネルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、サンドイッチパネルの製造方法に係り、特に、アルミニウム材質のコアの両側にアルミニウム材質の面板がそれぞれ一体的にろう付けされてなるサンドイッチパネルの有利な製造方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、建材や鉄道車両、自動車等の車両、更には航空宇宙分野等の用途において、構造材や強度部材等として用いられる、ハニカムパネルの如きサンドイッチパネルは、例えば、アルミニウム材質のセルをハニカム状に設けてなる所定厚さの芯材であるハニカムコアの如き所定のコアを、上下2枚のアルミニウム材質の面板間に挟んで、それらの面板に対してろう付け接合せしめてなる構造とされている。そして、よく知られているように、かかる構造のサンドイッチパネルは、一般に、上下方向に対向し、且つ互いに接近、離間可能に配置された上側成形治具と下側成形治具とを用い、この上下の成形治具間に、前記コアの両側に前記二つの面板をそれぞれ配してなる組付け体を挟み、それら上下の成形治具にて加圧した状態下において、ろう付け加熱することにより、組付け体のコアと二つの面板とが一体的にろう付けされて、製造されることとなる。
【0003】
ところで、このような方法にて、サンドイッチパネルを製造する際には、通常、上下の成形治具として、アルミニウムよりも熱膨張率が格段に小さな黒鉛製のものが用いられるところから、それら上下の成形治具間に位置せしめられた組付け体のろう付け加熱時に、アルミニウム材質の面板と成形治具との間の熱膨張或いは熱収縮の差異に基づいて、面板が成形治具表面に対して不可避的に摺動せしめられることとなり、その際に、耐摩耗性の劣る黒鉛製の成形治具から摩耗粉が発生し、この摩耗粉によって、面板表面に摺動傷が生ずる場合があった。
【0004】
そこで、本願出願人は、特公平2−28422号公報等において、サンドイッチパネルの改良された製造方法を明らかにした。即ち、かかる公報に開示の手法は、前記組付け体と上下の成形治具とのそれぞれの間に、優れた潤滑性を有する薄いカーボンシートの如き潤滑板を介在させ、そして、その状態下で、組付け体を上下の成形治具で加圧しつつ、ろう付け加熱するものであり、そのように潤滑板を介在させることによって、ろう付け加熱時に、面板を潤滑板表面に対して円滑に摺動させて、かかる摺動に伴う成形治具からの摩耗粉の発生を抑制し、以て該摩耗粉による面板表面の摺動傷の発生を効果的に解消乃至は低減し得るようにしたものである。
【0005】
また、本願出願人は、特開平8−174111号公報において、上述の如き構造のサンドイッチパネルのうち、特に、所定の湾曲面形状の曲面を備えたサンドイッチパネル(曲面パネル)を有利に製造する方法として、目的とする湾曲形状に対応した加圧面を有する上下の成形治具を用い、この上下の成形治具間に、平板形状を有する前記組付け体を挟み、それら上下の成形治具にて加圧した状態下で、ろう付け加熱するようにした手法も提案したが、このような手法において、前記潤滑板を平板状の組付け体と上下の成形治具との間に介在させた場合にあっても、かかる潤滑板の存在によって、上下の成形治具の摩耗粉による二つの面板表面の摺動傷の発生が効果的に防止され得るのである。
【0006】
ところが、前記特公平2−28422号公報において潤滑板として使用される薄いカーボンシートは、剛性がなく、取扱性に劣るため、上下の成形治具の間への配置作業に手間がかかって、その作業性を低下させるといった問題を有しているばかりでなく、かかるカーボンシートが比較的、脆く、破れ易いものであることから、実際の製造現場での耐用回数が少なく、そのために、そのような薄いカーボンシートからなる潤滑板を用いてサンドイッチパネルを大量に製造する場合、潤滑板の取替え回数が不可避的に増大し、それによって、大量生産によるコストダウンのメリットが減殺されてしまうといった不具合が生じていた。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、組付け体の面板の成形治具に対する摺動に伴う面板表面への摺動傷の発生を防止することが出来、しかも、そのような摺動傷のないサンドイッチパネルを、コストの過剰な増大を招くことなく、容易に且つ大量に製造し得る方法を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、かかる課題を解決するために、上下の成形治具間に、アルミニウム材質のコアの両側にアルミニウム材質の面板をそれぞれ配してなる組付け体を挟み、それら上下の成形治具にて加圧した状態下において、ろう付け加熱することにより、少なくとも前記コアと面板とが一体的にろう付けされてなるサンドイッチパネルを製造するに際して、前記上下の成形治具と前記組付け体との間に、前記ろう付け加熱温度において容易に塑性変形せず、且つ潤滑性を有する、弾性変形可能なステンレススチール板からなる潤滑板を介在せしめたことを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法を、その要旨とするものである。
【0009】
このような本発明に従うサンドイッチパネルの製造方法にあっては、上下の成形治具と組付け体との間に、潤滑性を有するステンレススチール板からなる潤滑板を介在せしめた状態下で、上下の成形治具にて組付け体を加圧しつつ、加熱によるろう付け接合を行なうようにしたものであるところから、この組付け体のろう付け接合工程において、面板の潤滑板表面に対するスムーズな摺動が確保され得て、かかる摺動に伴う成形治具からの摩耗粉の発生が抑制され、それによって、該摩耗粉による面板表面の摺動傷の発生が効果的に防止され得ることとなるのである。
【0010】
しかも、かかる本発明手法においては、潤滑板として、特に、組付け体のろう付け加熱温度において容易に塑性変形することなく、弾性変形可能なステンレススチール板からなるものが用いられているため、剛性がなく、破れ易い従来のカーボンシート製の潤滑板を用いる場合とは異なって、上下の成形治具の間への潤滑板の配置作業が手間を要することなく、簡単に行なわれ得るのであり、また繰り返し使用しても、上下の成形治具による加圧下での組付け体に対するろう付け接合時において、潤滑板に、破れ等の使用不能となるような損傷や熱変形が生じるようなことが有利に回避され、以て、潤滑板の耐用回数が飛躍的に向上され得るのである。そして、それによって、目的とするサンドイッチパネルを大量に製造する際に、薄いカーボンシート製の潤滑板を用いる場合に比して、潤滑板の配置作業の作業性が有利に向上され得ると共に、潤滑板の取り替え回数が極端に少なくされ、或いはその製造量によっては潤滑板を取り替える必要が皆無ならしめられ得て、潤滑板の使用によって生ずる経済的な負担が、極めて効果的に低減され得ることとなる。
【0011】
従って、この本発明に従うサンドイッチパネルの製造方法によれば、組付け体の面板が成形治具に対して摺動せしめられた際に、摺動傷が面板表面に生じるようなことを効果的に防止することが出来、しかも、そのような摺動傷のないサンドイッチパネルを、コストの過剰な増大を招くことなく、容易に且つ大量に製造することが可能となるのである。
【0012】
また、本発明にあっては、目的とする湾曲面形状に対応した加圧面を有する上下の成形治具間に、アルミニウム材質のコアの両側にアルミニウム材質の面板をそれぞれ配してなる組付け体を挟み、それら上下の成形治具にて加圧した状態下において、ろう付け加熱することにより、少なくとも前記コアと面板とが一体的にろう付けされてなると共に、所定の湾曲面形状の曲面を備えたサンドイッチパネルを製造するに際して、前記上下の成形治具と前記組付け体との間に前記ろう付け加熱温度において容易に塑性変形せず、且つ潤滑性を有する、弾性変形可能なステンレススチール板からなる潤滑板を介在せしめたことを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法をも、その要旨とするものである。
【0013】
このような本発明に従うサンドイッチパネルの製造方法にあっても、上下の成形治具と組付け体との間に、前述の如き特別な潤滑板を介在させて、かかる組付け体を加圧下において加熱せしめて、ろう付け接合するようにしたものであるところから、目的とするサンドイッチパネルを大量に製造するに際して、一つの潤滑板を何度も繰り返し使用することが出来、従って、面板表面に摺動傷のないサンドイッチパネルが、コストの過剰な増大を招くことなく、容易に且つ大量に製造され得るのである。
【0014】
また、かかる本発明手法においては、所定の湾曲面形状の曲面を備えたサンドイッチパネルを、該湾曲面形状に対応した加圧面を有する上下の成形治具を用いて製造するに際して、その上下の成形治具における湾曲面形状の加圧面上に、組付け体が、ステンレススチール板からなる潤滑板を介して配置されるようになっていることから、下側成形治具の凸形湾曲面形状を呈する加圧面上に組付け体を配置するときに、該組付け体を該加圧面上に直接に配置する場合や、該加圧面に沿って湾曲配置せしめられることとなる薄いカーボンシート製の潤滑板を介して配置する場合とは異なり、平板形状を呈する潤滑板の上に、水平に位置せしめることが出来る特徴がある。そして、それによって、組付け体を、上下の成形治具の間に、極めて簡単に且つ迅速に、位置精度良く、また安定的に配置することが出来、以て、上下の成形治具の間への組付け体の配置作業の作業性が、効果的に高められ得ることとなる。
【0015】
しかも、かかる本発明手法にあっては、組付け体のろう付け加熱温度において容易に塑性変形せず、弾性変形可能な潤滑板が用いられているところから、組付け体が、加熱によるろう付け接合工程で上下の成形治具により加圧され、それらの成形治具の加圧面の形状に対応して曲げ変形せしめられる際に、その曲げ変形の進行に応じて、それら組付け体と上下の成形治具の間に介在する潤滑板が弾性変形せしめられ、それに伴って、該潤滑板の弾性変形に対する復元力が生じ、この復元力にて、組付け体のコアの両側に配された面板が、それぞれ、コアに押し付けられる方向に押圧されることとなる。そして、それによって、コアと面板とが密接せしめられて、それらコアと面板との接合面間におけるクリアランスの発生が効果的に解消され、その結果として、コアと面板との間のろう付け不良率が有利に改善され得て、接合品質の高いサンドイッチパネルが極めて安定的に製造され得るのである。
【0016】
なお、上述の如き本発明に従うサンドイッチパネルの二つの製造方法においては、好ましくは、使用される潤滑板の表面には所定の潤滑剤が塗布される。これによって、潤滑板の潤滑性がより有利に高められて、組付け体の加熱によるろう付け接合時に、面板が潤滑板表面に対してより一層スムーズに摺動せしめられ、以て、そのような摺動に伴って成形治具から生ずる摩耗粉による面板表面への摺動傷の発生が、更に一層確実に防止され得るのである。なお、かかる潤滑板としては、耐熱性が良好で、そのために、ろう付け加熱温度下において弾性変形に対する復元力が大きく、しかも防錆性に優れたステンレススチール板が、特に有利に用いられる。
【0017】
また、かかる本発明に従うサンドイッチパネルの製造方法の望ましい態様の一つによれば、所定高さのコアと、該コアを取り囲むように外側に配した枠材と、それらコア及び枠材の上下両側にそれぞれ配した面板とから構成された組付け体を用いて、目的とするサンドイッチパネルが製造されることとなる。
【0018】
すなわち、このような枠材を備えた組付け体を用い、特に、それを、目的とする湾曲面形状に対応した加圧面を有する上下の成形治具の間に、本発明に従う潤滑板を介して配置して、該組付け体の加熱による曲げ加工及びろう付け接合を行なう場合にあっては、潤滑板の曲げ変形に対する復元力により、上下の面板とコアと枠材とが互いに密接せしめられて、それら上下の面板とコアと枠材とが、同時に且つ同一の変形量にて、一体的に曲げ変形せしめられ得ることとなるところから、組付け体が上下の成形治具の間に直接に配置される場合や、薄いカーボンシート製の潤滑板を介して上下の成形治具の間に配置される場合とは異なって、枠材が曲げ変形せしめられる前に、下側成形治具の加圧面上に位置する一方の面板のみが、加熱による軟化に伴って、自重により下側成形治具の加圧面に沿うような形状に変形させられたり、またそのために、該一方の面板上に支持されるコアの外周部分も自重により垂れ下がってしまうようなことが、効果的に防止され得るのである。
【0019】
従って、このような本発明手法によれば、加熱による曲げ加工及びろう付け接合工程において、枠材の曲げ変形の進行に伴って、自重により垂れ下がったコアの外周部分が、該外周部分の角部に接触位置する枠材内面にて押圧されて、該外周部分に潰れや配列の乱れ等が生ずるようなことが良好に回避され得、以てコアの潰れや配列の乱れによる形状不良等のない高品質な、枠材を備えたサンドイッチパネルが安定的に製造され得ることとなる。
【0020】
また、本発明に従うサンドイッチパネルの製造方法にあっては、有利には、前記上下の成形治具に対して、それぞれ、前記潤滑板を支持するための支持体を設けて、それら支持体にて該潤滑板をそれぞれ支持せしめ、それら上下の成形治具に支持された潤滑板間に前記組付け体を配置して、前記加圧下での加熱によるろう付け接合が行なわれる。このように、潤滑板を上下の成形治具に対して支持せしめる場合、前述の如く、該潤滑板が、組付け体のろう付け加熱温度において容易に塑性変形せず、弾性変形可能なステンレススチール板にて構成されて、薄いカーボンシートからなる潤滑板に比して、極めて優れた耐久性を有するものであることから、かかる潤滑板を上下の成形治具に対して、常時、配設しておくことが出来るため、目的とするサンドイッチパネルを大量に製造する際に、サンドイッチパネルを1枚ずつ製造する毎に、潤滑板を上下の成形治具の間に配置したり、そこから取り出したりする手間が有利に省かれ得るのであり、その結果として、1枚のサンドイッチパネルの製造に要する手間と時間が省略化され得て、サンドイッチパネルの製造作業の作業性とその生産性とが、共に効果的に向上され得るのである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明に係るサンドイッチパネルの製造方法の構成について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0022】
先ず、図1には、本発明手法によって製造されるサンドイッチパネルの一例として、全体として矩形形状を呈し、且つ該矩形の二辺が湾曲せしめられて二次元湾曲形状とされることにより、凸形湾曲面からなる上面と凹形湾曲面からなる下面とが付与された、所謂曲面パネルとしてのろう付けアルミニウム・ハニカムパネル10が、示されている。このハニカムパネル10は、互いに所定距離を隔てて平行に配設された2本の湾曲枠材12,12と、それら2本の湾曲枠材12,12を両端部で相互に接続する2本の直線枠材14,14とによって、全体として略口字状に組み立てられた枠体16を有しており、この枠体16にて囲まれた空間内に、上下方向に延びる多数のセルが水平方向に配列されてなる略蜂の巣状のハニカムコア18が収容配置されていると共に、それら枠体16及びハニカムコア18を両側から挟むようにして、一対向方向に湾曲する湾曲面形状を呈する上面板20と下面板22とが重ね合わされて、一体的にろう付けされてなる構造とされている。
【0023】
ところで、このような構造とされたハニカムパネル10を製造する際には、先ず、図2に示される如き平板形状を呈する組付け体24を形成する。この組付け体24は、前記枠体16とハニカムコア18と上下の面板20,22とが組み付けられてなるものであるが、それら枠体16、ハニカムコア18、上下の面板20,22としては、何れも、湾曲していないものであって、従来の平板形状を呈するハニカムパネルを与えるそれらと同様な構造のものが用いられる。
【0024】
すなわち、上下の面板20,22は、例えば、一方の面にろう材がクラッドされた、平板形状を呈するアルミニウム合金製のブレージングシートを、枠体16の外形に対応した矩形形状に形成したものが用いられる。
【0025】
また、枠体16は、縦断面口字形状を呈する中空のアルミニウム合金製押出形材を適当な長さに切断してなる4本の形材を、口字状の枠形に組み合わせて、部分的に溶接等により形状固定して形成されたものや、それら4本の形材が、非接合状態で、単に、口字状に組み合わされただけのもの等が用いられる。なお、各形材を単に組み合わせただけの枠体16は、後述する組付け体24のろう付け加熱による接合工程において、加熱溶融した、前記上下の面板20,22等にクラッドされたろう材が、各形材同士の当接部間や、上下の面板20,22及びハニカムコア18と各形材との当接部間等に流れ込むことにより、それら各形材とハニカムコア18及び上下の面板20,22とが互いにろう付け接合されて、一体的な構造とされる。
【0026】
さらに、ハニカムコア18は、例えば、帯板状のアルミニウム材、若しくはアルミニウム材の両面または片面にろう材がクラッドされたブレージングシートを連続して半六角形状にコルゲート成形した板材等からなる複数のハニカム形成材19を、前記枠体16にて囲まれた空間内に、全体として六角形のセルが複数形成されるように並べて配設してなるものが用いられる。なお、この枠体16の空間内にハニカムコア18を配設する際には、複数のハニカム形成材19のそれぞれを、枠体16の空間内に1枚ずつ順に並べて配することにより、該空間内で、各ハニカム形成材19が互いにろう付け接合されていないハニカムコア18を形成して、配設するようにしても良く、或いはそれら複数のハニカム形成材19を予め相互にろう付け接合してハニカムコア18を形成し、この一体構造のハニカムコア18を枠体16の空間内に組み込むようにしても良い。また、前者の方法において、ブレージングシートからなる複数のハニカム形成材19を枠体16内に配置する場合、それら複数のハニカム形成材19は、後述する組付け体24のろう付け加熱工程において、各ハニカム形成材19にクラッドされたろう材により相互にろう付け接合されることとなるのであり、更に、かかる前者の方法で、単なるアルミニウム材からなる複数のハニカム形成材19を枠体16内に配置する場合には、該ろう付け加熱工程において、前記上下の面板20,22等にクラッドされたろう材が溶融し、この溶融されたろう材が各ハニカム形成材19の当接部間に流れ込むことによって、各ハニカム形成材19が相互にろう付け接合されることとなる。
【0027】
そして、このようなハニカムコア18とそれを外側から取り囲むようにして配された枠体16の両側に対して、上下の面板20,22が、ろう材がクラッドされた面を内側にして重ね合わされて、組み付けられることにより、組付け体24が形成されるのである。なお、この組付け体24の形成に際しては、後述する組付け体24の熱間曲げ加工時に上下の面板20,22と枠体16との間でズレが生じないように、上下の面板20,22を、枠体16に対して適当数のポイントで溶接等により仮止めしても良い。この仮止めは、組付け体24の熱間曲げ加工時に、各部材の自由な変形を妨げないように行なわれ、例えば、上下面板20,22の曲げ予定方向に延びる両辺部における各中央部分を、枠体16に仮止め溶接すること等によって、実施される。
【0028】
一方、かくして形成される組付け体24とは別個に、図3に示される如く、全体として、矩形平板形状を呈する潤滑板26を準備する。この潤滑板26としては、後述する組付け体24のろう付け加熱温度である約570〜600℃の高温下において弾性変形はするものの、容易に塑性変形せしめられることがなく、しかも、潤滑性を備えた金属板が用いられる。そして、ここでは、上述の如き高温下において、軟化も塑性変形もしないステンレススチールの圧延板が、前記組付け体24の上下の面板20,22よりも一周り大きな大きさにおいて切断されて、潤滑板26として用いられている。また、この潤滑板26の表面には、より優れた潤滑性を得るために、必要に応じて、炭素粉末や窒化ホウ素粉末等の微細な固体潤滑剤が塗布される。
【0029】
なお、かかる潤滑板26としては、耐熱性が良好で、そのために高温下における弾性変形に対する復元力が大きく、しかも防錆性に優れたステンレススチール板が、特に好ましく使用されるのである。また、この潤滑板26の厚さも、特に限定されるものではなく、潤滑板26を与える材質間における弾性変形に対する復元力の大きさ等に応じて、適宜に決定されるところである。
【0030】
そして、図4に示される如く、そのような潤滑板26を2枚用い、それら2枚の潤滑板26a,26bと前述の如くして形成された組付け体24とを成形装置28にセットする。ここにおいて、この成形装置28は、特開平8−174111号公報に記載された、曲面を有するろう付けパネルを製造する際に用いられる装置と略同様な構造を有するもので、目的とするハニカムパネル10の凸形湾曲面形状を呈する上面に対応した凹形加圧面30を有する上側成形治具32と、該ハニカムパネル10の凹形湾曲面形状を呈する下面に対応した凸形加圧面34を有する下側成形治具36とを含んで構成されている。また、この成形装置28にあっては、特に、所定の幅をもって鉛直方向に延びる固定部38と水平方向に延びる支持部40とを有する、縦断面L字状の板材からなる上側支持体42と下側支持体44とを、それぞれ、二つずつ有している。そして、それら上側支持体42と下側支持体44は、何れも、支持部40が、上側成形治具32の凹形加圧面30と下側成形治具36の凸形加圧面34の湾曲する二つの辺縁部と隣り合って位置する二つの辺縁部において、凹形加圧面30と凸形加圧面34とに対して、それぞれ対向位置せしめられた状態で、固定部38が、上側及び下側成形治具32,36の側面に固定されることにより、それら上側及び下側成形治具32,36に取り付けられている。
【0031】
そして、このような成形装置28に2枚の潤滑板26a,26bと組付け体24とをセットするには、先ず、下側成形治具36の凸形加圧面34上に、1枚の潤滑板26aを、水平に位置し、且つその上面の外周縁部において、前記下側支持体44の支持部40にて下方に押圧されて、該支持部40の下面に係合せしめられた状態で載置して、該下側成形治具36に対して支持させる。一方、もう1枚の潤滑板26bを、上側成形治具32の凹形加圧面30に対向して水平に位置し、且つその下面の外周縁部において、該上側成形治具32に取り付けられた上側支持体42の支持部40に係合させた状態で載置して、該上側成形治具32に対して支持させる。そして、下側成形治具36に支持された潤滑板26aの上に、組付け体24を載置した後、この組付け体24に対して、上側成形治具32に支持された潤滑板26bを重ね合わせて、それら潤滑板26bと上側成形治具32とを組付け体24上に載置する。これによって、組付け体24を、上側及び下側成形治具32,36の間に挟んで水平に配置すると共に、2枚の潤滑板26a,26bを、それら組付け体24と上側成形治具32及び下側成形治具36との間に、それぞれ1枚ずつ介在させて、配置するのである。
【0032】
そして、そのようにして組付け体24と2枚の潤滑板26a,26bとがセットされた成形装置28が、図5に示される如く、上側成形治具32の上に、加圧マス46が載置され、且つ下側成形治具36が搬送用トレイ48上に載置された状態で、ヒータ50を備えた加熱炉52内に収容される。また、このように、上側成形治具32上に加圧マス46が載置されていることによって、組付け体24と2枚の潤滑板26a,26bに対して、上側成形治具32と加圧マス46の合計重量に応じた加圧力が作用せしめられて、それら組付け体24と2枚の潤滑板26a,26bとが一定の加圧力にて加圧されることとなる。なお、加圧マス46の重量は、加熱炉52の加熱開始前に、組付け体24の塑性変形が発生しないように、枠体16の強度等を考慮して、適宜に決定される。
【0033】
次に、必要に応じて加熱炉52内を真空状態や不活性ガス雰囲気とした状態下で、加熱炉52の加熱を開始して、図6に示されるように、成形装置28内の組付け体24を加熱、軟化させ、上側成形治具32と加圧マス46の重量に基づく一定の加圧力の下で、上側成形治具32の凹形加圧面30と下側成形治具36の凸形加圧面34に沿って曲げ加工し、該組付け体24の全体を、それら両加圧面30,34に対応した形状に塑性変形せしめて、目的とする湾曲形状に成形する。その際、潤滑板26a,26bも、組付け体24と共に、上側成形治具32から及ぼされる加圧力により、凹形及び凸形加圧面30,34に沿って、湾曲形状に弾性変形せしめられる。
【0034】
その後、加熱炉52内の温度を更に上昇させて、上下の面板20,22や各ハニカム形成材19にクラッドされたろう材を加熱溶融させて、上下の面板20,22と各ハニカム形成材19と枠体16との互いの当接部間や、各ハニカム形成材19同士の当接部間、更には枠体16同士の当接部間等に流れ込ませて、ろう付け接合する。
【0035】
なお、このような組付け体24の加圧状態下での加熱による曲げ加工及びろう付け接合工程では、組付け体24の上下の面板20,22と上側及び下側成形治具32,36の凹形及び凸形加圧面30,34との間に、表面に微細な固体潤滑剤が塗布されて、より一層優れた潤滑性が付与された潤滑板26a,26bがそれぞれ1枚ずつ介在せしめられていることによって、それら上下の面板20,22のそれぞれが、上側及び下側成形治具32,36の凹形及び凸形加圧面30,34に直接に接触せしめられることなく、組付け体24の曲げ変形の進行に伴って、潤滑板26a,26bのそれぞれに対して、極めてスムーズに摺動せしめられ得るようになっている。しかも、かかる潤滑板26a,26bが、組付け体24のろう付け加熱温度下において軟化も塑性変形しないステンレススチールの圧延板にて構成されているため、各潤滑板26a,26bに対する上下の面板20,22の摺動時等に、潤滑板26a,26bに破れ等の使用不能となる損傷が惹起されたり、或いはそれら潤滑板26a,26bが加圧状態からの開放時に復元不能な変形が生じたりするようなこともない。
【0036】
また、前述せるように、組付け体24の曲げ加工及びろう付け接合工程において、潤滑板26a,26bが、上側成形治具32から及ぼされる加圧力によって湾曲形状に弾性変形せしめられており、それによって、それら潤滑板26a,26bにおいて、弾性変形に対する復元力が生じ、図7に示される如く、この復元力にて、上下の面板20,22が、ハニコムコア18及び枠体16との対向面の全面にて、それぞれ、ハニカムコア18と枠体16に押し付けられる方向に押圧されて、それらハニカムコア18及び枠体16と上下の面板20,22とが互いに密接せしめられるようになっている。更に、そのような潤滑板26a,26bの復元力に基づいて、ハニカムコア18及び枠体16と上下の面板20,22とが互いに密接せしめられた状態下では、組付け体24に対する加圧力によって、上下の面板20,22と枠体16とハニカムコア18とが、同時に且つ同一の変形量で、一体的に曲げ変形せしめられることとなる。
【0037】
その後、上述のように湾曲形状に成形され、ろう付けされた組付け体24を、上側及び下側成形治具32,36の間に加圧下で挟み込んだままの状態で、加熱炉52内で、或いは加熱炉52から取り出して、自然に、或いは特別な冷却装置を用いて冷却することにより、ろう付け接合工程を完了する。なお、この組付け体24の冷却操作は、焼入れによる強度向上や製造サイクルの短縮化等を図る上で、急冷操作によって為されることが望ましい。
【0038】
そして、冷却後に、上側成形治具32と下側成形治具36とを開いて、組付け体24が一体的にろう付け接合されたパネルを取り出し、以て図1に示される如き、目的とするろう付けアルミニウム・ハニカムパネル10を得るのである。なお、このとき、潤滑板26a,26bは、前述の如く、再使用可能な状態で、上側及び下側成形治具32,36の上側及び下側支持体42,44に支持されていることから、それら潤滑板26a,26bを成形装置28内から取り出す必要はなく、それによって、かかる成形装置28内に常設しておくことが可能となっている。
【0039】
このように、本実施形態にあっては、組付け体24の加圧下での加熱による曲げ加工及びろう付け接合工程において、組付け体24の曲げ変形の進行に伴って、該組付け体24の上下の面板20,22が、上側及び下側成形治具32,36の凹形及び凸形加圧面30,34に、何等接触せしめられることなく、潤滑板26a,26bに対して、極めてスムーズに摺動せしめられ得るようになっているところから、かかる摺動による上側及び下側成形治具32,36の凹形加圧面30と凸形加圧面34からの摩耗粉の発生が有利に回避され得、それによって、該摩耗粉による上下の面板20,22表面に対する摺動傷の発生が効果的に防止され得る。
【0040】
また、本実施形態においては、潤滑板26a,26bが、ステンレススチールの圧延板にて構成されていることにより、前記組付け体24の曲げ加工及びろう付け接合工程で、再使用が不可能となるような損傷や熱変形が潤滑板26a,26bに惹起されるようなことが有利に回避され得るようになっていることから、かかる組付け体24の曲げ加工及びろう付け接合工程での潤滑板26a,26bの優れた使用耐久性が有効に確保され得、それによって、目的とするハニカムパネル10を大量に製造する際に、それら潤滑板26a,26bの交換が不要ならしめられ得るのであり、その結果、潤滑板26a,26bの使用に伴う経済負担が効果的に低く抑えられ得ることとなる。
【0041】
しかも、潤滑板26a,26bが、ステンレススチール板から成っていることから、剛性がなく、取扱性に劣る従来のカーボンシートからなる潤滑板を用いる場合に比して、上側及び下側成形治具32,36の間への潤滑板26a,26bの配置作業が手間なく、簡単に行なわれ得る。
【0042】
従って、このような本実施形態に係るハニカムパネル10の製造手法によれば、上下の面板20,22表面に摺動傷のない、高品質なハニカムパネル10を、優れた作業性をもって、大量に且つ比較的安価に製造することが出来るのである。
【0043】
さらに、本実施形態にあっては、組付け体24の曲げ加工及びろう付け接合工程において、潤滑板26a,26bの弾性変形に対する復元力に基づく押圧力にて、ハニカムコア18及び枠体16と上下の面板20,22とが互いに密接せしめられるようになっているところから、それらハニカムコア18及び枠体16と上下の面板20,22との接合面間におけるクリアランスの発生が効果的に皆無ならしめられ得て、ハニカムコア18及び枠体16と上下の面板20,22との間のろう付け接合性が効果的に高められ得、その結果として、ろう付け不良等のない接合品質の高いハニカムパネル10を確実に且つ安定的に製造することが可能となる。
【0044】
更にまた、かかる本実施形態においては、潤滑板26a,26bの復元力に基づいて、ハニカムコア18及び枠体16と上下の面板20,22とが互いに密接せしめられた状態下で、組付け体24に対する加圧力によって、上下の面板20,22と枠体16とハニカムコア18とが、同時に且つ同一の変形量で、一体的に曲げ変形せしめられ得るようになっていることから、下面板22のみが、加熱による軟化に伴って、枠体16が曲げ変形せしめられるより先に、自重により下側成形治具36の凸形加圧面34に沿って曲げ変形せしめられるようなことが阻止され得、また、それによって、下面板22上に支持されるハニカムコア18の外周部分が自重により垂れ下がってしまうようなことも効果的に防止され得る。従って、本実施形態では、枠体16の曲げ変形に伴って、自重により垂れ下がったハニカムコア18の外周部分の角部に接触する枠体16の内面にて、該ハニカムコア18の外周部分を押圧し、該外周部分に潰れや配列の乱れ等が惹起されるようなことが良好に回避され得、以て、形状不良等のない品質の優れたハニカムパネル10が安定的に製造され得ることとなる。
【0045】
また、本実施形態にあっては、上側成形治具32と下側成形治具36とに対して、矩形平板形状を呈する二つの潤滑板26a,26bが、凹形加圧面30と凸形加圧面34とに対向し、水平に位置せしめられた状態で固定されており、それによって、組付け体24を下側成形治具36に固定された潤滑板26a上に載置するだけで、それら上側成形治具32と下側成形治具36との間に、水平に且つ安定的に配置されるようになっているところから、組付け体24の成形装置28内への配置作業が、極めて簡単に且つ迅速に行なわれ得、以てかかる配置作業の作業性が効果的に高められ得る。
【0046】
さらに、本実施形態においては、前述の如く、潤滑板26a,26bが優れた使用耐久性を有しており、それらを成形装置28内に常設しておくことが出来るところから、ハニカムパネル10を大量に製造するに際して、1枚のハニカムパネル10を製造する毎に、潤滑板26a,26bを成形装置28内に配置したり、そこから取り出したりする作業から有利に開放され得、それによって、1枚のハニカムパネル10の製造に要する手間と時間が有効に省略化され得て、ハニカムパネル10の製造にかかる作業性とその生産性とが、何れも効果的に向上され得ることとなる。
【0047】
因みに、本実施形態に従う、下記の具体的工程によって、ハニカムパネルを実際に製造し、得られたハニカムパネルにおいて、上述の如き数々の優れた特徴点について評価した。
【0048】
すなわち、先ず、6000番系押出し材である口型断面の中空形材(幅:37mm,高さ:28mm,肉厚:2mm)を4本用い、それらを組み合わせて溶接することにより、長さ:840mm,幅:540mmの矩形枠体形状を有する枠材を形成し、該枠材の内部に対して、両面にクラッド率:5%のろう材がクラッドされた6000番系のブレージングシート(厚さ:0.2mm)を連続した半六角形状(波形状)にコルゲート成形したハニカム形成材の複数枚を並列的にセットし、全体としてセルサイズ(セルの内接円の直径):30mmのハニカムコアを組み込むと共に、それら枠材とハニカムコアを両側から挟み込むようにして、それぞれ内側となる方の面にクラッド率:10%のろう材がクラッドされた6000番系のブレージングシート(厚さ:1.0mm)からなる上下の面板(長さ:840mm,幅:540mm)を重ね合わせることによって組み上げて、平板形状を呈する組付け体を複数形成した。
【0049】
一方、厚さが約2mmのステンレススチールの圧延板と、厚さが約2mmの鉄板と、厚さが約3mmのアルミニウム板と、厚さが約0.2〜1.0mmのカーボン製シートとを、それぞれ、前記組付け体24の上下の面板20,22よりも一周り大きな大きさに2枚ずつ切断し、それら4種類の板材を用いて、互いに材質の異なる4種類の潤滑板をそれぞれ2枚ずつ準備した。また、それら準備された各潤滑板の表面には、窒化ホウ素粉末を主成分として含む微細な固体潤滑剤を、公知の方法により、それぞれ塗布した。
【0050】
そして、それら4種類の潤滑板のうち、先ず、ステンレススチール板からなる潤滑板の2枚を用いて、この2枚の潤滑板を、上側成形治具の上側支持体と下側成形治具の下側支持体とに、それぞれ1枚ずつ支持させた後、それら上側成形治具と下側成形治具の間に、前述の如くして形成された組付け体をセットし、その後、この組付け体がセットされた成形装置の上側成形治具上に加圧マスを載置した。なお、この加圧マスの重量は、該加圧マスと上側成形治具とによって、組付け体に対して、該組付け体を常温下で僅かに弾性変形せしめるだけの105kgの加圧力が作用するように設定した。そして、そのように、組付け体がセットされ、且つ加圧マスが載置された状態下で、成形装置を加熱炉内に配置し、真空中において約5℃/分で昇温して加熱した。途中で加熱を中止して観察した別の実験によれば、組付け体の曲げ変形は約400℃から開始され、約460℃でほぼ完了していた(この間、およそ12分である)。そして、組付け体を約600℃まで加熱してろう付け接合を完了した。ろう付け完了後に、上側及び下側成形治具を、組付け体を挟み込んだ状態で加熱炉から取り出し、専用の冷却設備で急冷した。以上の工程を計10回繰り返し実施して、湾曲形状を呈する10枚のハニカムパネルを得た。
【0051】
次いで、前記4種類の潤滑板のうち、鉄板からなる潤滑板の2枚を用い、ステンレススチール板からなる潤滑板を用いた場合と同様な操作を行なって、10枚のハニカムパネルを得、更に、アルミニウム板からなる2枚の潤滑板とカーボン製シートからなる2枚の潤滑板とを用い、それぞれ、ステンレススチール板からなる潤滑板を用いた場合と同様な操作を行なって、ハニカムパネルを10枚ずつ得た。
【0052】
そして、そのようにして互いに材質の異なる4種類の潤滑板を使用して得られた10枚ずつのハニカムパネルを用い、各ハニカムパネルの面板表面における摺動傷の有無を視認により調べて、それら各ハニカムパネルの表面品質を評価した。その結果を下記表1に示した。なお、下記表1では、この各ハニカムパネルの表面品質の評価について、該表面に摺動傷が全く認められないものを◎、それが僅かに認められるものを○、それが明確に認められるものを△として示した。
【0053】
また、前述の如き互いに材質の異なる4種類の潤滑板を使用して得られた10枚ずつのハニカムパネルを用い、各ハニカムパネルの上下面における枠体と面板、コアと面板のろう付け接合品質を、それぞれ上下の面板を剥がし、目視にて確認した。その結果を下記表1に併せて示した。なお、下記表1では、各ハニカムパネルのろう付け接合品質を上下面のそれぞれについて評価し、接合率が95%以上のものを◎、90%以上95%未満のものを○、90%未満のものを△として、それぞれ示した。
【0054】
また、4種類の潤滑板を別々に用いて、ハニカムパネルを10枚ずつ製造した際における潤滑板の成形装置へのセット回数を、用いられる潤滑板の種類別に調べ、そのセット回数の差異によって、それら10枚のハニカムパネルの製造作業の作業性を、使用される潤滑板の種類別に評価した。その結果を下記表1に併せて示した。なお、下記表1では、潤滑板の成形装置へのセット回数が1回で済んだものを、ハニカムパネルの製造作業の作業性に優れたものとして◎で示し、また、該セット回数が2回〜9回のものを、該作業性が比較的良好であるものとして○で示し、更に、該セット回数が10回であったもの、即ち、1枚のハニカムパネルを製造する毎に潤滑板を一々セットしなければならなかったものを、ハニカムパネルの製造作業の作業性に劣るものとして△にて示した。
【0055】
さらに、そのような潤滑板の成形装置へのセット回数とは別に、4種類の潤滑板を別々に用いて、ハニカムパネルを連続して10枚ずつ製造した際における潤滑板の取替え回数を調べて、潤滑板の種類別の使用耐久性を評価した。その結果を下記表1に示した。なお、下記表1では、10枚のハニカムパネル10の製造過程で、潤滑板の取替え回数が0回であったものを、使用耐久性に優れるものであるとして◎にて示し、また、その取替え回数が1回〜8回であったものを、使用耐久性が比較的良好であるものとして○で示し、更に、該取替え回数が9回であったもの、即ち、1枚のハニカムパネルを製造する毎に、潤滑板を毎回取り替えなければならなかったものを、使用耐久性に劣るものとして△にて示した。また、下記表1には、上記4つの評価事項から判断される総合評価を併せて示した。この総合評価は、パネル表面に摺動傷がなく、ろう付け接合品質に優れたハニカムパネルを大量に製造するに際して、特に好適に使用されるものを◎、好適に使用されものを○、使用に適するとはいい難いものを△として、それぞれ、示した。
【0056】
表 1
Figure 0004536838
【0057】
かかる表1の結果からも明らかなように、ステンレススチール板や鉄板からなる潤滑板を用いた場合は、表面品質に優れるばかりでなく、カーボン製シートからなる潤滑板を用いる従来の場合に比して、パネル上下面の接合品質、パネルの製造作業における作業性、及び潤滑板の使用耐久性において優れた評価が得られ、その総合評価においても、パネル表面に摺動傷がなく、接合品質に優れたハニカムパネルを、コストの過剰な増大を招くことなく大量に製造する際に、特に好適に用いられるものとして、高い評価が得られる。また、アルミニウム板からなる潤滑板を用いた場合にあっても、ステンレススチール板や鉄板からなる潤滑板を用いる場合程ではないにしろ、カーボン製シートからなる潤滑板を用いるよりも、パネルの製造作業における作業性、及び潤滑板の使用耐久性の点において優れ、パネル表面に摺動傷のないハニカムパネルをコストの過剰な増大を招くことなく大量に製造する際に、好適に使用され得ることが認識される。
【0058】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0059】
例えば、前記実施形態では、単一の曲面を有するハニカムパネル10を製造する場合の一例について説明したが、複合曲面や球面状の曲面等の各種の曲面形状を有するサンドイッチパネル、或いはそのような曲面を何等有しない平板形状のサンドイッチパネルの製造に際して、本発明は、何れも、有効に適用され得るものである。
【0060】
また、前記実施形態では、六角形のセルを形成したハニカムコア18を備えたハニカムパネル10の製造方法について説明したが、その他、球面加工が容易な三角形状のセルや形成が容易な四角形状のセルなどを有するハニカムパネルの製造や、更には、ハニカム構造を有しないコルゲーションフィン材や形材等からなるコアを面板間に挟み込んだようなサンドイッチパネル等、アルミニウム材質のコアと、その両側に配されたアルミニウム材質の面板とを一体的にろう付けしてなるサンドイッチパネルの製造の何れに対しても、本発明は、同様に適用され得るものである。
【0061】
さらに、サンドイッチパネルの製造に用いられる上下の成形治具の構造も、前記実施形態に示されるものに、何等限定されるものではなく、例えば、所定の湾曲面形状の曲面を備えたサンドイッチパネルを製造する際には、上側成形治具32に対して、かかる湾曲パネルの凹形湾曲面形状に対応した凸形加圧面を設けると共に、下側成形治具36に対して、該湾曲パネルの凸形湾曲面形状に対応した凹形加圧面を設けるようにしても良い。尤も、前記実施形態の如く、凹形加圧面30を有する上側成形治具32と凸形加圧面34を有する下側成形治具36を用いれば、成形されるサンドイッチパネルの中央が上方に凸とされることから、余剰なろう材がパネル中央部に溜まることが防止されて、均一なろう付け接合性を得ることが出来るといった利点がある。
【0062】
また、前記実施形態では、組付け体24が、上側成形治具32とその上に載置される加圧マス46の重量によって加圧されるようになっていたが、組付け体24に対して加圧力を作用せしめるに際して、油圧装置による加圧方式を採用すること等も、勿論、可能である。
【0063】
さらに、上側及び下側成形治具32,36に対して2枚の潤滑体26a,26bをそれぞれ支持させる上側及び下側支持体42,44の形状や、両成形治具32,36への配設構造、更には各潤滑板26の支持構造は、前記実施形態に示されるものに、決して限定されるものでないことは、言うまでもないところである。また、かかる両支持体42,44は、本発明において必須のものではない。
【0064】
更にまた、潤滑板26の形状や大きさも、組付け体24の形状や大きさ等によって適宜に変更され得るものであることは、勿論である。
【0065】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【0066】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明に従うサンドイッチパネルの製造方法によれば、組付け体の面板の成形治具に対する摺動に伴う面板表面への摺動傷の発生を防止することが出来、しかも、接合品質に優れたサンドイッチパネルを、コストの過剰な増大を招くことなく、容易に且つ大量に製造することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明手法が適用されるサンドイッチパネルの一例を示す一部切欠斜視説明図である。
【図2】本発明手法に従ってサンドイッチパネルを製造する工程の一例を示す説明図であって、組付け体の組立状態を示している。
【図3】本発明手法に従ってサンドイッチパネルを製造する際に用いられる潤滑板の一例を示す斜視説明図である。
【図4】本発明手法に従ってサンドイッチパネルを製造する工程の別の例を示す説明図であって、図2に示された組付け体を成形装置に装着した状態を示している。
【図5】本発明手法に従ってサンドイッチパネルを製造する工程の更に別の例を示す説明図であって、図4に示された成形装置を加熱炉内にセットした状態を示している。
【図6】本発明手法に従ってサンドイッチパネルを製造する工程の他の例を示す説明図であって、加熱炉内で組付け体を加熱して、かかる組付け体に対して曲げ加工とろう付け接合とを行なった状態を示している。
【図7】本発明手法に従ってサンドイッチパネルを製造する工程の更に他の例を示す説明図であって、組付け体に対する曲げ加工の途中の状態を示している。
【符号の説明】
10 ろう付けアルミニウム・ハニカムパネル
16 枠体 18 ハニカムコア
20 上面板 22 下面板
24 組付け体 26 潤滑板
30 凹形加圧面 32 上側成形治具
34 凸形加圧面 36 下側成形治具
42 上側支持体 44 下側支持体
52 加熱炉

Claims (5)

  1. 上下の成形治具間に、アルミニウム材質のコアの両側にアルミニウム材質の面板をそれぞれ配してなる組付け体を挟み、それら上下の成形治具にて加圧した状態下において、ろう付け加熱することにより、少なくとも前記コアと面板とが一体的にろう付けされてなるサンドイッチパネルを製造するに際して、
    前記上下の成形治具と前記組付け体との間に、前記ろう付け加熱温度において容易に塑性変形せず、且つ潤滑性を有する、弾性変形可能な平板形状を呈するステンレススチール板からなる潤滑板を介在せしめたことを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法。
  2. 目的とする湾曲面形状に対応した加圧面を有する上下の成形治具間に、アルミニウム材質のコアの両側にアルミニウム材質の面板をそれぞれ配してなる組付け体を挟み、それら上下の成形治具にて加圧した状態下において、ろう付け加熱することにより、少なくとも前記コアと面板とが一体的にろう付けされてなると共に、所定の湾曲面形状の曲面を備えたサンドイッチパネルを製造するに際して、
    前記上下の成形治具と前記組付け体との間に、前記ろう付け加熱温度において容易に塑性変形せず、且つ潤滑性を有する、弾性変形可能な平板形状を呈するステンレススチール板からなる潤滑板を介在せしめたことを特徴とするサンドイッチパネルの製造方法。
  3. 前記潤滑板の表面に潤滑剤が塗布されている請求項1又は請求項2に記載のサンドイッチパネルの製造方法。
  4. 前記組付け体が、所定高さのコアと、該コアを取り囲むように外側に配した枠材と、それらコア及び枠材の上下両側にそれぞれ配した面板とから構成されている請求項1乃至は請求項3の何れかに記載のサンドイッチパネルの製造方法。
  5. 前記上下の成形治具に対して、それぞれ、前記潤滑板を支持するための支持体を設けて、それら支持体にて該潤滑板をそれぞれ支持せしめ、それら上下の成形治具に支持された潤滑板間に前記組付け体を配置して、前記加圧下でのろう付け加熱を行なうことからなる請求項1乃至は請求項4の何れかに記載のサンドイッチパネルの製造方法。
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