JP4530433B2 - 脂質及びグルコースの代謝疾患治療のための方法及び組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体(脊椎動物又はヒト)における脂質及びグルコースの代謝のうち少なくとも一つを修飾又は調節する新規な改善された方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
肥満及び脂質代謝疾患−体脂肪の減量
ヒトにおいて肥満とは、同じ性、身長及び体格の個体の望ましい体重より20%を越える体重の過剰と定義することができる(Salans, L.B.、Endocrinology & Metabolism、第2版、McGraw-Hill、New York、1987、第1203〜1244頁;また、R. H. Williams、Textbook of Endocrinology、1974、第904〜916頁参照)。他の動物において(又はヒトにおいて)、若くやせていて「健康的」な(即ち、代謝疾患だけでなくいかなる疾患をも有していない)種の構成員が、種に特徴的なパターンに従う一日の血漿プロラクチン水準プロフィールを有するとすると、肥満はプロラクチンプロフィールと相関する体重のパターンにより決定することができる。このパターンは再現性が高く、わずかな標準的な逸脱を伴う。しかしながら少なくとも一つの脂質及び代謝の疾患を有する種の構成員は、正常な(又は健康な被検者の)パターンから、少なくとも2つの間隔をおいて離れた時間点において少なくとも1SEM、又は少なくとも1つの時間点において少なくとも2SEM(Standard error of the mean、標準誤差)離れた異常なプロラクチンプロフィールを有する。
【0002】
肥満即ち過剰な脂肪の蓄積は、様々な脂質及び/又はグルコース代謝疾患例えば高血圧、タイプII糖尿病、じゅく状硬化等と相関し、かつこれらの発症の引き金となりうる。
【0003】
(上記定義による)臨床的肥満が存在しなくても、特に長期的又は恒久的にヒトにおける体脂肪の貯蔵(著しい内蔵性脂肪貯蔵)を減少させることは、美容的にも生理的にも著しい利益となりうる。
【0004】
特に長期的又は恒久的に、家畜(ならびにペット)の体脂肪貯蔵を減少させることも、明らかにヒトにとってかなりの経済的利益となりうる。これは特に飼育動物はヒトの食事の重要な部分を供給しており、動物の脂肪は結局ヒトの体内で改めて脂肪蓄積となるからである。
【0005】
制御された食事及び運動は、体脂肪蓄積の減少において中程度の結果をもたらしうる一方、本発明者らの累積的な研究(以下に引用する先行の共係属中の特許出願及び発行された米国特許を含む)に先立っては、真に有効な又は現実的な、肥満又は他の脂質代謝疾患を制御する療法は見いだされていない。
【0006】
高リポ蛋白症とは、血漿中の1つ以上のコレステロール又はトリグリセリドを担持するリポ蛋白(キロミクロン、超低密度リポ蛋白即ちVLDL、及び低密度リポ蛋白即ちLDL等)の濃度が正常の限界を越える状態である。この上限は、概ね無作為抽出人口の95パーセントとして定義される。これらの物質の上昇した水準は、じゅく状硬化と正に相関し、しばしば、米国における全ての死のおよそ半数の原因とされる心筋梗塞即ち「心臓発作」をもたらす。血漿リポ蛋白濃度の減少がじゅく状硬化の危険性の減少と相関する強い臨床的証拠が提示されている(Noma, A.ら., Atherosclerosis 49;1, 1983; Illingworth, D. and Conner, W., in Endocrinology & Metabolism, McGraw-Hill, New York 1987)。従って、著しい量の研究が、血漿コレステロール及びトリグリセリドの水準を減少させる治療方法を見つけるために行なわれた。血中においての高トリグリセリド水準を伴った高LDL及び/又はVLDLはじゅく状硬化の最も重要な危険因子を構成する。血中のリポ蛋白及びトリグリセリドの1つ又は両方を減少させることは、じゅく状硬化の危険性を減少させ、かつその発達を遅らせるか妨げる。
【0007】
脊椎動物に見られる血漿リポ蛋白の他の部分集合は、高密度リポ蛋白即ちHDLである。HDLは、遊離コレステロールを血漿から除くよう働く。総血漿コレステロール中の百分率としての高HDL濃度は、じゅく状硬化及び心臓病の危険の減少と関連づけられている。従ってHDLは、俗に「善玉」のコレステロールとして知られている。従って、治療学的戦略は、血漿LDL及びVLDL含有量を減少させること(即ち、総血漿コレステロールを減少させること)と、総血漿コレステロール中のHDL部分を増加させることとの両方の試みを含む。いくつかの一連の研究は、単純にHDLを増加させることは、LDL又はVLDLの減少をたとえ伴わなくても有益であることを示している(Bell, G. P. ら., Atherosclerosis 36:47-54, 1980; Fears, R., Biochem. Pharmacol. 33:219-228, 1984; Thompson, G., Br. Heart J. 51:585-588, 1989; Blackburn, H. N. E. J. M. 309:426-428, 1983)。
【0008】
現在の高リポ蛋白症の治療は、低脂肪の食事、及び座っていることの多い生活習慣等の増悪因子の除去を含む。もし高リポ蛋白症が二次的なものであれば(即ち、例えばリポ蛋白リパーゼ又はLDL受容体の欠乏、様々な内分泌病理、アルコール中毒、腎臓の疾患、肝臓の疾患等に付随するのであれば)原因となる疾患の制御もまた、つづいて治療すべき重要事項となる。高リポ蛋白症は薬物によっても治療され、薬物は通常総血漿コレステロール中の特定の成分の水準を変化させ、かつ総血漿脂質成分を減少させる。もっとも最近に導入された高リポ蛋白症を治療する薬物は、ロバスタチン(メバコール、登録商標)である。ロバスタチンは、コレステロール産生に関与する酵素である3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)リダクターゼを選択的に阻害する。この薬物は、特に総コレステロールを減少させ、中程度(5〜10%)のHDL濃度の増加をもたらすことができる。しかしながら、これらの治療によって得られる利益は患者によって異なる。
【0009】
さらに、HMG−CoA酵素阻害剤は、時に肝臓毒性、腎臓ミオグロブリン尿症、腎不全及びレンズ混濁等の副作用を伴うことがある。このような副作用の危険により、患者を密接にモニタリングする必要が生じる(例えば、肝機能を毎月検査する)。
【0010】
高リポ蛋白症に処方される他の薬剤はクロフィブラートである。クロフィブラートの有効性もまた患者によって異なり、その使用はしばしばネフローゼ、筋肉痛、吐気及び腹痛等の副作用を伴う。
【0011】
糖尿病及びグルコース代謝疾患
主な病気の中で最も潜行的なものである糖尿病は、突然発症するか、又は血管及び神経に打撃を与えながら診断されずに何年も放置される。群としての糖尿病患者は、非常に高い頻度で失明、心臓病、発作、腎臓病、難聴、壊疽及びインポテンスに苦しめられる。医師への来診の3分の1はこの病気及びその合併症がきっかけとなっており、糖尿病及びその合併症は米国及び欧州の早死の主な原因となっている。
【0012】
糖尿病は、消化の過程でグルコースに変換される糖及びデンプンを、体が使用する経路に有害に作用する。膵臓で産生されるホルモンであるインスリンは、体細胞がエネルギーとしてグルコースを利用できるようにする。筋肉、脂肪及び結合組織において、インスリンは細胞膜へ作用することにより細胞にグルコースが入るのを容易にする。摂取されたグルコースは通常肝臓においてCO2及びH2O(50%);グリコーゲン(5%);及び脂肪(30〜40%)に変換され、後者は脂肪を貯蔵する部位に蓄えられる。脂肪組織からの脂肪酸は循環され肝臓に戻されトリアシルグリセロールの再合成に使用されケトン体に代謝され組織によって使用される。脂肪酸はまた他の臓器によっても代謝される。脂肪の形成は、炭水化物の使用の主要な経路である。
【0013】
インスリンの最終的な効果は炭水化物、蛋白及び脂肪の貯蔵と使用とを促進することである。インスリンの不足はよく起こりヒトにとって深刻な病理的状態となる。インスリン依存(IDDM又はタイプI)糖尿病においては、膵臓における産生がわずかしかないかインスリンが全くなく、糖尿病患者が生存するためにはインスリンを毎日注射しなければならない。インスリン非依存(NIDDM又はタイプII)糖尿病においては、膵臓はインスリン産生能を維持しており、実際通常のインスリン量より多く産生することができる。しかしそのインスリン量は、細胞のインスリン耐性のために、相対的に不十分であるか充分有効であるには不足している。
【0014】
いずれの形式の糖尿病においても、多岐にわたる異常がある。多くのNIDDM患者において、異常の原因として追跡することのできる根本的な欠損は、(1)様々な「末梢の」臓器へのグルコースの進入の減少、及び(2)肝臓から循環へのグルコースの遊離の増加である。従って細胞外グルコースが過剰となり細胞内グルコースが不足する。筋肉へのアミノ酸の進入の減少及び脂肪分解の増加も起こる。高リポ蛋白症もまた糖尿病の合併症である。これらの糖尿病関連の異常の効果は深刻な血管及び神経の損傷である。
【0015】
本発明及び本発明者のこれまでの研究(以下に述べる)以外では、高インスリン症又はインスリン耐性を制御するための効果的な治療法は何も見つかっていない。高インスリン症とは、血中の正常よりも高いインスリン水準である。インスリン耐性とは、正常量のインスリン産生が正常以下の生物学的反応をもたらす状態と定義することができる。インスリンによって処置されている糖尿病を有する患者において、インスリン耐性は、インスリンの治療用量が正常人のインスリ分泌量を越えた場合には存在していると見做される。またインスリン耐性は、正常又は増加した量の血中グルコースが存在している場合、正常より高いインスリン水準すなわち高インスリン症と関連している。
【0016】
当該分野における過去の研究
本発明者らによる研究は、野生の脊椎動物に広くみられる、自然に発生する一年の体脂肪貯蔵水準のサイクルは、視床下部の概日神経部分(circadian hypothalamic neural components)に含まれる調節可能な中枢の代謝体(metabolistat)の活動性を反映していることを示している。ドパミン作動性及びセロトニン作動性の概日活動性の相関係の変更は、代謝における季節的な変更を誘発し、これらの概日活動性は、ホルモン又は神経伝達物質に作用する薬物による適切なタイミングの処置により調整することができる。これに関して、α2アゴニスト的活性及びα1アンタゴニスト的活性並びにセロトニン阻害活性を備える交換神経遮断性ドパミンD2アゴニストであるブロモクリプチンは、ヒトを含む様々な動物において、食物の消費を減少させることなく体脂肪貯蔵水準を減少させ、また高インスリン症、高脂血症、及びグルコース不耐を減少させることが示されている。
【0017】
本発明者ら及びその共同研究者らは、(i)ブロモクリプチン等のある種のプロラクチン減少性ドパミン(D2)アゴニスト、及び(ii)メトクロプラミド等のドパミンアンタゴニスト;及びセロトニンアゴニスト及び5−ヒドロキシトリプトファン等の前駆体等のプロラクチン増加物質のいずれか又は両方の投与は、体脂肪貯蔵、肥満、血漿トリグリセリド及びコレステロール、並びに高血糖症、高インスリン症及びインスリン耐性を減少させることをこれまでに見いだしている。米国特許第4,659,715号、第4,749,709号、第4,783,469号、第5,006,526号明細書。
【0018】
第1の所定の時間にプロラクチンを減少させる物質を投与し、同種の若く健康な被検者において循環する(血中)プロラクチン水準が低い時である患者の一日のプロラクチンサイクル又はリズムの期間の間、被治療者の循環するプロラクチン水準の減少を行なうことが好ましく、それにより治療されたプロラクチンリズムをもたらし、標準的な即ち健康な被検者のプロラクチンリズムに接近するか順応させる。第2の所定の時間にプロラクチン増加物質を投与し、同種の若く健康な被検者において循環する(血中)プロラクチン水準が高い時である患者の一日のプロラクチンサイクル又はリズムの期間の間、被治療者の循環プロラクチン水準の増加を行なうことも好ましく、それにより被治療者のプロラクチンリズムの、標準的な即ち健康な被検者のプロラクチンリズムへの接近又は順応をもたらす。米国特許第5,468,755号、第5,496,803号、第5,344,832号及び米国特許出願連続番号第07/995,292号(許可済)、第08/456,952号、及びPCT出願第US93/12701号及び第US95/09061号。
【0019】
当該技術分野において、ブロモクリプチンの効果のいくつかは内因性ドパミンによっても支持されることが知られている。(Ergot Compounds and Brain Functions Neuropsychiatric Aspects; Advances in Biochemical Psychopharmacology, M. Goldstein ら, Eds.(Raven Press, New York, 1980) Vol. 23) 特に、げっ歯目において、ブロモクリプチンに対する運動性刺激及び常同行動の応答は、内因性ドパミンの枯渇によってブロックされることが示されている。しかしながら、もしドパミン枯渇動物にD1アゴニストが続いて提供されると、ブロモクリプチンに対する応答性は回復される。(Jackson, D. M. ら, Psychopharmacology 94: 321(1988)) 同様のドパミン作動性D2:D1相互作用が、摂食行動のドパミン作動性阻害においても示されている。これらの研究はドパミン作動性活動の活性化におけるD2:D1相互作用の重要性を確認するものであるが、D2:D1アゴニストに対する増加した運動活動性及び減少した摂食の応答は急性であり期間が短く、ほんの数時間続くのみである。(Cooper, S. J. ら, D1:D2 Dopamine Receptor Interactions, J. Waddington, Ed. (Academic Press, London, 1993) pp. 203-234)
【0020】
第三者によるこれまでのD1及びD2ドパミンアゴニストを組み合わせた研究は、脂質及びグルコース代謝についてのどのような効果も示しておらず、またドパミン作動性活動の長期的応答を得てもいない。特徴的に、本発明者らはD1アゴニスト及びD2ドパミンアゴニスト(もしくはアドレナリン作動性α1アンタゴニスト、アドレナリン作動性α2アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤のうち少なくとも1つ)の組み合わせた投与が、ブロモクリプチン等のドパミンD2アゴニストの単独投与により提供される改善(もしあれば)に比べて、脂質及びグルコース代謝の1つ以上の代謝指標の予期しえない驚くべき改善をもたらすことをここに見いだした。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、このような処置を必要とする脊椎動物被検体(ヒトを含む)において食物消費、体重、体脂肪、血漿又は血液中グルコース及び血中インスリンのうち少なくとも1つを減少させるための追加の改善された方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、インスリン耐性(低下したグルコース許容性)、高インスリン症及び高血糖症、及びグリコシル化ヘモグロビン(A1Cを含む)のうち少なくとも1つを減少させ、及びタイプII糖尿病を緩和する方法を提供することにある。
【0023】
本発明のさらなる目的は、高リポ蛋白症及び上昇した血中トリグリセリドのうち少なくとも1つを減少させることによりじゅく状硬化を減少させるか、妨げるか、遅らせる方法を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、脂質及びグルコースの代謝を、被検者に有益な態様で修飾及び調節する方法を提供することにある。
【0025】
本発明のさらに他の目的は、肥満の効果的な治療を提供するために脂質及びグルコースの代謝を修飾及び調節する方法を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】
前記目的の少なくとも1つが、このような処置を必要とする被検者にドパミンD1アゴニストを、以下から選択される1つの薬剤又は薬剤の組合せを組み合わせて投与することにより達成できることがここに見いだされた:
【0027】
(i)ドパミンD2アゴニスト;
(ii)アドレナリン作動性α1アンタゴニスト、アドレナリン作動性α1アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤のうち少なくとも1つ;
(iii)ドパミンD2アゴニストであって、さらにアドレナリン作動性α1アンタゴニスト、アドレナリン作動性α2アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤のうち少なくとも1つと組み合わされたドパミンD2アゴニスト。
【0028】
好ましくは、前記(i)、(ii)及び(iii)中の前記薬剤(「組合せ薬剤」)は所定の時間即ち24時間の内の制限された部分内において投与される。ドパミンD1アゴニストは、他の薬剤の効果を増強させるので、好ましくはD1アゴニストもまた略同じ時間に投与される。
【0029】
ドパミンD1アゴニストの、上に特定した1つ(以上)の他の薬剤との組合せ投与は、実質的に増加した、及び実際しばしば相乗的な、グルコース又は脂質代謝に関連する1つ以上の代謝指標が改善する効果をもたらし、かくしてグルコース及び脂質代謝の内少なくとも1つの改善された修飾又は調節をもたらす。
【0030】
D2アゴニストが用いられる場合、それは好ましくは麦角アルカロイドであり最も好ましくはブロモクリプチンである。
【0031】
他の特徴において、本発明は前記被検者に対し:
(i)D2アゴニスト;及び
(ii)アドレナリン作動性α1アンタゴニスト、アドレナリン作動性α1アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤からなる群より選択される少なくとも1つの、D2アゴニストでない薬剤
を投与することに対するものである。
【0032】
このような組合せ投与は、D2アゴニストを単独で投与するのに比べて、1つ以上の前記代謝指標のより大きな改善をもたらすことが見いだされた。
【0033】
ここに引用される全ての文献及び特許並びに特許出願は、その全体が参照により本願に組み込まれる。不一致が生じた場合、その定義を含む本願の開示が制御する。
【0034】
本発明の方法の1つの実施態様においては、D1ドパミンアゴニストが、D2アゴニスト、α2アゴニスト、α1アンタゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤(又はD2アゴニスト及び残りの薬剤のうち少なくとも1つ)のうち少なくとも1つからなる第2の薬剤と組み合わせて、治療が必要な被検体に好ましくは一日のうちの特定の時間に投与される。
【0035】
ここに使われるように、及び1つ以上の活性成分の投与に適用されるように、「組合せ」及び「組み合わせて」の語は、このように治療される被検者が第1の活性の薬剤及び少なくとも1つの他の活性の薬剤をも受容することを意味するが、同一の剤型又は投与形態である必要はなく、同一の投与時間である必要もない。例えば、D1アゴニスト及びD2アゴニスト又は他の薬剤は(同じ投与形態又は2つ以上の分割された投与形態で)同時に投与することができ、又は異なる時間に、及び異なる投与形態で順次投与することもできる。
【0036】
D1ドパミンアゴニストとしては、当業者に知られたD1ドパミン受容体を活性化又は増強することができる1つ以上の物質を用いることができる。本発明の使用に適したD1アゴニストは、SKF38393、ジヒドレキシジン、SKF75670、SKF82957、A77636、A68930、SKF82526(フェノルドパム(fenoldopam))、及びトランス−10,11−ジヒドロキシ−5,6,6a,7,8,12b−ヘキサヒドロ葡萄酸を含む。
【0037】
本発明で使用するD2アゴニストとしては、当業者に知られたD2ドパミン受容体を活性化することができる1つ以上の化合物を用いることができる。本発明の使用に適したD2アゴニストは、LY−171555、メタンスルホン酸ブロモクリプチン、(+)−2,10,11−トリヒドロキシアポルフィンHBr、R(−)−フィスリド水素マレート、2−OH−NPA HCl、R(−)−MDO−NPA HCl、R(−)−プロピルノルパモルフィンHCl、R(−)−(NPA)、及びクインペロールHClを含む。
【0038】
D2アゴニストの好ましいクラスは、2−ブロモ−α−エルゴクリプチン(ブロモクリプチン)、6−メチル−8−β−カルボベンジルオキシ−アミノエチル−10−α−エルゴリン、8−アシルアミノエルゴリン、6−メチル−8−α−(N−アシル)アミノ−9−エルゴリン、ペルゴリド、リスリド、6−メチル−8−α−(N−フェニルアセチル)アミノ−9−エルゴリン、エルゴコルニン、9,10−ジヒドロエルゴコルニン、全てのD−2−ハロゲン化−6−アルキル−8−置換エルゴリン、及びD−2−ブロモ−6−メチル−8−シアノメチルエルゴリン等の麦角アルカロイドを含む。これらのうちブロモクリプチンが最も好ましい。
【0039】
単独で(D1アゴニストと組み合わされずに)投与された場合のヒト及び脊椎動物に対する麦角アルカロイドの有効量は、典型的には5.0μg/kg/日〜0.2mg/kg/日の範囲である。
【0040】
一般的に、D2アゴニストのヒト及び脊椎動物に対する有効量は、5μg/kg/日〜3.5mg/kg/日の範囲である。
【0041】
本発明で使用するα1アンタゴニストとしては、当業者に知られた直接的に又は間接的にα1アドレナリン受容体の活性化をブロックする1つ以上の化合物を用いることができる。本発明の使用に適するα1アンタゴニストは、ブロモクリプチン、ベノキサチンHCl、ナフトピジル2HCl、(±)−ニグルジピンHCl、S(+)−ニグルジピンHCl、プラゾシンHCl、ドキサゾシンHCl、スピペロンHCl、ウラピジルHCl、5−メチルウラピジル、WB−4101 HClを含む。
【0042】
α1アンタゴニストのヒト及び脊椎動物に対する有効量は、一般的には0.02〜0.3mg/kg/日の範囲である。
【0043】
本発明で使用するα2アゴニストとしては、当業者に知られたα2アドレナリン受容体を活性化することができる1つ以上の化合物を用いることができる。本発明の使用に適するα2アゴニストは、ブロモクリプチン、アグマチンスルフェート、p−アミノクロニジンHCl、B−HT920ジHCl、B−HT933ジHCl、クロノジンHCl、グアナベンツアセテート、pヨードクロニジンHCl、オキシメタゾリンHCl、UK14,304、及びキシラジンHClを含む。
【0044】
α2アゴニストのヒト及び脊椎動物に対する有効量は、一般的には1μg/kg/日〜0.3mg/kg/日の範囲である。
【0045】
本発明の使用に適するセロトニン作動性阻害剤は、ブロモクリプチンを含む。
【0046】
セロトニン作動性阻害剤のヒト及び脊椎動物に対する有効量は、一般的には5μg/kg/日〜0.2mg/kg/日の範囲である。
【0047】
前記発明の要約において開示した通り2(またはそれ以上)の薬剤を組み合わせて投与する場合、それぞれの量は前述よりも低くすることができ、(単独で薬剤が使用された場合の)閾値を下回る量を用いることさえできる。
【0048】
ドパミンD1アゴニスト及びドパミンD2アゴニスト及び/又はD1アゴニスト(又はD2アゴニスト)と組み合わされる他の薬剤は、被検体に対し、好ましくは経口又は皮下、静脈あるいは筋肉内に注射して投与することができる。経皮送達システム例えばスキンパッチ、並びに坐剤その他の公知の薬剤投与のためのシステムを使用することもできる。舌下、経鼻及び他の経粘膜の投与様式も考えられる。例えば米国特許出願連続番号第08/459,021号等に開示される加速放出組成物が好ましい。
【0049】
D2アゴニスト、α1アンタゴニスト、α2アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤の各々は、好ましくは所定の時間に投与される。その理由は、それぞれの薬剤の脂質及び/又はグルコース代謝に対する効果は時間感受性であるからである。このことはD2アゴニストについては米国特許出願第07/995,292号及び第08/456,952号により詳細に説明されているが、α1アンタゴニスト、α2アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤にも当てはまることである。好ましい投与時間は、被治療者と同種の健康な被検者における標準的なプロラクチン水準が低い時間内において薬剤の効果的な血中水準をもたらす間隔内である。例えばヒトにおいて、標準的なプロラクチン水準は9:00と22:00との間の時間において低い。従って、前述の薬剤の1つ以上の前記所定の投与時間は5:00と13:00との間、好ましくは7:00と12:00との間である。分割した用量を投与することができ、投与のスケジュールはそれぞれの活性薬剤の薬動力学的特性を考慮して改変させることができる。投与の詳細はブロモクリプチンについては米国特許出願第07/995,292号及び08/456,952号に与えられているが、本発明に用いられるα1アンタゴニスト、α2アゴニスト及びセロトニン作動性阻害剤にも当てはめることができる。
【0050】
マウスについては、活性薬剤の好ましい投与時間は、光照射開始後1時間の間である。被検体が活動的でなくかつ摂食していない時に投与が行なわれることがさらに好ましい。
【0051】
他の脊椎動物について好ましい投与時間は、被治療動物の種の標準プロラクチンリズムを参照することによりつきとめることができる。標準プロラクチン曲線は、その種の若く健康的な構成員のプロラクチンを24時間測定することにより得られる。米国特許出願連続番号第07/995,292号及び第08/456,952号参照。
【0052】
D1アゴニストの投与もまた好ましくは時間を決めて行なわれる。即ち、D1アゴニストもまた、所定の時間に投与される。D1アゴニストは組み合わされた薬剤の効果を増加させるので、組み合わせる薬剤の投与と同時又はそれに近い時間にD1アゴニストを投与すると、治療される被検者の血流中でのD1アゴニストの活性時間が組み合わせた薬剤の活性時間とオーバーラップし(実際可能な限りオーバーラップさせることが好ましい)、有益である。投与の簡便さ及び被検者のコンプライアンスを促進するために、D1アゴニストは組合せ薬剤と同時に投与することができる。
【0053】
D1アゴニストは、特に限定されないが、組み合わせられる薬剤と同一の剤型又は投与形態とする(又は同一の組成物の一部分を形成する)ことができる。1より多い組合せ薬剤を投与する場合、組合せ薬剤は特に限定されないが同一の剤型又は投与形態あるいは同一の組成物の一部分として形成することができる。
【0054】
脊椎動物の治療において、一般的には、D1アゴニスト薬剤及び組合せ薬剤は、典型的にはおよそ10日から180日の間又はそれ以上の期間にわたり投与される。患者によっては(例えば特に身体的状態が劣っている患者又は高齢者)、より長い、あるいは連続的な治療が必要となるかもしれない。6月を越える治療期間又は連続的な治療が、必要でない場合でも望ましい。
【0055】
被検者の脂肪の蓄積、体重、血漿又は血液中のグルコース、循環するインスリン、血漿トリグリセリド(TG)、血漿遊離脂肪酸(FFA)及び食物消費のうち少なくとも1つが治療の結果として減少する。脂質及びグルコース代謝の疾患がそれにより治療され、過食症、肥満、インスリン耐性(減少したグルコース許容性)、高脂血症、高インスリン症、及び高血糖症に苦しむ被検者は対応する代謝指標の改善を示す。
【0056】
あるD2アゴニスト(即ちブロモクリプチン)の適切に時間を決めた投与のみによっても、上述の効果が幾分かは得られるが、、これらの効果は本発明に記載されたD1アゴニスト薬剤との組み合わされた投与によって増強(相乗的に増加)される。換言すれば、D1アゴニストと組合せ薬剤(即ちD2アゴニスト、及び/又はα1アンタゴニスト、及び/又はセロトニン作動性阻害剤及び/又はα2アゴニスト)との組み合わされた投与の相乗的な効果は、D2アゴニストの同用量の単独の投与によって経験されるものより優れた結果をもたらす。本発明では、確実に1つ以上の代謝指標を改善するために、それぞれの薬剤が閾値以上の量(組合せ薬剤がない場合の)を越えて投与されることを許容するものの必要としないことに注目されるべきである。なぜなら、これらの指標についての増加した効果は、本発明による組み合わせた投与により達成されるからである。
【0057】
【実施例】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下の実施例に記載される実験を参照することにより、よりよく理解される。
【0058】
【実施例1】
6週令のC57BL/6 ob/obマウス(機能的レプチン蛋白(functional leptin protein)を欠如している)の異なる群を、ブロモクリプチン(「BC」)(10mg/kg体重)、SKF38393(「SKF」)(10mg/kg体重)、両方の薬剤、又は賦形剤で2週間、1HALO(hour after light onset、光照射開始後時間)において処置した。動物は一日12時間の光周期で照射され、自由摂食を許容された。食物消費は治療開始3日前から14日間の処置期間中毎日モニターされた。動物を最後の処置の次の日の1〜3HALOの間(即ち最後の注射後24〜26時間)に屠殺し、血漿を回収しインスリン、グルコース及び脂質を分析し、一方死体をエタノール性KOHに溶解し、蛋白及び脂質含有量を分析した。ブロモクリプチン及びSKF38393単独では、体重増加を減少させる効果がなかった。SKFは食物消費を減少させた(19%、P<0.01)が、BCではその効果はなかった。しかしながら、14日間の処置において、ブロモクリプチンとSKF38393とを組み合わせた処置(BC/SKF)では、食物消費が46%(4.8±0.2から2.6±g/日;P<0.001)、体重が15%(対照において3.2g増から4.3減;P<0.005)減少した(図1)。対照と比較して、絶対的に、BC/SKF処置動物の脂質含有量は40%(4.2±0.2から2.5±0.3gグリセロール/動物;P<0.0003)減少し、一方蛋白含有量は8%(3.7±0.08から4.0±0.08g/動物;P<0.05)増加した。従って、対照マウスに比べて、BC/SKF処置動物はより少ない食物を消費したが、実際蛋白量は増加する一方、同時に体重及び脂肪を失った。この体の組成に対する効果はSKF(P<0.003)又はBC(P<0.04)単独処置においても観察されたが、その程度はBC/SKFの組合せに比べて少なかった(P<0.05)。BC単独及びSKF単独では血漿グルコース濃度が有意に(それぞれ31%;P<0.02及び43%;P<0.004)減少したが、BC/SKFの組合せは血漿グルコースを(60%;P<0.0004)実質的にそれぞれの薬剤単独より多く(P<0.03)減少させ、ユーグリセミックC57BL/6マウス(+/+)(1)で報告された値と同等の値まで減少させた。血漿インスリン水準は、BC及びBC/SKF処置において同量減少した(50%;P<0.04)が、SKF単独には影響されなかった。BC/SKFは血漿トリグリセリド及び遊離脂肪酸水準を減少させた(36%;P<0.05及び44%;P<0.007)が、BC又はSKF単独では減少させなかった(表1)。これらのデータは、BC及びSKFの相互作用的効果によりob/obマウスにおいて効果的に過食、肥満、インスリン耐性、高血糖症、高インスリン症及び高脂血症が減少することを示す。
【表1】
【図面の簡単な説明】
図1は体重対D2アゴニスト単独又はD1アゴニスト単独又は本発明のD1/D2の組合せによる治療日のプロットである。C57BL/6J ob/obマウスの体重あたりBC(10mg/kg)、BC及びSKF38393、又は賦形剤を、2週間の間、毎日光照射開始後1時間に注射して処置。アスタリスクは、全ての他の処置群に対する体重変化の有意差(P<0.02)を示す。
Claims (4)
- 高インスリン症、インスリン耐性、グルコース不耐性、糖尿病、血中HbA1c水準、血中トリグリセリド水準、血漿遊離脂肪酸水準、及びじゅく状硬化のうち少なくとも1つを軽減するための、同時に、別個に、又は連続して使用するための薬剤又は薬剤の組合わせの製造における、SKF38393及びブロモクリプチンの使用。
- 前記ブロモクリプチンを一日の所定の時間に投与する、請求項1記載の使用。
- 前記SKF38393を前記ブロモクリプチンと略同時に投与する請求項2記載の使用。
- 第1の量のSKF38393、及び第2の量のブロモクリプチンを含む、高インスリン症、インスリン耐性、グルコース不耐性、糖尿病、血中HbA1c水準、血中トリグリセリド水準、血漿遊離脂肪酸水準、及びじゅく状硬化のうち少なくとも1つを軽減するための治療学的薬剤の組合せ。
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