JP4525221B2 - 受容体リガンド同定法 - Google Patents

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Description

本発明は、核内受容体に対してより高い親和性を有するもしくは調節するアゴニストを得る方法、およびプログラム、ならびに、そのようなアゴニストの製造方法に関する。さらに、本発明は、共有結合するアゴニストの親和性を決定する新規の方法に関する。さらに、本発明は、共有結合するアゴニストを用いる、共有結合しないアゴニストの親和性を決定する新規の方法に関する。
本発明は、核内受容体とアゴニストの複合体の立体構造を用いて、核内受容体に対してより高い親和性を有するもしくは調節するアゴニストを得る方法、およびプログラム、ならびに、そのようなアゴニストの製造方法に関する。さらに、本発明は、核内受容体とアゴニストの複合体の立体構造を用いて、共有結合するアゴニストの親和性を決定する新規の方法に関する。さらに、本発明は、核内受容体とアゴニストの複合体の立体構造を用いて、共有結合するアゴニストを用いる、共有結合しないアゴニストの親和性を決定する新規の方法に関する。
さらに、本発明は、上記方法のためのプログラムに関する。
細胞が細胞外からの刺激に対して応答する場合、細胞内の種々のタンパク質が関与する。そのため、これらタンパク質を標的とするアゴニストおよび/またはアンタゴニストは、新規薬物のリード化合物として用いることができる。
タンパク質の、アゴニストおよび/またはアンタゴニストの探索のための従来法としては、標的タンパク質に対する物理的結合を指標とする探索方法、および標的タンパク質が関与する生物学的反応を誘導する能力(機能誘導能)を指標とする探索方法が挙げられる。
標的タンパク質に対する物理的結合を指標とする方法は、化合物ライブラリー(例えば、組み合わせライブラリー)由来の化合物が、標的タンパク質にどの程度の強さで結合するか、また何分子結合するかなどを調べ、ある評価基準以上の標的タンパク質に対する親和性を有する化合物を選び出すという方法である。しかし、化合物ライブラリーからスクリーニングする場合は、非常に大多数の候補化合物をスクリーニングする必要があり、多大な労力および費用を必要とする。
より高い親和性を有するアゴニストを化合物ライブラリーからスクリーニングする技術として、[H]あるいは[125I]ラベルしたリガンドを用いたバインディングアッセイ法が公知である(非特許文献1および2)。しかし、このような方法を用いたとしても、候補化合物としてスクリーニングされる化合物の種類という点においては、従来法と何ら変わりがない。そのため、従来技術においては依然として、より強力なアゴニストを単離するためには、大多数の化合物をスクリーニングする必要がある。また、結合アッセイには、通常、標識した化合物を用いるが、そのためには、リガンドに放射性同位体ラベルを用いるために、特別の施設、装置が必要である。また放射性同位体ラベルしたリガンドは高価であるという問題もある。
核内受容体は、リガンドが結合すると複合体を形成してDNAに結合して転写因子として働くものとして同定された。核内受容体は、代表的に、A〜Fの6個の機能領域(ドメイン)を有している(図1)。A/B領域は細胞の種類特異的な転写活性に関与すると考えられ、C領域は2個のZincフィンガー構造をもつDNA結合領域、E/F領域はリガンド結合ドメインと呼ばれ、2量体化、核内移行およびコアクティベーター結合にかかわり、転写制御を行う。最初に見いだされた核内受容体は、ステロイドホルモンが結合するステロイドホルモン受容体であり、1980年代の中頃に遺伝子がクローニングされ配列が決定され、互いの相同性が高いことが確認された。その後配列の相同性から、多数の核内受容体類似のタンパク質が発見された。ヒトゲノム解読では、類似タンパク質の数は48以上にも達するといわれており、これらは核内受容体スーパーファミリーとも呼ばれている。
代表的な核内受容体に分類されるPPARγは、1990年、ステロイドホルモン/甲状腺ホルモンに代表される核内受容体ファミリーの一員として同定された。PPARγもまた、図1に示される核内受容体ファミリーに典型的なA〜Fの6個の機能領域を有している。
高脂血症治療薬であるフィブラート系化合物がPPARαのアゴニストであること、糖尿病治療薬として知られるチアゾリジン誘導体がPPARγのアゴニストであることが明らかにされて以来、これら疾患治療薬の発見のために、これらの化合物に続くPPARγアゴニストの探索が進められ、高脂血症やインスリン抵抗性、糖尿病の改善薬として開発が試みられている(非特許文献3)。しかし、上記で説明したように、化合物ライブラリーのスクリーニングには、多大な労力・時間・費用が必要なことから、これらPPARγ関連疾患の改善薬の開発の進展は、十分ではない。
他の核内受容体もまた、例えば、コレステロールなど体内の脂質の代謝を制御している因子であると考えられ、この代謝の乱れに伴うさまざまな疾患、II型糖尿病、肥満、高脂症、循環器疾患など多くのいわゆる生活習慣病(成人病)に関係していると注目されていることから、リガンドのスクリーニングを容易にすることに対する需要は高い。
従って、所与のアゴニストから、より親和性の増大したアゴニスト誘導体を設計、および/または作製する方法の開発が望まれている。
Biochemistry,41:6640−,2002 Nature,402:880−,1999 WelVAS,Dec.2001,No.4、細胞工学23号、No.2、179−187
核内受容体に対するアゴニストが与えられた場合、そのアゴニストの活性を実質的に損なうことなく、そのアゴニストの核内受容体に対する親和性を増加する方法を提供することが、本発明の課題である。そのような方法を用いて親和性が増大したアゴニストを設計する方法を提供することも、本発明の課題である。さらに、そのような方法を用いて、親和性が増大したアゴニストを提供することも、本発明の課題である。また、そのような方法において使用されるプログラム、そのようなプログラムを含む記憶媒体、およびそのようなプログラムを含むコンピュータを提供することも、本発明の課題である。
また、本発明によって、PPARγのような核内受容体に対する高親和性アゴニストを設計する方法を提供することもまた、本発明の課題である。
さらに、本発明は、共有結合するアゴニストの親和性を決定する新規の方法を提供することを課題とする。さらに、本発明は、共有結合するアゴニストを用いる、共有結合しないアゴニストの親和性を決定する新規の方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、所与のアゴニストを、核内受容体に共有結合し得るように誘導体化することによって、そのアゴニストの核内受容体に対する親和性が増加すること、および親和性が増大した場合、そのアゴニストとしての作用を増強し得ることを見出すことによって、本発明を完成した。
従って、本発明は以下を提供する。
1つの局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定する方法であって、上記方法は:A)候補化合物を提供する工程;およびB)上記候補化合物が、上記核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する工程であって、共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると同定する、工程を包含する、方法を提供する。
1つの実施形態において、上記システインは、リガンド結合ドメインに存在する。
別の実施形態において、上記核内受容体は、PPARα、PPARβ/δ、PPARγ1、PPARγ2、ERR1、ERR2、ERR3、HNF4α、HNF4β、RARα、RARβ、RARγ1、RARγ2、RXRα、RXRβ、RXRγ、RORα、RORβ、RORγ、LRH1、SF1、TLXおよびO4245受容体からなる群より選択される。
好ましい実施形態において、上記核内受容体は、PPARγである。
1つの実施形態において、システインの位置は、以下の表
に示される配列番号中のアミノ酸番号で示される。
別の実施形態において、上記候補化合物は、R−CH=CH−(C=O)−R−またはR−(C=O)−CH=CH−R−という置換基を有する化合物を含み、ここで、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、Rは、二価の炭化水素基である。
1つの実施形態において、上記共有結合の測定は、蛍光標識マレイミドを用いて行われる。
別の実施形態において、本発明は、さらに、上記候補化合物が、上記核内受容体のリガンド結合ドメインにあるヘリックス12またはヘリックス5内のアミノ酸と水素結合するかどうかを判定する工程を包含する。
上記ヘリックス12またはヘリックス5内のアミノ酸の残基番号は、
に示される配列番号中のアミノ酸番号で示されるアルギニンまたはチロシンを含む。
別の実施形態において、上記ヘリックス12またはヘリックス5内のアミノ酸は、配列番号42に示すアミノ酸配列の473位チロシンまたは配列番号44に示すアミノ酸配列の501位チロシンを含む。
別の実施形態において、上記特定のアミノ酸との水素結合は、核磁気共鳴装置(NMR)、またはX線回折装置という手段により測定される。
別の実施形態において、上記特定のアミノ酸との共有結合は、質量分析装置またはSDS−PAGEという手段により測定される。
他の局面において、本発明は、本発明の方法によって、特定され得る化合物であって、上記化合物は、以下の式:
(化4)
−CH=CH−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−CH=CH−R−R
という構造を有し、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜13個の、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が4〜14個である、化合物を提供する。
1つの実施形態において、上記化合物において、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜9個を有する、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の炭化水素基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が6〜12個である。
別の局面において、本発明は、本発明の方法によって、特定された化合物を含む核内受容体の調節のための組成物であって、上記化合物は、以下の式:
(化5)
−CH=CH−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−CH=CH−R−R
という構造を有し、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜13個の、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が4〜14個である、組成物を提供する。
他の実施形態において、上記構造は、
−(C=O)−CH=CH−R−Rであり、
上記化合物において、
は、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜9個を有する置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が6〜14個であり、その組み合わせは、
に記載される配列番号に示すアミノ酸配列を有する核内受容体に対して、右列の炭素数を有する。
別の実施形態において、本発明は、本発明の方法によって、特定された化合物を含む、核内受容体に起因する疾患、障害または状態の処置、予防または予後のための組成物であって、上記化合物は、以下の式:
(化6)
−C=C−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−C=C−R−R
という構造を有し、ここで、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜13個の、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が4〜14個である、組成物を提供する。
1つの局面において、本発明は、A)標的生体分子と、リガンドとを混合して混合物を生成する工程;B)蛍光ラベルマレイミドを上記混合物に加える工程;C)上記混合物において、上記標的生体分子と上記蛍光ラベルマレイミドとの結合を検出する工程を包含する、標的生体分子に対するリガンドの結合能を定量する方法を提供する。
1つの実施形態において、本発明は、上記結合は、共有結合であり、上記共有結合の定量を行う工程をさらに包含し、上記定量は、上記リガンドに関し少なくとも2つの量を測定することにより達成される。
別の実施形態において、リガンドは、共有結合するものまたは共有結合しないものを含む。
他の実施形態において、本発明において用いられる生体分子は、核内受容体である。ここで、好ましくは、不可逆的に共有結合するリガンドは、インドメタシン、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(11−オキソ−プロスタ−5Z,9,12E,14Z−テトラエン−1−オイック酸;15d−PGJ)、11−オキソ−プロスタ−5Z,12E,14Z−トリエン−1−オイック酸(CAY10410)、5−オキソ−6E,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエン酸(5−オキソODE)、9−オキソ−10E,12Z−オクタデカノジエン酸(9−オキソODE)、13−オキソ−9Z,11E−オクタデカノジエン酸(13−オキソODE)および15−オキソ−5Z,8Z,11Z,13E−エイオコサテトラエン酸(5−オキソETE)からなる群より選択される構造を有する。インドメタシンは、以下の通りの構造式を有する。
別の実施形態において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定するシステムであって、上記システムは:A)候補化合物が、上記核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する手段;およびB)共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると算出する手段、を備える、システムを提供する。
別の局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定するために用いられる、化合物と、上記核内受容体との共有結合を測定するためのキットであって、A)上記核内受容体と不可逆的に共有結合することが分かっているリガンド;およびB)共有結合しないリガンドの結合を測定するための手順を記載する指示書、を備える、キットを提供する。
さらに他の局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、上記方法は:A)候補化合物の立体構造データを提供する工程;およびB)上記候補化合物が、上記核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する工程であって、共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると同定する、工程を包含する、プログラムを提供する。
なお他の局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納する記録媒体であって、上記方法は:A)候補化合物の立体構造データを提供する工程;およびB)上記候補化合物が、上記核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する工程であって、共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると同定する、工程、を包含する、記録媒体を提供する。
加えて、本発明に従って、核内受容体に対するアゴニストが与えられた場合、そのアゴニストの活性を実質的に損なうことなく、そのアゴニストの核内受容体に対する親和性を増加する方法が提供される。そのような方法を用いて親和性が増大したアゴニストを設計する方法もまた、提供される。さらに、そのような方法を用いて、親和性が増大したアゴニストが提供される。また、そのような方法において使用されるプログラム、そのようなプログラムを含む記憶媒体、およびそのようなプログラムを含むコンピュータもまた、提供される。
特定の実施形態では、本発明に従って、PPARγに対する高親和性アゴニストを設計する方法が提供される。本発明で設計されたアゴニストは、核内受容体作動化による治療効果が期待され、数多くのメタボリックシンドロームに対して、治療効果が期待される。例えば、遺伝的高脂血症ウサギ、高脂肪食飼育下のLDL受容体およびアポEノックアウトマウスへのPPARγ作動薬のトリグリタゾン投与により動脈硬化病変の進展が抑制されたという報告があることから、高い作動効率を有する本発明の化合物は、動脈硬化症においてより高い治療効果を発揮することが期待される。
特定の実施形態では、マクロファージの貪食、殺菌作用に関わるスカベンジャー受容体クラスA、誘導型NO合成酵素、TNF−α、IL−1α、IL−6の分泌をトリグリタゾン、15d−PGJが抑制することが報告されていることから、高い作動効率を有する本発明の化合物は、抗炎症作用(=マクロファージ機能制御)を示し、より高い治療効果を発揮することが期待される。
特定の実施形態では、PPARγが脂肪細胞の分化に重要な役割を担い、インスリン抵抗性の糖尿病をPPARγ作動薬が改善することから、高い作動効率を有する本発明の化合物は、脂肪代謝や糖代謝の異常で引き起こされる肥満や糖尿病に対し高い治療効果を発揮することが期待される。
特定の実施形態では、リガンドを放射性同位元素ラベルや蛍光ラベルする必要がないため、これまでになく安価で簡便に新規薬物のスクリーニングおよびリガンドの結合能定量を行うことが出来る。例えば、本発明に従って、共有結合するアゴニストの親和性を決定する新規の方法もまた、提供される。さらに、本発明に従って、共有結合するアゴニストを用いる、共有結合しないアゴニストの親和性を決定する新規の方法が提供される。
別の局面において、本発明は、候補化合物が、核内受容体のアゴニストであるかまたはアンタゴニストであるかどうかを判定する方法を提供する。この該方法は:A)候補化合物を提供する工程;およびB)該候補化合物が、該核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定し、共有結合すると判定された候補化合物を選択する工程;C)転写因子認識配列と作動可能に連結されるレポーターをコードする核酸配列を含む核酸構築物と、該選択された核内受容体とを含む系において、該候補化合物の活性を判定する工程であって、該レポーターの発現が増強される場合、該候補化合物は該核内受容体のアゴニストと判定し、該レポーターの発現が減少する場合、該候補化合物は該核内受容体のアンタゴニストと判定する、工程、を包含する。
一つの実施形態において、本発明において使用されるレポーターは、ルシフェラーゼであることが好ましい。
別の実施形態において、本発明において使用される系は、細胞である。
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
本発明によれば、特定の単純な結合の有無を見ることによって、核内受容体のリガンドを高い蓋然性で同定することができるようになる。このスクリーニング方法を用いれば、ハイスループットな核内受容体リガンドスクリーニングが可能になる。また、本発明は、特定の核内受容体リガンドを提供する。このようなリガンドは、核内受容体リガンドであることがわかり、したがって、種々の生活習慣病の処置に有用であることが判明した。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される用語「核内受容体」は、リガンドと結合することによって、核内における生体反応を開始する分子をいう。通常核内受容体は、核内に存在するが、生体反応を開始する際に核内に移行する性質を持つものも包含される。核内受容体は、通常、結合すると複合体を形成してDNAに結合して転写因子として働く。
ここで、核内受容体の生体反応は、代表的には転写の調節(例えば、転写の促進、抑制、開始、または終結が挙げられ、代表的には転写の促進であるが、これらに限定されない)である。代表的には、核内受容体は、天然の状態では、リガンドによる刺激を受けない場合、細胞質に存在し、リガンドと結合した場合に、核内に移行して、その刺激を核内に伝達する分子をいう。あるいは、核内受容体は、その局在を変えることなく、リガンドとの結合によって、核内における生体反応を開始する。核内受容体としては、PPARα、PPARβ/δ、PPARγ1、PPARγ2、ERR1、ERR2、ERR3、HNF4α、HNF4β、RARα、RARβ、RARγ1、RARγ2、RXRα、RXRβ、RXRγ、RORα、RORβ、RORγ、LRH1、SF1、TLXおよび04245受容体、ビタミンD受容体、甲状腺ホルモン受容体、他のステロイドホルモンレセプターなどが挙げられるが、これらに限定されない。
これらは、以下の表に記載されるような対応関係を有する。
上記表には、略称と国際的な統一名称との対応関係が示される。なお、O4245はまだ統一名称が与えられていない。PPARγ1,PPARγ2およびRARγ1,RARγ2は同一遺伝子からのスプライシングの違いで出来たものなので同じ統一名称を持つ。
本明細書において使用される用語「PPARα」とは、「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(peroxisome proliferator−activator receptor)α」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。PPARαは、配列番号37および38に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「PPARβ/δ」とは、「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体β/δ」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。PPARβ/δは、配列番号39および40に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「PPARγ1」とは、「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ1」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。PPARγ1は、配列番号41および42に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「ERR1」とは、「エストロゲン関連受容体(Estrogen−related receptor)1」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。ERR1は、配列番号1および2に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「ERR2」とは、「エストロゲン関連受容体(Estrogen−related receptor)2」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。ERR2は、配列番号3および4に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「ERR3」とは、「エストロゲン関連受容体(Estrogen−related receptor)3」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。ERR3は、配列番号5および6に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「SF1」とは、「ステロイド産生因子(Steroidogenic factor−1)1」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。SF1は、配列番号9および10に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RXRα」とは、「レチノイドX受容体(retinoid X receptor)α」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RXRαは、配列番号11および12に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RXRβ」とは、「レチノイドX受容体(retinoid X receptor)β」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RXRβは、配列番号13および14に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RXRγ」とは、「レチノイドX受容体(retinoid X receptor)γ」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RXRγは、配列番号15および16に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「HNF4α」とは、「肝臓特異的転写因子 (hepatocyte nuclear factor)4α」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。HNF4αは、配列番号17および18に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「HNF4γ」とは、「肝臓特異的転写因子 (hepatocyte nuclear factor)4γ」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。HNF4γは、配列番号19および20に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RARα」とは、「レチノイン酸受容体(retinoic acid receptor)α」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RARαは、配列番号21および22に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RARβ」とは、「レチノイン酸受容体(retinoic acid receptor)β」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RARβは、配列番号23および24に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RARγ1」とは、「レチノイン酸受容体(retinoic acidreceptor)γ1」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RARγ1は、配列番号25および26に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RARγ2」とは、「レチノイン酸受容体(retinoic acidreceptor)γ2」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RARγ2は、配列番号27および28に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RORα」とは、「RAR関連オーファン受容体(RAR−related orphan receptor)α」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RXRαは、配列番号29および30に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RORβ」とは、「RAR関連オーファン受容体(RAR−related orphan receptor)β」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RXRβは、配列番号31および32に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「RORγ」とは、「RAR関連オーファン受容体(RAR−related orphan receptor)γ」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。RXRγは、配列番号33および34に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「O4245」とは、「オーファン受容体4245」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。O4245は、配列番号35および36に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
本明細書において使用される用語「TLX」とは、「尾無しホモログ(Tailless homolog)」の略称であり、核内受容体の1種を意味する。TLXは、配列番号51および52に示す配列(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)によって定義される。本発明においては、同様の活性を有する限り、上記配列の改変体もまた、この用語の範囲内に入ることが理解される。
上記受容体は、例えば、Robinson−Rechavi Mら、J Cell Sci. 2003 Feb 15;116(Pt 4):585−586およびその中で引用される文献などに記載される少なくとも1つの活性を有する限り、改変体を含み得ることが理解される。
本明細書において、核内受容体(例えば、PPARγ)の「生物学的活性」とは、その核内受容体がそのリガンドと結合した場合に、その核内受容体によってもたらされる活性であり、例えば、本明細書において直前に記載されるような活性(例えば、PPARγについて、PEPCKの転写促進、糖新生促進など)が挙げられるが、これらに限定されない。核内受容体(例えば、PPARγ)のアゴニストは、その核内受容体と結合することによって、その核内受容体が有する生物学的活性の少なくとも1部または全部を誘導する。
本明細書において使用する「活性型」核内受容体(例えば、PPARγ)とは、アゴニストの結合によって、アゴニスト非存在下では発揮されない生物学的活性を発揮するその核内受容体の形態をいう。従って、例えば、アゴニストの結合した核内受容体(例えば、PPARγ)は、活性型核内受容体(例えば、活性型PPARγ)である。
本明細書において使用される用語「リガンド」とは、特異的な受容体または受容体のファミリーに対する結合パートナーである。リガンドは、受容体に対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。
本明細書において用語「リガンド結合部位」とは、核内受容体において、リガンドが結合する部分をいう。「アゴニスト結合部位」は、教義の「リガンド結合部位」である。リガンド結合部位は、リガンドと何らかの相互作用(共有結合、水素結合、疎水的相互作用、静電的相互作用などが挙げられるが、これらに限定されない)をするポリペプチド中のアミノ酸残基を含む。
核内受容体のアゴニスト結合部位は、アゴニストに面するシステイン残基を含み得る。PPARγは、アゴニストに面するシステイン残基として、表4に記載されるようなシステイン残基を含む。PPARγ以外の核内受容体とPPARγの一次構造の整列は、例えば、図2に示すようにして行う。
本明細書において「アゴニスト」とは、リガンドの一種であり、受容体に結合した場合に、その受容体の天然のリガンドが受容体と結合した場合の作用と同じ作用、または類似の作用を現わす因子をいう。
PPARγに対するアゴニストとしては、例えば、インドメタシン、サリチル酸、イブプロフェン、フェンプロフェン、フルフェナム酸、ピロキシカム、アセトアミノフェンなどの非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(11−オキソ−プロスタ−5Z,9,12E,14Z−テトラエン−1−オイック酸;15d−PGJ)、11−オキソ−プロスタ−5Z,12E,14Z−トリエン−1−オイック酸(CAY10410)、MCC−555、9(S)−ヒドロキシオクタデカジエン酸(9(S)−HODE)、9−オキソ−10E,12Z−オクタデカノジエン酸(9−オキソODE)、o−リゾホスファジチン酸(o−LPA)、13(S)−ヒドロキシオクタデカジエン酸(13(S)−HODE)、13−オキソ−9Z,11E−オクタデカノジエン酸(13−オキソODE)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、アラキドン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において「アンタゴニスト」とは、リガンドの一種であり、ある生体作用物質(リガンド)の受容体への結合に拮抗的に働き、それ自身はその受容体を介した生理作用を現わさない因子をいう。拮抗薬、遮断剤(ブロッカー)、阻害剤(インヒビター)などもこのアンタゴニストに包含される。PPARγに対するアンタゴニストとしては、例えば、T0070907が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギンまたはアスパラギン酸
Glx グルタミンまたはグルタミン酸
Xaa 不明または他のアミノ酸。
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニンまたはアデニンプリン
y チミン/ウラシルまたはシトシンピリミジン
m アデニンまたはシトシンアミノ基
k グアニンまたはチミン/ウラシルケト基
s グアニンまたはシトシン
w アデニンまたはチミン/ウラシル
b グアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
d アデニンまたはグアニンまたはチミン/ウラシル
h アデニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
v アデニンまたはグアニンまたはシトシン
n アデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル、不明、または他の塩基。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
本明細書中において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、例えば、核内受容体においては、Aドメインに対応するドメインは、転写促進機能を有する領域であり、Bドメインに対応するドメインは、同様に転写促進機能を有する領域であり、A/Bドメインと称することもある。Cドメインに対応するドメインは、DNA結合という作用を有する領域であり、通常、DNA結合タンパクに見られる特徴的なZnフィンガー構造が2個存在する。Dドメインに対応するドメインは、CドメインとE・Fドメインとの間に存在する領域であり、E・Fドメインに対応するドメインは、リガンド(ホルモン)に結合する作用を有する領域であり、リガンド結合ドメインともいう。このリガンド結合ドメイン(E・Fドメイン)は、12のαヘリックスからなる類似の立体構造をとる(図1)。Fドメインに対応するドメインは、EドメインよりC末端側に存在する領域である。酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。従って、本明細書において使用する場合、所定の核内受容体のアミノ酸配列において「PPARγの473位のチロシン残基に対応するアミノ酸残基」とは、その所定の核内受容体のアミノ酸配列とPPARγのアミノ酸配列を整列した場合に、PPARγの473位のチロシン残基と同じ位置に並ぶアミノ酸残基であって、アゴニストと水素結合することによってその所定の核内受容体が生物学的活性を発揮することが予測される残基をいう。このような対応残基は、アラインメントを行うことによって同定することができる。本明細書において、上記に挙げたもの以外の核内受容体におけるA〜Fのドメインは、上記具体例の始まりのアミノ酸と、終わりのアミノ酸に対応するアミノ酸位置の範囲のドメインが対応することが理解される。
本明細書において、A〜Fドメインは、当該分野において公知の定義に基づいて決定され得る。例えば、そのような定義は、Robinson−Rechavi M ら、J Cell Sci. 2003 Feb 15;116(Pt 4):585−586およびその中で引用される文献などを参酌することができる。
代表的なドメインのアラインメント比較を、図2(図2−1〜図2−3)に示す。
従って、本明細書において使用する場合、所定の核内受容体のアミノ酸配列において、例えば、PPARγの473位のチロシン残基に「対応するアミノ酸残基」とは、その所定の核内受容体のアミノ酸配列とPPARγのアミノ酸配列を整列した場合に、PPARγの473位のチロシン残基と同じ位置に並ぶアミノ酸残基であって、アゴニストと水素結合することによってその所定の核内受容体が生物学的活性を発揮することが予測される残基をいう。そのような残基としては、例えば、
が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用する場合、所定の核内受容体のアミノ酸配列においてPPARγの285位のシステイン残基に「対応するアミノ酸残基」とは、その所定の核内受容体のアミノ酸配列とPPARγのアミノ酸配列を整列した場合に、PPARγの285位のシステイン残基と同じ位置に並ぶアミノ酸残基であり、例えば、
などが例示されるがそれらに限定されない。
これらの対応関係は、図2−1〜図2−3を参酌しても決定することができる。
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において使用する場合、好ましくは、受容体「フラグメント」は、全長受容体が特異的に結合し得るリガンドに特異的に結合する。
本発明において使用されるタンパク質は、天然の供給源から精製されたものであっても、遺伝子工学的に宿主細胞を形質転換して、組換え発現されたものであってもよい。遺伝子工学的にポリペプチドを製造する方法としては、例えば、そのポリペプチドを産生する原核生物である細菌を培養し、細菌中に組換え受容体タンパク質を封入体として蓄積させ、その宿主細菌を破壊することによって、そのポリペプチドを得る方法が挙げられる。
「形質転換体」とは、宿主細胞を形質転換することによって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
形質転換体を得るための宿主細菌細胞は、生理活性を保持するポリペプチドを発現するものであれば、特に限定されず、従来から遺伝子操作において利用される各種の宿主細菌細胞を用いることができる。原核細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属等に属する原核細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli BL21(DE3)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherichia coli HMS174(DE3)pLysS、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium ammmoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticumATCC14066、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas sp.D−0110などが例示される。
本発明において得られた細胞に由来するポリペプチドは、天然型のポリペプチドと実質的に同一の作用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が置換、付加および/または欠失していてもよく、糖鎖が置換、付加および/または欠失していてもよい。
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、リガンド分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、リガンド結合能において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、オルソログもまた、本発明において有用であり得る。
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、癌マーカー、神経疾患マーカーなど)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
(有機化学)
本発明において、化合物に使用される炭化水素は、当該分野において、最も広義に用いられ、不飽和および飽和の炭化水素、ならびにその改変体を包含し得る。そのような炭化水素の例としては、例えば、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニレン、置換されていてもよいシクロアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよい炭素環基などを挙げることができるがそれらに限定されない。置換基は、本明細書において説明される任意の置換基を挙げることができることが理解される。
本明細書において、「置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基」とは、カルボニル基、水酸基、アミド基またはチオール基の官能基を置換基として少なくとも1つ有する置換基であって、そのうち一部がさらに置換基を有しても良い置換基をいう。そのような置換基としては、二価の炭化水素としては、例えば、アルキレンなどを挙げることができるがそれらに限定されない。このような例としては、例えば、H−C(=O)−R(ここで、Rは、単結合かまたはアルキレン基などの二価の置換基であり得る)、H−O−R(ここで、Rは、単結合かまたはアルキレン基などの二価の置換基であり得る)、RZ1−N(−RZ2)−RZ3(ここで、ZおよびZは、水素またはアルキル基などの一価の置換基であり得、RZ3は、単結合かまたはアルキレン基などの二価の置換基であり得る)、H−S−R(ここで、Rは、単結合かまたはアルキレン基などの二価の置換基であり得る)などを挙げることができる。例えば、置換されていてもよいカルボニル基には、カルボキシル基が含まれることが理解される。
本明細書において「アルキル」とは、メタン、エタン、プロパンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる一価の基をいい、一般にC2n+1−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキルは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキル」とは、以下に規定する置換基によってアルキルのHが置換されたアルキルをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C6アルキル、C1〜C7アルキル、C1〜C8アルキル、C1〜C9アルキル、C1〜C10アルキル、C1〜C11アルキルまたはC1〜C12アルキル、C1〜C2置換されたアルキル、C1〜C3置換されたアルキル、C1〜C4置換されたアルキル、C1〜C5置換されたアルキル、C1〜C6置換されたアルキル、C1〜C7置換されたアルキル、C1〜C8置換されたアルキル、C1〜C9置換されたアルキル、C1〜C10置換されたアルキル、C1〜C11置換されたアルキルまたはC1〜C12置換されたアルキルであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキルとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキルを意味し、メチル(CH−)、エチル(C−)、n−プロピル(CHCHCH−)、イソプロピル((CHCH−)、n−ブチル(CHCHCHCH−)、n−ペンチル(CHCHCHCHCH−)、n−ヘキシル(CHCHCHCHCHCH−)、n−ヘプチル(CHCHCHCHCHCHCH−)、n−オクチル(CHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−ノニル(CHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−デシル(CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、−C(CHCHCHCH(CH、−CHCH(CHなどが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキルとは、C1〜C10アルキルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において「置換されていてもよいアルキル」とは、上で定義した「アルキル」または「置換されたアルキル」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「アルキレン」とは、メチレン、エチレン、プロピレンのような脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が二つ失われて生ずる二価の基をいい、一般に−C2n−で表される(ここで、nは正の整数である)。アルキレンは、直鎖または分枝鎖であり得る。本明細書において「置換されたアルキレン」とは、以下に規定する置換基によってアルキレンのHが置換されたアルキレンをいう。これらの具体例は、C1〜C2アルキレン、C1〜C3アルキレン、C1〜C4アルキレン、C1〜C5アルキレン、C1〜C6アルキレン、C1〜C7アルキレン、C1〜C8アルキレン、C1〜C9アルキレン、C1〜C10アルキレン、C1〜C11アルキレンまたはC1〜C12アルキレン、C1〜C2置換されたアルキレン、C1〜C3置換されたアルキレン、C1〜C4置換されたアルキレン、C1〜C5置換されたアルキレン、C1〜C6置換されたアルキレン、C1〜C7置換されたアルキレン、C1〜C8置換されたアルキレン、C1〜C9置換されたアルキレン、C1〜C10置換されたアルキレン、C1〜C11置換されたアルキレンまたはC1〜C12置換されたアルキレンであり得る。ここで、例えばC1〜C10アルキレンとは、炭素原子を1〜10個有する直鎖または分枝状のアルキレンを意味し、メチレン(−CH−)、エチレン(−C−)、n−プロピレン(−CHCHCH−)、イソプロピレン(−(CHC−)、n−ブチレン(−CHCHCHCH−)、n−ペンチレン(−CHCHCHCHCH−)、n−ヘキシレン(−CHCHCHCHCHCH−)、n−ヘプチレン(−CHCHCHCHCHCHCH−)、n−オクチレン(−CHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−ノニレン(−CHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、n−デシレン(−CHCHCHCHCHCHCHCHCHCH−)、−CHC(CH−などが例示される。また、例えば、C1〜C10置換されたアルキレンとは、C1〜C10アルキレンであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。本明細書において「アルキレン」は、酸素原子および硫黄原子から選択される原子を1またはそれ以上含んでいてもよい。
本明細書において「置換されていてもよいアルキレン」とは、上で定義した「アルキレン」または「置換されたアルキレン」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「シクロアルキル」とは、環式構造を有するアルキルをいう。「置換されたシクロアルキル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルキルのHが置換されたシクロアルキルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルキル、C3〜C5シクロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C7シクロアルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C9シクロアルキル、C3〜C10シクロアルキル、C3〜C11シクロアルキル、C3〜C12シクロアルキル、C3〜C4置換されたシクロアルキル、C3〜C5置換されたシクロアルキル、C3〜C6置換されたシクロアルキル、C3〜C7置換されたシクロアルキル、C3〜C8置換されたシクロアルキル、C3〜C9置換されたシクロアルキル、C3〜C10置換されたシクロアルキル、C3〜C11置換されたシクロアルキルまたはC3〜C12置換されたシクロアルキルであり得る。例えば、シクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロヘキシルなどが例示される。
本明細書において「置換されていてもよいシクロアルキル」とは、上で定義した「シクロアルキル」または「置換されたシクロアルキル」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「アルケニル」とは、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる一価の基をいい、一般にC2n−1−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってアルケニルのHが置換されたアルケニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルケニル、C2〜C4アルケニル、C2〜C5アルケニル、C2〜C6アルケニル、C2〜C7アルケニル、C2〜C8アルケニル、C2〜C9アルケニル、C2〜C10アルケニル、C2〜C11アルケニルまたはC2〜C12アルケニル、C2〜C3置換されたアルケニル、C2〜C4置換されたアルケニル、C2〜C5置換されたアルケニル、C2〜C6置換されたアルケニル、C2〜C7置換されたアルケニル、C2〜C8置換されたアルケニル、C2〜C9置換されたアルケニル、C2〜C10置換されたアルケニル、C2〜C11置換されたアルケニルまたはC2〜C12置換されたアルケニルであり得る。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニルを意味し、ビニル(CH=CH−)、アリル(CH=CHCH−)、CHCH=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニルとは、C2〜C10アルケニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において「置換されていてもよいアルケニル」とは、上で定義した「アルケニル」または「置換されたアルケニル」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「アルケニレン」とは、分子内に二重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が二つ失われて生ずる二価の基をいい、一般に−C2n−2−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルケニレン」とは、以下に規定する置換基によってアルケニレンのHが置換されたアルケニレンをいう。具体例としては、C2〜C25アルケニレンまたはC2〜C25置換されたアルケニレンが挙げられ、なかでも特にC2〜C3アルケニレン、C2〜C4アルケニレン、C2〜C5アルケニレン、C2〜C6アルケニレン、C2〜C7アルケニレン、C2〜C8アルケニレン、C2〜C9アルケニレン、C2〜C10アルケニレン、C2〜C11アルケニレンまたはC2〜C12アルケニレン、C2〜C3置換されたアルケニレン、C2〜C4置換されたアルケニレン、C2〜C5置換されたアルケニレン、C2〜C6置換されたアルケニレン、C2〜C7置換されたアルケニレン、C2〜C8置換されたアルケニレン、C2〜C9置換されたアルケニレン、C2〜C10置換されたアルケニレン、C2〜C11置換されたアルケニレンまたはC2〜C12置換されたアルケニレンが好ましい。ここで、例えばC2〜C10アルキルとは、炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルケニレンを意味し、−CH=CH−、−CH=CHCH−、−(CH)C=CH−などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルケニレンとは、C2〜C10アルケニレンであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。本明細書において「アルケニレン」は、酸素原子および硫黄原子から選択される原子を1またはそれ以上含んでいてもよい。
本明細書において「置換されていてもよいアルケニレン」とは、上で定義した「アルケニレン」または「置換されたアルケニレン」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「シクロアルケニル」とは、環式構造を有するアルケニルをいう。「置換されたシクロアルケニル」とは、以下に規定する置換基によってシクロアルケニルのHが置換されたシクロアルケニルをいう。具体例としては、C3〜C4シクロアルケニル、C3〜C5シクロアルケニル、C3〜C6シクロアルケニル、C3〜C7シクロアルケニル、C3〜C8シクロアルケニル、C3〜C9シクロアルケニル、C3〜C10シクロアルケニル、C3〜C11シクロアルケニル、C3〜C12シクロアルケニル、C3〜C4置換されたシクロアルケニル、C3〜C5置換されたシクロアルケニル、C3〜C6置換されたシクロアルケニル、C3〜C7置換されたシクロアルケニル、C3〜C8置換されたシクロアルケニル、C3〜C9置換されたシクロアルケニル、C3〜C10置換されたシクロアルケニル、C3〜C11置換されたシクロアルケニルまたはC3〜C12置換されたシクロアルケニルであり得る。例えば、好ましいシクロアルケニルとしては、1−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニルなどが例示される。
本明細書において「置換されていてもよいシクロアルケニル」とは、上で定義した「シクロアルケニル」または「置換されたシクロアルケニル」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「アルキニル」とは、アセチレンのような、分子内に三重結合を一つ有する脂肪族炭化水素から水素原子が一つ失われて生ずる一価の基をいい、一般にC2n−3−で表される(ここで、nは2以上の正の整数である)。「置換されたアルキニル」とは、以下に規定する置換基によってアルキニルのHが置換されたアルキニルをいう。具体例としては、C2〜C3アルキニル、C2〜C4アルキニル、C2〜C5アルキニル、C2〜C6アルキニル、C2〜C7アルキニル、C2〜C8アルキニル、C2〜C9アルキニル、C2〜C10アルキニル、C2〜C11アルキニル、C2〜C12アルキニル、C2〜C3置換されたアルキニル、C2〜C4置換されたアルキニル、C2〜C5置換されたアルキニル、C2〜C6置換されたアルキニル、C2〜C7置換されたアルキニル、C2〜C8置換されたアルキニル、C2〜C9置換されたアルキニル、C2〜C10置換されたアルキニル、C2〜C11置換されたアルキニルまたはC2〜C12置換されたアルキニルであり得る。ここで、例えば、C2〜C10アルキニルとは、例えば炭素原子を2〜10個含む直鎖または分枝状のアルキニルを意味し、エチニル(CH≡C−)、1−プロピニル(CHC≡C−)などが例示される。また、例えば、C2〜C10置換されたアルキニルとは、C2〜C10アルキニルであって、そのうち1または複数の水素原子が置換基により置換されているものをいう。
本明細書において「置換されていてもよいアルキニル」とは、上で定義した「アルキニル」または「置換されたアルキニル」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「アルコキシ」とは、アルコール類のヒドロキシ基の水素原子が失われて生ずる一価の基をいい、一般にC2n+1O−で表される(ここで、nは1以上の整数である)。「置換されたアルコキシ」とは、以下に規定する置換基によってアルコキシのHが置換されたアルコキシをいう。具体例としては、C1〜C2アルコキシ、C1〜C3アルコキシ、C1〜C4アルコキシ、C1〜C5アルコキシ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C7アルコキシ、C1〜C8アルコキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C10アルコキシ、C1〜C11アルコキシ、C1〜C12アルコキシ、C1〜C2置換されたアルコキシ、C1〜C3置換されたアルコキシ、C1〜C4置換されたアルコキシ、C1〜C5置換されたアルコキシ、C1〜C6置換されたアルコキシ、C1〜C7置換されたアルコキシ、C1〜C8置換されたアルコキシ、C1〜C9置換されたアルコキシ、C1〜C10置換されたアルコキシ、C1〜C11置換されたアルコキシまたはC1〜C12置換されたアルコキシであり得る。ここで、例えば、C1〜C10アルコキシとは、炭素原子を1〜10個含む直鎖または分枝状のアルコキシを意味し、メトキシ(CHO−)、エトキシ(CO−)、n−プロポキシ(CHCHCHO−)などが例示される。
本明細書において「置換されていてもよいアルコキシ」とは、上で定義した「アルコキシ」または「置換されたアルコキシ」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「ヘテロ環(基)」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで、ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基は置換されていてもよい。
本明細書において「置換されていてもよいヘテロ環(基)」とは、上で定義した「ヘテロ環(基)」または「置換されたヘテロ環(基)」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「アルコール」とは、脂肪族炭化水素の1または2以上の水素原子をヒドロキシル基で置換した有機化合物をいう。本明細書においては、ROHとも表記される。ここで、Rは、アルキル基である。好ましくは、Rは、C1〜C6アルキルであり得る。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「炭素環基」とは、炭素のみを含む環状構造を含む基であって、前記の「シクロアルキル」、「置換されたシクロアルキル」、「シクロアルケニル」、「置換されたシクロアルケニル」以外の基をいう。炭素環基は芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換された炭素環基」とは、以下に規定する置換基によって炭素環基のHが置換された炭素環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基であり得る。炭素環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基であり得る。炭素環基としては、フェニル基から水素原子が1個欠失したものが例示される。ここで、水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
本明細書において「置換されていてもよい炭素環基」とは、上で定義した「炭素環基」または「置換された炭素環基」のいずれであってもよいことを意味する。
本明細書において「ヘテロ環基」とは、炭素およびヘテロ原子をも含む環状構造を有する基をいう。ここで,ヘテロ原子は、O、SおよびNからなる群より選択され、同一であっても異なっていてもよく、1つ含まれていても2以上含まれていてもよい。ヘテロ環基は、芳香族系または非芳香族系であり得、そして単環式または多環式であり得る。「置換されたヘテロ環基」とは、以下に規定する置換基によってヘテロ環基のHが置換されたヘテロ環基をいう。具体例としては、C3〜C4炭素環基、C3〜C5炭素環基、C3〜C6炭素環基、C3〜C7炭素環基、C3〜C8炭素環基、C3〜C9炭素環基、C3〜C10炭素環基、C3〜C11炭素環基、C3〜C12炭素環基、C3〜C4置換された炭素環基、C3〜C5置換された炭素環基、C3〜C6置換された炭素環基、C3〜C7置換された炭素環基、C3〜C8置換された炭素環基、C3〜C9置換された炭素環基、C3〜C10置換された炭素環基、C3〜C11置換された炭素環基またはC3〜C12置換された炭素環基の1つ以上の炭素原子をヘテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基はまた、C4〜C7炭素環基またはC4〜C7置換された炭素環基の炭素原子を1つ以上へテロ原子で置換したものであり得る。ヘテロ環基としては、チエニル基、ピロリル基、フリル基、イミダゾリル基、ピリジル基などが例示される。水素の欠失位置は、化学的に可能な任意の位置であり得、芳香環上であってもよく、非芳香環上であってもよい。
本明細書において、炭素環基またはヘテロ環基は、下記に定義されるように一価の置換基で置換され得ることに加えて、二価の置換基で置換され得る。そのような二価の置換は、オキソ置換(=O)またはチオキソ置換(=S)であり得る。
本明細書において「ハロゲン」とは、周期表7B族に属するフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)などの元素の一価の基をいう。
本明細書において「ヒドロキシ」とは、−OHで表される基をいう。「置換されたヒドロキシ」とは、ヒドロキシのHが下記で定義される置換基で置換されているものをいう。
本明細書において「チオール」とは、ヒドロキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基(メルカプト基)であり、−SHで表される。「置換されたチオール」とは、メルカプトのHが下記で定義される置換基で置換されている基をいう。
本明細書において「シアノ」とは、−CNで表される基をいう。「ニトロ」とは、−NOで表される基をいう。「アミノ」とは、−NHで表される基をいう。「置換されたアミノ」とは、アミノのHが以下で定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書において「カルボキシ」とは、−COOHで表される基をいう。「置換されたカルボキシ」とは、カルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書において「チオカルボキシ」とは、カルボキシ基の酸素原子を硫黄原子で置換した基をいい、−C(=S)OH、−C(=O)SHまたは−CSSHで表され得る。「置換されたチオカルボキシ」とは、チオカルボキシのHが以下に定義される置換基で置換されたものをいう。
本明細書において「アシル」とは、カルボン酸からOHを除いてできる一価の基をいう。アシル基の代表例としては、アセチル(CHCO−)、ベンゾイル(CCO−)などが挙げられる。「置換されたアシル」とは、アシルの水素を以下に定義される置換基で置換したものをいう。
本明細書において「アミド」とは、アンモニアの水素を酸基(アシル基)で置換した基であり、好ましくは、−CONHで表される。「置換されたアミド」とは、アミドが置換されたものをいう。
本明細書において「カルボニル」とは、アルデヒドおよびケトンの特性基である−(C=O)−を含むものを総称したものをいう。「置換されたカルボニル」は、下記において選択される置換基で置換されているカルボニル基を意味する。
本明細書において「チオカルボニル」とは、カルボニルにおける酸素原子を硫黄原子に置換した基であり、特性基−(C=S)−を含む。チオカルボニルには、チオケトンおよびチオアルデヒドが含まれる。「置換されたチオカルボニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたチオカルボニルを意味する。
本明細書において「スルホニル」とは、特性基である−SO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルホニル」とは、下記において選択される置換基で置換されたスルホニルを意味する。
本明細書において「スルフィニル」とは、特性基である−SO−を含むものを総称したものをいう。「置換されたスルフィニル」とは、下記において選択される置換基で置換されているスルフィニルを意味する。
本明細書において「アリール」とは、芳香族炭化水素の環に結合する水素原子が1個離脱して生ずる基をいい、本明細書において、炭素環基に包含される。
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して一価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して二価の置換基に置換することも可能である。
本明細書においては、特に言及がない限り、置換は、ある有機化合物または置換基中の1または2以上の水素原子を他の原子または原子団で置き換えることをいう。水素原子を1つ除去して一価の置換基に置換することも可能であり、そして水素原子を2つ除去して二価の置換基に置換することも可能である。
本発明における置換基としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アルコキシ、炭素環基、ヘテロ環基、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、アシル、アシルアミノ、チオカルボキシ、アミド、置換されたカルボニル、置換されたチオカルボニル、置換されたスルホニルまたは置換されたスルフィニルが挙げられるがそれらに限定されない。このような置換基は、本発明において、アミノ酸の設計のときに、適宜利用することができる。
好ましくは、置換基は、複数存在する場合それぞれ独立して、水素原子またはアルキルであり得るが、複数の置換基全てが水素原子であることはない。より好ましくは、独立して、置換基は、複数存在する場合それぞれ独立して、水素およびC1〜C6アルキルからなる群より選択され得る。置換基は、すべてが水素以外の置換基を有していても良いが、好ましくは、少なくとも1つの水素、より好ましくは、2〜n(ここでnは置換基の個数)の水素を有し得る。置換基のうち水素の数が多いことが好ましくあり得る。大きな置換基または極性のある置換基は本発明の効果(特に、アルデヒド基との相互作用)に障害を有し得るからである。従って、水素以外の置換基としては、好ましくは、C1〜C6アルキル、C1〜C5アルキル、C1〜C4アルキル、C1〜C3アルキル、C1〜C2アルキル、メチルなどであり得る。ただし、本発明の効果を増強し得ることもあることから、大きな置換基を有することもまた好ましくあり得る。
本明細書において、C1、C2、、、Cnは、炭素数を表す。従って、C1は炭素数1個の置換基を表すために使用される。
本明細書において、「光学異性体」とは、結晶または分子の構造が鏡像関係にあって、重ねあわせることのできない一対の化合物の一方またはその組をいう。立体異性体の一形態であり、他の性質は同じであるにもかかわらず、旋光性のみが異なる。
本明細書において「保護反応」とは、Bocのような保護基を、保護が所望される官能基に付加する反応をいう。保護基により官能基を保護することによって、より反応性の高い官能基の反応を抑制し、より反応性の低い官能基のみを反応させることができる。保護反応は、例えば、脱水反応により行うことができる。
本明細書において「脱保護反応」とは、Bocのような保護基を脱離させる反応をいう。脱保護反応としては、Pd/Cを用いる還元反応のような反応が挙げられる。脱保護反応は、例えば、加水分解により行うことができる。
本明細書において「保護基」としては、例えば、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、アセチル基、ベンジル基、ベンゾイル基、t−ブトキシカルボニル基、t−ブチルジメチル基、シリル基、トリメチルシリルエチル基、N-フタルイミジル基、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル基、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、カルバメート基などが代表的な保護基として挙げられる。保護基は、例えば、アミノ基、カルボキシル基などの反応性の官能基を保護するために用いることができる。反応の条件や目的に応じ、種々の保護基を使い分けることができる。ヒドロキシ基の保護基にはアセチル基、ベンジル基、シリル基またはそれらの誘導体などが、アミノ基の保護基にはアセチル基のほかベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基またはそれらの誘導体などを使用することができる。アミノオキシ基およびN-アルキルアミノオキシ基の保護基として、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル基、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基またはそれらの誘導体が好ましい。
本明細書において使用する場合「システインに結合する官能基」とは、ポリペプチドのシステイン残基側鎖と共有結合し得る官能基をいう。代表的な官能基は、ミカエル付加反応する官能基であり、以下の反応を行う。
従って、「システイン残基と共有結合し得る部分」とは、上記のようなメカニズムによりシステイン残基と共有結合し得る任意の官能基を包含し、例えば、α,β不飽和ケトンが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において使用する場合、「アルギニン残基またはチロシン残基と相互作用し得る部分」とは、チロシン残基と、水素結合する官能基が挙げられるが、これらに限定されない。また、「チロシン残基と相互作用し得る部分」としては、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基(置換基の場合、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり得る)が挙げられるが、これらに限定されない。
上記一般式で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、例えば、
(化8)
−CH=CH−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−CH=CH−R−R
という構造を有し、ここで、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜13個の、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が4〜14個である、化合物であり得る。
ここで、本明細書において「最短距離を結ぶ炭素数の最大値」とは、ある置換基について言及するとき、その置換基に含まれる任意の炭素原子から別の炭素原子までの最短距離を定義するときの炭素数であって、すべての炭素原子の組み合わせ(組み合わせには2つの炭素が含まれる)において最大である数をいう。例えば、ベンゼン環は、6×5/2通りの炭素の組み合わせが考えられるが、その組み合わせの最短距離は、1、2または3のいずれかである。従って、この場合の最短距離を結ぶ炭素数の最大値は、3となる。最短距離を結ぶ炭素数の最大値は、ある置換基について、最大限占め得る領域の目安にほぼ比例する。従って、リガンドの設計のときには、対応するレセプターの相互作用する領域について、対応関係を維持するための指標として、この最短距離を結ぶ炭素数の最大値を用いることができることが理解され得る。
好ましくは、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜9個を有する、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の炭化水素基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が6〜12個である。
ここで、好ましくは、構造は、
−(C=O)−CH=CH−R−Rであり、
式中Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜9個を有する置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が6〜14個であり、
その組み合わせは、
に記載される配列番号に示すアミノ酸配列を有する核内受容体に対して、右列の炭素数を有することが好ましくあり得るがそれらに限定されない。
上記のような具体的な化合物としては、例えば、インドメタシンのようなNSAIDs、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(11−オキソ−プロスタ−5Z,9,12E,14Z−テトラエン−1−オイック酸;15d−PGJ)、11−オキソ−プロスタ−5Z,12E,14Z−トリエン−1−オイック酸(CAY10410)、5−オキソ−6E,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエン酸(5−オキソODE)、9−オキソ−10E,12Z−オクタデカノジエン酸(9−オキソODE)、13−オキソ−9Z,11E−オクタデカノジエン酸(13−オキソODE)および15−オキソ−5Z,8Z,11Z,13E−エイオコサテトラエン酸(5−オキソETE)などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において使用する場合、アゴニストとシステイン残基に結合する官能基との「結合」は、直接的(すなわち、リンカーを介さず)であっても、間接的(すなわち、リンかーを介する)であってもよい。
本明細書において使用する場合、用語「リンカー」とは、異なる2つの化合物(または化合物の部分)を間接的に結合させる分子をいう。代表的なリンカーとしては、アルキル鎖などの親和性に影響を与えない任意の基が挙げられるが、これらに限定されない。アゴニストとシステイン残基に結合する官能基との間において所望の距離を隔てるためのリンカーの設計方法は周知である。例えば、アルキル鎖における炭素原子間の距離を算出し、所望の距離(Å)の長さを有するリンカーを作製するためには、その距離に応じた最短距離を結ぶ炭素数の最大値の炭素数を有するアルキル鎖を用いることができる.
本発明において使用される化合物は、ロイコトリエンに類似する構造を有することが多いことから、例えば、有機合成化学第48巻第7号(1990);Hukum P.Acharyaら、Tetrahedron Lett. 45(2004)、1199−1202などの総説に記載される任意の合成手順を用いることができることが理解される。
本発明の各方法において、目的とする生成物は、反応液から夾雑物(未反応減量、副生成物、溶媒など)を、当該分野で慣用される方法(例えば、抽出、蒸留、洗浄、濃縮、沈澱、濾過、乾燥など)によって除去した後に、当該分野で慣用される後処理方法(例えば、吸着、溶離、蒸留、沈澱、析出、クロマトグラフィーなど)を組み合わせて処理して単離し得る。
(医療)
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)とは、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状態が起こらないように処置することをいう。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
(スクリーニング)
本明細書において「調節」とは、核内受容体について言及するとき、その生物学的活性が変更されることをいう。
本明細書において「阻害」とは、核内受容体について言及するとき、その生物学的活性が低減または消失することをいう。
本明細書において「促進」とは、核内受容体について言及するとき、その生物学的活性が増加または無い状態から有る状態が生じることをいう。
本明細書において「生物学的試験」とは、実際の生体反応を用いてある化合物がある活性を有するかどうかを判定することをいう。生物学的試験は、in vitroおよびin vivoでの試験を包含する。したがって、生物学的試験は、in silicoとは対立する概念である。
本明細書において「候補化合物」とは、目的とする標的(例えば、核内受容体)の活性を調節するため、あるいは目的とする疾患または障害を処置するために使用され得る化合物の候補をいう。したがって、ある化合物は、目的とする疾患または障害について効果があると予測される場合は、候補化合物と呼ばれ得る。
本明細書において「化合物種」とは、ある化合物の集合において、特定の目的とする活性を有するなど、所望の性質を有する1種の化合物についていう。例えば、PPARγの活性を調節(例えば、アゴニスト作用を有する)する化合物の集合において、PPARγの活性を調節する化合物が特定される場合、そのような化合物は、化合物種と称され得る。本明細書では、単に化合物とも称される。
本明細書において「ライブラリー」とは、スクリーニングをするための化合物などの一定の集合をいう。ライブラリーは、同様の性質を有する化合物の集合であっても、ランダムな化合物の集合であってもよい。好ましくは、同様の性質を有すると予測される化合物の集合が使用されるが、それに限定されない。本発明で使用する化合物ライブラリは、例えば、コンビナトリアルケミストリー技術、醗酵方法、植物および細胞抽出手順などが挙げられるがこれらに限定されない、いずれかの手段により、作製することができるかまたは入手することができる。コンビナトリアルライブラリを作成する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、E.R.Felder,Chimia 1994,48,512−541;Gallopら、J.Med.Chem.1994,37,1233−1251;R.A.Houghten,Trends Genet.1993,9,235−239;Houghtenら、Nature 1991,354,84−86;Lamら、Nature 1991,354,82−84;Carellら、Chem.Biol.1995,3,171−183;Maddenら、Perspectives in Drug Discovery and Design2,269−282;Cwirlaら、Biochemistry 1990,87,6378−6382;Brennerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992,89,5381−5383;Gordonら、J.Med.Chem.1994,37,1385−1401;Leblら、Biopolymers 1995,37 177−198;およびそれらで引用された参考文献を参照のこと。これらの参考文献は、その全体を、本明細書中で参考として援用する。
本明細書において「相互作用」とは、2以上の分子が存在する場合、ある分子と別の分子との間の作用をいう。そのような相互作用としては、水素結合、ファンデルワールス力、イオン性相互作用、非イオン性相互作用、受容体リガンド相互作用、静電的相互作用およびホスト−ゲスト相互作用が挙げられるがそれらに限定されない。本発明のスクリーニングにおいては、特に共有結合および/または水素結合が用いられ得る。
本明細書において、「共有結合」とは、電子対が2つの原子に共有されて形成する化学結合をいう。ある結合が共有結合であるかどうかは、2つの原子の間の結合エネルギーが50〜1000kJ/mol(好ましくは60〜700kJ/mol)であることを判定することによって識別することができる。
本明細書において「水素結合」とは、電気陰性度の大きい原子X(例えば、F、O、Clなど)に共有結合している水素原子と、電気陰性度の大きい原子Y(例えば、F、O、Cl,Xと同じであり得る)とが近づく際に生じるXとYとの間に水素を媒介とするX―H…Yの形の非共有結合をいう。本明細書では、水素結合の結合エネルギーは通常約8〜35J程度であり、その結合エネルギーを判定することによって識別することができる。
本明細書において「評価」とは、スクリーニングにおいて用いられるとき、ある指標(例えば、医薬としての活性)に関して、候補化合物がそのような指標の要件を満たすかどうか決定することをいう。そのような評価は、当該分野において公知の方法を用いて行うことができ、インシリコ(コンピュータを用いる)かまたはウェット(実際の生物学的アッセイを行う)によって行うことができる。例えば、PPARγの場合は、そのリガンドなどを用いて、そのPPARγ活性が変化したかどうかを見ることによって行うことができる。
本明細書においてタンパク質の「立体構造(コンピュータ)モデル」とは、コンピュータを用いて表現された、ある化合物の立体構造のモデルをいう。そのようなモデルは、当該分野において公知のコンピュータプログラムを用いて表示することができ、そのようなプログラムとしては、例えば、CCP4でサポートされるプログラム、DENZO(HKL2000)、MolScript(Avatar Software AB)、Raster3D、PyMOL(DeLano Scientific)、TURBO−FRODO(AFMB−CNRS)、O(A.Jones、Uppsala Universi
tet、Sweden)、ImageMagic(John Chrysty)、RasMol(University of Massachusetts,Amherst MA USA)などがあるがそれらに限定されない。そのようなプログラムは、例えば、図7に示されるような原子座標のデータを用いてモデルを生成することができる。
本明細書において「データアレイ」とは、原子座標を示す数列のような一連のデータを示す。
本明細書において「記録媒体」は、データを記録することができる限り、どのような媒体でも用いることができる。そのような媒体としては、例えば、ハードディスク、MO、CD−R、CD−RW、CD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、メモリーカードなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「伝送媒体」は、データを伝送することができる限り、どのような媒体でも用いることができる。そのような媒体としては、例えば、インターネット、イントラネット、LAN、WANなどが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「ファルマコフォア」とは、原子と官能基との組み合わせ(およびそれらの三次元的な位置)をいい、これを用いることによって薬物が特定の方式で標的タンパク質と相互作用できるようにし、その薬理学的活性を示す。薬物分子の立体(物理的)および電場によって形成される三次元の「機能的形態」であり、これにより分子の薬理学的活性が生じる。医薬のリード化合物、および特定の標的に対するリード化合物の測定可能な活性を研究する様々なアプローチ法が開発され、一連の構造活性の関係からファルマコフォアが設計され得る。
本明細書において「結合ポケット」とは、その形状の結果として、他の化学物質または化合物と会合する、分子または分子複合体の領域をいう。
本明細書において「活性ポケット」とは、あるタンパク質について言及されるとき、その基質または補酵素と相互作用することができる部位を含む、分子または分子複合体の領域をいう。
本明細書において核内受容体(例えば、PPARγ)の「活性部位結合ポケット」とは、その形状が、一般的なリガンドと結合するために、リガンド複合体化核内受容体の活性部位結合ポケットの全てまたは任意の部分と類似する、分子もしくは分子複合体の一部を意味する。この形状の共通性は、リガンド複合体化PPARγにおける結合ポケットを構成するアミノ酸の骨格原子の構造座標(図17および18を参照のこと)からの例えば3.0Å以下、好ましくは2.5Å未満の根二乗平均偏差により定義される。この計算を得る方法は、本明細書の別の場所に記載されるとおりである。
リガンド複合体化PPARγの「活性部位結合ポケット」または「活性部位」は、リガンドの結合領域を担うPPARγの領域を意味する。
本明細書において「構造座標」は、PPARγなどの核内受容体またはその複合体の原子(散乱中心)によりX線の単色ビームの回折上で得られるパターンに関する数式に由来する直交座標をいう。回折データを使用して結晶の反復単位の電子密度マップを計算する。次いで、電子密度マップを使用して、PPARγなどの核内受容体の個々の原子の位置を確定する。
このような構造座標の「データ」(原子座標データともいう)としては、代表的に、原子座標データ、トポロジー、分子力場定数が挙げられる。原子座標データは、代表的に、X線結晶構造解析またはNMR構造解析から得られたデータであり、このような原子座標データは、新規にX線結晶構造解析またはNMR構造解析を行って得られ得るか、または公知のデータベース(例えば、プロテイン・データ・バンク(PDB))から入手し得る。原子座標データはまた、モデリングまたは計算によって作成されたデータであり得る。
トポロジーは、市販もしくはフリーウェアのツールプログラムを用いて算出し得るが、自作プログラムを用いてもよい。また、市販の分子力場計算プログラム(例えば、PRESTO、株式会社蛋白工学研究所、に付属のpreparプログラム)に付属の分子トポロジー計算プログラムを使用し得る。分子力場定数(または分子力場ポテンシャル)もまた、市販もしくはフリーウェアのツールプログラムを用いて算出し得るが、自作データを用いてもよい。また、市販の分子力場計算プログラム(例えば、AMBER、Oxford Molecular)に付属の分子力場定数データを使用し得る。
PPARなどの核内受容体または核内受容体の複合体またはその一部についての構造座標のセットが、3次元における形状を定義する相対的な点のセットであることを当業者は容易に理解する。従って、座標の全体の異なるセットが類似のまたは同一の形状を定義することが可能である、さらに、個々の座標におけるわずかな変化は、全体の形状においてはほとんど影響はない。結合ポケットに関しては、これらの変化は、これらのポケットに会合し得るリガンドの性質を顕著に変化させるとは予測されない。
上記の座標における変化は、PPARγ構造座標の数学的操作によって生成され得る。例えば、構造座標は、構造座標の結晶学的な置換、構造座標の分割、構造座標のセットへの整数的加算または減算、もしくは任意の上記の組合せにより操作され得る。
(結晶構造解析)
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造、または候補化合物の構造)は種々のレベルの構成に関して記述され得る。この構成の一般的な議論については、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)、ならびに、CantorおよびSchimmel、Biophysical Chemistry Part I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に配置された三次元構造をいう。これらの構造は、本明細書においてドメインと称することもある。
本明細書において「結晶構造解析」とは、X線、電子線または中性子線の結晶による回折を利用した結晶構造の解析をいう。ほぼ単色で平行な線束を単結晶に当てながら、結晶の方位を系統的に変えて、多くの結晶網平面からのブラッグ反射強度を,ワイセンベルク・カメラやプリセッションカメラでフィルムまたはイメージングプレートに記録して強度測定するか(回転結晶法)、計数管を備えた4軸回折計で反射強度を系統的に測定する方法などがある。こうして得た反射の消滅則から、それが属する空間群をきめることができる。対称中心の有無もまた、積分反射強度の統計から決定され得る。これらの空間群、対称中心などの情報を得た後、結晶の分子式および単位胞の大きさから、単位胞中に含まれる化学単位数(原子数または分子数)を決定することができる。重原子法では、次にパターソン関数を使って重原子(存在する場合)の位置を求め、その寄与を手掛りにして解析する。重原子が含まれていない場合でも、外因的に重原子を入れてそれを手掛りに同形置換法で構造を解くことができる。複雑なタンパク質分子などでは水銀のような重原子をある位置に入れ、特に別種の重原子を別の位置に入れることにより、反射の位相をかなりの数決定することができ、そのような情報をもとに構造を解析する。
このようなタンパク質などの物質の結晶構造解析は、当該分野において周知の方法を用いて行うことができる。そのような方法は、例えば、タンパク質のX線結晶構造解析(シュプリンガー・フェアラーク東京社)、生命科学のための結晶解析入門(丸善)などに記載されており、本明細書ではそのような方法を任意に用いることができる。
一般に、タンパク質の結晶は、X線によりかなり損傷を受けることが知られているので、X線結晶構造解析を成功させるためには、損傷を受け難い結晶を取得することが重要である。近年では、結晶を凍結させ、凍結状態のままで回折データを測定することで高品質、高分解能の回折データを取得することがよく行われている(Methods in ENZYMOLOGY 第276巻、Macromolecular Crystallography、Part A、C.W.Carter、Jr.およびR.M.Sweet編、Practical Cryocrystallography(D.W.Rodgers))。一般に、タンパク質結晶の凍結には、凍結による結晶の崩壊を防ぐ目的で、グリセロールなどの凍結安定化剤を含む溶液で処理するなどの工夫がなされる。凍結結晶はまた、凍結安定化剤を添加した保存液に浸漬した結晶に対して上記瞬時に凍結させる操作を行うことによっても調製し得る。
本明細書において、重原子同型置換法(Methods in ENZYMOLOGY 第115巻、Diffractipn Methods for Biological Macromolecules、 Part B、H.W.Wyckoff、C.H.W.Hirs、およびS.N.Timasheff編、ならびにMethods in ENZYMOLOGY 第276巻、 Macromolecular Crystallography、Part A、C.W.Carter、Jr.およびR.M.Sweet編)または多波長異常分散法(S.N.Timasheff編、ならびにMethods in ENZYMOLOGY 第276巻、 Macromolecular Crystallography、Part A、C.W.Carter、Jr.およびR.M.Sweet編)もまた利用して立体構造解析を行うことも可能である。ここでは、ネイティブ結晶および重原子誘導体結晶の回折データ間の回折強度差、あるいは異なる波長で測定した回折データ間の回折強度差から、電子密度を計算するための初期位相を求めることにより立体構造を決定し得る。重原子同型置換法または多波長異常分散法を適用する核内受容体(例えば、PPARγ)の立体構造決定においては、重金属原子として例えば水銀、金、白金、ウラン、セレン原子などを含有した重原子誘導体結晶を用い得る。例えば、水銀化合物EMTSまたはカリウムジシアノ金(I)を利用した浸漬法により得られる重原子誘導体結晶が用いられる。
ネイティブ結晶および重原子誘導体結晶の回折データは、例えば、R−AXIS IIc(理学電機)あるいはSPring−8(西播磨大型放射光施設)のタンパク質結晶構造解析用ビームラインを用いて測定し得る。多波長異常分散法を適用するための複数波長での回折データ測定は、例えば、SPring−8のタンパク質結晶構造解析用ビームラインを用いて実施し得る。測定した回折画像データは、例えば、R−AXIS IIc付属のデータ処理プログラムまたはプログラムDENZO(マックサイエンス)または同様な画像処理プログラム(または単結晶解析用ソフトウェア)を用いて、反射強度データに処理される。ネイティブ結晶の反射強度データ、複数波長での重原子誘導体結晶の反射強度データ波長の測定により得られた反射強度データから、差Patterson図を利用して結晶中のタンパク質に結合した重金属原子の位置を求めた後、例えば、プログラムPHASES(W.Furey、University of PennsylvaniaあるいはCCP4(British Biotechnology & Biological Science Research Counsil、SERC)または同様の回折データ解析プログラムを用いて重原子位置パラメータを精密化することにより初期位相が決定される。決定された初期位相は、例えば、プログラムDM(CCP4パッケージ)または同様な位相改良プログラム(電子密度改良プログラム)を用いた溶媒平滑化法およびヒストグラムマッチング法に従って、PPARγリガンド結合フラグメント結晶中の溶媒領域を例えば30〜50%として、低分解能から高分解能まで徐々に位相拡張計算を行うことにより信頼性の高い位相へと改良される。タンパク質の結晶は、その体積の30〜60%がタンパク質以外の溶媒分子(主として水分子)で占有されている。本明細書において、溶液中の溶媒分子の占める体積を「溶媒領域」とする。一般に、得られたタンパク質結晶が非結晶学的な対称を有する場合には、非結晶学的対称(NCS)平均化と呼ばれる電子密度の平均化を行うことにより、さらに位相の信頼性を高めることが可能である。溶媒平滑化法を適用した後の位相を用いて計算した電子密度図および精密化した重原子座標から、並進および回転を含む非結晶学的対称マトリックスが算出される。同時に溶媒平滑化法で得られた電子密度図から、マスクと呼ばれるタンパク質の分子が存在する領域を同定し得る。非結晶学的対称マトリックスおよびマスクを用いて、プログラムDMなどによりNCS平均化計算を行うことにより、信頼性の高い位相に改良され、立体構造モデルの構築に用いる電子密度図が得られる。
核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの立体構造モデルは、例えば、プログラムO(オー)(A.Jones、Uppsala Universitet、Sweden)などにより3次元グラフィックス上に表示した電子密度図から、以下の手順で構築し得る。まず、特徴的なアミノ酸配列を有する複数の領域(例えば、トリプトファン残基を含む部分配列など)を電子密度図上で探し出す。次に、見出した領域を起点にしてアミノ酸配列を参照しながら、電子密度に適合するアミノ酸残基の部分構造をプログラムOを用いて3次元グラフィックス上で構築する。、順次この作業を繰り返すことにより、核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントのすべてのアミノ酸残基を相当する電子密度に適合させ、分子全体の初期立体構造モデルを構築する。構築された立体構造モデルは、それを出発モデル構造として、構造精密化プログラムであるXPLOR(A.T.Brunger、Yale University)の精密化プロトコルに従って、立体構造を記述する三次元座標が精密化される。また、核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメント(例えば、配列番号2、4、6...46に示されるアミノ酸配列を含む核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメント)のネイティブ結晶の立体構造および核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメント(例えば、配列番号2、4、6...46に示されるアミノ酸配列を含む核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの改変体)ネイティブ結晶の立体構造は、得られたEMTS誘導体結晶の立体構造を用いた分子置換法により初期位相を求め、前記の電子密度改良、モデル構築、構造精密化手順に従うことにより各々の立体構造を決定し得る。このことにより、本発明の核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメント)の立体構造の決定が完成される。決定した核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの立体構造について、トポロジーなどの観点から、タンパク質立体構造の公的データバンクであるプロテインデータバンク(PDB)に登録されている種々のタンパク質(PPARγと機能において類似するタンパク質のフラグメントを含む)の立体構造との比較を行い得る。本発明の核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメント)を作製する際には、αヘリックス、βストランド、βシートなどのようなトポロジーを考慮してもよい。
従って、本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物(例えば、インヒビター、活性化剤など)が提供されることも企図される。
(NMR)
本明細書において「NMR」とは、核磁気共鳴を意味する。磁気モーメントを持つ核の集団を静磁場Bの中に置くと、核ゼーマン効果によって、磁気モーメントの大きさと磁場の強さに従った不連続なエネルギー準位に分布する。この準位の間隔に相当する周波数をもつ電磁波を照射すると共鳴吸収が観測される現象を核磁気共鳴という。
本明細書において「二次元NMR」とは、核磁気共鳴スペクトルを2つの周波数軸に展開する方法をいう。この測定には複数のパルスを用い、その時間間隔と観測パルス後の時間とを二つの時間軸としてフーリエ変換を行う。シグナル強度は、通常、等高線によって表される。二次元NMRとしては、代表的には、TROSY(transverse relaxation−optimized spectroscopy)、COSY(二次元シフト相関NMR法)、SECSY(二次元スピンエコー相関分光法)、FOCSY(二次元折り返し補正分光法)、HOHAHA(二次元同核ハートマン法)、NOESY(二次元NOE法)、2D−J法(二次元J分解分光法)、リレーCOSY(リレーコヒーレンス移動分光法)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいNMRはTROSYである。TROSYとは、Wuthrichらによって開発された、超高磁場NMRに適した方法である(Proc.Natl.Acad.Sci.USA vol.94、12366−12371頁(1997))。分子量の大きな分子のNMRにおいては、核磁気緩和を支配するのは、(1)磁気双極子相互作用と、(2)化学シフト異方性であるが、超高磁場では、化学シフト異方性が非常に大きくなるために、緩和時間が短くなり、線幅が広くなる。TROSYは、これら2つの相互作用を相殺することによって、緩和時間を長くし、線幅を狭くする方法である。TROSYによって高分子量のタンパク質(例えば、900kDa以上)について、二次元NMRスペクトルを得ることが可能になった。
本明細書において二次元NMRを行う場合、タンパク質を標識するために使用される安定同位体の核種としては、15N,13C,Hまたはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい標識に用いられる安定同位体核の種類としては15N単標識、13C単標識、15N/H二重標識、13C/H二重標識、15N/13C/H三重標識である。
本発明でNMRを使用する場合、NMRシグナルの軸方向の変化量を用いることができる。このような変化量は、安定同位体元素について展開された二次元NMRの周波数軸について、軸方向での分子配向依存的な変化量として定義され、例えば、Hを用いる場合、H軸方向での分子配向依存的な変化量であり、また、例えば、13Cを用いる場合、13C軸方向での分子配向依存的な変化量などを挙げることができる。
本明細書において用いられるNMRによる高次構造解析に用いられるタンパク質試料は、通常、生合成により安定同位体標識することによって構造解析される。一般には、まず遺伝子操作した大腸菌等によって標的タンパク質の発現系を確立し、安定同位体標識した炭素源や窒素源(すべての炭素を13Cラベルしたグルコース、窒素を15Nラベルした塩化アンモニウムなど)を加えた培地で発現させることにより、すべての炭素および窒素を安定同位体標識したタンパク質を得ることができる。得られた標識タンパク質は、クロマトグラフィーなどで精製した後、限外濾過などで濃縮することによってNMR測定に供することができる。この際、以下のような条件に留意することが望ましい。
使用する容器については、タンパク質の粘度が高いことを考慮してガラス壁面に付着、分散を抑えるために、NMR試料管を含めて、使用する器具にはシリコンなどでコーティング処理を施すことが好ましい。また、試料の扱いには、パスツールピペットなどを用いることが望ましい。
溶媒としては、通常、水溶液が用いられる。ただし、タンパク質は多くの交換性アミドプロトンを有しており、重水溶液にしてしまうと、スペクトルの解析で鍵となるアミドプロトンが重水素置換されることにより、多くの情報が失われることから、通常、軽水溶液で試料調製し、その後NMRロック用として10%程度の重水を添加することが行われている。必要に応じて、界面活性剤、還元剤などを加えていてもよい。
試料濃度は、通常、1mM程度(例えば、0.4mM〜2mM)にする。試料の量に余裕があり、溶解度が高いのであれば、5mM〜10mMでも測定可能であるが、濃度を高くすると溶液中で会合が起こる危険性があるので留意する。会合による予期しない解析結果を防ぐためにも、低濃度と高濃度の試料で線形を比較して会合の有無を確認することが好ましい。
使用するpHとしては、通常、5〜7程度が好ましいがそれに限定されない。pHを下げることにより、アミドプロトンなどの交換可能プロトンの交換速度を遅くなるからである。ただし、pH が低いと高次構造に影響を与える懸念があるため、円二色性(CD)スペクトル等で確認しておくことが好ましい。
緩衝剤としては、スペクトル解析の障害となることを防ぐため、プロトンを持たないものを使用することが望ましい。そのようなものとしては、リン酸緩衝液、重水素化酢酸緩衝液などが挙げられるがそれらに限定されない。
使用する温度としては、 生体内の温度に近付けるため、30〜40 ℃程度にすることが望ましい。温度を高めに設定して溶液の粘性を下げることにより、タンパク質分子のT2 が長くなることから、一般には温度が高い方が良好なスペクトルが得られる。
試料溶液に溶存酸素が含まれていると、常磁性緩和のために緩和時間が短くなり、感度の損失を招き、TROSY 相関の検出の障害となる場合もあることから、このことを防ぐために脱気をおこない、溶存酸素を取り除くことが好ましい。脱気操作は減圧による脱気、不活性ガスのバブリングなどがあり、好ましくは減圧脱気が使用される。また、気泡を立てないことが望ましい。
溶液の保存のために、アジドを加えることが望ましい。
試料調製ののち、NMRのシム調整を行う。まず、NMRロックをかけて分解能調整を行う。タンパク質溶液NMRの測定は、原則として軽水溶液での測定であるため、巨大な水信号(標的タンパク質の数万倍〜数百万倍のH 濃度)を消去することが好ましいからである。これは、分解能調整が目的であり、好ましくは、良質のスペクトルを得るため、測定試料ごとに充分な分解能調整を行うことが望ましい。タンパク質溶液NMRの測定で試料管は、通常回転させないことから、Z 軸だけでなく、X、Y軸および高次の項の調整も含めて分解能をしっかりと上げておくことが、良いスペクトルを得るために必要である。
次に、パルス幅の測定を行う。水溶液で測定するタンパク質溶液NMRは、塩強度の違いにより試料によってパルス幅が変化する場合があることから、原則として測定試料ごとにパルス幅の測定をおこなうことが必要である。
タンパク質溶液NMRで用いられるパルス・シーケンスは、数多くのRF パルスが配列されていることから、パルス幅のズレが全体ではかなり大きく影響してくるとされている。したがって、多次元NMR測定を実行する前に、標的タンパク質の信号でパルス幅を測定し、その値を用いて多次元NMR測定をおこなうことが望ましい。
次に、NMRによるサンプルの確認を行う。試料調整してからしばらく保管した後など、タンパク質が劣化している可能性があるときなどにはNMRによる確認をおこなうことが望ましい。
そこで、通常15N−H HSQC 測定を行い、2次元NMRスペクトルで確認する。信号のパターンがおかしいとき、位相が合わないようなときなどの不具合があるときは、標的タンパク質が壊れてしまっている可能性があることから、再度実験条件の調整が必要である。
次に、スペクトル解析(信号の帰属)を行う。NOEスペクトルを例にとってスペクトルの解析法の概略を以下に説明する。NMRによって得られたNOE由来の距離情報をもとにH信号の帰属を行い、高次構造を導き出すことができる。幾重にも重なり合った信号を、3次元・4次元といった測定を用いてことごとく分離し、既知のアミノ酸配列に割り当てていく。その原理には、スペクトルがアミノ酸ごとに特定のパターンを持っていること、化学シフトおよびスピン結合定数などに極めて特徴的な法則があることを利用する。このような特徴的な性質から、現在では帰属の自動化も行われている。以下に、タンパク質 NMRスペクトルの特徴的な化学シフトを示す。
タンパク質のHの化学シフトはその環境ごとにおおよそ限定されている。すなわち、アミドプロトン由来の信号(8ppm付近)、側鎖の芳香環由来の信号(7ppm付近)、α位のプロトン由来の信号(4ppm付近)、β位のプロトン由来の信号(2〜3ppm付近)、メチル基由来の信号(1ppm付近)が、それぞれ観測される。
13Cの化学シフトにも同様の相関があり、13Cではそれぞれの領域を選択的に励起することで、α位やβ位の炭素、カルボニル炭素などをあたかも別核種のように取り扱うことにより、帰属のための様々な測定法のなかで活用される。
アミノ酸配列の帰属に加えて、高次構造に由来する化学シフトの変化が見られる。たとえば、α位のプロトン由来の信号はαヘリックス構造の中では高磁場シフトし、βシート構造の中では低磁場シフトする。その他にも、側鎖の芳香環との位置関係により±1ppm 程度シフトすることがある。また金属結合タンパク質などでは、金属と結合した部位でかなり大きなシフトが見られる。
次に、同種核スピン結合も考慮すべきである。タンパク質を構成するアミノ酸は、ペプチド結合(アミド結合)で連結されていることから、カルボニル基によってH−H間のスピン結合が分断され、H−H間のスピン結合は同一アミノ酸残基内に限定される。したがって、H−H 間のスピン結合のパターンは、アミノ酸の種類ごとに特徴的であり、この事実を利用して、アミノ酸の同定を行う。また、α位のプロトンとアミドプロトンのJHαスピン結合定数から導かれる二面角φは主鎖の2次構造の決定に役立つ。
また、異種核間スピン結合も考慮すべきである。主鎖に関連するH−H以外のスピン結合定数としては、例えば、H−N(90−100Hz)、N−Cα(11Hz)、Cα−H(140Hz)、Cα−Cβ(30−40Hz)、Cα−C(=O)(55Hz)、Cα−X−N(7Hz)、13C−15N(15Hz)などが挙げられる。
また、NOE相関も考慮されるべきである。NOE相関は、高次構造解析に用いられるが、アミドプロトンとα位のプロトンとのカルボニル基をはさんだH同種核NOEは、その二つのプロトンが、アミド結合を介して隣り合ったアミノ酸残基に由来することを示しており、H同種核実験によるアミノ酸配列の帰属で用いられる。この手法を、スピン結合や化学シフトをもとに決定したアミノ酸の種別情報とあわせて、配列特異的連鎖帰属法という。
帰属作業が終わったら、必要に応じて、高次構造解析を行う。タンパク質の高次構造には、アミノ酸配列が立体的な規則性を持って形作るαヘリックス構造、β シート構造のような2次構造、いくつかの2次構造が空間的に配置された3次構造、3次構造で構築されたドメインが空間的に配置された4次構造があり、これらを明らかにすることがタンパク質溶液NMR測定において構造解析において重要であり、目的に応じて種々行われる。
一次配列が既知のアミノ酸配列の場合、既知のポリペプチド鎖がどのように絡み合ってタンパク質を構築しているのかを、NMRから得られる情報を利用して解像する。この際利用されるのが、ディスタンス・ジオメトリー法、束縛条件付きモレキュラーダイナミクス法と呼ばれる構造最適化計算アルゴリズムである。いずれの場合にも、NMRから得られる距離情報としてのNOE信号を集められる限り集めに集め、それをパラメータとして計算プログラムに与えることによって高次構造を導き出す手法である。
本明細書において、「束縛条件付きモレキュラーダイナミクス法」とは、分子運動をシミュレートするために一般的に用いられている手法として知られるモレキュラーダイナミクス法(仮想的に分子を振動させ、構造を最適化する方法)の一つであり、NOE 由来の距離の束縛条件をポテンシャルとして加え、構造を最適化していく手法をいう。この手法は位置情報としてデカルト(Cartesian)座標を使用しており、また変数も多いために膨大な計算量が必要とされ、コンピュータに対する負荷も大きいが、現在ではコンピュータの計算能力の飛躍的な進歩により計算時間が短縮され、頻繁に利用されている。
本明細書において「シミュレーテッド・アニーリング法」とは、モレキュラーダイナミクス計算の1手法であり、一般的なモレキュラーダイナミクス計算と異なり、計算の初期段階で共有結合に寄与するパラメータを弱く設定し、系の温度を急激に上げることにより分子運動を激化させ、その後徐々に系の温度を下げて分子運動を遅くしつつ、それぞれのパラメータを強めて構造を収束させる手法をいう。これにより、原子の接触によって構造変化が妨げられることによる見かけの収束に構造が落ち着くことを防ぐことができる。
本明細書において、「ディスタンス・ジオメトリー法」とは、距離情報と結合角(2面角)の集合とを空間的な位置情報としてみて、それをもとに構造を導き出す手法をいう。通常は、共有結合の結合長および結合角を一般的なタンパク質の標準値に固定し、2面角を変数として構造計算を進める。NOE由来の距離の束縛条件を満たす方向に収束した構造をいくつか取り出し、最も適切と思われる構造を最終構造とする。この手法は、変数が少ないために計算も速く、コンピュータに対する負荷も小さいが、原子の接触によって構造変化が制限される(共有結合同士のすり抜けができない)ため、真の構造に収束することが難しく、次に述べる束縛条件付き分子動力学法などの初期構造を求めるために利用される。
以上、本明細書において使用可能なNMR手法を説明したが、このような手法は、当該分野において公知であり、例えば、Kurt Wuthrich著,京極好正・小林祐次訳,タンパク質と核酸のNMR:二次元NMRによる構造解析,東京化学同人.(1991);M.Sattler,J.Schleucher,C.Griesinger,Progr.NMR Spectrosc.34,93−158.(1999);J.Cavanagh,W.J.Fairbrother,A.G.Palmer III,N.J.Skelton,Protein NMRSpectroscopy:Principles and Practice,Academic Press.(1995);T.L.James and N.J.Oppenheimer(eds.),Methods in Enzymology,Vol.239,Academic Press.(1994);荒田洋治,タンパク質のNMR:構造データの解釈と評価,共立出版.(1996); 荒田洋治,NMRの書,丸善.(2000); 根本暢明,吉田卓也,小林祐次,科学と工業,69(10),419−425.(1995);根本暢明,吉田卓也,小林祐次,科学と工業,70(2),48−55.(1996)などに記載されており、本明細書においてその内容を参考として援用する。
(質量分析)
本発明において共有結合などの結合を測定するのに質量分析を利用することができる。
本明細書において「質量分析」とは、電磁気的相互作用を利用して原子・分子のイオンを質量の違いによって分析する任意の方法をいう。代表的には、質量分析は、2つの方法大別され、第1のものは、同時にイオンの軌道を分けて分析する方法であり、その装置を質量分析器(mass spectrograph)という。第2のものは、軌道は同じであるが、イオン運動の時間的相異または共鳴条件の相異によって質量の違いを測る方法であり、その装置を質量分析計(mass spectrometer)という。
質量分析の方法は、当該分野において周知であり、例えば、MALDI−TOFなどが挙げられるがそれらに限定されない。当業者はそのような方法を適宜改変して本発明に用いることができる。
本明細書において、質量分析により得られるような、タンパク質などの物質の構造の量的変化の情報を利用して結合を算出することができる。このようなタンパク質などの物質の構造の量的変化の情報は、その糖鎖自体の存否に関する情報として表示することもできるし、その糖鎖が含まれる分子(例えば、タンパク質)全体を情報として表示することもできる。量的変化の情報はまた、注目すべきタンパク質とリガンドとの割合の比として表現することができるがそれに限定されない。そのような量的変化の情報を構成するおのおのの糖鎖または糖鎖を含む分子の量(またはレベル)を示す単位としては、例えば、ng、μmol、質量分析における信号強度、分光分析における信号強度、またはmg/試料g、mmol/試料g、あるいは相対蛍光強度などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明では、そのようなタンパク質構造の量的変化量の変化を分析(区間微分などによる)することも重要であり得る。
代表的な質量分析であるMALDI−TOF(MS)は、Matrix Assisted Laser Desorption Ionization − Time−of−Flight(Mass Spectrometer)の略語である。MALDIとは、田中らによって見いだされ、Hillenkampらによって開発された技法である(Karas M.,Hillenkamp,F.,Anal.Chem.1988,60,2299−2301)。この方法では、試料とマトリクス溶液をモル比で(10−2〜5×10−4):1に混合した後、混合溶液を標的上で乾固し、結晶状態にする。パルスレーザー照射により、大きなエネルギーがマトリクス上に与えられ、(M+H)+、(M+Na)+などの試料由来イオンとマトリクス由来イオンとが脱離する。微量のリン酸緩衝液、Tris緩衝液、グアニジンなどで汚染されていても分析可能である。MALDI−TOF(MS)は、MALDIを利用して飛行時間を元に質量を測定するものである。イオンが一定の加速電圧Vで加速される場合、イオンの質量をm、イオンの速度をv、イオンの電荷数をz、電気素量をe、イオンの飛行時間をtとしたとき、イオンのm/zは、
m/z=2eVt2/L2
で表すことができる。このようなMALDI−TOF測定には、島津/KratosのKOMPACT MALDI II/III/IVなどを使用することができる。その測定の際には、製造業者が作成したパンフレットを参照することができる。MALDI−TOFの測定時に使用されるレーザー照射の照射エネルギーを解離エネルギーといい、解離エネルギーを用いて共有結合などの解析を行うことができる。
このような質量分析計は、製造業者が提供するマニュアルなどを参照して使用することができる。具体的には、試料をマトリクス(例えば、固体または液体)とともに質量分析計に付属のターゲットプローブ上に滴下し乾燥させ、分析器で質量を測定する。マトリクスは製造業者が提供するものを使用することができ、例えば、ジスラノール、HABA、DHBA、IAAなどが挙げられるがそれらに限定されない。
質量分析では、必要に応じて、プロトン付加体イオンを生じ易くするために、イオン化助剤(カチオン助剤)として、NaCl、KCl、NaTFA(トリフルオロアセテート)、AgTFAなどの塩類を加えてイオン化効率を上げることも可能である。当業者は、各糖鎖における構造解析に際し、マトリクスおよびイオン化助剤の選択などの諸条件の選択を行うことができる。
(転写活性アッセイ)
本明細書において「転写活性アッセイ」とは、ある領域について転写活性を有するか否かを検定するための任意のアッセイをいう。このアッセイでは、ある化学物質が細胞内でレセプターに結合し、目的遺伝子からタンパク質への転写を活性化させる一連の作用への影響を評価する。図14にその例が例示されている。図14では、タンパク質としてルシフェラーゼが例示されているが、それに限定されない。目的遺伝子としてPPARγが例示される。レポーター遺伝子をコードするDNAの上流には、転写因子認識配列として、GAL4結合領域が例示される。転写調節因子としてGAL4DNA結合ドメイン(GAL4DBD)と融合したPPARγ結合ドメイン(PPARγLBD)が例示される。この方法では、まず目的となる核内受容体をコードするDNAとレポーター遺伝子をコードするDNAを導入した培養細胞を調製する。この培養細胞を含む培地に化学物質を加えて培養し、蛍光強度等を測定する。ここでは、化学物質がレセプターへの結合からタンパク質合成に至るまでの一連の作用をホルモンと同様に作用するかどうかを評価する。この方法では目的のホルモンと化学物質を共存させることにより、化学物質がアゴニストとして作用するかアンタゴニストとして作用するかを評価することが可能となる。さらに、この方法ではロボットシステムであるハイスループット装置を用いて大量のサンプルを迅速に処理することが可能である。
従って、本発明では、候補化合物、核内受容体のアゴニストであるかまたはアンタゴニストであるかどうかを判定する方法を実施する際に、このような転写活性アッセイを用いることができる。この方法では、候補化合物を提供した後、その候補化合物が、該核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定し、共有結合すると判定された候補化合物を選択し、核内受容体と相互作用する領域を含む核酸配列と作動可能に連結されるレポーターをコードする核酸配列を含む核酸構築物と、該選択された核内受容体とを含む系(例えば、細胞)において、候補化合物を暴露させる。ここで、レポーターの発現が増強される場合、候補化合物は該核内受容体のアゴニストと判定し、レポーターの発現が減少する場合、候補化合物は該核内受容体のアンタゴニストと判定する。
本明細書においてレポーターとしては、発現を確認することができる限り、どのような物を利用しても良いが、ルシフェラーゼが代表的に用いられる。化学発光することから、観察が容易であるからである。このほかに、例えば、蛍光タンパク質なども使用され得るがそれに限定されない。
本発明において用いられる転写活性アッセイにおいて利用される系は、細胞であり得るがこれに限定されず、無細胞系もまた使用され得ることが理解される。
また、上記転写因子認識配列としては、例えば、GAL4DNA(Tyree CM, Klausing K.,Methods Mol Med. 2003;85:175−83)、LexA DBD(Chemistry and Biology,vol 10,no.7,pp.584−585 (July,2003))などを挙げることができるがそれに限定されない。このような転写因子認識配列は、どのような核内受容体であっても使用され得ることが理解される。他の転写因子認識配列は、本発明のこの系を用いて、アゴニストであると分かっている物質を上記候補化合物の代わりに使用し、転写因子認識配列の候補配列を上記GAL4DNAの代わりに使用したアッセイを実行し、そのアッセイにおいてアゴニストによるポジティブな応答が見られる任意の配列を転写因子認識配列として使用することができることが理解され得る。
(コンピュータモデリング)
本発明は、分子設計技術の使用により、核内受容体(例えば、PPARγ(例えば、結合ポケット))に結合可能な化学物質(活性化剤、阻害化合物を含む)を同定、選択、および設計することを初めて可能にする。
本発明はまた、1つの局面において、本発明において同定されたリガンドなどの情報をもとに本発明において決定された結合ポケットを含むポリペプチドも提供する。
核内受容体(例えば、PPARγ)上のリガンドの結合部位に関する本発明者らの解明は、核内受容体結合ポケットのいずれかまたはその両方と相互作用し得る新規な化学物質および化合物を設計するために必要な情報を、全部または一部について提供する。この解明はまた、核内受容体様結合ポケットに結合する他の化合物のアナログについての構造活性データの評価を可能にする。
モデリングでは、物質が、核内受容体様結合ポケットに結合するか、これと会合するか、またはこれを阻害する能力に関する議論は、物質の特徴のみを議論する。化合物が核内受容体に結合するかどうかを決定するためのアッセイは、当該分野で周知であり、例えば、本明細書において記載され、Chen,M.,Marumiya,S.,Masaki,T.,and Sawamura,T.Biochem.J.(2001)355,289−296;Chen.,M.,Inoue,K.,Narumiya,S.,Masaki,T.,andSawamura,T.FEBS Lett.(2001)499,215−219;およびShi,X.,Niimi,S.,Ohtani,T.and Machida,S.J.Cell.Sci.(2001) 114,1273−1282などに記載されており、これらの内容は、本明細書において関連部分が参考として援用される。
本発明による、核内受容体(例えば、PPARγ)またはそのリガンド結合フラグメント(例えば、結合ポケット)に結合するかまたはこれを阻害する化合物の設計は、一般的に2つの要件の考慮を伴う。第1に、この物質は、核内受容体の一部または全部と物理的および構造的に会合し得なければならない。この会合において重要な非共有結合的分子相互作用は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水的相互作用、および静電的相互作用を含む。
第2に、この物質は、それを核内受容体またはそのリガンド結合フラグメントと直接会合可能にするコンフォメーションをとり得なければならない。この物質の特定の部分はこれらの会合に直接関与しないが、この物質のこれらの部分はなお、分子の全体のコンフォメーションに影響を及ぼし得る。次いで、これが効力に重大な影響を有し得る。このようなコンフォメーション要件は、結合ポケットの全部または一部に関連する化学物質の3次元構造全体および配向、あるいは核内受容体またはそのリガンド結合フラグメントあるいはその相同体と直接相互作用するいくつかの化学物質を包含する物質の官能基間の空間的配置を含む。
核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントに対する化学物質の阻害効果または結合効果の可能性は、その実際の合成および試験の前にコンピューターモデリング技術の使用により分析され得る。所与の物質の理論的構造が、その物質と核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントとの間での不十分な相互作用および会合を示唆するのであれば、物質の試験は除外される。しかし、コンピューターモデリングが強い相互作用を示すのであれば、次いで、この分子が合成され、核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントへの結合能力について試験され得る。
核内受容体の調節因子の候補化合物は、その化学物質またはフラグメントを核内受容体とのそれらの会合能力についてスクリーニングする工程、およびポジティブ因子を選択する工程により計算的に評価され得る。
当業者は、核内受容体またはそのリガンド結合フラグメントと会合する能力について化学物質またはフラグメントをスクリーニングするためのいくつかの方法のうちの1つを使用し得る。このプロセスは、例えば、PPARγリガンド結合フラグメントの構造座標もしくはその改変体もしくは相同体またはコンピューター読み取り可能記録媒体から生じる同様の形状を定義する他の座標に基づく、コンピューター画面上でのPPARγ様結合ポケットの視覚的検査により開始され得る。次いで、選択されたフラグメントまたは化学物質を、上記に定義される結合ポケット内に、種々の配向で配置させ得るか、またはドッキングさせ得る。ドッキングは、QuantaおよびSybylのようなソフトウェア、続いて、CHARMMおよびAMBERのような標準的なモレキュラーメカニクス的力場によるエネルギー最小化およびモレキュラーダイナミクスを用いて達成され得る。
コンピュータモデリングを行うためのコンピュータープログラムもまた、フラグメントまたは化学物質を選択するプロセスにおいて使用され得る。このようなプログラムとしては、以下が挙げられる。
1.GRID(P.J.Goodford,「A Computational Procedure for Determining Energetically Favorable Binding Sites on Biologically Important Macromolecules」,J.Med.Chem.,28,849−857頁(1985))。GRIDは、Oxford University,Oxford,UKから入手可能である。
2.MCSS(A.Mirankerら,「Functionality Maps of Binding Sites:A Multiple Copy Simultaneous Search Method」 Proteins:Structure,Function and Genetics,11,29−34頁(1991))。MCSSは、Molecular Simulations,San Diego,CAから入手可能である。
3.AUTODOCK(D.S.Goodsellら,「Automated Docking of Substrates to Proteins by Simulated Annealing」,Proteins:Structure,Function,and Genetics,8,195−202頁(1990))。AUTODOCKは、Scripps Research Institute,La Jolla,CAから入手可能である。
4.DOCK(I.D.Kuntzら,「A Geometric Approach
to Macromolecule−Ligand Interactions」,J.Mol.Biol.,161,269−288頁(1982))。DOCKは、University of California,San Francisco,CAから入手可能である。
一旦、適切な化合物質またはフラグメント(化合物種)が選択されると、それらは、単一化合物または複合体にアセンブリすることができる。構築に先だって、核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの構造座標に関連してコンピューター画面上に表示される3次元イメージ上で、互いのフラグメントの関連性の視覚的検査が行われ得る。これに続き、QuantaまたはSybyl[Tripos Associates,St.Louis,MO]のようなソフトウェアを用いるマニュアルでのモデル構築が行われる。
個々の化学物質またはフラグメントを連結させる際に使用され得る有用なプログラムは、以下を含む。
1.CAVEAT(P.A.Bartlettら、「CAVEAT:A Program to Facilitate the Structure−Derived Design of Biologically Active Molecules」(Molecular Recognition in Chemical and Biological Problems,Special Pub.,Royal Chem.Soc.,78,182−196頁(1989));G,LauriおよびP.A.Bartlett,「CAVEAT:a Program to Facilitate the Design of Organic Molecules」,J.Comput.Aided Mol.Des.,8,51−66頁(1994))。CAVEATは、University of California,Berkeley,CAから入手可能である。
2.ISIS(MDL Information Systems,San Leandro,CA)のような3Dデータベースシステム。この分野は、Y.C.Martin,「3D Database Searching in Drug Design」,J.Med.Chem.,35,2145−2154頁(1992)において概説される。
3.HOOK(M.B.Eisenら,「HOOK:A Program for Finding Novel Molecular Architectures that Satisfy the Chemical and Steric Requirements of a Macromolecule Binding Site」,Proteins:Struct.,Funct.,Genet.,19,199−221頁(1994))。HOOKは、Molecular Simulations,San Diego,CAから入手可能である。
上記のように一度に1つのフラグメントまたは化学物質を段階的様式でPPARγのインヒビターなどとして構築することを進める代わりに、阻害性または他の核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの結合化合物は、空の結合部位を使用するか、または必要に応じていくつかの既知のインヒビターの部分を含めるかのいずれかで、全体的にまたはデノボで設計され得る。以下を含む、多くの新規リガンド設計方法が存在する。
1.LUDI(H.−J.Bohm,「The Computer Program LUDI:A New Method for the De Novo Design
of Enzyme Inhibitors」,J.Comp.Aid.Molec.Design,6 61−78頁(1992))。LUDIは、Molecular Simulations Incorporated,San Diego,CAから入手可能である。
2.LEGEND(Y.Nishibataら,Tetrahedron,47,8985頁(1991))。LEGENDは、Molecular Simulations
Incorporated,San Diego,CAから入手可能である。
3.LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MOから入手可能である)。
4.SPROUT(V.Gilletら,「SPROUT:A Program for Structure Generation」,J.Comput.Aided Mol.Design,7,127−153頁(1993))。SPROUTは、University of Leeds,UKから入手可能である。
他の分子モデリング技術もまた、本発明に従って使用され得る[例えば、N.C.Cohenら,「Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry」,J.Med.Chem.,33,883−894頁(1990)を参照のこと;M.A.NaviaおよびM.A.Murcko,「The Use of Structural Information in Drug Design」,Current Opinions in
Structural Biology,2,202−210頁(1992)もまた参照のこと;L.M.Balbesら,「A Perspective of Modern Methods in Computer−Aided Drug Design」,(Reviews in Computational Chemistry,vol.5,K.B.LipkowitzおよびD.B.Boyd編,VCH,New York,337−380頁(1994));W.C.Guida,「Software For Structure−Based Drug Design」,Curr.Opin.Struct.Biology.,4,777−781頁(1994)]。
一旦上記の方法により化合物が設計されるかまたは選択されると、その物質が核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの結合ポケットに結合し得る効率が、計算による評価により試験され、そして最適化され得る。例えば、有効な核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントの結合ポケットアゴニストは、好ましくは、その結合状態と遊離状態との間に相対的に小さなエネルギー差(すなわち、結合の小さな変形エネルギー)を示さなければならない。従って、最も効率的な核内受容体(例えば、PPARγ)のアゴニストは、好ましくは、約10kcal/モル以下(より好ましくは、7kcal/モル以下)結合の変形エネルギーを用いて設計されるべきである。核内受容体(例えば、PPARγ)のアゴニストは、全結合エネルギーにおいて類似する2つ以上のコンフォメーションで結合ポケットと相互作用し得る。これらの場合、結合の変形エネルギーは、遊離物質のエネルギーとアゴニストがタンパク質に結合するとき観察されるこれらのコンフォメーションの平均エネルギーとの間の差であると考えられる。
核内受容体(例えば、PPARγ)または核内受容体リガンド結合フラグメントに結合するとして設計または選択される物質は、その結合状態において、好ましくは、標的酵素および周囲の水分子との静電的斥力相互作用がないように、計算によりさらに最適化され得る。このような非相補的静電的相互作用は、電荷−電荷斥力相互作用、双極子−双極子斥力相互作用および電荷−双極子斥力相互作用を含む。
特定のコンピューターソフトウェアは、化合物変形エネルギーおよび静電的相互作用を評価する分野において入手可能である。このような使用のために設計されたプログラムの例として、以下が挙げられる:Gaussian 94,revision C(M.J.Frisch,Gaussian,Inc.,Pittsburgh,PA 1995);AMBER,version 4.1(P.A.Kollman,University of California at San Francisco,1995);QUANTA/CHARMM(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);Insight II/Discover,(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);DelPhi(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA 1995);およびAMSOL(Quantum Chemistry Program Exchange,Indiana University)。これらのプログラムは、例えば、Silicon Graphicsワークステーション(例えば、「IMPACT」グラフィクスを備えるIndigo)を用いて実行され得る。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージもまた、当業者に公知である。
本発明により可能な別のアプローチは、PPARγに全体または部分的に結合し得る化学物質または化合物についての低分子データベースの計算的なスクリーニングである。このスクリーニングにおいて、結合部位へのこのような物質の適合の質は、形状的相補性または見積もられた相互作用エネルギーのいずれかにより判定され得る[E.C.Mengら,J.Comp.Chem.,16,505−524頁(1992)]。
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
1つの局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定する方法であって、該方法は:A)候補化合物を提供する工程;およびB)該候補化合物が、該核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する工程であって、共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると同定する、工程、を包含する、方法を提供する。
ここで候補化合物の提供は、当該分野において公知の任意の技法を用いて行うことができる。そのような例をとしては、例えば、化合物ライブラリーをコンビナトリアルケミストリーを利用して合成する方法、すでにある化合物ライブラリーを提供する方法などを挙げることができるがそれらに限定されない。
ここで核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する技術は、本発明において提供される蛍光標識マレイミドなどを用いることによって実施することができる。あるいは、質量分析装置またはSDS−PAGEなどの公知技術を用いて行うこともできる。結晶構造解析などによって、共有結合する部分を解析してもよい。
1つの実施形態において、本発明が標的とするシステインは、リガンド結合ドメインに存在することが好ましいがそれに限定されない。リガンド結合ドメインとは、Eドメインとも呼ばれ、各々の核内受容体においてその領域が決定または推定されており、本明細書において表7に記載されている。この表に記載されている以外の核内受容体であっても、対応するドメインがあることが理解され、そのようなドメインは、表7および表12などに基づき、アラインメントなどにより対応するアミノ酸を同定することによって、特定することができる。
1つの実施形態において、本発明が対象とする核内受容体は、PPARα、PPARβ/δ、PPARγ1、PPARγ2、ERR1、ERR2、ERR3、HNF4α、HNF4β、RARα、RARβ、RARγ1、RARγ2、RXRα、RXRβ、RXRγ、RORα、RORβ、RORγ、LRH1、SF1、TLXおよびO4245受容体などを挙げることができる。特に好ましい実施形態では、上記核内受容体は、PPARγであるがそれに限定されない。
1つの実施形態では、本発明が対象とするシステインの位置は、以下の表
に示される配列番号中のアミノ酸番号で示される。
1つの実施形態において、本発明がスクリーニングの対象とする候補化合物は、どのような化合物でもよいが、好ましくは、R−CH=CH−(C=O)−R−またはR−(C=O)−CH=CH−R−という置換基を有する化合物を含む。ここで、式中、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、Rは、二価の炭化水素基である。
1つの実施形態において、共有結合の測定は、どのような測定方法を用いても良いことが理解されるが、好ましくは、本発明において開示される蛍光標識マレイミドを用いて行われることが有利である。このような蛍光標識マレイミドの具体例としては、例えば、ローダミンマレイミド、Cy5−マレイミドなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
別の実施形態において、本発明は、本発明が対象とする候補化合物が、前記核内受容体のリガンド結合ドメインにあるヘリックス12またはヘリックス5内のアミノ酸と水素結合するかどうかを判定する工程を包含する。
図2−1〜図2−3などに記載されるようなアラインメントなどによって、対応するドメインを特定することができることが理解される。
好ましい実施形態では、前記ヘリックス12またはヘリックス5内のアミノ酸の残基番号は、
に示される配列番号中のアミノ酸番号で示されるアルギニンまたはチロシンであり得る。
別の好ましい実施形態では、本発明が対象とするヘリックス12またはヘリックス5内のアミノ酸は、配列番号42に示すアミノ酸配列の473位チロシンまたは配列番号44に示すアミノ酸配列の501位チロシンを含んでいてもよい。
1つの実施形態において、水素結合は、核磁気共鳴装置(NMR)、またはX線回折装置などの手段によって観測することができる。NMRおよびX線解析装置については、当該分野において公知の技術を用いて使用することができる。具体的には、水素結合は、以下のようにして測定することができる。結合エネルギーを測定することによって算出することができる。
1つの実施形態において、共有結合は、質量分析装置またはSDS−PAGEなどにより測定され得る。、質量分析装置またはSDS−PAGEについては、当該分野において公知の技術を用いて使用することができる。具体的には、共有結合は、例えば、結合エネルギーを測定することによって算出することができる。
1つの実施形態において、スクリーニング対象となる核内受容体の調節機能は、阻害または促進であり得る。阻害である場合、候補化合物は、阻害剤(またはインヒビター)の候補である。促進である場合、候補化合物は、活性化剤(またはアクチベーター)の候補であり得る。阻害剤である場合、対象となる核内受容体の機能を抑制することになる。したがって、そのような抑制が望まれる場合の医薬の候補となり得る。活性化剤である場合、対象となる核内受容体の機能を活性化することになる。したがって、そのような活性化が望まれる場合の医薬の候補となり得る。
1つの実施形態において、本発明は、本発明によって特定される化合物を提供する。この化合物は、以下の式:
(化9)
−CH=CH−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−CH=CH−R−R
という構造を有し、ここで、式中、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜13個の、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が4〜14個である。
好ましい実施形態では、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜9個を有する、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の炭化水素基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が6〜12個であることが有利である。理論に拘束されることは望まないが、このような範囲であることが好ましいのは、核内受容体の一般的な構造において、相互作用すべきドメインとの相対的距離を考慮すると、適切であることが理解される。
本発明はまた、特定された化合物を含む核内受容体の調節のための組成物であって、該化合物は、以下の式:
(化10)
−CH=CH−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−CH=CH−R−R
という構造を有し、ここで、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜13個の、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が4〜14個である、組成物を提供する。この化合物は、本発明によって特定されたものであるが、特に、核内受容体との相互作用が知られたのは、本発明において初めてであった。したがって、核内受容体調節剤として、このような化合物が有効成分であることは本発明において初めて特定されたといえる。
1つの特定の実施形態において、前記構造は、R−(C=O)−CH=CH−R−Rであり、本発明の化合物において、Rは、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が1〜9個を有する、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の炭化水素基であり、ここでRとRとは、含まれる炭素について、最短距離を結ぶ炭素数の最大値が6〜12個であり、その組み合わせは、
に記載される配列番号に示すアミノ酸配列を有する核内受容体に対して、右列の炭素数を有する。
1つの実施形態では、本発明は、核内受容体に起因する疾患、障害または状態の処置、予防または予後のための組成物を提供する。この化合物は、以下の式:
(化11)
−C=C−(C=O)−R−Rまたは
−(C=O)−C=C−R−R
という構造を有し、ここで、式中、Rは、炭素を1〜13個の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、炭素を4〜14個の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、Rは、水素または置換されていてもよい、カルボニル基、水酸基、アミド基およびチオール基からなる群より選択される置換基を含む一価の置換基である。
ここで、核内受容体に起因する疾患、障害または状態とは、核内受容体の機能に起因する任意の疾患、障害または状態を指し、例えば、種々の慢性疾患を挙げることができる。
(標的生体分子に対するリガンドの結合能を定量する方法)
1つの局面において、本発明は、1)標的生体分子と、リガンドとを混合して混合物を生成する工程;2)蛍光ラベルマレイミドを該混合物に加える工程;3)該混合物において、該標的生体分子と該蛍光ラベルマレイミドとの結合を検出する工程を包含する、該標的生体分子に対するリガンドの結合能を定量する方法を提供する。ここで、標的分子とリガンドとの混合は、当該分野において公知の任意の手法を用いることができる。蛍光ラベルマレイミドは、どのようなものを用いても良いが、例えば、ローダミンマレイミドなどを用いることができる。標的生体分子と、蛍光ラベルマレイミドとの結合の検出は、当該分野において公知の任意の手法を応用して用いることができるが、例えば、蛍光または質量を測定できる任意の手法を用いることができる。例えば、そのような手法として、質量分析装置またはSDS−PAGEを利用することができるがそれらに限定されない。
1つの好ましい実施形態では、本発明の標的生体分子に対するリガンドの結合能を定量する方法において、上記結合は、共有結合であり、該共有結合の定量を行う工程をさらに包含し、該定量は、前記リガンドに関し少なくとも2つの量を測定することにより達成され得る。ここで、定量は、例えば、上記質量分析またはSDS−PAGEにおけるシグナル強度に基づいて行うことができる。
好ましい実施形態では、本発明の標的生体分子に対するリガンドの結合能を定量する方法において、上記共有結合の定量は、不可逆的に共有結合するリガンドをプローブとして用いて行われる。この実施形態では、共有結合しないリガンドの結合が定量されることが特徴である。不可逆的に共有結合するリガンドとしては、例えば、インドメタシンのようなNSAIDs、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ(11−オキソ−プロスタ−5Z,9,12E,14Z−テトラエン−1−オイック酸;15d−PGJ)、11−オキソ−プロスタ−5Z,12E,14Z−トリエン−1−オイック酸(CAY10410)、9−オキソ−10E,12Z−オクタデカノジエン酸(9−オキソODE)、13−オキソ−9Z,11E−オクタデカノジエン酸(13−オキソODE)、T0070907、5―オキソETE、15―オキソETE、15―オキソEDEなどを挙げることができるがそれらに限定されない。共有結合しないリガンドは、MCC−555、9(S)−ヒドロキシオクタデカジエン酸(9(S)−HODE)、o−リゾホスファジチン酸(o−LPA)、13(S)−ヒドロキシオクタデカジエン酸(13(S)−HODE)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ジホモ−g−リノレン酸(DGLA)、アラキドン酸が有利である。このようなリガンドは、核内受容体と共有結合しないリガンドであることが明らかになっているからであるが、それらに限定されず、当業者は、このリガンドをもとに、種々の核内受容体と共有結合しないリガンドを作製することができることが理解される。
本発明の結合能の測定法において、標的とする生体分子は、代表的には、核内受容体であるがそれに限定されない。マレイミドは共有結合を測定することに有用であることが本発明において見出されたことから、本発明では、共有結合などがリガンド結合に重要な役割を果たしている任意の受容体またはタンパク質において有用であることが理解される。
(アゴニストの同定方法)
本発明に従って、所定の核内受容体に結合するアゴニストを、以下の工程によって同定することができる:
A)公知のアゴニストまたはアンタゴニストと結合した核内受容体(すなわち、活性型核内受容体)の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、活性型核内受容体の活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;および
B)活性型核内受容体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、活性型核内受容体に結合し得る候補結合化合物種を同定する工程。
上記方法の工程(B)において、共有結合および/または水素結合の有無(特に、本明細書の別の箇所に記載されるような特定のシステインとの共有結合および/またはアルギニンまたはチロシンとの水素結合の有無)を考慮することができることが理解される。
本発明はさらに、上記B工程までに加えて、C)工程(B)において同定された該候補結合化合物種が、該活性型核内受容体の特定の残基(PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントであれば、473位のチロシン残基)と相互作用し得る第1の部分を有する場合、該候補結合化合物種を候補アゴニスト化合物種として同定する工程、を包含する。このような同定もまた、本発明の方法に基づいて行うことができる。
なお、上記の方法を実行するためには、核内受容体全長を必ずしも用いる必要はなく、核内受容体のフラグメントであって、アゴニストおよび/または天然のリガンドに結合するフラグメントを用いてもよい。
(同定システム)
1つの局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定するシステムを提供する。このシステムは:A)候補化合物が、該核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する手段;およびB)共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると算出する手段、を備える。このシステムにおいて使用される共有結合の判定手段としては、上記方法において説明した任意の方法を実現する手段、例えば、質量分析装置、SDS−PAGEなどを挙げることができるがそれらに限定されない。共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると算出する手段としては、共有結合に関するデータから、化合物が調節活性を有することを導き出すこと手順を実行するプログラムを実行する任意の手段が利用でき、そのような手段としては、例えば、プログラムが実行されるコンピュータを挙げることができる。
(測定キット)
別の局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定するために用いられる、化合物と、該核内受容体との共有結合を測定するためのキットを提供する。このキットは、A)該核内受容体と不可逆的に共有結合することが分かっているリガンド;およびB)共有結合しないリガンドの結合を測定するための手順を記載する指示書を備える。ここで、リガンドとしては、本明細書において、上述したような化合物を利用することができることが理解される。ここで、指示書には、共有結合に関するデータから、リガンドの結合の状態を導き出すためのチャートあるいは対応表が記載され得る。そのような対応表としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
(システム・プログラム)
本発明の別の局面において、本発明の方法を実行するプログラム、およびそのようなプログラムを含む記憶媒体も提供される。
本発明のさらなる局面において、本発明の方法を実行するために使用し得る装置、および本発明のプログラムを含む装置が提供される。
別の局面において、本発明は、核内受容体を調節する化合物を同定する方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。このプログラムが実施する方法は:A)候補化合物の立体構造データを提供する工程;およびB)該候補化合物が、該核内受容体中のシステインと共有結合するかどうかを判定する工程であって、共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体を調節する化合物であると同定する、工程、を包含する。ここで、立体構造のデータおよびシステインとリガンドとの結合に関するデータは、本明細書の記載に基づいて、本明細書において記載されるように任意の手法を用いて取得することができることが理解される。
本発明はまた、そのようなプログラムを格納する記録媒体を提供する。このような記録媒体としては、プログラムをコンピュータに実行させるように接続できる形態のものであれば、どのようなものであっても良い。そのような記録媒体としては、例えば、ハードディスク、MO、CD−R、CD−RW、CD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−ROM、メモリーカードであり得る。
(核内受容体とリガンドとの複合体の三次元構造予測)
核内受容体とリガンドとの複合体の三次元構造が未知の場合、以下の方法によって三次元構造予測をすることができる。
複合体の立体構造予測としては、モレキュラーダイナミクスシミュレーション、ドッキングツールを用いた複合体予測および、モンテカルロ、モレキュラーメカニクスやモレキュラーダイナミクスシミュレーションを用いた複合体予測を用いることができる。このドッキングツールとしては、遺伝アルゴリズムやジェオメトリックハッシングアルゴリズムを用いた剛体ドッキング、セミフレキシブルドッキング、フレキシブルドッキングが挙げられる。このドッキングツールにおいて予測された複数の複合体構造の中で、システイン残基との距離の近い構造を抽出する。この立体構造予測においては、モンテカルロ、モレキュラーメカニクス、および、モレキュラーダイナミクス法を用いたアブイニシオ構造予測(配列や立体構造データベース非依存の非経験的構造予測)で予測された複合体構造も含めてもよい。
また、この立体構造予測は、前記核内受容体とリガンドとの複合体についての公知の立体構造の主鎖の重原子と、前記核内受容体と前記アゴニストとの複合体について計算される立体構造の主鎖の重原子との重ね合わせを行い、重ねあわせた構造から安定なエネルギーを持つ複合体構造を求める。ここで、重ね合わせた構造が安定なエネルギーを持つ複合体構造である場合、これも含める。モンテカルロ、モレキュラーメカニクス、および、モレキュラーダイナミクス法で構造を最適化する。
アゴニストの立体構造には、カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーション、モレキュラーメカニクスを用いたエネルギー極小化計算。モンテカルロシミュレーションおよび、カノニカル、ミクロカノニカル、グランドカノニカル、拡張アンサンブル法を含むモレキュラーダイナミクスシミュレーションを用いることができる。
カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションにおける水素原子との結合のシミュレーションはシェイク拘束、またはRATTLE法を適用することによって行うことができる。
モンテカルロ、モレキュラーメカニクス、および、モレキュラーダイナミクス法における静電相互作用の取り扱いは、近似無し、カットオフ法、及び、多極子近似法(セルマルチポール)を含み得る。
カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションとしては、PRESTOプログラム、AMBERプログラム(UCSF)、CHARMMプログラム(Harvard University)、GROMOSプログラム(BIOMOS)Discoverプログラム(Accelrys Inc)、SYBYLプログラム(Tripos Inc)、MASPHYCプログラム(富士通株式会社)が挙げられるが、これらに限定されない。
カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションにおけるアゴニストのポテンシャルエネルギー計算は、AMBER general force field for the organic moleculeパラメータ(parm94、parm96、parm99)、OPLS、Charmm、cff、cvffおよびTriposが挙げられるが、これらに限定されない。
カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションにおけるアゴニストの電荷パラメーターは、分子軌道計算ソフトGaussian 98を使用して、第2のアゴニストの構造最適化計算を実行し、該第2のアゴニストの最適化構造の静電ポテンシャルを該アゴニストに対してRESPプログラムでフィッティングすることによって求められる。Gaussian(Gaussian Inc)以外にGAMESS(Iowa State University)およびMOPAC(富士通株式会社)などを用いることができる。
複合体の立体構造は、前記核内受容体のアゴニスト結合部位に適合する構造をモレキュラーダイナミクスシミュレーションのトラジェクトリーから抽出することによって行われるか、またはモレキュラーメカニクスでエネルギー極小化計算を行い、得られたエネルギー極小構造を複合体構造として用いて行われる。
複合体の立体構造予測は、核内受容体の立体構造に、アゴニストの立体構造を導入することによって行われる。必要に応じて、複合体の立体構造予測において、核内受容体の立体構造にアゴニストの立体構造を導入した後に、核内受容体とアゴニストとの非共有結合複合体の構造歪みをモレキュラーメカニクス計算で解消する。
前記非共有結合複合体の構造歪みの解消は:(i)初期構造として、前記核内受容体に前記アゴニストを導入した構造を選択し;(ii)前記核内受容体由来の分子を位置拘束法で初期構造に対して拘束して、該アゴニストの原子をフリーにして複合体全体の構造歪みをモレキュラーメカニクスにより解消し;そして、(iii)全原子をフリーにして全体の構造歪みを解消する、ことによって行われる。
モレキュラーメカニクス計算は、真空中、誘電率1で共役勾配法を用いて行うことができる。あるいは、真空誘電率1以外に、溶媒をあらわに考慮する方法、溶媒を連続体で近似する方法、GB−SA法を用いることもできる。また、モレキュラーメカニクス法のエネルギー極小化のアルゴリズムとしては、共役勾配法以外に最急降下法を用いることもできる。モレキュラーメカニクス計算における静電相互作用の計算は、核内受容体のペプチドのN末端をアセチル基で、C末端をN-メチル基でキャップすることによって行ってもよい。モレキュラーメカニクス計算における静電相互作用の計算は、前記核内受容体のアスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アルギニン残基、リシン残基、およびヒスチジン残基を荷電状態として行ってもよい。モレキュラーメカニクス計算における静電相互作用の計算は、前記アゴニストのカルボキシル基を荷電状態として行ってもよい。
モレキュラーメカニクス計算は、PRESTOプログラム、AMBERプログラム(UCSF)、CHARMMプログラム(Harvard University)、GROMOSプログラム(BIOMOS)Discoverプログラム(Accelrys Inc)、SYBYLプログラム(Tripos Inc)、MASPHYCプログラム(富士通株式会社)が挙げられるが、これらに限定されない。モレキュラーメカニクス計算は、AMBER general force field for the organic moleculeパラメータ(parm94、parm96、parm99)、OPLS、Charmm、cff、cvffおよびTriposが挙げられるが、これらに限定されない。
複合体の立体構造予測において、前期核内受容体と前記アゴニストとの非共有結合複合体の構造歪みをモレキュラーメカニクス計算で解消した後の構造を初期構造とするカノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションを実行してもよい。
カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションは、真空、誘電率1、温度300Kにおいて行う。あるいは、真空誘電率1を用いる以外に、溶媒をあらわに考慮する方法、溶媒を連続体で近似する方法、GB−SA法を用いてもよい。モレキュラーメカニクス法のエネルギー極小化のアルゴリズムとしては、共役勾配法以外に最急降下法を用いてもよい。
カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションは、核内受容体の主鎖を位置拘束法で初期構造に拘束することによって行い得る。また、カノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションにおける、水素原子との結合のシミュレーションは、シェイク拘束を適用することによって行ってもよい。
(アゴニストの同定)
本発明に従って、例えば、限定されることはないが、以下のようにして、所定の核内受容体に結合するアゴニストを同定することができる:
A)公知のアゴニストおよび/またはアンタゴニストと結合した核内受容体の原子座標、すなわち、活性型核内受容体の原子座標に対して三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、活性型核内受容体の活性部位ポケットの空間座標を決定する工程;
B)活性型核内受容体の活性部位ポケットの空間座標に対して、電子的に候補化合物のセットの空間座標をスクリーニングして、該活性型の核内受容体またはそのリガンド結合フラグメントに結合し得る候補結合化合物種を同定する工程;および
C)上記工程(B)において同定された候補結合化合物種の中から、アゴニスト作用を有する化合物種を候補アゴニスト化合物種として同定する工程。
活性型核内受容体の原子座標は、公知のアゴニストと核内受容体との複合体、または天然のリガンドと核内受容体との複合体の立体構造から求めることができる。複合体の立体構造が未知の場合、上記「核内受容体とリガンドとの複合体の三次元構造予測」に従って、複合体の立体構造を予測することができる。
アゴニストの同定においては、核内受容体の活性部位ポケットの立体構造が、候補化合物を結合する構造であるか否かを指標として、候補化合物が、核内受容体に結合し得るか否かを決定する。
上記方法においては、必ずしも核内受容体の全長を用いる必要はなく、核内受容体全長の代わりに、公知のアゴニストおよび/または天然のリガンドと結合し得る核内受容体のフラグメントを用いることもできる。
また、所定の核内受容体がPPARγである場合は、上記工程(C)の代わりに工程(C’)として、上記工程(B)において同定された該候補結合化合物種が、活性型PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントの473位のチロシン残基と相互作用し得る第1の部分を有するか否かを指標にして、さらに候補結合化合物種から候補アゴニスト化合物種を同定する工程を用いることができる。あるいは、上記工程(C)の代わりに工程(C’’)として、上記工程(B)において同定された候補結合化合物種が、活性型PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントの473位のチロシン残基と相互作用し得る第1の部分を有し、かつ活性型PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントの285位のシステイン残基と共有結合し得る第2の部分を有するか否かを指標にして、さらに候補結合化合物種から候補アゴニスト化合物種を同定する工程を用いることができる。このほかの核内受容体であっても、表4などの対応表を用いることによって、同様の同定を行うことが可能である。
アゴニストを同定するための、代替的な方法としては、限定されることはないが、例えば、候補化合物の三次元分子モデルを、活性型核内受容体の三次元分子モデルと比較し、以下の工程を用いて、活性型核内受容体に結合し得る化合物を同定することによって行なうことができる:
A)活性型核内受容体の原子座標に三次元分子モデリングアルゴリズムを適用して、三次元分子モデルを得る工程;
B)該三次元分子モデルの座標データをデータ構造に入力して、該活性型核内受容体の原子間の距離を検索する工程;
C)候補化合物において水素結合を形成するヘテロ原子と、該三次元分子モデルにおいて活性部位ポケットを形成するヘテロ原子との間の距離を比較して、2つの構造の間での最適な水素結合に基づいて、活性型核内受容体の三次元分子モデルの活性部位ポケットと安定な複合体を理論上形成する候補結合化合物種を同定する工程;および
D)上記工程(C)において同定された候補結合化合物種の中から、アゴニスト作用を有する化合物種を候補アゴニスト化合物種として同定する工程。
活性型核内受容体の原子座標は、公知のアゴニストと核内受容体との複合体、または天然のリガンドと核内受容体との複合体の立体構造から求めることができる。複合体の立体構造が未知の場合、上記「核内受容体とリガンドとの複合体の三次元構造予測」に従って、複合体の立体構造を予測することができる。
上記方法においては、必ずしも核内受容体の全長を用いる必要はなく、核内受容体全長の代わりに、公知のアゴニストおよび/または天然のリガンドと結合し得る核内受容体のフラグメントを用いることもできる。
また、所定の核内受容体がPPARγである場合は、上記工程(D)の代わりに工程(D’)として、上記工程(C)において同定された該候補結合化合物種が、活性型PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントの473位のチロシン残基と相互作用し得る第1の部分を有するか否かを指標にして、さらに候補結合化合物種から候補アゴニスト化合物種を同定する工程を用いることができる。あるいは、上記工程(D)の代わりに工程(D’’)として、上記工程(C)において同定された候補結合化合物種が、活性型PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントの473位のチロシン残基と相互作用し得る第1の部分を有し、かつ活性型PPARγまたはそのリガンド結合フラグメントの285位のシステイン残基と共有結合し得る第2の部分を有するか否かを指標にして、さらに候補結合化合物種から候補アゴニスト化合物種を同定する工程を用いることができる。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1:組み換え体核内受容体リガンド結合ドメイン(LBD)の大腸菌における発現、精製)
大腸菌において発現、精製した組み換え体核内受容体リガンド結合ドメイン(LBD)を用いて、リガンドの不可逆的結合に伴う分子量の増加を時間飛行型質量分析計(TOF-MS)を用いて測定した(図4)。
Novagen社製のpET28bのNdeI/BamHI部位にヒトPPARγLBD(aa.195−477)をクローニングし、シーケンスにより塩基配列を確認した。大腸菌BL21(DE3)に形質転換し、1LのLBで37℃でOD600が0.8に達するまで培養を行った後に、18℃に移し、1mM IPTGを加え18時間培養を行った。大腸菌は遠心により回収し、20mM Hepes pH7.4,200 mM NaCl,25 mM イミダゾールに懸濁し、−20℃に保存した。
細胞を超音波破砕し、遠心により不溶性タンパク質を取り除いた後ニッケルカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーによりPPARγLBDの精製を行った。Superdex200ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製と同時に20mM Tris pH7.4,150 mM NaClにバッファー交換を行った。得られたPPARγLBDは限外濾過により濃縮した。
TOF−MS測定を以下のように、行った。PPARγLBDとリガンドを20mM Tris pH7.4,150 mM NaClのバッファー中で混合し室温で30分インキュベートし、複合体を形成した。複合体溶液1に対し4倍量のシノピン酸溶液(33%アセトニトリル)と混合し、乾燥後TOF−MS測定を行った。質量分析スペクトルはVoyager MALDI−TOF−MSを用いて測定した。測定のための各種パラメータは以下の通りである。
mode: linear
accelerating voltage: 20000
grid voltage: 90.400%
guid wire voltage: 0.200%
delay: 200 on
laser: 3000
scan averaged: 188
pressure: 3.98e-7
リガンドの溶けているDMSO溶液を同濃度混合したPPARγLBDを対照として用いた。
(蛍光マレイミド試薬を用いた結合の定量的測定)
組み換えPPARγLBDを用いたリガンドの結合活性の測定。リガンド結合部位に存在するシステイン残基への作動薬の不可逆的結合を、蛍光マレイミド試薬を用いて定量的に測定した(図5)。
0.1μM PPARγLBDと様々な濃度のリガンドを混合し、室温で30分インキュベートした後に、SDSを0.5%、ローダミンマレイミド(Molecular Probe社)を200μM、TCEPを1 mMになるように加え、室温で30分インキュベートした。SDS−PAGEを行った後に蛍光イメージャー(Hitachi製FMBIO II)によりローダミンマレイミドによりラベルされたPPARγLBDの量を測定した。
上記方法をもちいて、種々のリガンドについて測定したところ、図6に示される化合物の中で、特に、15d−PGJ、CAY、9−オキソODEおよび13−オキソODEが共有結合することがわかった。
(実施例2:理論計算プロトコルの実践)
(1:PPARγ−15d−PGJ非共有結合複合体の立体構造予測)
PPARγとその天然リガンド15d−PGJ複合体の結晶構造はこれまで報告されていないので、過去に報告されたPPARγ−アゴニスト複合体4構造(Protein Data Bank ID code:1fm6 [Chen et al.2000],1i7i[Cronet et al.2001],1knu [Sauerberg et al.2002],4prg[Oberfield et al.1999])を参考にして、複合体構造を予測した。アゴニストの結合様式を解析するために、PPARγの主鎖の重原子で重ね合わせた(図7a)。アゴニスト複合体の構造を図7bからeに示す。図7aの領域1にはアゴニストのアミド基の窒素やカルボキシル基の酸素が、領域2には炭化水素やベンゼン環が存在した。この結果から、15d−PGJのカルボキシル基が図7aの領域1に、カルボニル基のある鎖の幹が領域2に存在することが予測された。
温度500K、真空中におけるカノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションから複数の15d−PGJの構造を作製した。温度0Kから500Kに10万ステップの昇温、次いで、500Kで500万ステップ(5ns)のサンプリングを行った。サンプリング計算においては、千ステップ毎に構造をファイルに保存した。時間刻みを1 fs、誘電率を80とした。水素原子との結合にSHAKE拘束[Ryckaert et al.1977]を適用した。全ての1−4、1−5ペアの静電相互作用を近似無しで計算した。15d−PGJのカルボキシル基は荷電状態とした。モレキュラーダイナミクス計算にはPRESTO ver.3(Biomolecular Engineering Research Institute [Morikami et al.1992])プログラムを使用した。15d−PGJのポテンシャルエネルギー計算には、AMBER general force field for the organic moleculeパラメータ[http://amber.scripps.edu/]を使用した。ただし、15d−PGJの電荷のパラメータの報告は、これまでされていないので、分子軌道計算ソフトGaussian 98(Gaussian Inc.[Frisch et al.1998])を使用して、Hartree−Fock/6−31G*で15d−PGJの構造最適化計算を実行し、最適化構造の静電ポテンシャルをRESP(AMBER group [Bayly et al.1993,Cornell et al.1993])プログラムでフィッティングすることで新規に電荷を求めた。
PPARγのリガンド結合ポケットに適合する1個の構造をモレキュラーダイナミクスシミュレーションのトラジェクトリーから抽出した。構造抽出作業には、分子描画ソフトInsight II(Accelryl Inc.)を使用した。
15d−PGJをPPARγ内に導入した。1fm6[Chen et al.2000]の部分構造をPPARγ−15d−PGJ複合体のテンプレートとした。1fm6はレチノイドX受容体とPPARγとのヘテロダイマー複合体で、この構造にはPPARγに結合したコアクチベータペプチドとアゴニストのBRLが含まれる(hSRC1=ERHKILHRLLQEGSPS(配列番号47))。ここでは、PPARγのD鎖とそれに結合したBRLとコアクチベータペプチドを切り出し、15d−PGJのPPARγ内への導入に使用した。上記の15d−PGJのPPARγ内における配置予測を踏まえて、BRLのアミド基やカルボニル基部分(図7b、領域1)に15d−PGJのカルボキシル基が、BRLの骨格部分(図7b、領域2)に15d−PGJのカルボキシル基のある鎖の幹が適合するように上で抽出した15d−PGJを導入した(図8)。導入作業には、分子描画ソフトInsight II(Accelryl Inc.)を使用した。
2段階のモレキュラーメカニクス計算でPPARγ−15d−PGJ非共有結合複合体の構造歪みを解消した。初期構造には、15d−PGJを導入した複合体を使用した。第1段階では、15d−PGJ以外を位置拘束法で初期構造に対して拘束し15d−PGJの、第2段階では、全原子をフリーにして全体の構造歪みを解消した。モレキュラーメカニクス計算は真空中、誘電率1で共役勾配法を用いて行った。静電相互作用はセルマルチポール法[Ding et al.1992]で計算した。PPARγとコアクチベータペプチドのN末端をアセチル基で、コアクチベータペプチドのC末端をN−メチル基でキャップした。PPARγのアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジン、15d−PGJのカルボキシル基は荷電状態とした。モレキュラーメカニクス計算にはPRESTO ver.3 (Biomolecular Engineering Research Institute [Morikami et al.1992])プログラムを使用した。PPARγ、コアクチベータペプチドのポテンシャルエネルギー計算には、AMBER parm 96パラメータ[Kollman et al.1997]を、15d−PGJのポテンシャルエネルギー計算には、上記のAMBER general force field for the organic moleculeパラメータ[http://amber.scripps.edu/]と電荷を使用した。
PPARγ−15d−PGJ複合体に対して、真空、誘電率1、温度300 Kにおけるカノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションを実行した。モレキュラーメカニクス計算から求めた構造を初期構造とした。PPARγとコアクチベータペプチドの主鎖を位置拘束法で初期構造に拘束した。温度0Kから300Kに10万ステップの昇温、次いで、300Kで200万ステップ(2ns)のサンプリングを行った。時間刻みを1fsとした。サンプリング計算においては、千ステップ毎に構造を保存した。水素原子との結合にSHAKE拘束[Ryckaert 1977]を適用した。静電相互作用の取り扱い、計算系、ポテンシャルエネルギーのパラメータ、計算プログラムは上記モレキュラーメカニクス計算と同一とした。
PPARγ−15d−PGJ複合体のモレキュラーダイナミクスシミュレーションのトラジェクトリーを解析した。PPARγのCys285は15d−PGJの5員環の近傍に位置した。15d−PGJはマイケル付加反応によりシステインなどのチオール基を持つ分子と共有結合することが知られている。15d−PGJの反応しうる部位は2通りある。図9bに示したCys285と15d−PGJの距離d1,d2をプロットしたところ、それぞれ〜3.5,〜5.5Åとなり(図9a)、Cys285と15d−PGJは共有結合し得る位置にあることが予測された。非共有結合の構造を図17に示す。
(2:PPARγ−15d−PGJ共有結合複合体のモデル構築)
結合実験からPPARγのCys285と15d−PGJは共有結合することが明らかにされた。立体異性体を考慮するとPPARγのCys285と15d−PGJは4種の結合様式をとりうる(図10)。15d−PGJの5員環部分の二重結合が単結合に置き換えられた化合物CAYとPPARγの結合実験から、CAYはPPARγのCys285と15d−PGJは共有結合することが明らかにされた(図6)。従って、PPARγのCys285は15d−PGJとIIIとIVの結合様式をとることが予測される。1の非共有結合複合体のモレキュラーダイナミクスシミュレーションから、タンパク内ではCys285はPPARγに対してIVの位置関係にあった。そこで、IVの結合様式を持つPPARγ−15d−PGJ共有結合複合体のモデル構築を行い、リガンドとの相互作用に重要なPPARγの残基を同定した。
上記1でPPARγに導入した15d−PGJの複合体構造(モレキュラーメカニクス計算を行う前の構造)を出発構造として、この構造のCys285,15d−PGJの結合次数を共有結合状態IVに修正した。修正には、分子描画ソフトInsight II (Accelryl Inc.)を使用した。以後、Cys285、並びにこれと共有結合した15d−PGJを一つの残基として定義し、Cyp285と記述する。
結合次数を修正した複合体構造に対して、1と同様のプロトコルでモレキュラーメカニクス計算を行い、構造の歪みを解消した。ただし、第1段階のモレキュラーメカニクス計算では、Cyp285の硫黄原子から主鎖側の原子とそれ以外の全タンパク質、ペプチド残基を位置拘束法で拘束した。また、Cyp285のカルボキシル基は荷電状態とした。Cyp285のポテンシャルエネルギー計算には、AMBER general force field for the organic moleculeパラメータ[http://amber.scripps.edu/]を使用した。15d−PGJと同様の方法でCyp285の電荷のパラメータを新規に求めた。
モレキュラーメカニクス計算で求めたPPARγ−15d−PGJ共有結合複合体に対して、真空、誘電率1、温度300Kにおけるカノニカルモレキュラーダイナミクスシミュレーションを実行した。PPARγとコアクチベータペプチドの主鎖を位置拘束法で初期構造に拘束した。温度0Kから300Kに10万ステップの昇温、次いで、300Kで50万ステップ(500 ps)の平衡化、300 Kで50万ステップのサンプリングを行った。時間刻みを1fsとした。それ以外のプロトコルは1のPPARγ−15d−PGJ非共有結合複合体のモレキュラーダイナミクスシミュレーションと同一とした。
PPARγ−15d−PGJ非共有結合複合体のモレキュラーダイナミクスシミュレーションのトラジェクトリーからモデル構造を構築した(図11)。サンプリングされた全構造の平均構造を求め、平均構造に最も近い構造をモデル構造とした。モデル構造と平均構造とのPPARγ全原子の平方自乗平均分散(root−mean−square deviation)は、0.36Åとなった。また、モデル構造とテンプレート構造(1fm6)のPPARγ全重原子の平方自乗平均分散は、1.48Åとなった。
PPARγ−15d−PGJ非共有結合複合体のモデル構造において、Cyp285の15d−PGJ部分のカルボキシル基とTyr473の側鎖の水酸基が水素結合することが明らかになった(図12)。Tyr473はhelix 12にある残基である。核内受容体では、活性型と不活性型でhelix 12の位置が異なることが知られている。PPARγ−15d−PGJ非共有結合複合体のモレキュラーダイナミクスシミュレーションに使用した構造は活性型構造である。以上から、Tyr473とCyp285との水素結合はhelix 12の構造を活性型に保つために重要であると予測される。Tyr473Pheの変異実験を行い、野生株で見られたPPARγの活性が、変異体ではその活性が失われる結果が得られた。この実験結果は、Tyr473の水酸基と15d−PGJの間に何らかの相互作用があることを示唆し、計算結果を支持する。
(実施例3:共有結合するリガンドの結合能定量測定)
種々の濃度の共有結合するリガンド5μMを、PPARγLBDに対し、0.5μMになるように加え室温で15分インキュベートした後に、SDSを0.5%、ローダミンマレイミドを200μM、TCEPを1mMになるように加え、室温で30分インキュベートした。SDS−PAGEを行った後に蛍光イメージャーによりローダミンマレイミドによりラベルされたPPARγLBDの量を測定した。結果を図13Aに示す。
結合能は、以下のように計算した:
と定義する。
の反応における反応速度式は
と表現される。この微分方程式を解くと、
この式に従いkを変数として非線形最小2乗法によりフィッティングを行い最適なkを求める。
(データ処理)
マイクロソフトExcelを用いて不可逆的結合の反応速度論に準じたデータのフィッティングを行い、各種の反応定数を求めた。結果を図13A(右)に示す。
非線形最小2乗法の各種パラメータは以下の通りである。
制限時間10000秒
繰り返し10000
精度0.000001
公差2%
収束0.00001
近似式 1次式
微分係数 前進
探索方法 準ニュートン法。
(実施例4:共有結合しないリガンドの結合能定量測定)
種々の濃度の共有結合しないリガンドを5μMの15d−PGJと混合した後、PPARγLBDを0.5μMになるように加え室温で15分インキュベートした後に、SDSを0.5%、ローダミンマレイミドを200μMに、およびTCEPを1mMになるように加え、室温で30分インキュベートした。SDS−PAGEを行った後に蛍光イメージャーによりローダミンマレイミドによりラベルされたPPARγLBDの量を測定した。
結合能は、以下のように計算した:
と定義する。
なので、
これを[af]について整理すると、
となり、[af]についての2次方程式で表現される。2次方程式の解の公式より、
ここで、
におけるNRがcompetitorにより占有されていることを考慮すると、
であるので、
[af]にはxが含まれるため、解析解を求めることは難しい。そこで、Kaを変数として差分方程式の時刻tの解を発生し、実際のデータと比較し非線形最小2乗法により最適なKaを求める。
(データ処理)
マイクロソフトExcelを用いて不可逆的結合の反応速度論に準じたデータのフィッテングを行い、各種の反応定数を求めた。結果を図13B(右)に示す。
非線形最小2乗法の各種パラメータは以下の通りである。
制限時間1000秒
繰り返し10000
精度0.0000001
公差5%
収束0.0000000001
近似式 1次式
微分係数 前進
探索方法 準ニュートン法。
(実施例5:培養細胞におけるルシフェラーゼアッセイをもちいたリガンドの転写活性測定)
培養細胞におけるルシフェラーゼアッセイをもちいてリガンドの転写活性測定した(図14)。
COS−7細胞は培養液DMEM/10% FCSで培養した。トランスフェクションの前日に細胞を24穴プレートに5×10個/ウェルになるように播き、翌日UAS−tk−Luc、pEYFP−C1、pCMX−gal−PPARγのプラスミドをトランスフェクションし、6時間後メディウムを交換し、各種リガンドを投与した。トランスフェクションの24時間後に細胞を回収し、発現したルシフェラーゼの酵素活性をルシフェリンを基質とした化学発光により測定した。YFPの蛍光を測定しトランスフェクション効率として使用した。
(実施例6:PPARγLBDへの点変異導入)
PPARγLBDがクローニングされているpCMX−gal−PPARγに対し、変異導入したセンス、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてPCRを行い、テンプレートプラスミドをDpnIにより消化後、大腸菌DH5αに形質転換し、LBプレートに播いた。コロニーからプラスミドを回収し、シーケンスにより変異導入を確認した。
システイン285を、アラニン、バリン、およびセリンに置換したところ、システインと共有結合すると結論付けられた、15d−PGJおよび13−oxoODEのアゴニスト活性が、かなり減少した(図15)。この結果は、15d−PGJおよび13−oxoODEによるアゴニスト活性には、システインとの結合が重要であることを示す。
なお、チロシン473をフェニルアラニンに置換した場合は、いずれの化合物もアゴニスト活性を示さなかった。このことは、チロシン473は、共有結合の有無に関わらず、PPARγの活性化に必須であることを示す(図16)。
(実施例7:実際の化合物のアッセイ)
−CH=CH−(C=O)−R−Rで示される化合物のうち

:C13 (−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH
:C4 (−CH−CH−CH−C−)
:水酸基(−OH)、カルボニル基(C=O)

で構成される5−oxoETEがPPARγに対するアゴニストであることを、培養細胞におけるルシフェラーゼをレポーター遺伝子として用いた活性測定系において明らかにした。
上記化合物は、市販のものを購入した(Caymanchemから入手)。
アッセイは、上記実施例に記載されるように行った。
アッセイの結果、α,β不飽和ケトンを持たないアナログ5−HETEやアラキドン酸は活性が低かった(図19)。
これまでに5−oxoETEがPPARγのリガンドであるという報告はなく、今回本発明者らの提案が未知のリガンドの同定につながった例と言える。
(実施例8:別の化合物例)
−(C=O)−CH=CH−R−Rで示される化合物のうち
R1:C(−CH−CH−CH−CH
R2:C12(−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH=CH−CH−CH−CH−C−)
R3:水酸基(−OH)、カルボニル基(C=O)
で構成される15−oxoETEがPPARγに対するアゴニストであることを、培養細胞におけるルシフェラーゼをレポーター遺伝子として用いた活性測定系において明らかにした。ここでは、この化合物は、Caymanchemから購入した。アッセイは、上記実施例に記載されるように行った。その結果、α,β不飽和ケトンを持たないアナログ15−HETEやアラキドン酸は活性が低かった(図20)。
これまでに15−oxoETEがPPARγのリガンドであるという報告はなく、今回本発明者らの提案が未知のリガンドの同定につながった例と言える。
(実施例9:さらなる化合物例)
−(C=O)−CH=CH−R−Rで示される化合物のうち
R1:C4 (−CH−CH−CH−CH
R2:C12 (−CH=CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−C−)
R3:水酸基(−OH)、カルボニル基(C=O)
で構成される15−oxoEDEがPPARγに対するアゴニストであることを、培養細胞におけるルシフェラーゼをレポーター遺伝子として用いた活性測定系において明らかにした。
上記化合物は、市販のものを購入した(Caymanchemから入手)。
アッセイは、上記実施例に記載されるように行った。
その結果、α,β不飽和ケトンを持たないアナログ15−HEDEやアラキドン酸は活性が低かった(図20)。
同様に、インドメタシンについても、Sigmaから入手した化合物を試験したところ、同様にアゴニスト活性が確認される。
これまでに15−oxoEDEがPPARγのリガンドであるという報告はなく、今回本発明者らの提案が未知のリガンドの同定につながった例と言える。
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以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明によって、核内受容体を調節する化合物を同定する方法が提供され、それによって同定された核内受容体の調節剤もまた提供される。このような核内受容体の調節は、基本的な生物学的機能の調節に役に立つことが理解され、したがって、種々の分野において有用であることが理解される。そのような分野としては、農学、医学、薬学(特に、製薬産業)、生命工学などの分野、およびそれに関連する産業において有用であることが理解される。
さらに、本発明に従って、核内受容体に対するアゴニストが与えられた場合、そのアゴニストの活性を実質的に損なうことなく、そのアゴニストの核内受容体に対する親和性を増加する方法が提供される。そのような方法を用いて親和性が増大したアゴニストを設計する方法もまた、提供される。そのような方法を用いて、親和性が増大したアゴニストが提供される。また、そのような方法において使用されるプログラム、そのようなプログラムを含む記憶媒体、およびそのようなプログラムを含むコンピュータもまた、提供される。
また、核内受容体に関連する疾患、特にPPARγ関連疾患を処置するための薬剤もまた、本発明によって、提供される。
図1は、PPARγの構造の模式図である。 図2−1は、PPARγと他の核内受容体のリガンド結合部位のアラインメントである。 図2−2は、PPARγと他の核内受容体のリガンド結合部位のアラインメントのつづきである。 図2−3は、PPARγと他の核内受容体のリガンド結合部位のアラインメントのつづきである。 図3は、代表的なPPARγアゴニストを示す図である。 図4は、リガンド結合のTOF-MS解析の結果を示す図である。 図5は、蛍光マレイミド試薬によるリガンドの共有結合の定量の結果を示す図である。 図6は、共有結合するリガンドに共通な基本骨格の探索の結果を示す図である。 図7は、PPARγの主鎖の重原子で重ね合わせた結果を示す図である。アゴニスト複合体の構造を図7bからeに示す。 図8は、15d−PGJを導入したPPARγの結果を示す図である。 図9は、PPARγのCys285と15d−PGJ間の距離の計算結果を示す結果である。 図10は、PPARγのCys285と15d−PGJとの間の可能な結合様式を示す図である。 図11は、実施例2のシミュレーションの結果得られた、PPARγ−15d−PGJ2共有結合複合体の構造を示す図である。 図12は、PPARγ−15d−PGJ共有結合複合体の最終構造におけるTyr473−Cyp285間の水素結合を模式的に示す図である。水素結合を破線で示す。 図13Aは、共有結合するリガンドの結合能の定量の結果、および、共有結合するリガンドを利用したバインディングアッセイの結果を示す図である。 図13Bは、実施例4において示されるように、最小二乗法によって、不可逆的結合の反応速度論に準じたデータのフィッテングを行い、各種の反応定数を求めた結果を示す。 図14は、培養細胞におけるルシフェラーゼアッセイによるリガンドの転写活性測定の結果を示す図である。 図15は、システイン変異体を用いた共有結合の必要性の検討の結果を示す図である。 図16は、チロシン473の機能の確認の結果を示す図である。 図17は、PPARγ-15d−PGJ非共有結合複合体の最終構造を示す。 図18は、PPARγ−15d−PGJ共有結合複合体の最終構造を示す。 図19は、実施例7におけるアッセイ結果である。 図20は、実施例8および9におけるアッセイ結果である。
配列番号1:ERR1の核酸配列。
配列番号2:ERR1のアミノ酸配列。
配列番号3:ERR2の核酸配列。
配列番号4:ERR2のアミノ酸配列。
配列番号5:ERR3の核酸配列。
配列番号6:ERR3のアミノ酸配列。
配列番号7:LRH1の核酸配列。
配列番号8:LRH1のアミノ酸配列。
配列番号9:SF1の核酸配列。
配列番号10:SF1のアミノ酸配列。
配列番号11:RXRαの核酸配列。
配列番号12:RXRαのアミノ酸配列。
配列番号13:RXRβの核酸配列。
配列番号14:RXRβのアミノ酸配列。
配列番号15:RXRγの核酸配列。
配列番号16:RXRγのアミノ酸配列。
配列番号17:HNF4αの核酸配列。
配列番号18:HNF4αのアミノ酸配列。
配列番号19:HNF4γの核酸配列。
配列番号20:HNF4γのアミノ酸配列。
配列番号21:RARαの核酸配列。
配列番号22:RARαのアミノ酸配列。
配列番号23:RARβの核酸配列。
配列番号24:RARβのアミノ酸配列。
配列番号25:RARγ1の核酸配列。
配列番号26:RARγ1のアミノ酸配列。
配列番号27:RARγ2の核酸配列。
配列番号28:RARγ2のアミノ酸配列。
配列番号29:RORαの核酸配列。
配列番号30:RORαのアミノ酸配列。
配列番号31:RORβの核酸配列。
配列番号32:RORβのアミノ酸配列。
配列番号33:RORγの核酸配列。
配列番号34:RORγのアミノ酸配列。
配列番号35:O43245の核酸配列。
配列番号36:O43245のアミノ酸配列。
配列番号37:PPARαの核酸配列。
配列番号38:PPARαのアミノ酸配列。
配列番号39:PPARβ/δの核酸配列。
配列番号40:PPARβ/δのアミノ酸配列。
配列番号41:PPARγ1の核酸配列。
配列番号42:PPARγ1のアミノ酸配列。
配列番号43:PPARγ2の核酸配列。
配列番号44:PPARγ2のアミノ酸配列。
配列番号45:TLXの核酸配列。
配列番号46:TLXのアミノ酸配列。
配列番号47:hSRC1の配列

Claims (2)

  1. 核内受容体PPARγを調節する化合物を同定する方法であって、該方法は:
    A)候補化合物を提供する工程;
    B) 該候補化合物が核内受容体PPARγのリガンド結合ドメイン(PPARγLBD)内の473位のチロシン(Tyr473)と水素結合するかどうかを判定する工程であって、水素結合すると判定された候補化合物を選択する工程;および
    C)該候補化合物が、該核内受容体PPARγ中の285位のシステイン(Cys285)と共有結合するかどうかを判定する工程であって、共有結合すると判定された候補化合物を、核内受容体PPARγを調節する化合物であると同定する工程
    を包含する方法。
  2. 候補化合物が、核内受容体PPARγの共有結合性のアゴニストであるかどうかを判定する方法であって、該方法は:
    A)候補化合物を提供する工程;
    B) 該候補化合物が核内受容体PPARγのリガンド結合ドメイン(PPARγLBD)内の473位のチロシン(Tyr473)と水素結合するかどうかを判定し、水素結合すると判定された候補化合物を選択する工程;
    C)該候補化合物が、該核内受容体PPARγ中の285位のシステイン(Cys285)と共有結合するかどうかを判定し、共有結合すると判定された候補化合物を選択する工程;および
    D)転写因子認識配列と作動可能に連結されるレポーターをコードする核酸配列を含む核酸構築物と、核内受容体PPARγのリガンド結合ドメイン(PPARγLBD)とを含む系において、工程C)により選択された該候補化合物の活性を判定する工程であって、該レポーターの発現が増強される場合、該候補化合物は該核内受容体の共有結合性のアゴニストと判定する工程
    を包含する方法。
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