実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るシステム構成を示す図である。移動体通信システムは、たとえばW−CDMA方式のシステムであって、基地局制御装置11、無線基地局12および移動体通信端末13によって構成される。基地局制御装置11は、W−CDMA方式では無線ネットワーク制御装置(RNC)と呼ばれ、下位に接続された無線基地局12から、基地局タイプ、アドレス、最大送信電力、サービスセル半径、総チャネル容量等のように、基地局の規模を示す基地局規模情報を取得し、記憶する。なお、基地局規模情報は、基地局制御装置11が無線基地局12から直接入手しても良いし、外部に基地局規模情報を収集する規模情報サーバを置き、無線基地局12からその規模情報サーバを経由して入手しても良い。
基地局情報要求部21は、無線基地局12に対し無線基地局12自身に関する情報、特に基地局規模情報を提供するように要求する。基地局情報記憶部22は、無線基地局12に関する情報、特に基地局規模情報を記憶する。規模識別部23は、基地局情報記憶部22に記憶された基地局規模情報に基づいて、無線基地局12の規模を識別する。基地局制御部24は、規模識別部23によって識別された規模に応じた処理を無線基地局12に実行させるように、無線基地局12を制御する。
図2は、基地局規模情報の取得手順を示す図である。まず、ステップa1において、基地局制御装置11の基地局情報要求部21は、無線基地局12に対して、基地局規模情報の提供を要求する通知を行う。続いて、ステップa2において、無線基地局12は、基地局制御装置11からの要求に対する応答として、基地局規模情報を基地局制御装置11に通知する。このようにして、基地局制御装置11は、無線基地局12からその基地局規模情報を取得することができ、取得した基地局規模情報に基づいて無線基地局12の規模を識別できる。
図3は、基地局規模情報を示す図である。図3では、複数の無線基地局12が、一つの基地局制御装置11に接続された構成を示している。無線基地局11からの情報としては、基地局タイプ、アドレス、最大送信電力、サービスセル半径、総チャネル容量のうちのいずれかの情報か、又は、それらのうちのいくつかの組合せか、あるいは、それら情報全てを、無線基地局12から取得し、記憶する。
無線基地局12は、無線基地局12a,12b,12cの総称である。無線基地局12aは、サービスセル半径が5m程度の家屋内やエレベータ内で用いられる超小型基地局である。無線基地局12bは、サービスセル半径が1km程度の小型基地局である。無線基地局12cは、サービスセル半径が10km程度の大型基地局である。有線伝送路16は、基地局制御装置11と無線基地局12とを接続する有線の伝送路である。
次に、基地局制御装置11の動作を説明する。
まず、基地局規模情報として、基地局タイプの情報を使う場合について説明する。基地局制御装置11は、下位に接続された無線基地局12から、有線回線16を経由して、基地局タイプの情報を取得する。基地局タイプは、無線基地局12の規模を識別するための基地局規模識別情報であって、超小型基地局12aは基地局タイプAに対応し、小型基地局12bは基地局タイプBに対応し、大型基地局12cは基地局タイプCに対応する。それぞれの無線基地局12は、自らの基地局タイプに関する情報を、基地局制御装置11に送信する。基地局制御装置11は、無線基地局12から取得した基地局タイプの情報を、基地局情報記憶部22に格納する。このとき、基地局タイプは、無線基地局12同士を識別するための基地局識別情報に対応付けて記憶される。基地局識別情報は、たとえば、各無線基地局12に固有のIP(インターネットプロトコル)アドレス等でも良い。基地局情報記憶部22に記憶された基地局タイプは、無線基地局12の規模を識別するための情報であるから、基地局制御装置11の規模識別部23によって、無線基地局12の規模を即座に識別できる。識別された無線基地局12の規模に応じた処理を無線基地局12が行うように、基地局制御装置11の基地局制御部24は無線基地局12を制御する。
次に、基地局規模情報として、IPアドレスを使う場合について説明する。無線基地局12それぞれには、所定の体系に沿ったIPアドレスを付す。ここでいうIPアドレスの体系とは、無線基地局12の規模を含むようなアドレス体系であって、たとえば、一つの無線基地局12あたり4チャネルを処理できる16台の超小型基地局12aのアドレスを「10.16.111.101」〜「10.16.111.116」の連番とし、1440チャネルを処理できる小型基地局12bのアドレスを「10.17.123.122」とし、2880チャネルを処理できる大型基地局12cのアドレスを「10.17.123.123」とする。つまり、超小型基地局12aのIPアドレスを「10.16.XXX.XXX」とし、それ以外の小型基地局12b,大型基地局12cを「10.17.XXX.XXX」とする。「XXX」は、「0」〜「255」のうちの任意の数値である。このような無線基地局12のアドレス情報は、基地局制御装置11の基地局情報記憶部22に記憶される。記憶されたアドレス情報に基づいて、基地局制御装置11の規模識別部23は無線基地局12の規模を識別する。つまり、無線基地局12のIPアドレスが「10.16.XXX.XXX」に該当するか否かを判断し、該当する場合は無線基地局12を超小型基地局12aと識別し、該当しない場合は小型基地局12bまたは大型基地局12cと識別する。識別された基地局規模情報に応じた処理を行うように無線基地局12を、基地局制御装置11の基地局制御部24によって制御する点は、基地局タイプの場合と同じである。
ただし、基地局規模情報に従った体系を持つアドレス情報の場合、アドレス情報自身が基地局識別情報であると同時に基地局規模識別情報でもあるため、別の基地局識別情報に対応付けて記憶する必要はない。
次に、基地局規模情報として、無線基地局12の最大送信電力を使う場合について説明する。各無線基地局12の最大送信電力の情報は、各無線基地局12から基地局制御装置11に送信され、基地局制御装置11の基地局情報記憶部22に記憶される。記憶された最大送信電力に基づいて、規模識別部23は無線基地局12の規模を識別する。たとえば、最大送信電力が125mW以下の無線基地局12を超小型基地局12aとし、最大送信電力が125mWより大きい無線基地局12を小型基地局12bまたは大型基地局12cとする。識別された基地局規模情報に応じた処理を行うように無線基地局12を、基地局制御装置11の基地局制御部24によって制御する点は、基地局タイプの場合と同じである。
なお、基地局規模情報として、無線基地局12のサービスセル半径を使う場合も、最大送信電力の場合と同様であり、基地局規模を識別するためのサービスセル半径の閾値を適宜設ければ良い。基地局規模情報として、無線基地局12の総チャネル容量を使う場合も同様であり、基地局規模を識別するための総チャネル容量の閾値を適宜設ければ良い。
次に、図4〜図6を用いて、基地局制御部24で行う無線基地局12の制御を詳しく説明する。
図4は、基地局規模に応じたハンドオーバ制御を示す状態図である。移動体通信端末13が大型基地局12c(もしくは小型基地局12b)のサービスエリア20cから、超小型基地局12aのサービスエリア20aに移動する場合、基地局制御装置11の基地局制御部24は、移動先の超小型基地局12aおよび移動体通信端末13に対して、ソフトハンドオーバ(SHO)ではなく、ハードハンドオーバ(HHO)によるチャネル設定を指示する。このような制御は、移動先の超小型基地局12aと移動体通信端末との通信において、移動元の大型基地局12cと同一の周波数を使う場合であっても、実行される。
なお、超小型基地局12aのサービスエリア20cは、大型基地局12cのサービスエリア20cと一部重複していても、全部重複していても構わない。全部重複は、サービスエリア20aがサービスエリア20cに全て含まれた状態をいう。
図5は、ハンドオーバ制御の処理流れを示すフローチャートである。ステップb1において、大型基地局と通信中の移動体通信端末が別の基地局のサービスエリア内に入ると、次のステップb2において、新エリアの無線基地局12が超小型基地局12aであるか否かを判断する。超小型基地局12aであった場合、次のステップb3において、超小型基地局12aに対してHHOを行うように制御する。超小型基地局12aでなかった場合、ステップb4において、SHOを行うように制御する。
図6は、ハンドオーバと基地局受信電力との関係を示す図である。図6の横軸は、移動体通信端末13と無線基地局12との距離を示し、図6の縦軸は、無線基地局12から送信された信号の移動体通信端末13における受信電力を示す。図6中の受信電力Paは、超小型基地局12aから送信された信号の受信電力であり、受信電力Pcは、大型基地局12cから送信された信号の受信電力である。
移動体通信端末13は、無線基地局12を経由して基地局制御装置11に対し、各無線基地局12から送信された信号の受信電力を随時通知しており、基地局制御装置11は通知された受信電力に基づいて、ハンドオーバ制御を行うタイミングを次に説明するとおりとしている。移動体通信端末13が、移動元の大型基地局12cから、移動先の超小型基地局12aに近づいていくと、移動先の超小型基地局12aからの受信電力Paが増大し、移動元の大型基地局12cからの受信電力Pcは減少する。
受信電力Paから受信電力Pcを差し引いた電力差が所定の電力差Pd1となる位置を位置L1とする。位置L1では、移動先の無線基地局12が超小型基地局12aである場合は、基地局制御装置11は、超小型基地局12aおよび移動体通信端末13に対して、何も制御を行わない。移動先の無線基地局12が超小型基地局12a以外の基地局である場合は、基地局制御装置11は、移動先の超小型基地局12aを通信可能な基地局として追加するSHO制御を行う。
移動体通信端末13が、さらに移動先の超小型基地局12aに近づいていくと、受信電力Paはさらに増大し、受信電力Pcはさらに減少する。受信電力Pcから受信電力Paを差し引いた電力差が所定の電力差Pd2となる位置を位置L2とする。位置L2では、移動先の無線基地局12が超小型基地局12aである場合は、基地局制御装置11は、超小型基地局12aおよび移動体通信端末13に対して、HHO制御を行う。移動先の無線基地局12が超小型基地局12a以外の基地局である場合は、基地局制御装置11は、移動元の大型基地局12cを通信可能な基地局から削除するSHO制御を行う。
このように、本実施の形態1によれば、基地局規模情報に応じてSHOまたはHHOを選択的に行わせる制御を行うので、超小型基地局では、無線信号の伝搬パスを検出するためのサーチ窓幅を小さくする事ができ、無線基地局の回路規模を縮小することができる。
本実施の形態1の効果を、図7〜図10を用いて以下に詳しく説明する。
図7は、サーチ窓幅が広い場合のパス検出を示すタイミングチャートである。移動体通信端末13から送信されてくる無線信号を検出するために、この無線信号の伝搬パスを検出する必要がある。無線基地局12同士は非同期タイミングで動作している。つまり、無線基地局12から移動体通信端末13への下り方向に伝送される信号は、無線基地局12毎に非同期であって、各無線基地局12が電源を投入したタイミングで無線フレームの先頭が決定される。また、下り方向の信号は、複数の拡散コードの直交性を保つために、256chip毎にフレームの先頭を設定できる。また、上り方向の信号は、下り方向の信号のタイミングに対し、+1024chipのタイミングを先頭にするように動作する。移動体通信端末13から無線基地局12への上り信号の送信タイミングは、256chip(1chip≒0.26μs)毎に1度であり、256chipのタイミングのうちのいずれかの位置に伝搬パスが検出されることになる。このとき、SHO時に移動元の無線基地局(#1)12、および、移動先の無線基地局(#2)12の双方において、移動体通信端末13からの信号の伝搬パスを検出するためには、移動先の無線基地局(#2)12のサーチ窓幅を、比較的広いサーチ窓幅W1=256chipにすれば良い。
こうした構成により、移動体通信端末13からの信号の伝搬パスを、あらゆるタイミングにおいて検出できる。ただし、伝搬パスを検出することができるタイミング幅で、相関をとるためのディジタルフィルタが構成されるので、サーチ窓幅が広いほど、ディジタルフィルタのタップ数が大きくなり、回路規模も大きくなってしまう。
図8は、サーチ窓幅が狭い場合のパス検出を示すタイミングチャートである。サーチ窓幅を比較的狭いサーチ窓幅W2=16chipにすると、移動先の無線基地局(#2)12のタイミングでは、サーチ窓の範囲内に伝搬パスのタイミングが来ず、伝搬パスを検出できない場合が存在する。移動先の無線基地局(#2)12からの受信電力が、移動元の無線基地局(#1)12の受信電力よりも充分大きくなると、移動体通信端末13は、移動先の無線基地局(#2)12の下りタイミング+1024chipを無線フレームの先頭にするように動作する。
ただし、200msに1/8chipしかタイミングを変更できない。従って、移動先の無線基地局(#2)12からの受信電力が、移動元の無線基地局(#1)12からの受信電力よりも充分大きくなったら、伝搬パスは徐々にサーチ窓に近づいていくが、SHOでは、200msに1/8chipずつ近づいていくので、サーチ窓内に伝搬パスが入り、パス検出がされるまでに、時間がかかる。
図9は、SHOによるパス検出までの時間を示すタイミングチャートである。仮に、上りパスが無線基地局12のサーチ窓から50chip離れたタイミングであったとする。SHOでは、200msに1/8chip近づくので、伝搬パスがサーチ窓内に入るまでに、200ms×(50chip÷(1/8chip))=200ms×400=80000ms=80秒かかることになる。これは、移動先の無線基地局12が移動体通信端末と通信可能な状態になるまでに、80秒もかかることを意味する。これではハンドオーバを円滑に行うことが難しくなる。
図10は、HHOによるパス検出までの時間を示すタイミングチャートである。サーチ窓幅が比較的小さい場合に、HHOを行うようにすれば、瞬時にサーチ窓内に伝搬パスが入るように、サーチ窓を合わせる事ができる。よって、基地局制御装置11がHHOを行うように制御するならば、サーチ窓を小さくする事ができ、その結果、パスサーチを行うための回路の規模を小さくする事ができる。したがって、無線基地局12を小型化し、かつ、低価格化することができる。
なお、図1および図2では、基地局制御装置11から無線基地局12に対し、基地局規模情報の提供を要求する通知を行い、その応答として、無線基地局12から基地局制御装置11に対し、基地局規模情報を通知するものを説明したが、これに限るものではない。たとえば、基地局制御装置11から無線基地局12に基地局規模情報の提供を要求することなく、無線基地局12の起動時に、基地局制御装置11に対して基地局規模情報を通知しても良い。こうした構成でも、無線基地局12の規模を識別することができる。
また、次の図11に示す構成も可能である。
図11は、規模情報サーバを介した基地局規模情報の取得手順を示す図である。図11の構成は、図1の移動体通信システムに規模情報サーバ14を追加したものである(移動体通信端末13は図示を省略)。規模情報サーバ14は、各無線基地局12の基地局規模情報を収集するサーバであって、たとえば、オペレーションシステム等によって構成される。
図11の構成では、無線基地局12が起動すると、ステップc1において、規模情報サーバ14は無線基地局12に対して、基地局規模情報の提供を要求する。その応答として、次のステップc2において、無線基地局12は規模情報サーバ14に対して、基地局規模情報を通知する。このような処理手順によって、各無線基地局12から基地局規模情報を収集する。
続いてステップc3において、基地局制御装置11が規模情報サーバ14に対して、基地局規模情報の提供を要求する。その応答として、次のステップc4において、規模情報サーバ14は基地局制御装置11に対して、基地局規模情報を通知する。
こうした構成および手順によっても、無線基地局12の規模を識別することができる。
なお、図11では、基地局制御装置11が規模情報サーバ14に対して、基地局規模情報の提供を要求するタイミングは、無線基地局12が規模情報サーバ14に基地局規模情報を通知した後にするものを説明したが、これに限るものではない。たとえば、基地局制御装置11からの要求に対して、規模情報サーバ14から基地局規模情報を取得できない場合、所定時間が経過した後に、再び規模情報サーバ14に対して、基地局規模情報を要求するようにし、基地局規模情報が応答されるまで、この要求を繰り返せば良い。
実施の形態2.
本実施の形態2は、実施の形態1におけるハンドオーバ制御に代わって、コンプレストモード制御を行うものである。基地局制御装置11の規模識別部23が無線基地局12を超小型基地局12aであると識別した場合、基地局制御装置11の基地局制御部24は、コンプレストモードに関するパラメータ(ギャップ位置やギャップ長など)を固定にする制御を行う。
図12は、チャネル符号化に関する超小型基地局の構成を示す図である。メモリ31は、チャネル符号化の処理を行う前のデータを一時的に記憶するメモリである。メモリ32は、チャネル符号化の処理を行った後の無線フレームデータを一時的に記憶するメモリである。コンプレストモード動作時は、ギャップ位置やギャップ長などのパラメータが固定されたデータパターンが記憶される。メモリ32に記憶されるデータのとりうる値は、3値であり、+1,0,-1である。カウンタ33は、アドレス生成部34にカウント値を供給するカウンタである。カウンタ33より出力されたカウント値は、アドレス生成部34に入力され、メモリ31のアドレスとメモリ35のアドレスとの組合わせが決まる。アドレス生成部34は、入力されたデータに関する制御情報を基に、カウント値をメモリ35のアドレス値に変換する。アドレス生成部34に入力される制御情報は、TFCI(Transport Format Combination Indicator)、コンプレストモードのギャップ位置またはギャップ長などである。メモリ35は、無線基地局12が対応する全サービス・全パターンの無線フレームデータに関する情報を記憶している。記憶した情報の内容は、メモリ32のアドレスである。全パターンとは、全てのTFCI、コンプレストモードのギャップ位置またはギャップ長に渡る全てのパターンである。レベル変換部36は、0,1の2値データを、+1,0,-1の3値に変換する。変換方法は、アドレス生成部34により制御される。
次に、本実施の形態に関わる動作を説明する。
基地局制御装置11は、無線基地局12に対し、下り送信データおよびその下り送信データに関する情報を送信する。下り送信データに関する情報は、音声またはパケット等のサービス情報、TFCI、コンプレストモードのギャップ位置、ギャップ長などである。送信データは、誤り訂正符号化処理後データでメモリ31に記憶される。下り送信データに関する情報は、アドレス生成部34に格納される。カウンタ33は、データがメモリ31に格納されると、カウント動作を開始し、生成されたカウント値は、メモリ31とアドレス生成部34に入力される。メモリ31は、カウンタ33からカウント値を受け取ると、メモリ31内のあるアドレスからカウント値どおりの順番で、メモリ31に記憶されたデータを読み出していく。読み出された2値のデータは、3値化部36を経て、3値のデータ(+1,0,-1)に変換され、メモリ32に記憶されていくが、メモリ32に記憶する位置は、メモリ35からメモリ32に通知されたアドレス情報に従う。アドレス生成部34は、基地局制御装置11より通知されたデータの制御情報と、カウンタ33より入力されたカウント値とを基に、メモリ35のアドレス情報を生成し、メモリ35に渡す。メモリ35には、無線基地局12が対応する特定のサービスや、特定のTFCI、特定のギャップセットにおける全ての場合のチャネル符号化された結果が記憶される。特定のサービスとは、例えば、音声(Voice AMR(Advanced Multi Rate)+DCCH(Dedicated Control Channel))、パケット伝送レート384kbps(PS384(PS:Packet Service)+DCCH)のみとすることなどである。
図13は、メモリ32に記憶されたデータの配列を示す図である。この中から、どのトランスポートチャネルビット番号Ntcb、どのTFCI、どのギャップセット、どのサービス(チャネル種別C)を選択するかは、アドレス生成部34がメモリ35のアドレスAdを指定することで行う。アドレス生成部34にて指定されたアドレス値に従い、メモリ35は、メモリ35内のデータをメモリ32に渡す。そのデータの内容は、チャネル符号化された結果における誤り訂正符号化されたデータビットの行先であり、メモリ32の格納アドレス位置という形をなしている。
また、レートマッチングや、DTX(Discontinuous Transmission)付加などにより、増減するビットについては、アドレス生成部34において、例えば、ビット数が増える場合は、一つのカウント値に対して、複数のメモリ35のアドレスを生成してメモリ35に渡すような動作を行う。あるいは、ビット数が増える場合は、メモリ31に対する読み込みが終わった後も、メモリ32の空白のアドレスに対して、メモリ35から+1か0か-1かを指定するデータが、メモリ32に対して通知される。あるいは、アドレス生成部34が、カウンタ33に対し、wait信号を送り、リピティションビット数分だけカウント動作をストップさせ、その間にメモリ35からメモリ32に対して、3値(+1,0,-1)のうちいずれかの値となるような指示を与える。
図14は、チャネル符号化の第1例を示す図である。図14では、VoiceAMR+DCCH、TFCI=5、TGPL1=TGPL2=4フレーム、TGL1=3スロット、TGL2=4スロットのコンプレストモードパターンにおけるチャネルコーディングを例示している(TGL:Transmission Gap Length)。図14の誤り訂正符号化されたデータ(図14上)は、図12のメモリ31に格納され、図14の無線チャネルフォーマットのデータ(図14下)は、図12のメモリ32に格納される。誤り訂正を畳み込み符号のみとし、ギャップ位置を固定、そのサービスにおけるトランスポートチャネルのうちの最大TTI(Trasmission Time Interval)をとるトランスポートチャネルのTTIとTGPL(Transmission Gap Pattern Length)を等しくさせる。各サービスごとにTFCS(Transport Format Combination Set)数通りマッピング位置が存在する。そのマッピング位置を指定するアドレスをメモリ35に格納しておくことで、チャネルコーディング演算回路を大幅に圧縮する事ができる。TGPLとTTIが等しいもの、TGPLとTTIの最小公倍数が小さいものが望ましい。
これにより、超小型基地局12aでは、コンプレストモード時に伝送ギャップ長を固定長とし、特定のパターンのチャネル符号化に固定化された処理を行い、それ以外の小型基地局12b、大型基地局12cでは、コンプレストモード時に伝送ギャップ長を固定長とする。その結果、超小型基地局12aの回路規模を圧縮する事ができる。さらに、ギャップ位置を固定し、そのサービスにおけるトランスポートチャネルのうちの最大TTIとTGPLを等しくさせることで、各サービスごとにTFCS数通りのマッピング位置のみを指定するようにすれば、チャネルコーディング演算回路を大幅に圧縮する事ができる。
本実施の形態による効果について、図15〜図17を用いて具体的に説明する。
図15は、チャネル符号化の第2例を示す図である。VoiceAMR+DCCHのサービスにおいて、コンプレストモード(ギャップ位置固定)のパターン間隔(TGPL1,2)が、TGPL1=TGPL2=5で、最大TTI周期(ClassA,B,C,DCCHのうち、最大TTI=40ms)を10分の1した値(=4)と異なっていた場合を示している。このような場合、最大TTI=40msと、TGPL1(=TGPL2)=5との最小公倍数である200msになるまで、最初と同じギャップ位置とはならない。したがって、図12のメモリ35に格納するメモリ32のアドレスは、200ms分必要となることがわかる。また、ギャップ位置が固定でない場合には、コンプレストモードパターンを含んだ無線フレームデータのアドレスを格納する事はできないことがわかる。
図16は、チャネル符号化の第3例を示す図である。VoiceAMR+DCCHのサービスにおいて、コンプレストモード(ギャップ位置固定)のパターン間隔TGPLが偶数となった場合を示している。例えば、TGPL1=TGPL2=8である場合は、図12のメモリ35に格納するメモリ32のアドレスは最大TTIが2回分、すなわち、80ms分必要となることがわかる。
図17は、チャネル符号化の第4例を示す図である。最大TTI周期を10分の1した値(=4)と、TGPL1(=TGPL2=4)とが同じ値である場合を示している。この場合は、図12のメモリ35に格納するメモリ32のアドレスは最大TTIが1回分、すなわち、40ms分必要なだけでよい事がわかる。
このように、コンプレストモードのギャップパターンに対する制約の規則性があれば、基地局のメモリサイズを削減する事ができることがわかる。家庭用などのユーザ収容数4程度の超小型基地局ならば、ギャップパターンを上記の様に固定化しても問題は無い。
なお、図12では、チャネル符号化された無線フレームデータをメモリ32に書き込む際に、メモリ32のアドレスを指定することでコンプレストモードに対応したチャネル符号化を行いながら書き込む構成(以下、図12の構成を第1例とする)としたが、これに限るものではない。
図18は、チャネル符号化に関する超小型基地局の第2例を示す図である。誤り訂正符号化されたデータをメモリ31から読み出す際に、コンプレストモードに対応したチャネル符号化された無線フレームデータのビット並びのアドレスで読み出す構成である。メモリ32にデータを書き込む際は、先頭アドレスから順に書き込めばよい事になる。ただし、レートマッチング処理において、リピティションが行われる場合は、メモリ31から読み出す際に、同じアドレスの値を読み出す処理が加わる。上記以外の動作は、図12の場合とほぼ同じであるので、説明を省略する。
なお、メモリ35は、3値化部36に対して、リピティションビットを行う箇所の通知を行い、3値化部36においてリピティションを行っても良いし、メモリ35がメモリ31からデータを読み出す際に、リピティションを考慮に入れて、メモリ31の同じアドレスを読み出すようにしても良い。その間、カウンタは計数を中断(wait)する。
図19は、チャネル復号に関する超小型基地局の構成例を示す図である。メモリ41は、誤り訂正復号を行う前のデータを記憶する。メモリ42は、チャネル復号を行う前の無線フレームデータを記憶する。記憶されるデータは軟判定値であり、例えば+32,-15等である。このうち、「+」または「−」の符号が判定値を示し、「32」または「15」の絶対値が信頼度情報を示す。復調部から渡された逆拡散パス合成後の軟判定値の他に、チャネル復号時にリピティションするための値を別に用意しておく。別に用意した値は、信頼度最小の軟判定値、すなわち±0である。カウンタ43は、メモリ42にデータが格納されるとカウント動作を開始するカウンタである。アドレス生成部44は、カウンタ43からカウント値を受け取ると、データの制御情報と復調部からのTFCI情報を基に、メモリ42に格納されたアドレス情報のうちのどの部分を読むべきか指定する。メモリ45は、チャネル復号において、チャネル復号前のデータを格納するメモリ41のアドレスを指定するアドレス情報が格納されている。加算部46は、移動体通信端末13が送信時にリピティションを行っているデータの場合、無線基地局12は受信時にチャネル復号中のレートデマッチング処理においてリピティションされたビットを元のビットに加算する処理を行う。どのビットがリピティションビットであるかの情報は、メモリ45より通知される。
次に、チャネル復号の動作を説明する。
メモリ42に無線フレームデータが格納されると、カウンタ43が動作し、カウント値がメモリ41とアドレス生成部44に送られる。メモリ41に送られたカウント値は、加算部46で加算されたデータを先頭位置から順に1 値(軟判定値である)ずつ書き込んでいく書込みアドレスを指定するカウント値である。アドレス生成部44に送られたカウント値は、アドレス生成部44において、メモリ42のデータを読み出すメモリ45のアドレスに変換する。メモリ45のアドレスを指定するために、アドレス生成部44は、データの制御情報と復調部からのTFCI情報を元にする。TFCI情報は、データを復調部において逆拡散し、パス合成する際に、受信データから得られる情報である。メモリ45は、アドレス生成部44よりメモリ45のアドレス値を入手すると、そのアドレスに格納されている値を読み出して、メモリ42に送る。メモリ45に格納されているデータは、メモリ42のアドレス値であり、チャネル復号前のデータの並びがメモリ42のアドレスの並びとなっている。メモリ42に格納された軟判定データは、メモリ45で指定された順番に基づいて、読み出される。読み出されたデータは、加算部46に入力される。もしも、メモリ42に格納された受信データが、移動通信端末13から送信されるときにリピティションされているデータであるならば、リピティションビットを元のビットに加算する。もしも、メモリ42に格納された受信データが、移動体通信端末13から送信されるときにパンクチャリングされているデータであるならば、メモリ42に格納された信頼度0の固定値(±0)を読み出してメモリ41に送る。メモリ41には、カウンタ43によりカウントアップされていく値のとおりの順番に加算部46の出力データが格納されていく。カウントアップされていく値は、メモリ41の最初のアドレス値から、1つ後のアドレス、その後ろのアドレス、という具合にカウントアップがなされる。
なお、メモリ42に格納されたデータが、移動体通信端末13によってパンクチャリングされたデータである場合、パンクチャリングされたビットを読み出してから、パンクチャリングされたビット数分だけ、カウンタ43の計数を中断する(wait)制御動作をアドレス生成部44が行う。
実施の形態3.
本実施の形態3は、実施の形態1におけるハンドオーバ制御に代わって、送信電力制御を行うものである。基地局制御装置11の規模識別部23が無線基地局12を超小型基地局12aであると識別した場合、基地局制御装置11の基地局制御部24は、無線基地局12に対して送信電力制御に関する制御を行う。
具体的には、次の処理(1)〜(4)を行う。
(1)送信電力制御周期を基地局規模に応じて変更する。
(2)送信電力ステップサイズ(ある電力までなら一度に増減できる変動量)を基地局規模に応じて変更する。
(3)送信電力制御に関する割込処理の優先度を基地局規模に応じて変更する。(超小型基地局であるならば制御遅延をある程度まで許容する。)
(4)基地局規模に応じチャネル個別またはチャネル一括で送信電力制御を行う。
図20は、送信電力制御に関する無線基地局の構成を示す図である。図20では、上り送信電力の制御を行うための無線基地局の構成を図示している。無線基地局は、例えば、W-CDMA方式に従う基地局である。逆拡散・パス合成部61は、拡散された受信信号を逆拡散し、RAKE合成によるパス合成を行う。品質測定部62は、チャネル復号などを行った段階で、トランスポートチャネルのCRC(Cyclic Redundancy Check)のNGの数を元にBLER(Block Error Rate)を計算する、あるいは、誤り訂正を行った段階で再びチャネル符号化を行ったデータと、誤り訂正前のデータとの異なるビット数をカウントする事でBER(Bit Error Rate)を計算するなどにより、品質を測定する。既知系列であるpilotビットの誤り数をカウントする方法によって、品質を測定しても良い。品質比較部63は、品質測定部62からBERやBLERなどの結果と、目標となるBERやBLERなどの値とを比較し、受信品質を判定する。目標品質通知部64は、BERやBLERの品質の目標を比較判定回路63に通知する。目標SIR設定部65は、比較判定結果を受けて、目標となる上り信号のSIRを設定する。SIR測定部66は、受信信号のSIR(信号電力と干渉電力との比、あるいは信号振幅と干渉振幅との比)を測定する。SIR比較部67は、受信信号のSIRと、目標となる上り信号のSIRとを比較する。パターン選択部68は、比較した結果を元に、10ms分のTPCビットパターンを選択して送信部に通知する。
次に、本実施の形態3に関わる処理(1)〜(4)のうち、処理(1)を詳しく説明する。
基地局が受信した移動体通信端末からの受信拡散信号は、逆拡散・パス合成部61において、逆拡散され、パス合成される。パス合成されたデータは、SIR測定部66と、品質測定部62とに送られる。品質測定部62において、チャネルデコーディングされ、CRCがOKかNGかを判定された結果からBLERを求め、品質比較部63に結果を通知する。あるいは、チャネル復号時に、誤り訂正後のデータを、再びチャネルコーディングして、誤り訂正前のデータと比較する事で、BERを求め、品質比較部63に結果を通知しても良い。品質比較部63において、目標品質のBERもしくは、BLERと比較し、その差分の大きさと、目標となるSIRの設定値とを対応させたテーブルなどにより、目標SIRを決定する。SIR測定部66では、逆拡散およびパス合成された受信データのSIRを求める。パス合成する前に各パスでSIRを求め、それを合成してSIRを求めても良い。求めたSIRと、目標SIRとを、SIR比較部67において、比較し、その差分の大きさに応じて、10ms分のTPCビットのパターンを決定する。10ms分としたのは、家庭内などのごく狭い閉空間では、送信電力制御の周期を緩やかにしても性能の劣化が無い事から、例として決めた値である。
図21は、TPCビットパターンを示す図である。TPCビットのパターンは、テーブルに格納されている。例えば、1スロットで、2ビットTPCビットが存在する場合、「11」は、移動体通信端末13に対して、上り送信電力を+1dB上げるように指示することを意味し、「00」は、移動体通信端末13に対して、上り送信電力を1dB下げるように指示することを意味する。TPCビットパターンは、送信部に通知された後、1スロット分ずつ(2ビットずつ)、送信される。
10msあたりにSIRの変化量が±1dB程度であると、10msの間のどのタイミングで変化させても、送信電力の変化にそれほど影響はないが、3dBや7dBも電力変化があると、TPCビットパターンは、10msの間に緩やかに変化させる場合と、急激に変化させる場合と両方のパターンを用意する必要がある。図21において、電力比3dB、7dBに対応するTPCビットパターンのうち、それぞれ上段は比較的急に電力を変化させるためのパターンを示し、下段は比較的緩やかに電力を変化させるためのパターンを示している。両方のパターンを要する理由は、急激に変化させる場合は、他ユーザに対する干渉も急激に変化してしまい、他ユーザが10ms周期で送信電力制御を行っていたとき、他ユーザが干渉を抑制する速さが追いつけなくなってしまうからである。従って、多ユーザ使用時は、ゆっくりと電力変化させる必要が生じ、ゆっくりと電力変化させるようなTPCビットパターンが必要となるわけである。また、急激に変化させる場合は、他セルへの急激な干渉増大をももたらすが、家庭用などの閉空間においては、同じ小型基地局12aのサービスエリア内で1ユーザのみの通信しか行われていない場合は、原則、急激でも構わない。
同じ小型基地局12aのサービスエリア内で1ユーザのみの通信しか行われていない場合について、動作例を以下に説明する。移動体通信端末13からの上り信号の10ms当りのSIRの変化量が目標SIR(図20の65に設定)に対して3[dB]下がっていた場合、小型基地局12aは、図21の電力比3dBに対応した上段のTPCビットパターンを選択し、移動体通信端末13に対してそのパターン通りに送信する。移動体通信端末13に対して、送信電力を3[dB]上げるという要求である。移動体通信端末13からの上り信号の10ms当りのSIRの変化量が目標SIR(図20の65に設定)に対して7[dB]下がっていた場合には、小型基地局12aは、図21の電力比7dBに対応した上段のTPCビットパターンを選択し、移動体通信端末13に対して送信する。
同じ小型基地局12aのサービスエリア内で多ユーザの通信が行われている場合について、動作例を以下に説明する。移動体通信端末13からの上り信号の10ms当りのSIRの変化量が目標SIR(図20の65に設定)に対して3[dB]下がっていた場合、小型基地局12aは、図21の電力比3dBに対応した下段のパターンを選択し、移動体通信端末13に対してそのパターン通りに送信する。移動体通信端末13からの上り信号の10ms当りのSIRの変化量が目標SIR(図20の65に設定)に対して7[dB]下がっていた場合には、小型基地局12aは、図21の電力比7dBに対応した下段のTPCビットパターンを選択し、移動体通信端末13に対して送信する。
これにより、従来SIR測定、目標SIRとの比較、TPCビット発生を1スロット(0.667ms)単位で処理していたものを、10ms単位(1フレーム単位)で処理する事ができるようになる。そうなった場合でも、スロットごとに行う従来の送信電力制御に近いパターンで送信電力制御を行うことができるので、性能の劣化を防止する事ができる。また、制御周期を図21のパターンのいずれかを1フレーム(10ms)毎に選択することにより、10ms毎(1フレーム)の電力制御になった場合にも、電力性能の劣化を防止する事ができる。性能の劣化を防止しつつ、1スロット毎の処理を、1フレーム毎の処理にすることができるので、処理が簡易化される。
さらに、例えば、W-CDMA方式では、上りの送信電力制御、及び、下りの送信電力制御において、クローズドループ(インナーループ)の送信電力制御は0.667msと高速に制御するようになっている。これは、移動体通信端末13が無線基地局12から急速に遠ざかったり、急速に近づいたりした場合にでも、瞬時に最適な送信電力とする事ができるためである。これに対して、超小型基地局12aのサービスエリア内で通信を行うユーザは、屋内閉空間に静止しているので、前記の様に高速制御を行う必要が無い。数msのより長い周期の送信電力制御である場合には、時間当りの制御量を減らす事ができるので、回路規模を圧縮する事ができる。
さらに、図21においては、TPC bitパターンを10ms(1フレーム=15slot)分の例で示したが、対象移動体通信端末の移動速度、送信周波数によって最適化することが可能である。例えば、移動速度が速い、あるいは、送信周波数が高いときには、数スロット(数ms)分用意して、数スロット毎に送信電力制御を行うこともできる。
さらに、図20にあるように、SIR推定値を送信電力制御周期間で平均化する方法として説明したが、別な例として、単位送信電力制御周期における最終スロットで測定されたSIR推定値を用いる方法も有効である。SIR推定値を送信電力制御周期間で平均化する方法は、平均化によりSIR推定値の信頼度が向上するので移動により伝搬環境の変化が激しいとき、あるいは、他移動機からの干渉がバースト的に発生する可能性があるとき有効である。送信電力制御周期間における最終スロットで測定されたSIR推定値を用いる方法は、インナーループで送信電力に反映される時間が短縮されるため、1スロットのSIR推定の信頼度が高いときに有効である。
さらに、上記では、目標SIRと受信データに基づくSIR推定値との差を示すテーブル値(図21)に従ってパターンを設定する例を説明したが、SIR推定精度が低いときには、目標SIRと受信データに基づくSIR推定値の差に乗数α(0<α<1)を掛けた値とすることも有効である。αは実験等で別途決める。
次に、本実施の形態3に関わる処理(1)〜(4)のうち、処理(2)を詳しく説明する。
図22は、送信電力補正に関する無線基地局の構成を示す図である。図22では、下りの送信電力制御に関する構成を示している。拡散部71は、CDMAの拡散コードを用いて送信データをスペクトラム拡散する。電力制御部72は、拡散された送信データの振幅値(または電力値)を設定する。逆拡散・パス合成部73は、移動体通信端末13からの受信拡散データを逆拡散して、パス合成を行う。送信電力補正値生成部74は、逆拡散およびパス合成後の受信データのうち、TPCビットを入力し、また、一度の送信電力増減量(dB)を変更できるステップサイズを元に、送信電力補正値を生成する回路である。ステップサイズは、基地局規模情報に応じて選択される。
次に、図22に係る動作について説明する。
移動体通信端末13から無線基地局が受信した拡散信号(受信データ)は、逆拡散およびパス合成され、TPCビットが送信電力補正値生成部74に送られる。送信電力補正値生成部74において、TPCビットによる送信電力増減指示を10ms分加味し、更に、ステップサイズの情報を元に、各スロットにおける送信電力の値を補正する値を10ms毎に生成し、送信データの電力制御部72に通知する。送信データは、拡散部71において、拡散コードを乗算され、送信拡散信号となって、電力制御部72に送られる。電力制御部72において、送信電力補正値を元に、データの振幅値(または電力値)を設定する。設定の変更は10msおきに行われる。振幅値(または電力値)を設定された送信拡散信号はD/A変換部へ送られる。
一回に変更可能な送信電力の変動量であるステップサイズ、たとえば、1[slot]あたりに増減する変動量[dB]は、基地局規模情報に応じて変更することができる。例えば、ステップサイズを比較的小さい1[dB]であるとすると、移動体通信端末13からの下り送信電力制御指示の周期(上りTPC bitの変更周期)が1スロットであるにも関わらず、基地局が下りの送信電力設定の周期を1フレーム(10ms)とした場合、送信電力制御の性能は著しく劣化してしまうが、ステップサイズが比較的大きい3[dB]であると、家庭内のような狭い空間で移動体通信端末13をユーザが使用する限り、性能が劣化する事がなくなるという効果がある。
図23は、送信電力ステップサイズが小さい場合の送信電力を示す図である。図23では、送信電力ステップサイズを1[dB]とし、送信電力設定の周期を1[slot]としている。
図24は、送信電力ステップサイズが大きい場合の送信電力を示す図である。図24では、送信電力ステップサイズを3[dB]とし、送信電力設定の周期を3[slot]としている。ステップサイズを1[dB]より大きい3[dB]に設定する事によって、送信電力設定の周期を1[slot]より長くしても、送信電力設定の精度の劣化を抑えることができている事がわかる。もしも、ステップサイズが1[dB]のまま、送信電力設定の周期を1[slot]より長い3[slot]にしたら、図23に示すように、6[slot]目で同じ送信電力設定となることは無い。
また、上記では、移動体通信端末から送信されてくる送信電力制御指示周期分の、TPCbit累積値に対応した下り送信電力値について説明したが、時間差があるため累積値と移動機が必要とする送信電力は必ずしも一致しない。このため、送信電力制御指示周期分の、TPCbit累積値に乗数α(0<α<1)を掛けた値とすることも有効である。αは実験等で別途決める。
次に、本実施の形態3に関わる処理(1)〜(4)のうち、処理(3)を詳しく説明する。
無線基地局が生成するTPCビットによる上り送信電力制御の周期は、W-CDMA方式では、1スロット(0.667ms)であり、移動体通信端末と無線基地局との間の無線伝送路の変動に対しできるだけ早く対応しなければならない。よって、図20において、SIR測定を行い、目標SIRと比較して、TPCビットを生成する処理は、優先度の高い制御となる。ところが、家屋内や、エレベータ内部など、閉空間の中で、ほとんど伝送路状態が変化しないような超小型基地局のサービスエリア内では、制御の優先度を下げて、制御遅延があっても許容するようにしても、性能の劣化はほとんど無い。
これにより、例えば、送信電力制御の処理を、DSP(Digital Signal Processor)などのタスク割り込みを利用するような制御デバイスを用いて組み込んだ場合、TPCに関する優先割り込みをなくす事ができる。これは、DSPが割り込みのために処理データを退避メモリに移動させたり、元に戻したりする処理負荷や、多重割り込みを考慮した複雑な変数管理を削減するという効果がある。
次に、本実施の形態3に関わる処理(1)〜(4)のうち、処理(4)を詳しく説明する。
図25は、Δオフセットを示す図である。二つのフレームは、タイミングの異なる二つのユーザチャネルにおいて送信データの無線基地局への無線送出時間をそれぞれ表している。タイミングの差分は、Δオフセットと呼ばれる。
図26は、チャネル個別の送信電力制御を示す図である。図26は、図25のΔオフセットの部分を拡大表示したものである。ユーザチャネル毎に個別に送信電力制御を行う場合、たとえば、ユーザチャネル毎にスロット先頭にて送信電力制御を開始する。下りの送信電力制御は、移動体通信端末13からのTPCビットを元に行い、スロットの先頭で制御を開始し、これを即反映させる。このように、ユーザチャネル毎に送信電力制御を行う場合は、制御開始から送信データに反映するまでの時間を短くでき、高性能に送信電力制御を行うことができる。一方、家庭内や、エレベータ内などをカバーする微小なサービスエリアでは、移動体通信端末がエリア内を高速移動しないために、このような高速制御が無くても性能劣化はしない。
図27は、チャネル一括の送信電力制御を示す図である。各ユーザチャネルにおける送信電力制御の開始タイミングを同じとすることにより、チャネルを一括して送信電力制御する。たとえば、ユーザチャネル#1のスロット先頭における制御タイミングT1を、ユーザチャネル#2にも用いる。これにより、ユーザチャネル#2の制御は、設定から2スロット後に反映されるようになる。ユーザチャネル#2は、設定から反映までの間隔が1スロット分空いてしまうが、微小サービスエリア内で、ユーザが動く事がほとんど無いような場合では、性能が劣化する事が無い。
また、スロットやフレームの先頭位置タイミング情報に基づき、ユーザチャネル#2における制御が始まってから反映までの時間差が把握可能なため、全てのユーザチャネルにおける一括制御タイミングのみを設定するだけで、自動的に次のフレームの先頭位置から送信電力の設定を反映させることができる。
このように、複数のチャネルに共通のタイミング制御を行うことによって、例えば、ユーザチャネル#1の制御を行っている間に、ユーザチャネル#2の制御を開始し、割り込み処理の優先順位を設定するなどの複雑な制御が不要となる。例えば、DSPの送信電力処理に関するタスクの切替え回数が低減する。また、FPGAにおいても、タイミング生成用の回路規模を削減する事ができる。
実施の形態4.
本実施の形態4は、実施の形態1におけるハンドオーバ制御に代わって、チャネルの送信タイミング制御を行うものである。基地局制御装置11の規模識別部23が無線基地局12を超小型基地局12aであると識別した場合、基地局制御装置11の基地局制御部24は、無線基地局12に対してチャネルの送信タイミングに関する制御を行う。たとえば、超小型基地局12aであると識別した場合に、個別チャネルの送信タイミングと共通チャネルの送信タイミングとを同一タイミングに合せる制御を行う。
WCDMA方式を規定する規格書のうち、3GPP TS25.211(3GPP:3rd Generation Partnership Project、TS:Technical Specification)の7章には、物理チャネルのタイミングが規定されている。
図28は、個別チャネルおよび共通チャネルの各タイミングを示す図である。S-CCPCH(Secondary Common Control Physical Channel)は、P-CCPCH(Primary Common Control Physical Channel)に対して、Tk×256chipの時間タイミングが離れており、DPCH(Dedicated Physical Channel)は、Tn×256chipの時間タイミングが離れている。Tk,Tnは、0,1,…,149のいずれかを上位の基地局制御装置11から設定できる。基地局制御装置11が、下位に接続された無線基地局を超小型基地局であると識別した場合に、このTk,Tnを、共に0と設定する。
図29は、タイミング差をゼロとした場合を示す図である。S-CCPCHと、DPCHは、共に、P-CCPCHと同じタイミングとなる。超小型基地局は、前記3種のチャネルを同一のタイミングで処理すれば良いことになる。これにより、超小型基地局は、前記3種のチャネルの制御処理に対して、3種の割込み信号ではなく、1つの割込み信号のみで制御処理できるようになる。
図30は、チャネルタイミングを同一にした場合の処理負荷を示す図である。チャネルを同一タイミングで処理するという事は、図30に示すように、処理負荷が大きくなるタイミングが重なる事を意味している。一番上のチャネルが実際に処理されたときに発生する遅延時間と、上から二番目のチャネルが実際に処理されたときに発生する遅延時間と、一番下のチャネルが実際に処理されたときに発生する遅延時間とを合計した時間が、最大遅延時間となる。最大遅延時間は、チャネル数が多いほど長くなるが、超小型基地局のように、音声チャネルが4つ程度であるならば、その遅延時間は短いものとなる。また、この場合、割込みの回数は1回で済む。
図31は、チャネルタイミングをずらした場合の処理負荷を示す図である。前記3種のチャネルのタイミングを、図28に示したようにずらすと(例えば、処理負荷が最も分散するようにずらすと)、チャネル毎の処理負荷の流れは、図31に示すようになる。図31において、割込み回数は、チャネルの数だけ必要になり、更に、処理負荷大が重ならないようにしたので、実際の処理による遅延は、図30の場合より少なくなる。しかしながら、全体の処理量は、図30の時と比べ、増大する。その理由は次のとおりである。
例えば、一番上のチャネルの割込みがあってから、一番上のチャネルの処理を実行して、次に、上から二番目のチャネルの割込みがあった場合に、一番上のチャネルのDPCHを削除して、タイミングを変更するシーケンスを発行する。一番下のチャネルの割り込みがあった場合も同様で、上から二番目のチャネルのDPCHを削除してタイミングを変更するシーケンスを発行する処理が必要になる。
このように、超小型基地局は、図30のように割込み数を減らすような制御をすることにより、データ処理が簡素化されるので、処理量や、回路規模を削減することができるという効果がある。特に、制御をDSP(Digital Signal Processor)で行う場合は、タイミングが固定化されていると、割り込みが減り、タスクマネージメントが簡易化される。
実施の形態5.
本実施の形態5は、実施の形態1におけるハンドオーバ制御に代わって、チャネルの送信タイミング制御を行うものである。基地局制御装置11の規模識別部23が無線基地局12を超小型基地局12aであると識別した場合、基地局制御装置11の基地局制御部24は、無線基地局12に対して共通チャネルと同一の誤り訂正符号化をさせる制御を行う。
例えば、W-CDMA方式では、基地局制御装置11が、下位に接続された無線基地局を超小型基地局12aであると認識した場合、かつ、その無線基地局が行う共通チャネルの誤り訂正符号化方式が畳み込み符号であった場合、基地局制御装置11は、超小型基地局12aに対して、個別チャネルの誤り訂正符号化方式として、畳み込み符号化方式のみを行うように指定する。ターボ符号化を行うことは指定しない。
図32は、ハンドオーバ時の誤り訂正符号化の制御を示す図である。図32では、移動体通信端末13が大型基地局12cから超小型基地局12aにハンドオーバする場合を図示している。移動体通信端末13は、大型基地局12cのサービスエリア内から、小型基地局12aのサービスエリア内に入りつつある。
次に、本実施の形態に関わる動作を説明する。
移動体通信端末13は、大型基地局12cと通信状態にある。大型基地局12cは、パケットデータを移動体通信端末13に対して送信しており、通信品質を向上させるため畳み込み符号化ではなく、誤り訂正符号化としてTurbo符号化を用いている。移動体通信端末13は、移動しており、大型基地局12cのサービスエリア内から、超小型基地局12aのサービスエリア内に移った場合、基地局制御装置11は、移動体通信端末13との通信相手を大型基地局12cから超小型基地局12aにHHOにより変更する。HHOの際、基地局制御装置11は、超小型基地局12aが超小型基地局である事を識別すると、超小型基地局12aに対して、移動体通信端末13に送信するパケットデータの誤り訂正符号化として畳み込み符号化を用いるように制御する。HHOの後、移動体通信端末13と、超小型基地局12aとの通信は、畳み込み符号化方式においてのみ行われる。
図33は、ハンドオーバの制御シーケンスを示す図である。移動体通信端末13が大型基地局12cのサービスエリア内に入ると、基地局制御装置11は、大型基地局12cに対してチャネル設定を行うため、ステップd1において、チャネル設定要求(ターボ符号化)を大型基地局12cに送信する。要求を受けた大型基地局12cは、ステップd2において、チャネル設定応答(ターボ符号化)を基地局制御装置11に返す。
その後、移動体通信端末13が、大型基地局12cのサービスエリアから超小型基地局12aのサービスエリアに近づくと、基地局制御装置11は、超小型基地局12aに対して、チャネル設定を行うため、ステップd3において、チャネル設定要求(畳み込み符号化)を超小型基地局12aに送信する。その際、共通チャネルと同一の誤り訂正符号化を要求する。すなわち、パケットサービスでは、畳み込み符号化を行うように設定する。要求を受けた超小型基地局12aは、ステップd4において、チャネル設定応答(畳み込み符号化)を基地局制御装置11に返す。
移動体通信端末13が更に超小型基地局12aに近づき、超小型基地局12aのサービスエリア内に入ると、基地局制御装置11は、ステップd5において、大型基地局12cに対して物理チャネル再構成要求を行う。物理チャネル再構成要求は、大型基地局12cを経由し移動体通信端末13にも通知される。移動体通信端末13による超小型基地局12aへのハンドオーバが完了すると、移動体通信端末13から超小型基地局12aを経由して基地局制御装置11に対して、物理チャネル再構成応答が通知される。
このように、超小型基地局12aは、誤り訂正符号化において、畳み込み符号化のみを用いれば良くなるので、超小型基地局12aのチャネル符号化の回路には、Turbo符号化方式の回路を組み込む必要が無くなる。よって、超小型基地局12aの回路規模は削減されるという効果がある。