JP4516702B2 - High toughness low temperature transformation flux cored wire - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフラックス入りワイヤに係り、さらに詳しくはJIS規格SS330、SS400、SM400、SM490などの490MPa級以下の構造用鋼の溶接部の残留応力を低減し疲労強度を改善することを目的とする。すなわち、溶着金属の変態温度を下げ、母材の軟鋼や490MPa級鋼材なみの靭性を得るための高靭性低温変態フラックス入りワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶接部に発生する疲労亀裂は構造物全体の信頼性に重大な影響を与えるため、その疲労特性を向上させる手段は以前より試みられている。疲労亀裂は応力集中、引張の残留応力が存在する溶接部に発生しやすいことが判ってきている。そのため、機械的な方法あるいはTIG溶接により化粧溶接を施して応力集中を減らす方法、またはショットブラストなどによるピーニングを用いて疲労が発生する部位に圧縮残留応力を導入し同時に応力集中を減らす方法などにより疲労強度の改善を行ってきた。
【0003】
しかしながら、これらの方法は構造物製作のコストアップになるため、これらの方法を用いずに疲労強度が改善できる溶接施工法が望まれていた。最近になり、溶接金属の相変態による膨張を利用して残留応力を低減させ、これにより疲労強度を向上させる手法が注目されている。例えば特開平11−138290号公報では、溶接金属のマルテンサイト変態を利用し、該溶接金属が室温においてマルテンサイト変態開始時より膨張している状態とすることにより、溶接金属の引張残留応力を緩和する技術が開示されている。さらには、「溶接学会論文集」第18巻平成12年第1号の141ページから145ページにおいて、太田らはCrおよびNiを重量%にてそれぞれ10%含有する溶接材料を用いて角回し溶接継手を製作すれば、疲労強度が改善するという研究報告もなされている。
【0004】
特にこれら発明および研究報告は、鋼材強度が高くなると鋼材の疲労強度は上昇するが、溶接金属部の疲労強度は高くならず、構造物の強度が高くなると鋼材の強度が疲労強度で支配されている場合には母時の高張力化の利点が得られない、という産業界が抱える問題点を指摘している。このため特に高張力鋼(例えば前記太田らの研究報告では780MPa級鋼材を用いて疲労強度改善を確認している)での疲労強度改善に重点を置いている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記の溶接金属の変態膨張を利用する技術も、必ずしも全ての溶接継手の疲労強度改善に有効であるというわけではない。例えば、特開平11−138290号公報で開示されている技術によると、疲労強度を改善するためには室温での溶接金属がマルテンサイト変態開始時より膨張していなければならない。確かに、この状態が実現すれば、溶接部には膨張による圧縮の残留応力が導入され、溶接金属の引張残留応力が緩和されるため疲労強度改善が期待できる。しかし、室温での溶接金属がマルテンサイト変態開始時より膨張していなければならないという条件は、実際の継手ではほとんど実現不可能である。
【0006】
その理由はきわめて単純である。すなわち、溶接部の温度分布は、アークの集中熱源により、溶接金属およびその近傍は融点またはそれに近い温度まで加熱されるが、それ以外のほとんどの部分は加熱されないため、溶接金属は加熱されていない部分から拘束を受け、たとえ変態膨張しても変態膨張量とほぼ同じ量の圧縮塑性ひずみが導入されてしまう。このため溶接金属の熱収縮が変態に伴う膨張を相殺してしまうためである。すなわち、溶接金属がマルテンサイト変態時より膨張していることは実質的に不可能である。
【0007】
そのため、実際の溶接継手で特開平11−138290号公報が開示している条件を達成することは、非常に特殊な継手に限った場合となり、実用的な観点からは問題が多い。太田ら溶接学会論文集の第18巻平成12年第1号の研究報告も、実用的な観点からはまだ問題がある。この研究報告では、母材として780MPa級鋼材を用いた場合で疲労強度改善を確認している。しかし、実際の構造物では、軟鋼および490MPa級鋼材が使用される場合がほとんどであるが、このような鋼材を用いた溶接継手では太田らの疲労強度向上技術がそのまま適用できないことが判明した。そこで本発明は溶着金属の変態温度を下げ、母材の軟鋼や490MPa級鋼材なみの靭性を得ることにより、490MPa級鋼以下の構造用溶接部の残留応力を低減し疲労強度を改善することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するものであって、フラックス入りワイヤにおいて、フラックス中にワイヤ全重量に対する質量%で、TiO2 :4.0〜6.0%、SiO2 :1.0〜3.0%、Al2 O3 :0.2〜0.9%をスラグ成分として含有し、かつスラグ成分の合計をワイヤ全重量の6.0〜9.0%にすると共に、外皮およびフラックスの少なくとも一方に、ワイヤ全重量に対する質量%で、C:0.01〜0.06%、Si:0.3〜1.8%、Mn:0.7〜2.7%、Cr:15〜17%、Ni:9〜11%を含み、前記フラックスをステンレス鋼外皮内に18〜25%充填し、かつ下記(1)式から求められるFM値が0〜4.0であることを特徴とする高靭性低温変態フラックス入りワイヤである。
FM=Cr×3−Ni×2−C×93−22 (1)
またここにおいて、対象とする被溶接材が490MPa級以下の構造用鋼であることも特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
従来技術における780MPa級鋼材の場合と、本発明における490MPa級以下の鋼材の場合とを比較すると、780MPa級鋼材を溶接するときの方が溶接金属への圧縮応力の導入が容易である。なぜなら、母材強度が高いほど溶接金属の変態膨張に対する拘束反力も大きく、結果的に圧縮弾性歪みも大きくなるため、変態終了後の熱収縮が発生しても圧縮応力状態にとどまっている可能性が大きいからである。一方、軟鋼の場合、低強度であるが故に圧縮弾性歪みの最大値は780MPa級鋼材の1/3程度しかない。このことは、圧縮応力状態から引張応力状態に変えてしまう熱収縮ひずみ量が、780MPa級鋼材は軟鋼の3倍程度までは許されるということを意味する。
【0010】
そのため、溶接金属が変態膨張した後の熱収縮が多少大きくても780MPa級鋼材の場合は、圧縮応力状態のままであるため、軟鋼の場合よりも疲労強度を改善することが容易である。このことは、逆に軟鋼などの低強度鋼材を用いた溶接継手の疲労強度を改善させることは、780MPa級鋼材の場合よりはるかに難しい技術であることを意味する。本発明者らはこのようなことから、軟鋼および490MPa級鋼材溶接部の残留応力を低減し疲労強度を改善する溶着金属成分について種々検討した結果、本発明のフラックス入りワイヤを完成させた。
【0011】
本発明のフラックス入りワイヤとは図1(a)、(b)、(c)および(d)に示すような断面形状で、パイプまたは帯鋼から成る外皮1にフラックス2を充填したものである。図2(a)のような継目のないもの、図2(b)ないし(c)のような継目3があるものいずれも含まれる。なお、本発明のワイヤはCrおよびNi含有量が大なので、充填率の制限のためこれらの全量をフラックスから供給するのは困難である。したがって、外皮はステンレス鋼を使用する。
次に本発明のベースとも言える充填フラックスについて、成分限定理由を述べる。なお、以下において%は特に説明がない限りはワイヤ全重量に対する質量%を示す。
【0012】
TiO2 は緻密な剥離性の良いスラグを形成し、アークの安定性をもたらすが、4.0%未満ではその効果が発揮できず、6.0%を超えるとスラグの流動性が増すと共に、アークの吹付けが強く広がりがなくなるためビード形状が不良となる。したがってTiO2 は4.0〜6.0%とする。原材料としてはルチル、チタンスラグ、イルミナイト、さらにはチタン酸カリ、チタン酸ソーダ等のチタン酸塩等がこれら単独あるいは複合で用いられる。
【0013】
SiO2 は適度の粘性と共に被包性の良いスラグを形成するのに必要な成分であるが、1.0%未満ではその効果が発揮できずスラグ被包性は劣化する。一方、3.0%を超えるとスラグの融点を低下させ、立向および上向溶接において溶融金属の垂れが生じビード形成が困難となる。したがってSiO2 は1.0〜3.0%とする。なお、SiO2 の原材料としては珪砂、珪石の他、珪灰石、ジルコンサンド、カリ長石等の他成分の原料の副成分も利用できる。
【0014】
Al2 O3 はSiO2 同様に適度の粘性と共に被包性の良いスラグを形成するの必要な成分であり、さらにスラグの融点を上げることにより、スラグの凝固を早め溶融金属の垂れを防止するのに有効である。0.2%未満ではその効果が不十分であり、逆に0.9%を超えた場合スラグが硬くなり剥離性が劣化し、スパッタも増加する。したがってAl2 O3 は0.2〜0.9%とする。原材料としてはアルミナ、カリ長石等を用いる。
【0015】
フラックス中のスラグ成分が合計で6.0%未満では、スラグの被包性が不十分となり、立向および上向溶接において溶融金属の保持が十分出来ずビード形成が困難となる。一方、9.0%を超えるとスパッタが増加し、スラグインクルージョンが発生しやすくなる。したがってフラックス中のスラグ成分の合計はワイヤ全重量の6.0〜9.0%とする。なお本発明においてスラグ成分とは、前記TiO2 、SiO2 、Al2 O3 を含む非金属成分を意味する。この他にスラグ成分としてスラグの被包性、剥離性、アーク安定性向上のために、ZrO2 、Bi2 O3 、FeO等の酸化物を添加することができる。
【0016】
以下の成分は外皮およびフラックスの少なくとも一方に含有させる。なお、以下の説明における%は前記のフラックス成分と同様にワイヤ全重量に対する重量%を示す。
【0017】
Cは鉄に添加することによりMs点(マルテンサイト変態開始)温度を下げる働きをするため0.02%以上必要である。しかし、過度の添加は溶接割れや靭性劣化の問題を引き起こすため0.06%を上限とした。
【0018】
Siは溶接金属における脱酸剤として酸素量を低減し靭性を向上させると共に、強度も向上させる。0.3%未満ではその効果が不十分である一方、1.8%を超えると溶接金属への歩留りが過剰になり低温靭性を劣化させる。したがってSiは0.3〜1.8%とした。
【0019】
Mnは強度を上げる元素として本発明の変態膨張時の降伏点確保のため必要で、また焼入性を増加させる効果もある。このために0.7%以上とするが、一方、過度の添加は靭性を劣化させるため上限を2.7%とした。
【0020】
Crはフェライトフォーマーであるが、溶接入熱が低く冷速が大きい溶接部はフェライトとならずにマルテンサイトとなる。したがって、Cr添加はマルテンサイト変態による焼入性の増加とMs点温度の低下の効果がある。これにより変態膨張を利用し残留応力を低減するには15%以上必要であり、一方、17%を越えてもその効果は変わらないため、Crは15〜17%とする。
【0021】
Niはオーステナイトフォーマーであり溶接金属の靭性改善に効果があり、このためには9%以上必要である。一方、11%を越えるとCrの添加により下げられたMs点温度がさらに下がると共に、Mf点(マルテンサイト変態終了)温度が常温以下となり、変態途中の段階で室温に達してしまうので残留応力の低減がなくなる。したがって、Niは9〜11%とする。
【0022】
さらに本発明では、残留応力を低減し疲労強度を改善する溶着金属成分としてフェライト、オーステナイト、マルテンサイトを適正な比率で制御するため、下記(1)式から求められるFM値を0〜0.4とした。
FM=Cr×3−Ni×2−C×93−22 (1)
【0023】
ステンレス鋼外皮へのフラックスの充填率が18%未満では外皮の肉厚が厚くなり、溶滴が肥大化しスパッタが増加し、25%を超えると逆に外皮の肉厚が薄くなり伸線加工中に断線が発生しやすくなる。したがってステンレス鋼外皮へのフラックスの充填は18〜25%とする。
【0024】
【実施例】
表1に示す外皮および表2、表3に示す充填フラックスからなる図1(a)に示す断面形状の1.2mm径のフラックス入りワイヤを製造した。図2(a)の平面図、(b)の側面図に示す板厚10mmのJIS Z3101 SS490の一般構造用圧延鋼材へシールドガスCO2 ガス、流量20l/minで、180A、26Vの条件にてJIS Z3313 YFW−C50DRタイプの1.2mm径のフラックス入りワイヤで下向でビードオンプレート溶接を行った。このビード4の両側に平行して、上記の試験用フラックス入りワイヤを使用して同条件で下向溶接を行った。図2において5は試験用ワイヤによる溶接ビードである。溶接後の試験板はJIS Z3103「アーク溶接継手の片振り引張疲れ試験方法」に準拠し、150MPaの応力で亀裂が発生するまでの繰返し数を測定して評価し、1.0×106 以上を良好とした。その結果は表4、表5に示す通りであって、溶接作業性のアーク安定性、スパッタ発生、スラグ剥離およびビード外観の評価は、○:良好、×:不良とした。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
比較例のSiO2 およびスラグ成分合計の多いワイヤNo.18は、スパッタがやや多く、スラグの被包性が劣り、ビード形状も不良であった。一方、スラグ成分合計の少ないワイヤNo.19は、スラグの被包が不十分でビード形状も不良であった。
【0031】
Al2 O3 の多いワイヤNo.20は、スパッタが多く、スラグ剥離も劣った。また、TiO2 の多いワイヤNo.21は、アーク状態が強くやや不良で、スラグ被包性が劣り、ビード形状も不良であった。
【0032】
Al2 O3 のないワイヤNo.22は、スラグの粘性および被包性が劣り、ビード形状も不良であった。またSiO2 の少ないワイヤNo.23は、スラグの被包性が劣り、ビード形状も不良であった。
【0033】
TiO2 が少なくスラグ成分合計の少ないワイヤNo.24は、アーク状態がやや不良で、スパッタが多く、スラグ剥離が劣った。一方、スラグ成分合計が多いワイヤNo.25は、スパッタが多く発生した。
【0034】
また、Mnの少ないワイヤNo.25、Niの少ないワイヤNo.26、Cの多いワイヤNo.27、Siの少ないワイヤNo.28、Mnの多いワイヤNo.29、Siの多いワイヤNo.30、Crが少なくFM値の低いワイヤNo.31、Crが多くFM値の多いワイヤNo.32、Niが多くFM値の低いワイヤNo.33、Cの少ないワイヤNo.34およびFM値の高いワイヤNo.35は、片振り引張疲れ試験の結果150MPaの応力で、繰返し数が1.0×106 未満でHAZにき裂が発生し不良であった。
【0035】
これらに対し、TiO2 、SiO2 、Al2 O3 、C、Si、Mn、CrおよびNiが適量であって、FM値が適正、フラックス中のスラグ成分の合計、充填率の適正な本発明ワイヤNo.1〜17は、アーク状態、スパッタ、スラグ、ビード外観等の溶接作業性が良好であった。また片振り引張疲れ試験の結果も150MPaの応力で、繰返し数が1.0×106 以上で良好であった。
【0036】
【発明の効果】
以上のように本発明は、溶着金属の変態温度を下げ、490MPa級以下の構造用鋼の溶接部の残留応力を低減し疲労強度を改善したものであって、溶接部の品質向上に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は各種フラックス入りワイヤの断面形状を示す図
【図2】試験板形状を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図
【符号の説明】
1 外皮
2 充填フラックス
3 継目
4 YFW−C50DRワイヤによる溶接ビード
5 試験用ワイヤによる溶接ビード[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a flux-cored wire, and more specifically, an object of the present invention is to reduce residual stress in a welded portion of a structural steel of 490 MPa class or less such as JIS standards SS330, SS400, SM400, SM490 and improve fatigue strength. That is, the present invention relates to a high-toughness low-temperature transformation flux-cored wire for lowering the transformation temperature of the weld metal and obtaining toughness similar to that of mild steel or 490 MPa class steel.
[0002]
[Prior art]
Fatigue cracks that occur in welds have a significant effect on the reliability of the entire structure. Therefore, means for improving the fatigue characteristics have been tried for some time. It has been found that fatigue cracks are likely to occur in welds where stress concentration and tensile residual stress exist. Therefore, it is possible to reduce the stress concentration by applying mechanical welding or TIG welding to reduce stress concentration, or by introducing compressive residual stress to the site where fatigue occurs using peening such as shot blasting and simultaneously reducing stress concentration. The fatigue strength has been improved.
[0003]
However, since these methods increase the cost of manufacturing the structure, a welding method that can improve the fatigue strength without using these methods has been desired. Recently, a technique for reducing residual stress by utilizing expansion due to phase transformation of a weld metal and thereby improving fatigue strength has attracted attention. For example, in Japanese Patent Application Laid-Open No. 11-138290, the tensile residual stress of the weld metal is relieved by utilizing the martensitic transformation of the weld metal so that the weld metal is expanded at the room temperature from the start of the martensite transformation. Techniques to do this are disclosed. Furthermore, from page 141 to page 145 of “Journal of the Japan Welding Society” Vol. 18, No. 1, 2000, Ohta et al. Used a welding material containing 10% by weight of Cr and Ni, respectively. Research reports have shown that fatigue strength improves if joints are manufactured.
[0004]
In particular, these inventions and research reports show that the fatigue strength of steel materials increases as the strength of steel materials increases, but the fatigue strength of weld metal parts does not increase, and the strength of steel materials is governed by fatigue strength when the strength of structures increases. In this case, he points out the problem of the industry that the advantage of high tension cannot be obtained. For this reason, emphasis is placed on improving fatigue strength particularly in high-strength steel (for example, in the research report by Ota et al., Improvement of fatigue strength is confirmed using a 780 MPa class steel material).
[0005]
[Problems to be solved by the invention]
The technique using the transformation expansion of the weld metal is not necessarily effective in improving the fatigue strength of all welded joints. For example, according to the technique disclosed in Japanese Patent Application Laid-Open No. 11-138290, in order to improve fatigue strength, the weld metal at room temperature must expand from the start of martensitic transformation. Certainly, if this state is realized, a compressive residual stress due to expansion is introduced into the welded portion, and the tensile residual stress of the weld metal is relaxed, so that an improvement in fatigue strength can be expected. However, the condition that the weld metal at room temperature must expand from the beginning of the martensitic transformation is almost impossible to achieve with an actual joint.
[0006]
The reason is very simple. That is, the temperature distribution of the welded portion is heated by the concentrated heat source of the arc to the weld metal and its vicinity to the melting point or a temperature close thereto, but most of the other portions are not heated, so the weld metal is not heated. Restrained by the portion, even if transformation expansion occurs, a compression plastic strain of almost the same amount as the transformation expansion amount is introduced. For this reason, the thermal shrinkage of the weld metal cancels the expansion accompanying the transformation. That is, it is virtually impossible for the weld metal to expand from the martensitic transformation.
[0007]
Therefore, achieving the conditions disclosed in Japanese Patent Application Laid-Open No. 11-138290 with an actual welded joint is limited to a very special joint, and there are many problems from a practical viewpoint. The research report of Vol. 18, 2000, No. 1 of the Ota et al. In this research report, fatigue strength improvement is confirmed when a 780 MPa class steel material is used as a base material. However, in most actual structures, mild steel and 490 MPa class steel materials are used, but it has been found that the fatigue strength improvement technology of Ota et al. Cannot be applied as it is to welded joints using such steel materials. Therefore, the present invention reduces the residual stress of structural welds below 490 MPa class steel and improves fatigue strength by lowering the transformation temperature of the weld metal and obtaining toughness similar to that of mild steel or 490 MPa class steel. Let it be an issue.
[0008]
[Means for Solving the Problems]
The present invention has been made to solve the above problems, in the flux-cored wire, in percentage by weight relative to the total wire weight in the flux, TiO 2: 4.0~6.0%, SiO 2: 1.0~3. 0%, Al 2 O 3: a from 0.2 to 0.9 percent contained as slag component, and with the sum of the slag component to 6.0 to 9.0% of the total wire weight, the skin and the flux at least On the other hand, in terms of mass% with respect to the total weight of the wire, C: 0.01 to 0.06%, Si: 0.3 to 1.8%, Mn: 0.7 to 2.7%, Cr: 15 to 17% Ni: 9 to 11%, the above-mentioned flux is filled in a stainless steel shell 18 to 25%, and the FM value obtained from the following formula (1) is 0 to 4.0. It is a tough low temperature transformation flux cored wire.
FM = Cr × 3-Ni × 2-C × 93-22 (1)
In addition, here, the material to be welded is a structural steel of 490 MPa class or less.
[0009]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
When comparing the case of the conventional 780 MPa class steel material and the case of the steel material of the 490 MPa class or less in the present invention, it is easier to introduce the compressive stress to the weld metal when welding the 780 MPa class steel material. Because the higher the base metal strength, the greater the reaction force against the transformation expansion of the weld metal, and the greater the compressive elastic strain, the possibility of staying in the compressive stress state even if thermal shrinkage occurs after the end of transformation. Because is big. On the other hand, in the case of mild steel, because of its low strength, the maximum value of compressive elastic strain is only about 1/3 of a 780 MPa class steel material. This means that the amount of heat shrinkage strain that changes from a compressive stress state to a tensile stress state is allowed up to about three times that of a 780 MPa class steel material compared to mild steel.
[0010]
Therefore, even if the thermal contraction after the transformation expansion of the weld metal is somewhat large, in the case of the 780 MPa class steel material, it remains in a compressive stress state, so that it is easier to improve the fatigue strength than in the case of mild steel. This means that, on the contrary, improving the fatigue strength of a welded joint using a low-strength steel material such as mild steel is a much more difficult technique than in the case of a 780 MPa class steel material. In view of the above, the present inventors have conducted various studies on the weld metal components that reduce the residual stress and improve the fatigue strength of the welds of mild steel and 490 MPa class steel, and as a result, completed the flux-cored wire of the present invention.
[0011]
The flux-cored wire of the present invention has a cross-sectional shape as shown in FIGS. 1 (a), (b), (c) and (d), and is filled with a
Next, the reason for limiting the components of the filling flux that can be said to be the base of the present invention will be described. In the following, “%” means “% by mass” based on the total weight of the wire unless otherwise specified.
[0012]
TiO 2 forms a dense slag with good releasability and brings about arc stability. However, if it is less than 4.0%, the effect cannot be exhibited, and if it exceeds 6.0%, the slag fluidity increases. The bead shape is poor because the arc is strongly blown and no longer spreads. Accordingly, the TiO 2 content is 4.0 to 6.0%. As raw materials, rutile, titanium slag, illuminite, and titanates such as potassium titanate and sodium titanate are used alone or in combination.
[0013]
SiO 2 is a component necessary for forming a slag having an appropriate viscosity and a good encapsulating property, but if it is less than 1.0%, the effect cannot be exhibited and the slag encapsulating property is deteriorated. On the other hand, if it exceeds 3.0%, the melting point of the slag is lowered, and molten metal sags during vertical and upward welding, making it difficult to form beads. Therefore, SiO 2 is 1.0 to 3.0%. In addition, as a raw material of SiO 2 , subcomponents of other raw materials such as wollastonite, zircon sand, potash feldspar, etc. can be used in addition to silica sand and silica stone.
[0014]
Al 2 O 3 is a necessary component for forming a slag having an appropriate viscosity and good encapsulating property like SiO 2 , and by further increasing the melting point of the slag, the solidification of the slag is accelerated and the dripping of the molten metal is prevented. It is effective. If the content is less than 0.2%, the effect is insufficient. Conversely, if the content exceeds 0.9%, the slag becomes hard, the peelability is deteriorated, and the spatter increases. Therefore, Al 2 O 3 is 0.2 to 0.9%. Alumina, potassium feldspar, etc. are used as raw materials.
[0015]
If the total amount of slag components in the flux is less than 6.0%, the encapsulation of the slag is insufficient, and the molten metal cannot be sufficiently retained in vertical and upward welding, making it difficult to form beads. On the other hand, if it exceeds 9.0%, spatter increases and slag inclusion tends to occur. Accordingly, the total amount of slag components in the flux is 6.0 to 9.0% of the total weight of the wire. In the present invention, the slag component means a non-metallic component including the TiO 2 , SiO 2 , and Al 2 O 3 . In addition, oxides such as ZrO 2 , Bi 2 O 3 , and FeO can be added as slag components in order to improve slag encapsulation, peelability, and arc stability.
[0016]
The following components are contained in at least one of the outer skin and the flux. In addition,% in the following description shows weight% with respect to the total weight of a wire similarly to the said flux component.
[0017]
C adds 0.02% or more because it acts to lower the Ms point (start of martensite transformation) temperature by adding to iron. However, excessive addition causes problems of weld cracking and toughness deterioration, so 0.06% was made the upper limit.
[0018]
Si as a deoxidizer in the weld metal reduces the amount of oxygen and improves toughness, and also improves the strength. If it is less than 0.3%, the effect is insufficient. On the other hand, if it exceeds 1.8%, the yield to the weld metal becomes excessive and the low temperature toughness is deteriorated. Therefore, Si was 0.3 to 1.8%.
[0019]
Mn is an element for increasing the strength and is necessary for securing the yield point at the time of transformation expansion of the present invention, and also has the effect of increasing the hardenability. For this reason, it is 0.7% or more. On the other hand, excessive addition deteriorates toughness, so the upper limit was made 2.7%.
[0020]
Cr is a ferrite former, but a weld with a low welding heat input and a high cold speed does not become ferrite but martensite. Therefore, the addition of Cr has the effect of increasing the hardenability due to martensitic transformation and lowering the Ms point temperature. Thus, 15% or more is required to reduce the residual stress by using transformation expansion. On the other hand, even if it exceeds 17%, the effect does not change, so Cr is made 15 to 17%.
[0021]
Ni is an austenite former and is effective in improving the toughness of the weld metal. For this purpose, 9% or more is necessary. On the other hand, if it exceeds 11%, the Ms point temperature lowered by the addition of Cr is further lowered, and the Mf point (end of martensitic transformation) temperature is lower than room temperature. There is no reduction. Therefore, Ni is 9 to 11%.
[0022]
Furthermore, in this invention, in order to control a ferrite, austenite, and a martensite as a welding metal component which reduces a residual stress and improves fatigue strength by an appropriate ratio, FM value calculated | required from following (1) Formula is 0-0.4. It was.
FM = Cr × 3-Ni × 2-C × 93-22 (1)
[0023]
If the filling rate of the flux in the stainless steel skin is less than 18%, the thickness of the skin becomes thick, the droplets enlarge and spatter increases, and if it exceeds 25%, the thickness of the skin becomes thin and the wire is being drawn. Disconnection is likely to occur. Therefore, the filling of the stainless steel shell with the flux is 18 to 25%.
[0024]
【Example】
A 1.2 mm-diameter flux cored wire having the cross-sectional shape shown in FIG. 1A made of the outer shell shown in Table 1 and the filled flux shown in Tables 2 and 3 was manufactured. A rolled steel for general structure of JIS Z3101 SS490 with a plate thickness of 10 mm shown in the plan view of FIG. 2A and the side view of FIG. 2B is shield gas CO 2 gas at a flow rate of 20 l / min at 180 A and 26 V. Bead-on-plate welding was performed downward with a 1.2 mm diameter flux-cored wire of JIS Z3313 YFW-C50DR type. Parallel to both sides of the bead 4, downward welding was performed under the same conditions using the above-described flux-cored wire for testing. In FIG. 2, 5 is a weld bead using a test wire. The test plate after welding is evaluated in accordance with JIS Z3103 “One-way swing fatigue test method for arc welded joints” by measuring the number of repetitions until a crack is generated at a stress of 150 MPa, 1.0 × 10 6 or more Was good. The results are as shown in Tables 4 and 5. The arc stability of welding workability, the occurrence of spatter, the slag peeling and the bead appearance were evaluated as ◯: good and x: poor.
[0025]
[Table 1]
[0026]
[Table 2]
[0027]
[Table 3]
[0028]
[Table 4]
[0029]
[Table 5]
[0030]
Wire No. with a large total of SiO 2 and slag components in the comparative example No. 18 had slightly more spatter, inferior slag encapsulation, and a poor bead shape. On the other hand, the wire No. In No. 19, slag encapsulation was insufficient and the bead shape was poor.
[0031]
Wire No. with much Al 2 O 3 No. 20 had many spatters and was inferior in slag peeling. Also, many of TiO 2 wire No. In No. 21, the arc state was strong and somewhat poor, the slag encapsulation was inferior, and the bead shape was also poor.
[0032]
Wire No. without Al 2 O 3 No. 22 was inferior in the viscosity and encapsulation of the slag and had a poor bead shape. The low SiO 2 wire No. No. 23 was inferior in slag encapsulation, and the bead shape was also poor.
[0033]
Wire No. with less TiO 2 and less total slag components. No. 24 had a slightly poor arc state, a lot of spatter, and inferior slag peeling. On the other hand, the wire No. In No. 25, many spatters occurred.
[0034]
In addition, the wire No. 25, wire no. 26, wire No. with many C 27, wire no. 28, Wire No. 29, Si No. 30, wire No. with low Cr and low FM value. 31, wire No. having a large amount of Cr and a large FM value. 32, wire No. with a lot of Ni and a low FM value. 33, wire no. 34 and wire No. with high FM value. No. 35 was a stress of 150 MPa as a result of a single swing tensile fatigue test, and the number of repetitions was less than 1.0 × 10 6 , and cracks occurred in the HAZ, which was defective.
[0035]
In contrast, TiO 2 , SiO 2 , Al 2 O 3 , C, Si, Mn, Cr, and Ni are appropriate amounts, the FM value is appropriate, the sum of the slag components in the flux, and the filling rate are appropriate. Wire No. In Nos. 1 to 17, welding workability such as arc state, spatter, slag, and bead appearance was good. The results of the single-sided tensile fatigue test were also good with a stress of 150 MPa and a repetition number of 1.0 × 10 6 or more.
[0036]
【The invention's effect】
As described above, the present invention lowers the transformation temperature of the weld metal, reduces the residual stress in the welded portion of structural steel of 490 MPa class or less, and improves the fatigue strength, and greatly contributes to improving the quality of the welded portion. To do.
[Brief description of the drawings]
1A to 1D are diagrams showing cross-sectional shapes of various flux-cored wires. FIG. 2 is a diagram showing the shape of a test plate, FIG. 1A is a plan view, and FIG. 1B is a side view. Explanation】
DESCRIPTION OF
Claims (1)
TiO2:4.0〜6.0%、
SiO2:1.0〜3.0%、
Al2O3:0.2〜0.9%
をスラグ成分として含有し、かつスラグ成分の合計をワイヤ全重量の6.0〜9.0%にすると共に、外皮およびフラックスの少なくとも一方に、ワイヤ全重量に対する質量%で、
C :0.01〜0.06%、
Si:0.3〜1.8%、
Mn:0.7〜2.7%、
Cr:15〜17%、
Ni:9〜11%
を含み、前記フラックスをステンレス鋼外皮内に18〜25%充填し、かつ下記(1)式から求められるFM値が0〜4.0であり、対象とする被溶接材が490MPa級以下の構造用鋼であることを特徴とする高靭性低温変態フラックス入りワイヤ。
FM=Cr×3−Ni×2−C×93−22 (1)In flux-cored wire, mass% of the total wire weight in the flux,
TiO 2 : 4.0 to 6.0%,
SiO 2 : 1.0 to 3.0%
Al 2 O 3 : 0.2 to 0.9%
As a slag component, and the total of the slag components is 6.0 to 9.0% of the total weight of the wire, and at least one of the outer sheath and the flux is in mass% with respect to the total weight of the wire,
C: 0.01 to 0.06%,
Si: 0.3-1.8%
Mn: 0.7 to 2.7%,
Cr: 15-17%,
Ni: 9-11%
In which the flux is filled in a stainless steel outer shell by 18 to 25%, the FM value obtained from the following formula (1) is 0 to 4.0, and the material to be welded is a structure of 490 MPa class or less High toughness low temperature transformation flux-cored wire characterized by being steel for use .
FM = Cr × 3-Ni × 2-C × 93-22 (1)
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