JP4502731B2 - デンプン合成関連酵素等の機能解析法 - Google Patents

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本発明は、デンプン合成関連酵素等の機能解析法に関する。本発明は、特に限定されるものではないが、とりわけデンプン合成機構の解析手法として有用であり、デンプン合成に関与する各種酵素・アイソザイムの機能解析に利用することができる。
近年のゲノム研究の結果、イネ等の高等植物のデンプン合成には、たくさんの酵素・アイソザイムが関連していることが明らかになってきている。(たとえば、下記の非特許文献1・2参照。)したがって、デンプン合成のメカニズムの解明には、各アイソザイムの機能解明およびそれら同士の相互関係の解明が不可欠である。
デンプン合成に関連する各アイソザイムの機能を知るには、変異体を用いた解析が最も有効な方法であるが、それに加えて、各アイソザイムの生化学的な機能解析も不可欠である。後者の各アイソザイムの機能解析には、植物体からアイソザイムを、あるいは、大腸菌で発現させた酵素を完全精製し、基質と反応させて生産されたポリグルカンの構造を解析する方法が常套手段であるが、これには相当の手間と時間がかかるという問題があった。
Nakamura Y (2002) Plant Cell Physiol 43: 718-725 James et al. (2003) Current opinion in plant Biology 6: 215-222
上記のように、デンプン合成に関連する各アイソザイムの機能解析において、反応によって得られるポリグルカンの構造を解析する従来の手法は相当の手間と時間がかかるものであった。
本発明は、上記問題に着目してなされたものであり、その目的は、デンプン合成関連酵素の機能解析を従来方法よりも非常に簡便かつ短時間で行うことができる新たな解析手法を提供することにある。
また、本発明は、デンプン合成関連酵素に限らず、デンプン分解酵素、あるいは、動植物・バクテリア由来の糖鎖形成に関与する酵素、さらに他の重合反応、ポリマー合成に関与する酵素の機能解析においても利用可能な新たな解析手法を提供することをも、その目的とするものである。
本発明者は、上記の課題に鑑み鋭意研究を進めた結果、デンプン合成に関連するアイソザイムの酵素活性解析に使用されているNative−PAGE/活性染色法で検出されるバンドを含むゲルを切り出し、このゲル内に合成されたポリグルカンの鎖長構造をキャピラリー電気泳動法で決定することにより、有効に反応生成物の鎖長構造を解析できること等を見出し、具体的に、スターチシンターゼSSIを解析対象の酵素とし、反応開始のプライマーにカキグリコーゲン、ウサギグリコーゲン、ジャガイモアミロペクチンを使用した各実施例において、本発明の解析方法の有効性を確認し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、産業上有用な下記A)〜G)の発明を含むものである。
A) 非変性の酵素を含む試料をゲル電気泳動後、ゲル内にて酵素反応させ、得られた反応生成物を含むゲル領域を切り出し、このゲル領域内の反応生成物の構造解析を行うことにより、当該酵素の機能を解析する方法。
B) ゲル電気泳動が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動である、上記A)記載の酵素の機能解析法。
C) ゲル内にて酵素反応後、反応生成物を染色により可視化し、その後、反応生成物を含むゲル領域を切り出すことを特徴とする、上記A)又はB)記載の酵素の機能解析法。
D) 解析対象の酵素が、植物由来の酵素である、上記A)〜C)のいずれかに記載の酵素の機能解析法。
E) 解析対象の酵素が、デンプン合成関連酵素又はデンプン分解酵素である、上記D)記載の酵素の機能解析法。
F) 解析対象の酵素が、デンプン合成関連酵素又はデンプン分解酵素であり、反応生成物の構造解析が、ポリグルカンの鎖長分布解析である、上記E)記載の酵素の機能解析法。
G) キャピラリー電気泳動により鎖長分布解析を行うことを特徴とする、上記F)記載の酵素の機能解析法。
本発明は、酵素をゲル電気泳動後、酵素反応によってゲル内で生産された反応生成物を含むゲル領域を切り出し、このゲル領域に含まれるポリグルカン等の反応生成物を構造解析することで当該酵素の機能を解析するという簡便な手法であり、本発明の解析方法によれば、デンプン合成関連酵素等の機能解析を従来方法よりも非常に簡便かつ短時間で行うことができる。
また、ゲルに含ませる基質(プライマー)や反応液、反応時間を変えることで、酵素の基質特異性や反応特性、ポリグルカン等の反応生成物の伸長過程を観察することができ、様々な条件において酵素反応がどのように変化するかを容易に解析することができる。
さらに、本発明をデンプン合成関連酵素の機能解析に利用する場合には、スターチシンターゼに限らず、枝作り酵素や枝切り酵素などの機能解析にも利用可能であり、本発明は、デンプン生合成のメカニズム解明において非常に有効な解析手法を提供するものである。
以下、本発明の具体的態様、技術的範囲等について詳しく説明する。
本発明は、前述のように、非変性の酵素を含む試料をゲル電気泳動後、ゲル内にて酵素反応させ、得られた反応生成物を含むゲル領域を切り出し、このゲル領域内の反応生成物の構造解析を行うことにより、当該酵素の機能を解析する方法である。
たとえば、デンプン合成関連酵素であるスターチシンターゼの機能解析に本発明を適用する場合、(1)解析対象の酵素を含む試料の調製、(2)ゲル電気泳動、(3)酵素反応、(4)反応生成物であるポリグルカンの染色、(5)染色されたバンドを含むゲル領域の切り出し、(6)切り出したゲルに含まれるポリグルカンの構造解析、の6つのステップに分けることができる。
上記(1)のステップにおいて、1つの試料には、複数種類の酵素・アイソザイムが含まれていてもよい。後工程のゲル電気泳動が各種アイソザイムを分離し、アイソザイム精製の役割をもつため、事前に精製する必要はないからである。また、ゲル電気泳動後、ゲル内にて酵素反応を行うため、酵素活性を失わせるような変性処理を酵素に対して行わないようにする。
上記(2)のステップにおいて、ゲル電気泳動は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって行うことができる。後工程の酵素反応のため、反応開始に必要なプライマーとして、グリコーゲンやアミロペクチンを溶かし込んでゲルを調製するとよい。その他、電気泳動時の温度、泳動時間、電圧、バッファーの組成など、電気泳動の各条件は目的に応じて適切な条件に設定すればよい。
上記(3)のステップにおいて、酵素反応は、基質であるADPグルコースを加えて行う。反応温度は、酵素反応が進む限りにおいて特に限定されるものではないが、後述の実施例においては、30℃に設定して行った。反応時間は、目的に応じて任意に設定すればよく、たとえば反応時間を様々に変更することで、後述の実施例に示すように、ポリグルカンの伸長過程を観察することができる。
上記(4)のステップにおいて、酵素反応により合成されたポリグルカンは、たとえばヨードヨードカリ液(1%KI/0.1%I2)で染色することができ、ゲルにおいてバンド状に茶色く染色される(図1参照)。同図に示すように、ゲル電気泳動によって分離された各アイソザイム(SSI・SSIIIa)の位置において、合成されたポリグルカンがバンド状に濃く染色される。
なお、上記(1)〜(4)のステップは、公知のNative−PAGE/SS活性染色法と同様に行うことができ(たとえば、Nishi et al. (2001) Plant Physiol. 127:459-472、特開2003−79260号公報参照)、各ステップの条件などは公知の方法にしたがって適宜変更可能である。
本発明においては、上記(5)・(6)のステップにおいて、染色されたバンドを含むゲル領域を切り出し、このゲル領域に含まれるポリグルカンの構造解析を行う。すなわち、まず上記(5)のステップにおいて、バンド状に染色されたポリグルカンを含むゲル領域をカッターナイフ等で切り出す。このとき、比較対照のため、試料を電気泳動していないゲル領域(つまり、ポリグルカンとして、予めゲルに溶かし込んだプライマーしか存在しない領域。たとえば図1の四角枠で囲まれた領域G)をあわせて切り出すとよい。
そして、上記(6)のステップにおいて、切り出したゲルに含まれるポリグルカンの構造解析を行う。構造解析として鎖長分布解析を行う場合には、たとえば、(6a)イソアミラーゼなどを用いてポリグルカンのα−1,6結合を切断し、(6b)切断された各鎖をAPTSなどで蛍光標識し、その後、(6c)キャピラリー電気泳動により各鎖長の蛍光を検出する方法を採ることができる。
本発明のこのような解析手法はこれまで例がなく、そこでまず、本解析法によってゲルに含まれるポリグルカンの鎖長を正確に決定できるかどうかを確認する実験を行った。その結果、図2に示すように、粉末のカキグリコーゲンの鎖長分布と、ゲルから抽出したカキグリコーゲンの鎖長分布とでほぼ同一のパターンが得られたことから、ゲルからポリグルカンを抽出して鎖長分布を決定することは技術的に可能であることが示された。(実験の詳細、および他の実験結果については後述の実施例参照。)
なお、鎖長分布解析は、切り出したゲルからポリグルカンを抽出する点を除いて、公知の方法(たとえば、O’Shea and Morell (1996) Electrophoresis, 17, 681-688、およびFujita et al. (2001) Plant Science 160: 595-602参照。)と同様に行うことができる。また、キャピラリー電気泳動は市販の装置を使用して行うことができ、各泳動条件などは公知の方法にしたがって適切な値に設定すればよい。
以上のように、本発明をデンプン合成関連酵素の機能解析に適用する場合、Native−PAGE/活性染色法(activity staining)で検出されるバンドを含むゲルを切り出し、このゲル内に合成されたポリグルカンの鎖長構造をキャピラリー電気泳動法で決定するといった簡便な手法で、各アイソザイムの機能解析を有効に行うことができる。実際、後述の実施例に示すように、イネのスターチシンターゼ(デンプン合成酵素)のアイソザイムSSI・SSIIIaを解析対象の酵素とし、プライマーにカキグリコーゲン、ウサギグリコーゲン、ジャガイモアミロペクチンを使用した各実施例において、本発明の解析方法の有効性が確認された。同様の方法により、他のデンプン合成関連酵素、即ち、枝作り酵素、枝切り酵素などの機能解析を行うことが可能である。
また、デンプン合成関連酵素に限らず、広く動植物・バクテリア由来の糖鎖形成に関与する酵素について、同様にその酵素反応によって得られる糖鎖を分析することによって当該酵素の機能解析を行うことができ、さらに他の重合反応、ポリマー合成に関与する酵素についても、同様にその酵素反応によって得られるポリマーを分析することによって当該酵素の機能解析を行うことができると考えられる。
なお、Native−PAGE/活性染色法で得られるバンドは、変異体等を用いて当該バンドの位置のアイソザイムを特定することができる。また、Native−PAGEによって酵素・アイソザイムの分離が困難な場合は、ゲル電気泳動前の試料調製段階で粗精製を行ってもよい。
本発明の解析方法は、α―アミラーゼ、β―アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ホスフォリラーゼ等のデンプン分解酵素の機能解析にも、適用可能である。その場合には、上述のようなNative−PAGE/活性染色法を行うと、デンプン分解酵素の存在する位置では、ゲルに含まれるプライマーを分解することによって染色の薄くなったバンドが現れる。このバンドを切り出して上記と同様に鎖長分布解析に供すればよい。各デンプン分解酵素のバンドは、変異体等を用いて当該バンドの位置のアイソザイムを特定することができる。
本解析法において、ゲルに加える基質(プライマー)や反応液などを変更することで、酵素の基質特異性や、反応条件を変えたときに生産されるポリグルカンの構造を決定することができる。また、反応時間を経時的に停止し、各反応時間でのバンドの鎖長分布を決定することで、ポリグルカンの伸長過程を調べることもできる。
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
イネのスターチシンターゼ(SS)を解析対象の酵素とし、ゲルに含ませるプライマーにカキグリコーゲン、ウサギグリコーゲン、ジャガイモアミロペクチンを使用して、以下各実験を行った。
(1)Native−PAGE/SS活性染色法
まず、Native−PAGE/SS活性染色法について説明する。Native−PAGE/SS活性染色法は、Nishi et al. (2001) Plant Physiol. 127:459-472記載の方法にしたがって以下のように行った。
開花後10日くらいのイネ(日本晴、野生型)登熟種子1粒のもみ、胚、果皮を除去し、4倍体積の抽出バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 10% glycerol, 10 mM EDTA-Na, 5 mM ジチオスレイトール, 0.4 mM PMSF/EtOH)を加え、マイクロチューブ内でプラスチック製ホモジナイザー(グライナー社製)を用いてホモジナイズし、15,000 rpm,10 min,4℃で遠心分離して得た上清にNative−PAGE用サンプルバッファー(0.3 M Tris-HCl (pH7.0), 0.1% ブロモフェノールブルー,50%グリセロール)を1/2体積加えて電気泳動に用いた。電気泳動にはグルコシルトランスフェラーゼ反応に必要なプライマーとしてグリコーゲンやアミロペクチンを60℃で溶かし込んだ7.5%アクリルアミドゲルを用いた。フロントが濃縮ゲルを通過するまで7.5mA、通過してから15mAの定常電流で4℃下で電気泳動し、フロントが出てから30分で電流を止めた。その後、基質であるADPグルコースを除いた反応液(クエン酸ナトリウム緩衝液pH7.5,0.5 M citrate-Na,100 mM Bicine-NaOH, pH 7.5,0.5mM EDTA,10% glycerol,2mM ジチオスレイトール,1mM ADPグルコース)で2回洗浄し(各15分)、ADPGを加えて20時間30℃でシーソーで反応させた。反応後,ヨードヨードカリ液(1%KI/0.1%I2)で染色した。
イネの野生型(日本晴)の登熟種子をNative−PAGE/SS活性染色した場合、SSアイソザイムは、ゲル中にポリグルカンを伸長するため、ヨードヨードカリ液で染色した場合、茶色のバンドを生じる。図1において、ゲルほぼ中央のバンドは、変異体を用いた解析からSSIバンドであることがわかっている。他方、移動度の非常に遅い位置にも茶色いバンドが現れるが、これは他のSSアイソザイムであるSSIIIaバンドである。
(2)バンドの切り出しおよび鎖長分布決定法
Native−PAGE/SS活性染色法で得られたバンド(3レーン分)を切り出し、マイクロチューブに回収した。プラスチック製ホモジナイザーでホモジナイズし、蒸留水を加えて遠心分離し、上清を除去した。全量285μlになるように蒸留水を加え、さらに15μlの5N NaOHを加えて5分間煮沸してポリグルカンを糊化させた。
鎖長分布解析は、オセアとモレルの方法(O’Shea and Morell(1996) Electrophoresis, 17, 681-688)などを参考に以下のように行った。糊化液に氷酢酸9.6μlを加えて中和した後、蒸留水1089μl、0.6M酢酸緩衝液(pH 4.4)100μl、2%アジ化ナトリウム15μl、P. amyloderamosa イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68, 林原生物化学研究所)3μl(約210 unit)を加え、スターラーバーで撹拌しながら37℃、8時間以上反応させ、α−1,6結合の切断を行った。さらにイソアミラーゼ3μlを追加して8時間以上反応した後、常温で10,000 rpmで遠心分離し、上清を脱イオンカラム(AG501-X8(D), Bio-Rad)で濾過した。
α−グルカン鎖の非還元末端を蛍光標識するため、Hizukuriら(1981. Carbohydrate Reserch, 94, 205-213)の方法により試料中の糖含量を定量し5nmol相当の還元末端をもつα−グルカン鎖を遠心濃縮機で乾燥させ、2μlの1-アミノピレン-3,6,8-三硫酸塩(APTS)溶液(2.5% APTS、15% 酢酸)、2μlのシアン化ホウ素ナトリウム溶液(1M シアン化ホウ素ナトリウム、100% テトラヒドロフラン)を添加し、55℃で90分間反応させた。分析時には12.5倍に蒸留水で希釈して用いた。鎖長分布解析は、キャピラリー電気泳動装置(P/ACE MDQ, Beckman Coulters)を用いて行った。グルコース重合度(DP)2以上の各ピーク面積を数値化し、DP35までのピーク面積の合計を100%としたときの各DPの割合(Area %)を算出した。
(3)カキグリコーゲンを使用した場合の実験結果
0.8%のカキグリコーゲン(シグマ,TypeII,G8751)を含むゲルを用いてNative−PAGE/SS活性染色を行うと、図1に示されるバンドが得られた。ゲル上のSSIおよびSSIIIaバンドは、それぞれ変異体から同定されたSSアイソザイムである。
電気泳動を行った後のゲルに含まれるポリグルカンの鎖長が正確に決定できるかどうかを確認するため、粉末のカキグリコーゲンの鎖長分布と、図1のバンドが無い部分のゲル(四角枠で囲まれた部分G)から抽出したグリコーゲンの鎖長分布とを比較した。その結果を図2に示す。同図に示すように、ほぼ同一のパターンが得られたことから、ゲルからポリグルカンを抽出して鎖長分布を決定することは技術的に可能であることが示された。
SSIおよびSSIIIaのバンドを切り出し、それぞれの鎖長分布を決定した。比較のために、SSIあるいはSSIIIaの鎖長分布(Area %)から、ゲルから抽出したカキグリコーゲンの鎖長分布(Area %)を引いたΔArea %に換算して比較したところ、図3に示すように、SSIではDP6が減少し、DP8が増加していることが明確になった。このことから、SSIは、DP6のような非常に短い鎖長のものをDP8程度に少しだけ伸ばす機能を持つことが推察された。また、SSIIIaのパターンは、SSIのそれと全く異なり、DP12以下の鎖長が減少し、DP13以上の鎖長が増加していたことから、幅広い範囲の鎖長のものを比較的長く伸長することが示唆された。これらの結果から、アイソザイムによってそれぞれ伸長するのに用いるα−1,4鎖の鎖長および伸長するグルコースの長さも異なることが明確になった。
(4)ウサギグリコーゲンを使用した場合の実験結果
0.8%のウサギ肝臓グリコーゲン(シグマ,TypeIII,G-8876)を含むゲルを用いてNative−PAGE/SS活性染色を行った。その際、反応時間を経時的に停止し(図4)、各反応時間におけるSSIバンドを切り出し、鎖長分布解析を行った(図5・6)。
その結果、ウサギグリコーゲンを用いた場合もカキグリコーゲンのときと同様に、DP6が減少し、DP8が増加していた。また、DP17、18が減少し、DP20以上がなだらかに増加していた(図6)。この現象はカキグリコーゲンを基質(プライマー)にしたときにもわずかに見られた(図3)が、ウサギグリコーゲンを基質(プライマー)に用いた場合の方が顕著であった。DP15以下の鎖長の変化は、デンプンのクラスター内のA鎖の変化であり、DP16以上の変化はB1鎖の変化であると考えられる。なお、高等植物のアミロペクチンはクラスター構造を取っており、それらの鎖のうち、α−1,4鎖にそれ以上枝(α−1,6結合)がない鎖をA鎖、枝がある場合をB鎖と呼ぶ。また、クラスター1個分以内の長さのB鎖をB1鎖、2個分にまたがる鎖をB2鎖と呼ぶ。
図5、図6に示すように、反応時間を延ばすと、DP6はさらに減少するものの、DP8は増加しなくなり、むしろより長い鎖長のものが増加していた。このことから、長時間反応させた場合、DP8をもプライマーに用いて鎖長を伸長するか、あるいはDP6からグルコース9個程度までは付加することができることを示している可能性がある。
(5)ジャガイモアミロペクチンを使用した場合の実験結果
0.2%のジャガイモアミロペクチン(シグマ,A-8515)を含むゲルを用いてNative−PAGE/SS活性染色を行い(図7)、その後、SSIバンドを切り出して鎖長分布解析を行ったところ、図8のようなパターンが得られた。このパターンは、図9に示されるイネSSI変異体の胚乳アミロペクチンの鎖長分布パターンとDP20以下において、ミラーイメージであった。このことは、グリコーゲンより、実際にイネ胚乳内に存在するものに近いプライマー、ここではジャガイモアミロペクチンを用いることで、インビトロにおいてもそれに近い状況を再現できたと考えることができる。DP20以上に関しては、SSI酵素がデンプン粒と結合し、鎖長を伸長できなくなる可能性が考えられる(Commuri & Keeling (2001) Plant Cell 25: 475-486)ため、インビトロでの実験結果と変異体の結果とが必ずしもミラーイメージになっていないと考えられる。
以上の実験結果から、Native−PAGE/SS活性染色で得られるバンドから鎖長分布を決定する方法は、非常に有効な解析手法であることが示され、簡便にアイソザイムの機能を明確にすることができる。一方、加水分解酵素などのバンドが重なって切り出しが困難な場合は、部分精製後にNative−PAGE/活性染色を試みることで同様に行うことが可能と考えられる。
また、ゲルに含ませる基質(プライマー)や反応時間を変えることで、酵素の基質特異性やポリグルカンの伸長過程を観察することができる。さらに、スターチシンターゼに限らず、枝作り酵素や枝切り酵素などでも応用可能であり、本解析方法は、デンプン生合成のメカニズム解明において非常に有効な手段といえる。
以上のように、本発明は、デンプン合成関連酵素等の機能解析法に関するものであり、前述したとおり、デンプン合成機構などの解析手法として有用であり、デンプン合成やデンプン分解に関与する各種酵素・アイソザイムの機能解析に利用することができるほか、他の動植物・バクテリア由来の糖鎖形成に関与する酵素の機能解析などにも利用可能性を有するなど産業上広く利用できるものである。
カキグリコーゲンを含むゲルでNative−PAGE/SS活性染色を行った結果を示すゲルイメージの図である。矢印のバンドは変異体によって同定された各アイソザイムの位置を示す。四角枠で囲まれた部分Gは、カキグリコーゲン抽出に用いた箇所を示す。 カキグリコーゲン粉末と上記部分Gのゲルから抽出したカキグリコーゲン(OysGel)との鎖長分布の比較を示すグラフである。 ゲルのSSIおよびSSIIIaバンドから抽出したポリグルカンの鎖長分布の比較を示すグラフである。それぞれの鎖長分布から、ゲルから抽出したカキグリコーゲン(OysGel)の鎖長分布を引いた値(ΔArea %)を示す。SSIとSSIIIaとは、全く異なるパターンを示しており、アイソザイムの機能の違いを反映するものになっている。 ウサギグリコーゲンを含むゲルでNative−PAGE/SS活性染色を行った結果を示すゲルイメージの図である。矢印のバンドはSSIを示す。反応時間を経時的に停止した。白字の数字は各反応時間を示す。反応時間が増すにしたがって、SSIバンドが濃くなる。即ち、たくさんのポリグルカンが合成されていることを示す。 それぞれの反応時間におけるSSIバンドの鎖長分布(Area %)を示すグラフである。 図5の鎖長分布から、ゲルから抽出したウサギグリコーゲン(Rabgel)の鎖長分布を引いた値(ΔArea %)を示すグラフである。反応時間が長くなるにつれて鎖長分布の変化が大きくなり、より長鎖長のものが増加していることがわかる。その一方で、DP6−7とDP17−18は減少していることから、これらのものがプライマーになって鎖長を伸長していることがわかる。 ジャガイモアミロペクチンを含むゲルでNative−PAGE/SS活性染色を行った結果を示すゲルイメージの図である。矢印のバンドはSSIを示す。 SSIバンドの鎖長分布から、ゲルから抽出したジャガイモアミロペクチンの鎖長分布を引いた値(ΔArea %)を示すグラフである。DP2−7、16−20が減少し、DP8−12、DP21以上が増加している。DP20以下のパターンは図9に示すSSI変異体のパターンとミラーイメージになっている。 イネSSI変異体の胚乳アミロペクチンの鎖長分布から野生型のそれを引いた結果を示すグラフである。

Claims (7)

  1. 非変性の酵素を含む試料をゲル電気泳動後、ゲル内にて酵素反応させ、得られた反応生成物を含むゲル領域を切り出し、このゲル領域内の反応生成物の構造解析を行うことにより、当該酵素の機能を解析する方法。
  2. ゲル電気泳動が、ポリアクリルアミドゲル電気泳動である、請求項1記載の酵素の機能解析法。
  3. ゲル内にて酵素反応後、反応生成物を染色により可視化し、その後、反応生成物を含むゲル領域を切り出すことを特徴とする、請求項1又は2記載の酵素の機能解析法。
  4. 解析対象の酵素が、植物由来の酵素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素の機能解析法。
  5. 解析対象の酵素が、デンプン合成関連酵素又はデンプン分解酵素である、請求項4記載の酵素の機能解析法。
  6. 解析対象の酵素が、デンプン合成関連酵素又はデンプン分解酵素であり、反応生成物の構造解析が、ポリグルカンの鎖長分布解析である、請求項5記載の酵素の機能解析法。
  7. キャピラリー電気泳動により鎖長分布解析を行うことを特徴とする、請求項6記載の酵素の機能解析法。

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